説明

筐体装置

【課題】扉の開閉に伴う損傷の発生や操作力増加の虞がない筐体装置を提供すること。
【解決手段】ロック機構4の施錠操作により回動する扉係合部材5をクランク部材として上下にスライド移動し、ケース本体1の開口部の内周縁部に係合する上下2本のロッド7、8を備えた筐体装置において、クランク部材として動作する扉係合部材5と2本のロッド7、8の連結部に、扉側連結部材13、14とロッド側連結部材15、16によりくの字型となる連結部材を設け、2本のロッド7、8が何れもロック機構4の回動軸4Aを通る直線L上においてスライド移動するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滴防湿構造の筐体装置に係り、特に、電子装置の保護とメンテナンスに好適な開き戸形式の扉を備えた筐体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話の基地局装置など屋外に設置して運用される電子装置や可搬型として屋外で運用される電子装置の場合、当該電子装置に必要な各種の電子回路や回路装置を筐体に収容して使用するのが通例であるが、このときメンテナンスなどを考慮して、内部の点検が簡単に行えるような筐体構造にするのが通例である。
【0003】
そこで、このような従来技術による筐体装置の一例について、図5〜図8により説明する。
まず、これらの図において、1はケース本体、2は扉、3はパッキング材(パッキン)、4はロック機構、5は扉係合部材、6は蝶番、7は上ロッド、8は下ロッド、9は上ガイド部材、そして10は下ガイド部材である。
なお、図8では、上ガイド部材9が省略されている。
ここで、まず、ケース本体1は電子装置を収納する筐体となるもので、図示のように一面が開口部になった箱型の筐体として作られ、この開口部の一方の側板端部に扉2が蝶番6により開閉可能に保持されている。
【0004】
そして、このとき扉2の周辺部にはパッキング材3が貼り付けてある。
次に、ロック機構4は回転軸4Aを備え、この回転軸4Aの表面側に平面ハンドル4Bを保持させ、内面側には略Z形の金具で作られている扉係合部材5を保持させたもので、ケース本体1の開口部を扉3により閉じた後、扉2の表面にある平面ハンドル4Bを廻すことにより扉係合部材5が回動し、これによりケース本体1の開口縁部1Eに扉係合部材5の先端部5Aが係合し、留め金具として機能するようになっている。
【0005】
このとき扉係合部材5には、上ロッド7の下端部と下ロッド8の下端部が夫々回転軸4Aの左右に対象な位置で回動可能に連結させてあり、これにより平面ハンドル4Bを廻すと扉係合部材5がクランク部材として動作し、これに連結されている上ロッド7と下ロッド8を各々上下反対方向にスライド移動させ、所望の位置まで動かされるようになっている。
そして、このときの上ロッド7と下ロッド8の上下移動が、上ガイド部材9と下ガイド部材10により案内され、所望の位置で所望の方向に移動することになる。
【0006】
ここで、これら図5〜図8では、何れもロック機構4が施錠され扉係合部材5が係合位置にされている状態が示され、このとき特に図6と図8では、更に扉3が閉じられている状態が明瞭に示されている。
従って、この場合、図5において、扉係合部材5が時計廻りに回動されれば扉係合部材5の先端部5Aがケース本体1の開口外周縁部1Aから外れ、同時に上ロッド7は下方向に動かされ、下ロッド8は上方向に動かされてロック機構4の施錠が解除されることになる。
【0007】
ここで、いま、図5〜図8に示されているように、ロック機構4が施錠されていた場合、扉係合部材5の先端部5Aがケース本体1の開口外周縁部1Aに係合しているのは勿論であるが、同時に上ロッド7は、上方向にストローク限度まで動かされて、上記した所望の位置にあり、下ロッド8は、下方向にストローク限度まで動かされて、上記した所望の位置にある。
【0008】
ここで、上記した“所望の位置”とは、特に図8から明らかなように、扉2を閉じた状態で、上ロッド7の先端部7Aと下ロッド8の先端部8Aが夫々ケース本体1の開口内周縁部1Bに係合し、扉2をケース本体1側に引き寄せてケース本体1の開口外周縁部1Aに押し付け、間に介在されているパッキング材3が所望の強さで圧縮された状態になる位置のことであるが、このとき上ロッド7の先端部7Aと下ロッド8の先端部8Aは先細りテーパー形に形成してある。
【0009】
従って、扉2が最終的に閉じられた位置になる過程で、これら先細りテーパー形に形成した部分がケース本体1の内周縁部に少しずつ係合して行き、最後に閉じられたときに扉2がケース本体1側に強く引き寄せられ、ケース本体1の開口縁部1Aに強い力で押し付け、間に介在されているパッキング材3が圧縮された状態になる。
【0010】
この結果、パッキング材3による封止機能が働き、これによりケース本体1と扉2の間に所望の気密性が与えられ、従って、この筐体装置に電子装置を収納すれば、屋外での運用にも充分に耐えることができ、メンテナンスにも容易に対応できることになる。
なお、このような電子装置収容用の筐体装置に関する先行技術としては、例えば特許文献1の開示をあげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−181471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来技術に係る筐体装置は、パッキング材に均等な押圧を与える点について配慮がされておらず、扉部分の気密性保持に問題があった。
従来技術に係る筐体装置の場合、特に図5〜図7に示されているように、上ロッド7と下ロッド8が横にずれて配置されており、従って、蝶番6からみて異なった位置に配置されてしまう。そして、この図の場合、下ロッド8の方が上ロッド7よりも蝶番6に近い位置にある。
【0013】
そうすると、この場合、特に図6と図7に示されているように、下ロッド8が丁度、ケース本体1の開口内周縁部1Bに係合したときでも、上ロッド7は、まだ開口内周縁部1Bには達せず、差Δだけ僅かに手前の位置にある。
これは、扉2がケース本体1の左右の一方の端縁に蝶番6により保持され、この蝶番6を回動軸として開閉するため、扉2の蝶番6とは反対側の端縁部は、開閉動作時、蝶番6を中心軸とする円弧に沿って動くからであり、従って、この場合、下ロッド8は、特に無理無く開口内周縁部1Bに係合して行くが、しかし、上ロッド7は、差Δ分だけ開口内周縁部1Bに干渉し、開口内周縁部1Bに半ば無理矢理に係合して行くことになる。
【0014】
この結果、従来技術の筐体装置の場合、扉2を閉じる際、平面ハンドル4Aに大きな力を加える必要があり、且つ、ロッドによりケース本体1に損傷を与えてしまう虞がある。
しかも、このとき、上ロッド7による係合位置は上側であるのに対して上ロッド7による係合位置は下側であるから、閉じたときに扉2の上と下では、閉じた位置に差Δの違いが残り、パッキング材6が均等に押し付けられなくなってしまうので、パッキング材6による封止機能が完全には働かなくなってしまう虞があり、このため、従来技術においては、パッキング材に均等な押圧を与える点について配慮がされておらず、扉部分での気密性の保持に問題が生じてしまうのである。
【0015】
本発明の目的は、扉の開閉に伴う損傷の発生や操作力増加の虞がない筐体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、一面に開口部を有する箱型のケース本体と、前記開口部の一方の側の端部に蝶番により保持した扉と、前記扉の裏面において上下にスライド移動し前記ケース本体の前記開口部の内周縁部に係合する上下2本のロッドと、これら2本のロッドをスライド移動させるクランク部材が回転軸に設けられているロック機構とを備えた筐体装置において、前記クランク部材と前記2本のロッドの連結部に各々くの字型の連結部材を設け、前記2本のロッドが各々前記回動軸を通る上下方向の直線上でスライド移動させるようにして達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の場合、ケース本体の開口部に扉を閉じ、ケース本体に扉を係合させたとき、当該係合のための扉の回動軸からの距離が当該扉の上下で同じになる。
従って、本発明によれば、ロッドによる係合位置が上下で同じになり、この結果、係合位置の相違によるケース本体の損傷が無く、上ロッドと下ロッドのスライド移動に必要な力が均等化されるので、ハンドル操作に必要な力が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による筐体装置の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の組み立て説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】従来技術による筐体装置の一例を示す斜視図である。
【図6】従来技術による筐体装置の一例を示す縦断面図である。
【図7】従来技術による筐体装置の一例における一部拡大断面図である。
【図8】従来技術による筐体装置の一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る筐体装置について、図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る筐体装置を、扉が開いている状態で示したもので、図において、11、12は回動軸、13、14は扉側連結部材(扉係合部材側連結部材)、15、16はロッド側連結部材であり、その他は、上記した従来技術の場合と同じである。
【0020】
そして、ロック機構4を施錠することにより、扉係合部材5の先端部5Aがケース本体1の開口外周縁部1Aに係合され、これと同時に上ロッド7と下ロッド8は、夫々ケース本体1の開口内周縁部1Bに係合され、扉2が最終的に閉じられた位置になると、パッキング材3による封止機能が有効に働き、この結果、ケース本体1に電子装置を収納し、扉2を閉じてロック機構4を施錠してやれば、屋外での運用にも充分に耐えることができ、扉2の存在によりメンテナンスにも容易に対応できることになる点でも、上記した従来技術の場合と同じである。
【0021】
しかしながら、この図1の実施形態においては、まず、上ロッド7と下ロッド8が何れもロック機構4の回動軸の中心を通る直線L上でスライド移動するように上ガイド部材9と下ガイド部材10が配置されている点で、従来技術の場合とは異なっている。
そして、このため上ロッド7と下ロッド8が扉係合部材5に直接連結されているのではなく、ロッド側連結部材15、16と扉側連結部材13、14を介して扉係合部材5に連結されている点でも従来技術の場合とは異なっている。
【0022】
ここで、まず、扉側連結部材13とロッド側連結部材15及び扉側連結部材14とロッド側連結部材16は、何れも図示の通り、“く”の字形の形状にしたままで接合固定され、これにより上ロッド7と下ロッド8の移動方向を、扉側連結部材13、14の移動方向から平行に夫々反対方向にずらし、上ロッド7と下ロッド8の移動方向が同一の直線L上に揃った状態になるのを可能にする。
このため、ロッド側連結部材15と上ロッド7の接合部及び下ロッド8と連結部材16の接合部は夫々回動軸11、12により折り曲げ回動可能に連結されている。
【0023】
そうすると、この実施形態においては、上ロッド7と下ロッド8は何れも蝶番6から等距離の位置にある。
そこで、ロック機構4が外部ハンドル4Aにより施錠操作された場合、上ロッド7と下ロッド8は、何れも蝶番6から等距離の位置にある直線Lに沿ってスライド移動されることになる。
そこで、この実施形態の場合、扉2を閉じてロック機構4を施錠操作した際、上ロッド7と下ロッド8はケース本体1の開口内周縁部1Bに同一のタイミングで当接し、同じ状態で係合されてゆくことになる。
【0024】
従って、この実施形態によれば、ロッドによる係合位置が扉2の上下で同じになり、この結果、係合位置の相違によるケース本体1の損傷が無く、上ロッド7と下ロッド8のスライド移動に必要な力が均等化されるので、外部ハンドル4Aによるロック機構4の施錠操作必要な力が少なくて済む。
【0025】
しかも、このとき、パッキング材3には上下で均等な押圧力が与えられ、従って、良好な封止作用が得られるので、内部に収納した電子装置の保護に万全を期すことができる上、パッキング材3の劣化を少なく抑えることができるので、パッキング材3のメンテナンスが容易になる。
【0026】
次に、本発明に係る筐体装置に電子装置を収納する場合を考慮した一実施の形態について、第2の実施形態として図2と図3により説明する。
ここで、この第2の実施形態筐体においては、まず、図2の上側の(a)に示すように、開き戸形式の扉2が備えられた箱型の外部筐体1Aと、下側の(b)に示すように、同じく箱型をした内部筐体17を用いる。
【0027】
そして、この内部筐体17の中に所望の電子機器(複数台の電子機器)を取り付けた上で、当該内部筐体17を外部筐体1Aの中に挿入するようにしてある。
従って、この第2の実施形態では、外部筐体1Aが、図1により説明した第1の実施形態におけるケース本体1に相当する。
なお、その他の構成については、ここでは省略してある。
【0028】
まず、図2の(a)図には扉2が限度まで開かれている状態が示され、ここで外部筐体1Aの内部の上側には、下方に向かって垂直になった上側保持部材18が複数個、並んで設けられ、下側には、上方に向かって垂直になった下側保持部材19が、これも複数個、並んで設けられている。
ここで、これら上側保持部材18と下側保持部材19には、所望の大きさの雌ネジ孔が切ってある。
【0029】
次に、図2の(b)図において、内部筐体17の天井部の上側には、外部筐体1Aの上側保持部材18に対応して、上方向に垂直になった上側取付部材20が複数個、並んで設けられ、底面部の下には、同じく下側保持部材19に対応して、下方向に垂直になった下側取付部材21が、同じく複数個、並んで設けられている。
更に、この内部筐体17には、その下部周辺面と底面に円形の通気孔22〜25が夫々複数、形成してあり、このとき天井部分には、1個の通気孔26だけが形成してある。
【0030】
そして、この内部筐体17の中に電源装置30、制御回路装置31、記録装置32、回路基板33など、この場合の電子装置に必要な各種の回路機器を各々所望の位置に取り付け、更に冷却用として、天井部の通気孔26に電動ファン34を取り付け、この後、外部筐体1Aに内部筐体17を挿入し、電子装置として組み立てることになる。
そこで、このときの組み立て方について、以下、図3により更に詳しく説明する。
【0031】
ここで、この図3においては、内部筐体17が前面部材27を備えている場合について説明する。従って、ここに図示されている符号28は、この前面部材27に形成されている円形の通気孔を表わす。
なお、この図3では、前面部材27が設けてある場合について説明するが、この前面部材27は無くても実施可能である。
【0032】
例えば、このときの冷却風の流れと放熱効果、堅牢性の見地に立てば前面部材を設けた方が良く、メンテナンスの面からすれば設けないほうが良いので、必要に応じて選択すれば良く、何れの場合でも外部筐体1Aと内部筐体17の関係には変わりはない。
【0033】
ここで、まず、このときの電子装置に必要な回路装置(複数)を内部筐体17の中に取り付け、次いで図3の(a)図に示すように、この内部筐体17を外部筐体1Aの中に挿入し、更に図3の(b)に示すように、内部筐体17の上側取付部材20と下側取付部材21を、外部筐体1Aの上側保持部材18と下側保持部材19の夫々にビス止めし、内部筐体17を外部筐体1Aに固定する。
【0034】
そして、この後、図3の(c)に示すように、扉2を閉じ、図1の実施形態において説明した通り、ロック機構4の外部ハンドル4Aを操作して施錠してやれば、外部筐体1Aの開口部が扉2により閉じられ、内部にある電子装置が雨滴などから保護されることになる。
【0035】
従って、この第2の実施形態によれば、筐体装置の内部が電動ファン34により換気されるので、動作に伴う発熱が多い電子装置を収納しても温度上昇が抑えられ、従って、夏期など外気温度が高くなった場合や直射日光下で内部温度が上昇してしまう場合などでも電子装置の運用稼働が可能になる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態について、図4により説明する。
ここで、この図4に示す実施形態は、図2と図3で説明した第2の実施形態において、更に外部筐体1Aの中にコネクタ部40を設けた場合の一実施の形態であり、ここで41は窪み部で、内部筐体17に形成してある。
このときコネクタ部40は、内部筐体17の中に納められている電子装置に外部からケーブルを接続するための端子部であり、窪み部41は、外部筐体1Aの中に内部筐体17を挿入したとき、コネクタ部40を収容するための空所として機能する。
【0037】
従って、この第3の実施形態によれば、筐体装置の内部が電動ファン34により換気されるので、夏期など外気温度が高くなった場合や直射日光下で内部温度が上昇してしまう場合などでも電子装置の運用稼働が可能になる上、コネクタ部40が備えられているので、電子装置を設置した際、必要なケーブルの接続が容易になるという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ケース本体(電子装置収納用の筐体)
2 扉
3 パッキング材
4 ロック機構
4A 平面ハンドル
5 扉係合部材
6 蝶番
7 上ロッド
8 下ロッド
9上ガイド部材
10 下ガイド部材
11、12 回動軸
13、14 扉側連結部材(扉係合部材側連結部材)
15、16 ロッド側連結部材
17 内部筐体
18 上側保持部材
19 下側保持部材
20 上側取付部材
21 下側取付部材
22〜26 通気孔
30 電源装置
31 制御回路装置
32 記録装置
33 回路基板
34 電動ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に開口部を有する箱型のケース本体と、前記開口部の一方の側の端部に蝶番により保持した扉と、前記扉の裏面において上下にスライド移動し前記ケース本体の前記開口部の内周縁部に係合する上下2本のロッドと、これら2本のロッドをスライド移動させるクランク部材が回転軸に設けられているロック機構とを備えた筐体装置において、
前記クランク部材と前記2本のロッドの連結部に各々くの字型の連結部材を設け、
前記2本のロッドが各々前記回動軸を通る上下方向の直線上においてスライド移動するように構成したことを特徴とする筐体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−151295(P2012−151295A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9125(P2011−9125)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】