説明

筒状フィルタの製造方法および筒状フィルタ

【課題】厚さ、強度、弾性などの構成を容易に変更でき、高い強度を有する安価な筒状フィルタを安価な設備で連続生産可能な製造方法を提供する。
【解決手段】一定長さの回転治具3に少なくとも1つの繊維状体5を単層又は複数層に巻き付けると共に前記繊維状体5の単層の重ね代又は複数層の層間を接着または熱融着などの接合技術で固定して筒状フィルタ13を形成し、この形成された筒状フィルタ13を前記回転治具3の片側から抜き出すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒状フィルタの製造方法および筒状フィルタに関し、特にガス状あるいは液状の流体から微細な粉塵を分離する濾過装置に使用される筒状フィルタの製造方法および筒状フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス状あるいは液状の流体から微細な粉塵を分離して濾過する捕集手段として、種々の形態のフィルタが用いられており、フィルタの形状面で分類すると、プリーツフィルタ、バグフィルタ、焼結体フィルタ、巻き付けフィルタなどがある。
【0003】
プリーツフィルタは、例えば特許文献1及び特許文献2に示されているように、ひだ折りにした濾過材を筒状に加工したものであり、構造が簡単で、かつ圧力損失が小さいなどの理由で、最も一般的に用いられている。
【0004】
バグフィルタは、例えば特許文献3に示されているように、ガラス繊維や耐熱性合成樹脂などの繊維を編組して構成される濾材を袋状に縫製したもので、この袋状の濾材が例えば籠状体などの支持体(リテーナ)で支持されるものである。
【0005】
焼結体フィルタは、例えば特許文献4及び特許文献5に示されているように、セラミックやプラスチックの焼結体を濾材として用いるもので、例えば焼結体の原料となる粒子状のプラスチックを充填した金型が焼結炉内で加熱されて前記粒子同士がその表面で融着することや、セラミック粒子や金属粒子をプレス成形し焼結炉内で加熱されることで粒子が拡散結合されることなどで焼結体フィルタが製造される。
【0006】
巻き付けフィルタには、反物状のものを巻き付けた場合と、帯状又は紐状のものを巻き付けた場合がある。
【特許文献1】特許第2507456号公報
【特許文献2】実開平8−1510号公報
【特許文献3】特開2000−279725号公報
【特許文献4】特開平11−276824号公報
【特許文献5】特開2003−126627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来のフィルタにおいて、プリーツフィルタでは、フィルタの見かけの表面積は大きいので初期は良いが使っていると、ひだの間に粉塵が詰まり易いので、一般的に、その寿命は約1年程度である。また、濾過圧力が上昇するとその風圧又は液圧でひだが密着してしまうために実効表面積は多くないなどの理由から風量又は液量(流体量)などの性能が低下し易いという問題点があった。この問題を解決するために、特許文献2では、濾材の下流(気流の)側に網状のスペーサを前記濾材のひだの間に介在するように設けている。
【0008】
なお、前記スペーサは、密閉容器の中心部から周辺部に向かって濾過する内圧式では濾材の外側に設けられ、密閉容器の周辺部から中心部に向かって濾過する外圧式では濾材の内側に設けられる。しかし、上記の網状のスペーサをひだ間に介在することが難しく、さらに、スペーサが圧力損失を有するので通液性もしくは通気性を低下させることや、スペーサを設けるために濾材のひだ数が少なくなるので濾過面積が小さくなるなどの理由で、スペーサを設けることで、逆に、フィルタ全体が複雑でコストアップになり、かつ、別の面での能力低下という問題点があった。さらに、ひだの間に粉塵が詰まり易く、寿命が短いという点に関しては解決されていない。
【0009】
従来のバグフィルタでは、形状は単純であるが、腰(強度)がないため、例えば籠状体などの支持体(リテーナ)が必要であるので、複雑で高価となる。また、布や不織布が支持体(リテーナ)と擦れてしまうために穴が開き易いので、早期に破損してしまい、短寿命であるという問題点があった。
【0010】
従来の焼結体フィルタでは、高価な金型と焼結炉が必要であるのでコスト高であり、静的な強度はあるが、重量が大きい点や衝撃に弱いなどの取り扱い上の問題点があった。また、通気度、フィルタメッシュサイズ、寸法や形状などの仕様の変更が困難であるという問題点があった。
【0011】
従来の反物状の巻き付けフィルタでは、例えば不織布を用いたフィルタは水を主体とする液体に対しては実用化されているが、粉塵に対しては目詰まりがフィルタの内部で発生するために逆圧洗浄やパルス洗浄を行っても目詰まりが早く、また表面積も少ないために、実用化が難しいという問題点があった。
【0012】
一方、帯状又は紐状の巻き付けフィルタでは、紐の隙間の内部に浸入して付着した粉塵は上記の反物状の巻き付けフィルタと同様に除去が難しく、目詰まりが早いという問題点があった。
【0013】
上記の反物状、帯状又は紐状の何れの巻き付けフィルタでも、寸法面の制約、特に長さの寸法面の制約が大きいという問題点があった。例えば、所定の寸法のフィルタを作る場合、その都度、それにあった治具や素材を用意する必要がある。特に長いものを作るときは、比較的安価な不織布でも幅を大きくする場合は、大きな設備投資が必要である。つまり、原反幅に合わせた設備を作る必要があるので、コスト高になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の筒状フィルタの製造方法は、一定長さの回転治具に少なくとも1つの繊維状体を単層又は複数層に巻き付けると共に前記繊維状体の単層の重ね代又は複数層の層間を接着または熱融着などの接合技術で固定して筒状フィルタを形成し、この形成された筒状フィルタを前記回転治具の片側から抜き出すことを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の筒状フィルタの製造方法は、前記筒状フィルタの製造方法において、前記繊維状体を前記回転治具にスパイラル状に巻き付けることが好ましい。
【0016】
また、この発明の筒状フィルタの製造方法は、前記筒状フィルタの製造方法において、前記繊維状体の最外層または最内層の表面に、微細孔を有した多孔質膜あるいはマイクロファイバからなる表面膜を設けることが好ましい。
【0017】
また、この発明の筒状フィルタの製造方法は、前記筒状フィルタの製造方法において、少なくとも最外層又は最内層は、重ね代を設けてスパイラル状に巻き付けることが好ましい。
【0018】
この発明の筒状フィルタは、繊維状体を複数層巻き付けて剛性を向上させ、支持体を用いずに中空形状に形成せしめてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、一定長さの回転治具に少なくとも1つの繊維状体を単層又は複数層に巻き付けると共に前記繊維状体の単層の重ね代又は複数層の層間を接着または熱融着などの接合技術で固定して筒状フィルタを形成するので、筒状フィルタの厚さ、強度、弾性などの構成を容易に変更できる。なお、単層の場合でもそれ自体の厚さを調整することで容易に変更できる。しかも、前記筒状フィルタを前記回転治具の片側から抜き出すので、筒状フィルタを連続生産(量産化)することができる。
【0020】
したがって、不織布や織物などの繊維状体を積層するので、高い強度を有する安価な筒状フィルタを得ることができ、強度と通気性を持ち、表面捕集を可能にし、支持体(リテーナ)を不要とし、焼結炉、金型などの高価で大がかりな設備を必要としない安価な設備で円筒フィルタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係る筒状フィルタの製造方法について筒状フィルタ製造装置1を用いて説明する。筒状フィルタ製造装置1は、図示しない回転駆動装置で回転される回転治具としての例えば回転心棒3が断面円形をなす一定長さで設けられている。回転している前記回転心棒3に繊維状体としての例えば不織布などの繊維状で帯状のフィルタ素材5をスパイラル状に巻き付けるために、前記フィルタ素材5を案内する繊維状体ガイド部材7とガイドローラ9が設けられている。
【0023】
なお、前記フィルタ素材5が前記回転心棒3に複数層でスパイラル状に巻き付けられるためには、この実施の形態では、例えば図1及び図2(A)に示されているように、2つの帯状のフィルタ素材5A,5Bを2層に重ねるために、フィルタ素材5Aをガイドするための繊維状体ガイド部材7Aとガイドローラ9A、並びにフィルタ素材5Bをガイドするための繊維状体ガイド部材7Bとガイドローラ9Bが配置されている。
【0024】
なお、繊維状体ガイド部材7Aとガイドローラ9Aが支持部材11Aで一体的に設けられ、繊維状体ガイド部材7Bとガイドローラ9Bが支持部材11Bで一体的に設けられ、それぞれが前記回転心棒3の軸心方向に沿って並行して移動調整自在に構成されている。これにより、フィルタ素材5A,5Bがそれぞれ前記回転心棒3の軸心方向の任意の位置で巻き付けられるように移動調整することができる。
【0025】
また、前記回転心棒3に複数層でスパイラル状に巻き付けられるフィルタ素材5は、接着又は熱融着などの接合技術で接合される。例えば、前記帯状のフィルタ素材5Bの内面側に接着剤を塗布するために図示しない接着剤スプレー又はフィルタ素材5を熱溶融するために図示しない加熱ヒータが設けられている。一方、最内層のフィルタ素材5Aの外面側に接着剤を塗布するための接着剤スプレー又はフィルタ素材5を熱溶融するための加熱ヒータを設けることができる。
【0026】
また、前記回転心棒3の先端側には、前記フィルタ素材5A,5Bが回転心棒3に巻き付けられながら接合して形成された円筒状フィルタ13を前記回転心棒3の先端から前方(図1において左方)へ送出して抜き出すためのフィルタ送出装置15が設けられている。
【0027】
この実施の形態のフィルタ送出装置15としては、太鼓状をなす一対の送出ローラ17が前記回転心棒3に形成された円筒状フィルタ13を両側から挟み込むように配置されている。また、前記一対の送出ローラ17は、前記回転心棒3に形成された円筒状フィルタ13を前記回転心棒3の先端より前方へ送出せしめる方向に図示しない回転駆動装置で回転する構成である。なお、上記の一対の送出ローラ17は、前記回転心棒3へ接近、離反するように進退自在に設けられていることが望ましい。
【0028】
なお、フィルタ送出装置15としては、上述した実施の形態に限定されず、例えば前記回転心棒3に形成された円筒状フィルタ13を両側から挟み込むフィルタ挟込み部材を設け、このフィルタ挟込み部材を例えばシリンダなどの駆動手段で作動すると共に、前記フィルタ挟込み部材が前記円筒状フィルタ13を挟み込んだ状態で前記回転心棒3の先端より前方へ送出せしめる方向に向けて往復移動自在に設けた構成であっても、あるいは他の構成のフィルタ送出装置であっても良い。
【0029】
また、回転心棒3の先端より前方側には、前記フィルタ送出装置15で回転心棒3の先端より前方へ送出された円筒状フィルタ13を所望の位置で切断するためのフィルタ切断装置19が設けられている。この実施の形態では、回転駆動手段としての例えばモータ21により回転される薄刃カッタ23が前記円筒状フィルタ13に切り込みを入れる切込み方向に進退移動自在で、且つ前記フィルタ送出装置15で送出される円筒状フィルタ13の送出速度に同期して円筒状フィルタ13の送出方向と同方向に向けて進退移動自在に設けられている。
【0030】
上記構成の筒状フィルタ製造装置1を用いた場合を例にとって、筒状フィルタの製造方法について説明すると、図1に示されているように巻き付ける速さに同期して完成したパイプがローラなどの力で送出(図で手前)される。この作業が連続して行われる。又は、回転心棒3が矢印の方向に回転すると共に、フィルタ素材5Aがガイドローラ9Aを経て繊維状体ガイド部材7Aで案内されて回転心棒3に巻き付けるように送出される。このとき、繊維状体ガイド部材7Aが回転心棒3の先端側から後方(図1において右方)へ移動することで、フィルタ素材5Aが回転心棒3にスパイラル状に巻き付けられることになる。
【0031】
さらに、上記のフィルタ素材5Aに後続して、フィルタ素材5Bがガイドローラ9Bを経て繊維状体ガイド部材7Bで案内され、上記のように巻き付けたフィルタ素材5Aの上から互いに隣接するフィルタ素材5A同士の間の隙間を塞ぐように前記フィルタ素材5Aとの重ね位置をずらして巻き付けられる。このとき、繊維状体ガイド部材7Bが前記繊維状体ガイド部材7Aに追従するようにして回転心棒3の先端側から後方(図1において右方)へ移動することで、フィルタ素材5Bが前記フィルタ素材5Aの上にスパイラル状に巻き付けられる。
【0032】
この実施の形態のフィルタ素材5A,5Bとしては、いずれも例えば5〜300μmの径で、孔径10μm(不織布の密度で0.4〜0.6g/cm相当)〜1000μm(不織布の密度で0.05〜0.07g/cm相当)を持った不織布が用いられている。
【0033】
なお、不織布としては、PP(ポリプロピレン)、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンを含むPE(ポリエチレン)、あるいはPPとPEとの混合などの素材が用いられる。その他に用いられる樹脂としては、プロピレンと他のα−オレフィンと共重合体などのポリオレフィン系、あるいはポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、低融点可塑性ポリエステルなどのポリエステル系、あるいはナイロン6,ナイロン66などのポリアミド系、あるいはポリスチレン系、塩化ビニール系、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂およびこれらの混合物からなる合成樹脂をあげることができる。
【0034】
また、このとき、前記帯状のフィルタ素材5Bの内面側は図示しない接着剤スプレーから接着剤を噴射して塗布されるか、あるいは、図示しない加熱ヒータで熱溶融される。さらに加えて、前記帯状のフィルタ素材5Aの外面側にも接着剤を塗布あるいは加熱ヒータで熱溶融するならば、フィルタ素材5A,5Bを相互に接着や熱圧着などで接合させることができる。
【0035】
なお、使用される接着剤としては、例えば、ビニール系樹脂やフェノール系樹脂、メラニン系樹脂、レゾルシノール系樹脂、アクリルニトリル系樹脂、ウレタン系樹脂などがある。また、上記の各層を熱融着する場合、例えば100〜250°Cの加熱温度で行われる。
【0036】
上記のようにフィルタ素材5A,5Bが回転心棒3に巻き付けられながら互いに接合されて円筒状フィルタ13が形成され、この円筒状フィルタ13が回転心棒3の後端側まで到達した時に、前記円筒状フィルタ13がフィルタ送出装置15によって回転心棒3の先端から前方(図1において左方)へ抜き出すように送出される。つまり、太鼓状をなす一対の送出ローラ17が前進して前記回転心棒3に形成された円筒状フィルタ13を両側から挟み込むと共に、図1の矢印で示されている方向に回転することで、円筒状フィルタ13が前方へ送出されることになる。他に繊維状体ガイド部材7A、7Bを固定し、フィルタ素材5A、5Bを回転する回転心棒3にスパイラル状に巻き付けられるスピードとフィルタ送出装置15の送出スピードを同期させて連続的に巻き付けと送出を行う方法もある。
【0037】
このとき、フィルタ素材5A,5Bは、回転心棒3の外周面を滑りながら送出可能な程度に緩く巻き付けられており、図2(B)に示されているように回転心棒3が回転し、且つ一対の送出ローラ17が回転しながら円筒状フィルタ13に接触するので、円筒状フィルタ13の外周面と一対の送出ローラ17との間の滑りはそれ程大きくならないものである。また、回転心棒3の表面にテフロン(登録商標)加工などを施し摩擦抵抗を下げることも良く行われる。
【0038】
上記のように円筒状フィルタ13がフィルタ送出装置15により送出されるときに、繊維状体ガイド部材7A,7Bは、後方側への移動を停止する。その後は、形成された円筒状フィルタ13が回転心棒3により回転しながらフィルタ送出装置15の一対の送出ローラ17によって前方へ送出されるので、繊維状体ガイド部材7A,7Bが停止していても、連続して送出されるフィルタ素材5A,5Bは回転する回転心棒3に引き続きスパイラル状に巻き付けられることになる。
【0039】
以上のように、フィルタ素材5A,5Bを供給していく限り、円筒状フィルタ13は回転心棒3に形成され、際限なく前記回転心棒3の先端より前方へ送り出されていくことになる。
【0040】
そこで、回転心棒3の先端より前方へ抜き出された円筒状フィルタ13は、図1及び図2(A)に示されているように、所望の長さLで切断するために、フィルタ切断装置19の薄刃カッタ23が切込み方向に前進して前記円筒状フィルタ13に切り込みを入れながら、円筒状フィルタ13の送出速度に同期して円筒状フィルタ13の送出方向と同方向に向けて前進する。円筒状フィルタ13が例えば2回転すると前記円筒状フィルタ13が切断されるように、前記薄刃カッタ23を切込み方向に前進するように設定することができる。
【0041】
円筒状フィルタ13が切断された後は、図2(A)の矢印で示されているように、前記薄刃カッタ23が切込み方向と反対方向に後退してから、円筒状フィルタ13の送出方向と反対方向に後退して原位置に戻ることになる。次いで、円筒状フィルタ13が前記薄刃カッタ23の原位置から前方へ長さLまで送出されたときに、上述した切断工程と同様の動作で切断される。この切断工程が後続して繰り返される。
【0042】
なお、上述した実施の形態では2つの帯状のフィルタ素材5A,5Bを巻き付けることを例にとって説明したが、2つ以上の帯状のフィルタ素材5A,5B,5C,・・・・・を巻き付けることについても、同様にして実施することができる。この場合は、複数のフィルタ素材5A,5B,5C,・・・・・を供給するためにそれぞれ対応してガイドするための複数の繊維状体ガイド部材7A,7B,7C,・・・・・と、複数のガイドローラ9A,9B,9C,・・・・・が設けられる。
【0043】
また、別の実施の形態として、1つの帯状のフィルタ素材5Aを回転心棒3に巻き付けて単層の繊維状体から形成される円筒状フィルタ13についても同様にして実施することができる。この場合は、隣り合う帯状のフィルタ素材5Aの間で隙間が生じないようにオーバラップ代を設けて巻き付けられると共にオーバラップする部分が接着あるいは熱融着の接合技術で接合される必要がある。
【0044】
以上のことから、1つ又は複数の帯状のフィルタ素材5を連続的に回転心棒3にスパイラル状に巻き付けながら接着あるいは熱融着の接合技術で接合して円筒状フィルタ13を形成し、この円筒状フィルタ13を回転心棒3の片側から抜き取ることで、回転心棒3の回転を停止することなく、つまり円筒状フィルタ13の製造を中止することなく、任意の長さの例えば幾十メートル(m)もの円筒状フィルタ13を連続生産することができ、生産コストの低減となる。しかも、帯状のフィルタ素材5の原反幅が例えば200mmであっても、例えば10m〜20mの筒状フィルタの製造が可能となり、円筒状フィルタ13の製造長さの制限が無くなる。
【0045】
さらには、円筒状フィルタ13の製造を中止することなく、フィルタ切断装置19で所望の長さLの円筒状フィルタ13を製造することができる。
【0046】
これによって、単層または複数層の繊維状体(フィルタ素材5)をスパイラル状に回転心棒3に巻き付けることで、厚さ、繊維径、密度を自由に選定できるので、弾力と強度のバランスを取った肉厚が0.5mm以上の中空形状の円筒状フィルタ13を製造することができる。この円筒状フィルタ13の厚みをコントロールすることができ、このコントロールで円筒状フィルタ13の強度を選定することができるので、支持体(リテーナ)が不要となる。また、従来のセラミックやプラスチックの焼結体フィルタと比較しても、強度が大幅に向上する。しかも衝撃にも強い円筒状フィルタ13を製造することができる。
【0047】
また、上記のように円筒状フィルタ13が製造される際に、円筒状フィルタ13の内部への粉塵の浸入を防止するために、表面(外周側または内周側)に多孔質膜やマイクロファイバ膜などの表面膜を形成することができる。つまり、筒状フィルタの周辺部から中心部に向かって濾過する外圧式では、表面膜がフィルタ本体の外側に巻かれるが、筒状フィルタの中心部から周辺部に向かって濾過する内圧式では、表面膜がフィルタ本体の内側に巻かれる。すなわち、上記の外圧式および内圧式のいずれにおいても、表面膜が最外側又は最内側に位置するように巻かれる。
【0048】
このとき、最外層あるいは最内層となるフィルタ素材5には、このフィルタ素材5としての例えば不織布よりも細かい孔を持った表面膜としての例えば多孔質膜やマイクロファイバ膜を前もって不織布の原反に貼り付けることができる。これによって、円筒状フィルタ13の最外層あるいは最内層の表面に表面膜を設ける際に安定した作業ができ、品質が安定する。また、円筒状フィルタ13に上記の表面膜を貼り付けるための特別な装置も不要となる。
【0049】
しかも、上記の表面膜を貼り付けた円筒状フィルタ13は、表面膜で表面捕集を行い、複数層の不織布などのフィルタ素材5で構成したフィルタ本体の内部への粉塵の付着、堆積を防止し、フィルタ詰まりを防止することができる。
【0050】
より詳しく説明すると、表面膜としての例えば多孔質膜は微細孔を有するので微細粒子の粉塵を捕集することができ、表面濾過の効率を向上させると共に、表面膜の多孔質膜は適正な間隔で、大きい隙間と強度を有するフィルタ本体としての不織布に支持されるので全体として適正で広い開口部を有することになり、流体の通過面積を大きくすることができるので、風量又は液量(流体量)を低下させず、しかも長寿命の円筒状フィルタ13を提供することができる。
【0051】
上記の多孔質膜としては、10μm以下の径の微細孔を有しており、例えばPTFE膜などがある。このPTFE膜はテフロン(登録商標)素材であるために粉塵の付着力が弱いので、捕集した粉塵が落下し易いものである。なお、多孔質膜としては、上記のテフロン(登録商標)素材に限らず、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースなどの他の材質からなるものであってもよい。また、具体的には、孔径がミクロンからサブミクロン(0.01μm〜10μm)である。
【0052】
上記のマイクロファイバとしては、1.0μm以下の繊維径を有し10μm以下の径の孔を持っており、例えば、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースなどのマイクロファイバの例えば不織布などのシート状の物体からなるシートであって比較的安価であり、表面処理を行うことで難燃性を付加し易いものであり、粉塵の剥離性も向上できる。また、具体的には、繊維径は0.01〜1.0μmである。
【0053】
また、不織布と表面膜との接着には、上述した不織布の複数層の接着剤と同様の接着剤が用いられ、一方、熱融着の場合も上述した不織布の複数層の熱融着と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0054】
図3を参照するに、5つの帯状のフィルタ素材5A,5B,5C,5D,5Eがスパイラル状に巻き付けられて形成した円筒状フィルタ13の一部の断面が図示されている。ここでは、最外層のフィルタ素材5Eの外表面には表面膜25が貼り付けられている。しかも、内層となる4つの帯状のフィルタ素材5A,5B,5C,5Dはそれぞれオーバラップしないように巻き付けられており、しかも、上層のフィルタ素材5が下層の隣り合うフィルタ素材5の間の隙間Gを塞ぐようにして巻き付けられている。帯状の各フィルタ素材5A,5B,5C,5Dがオーバラップして巻き付けられると、全体として凹凸のある外表面となるのであまり良くない外観となるが、図3に示されているようにオーバラップしないで巻き付けられることにより、円筒状フィルタ13の全体が良好な外観となる。
【0055】
一方、最外層のフィルタ素材5Eは外表面に表面膜25が貼り付けられているので、前記表面膜25の機能を損なわないようにするためにオーバラップ(OL)代を設けて巻き付けられている。しかし、表面膜25が設けられていない場合は、必ずしもオーバラップさせる必要はない。
【0056】
また、この場合は、表面膜25を備えたフィルタ素材5Eが最外層に1層だけ巻き付けられているが、必ずしも1層に限定されず、2層以上であっても構わないが、表面膜25が複数層になると通気性を低下させることになるので、表面膜25を1層のみとすることが望ましい。
【0057】
また、円筒状フィルタ13の厚さが必要なときは、前述したように複数の帯状のフィルタ素材5を用意するか、あるいは、前もって帯状のフィルタ素材5を積層させて所望の厚さを設けた原反を用意し、この原反を回転心棒3に巻き付けても良い。また、円筒状フィルタ13が単層の帯状のフィルタ素材5で構成する場合でも、フィルタ素材5自体の厚さを調整することで容易に変更できる。
【0058】
また、上記の円筒状フィルタ13の最外層のフィルタ素材5としての例えば不織布に、導電繊維を含有することで静電気発生を防止することができ、容易に静電対策ができる。なお、高価な導電処理を安価にするという理由で、導電繊維を含有する素材フィルタを1層のみとすることが望ましい。
【0059】
次に、他の実施の形態に係る筒状フィルタの製造方法について説明する。なお、前述した実施の形態と同様の部分は同符号を付して同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0060】
図4(A),(B)を参照するに、この実施の形態の筒状フィルタの製造方法について筒状フィルタ製造装置27を用いて説明すると、所定幅の繊維状体としての例えば不織布などの繊維状のフィルタ素材29が回転心棒3に複数層に巻き付けられながら接着または熱融着などの接合技術で接合して円筒状フィルタ31を形成し、次いでフィルタ送出装置15で前記円筒状フィルタ31を回転心棒3の片側から抜き出すものである。
【0061】
なお、円筒状フィルタ31は、複数種のフィルタ素材29が順番に回転心棒3に複数層で巻き付けられて形成されても良い。例えば、まず、1番目のフィルタ素材29が回転心棒3に複数層に巻き付けられながら接着または熱融着などの接合技術で接合され、このフィルタ素材29の供給を停止し切断する。次いで、2番目のフィルタ素材29が上記の1番目のフィルタ素材29の外側に複数層に巻き付けられながら接着または熱融着などの接合技術で接合され、このフィルタ素材29の供給を停止し切断する。次いで、3番目のフィルタ素材29が上記の2番目のフィルタ素材29の外側に複数層に巻き付けられながら接着または熱融着などの接合技術で接合され、このフィルタ素材29の供給を停止し切断するという具合である。
【0062】
フィルタ送出装置15は、前述した実施の形態と同様であり、図4(B)に示されているように、太鼓状をなす一対の送出ローラ17が前記回転心棒3に形成された円筒状フィルタ31を両側から挟み込んで、前記円筒状フィルタ31を前記回転心棒3の先端より前方へ送出せしめる方向に回転するものである。上記の一対の送出ローラ17は、前記回転心棒3へ接近、離反するように進退自在に設けられている。
【0063】
したがって、図4(A)に示されているように、フィルタ素材29がガイドローラ33を経て送出されて回転心棒3に複数層に巻き付けられる。このとき、フィルタ素材29の内面側は、図示しない接着剤スプレーから接着剤を噴射して塗布される。あるいは、図示しない加熱ヒータで熱溶融される。フィルタ素材29が所望の長さで回転心棒3に複数層に巻き付けられると、図4(B)に示されているようにカッタ35などの素材切断装置でフィルタ素材29が切断される。このとき、フィルタ素材29は図示しないガイド装置により次の円筒状フィルタ31を製造するために待機する。
【0064】
次いで、図4(B)に示されているように、すぐに、一対の送出ローラ17が前記回転心棒3に形成された円筒状フィルタ31を挟み込むように前進すると共に矢印のように回転することで、前記円筒状フィルタ31が二点鎖線で示されているように前方へ送出されて回転心棒3の片側から抜き出されることになる。その後、一対の送出ローラ17は原位置へ後退して待機する。
【0065】
次の円筒状フィルタ31は、待機しているフィルタ素材29が図示しないガイド装置で案内されて再び回転心棒3に巻き付けられることになる。その後の円筒状フィルタ31の製造工程は上述した動作と同様である。
【0066】
以上のように、フィルタ素材29を回転心棒3に複数層に巻き付けながら接合して形成された円筒状フィルタ31が、すぐにフィルタ送出装置15で回転心棒3の片側から抜き出されるので、円筒状フィルタ31の製造を殆ど中止することなく、円筒状フィルタ31を連続生産することができ、生産コストの低減となる。また、繊維状体(フィルタ素材29)が単層または複数層の所望の長さで回転心棒3に巻き付けられることで、厚さ、繊維径、密度を自由に選定できるので、弾力と強度のバランスを取った円筒状フィルタ31を製造することができる。その他の作用、効果は前述した実施の形態とほぼ同様であるので、詳しい説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施の形態で使用される筒状フィルタ製造装置の概略的な斜視図である。
【図2】(A)は図1の正面図で、(B)は(A)の矢視IIB−IIB線の断面図である。
【図3】この実施の形態の円筒状フィルタの部分的な断面図である。
【図4】(A)、(B)は、この発明の他の実施の形態で使用される筒状フィルタ製造装置の概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 筒状フィルタ製造装置
3 回転心棒(回転治具)
5,5A,5B,5C,5D,5E フィルタ素材(繊維状体)
7,7A,7B 繊維状体ガイド部材
9,9A,9B ガイドローラ
11A,11B 支持部材
13 円筒状フィルタ(筒状フィルタ)
15 フィルタ送出装置
17 送出ローラ
19 フィルタ切断装置
21 モータ
23 薄刃カッタ
25 表面膜
27 筒状フィルタ製造装置
29 フィルタ素材
31 円筒状フィルタ
33 ガイドローラ
35 カッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定長さの回転治具に少なくとも1つの繊維状体を単層又は複数層に巻き付けると共に前記繊維状体の単層の重ね代又は複数層の層間を接着または熱融着などの接合技術で固定して筒状フィルタを形成し、この形成された筒状フィルタを前記回転治具の片側から抜き出すことを特徴とする筒状フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記繊維状体を前記回転治具にスパイラル状に巻き付けることを特徴とする請求項1記載の筒状フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記繊維状体の最外層または最内層の表面に、微細孔を有した多孔質膜あるいはマイクロファイバからなる表面膜を設けることを特徴とする請求項1又は2記載の筒状フィルタの製造方法。
【請求項4】
少なくとも最外層又は最内層は、重ね代を設けてスパイラル状に巻き付けることを特徴とする請求項2又は3記載の筒状フィルタの製造方法。
【請求項5】
繊維状体を複数層巻き付けて剛性を向上させ、支持体を用いずに中空形状に形成せしめてなることを特徴とする筒状フィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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