説明

算数テスト教材

【課題】小学校の算数の学習指導において、新規学習単元での計算内容を習得するのに必要な既習の計算を児童が習得できているかどうかを評価・分析するのに有効な算数テスト教材を提供する。
【解決手段】テスト用紙の表側の紙面に、新規に習得すべき計算の手法を理解するのに必要な既習の計算種による複数の設問d〜d,e〜e,・・・が、共通する計算種ごとに、対応する設問スペースd〜gにまとめて配置されているので、新規学習単元での計算内容を理解するのに必要な既習の複数種の計算が習得できているかどうかを、児童ごとに容易に評価・分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算数の学習における児童の学習成果を評価するためのテスト教材に関するものである
【背景技術】
【0002】
小学校では、通常、各教科において、一定の学習単元の学習指導が終了するごとに行うテストとして、単元テストがあり、この単元テストは、一つの学習単元を指導した後に、児童の学習成果を評価するためのものである。また、各学年初めや、あるいは各学期初めに行うテストとしては、既習の内容をどの程度理解しているかを確認するためのテストがある。
【0003】
そして、各教科における児童の学習到達レベルの評価は、評価観点別、例えば算数の場合は、「知識・理解」「表現・処理」及び「数学的な考え方」といった評価観点にしたがって行うため、上述のようなテストでは、テスト用紙に各評価観点に対応した設問がレイアウトされたテスト教材が多く用いられる(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3085420号
【0004】
ここで、算数は“積み重ねの教科”と言われ、特に計算の学習単元の場合、既習の計算が習得できていないと、新たに学習する計算単元の内容を習得することができない。例えば4年生で新たに学習する2・3位数÷1位数の割り算の筆算について理解するには、1年生及び2年生で学習した繰り下がりのない減法の筆算(1位数−1位数、2位数−2位数など)、1年生及び2年生で学習した繰り下がりのある減法の筆算(2位数−1・2位数)、2年生で学習した乗法九九、及び3年生で学習した除法九九など、既習の複数種の計算が理解できている必要がある。
【0005】
したがって、児童に新たな計算の学習単元を指導するにあたっては、各児童について、新規学習単元での計算内容を理解するのに必要な既習の複数種の計算が習得できているかどうかを評価し、分析することが重要であるが、従来の算数テスト教材では、このような評価・分析が困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、小学校の算数の学習指導において、新規学習単元での計算内容を習得するのに必要な既習の計算を児童が習得できているかどうかを評価・分析するのに有効な算数テスト教材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る算数テスト教材は、テスト用紙の一面に、新規に習得すべき計算の手法を理解するのに必要な既習の計算種による複数の設問が、共通する計算種ごとに、対応する設問スペースにまとめて配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る算数テスト教材によれば、新規学習単元での計算内容を習得するのに必要な既習の複数種の計算が習得できているかどうかを、個々の児童ごとに容易に評価・分析することができ、あるいは新規学習単元での計算内容を習得するのに必要な既習の複数種の計算内容に対する学級全体の到達レベルを、既習の計算種ごとに把握することができるので、新規学習単元における計算内容の指導に役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、小学校4年生で新規に学習する計算の内容として3位数÷1位数の筆算の手順例を示す説明図、図2は、本発明に係る算数テスト教材の好ましい実施の形態として、小学校4年生の算数テスト教材の一例を示す説明図、図3は、図2の算数テスト教材と対応する教師用の算数テスト教材の一例を示す説明図である。
【0010】
まず、小学校4年生で新規に学習する計算単元の内容として、図1に例示された「473÷7」の筆算の手順について説明すると、まずステップAにおいて、百の位では4÷7となり、商が立たないので、ステップBにおいて、47÷7で、6を商の十の位に立てる。したがってここでは、既習の計算種である、余りのある除法九九の計算が習得されている必要がある。
【0011】
次にステップCでは、7と6を掛けて、その積42を47の下に記入する。したがってここでは、既習の計算種である乗法九九が習得されている必要がある。
【0012】
次にステップDでは、47から42を引いて、その差5を42の下に記入する。したがってここでは、既習の計算種である、繰り下がりのない引き算が習得されている必要がある。
【0013】
次にステップEにおいて、一の位の3を、前ステップDで算出した5の隣に記入して53とし、ステップFにおいて、53÷7で、7を商の一の位に立てる。したがってここでは、既習の計算種である、余りのある除法九九の計算が習得されている必要がある。
【0014】
次にステップGでは、7と7を掛けて、その積49を53の下に記入する。したがってここでは、既習の計算種である乗法九九が習得されている必要がある。
【0015】
次にステップHにおいて53から49を引いて、その差4を49の下に記入する。したがってここでは、既習の計算種である、繰り下がりのある引き算が習得されている必要がある。そして整数の商を求める割り算では、このステップで計算を終了するので、答は67余り4となる。
【0016】
図2に示される算数テスト教材は、テスト用紙の表側の紙面に、小学校4年生の児童が新規に習得すべき、上述のような3位数÷1位数あるいは2位数÷1位数の割り算の筆算を理解するのに必要な、既習の計算種に関する複数の設問が、共通する計算種ごとに、設問スペースd〜gにまとめて配置されたものである。
【0017】
詳しくは、テスト用紙における表側の紙面の上端に沿って、「4年 わり算の筆算(わる数が1けた)のもとになる問題をやってみよう」と記載され、また、その下の単元名表示欄aには、「わり算の筆算−1(2,3けた÷1けた)」との新規単元名が記載されている。すなわちこの算数テスト教材が、これから指導(習得)すべき新規単元の3位数÷1位数あるいは2位数÷1位数の割り算の筆算を、児童が習得するための必要な既習の計算ができるかどうかを確認するためのものであることが表示されている。
【0018】
横一列に並んだ単元名表示欄a、氏名記入欄b及び得点記入欄cの下側には、複数(図示の例では4つ)の設問スペースd〜gが設けられている。
【0019】
左上の設問スペースdには、6つの設問d〜dが出題されており、このうち、上段の2つの設問d,dは、1,2年生で既習した「1位数−1位数=1位数」の計算種の設問であり、中段の2つの設問d,dは、2年生で既習した「2位数−2位数=2位数」の計算種の設問であり、下段の2つの設問d,dは、2年生で既習した「2位数−2位数=何十」の計算種の設問である。すなわち、これらの設問d〜dは、繰り下がりのない引き算である点で共通する計算種のものである。
【0020】
左下の設問スペースeには、6つの設問e〜eが出題されており、このうち、上段の2つの設問e,eは、1,2年生で既習した「2位数−1位数=1・2位数」の計算種の設問であり、中段の2つの設問e,eは、2年生で既習した「2位数−2位数=2位数」の計算種の設問であり、下段の2つの設問e,eは、2年生で既習した「2位数−2位数=1位数」の計算種の設問である。すなわち、これらの設問d〜dは、繰り下がりのある引き算である点で共通する計算種のものである。
【0021】
右上の設問スペースfには、2年生で既習した乗法九九に関する9つの設問f〜fが出題されている。
【0022】
更に、右下の設問スペースgには、設問が4問出題されており、このうち、上側の2つの設問g,gは、3年生で既習した除法九九の横算で「2位数÷1位数=1位数(余りなし)」の計算種の設問であり、下側の2つの設問g,gは、3年生で既習した除法九九の横算で「2位数÷1位数=1位数(余りあり)」の計算種の設問である。すなわち、これらの設問g〜gは、2位数÷1位数=1位数の割り算である点で、共通する計算種のものである。
【0023】
また、設問スペースd〜gの下側の紙面下端スペースには、テストを受けた児童が「くり下がりのないひき算ができましたか。」「かけ算九九ができましたか。」などの問いかけに対して○×で応答する形式で、各設問スペースd〜gの内容ごとに自己評価するチェックポイント欄hが設けられている。
【0024】
なお、この算数テスト教材と対応する教師用の算数テスト教材においては、図3に示されるように、各d〜d,e〜e,・・・の解答iが、朱書きで記載されている。
【0025】
また、横一列に並んだ単元名表示欄a、氏名記入欄b及び得点記入欄cと、その下側の設問スペースd〜gとの間に、「先生方へ このプレテストは、わり算の筆算(2,3けた÷1けた)を学習するためには、どのような内容が理解されていなければならないかという観点に基づいて作成してあります。わり算の筆算(2,3けた÷1けた)を学習する前の事前の評価としてお使いください。」との教師向けメッセージjが、朱書きで記載されている。
【0026】
また、この教師用算数テスト教材では、各設問スペースd〜gに、設問の計算種を示す表記kが、朱書きで記載されている。例えば左下の設問スペースeにおける上段の2つの設問e,eには、表記kによって、この設問e,eが1,2年生で既習した2位数−1位数=1・2位数の、繰り下がりのある計算種に関する設問であることが示されている。
【0027】
また、教師用算数テスト教材の裏側の紙面(不図示)には、新規の計算単元を指導するうえで、必要な既習計算種についての詳細な解説が記載されている。このため、教師は、指導のための資料として役立てることができる。
【0028】
すなわち、この形態による算数テスト教材によれば、新規学習単元で習得すべき計算の手法(例えば図1に示される3位数÷1位数の割り算の筆算)を理解するのに必要な、既習の複数の計算種に関する設問d〜d,e〜e,・・・が、前記既習の計算種ごとに、同一紙面上の設問スペースd〜gにレイアウトされているため、個々の児童が、新規学習単元で習得すべき計算の手法を理解するのに必要な既習の複数種の計算が習得できているかどうかを、容易に評価・分析することができる。
【0029】
またこのため、例えば繰り下がりのあるひき算ができない児童について、繰り下がりのあるひき算の再指導を行うなど、個別指導に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】小学校4年生で新規に学習する計算の内容として、3位数÷1位数の筆算の手順例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る算数テスト教材の好ましい実施の形態として、小学校4年生の算数テスト教材の一例を示す説明図である。
【図3】図2の算数テスト教材と対応する教師用の算数テスト教材の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
a 単元名表示欄
b 氏名記入欄
c 得点記入欄
d〜g 設問スペース
〜d,e〜e,f〜f,g〜g 設問
h チェックポイント欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト用紙の一面に、新規に習得すべき計算の手法を理解するのに必要な既習の計算種による複数の設問が、共通する計算種ごとに、対応する設問スペースにまとめて配置されたことを特徴とする算数テスト教材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−276329(P2006−276329A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93642(P2005−93642)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(391011939)株式会社日本標準 (5)