説明

管を封鎖するための電気外科手術用器具

【課題】縫合糸や外科手術用クリップを必要とすることなく組織を癒合し得る電気外科手術用器具を提供する。この器具は、対向可能なあごに配置された二つの封鎖表面間に電気外科手術用電流を伝導する。この電気外科手術用電流は、あごの間にクランプされた組織を通過し、コラーゲンを再成形させて、組織を癒合させ、永久的封鎖部を形成する。
【解決手段】組織を封鎖するための電気外科手術用器具10は、内側部材11および外側クランプ用部材12、外側クランプ用部材の封鎖表面に操作可能に接続される押棒32、押棒32の遠位への動きを制限するために内側部材11の近位端の近くに配置されて対向する封鎖表面の間の間隔を維持する止め36、および封鎖表面にエネルギーを与えるための手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国仮出願第60/416,382号(表題「ELECTROSURGICAL INSTRUMENT FOR SEALING VESSELS」、Johnsonらによって2002年、10月4日に出願された)に対する優先権および利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヒトもしくは動物において、管を永久的に閉鎖するための電気外科手術用器具に関し、より詳細には、圧力と電気外科手術用電流との組合せを適用することによって管および血管を封鎖し、そして封鎖プロセスの間、血管の封鎖表面の間で適切な間隔距離を維持する、双極電気外科手術用器具に関する。
【0003】
止血鉗子もしくは何らかの同様のプライア様の道具は、外科手術手技において組織をつかみ、切開し、そしてクランプするために一般的に使用される。止血鉗子は、そのあご(jaw)の間の機械的動作を利用して、血管を切断することなく血管を締め付ける。止血鉗子はまた、代表的に、ハンドルの間に連結ラチェット(interlocking ratchet)を有し、これによって、このデバイスは、所定の位置でクランプされ、固定され得る。
【0004】
多くの止血鉗子が、代表的な開放性外科手術手技(open−surgical procedure)に使用される。一旦血管組織を止血鉗子でクランプした場合、外科医は、その組織の周りに縫合糸を結び、止血鉗子を外す前にその組織を永久的に閉鎖するのが一般的である。いくつかの止血鉗子は、外科医がクランプされた組織の各部位の周りに縫合糸を結ぶ機会を有するまで、術野内に残され得る。
【0005】
小血管は、電気外科手術用器具を用いて、縫合糸を必要とすることなく閉鎖されている。例えば、神経外科医は、双極器具を用いて、直径2mmよりも小さい脳内の血管を凝固させる。これらの双極器具は、代表的に、組織をつかむために互いのほうへと曲げられ得る2つのアームを有する、ピンセットのようなデバイスである。しかし、これらのデバイスが、直径が約2mmよりも大きい血管を封鎖し得ないことが見出された。縫合糸を必要とすることなく、より大きな血管および血管組織の束を封鎖するための簡単な方法が、長い間必要とされている。
【0006】
小血管を凝固させるプロセスは、血管封鎖と基本的に異なると考えられる。凝固は、組織を乾燥させるプロセスとして定義され、ここでは、組織細胞は、破裂させられ、乾燥される。血管封鎖は、組織中のコラーゲンを液化し、これによってそのコラーゲンが架橋しそして癒合した塊に再成形されるプロセスとして定義される。したがって、小血管の凝固は、それらを永久的に閉鎖するのに十分である。より大きな血管は、封鎖されて、永久的閉鎖を確実にする必要がある。
【0007】
多くの双極電気外科手術用鉗子およびクランプが、当該分野で公知である。血管封鎖のための双極電気外科手術用出力曲線図の例は、米国特許第5,827,271号に開示され、そして参考として本明細書によって援用され、本開示の一部とされる。
【0008】
米国特許第5,776,130号は、血管を封鎖するための別の外科手術器具を開示し、そして参考として本明細書によって援用され、本開示の一部とされる。米国特許第371,664号は、あごに配置された陽電極および陰電極を備える一対の電気鉗子を開示する。米国特許第728,883号は、電熱器具を開示し、この器具では、器具のあごの一つを加熱するために電気が使用される。米国特許第1,586,645号は、組織を凝固させるための双極器具を開示する。米国特許第2,002,594号は、組織を処置するための双極腹腔鏡器具を開示し、この器具によって、組織の凝固および切断が、同じ器具を用いて実行され得る。米国特許第2,176,479号は、金属粒子を発見し、除去するための器具を開示する。この器具のあごは、その間に導電性材料が配置された場合に電気回路を完成するように設計される。絶縁された軸および絶縁されたラチェットは、短絡を防止するために使用される。米国特許第3,651,811号は、組織を切断および凝固するための双極電気外科手術用器具を開示する。米国特許第4,005,714号は、動作用スリーブによって開閉するあごを備えた双極凝固用鉗子を開示する。米国特許第4,370,980号および同第5,116,332号は、電気焼灼止血鉗子を開示し、この鉗子では、止血用クランプ機能および電気焼灼機能が、一つの器具で達成され得る。単極電気外科手術用のデザインが示され、記載される。
【0009】
米国特許第4,552,143号は、一群の、電気焼灼止血鉗子を備える着脱可能な切換式電気焼灼器具(removable switch electrocautery instrument)を開示する。単極電気外科手術用のデザインが示され、記載される。米国特許第5,026,370号は、組込み型電気切換機構(enclosed electrical switching mechanism)を有する電気焼灼鉗子器具を開示する。単極電気外科手術用のデザインが示され、記載される。米国特許第5,443,463号は、複数の電極を有する凝固用鉗子を開示する。米国特許第5,484,436号は、組織を同時に切断および凝固するための双極電気外科手術用器具を開示する。露国特許第401,367号は、作動あごを平行な様式で合わせる結合部を備える双極器具を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
公知の限りでは、前述の開示は、器具内の少なくとも一つの止めによって封鎖表面間の分離距離を確立し得、そしてラチェットによって制御される押棒(push−rod)機構を介して、外科手術手技の間に管および血管組織を封鎖するのに十分な一定の圧力を都合よく適用し得、そしてこの分離距離が、器具の遠位端よりもむしろ、器具の近位端で制御される、電気外科手術用器具のデザインを提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は以下を特徴とする。
(項目1)組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、該電気外科手術用器具は、以下:
内側部材および外側クランプ用部材であって、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、その近位端の近くに環状ハンドルを備え、該内側部材および該外側クランプ用部材の各々は、その遠位端に近接する封鎖表面を備え、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、該封鎖表面が互いに対して間隔をあけられた第一の位置から、該封鎖表面が、それらの間の組織をつかむために互いに対して対向する関係で配置される第二の位置へ移動可能である、内側部材および外側クランプ用部材;
該外側クランプ用部材に、近位端で、操作可能に接続され、かつ該外側クランプ用部材の該封鎖表面に、遠位端で、操作可能に接続される押棒であって、該押棒は、該外側クランプ用部材の該封鎖表面を該内側部材の該封鎖表面に対して回転させるために移動可能である、押棒;
止めであって、該止めは、該押棒の遠位への動きを制限するために該内側部材の該近位端の近くに配置されて、該封鎖表面が該第二の位置に配置される場合に、該対向する封鎖表面の間の間隔を維持する、止め;および、
該封鎖表面にエネルギーを与えるための手段であって、該手段によって、該封鎖表面が該第二の位置に配置されて組織封鎖部を形成する場合、それらの間に保持された組織を通じて電気外科手術用エネルギーが伝達される、手段、
を備える、電気外科手術用器具。
(項目2)項目1に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記内側部材が柄部分を備え、そして前記外側クランプ用部材が柄部分を備え、該柄部分が、組織をクランプする間、機械的に有利なばね荷重を提供する、電気外科手術用器具。
(項目3)項目1または2に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記押棒が、回転性アームに操作可能に接続され、次いで該回転性アームが、前記外側クランプ用部材に操作可能に接続されて、該外側クランプ用部材の動きが、該回転性アームを回転させて該押棒を動かす、電気外科手術用器具。
(項目4)項目1〜3のいずれか1項に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記止めが、前記封鎖表面の間の分離距離を約0.03mm〜約0.15mmの範囲に維持する、電気外科手術用器具。
(項目5)項目1〜4のいずれか1項に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記止めが、前記封鎖表面の間の前記分離距離を変動させるため、選択的に配置可能である、電気外科手術用器具。
(項目6)項目1〜5のいずれか1項に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記止めが、前記封鎖表面の間の前記分離距離を変動させるため、選択的に再配置可能である、電気外科手術用器具。
(項目7)項目1〜6のいずれか1項に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、組織を該組織の封鎖部の形成後に切断するために、選択的に作動可能である切断機構をさらに備える、電気外科手術用器具。
(項目8)項目1〜7のいずれか1項に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記内側部材および前記外側クランプ用部材の各々が、離れた位置において、約3Kg/cm〜約16Kg/cmの範囲で閉鎖力を保持するように協働する、接合するラチェットを備える、電気外科手術用器具。
(項目9)組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、該電気外科手術用器具は、以下:
内側部材および外側クランプ用部材であって、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、その近位端の近くに環状ハンドルを備え、該内側部材および該外側クランプ用部材の各々は、その遠位端に近接する封鎖表面を備え、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、該封鎖表面が互いに対して間隔をあけられた第一の位置から、該封鎖表面が、それらの間の組織をつかむために互いに対して対向する関係で配置される第二の位置へ移動するために、オープンロックボックス内で回転可能であり、該オープンロックボックスは、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの一方の上に配置された底面を備え、該底面は、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちのもう一方の上に配置された対応する面を嵌め込み式に受ける、内側部材および外側クランプ用部材;
該外側クランプ用部材に、近位端で、操作可能に接続され、かつ該外側クランプ用部材の該封鎖表面に、遠位端で、操作可能に接続される押棒であって、該押棒は、該外側クランプ用部材の該封鎖表面を該内側部材の該封鎖表面に対して回転させるために移動可能である、押棒;
止めであって、該止めは、該押棒の遠位への動きを制限するために該内側部材の該近位端の近くに配置されて、該封鎖表面が該第二の位置に配置される場合に、該対向する封鎖表面の間の間隔を維持する、止め;および、
該封鎖表面にエネルギーを与える手段であって、該手段によって、該封鎖表面が該第二の位置に配置されて組織封鎖部を形成する場合、それらの間に保持された組織を通じて電気外科手術用エネルギーが伝達される、手段、
を備える、電気外科手術用器具。
(項目10)項目9に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、該電気外科手術用器具は、回転軸をさらに備え、該回転軸は、その周りでの軸を中心とし得る回転のために前記内側部材と前記外側クランプ用部材とを連結するため、前記オープンロックボックスの前記底面を貫いて配置される、電気外科手術用器具。
本発明の一般的な目的は、縫合糸や外科手術用クリップを必要とすることなく組織を癒合し得る電気外科手術用器具を提供することである。この器具は、対向可能なあごに配置された二つの封鎖表面間に電気外科手術用電流を伝導する。この電気外科手術用電流は、あごの間にクランプされた組織を通過し、コラーゲンを再成形させて、組織を癒合させ、永久的封鎖部を形成する。
【0012】
本発明の一つの利点は、血管が速やかに癒合され得、血液または他の流体の通過に対して永久的に封鎖され得ることである。このことによって、この器具は、手術室時間を減少させ、標的組織への接近を改善させ、そして外科手術手技の効率を上昇させる。
【0013】
別の利点は、血管を永久的に封鎖するために縫合糸もステープルも必要とされないこと、および患者の体内に異物が残らないことである。
【0014】
なお別の利点は、この器具が適用されたときに管が封鎖され得、そしてこの器具が術野から除去され得ることである。このことは、術野を、外科手術部位への外科医の接近を妨げ得る外来の道具がない状態に保つ。
【0015】
なお別の利点は、この器具によって、管(単数または複数)に適量の圧力が適用され得、これによって、外科手術結果の成功の可能性が上がることである。
【0016】
本発明の電気外科手術用器具は、好ましくは双極であり、そして最小侵襲性外科手術手技のために設計される。この器具は、固定内側部材およびオープンロックボックス(open lockbox)によってこの内側部材に接続された可動部を有する外側クランプ用部材、連結ラチェット歯、ならびに対向可能なあご部材に通じる伝導経路を備える電気端末を備える。この内側部材および外側クランプ用部材の各々は、この器具の近位端に近接する環状ハンドルを有し、そして回転性あご部材は、この器具の遠位端に近接する、対向可能な封鎖表面を有する。この近位端は、外科医によって保持および制御され、一方遠位端は、組織を操作するために使用される。
【0017】
オープンロックボックスは、内側部材と外側クランプ用部材とを連結し、この外側クランプ用部の押棒機構を介して押棒回転運動を提供すること、およびこの外側クランプ用部材のあご部材の円弧状の動きを可能にする。このオープンロックボックスは、一般的に水平支柱(lateral support)を提供するように設計され、これによって、両方の封鎖表面が、およそ同じ平面に整列する。この封鎖表面は、好ましくは、封鎖用あごが互いに閉じられている場合(すなわち、押棒機構の側方に動く押棒が、封鎖用あごの一つを対向する封鎖用あごの方向に押すように遠位に動く場合)、互いに対向して並べられ、管、組織などを癒合させる。
【0018】
押棒が遠位に移動する場合、この押棒は、最終的に、内側部材の近位端上にある止めまたは突出部に接し、この押棒がそれ以上進められないようにする。このことが起こる場合、可動封鎖表面および固定封鎖表面は、互いに接触することなく互いに極めて近接し、それによって短絡を防ぐ。好ましくは、この止めは、この封鎖表面の間に、少なくとも約0.03mm〜約0.15mmの最小分離距離を保つ。
【0019】
水平支柱を提供するため、オープンロックボックスは、回転軸ピン、および少なくとも一つのフランジまたは接続部材を備え、このフランジまたは接続部材は、内側部材を越えて延び、外側クランプ用部材に接続される。この接続部材はさらに、側方に動く押棒を、押棒機構の回転支持部材に接続する。
【0020】
この器具は、内側部材および外側クランプ用部材の柄部分の寸法を調節することによって、適当な閉鎖力を提供するように変更される。この柄部分は、それらの各々のラチェットスタブ(stab)およびオープンロックボックスと接する、内側部材および外側クランプ用部材の一部分として規定される。使用中、外科医は、環状ハンドルを握って、封鎖表面の間で組織を圧迫する。内側部材および外側クランプ用部材のこの柄部分は、片持ちばねの様式で撓み、そしてラチェットによって撓んだ位置にロックされて、一定の力を保持し得る。器具の封鎖表面に対する適切な閉鎖力の範囲に対応するラチェット止めの範囲を提供することは、本発明の目的の一つである。
【0021】
ラチェット歯は、内側部材および外側クランプ用部材上で、それらの各々の環状ハンドルに近接して配置される。このラチェット歯は、一般的に、柄からのばね力に対抗して連結されるように設計される。したがって、このばね力は、回転軸を通じて互いに対してこの封鎖表面を保持するように伝達される。封鎖されるべき組織の型および厚さに依存して、所定の範囲の閉鎖力が器具に必要とされる。したがって、いくつかのラチェット止めを有し、各々が、封鎖表面に対して、徐々により大きな力を提供することが、望ましい。
【0022】
電気コネクタは、片方もしくは両方の環状ハンドル上、柄上、ラチェット上、またはこの器具の他の部分上に配置される。この電気コネクタは、環状ハンドルと一体化して形成された金属柱であり得る。電気外科手術用発電器からの双極電気ケーブルは、電気コネクタにおいてこの器具に接続される。内側部材および外側クランプ用部材の各々における電気伝導経路は、電気外科手術用電流を封鎖表面に伝導する。電気伝導経路は、ステンレス鋼製内側部材および外側クランプ用部材に沿い得る。電気絶縁コーティングは、好ましくは内側部材および外側クランプ用部材のうちの少なくとも1つの表面に結合されて、外科医および患者を不注意の電気熱傷から保護する。器具が単極であり得ることも、また考えられる。この器具では、封鎖表面の片方のみにエネルギーを与えるため、内側部材または外側クランプ用部材のいずれかが電気伝導経路を備える。
【0023】
以下の用語は、本明細書中において、以下のように定義される。器具の適用力とは、あごの間の組織に適用される力全体である。あごは、この器具の遠位端の部材である。封鎖表面とは、組織に直接接触するあごの内側表面の特徴である。柄とは、ロックボックスとラチェットとの間の、内側部材および外側クランプ用部材の部分である。環状ハンドルは、この器具の近位端に近接する、内側部材および外側クランプ用部材の部品であり、外科医によって握られる。ロックボックスとは、外側クランプ用部材が内側部材に対して回転することを可能にする構造体であり、回転軸ピンおよび他の協働する表面を備える。内側部材は、固定した状態のままであるか、または一般的にロックボックスの内部に捕らえられる部材である。外側クランプ用部材は、可動部分を備え、そしてロックボックスの外部上にある。あご圧力は、適用力を封鎖表面の全面積で割ることで計算される。組織圧力は、適用力をあごの間に配置された組織面積で割ることで計算される。
【0024】
管癒合(本明細書において、管封鎖とも呼ばれる)のための器具は、封鎖あご間における適量の圧力によって組織を圧迫すべきである、ということが実験を通じて見出された。この圧力は、好ましくは、あらゆる血液運版管腔を閉鎖するのに十分である。この圧力は、好ましくは、組織がこの封鎖あごの中で分断されないように、十分に低い。
【0025】
この器具のあごは、手技の間、短絡すべきでない。電気外科手術用電流が適用される場合、組織は、代表的に、厚みを減少させて、封鎖表面を互いにより近くに移動させることを可能にする。この厚みの減少は、あごを互いに直接接触させる結果となるべきではない。さもないと、短絡が、電気外科手術用電流に、組織の周りに優先的な経路を与え、そして封鎖不良という結果になり得る。あごを互いに直接接触させないようにするため、少なくとも一つの止めが器具の近位に提供されて、あごの封鎖表面間の間隔を確立する。
【0026】
より詳細には、本開示は、組織を封鎖するための、内側部材および外側クランプ用部材を有する電気外科手術用器具を含み、この内側部材および外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、それらの近位端に近接する環状ハンドルを備える。内側部材および外側クランプ用部材の各々は、それらの遠位端に近接する封鎖表面を備える。内側部材および外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、封鎖表面が互いに対して間隔をあけられた第一の位置から、この封鎖表面が、それらの間の組織をつかむために互いに対して対向する関係で配置される第二の位置へ移動可能である。
【0027】
好ましくは、棒(rod)が、外側クランプ用部材に、近位端で、操作可能に接続され、そしてこの外側クランプ用部材の封鎖表面に、遠位端で、操作可能に接続される。この棒は、外側クランプ用部材の封鎖表面を内側部材の封鎖表面に対して回転させるために、移動可能である。有利には、この棒は、回転性アームに操作可能に接続され、続いてこの回転性アームが、外側クランプ用部材に操作可能に接続され、それによって、外側クランプ用部材の動きがこの回転性アームを回転させて、この棒を動かす。
【0028】
有利には、止めが備えられ、押棒の遠位への動きを制限するために内側部材の近位端の近くに配置され、そして封鎖表面が第二の位置に配置される場合に、対向する封鎖表面の間の間隔を維持する。有利には、この止め部材は、外側クランプ用部材に備えられ得る。電気外科手術用器具の封鎖表面はまた、電気外科手術用エネルギーの供給源に接続可能であり、それによって、この電気外科手術用エネルギーは、封鎖表面が第二の位置に配置される場合、それらの間に保持された組織を通して伝達され、組織封鎖部を形成し得る。好ましくは、この止めは、封鎖表面の間の分離距離を約0.03mm〜約0.15mmの範囲に維持する。一つの特に有利な実施形態において、止め部材は、封鎖表面の間の分離距離を変動させるため、選択的に配置可能である。別の実施形態において、この止め部材は、封鎖表面の間の分離距離を変動させるため、選択的に再配置可能である。
【0029】
有利には、内側部材は柄部分を備え、そして外側クランプ用部材は柄部分を備え、これらは、組織をクランプする間、機械的に有利なばね荷重を提供するように協働する。好ましくは、内側部材および外側クランプ用部材の各々は、離れた位置において約3Kg/cm〜約16Kg/cmの範囲で、閉鎖力を保持するように協働する、接合するラチェット(interfacing ratchet)を備える。
【0030】
別の特に有利な実施形態において、この器具は、組織の封鎖部の形成後に組織を切断するように選択的に作動可能である切断機構を備える。
【0031】
本開示による別の実施形態に従って、電気外科手術用器具は、封鎖表面が互いに対して間隔をあけられた第一の位置から、この封鎖表面が、それらの間の組織をつかむために互いに対して対向する関係で配置される第二の位置へ移動するために、オープンロックボックスの中で回転可能である内側部材および外側クランプ用部材を備える。好ましくは、オープンロックボックスは、内側部材および外側クランプ用部材のうちの一方の上に配置された底面を備え、この底面は、内側部材および外側クランプ用部材のうちのもう一方の上に配置された対応する面を嵌め込み式に受ける。回転軸は、好ましくは、オープンロックボックスのこの底面を貫いて配置され、これによって、その周りでの軸を中心とし得る回転のために前記内側部材と前記外側クランプ用部材とを連結する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、好ましい実施形態に従う、あごが離れた状態の、管癒合のための電気外科手術用器具の透視図であり、一部分解されて示される。
【図2】図2は、図1の電気外科手術用器具の側面図である。
【図3】図3は、図2において丸で囲まれて3と標識された領域の拡大図であり、電気外科手術用器具の遠位端の止めを示す。
【図4】図4は、図2において丸で囲まれて4と標識された領域の拡大図であり、押棒機構の近位端を示す。
【図5】図5は、別の好ましい実施形態に従う、管癒合のための電気外科手術用器具の透視図である。この器具は、切断機構を有する。
【図6】図6は、図5の電気外科手術用器具の側面図である。この図では、切断機構の切断作動器が、組織を切断するために作動されている。
【図7】図7は、別の好ましい実施形態に従う、管癒合のための電気外科手術用器具の側面図であり、電気外科手術用器具の近位端にプラグを利用する。
【図8】図8は、別の好ましい実施形態に従う、管癒合のための電気外科手術用器具の側面図であり、電気外科手術用器具の近位端にネジ様機構を利用する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の電気外科手術用器具のさらなる特徴は、以下の、図面とともに示される本装置の詳細な説明から、当業者にとってより容易に明らかとなる。
【0034】
本発明の電気外科手術用器具の種々の実施形態は、本明細書中において、以下に図面を参照して記載される。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、縫合糸も外科手術用クリップも必要とすることなく、組織を癒合し得る電気外科手術用器具を提供する。図1〜4を参照して、器具10は、固定内側部材11および外側クランプ用部材12を有する。内側部材11および外側クランプ用部材12は、フランジ33との間に間隔を有するオープンロックボックス13を通して接続される。用語「内側」および「外側」は、オープンロックボックス13におけるそれらのそれぞれの位置に従って、内側部材11および外側クランプ用部材12、ならびにそれらの部品を区別するために使用される。内側部材11は、一般的に、オープンロックボックス13の内側表面内に取付けられ、そしてフランジ33によって捕らえられる。外側クランプ用部材12は、一般的に、オープンロックボックス13の外側表面を形成する。
【0035】
内側部材11は、内側柄14、内側あご16、細長部材16a、および内側環状ハンドル20を有する。好ましい実施形態において、内側柄14、内側あご16、細長部材16a、および内側環状ハンドル20は、一体である。同様に、外側クランプ用部材12は、外側柄15、外側あご17、外側環状ハンドル21、および外側あご17を外側柄15に対して操作可能に接続する押棒機構30を有する。環状ハンドル20および21は、外科医が器具10を保持し、操作するために設計される。あご16および17は、対向する封鎖表面18および19の間に組織をつかむために設計される。あご16は固定しており、一方あご17は可動である。
【0036】
柄14および15の各々は、それぞれのラチェットスタブ24または25を有する。ラチェット歯26および27は、内側部材11および外側クランプ用部材12を所定の位置に保持する様式で連結するために設計される。柄14および15は、あごが外科医によって力をかけられて合わされる場合、片持ちばねの様式で撓む。柄14および15の撓みは、ラチェット歯26および27を連結することによって対抗され得る、ばねの復元力を生み出す。
【0037】
器具10は、ラチェット歯26および27が連結されている場合、短絡を生じない。これは、電気絶縁材料の適切な選択および配置によって実現される。好ましい実施形態において、ラチェット歯26および27は、ラチェットスタブ24および25内に圧着されるポリマー状材料からなる。ラチェットネジ28は、好ましい実施形態において、ラチェット歯26および27をラチェットスタブ24および25内に固定するために使用される(図1を参照のこと)。製造中、ラチェット歯26および27は、ブランクがラチェットスタブ24および25内に圧着された後、このブランクから形成され得る。
【0038】
オープンロックボックス13は、内側部材11および外側クランプ用部材12に対して回転軸継ぎ手を提供する機能を有する。加えて、フランジ33は、水平支持体を提供し、あご16および17の整列を維持することを助ける。クローズドロックボックスのデザインは、代表的に、標準的な止血鉗子のデザインで使用され、内側部材は、外側部材中のスロットを通して完全に捕らえられる。本発明のオープンロックボックス13は、フランジ33の間に間隔を有し、これは、クローズドロックボックスのデザインとは異なる。オープンロックボックス13におけるこの間隔は、電気絶縁された回転軸を設置するために都合よいアクセス部を提供する。
【0039】
本発明の電気絶縁された回転軸は、内側部材11および外側クランプ用部材12を接続し、内側部材11を外側クランプ用部材12に対して静止した状態に保つための標準的なピン29を備える。ピン29は、外側クランプ用部材12の押棒機構30を外側柄15の所定の部分にさらに接続する。押棒機構30は、ピン29によって外側柄15に保持され、そして玉継ぎ手配置(ball−and−socket arrangement)34によって押棒の近位端35で押棒32に保持された、回転性アーム31を備える。ピン29および回転性アーム31は、内側部材11と外側クランプ用部材12との間の短絡を防止する電気絶縁材料からなるか、または内側部材11と外側クランプ用部材12との間の短絡を防止する電気絶縁材料でコーティングされる。外側あご17の近位部は、ピン41によって押棒32の遠位部に接続され、ピン42によって内側部材11に接続される(図3を参照のこと)。外側あご17の近位部およびピン42は、電気絶縁材料からなるか、または電気絶縁材料でコーティングされる。
【0040】
操作の間、押棒32が遠位に動かされる場合、外側あご17は、ピン42に対して反時計方向に回転し、そして同時にピン41を介して押棒32によって遠位に押される。押棒32は、最終的に、内側部材11上の止め、または突出部に接し、この押棒32がそれ以上進められないようにする。このことが起こる場合、外側あご17の可動封鎖表面18および固定封鎖表面19は、互いに接触することなく互いに極めて近接し、それによって短絡を防ぐ。好ましくは、止め36は、封鎖表面18と19との間に、少なくとも約0.03mm〜約0.15mmの最小分離距離を維持する。代替的実施形態において、内側部材11は、止め36を使用するよりもむしろ、押棒32がそれに接し得るように寸法を決められて、封鎖表面18と19との間に、少なくとも約0.03mm〜約0.15mmの最小分離距離を維持する。
【0041】
内側部材11および外側クランプ用部材12は、双極電気外科手術用発電器100のそれぞれの極に接続される。電気コネクタ22および23は、環状ハンドル20および21上に配置されて、都合がよい接点を提供する。内側部材11および外側クランプ用部材12の一部は、ステンレス鋼のような導電材料から形成される。内側部材11および外側クランプ用部材12のうちの少なくとも一つの露出面(コネクタ22および23、そして封鎖表面18および19を除く)は、好ましくは、絶縁材料によってスプレーコーティングされる。
【0042】
双極電気外科手術用電流の特徴は、電気外科手術用発電器のデザインによって決定される。好ましい実施形態において、この発電器は、最大振幅電圧が130ボルトを超えない出力を有する。これは、より高い電圧が火花を発生し得、組織の局所的火傷を引起し、組織溶着の失敗をもたらし得るためである。好ましい実施形態は、少なくとも2Amps RMSの高周波出力電流を発生し得る発電器を有する。高い電流は重要である。なぜなら、高い電流はコラーゲンを融解させるために十分に組織を加熱するからである。より低い電流は、低破壊力により、しばしば弱い組織溶着を引き起こす。
【0043】
手術中、器具10は、封鎖表面18と19との間の組織をつかむために使用される。外科医は、環状ハンドル20および21を握って合わせ、圧力が組織に適用されるようにする。ラチェット歯26および27は、組織の型および組織の厚さに依存して、適切なラチェットの設定で連結される。双極電気外科手術用電流は、器具10および組織を通じて適用され、その組織を癒合して一つの塊にする。この器具が単極であり得ることもまた考えられ、この器具では、内側部材11または外側クランプ用部材12のいずれかが、封鎖表面18および19のうちの一方のみにエネルギーを与えるための電気伝導経路を備える。
【0044】
あご16および17は、負荷下での曲がりに対抗する構造および断面を有する。したがって、技術的分析の上では、柄部分14および15は、一旦封鎖表面18および19が対向して配置された場合、片持ち梁式に支えられる梁として働く。この理想化された片持ち梁の長さは、押棒機構30からそれぞれのラチェット24または25の位置まで延びる。各柄を、所定のばね定数を有する片持ちばねとして成形することが可能である。各ラチェットの位置は、片持ちばねの復元力の作用に対抗して、特定の閉鎖力をあご16および17に伝えるように設計される。
【0045】
ばね定数は、一般的に、柄の材料のヤング率、柄の慣性モーメント、および柄部分14および15の長さの関数である。器具10のあご16および17が互いに近接する場合、各柄14および15は、片持ち梁式に支えられる梁に似ている。各柄14および15の撓みが、その応力−歪み曲線の直線範囲内にとどまることが、適正に仮定される。このような梁の挙動は、材料工学者に周知である。大きなばね定数は、封鎖表面18と19との間に大きな閉鎖力をもたらす。同様に、小さなばね定数は、封鎖表面18と19との間に小さな閉鎖力をもたらす。適切なばね定数の選択は、柄14または15の長さ、およびラチェット止め26と27との間の距離に依存する。
【0046】
実験結果の研究は、封鎖表面18および19によって組織に与えられる圧力の大きさが適切な外科手術結果を保証することに重要であることを示唆する。約3kg/cm〜約16kg/cmの動作範囲内の組織圧力が動脈および血管束を封鎖するために有効であることが示された。柄部分14および15のばね定数をラチェット歯26および27の配置とともに調整することによって、連続するかまたは別個のラチェットの位置が上記の動作範囲内の圧力をもたらすことが、所望される。一つの実施形態において、連続するラチェット位置は2mm離れている。
【0047】
組織に対する圧力は、いくつかの方法で記載され得る。技術者は、組織に与えられる圧力の量が封鎖表面に接触する組織の表面積に依存することを認識する。一つの実施形態において、各封鎖表面18の幅は、2〜5mmの範囲であり、好ましくは、4mm幅である。一方、各封鎖表面18および19の長さは、好ましくは、5〜20mmの範囲内である。実験を通して、少なくとも一つの連結ラチェット位置が、好ましくは、封鎖表面の幅1mmあたりおよそ400gとおよそ650gとの間の閉鎖力を保持することが見出された。例えば、封鎖表面18および19の幅が4mmである場合、閉鎖力は、好ましくは1600g〜2600gの範囲である。一つの実施形態において、閉鎖力は、幅1mmあたり525gであり、4mm幅の封鎖表面18および19に対して、2100gの閉鎖力をもたらす。
【0048】
好ましい実施形態では、絶縁材料から作られた止め37は器具10の外側あご17の近位端に配置されて、突出部36が、図3に示されるように、封鎖表面18と19との間に少なくとも約0.03mm〜約0.15mmの分離距離を維持することを助ける。止め37は、封鎖表面18と19との間の短絡の可能性を減少させる。止め37が細長部材16aの遠位端に配置され得ることも考えられる。理解され得るように、止め36は単独で働き得、封鎖中、対向する封鎖表面18と19との間に適切な間隔距離を維持する。
【0049】
双極電気外科手術用器具を使用する方法は、以下の工程を包含する。外科医は、器具10の環状ハンドル20および21をつかみ、あご16および17を操作する。管または血管組織は、対向し得る封鎖表面18と19との間で圧縮される。対向し得る封鎖表面18および19は、好ましくはオープンロックボックスの整列化動作に起因してか、または特定の実施形態においては肩ピン34の整列化動作に起因して、ともに対向して配置される。外科医はさらに、柄部分14および15を撓めて、ラチェット歯26と27とをかみ合わせる。このラチェット歯26と27とのかみ合わせは、柄部分14および15をそれらの撓んだ位置に保持して、あご16および17に閉鎖力として伝えられる一定のばね力を提供する。電気外科手術用発電器100は、環状ハンドル20および21上のコネクタ22および23を通じて器具10に対して接続される。電気的スイッチは、この発電器と器具10との間の回路を閉鎖するために使用される。このスイッチは、一連の電気的もしくは電気機械的パラメータを満たすことに基づいて、フットスイッチ、ハンドスイッチ、または自動スイッチであり得る。電気外科手術用電流は、内側部材11および外側クランプ用部材12の各々上で、それらのそれぞれの電気コネクタ22もしくは23と、それらのそれぞれの封鎖表面18もしくは19との間で、電気伝導経路を通って流れる。電気絶縁コーティングは、あご16および17の外側表面を含め、内側部材11および外側クランプ用部材12を実質的に覆う。
【0050】
図5を参照すると、別の好ましい実施形態による管癒合のための電気外科手術用器具の透視図が示され、ここで、同様の参照数字は、上記の実施形態の部品と同一または同様の部品を示す。図5によって示された電気外科手術用器具の実施形態は、可動性切断作動器52を有する切断機構50を備える。この切断作動器52は、第一のピン54を介して内側部材11に接続され、そして第二のピン60を介して、遠位切刃58を有する棒56に接続される。
【0051】
切断作動器52は、図6に示されるように、第一のピン54に対して反時計方向に回転し、封鎖表面18と19との間で棒56を遠位へ押し、その間にクランプされた組織を切断する。切断手技の後、切断作動器52は、時計方向に回転して棒56を近位へと引く。棒56および遠位の切刃58は、好ましくは、絶縁材料でコートされた一片の金属から形成され、内側部材11と外側クランプ用部材12との間、および封鎖表面18と19との間の短絡の発生を防止する。
【0052】
遠位の切刃58を加熱して、この切刃58を介して組織へ熱を適用すること(抵抗加熱)のみによって組織を切断するためかまたは、組織への熱の適用と切刃58による機械的な組織切断との両方によって組織を切断するため、棒56は、それを電気外科手術用発電器100または別のRF供給源へと接続することによって熱線化され得る。
【0053】
遠位の切刃58は、実質的に鈍であり、切断を増強するために鋸状の切刃を有し得る。さらに、切断機構50は、封鎖面に沿ってかまたは二つの封鎖部の間で組織を切断するのに十分な所定の力で、切刃58を速やかに組織に通すばね様作動器(示されない)を備え得る。
【0054】
本開示の電気外科手術用器具はまた、あご16および17のうちの一つのうちの、一つの溝の中に埋め込まれた弓状カッターを有する、切断機構を有し得る。この弓状カッターは、回転によって組織を切断し得る。カッターが組織を封鎖部に沿って切断できるようにするため、外科医は、組織を封鎖して封鎖部を形成し、次いでこのカッターが封鎖部に沿って切断するように、異なる位置で組織を再度つかまなければならないと仮定される。このカッターはまた、長軸方向に成形され得、あご16および17のうちの一つの中央部分内に埋め込まれ得る。この中央部分は、封鎖部に沿って整列する。したがって、外科医は、組織を再度つかむ必要なしに、カッターを伸ばすことよって封鎖部に沿って組織を切断し得る。
【0055】
図7は、別の好ましい実施形態による管癒合のための電気外科手術用器具の側面図を図示し、これは、電気外科手術用器具の近位端に異なる大きさのプラグ70を利用して、その遠位端であご16と17との間の分離距離を制御する。外科医は、異なる大きさのプラグ70の一つを選択してプラグ穴72内に取付け、組織の厚さおよび型に依存してあご16と17との間の分離距離を制御し得る。各プラグは、分離距離を制御するために使用される場合、好ましくは、外側表面上に、対応する最小分離距離を示す表示を備える。
【0056】
図8は、別の好ましい実施形態による、管癒合のための電気外科手術用器具の側面図であり、これは、電気外科手術用器具の近位端にネジ様機構80を利用して、その遠位端であご16と17との間の分離距離を制御する。このネジ様機構80は、あご16と17との間の分離距離を制御するために内側部材11にねじ止めされ得、かつ取り外され得るネジ82を備える。
【0057】
当業者が、押棒機構に対して引棒(pull−rod)機構を有するように、本開示の電気外科手術用器具を設計し得ることが理解される。このような器具は、デザイン上は本開示の器具と同様であるが、固定外側部材、および引棒機構を有する可動性内側部材を有する。可動性内側部材が固定外側部材に対して移動すると、引棒機構の引棒は封鎖用あごの一つを引いて対向する封鎖用あごへと動かし、管、組織などを封鎖もしくは癒合する。当業者が、内側部材11を可動にして、内側部材11がオープンロックボックス13を備えるように、本開示の電気外科手術用器具を設計し得ることが、また理解される。
【0058】
上記から、そして種々の図面を参照して、当業者は、本開示の範囲から離れることなく、本開示に対して特定の改変が行われ得ることを理解する。例えば、他の特徴(例えば、あご部材16および17を内側部材11および外側クランプ用部材12に対して軸方向に動かすための連接用アセンブリ)を器具10に追加することは好ましいかもしれない。組織接触表面は、ラジウス(radiused)刃を備えて、封鎖を容易にし得、そして封鎖中の組織への付随的損傷を減少させ得る。この器具は、内側部材11もしくは外側クランプ用部材12もしくはこの器具の他の部分(例えば、あご16および17の近位)に選択的に取付け可能であるか、または器具10の一つ以上の部分に一体化して取付けられている、光源もしくは内視鏡を備え得る。理解され得るように、この光源は、光供給源(optical source)を自身で備え得るか、または操作部位に対して離れて配置された光供給源に接続可能である。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態が本明細書中において図面に示され、そして記載されたが、これによって本開示を限定することは意図されない。なぜなら、本開示の範囲が、当該分野が許容する限り広いこと、そして本明細書も同様に読まれることが意図されるからである。したがって、上記の記述は限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈すべきである。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲および精神の内において、他の改変を構想する。
【符号の説明】
【0060】
10 器具
11 内側部材
12 外側クランプ用部材
13 オープンロックボックス
32 押棒
33 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、該電気外科手術用器具は、以下:
内側部材および外側クランプ用部材であって、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、その近位端の近くに環状ハンドルを備え、該内側部材および該外側クランプ用部材の各々は、その遠位端に近接する封鎖表面を備え、該内側部材および該外側クランプ用部材のうちの少なくとも一つは、該封鎖表面が互いに対して間隔をあけられた第一の位置から、該封鎖表面が、それらの間の組織をつかむために互いに対して対向する関係で配置される第二の位置へ移動可能である、内側部材および外側クランプ用部材;
該外側クランプ用部材に、近位端で、操作可能に接続され、かつ該外側クランプ用部材の該封鎖表面に、遠位端で、操作可能に接続される押棒であって、該押棒は、該外側クランプ用部材の該封鎖表面を該内側部材の該封鎖表面に対して回転させるために移動可能である、押棒;
止めであって、該止めは、該押棒の遠位への動きを制限するために該内側部材の該近位端の近くに配置されて、該封鎖表面が該第二の位置に配置される場合に、該対向する封鎖表面の間の間隔を維持する、止め;および、
該封鎖表面にエネルギーを与えるための手段であって、該手段によって、該封鎖表面が該第二の位置に配置されて組織封鎖部を形成する場合、それらの間に保持された組織を通じて電気外科手術用エネルギーが伝達される、手段、
を備え、
組織を封鎖するための電気外科手術用器具であって、前記止めが、前記封鎖表面の間の前記分離距離を変動させるため、選択的に再配置可能である、電気外科手術用器具。
【請求項2】
図面に記載の、組織を封鎖するための電気外科手術用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−5464(P2010−5464A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237798(P2009−237798)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2004−543286(P2004−543286)の分割
【原出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【出願人】(300044528)コヴィディエン アクチェンゲゼルシャフト (87)
【Fターム(参考)】