説明

管体保護用のキャップ

【課題】揮発した溶剤の管外への排出を円滑にする。
【解決手段】管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分A,Bよりも奥部の管内面に粉体塗装を施した管体pに対して、その溶剤系塗装を施した部分A,B側の端部に取り付けられ、前記溶剤系塗装を施した部分A,Bから揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔20を備え、且つ、その複数の通気孔20は、前記キャップ10に設けた網目状部21によって形成されて、前記網目状部21の網目で仕切られた各区画内が、それぞれ前記通気孔20である管体保護用のキャップ10とした。この構成によれば、管内への異物の侵入防止と光の侵入防止の効果が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管内面塗装を施した管体の端部に嵌合される管体保護用のキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上水道や下水道等に用いられる各種管体の内周面には、その内面を保護するために、各種塗装が施される。特に、鋳鉄管等においては、その保護のために、モルタルライニングや粉体塗装(例えば、エポキシ樹脂粉体塗装)によって管内面塗装が施される場合が多い。
【0003】
これらの管体では、その輸送中や保管中等において、管内面塗装が汚損、劣化することを避けるために、その管体の両端部に、合成樹脂製の管体保護用のキャップを嵌合することが従来から行われている。
【0004】
特に、粉体塗装を施した管体においては、その管内面の塗装面は、管端から差し込む光によって劣化する恐れがあるので、管体の輸送中や保管中等において、その管体の管両端を管体保護用のキャップで塞ぐことは重要である。
【0005】
この種の管体pは、一般に、図3に示すように、管軸方向に一定の管径が続く直管部4を挟んで、管軸方向一端が挿し口2、他端が、隣り合う他の管体pの挿し口2をその内側に受け入れることができる受口3となっている。
【0006】
このため、前記キャップ1は、例えば、図4(a)に示すように、管体pの径の細い側の端部である挿し口2においては、その端部の管外面2bに嵌合され、径の太い側の端部である受口3においては、その端部の管内面3aに嵌合される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
上記の管体pにおいて、管内面の塗装範囲のうち、受口3に近い部分においては、管内面3aに凹凸が多い。この凹凸は、隣り合う管体pの挿し口2を受け入れた際に使用するパッキン、ロックリング等の形状や、あるいは、その挿し口2自体の外形に対応したものである。
【0008】
この受口3の内面には、一般に、溶剤系塗料を用いた塗装(以下、「溶剤系塗装」が行われる。すなわち、直管部4の管内面4a(挿し口2の内面2aを含む)には一次塗装としての粉体塗装を行い、その後、凹凸の多い受口3付近の管内面3aには、二次塗装としての溶剤系塗装を行っている。
なお、エポキシ樹脂粉体塗装範囲は、JWWA G 112(日本水道協会規格)に規定されている。
【0009】
この溶剤系塗装を行った箇所は、管体の出荷時等において、その溶剤の臭気を除去しておく必要がある。揮発した溶剤が管内に残留していると、管内が揮発溶剤で飽和状態となり、それ以上の塗膜からの溶剤の揮発を妨げてしまうおそれがある。このようになれば、塗膜を充分に硬化させることができなくなる。
この点は、例えば、水道用鋳鉄管に関しては、日本水道協会規格 JWWA K 139では、出荷時に臭気について問題がないようにしなければならない、とされている。
【0010】
そこで、揮発した溶剤を管外へ排出することができるように、例えば、図4(a)(b)に示すように、キャップ1の底にドリルで、φ6〜10mmの穴6をあけている。キャップ1に穴6があれば、その穴6を通じて、揮発溶剤を管外へ逃がし、臭気の残留を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3099749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、揮発した溶剤を管外へ円滑に排出するためには、管体保護用のキャップ1に設けられる穴6は、その断面積ができる限り大きい方が好ましい。
【0013】
しかし、図4(a)(b)に示すキャップ1では、穴6の大きさ(穴6の断面積)をこれ以上大きくすると、管内全体への異物の侵入につながるので好ましくない。また、穴6の数を増やしたり、穴6の大きさを大きくすることは、管内へ侵入する光量の増加に繋がるので、直管部4の管内面4aに粉体塗装を施した場合は、その粉体塗装への影響が懸念される。
【0014】
そこで、この発明は、受口の管内面に溶剤系塗装を、直管部の管内面に粉体塗装やモルタルライニングを行う場合において、揮発した溶剤の管外への排出を円滑にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体pに対して、その溶剤系塗装を施した部分側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップにおいて、前記キャップは、前記溶剤系塗装を施した部分から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔を備え、前記複数の通気孔は、前記キャップに設けた網目状部によって形成されて、前記網目状部の網目で仕切られた各区画内が、それぞれ前記通気孔であることを特徴とする管体保護用のキャップの構成を採用した。
【0016】
この方法によれば、通気孔を通じて揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、また、網目状部によって小さい通気孔の集合が形成されているから、その小さい通気孔の集合によって、気体の流通は許容しつつ、異物の侵入を抑制する機能を発揮することができる。
【0017】
この網目状部としては、一般的な金属製網、樹脂製網、織布等のほか、不織布を採用することもできる。このとき、別体に形成されたキャップと網目状部とを、接着、圧入等の周知の手法により一体化してもよいし、キャップが樹脂製や金属製であれば、キャップと網目状部とを一体成型することもできる。
【0018】
また、他の手段として、多孔質体によって通気孔を形成した構成を採用することができる。
すなわち、その構成は、管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体に対して、その溶剤系塗装を施した部分側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップにおいて、前記キャップは、前記溶剤系塗装を施した部分から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔を備え、前記複数の通気孔は、前記キャップに設けた多孔質体によって形成されて、前記多孔質体の無数の孔部が、それぞれ前記通気孔であることを特徴とする管体保護用のキャップである。
【0019】
なお、この多孔質体としては、例えば、スポンジ等を採用することができる。
【0020】
さらに、他の手段として、通気孔をシャワーヘッドの散水孔状に形成した構成を採用することができる。
すなわち、その構成は、管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体に対して、その溶剤系塗装を施した部分側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップにおいて、 前記キャップは、前記溶剤系塗装を施した部分から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔を備え、前記複数の通気孔は、シャワーヘッドの散水孔状に形成された小孔の集合であることを特徴とする管体保護用のキャップである。
【0021】
この構成によれば、小孔が広範囲に分散して配置されることにより、気体の流通の許容、及び、異物の侵入の抑制の両面において有利である。
【0022】
さらに、他の手段として、通気孔をスリット状に形成した構成を採用することができる。
すなわち、その構成は、管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体に対して、その溶剤系塗装を施した部分側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップにおいて、 前記キャップは、前記溶剤系塗装を施した部分から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔を備え、前記複数の通気孔は、スリット状に形成されたものであることを特徴とする管体保護用のキャップである。
【0023】
これらの各構成において、前記溶剤系塗装を施した部分よりも奥部の管内面に粉体塗装が施されている場合において、前記複数の通気孔が、前記粉体塗装を施した部分への管外からの光の侵入を所定量以下に抑えることができる構成を採用することができる。
【0024】
通気孔が、管外からの光の侵入を所定量以下に抑える機能を有していれば、粉体塗装を施した部分に対しては、そのキャップによって光の侵入を排除することができる。
なお、光の侵入を所定量以下にするとは、その管内に施された粉体塗装の劣化を阻止するために、その粉体塗装の素材や塗膜厚、管体の保管場所の環境等に合わせて、許容される光の侵入量以下にすることである。その所定量は、上記の各要件に応じて、適宜決定されるものである。
【0025】
また、通気孔が、所定の換気機能を有しながら、光の侵入を所定量以下に抑えることができるものとするためには、例えば、一つの通気孔の大きさ(通気孔の断面積)を小さくするとともに、その小さい通気孔を複数(多数)設ける手法を採用することができる。通気孔の位置が分散して配置されていれば、さらに望ましい。このためには、例えば、前記通気孔を、キャップに設けた前記網目状部や前記多孔質体によって形成するのも一つの手段である。また、通気孔を、シャワーヘッドの散水孔状に形成された小孔の集合とする手段もある。
また、他の手段としては、例えば、通気孔をスリット状に細長く開口するように形成して光の侵入量を絞ったり、あるいは、通気孔の流路を途中で屈曲させることにより、光の侵入量を抑制することもできる。さらに、通気孔の途中に、気体の流通は許容し、光の透過は生じにくい部材を介在させる手法等も考えられる。
これらの手法は、それぞれ単独で採用することもできるし、適宜選択した二つの手段、あるいは三つ以上の手段を併用することもできる。
【0026】
さらに、これらの各構成において、前記キャップは、内部に中空部を有する筒状の本体部と、その中空部の一端側の端部を閉じる端面板部とを備え、前記本体部の外面が全周に亘り前記管体の内面に接触しており、前記複数の通気孔は、前記本体部に形成されている構成を採用することができる。
この構成によれば、通気孔の向きが、管体に対して径方向に向くので、管外から管内へと向かう光の通るルートが屈曲することで、管内への異物の侵入、光の侵入のいずれも最小限に抑えることができる。
【0027】
なお、上記の筒状の本体部を備えた構成において、前記本体部は、前記管体の端部に取り付けられた状態で、その管体の奥部側に向かうにつれて縮径するテーパー面を有し、そのテーパー面が全周に亘り前記管体の内面に接触しており、前記複数の通気孔は、前記テーパー面に形成されている構成とすることもできる。
テーパー面がその全周で管体の内面に接触すれば、両者の密着度合いが高まり、光の侵入を抑制する上で効果的である。
【0028】
また、他の構成として、内部に中空部を有する筒状の本体部と、その中空部の一端側の端部を閉じる端面板部とを備えている場合において、前記端面板部は、前記管体の端部に取り付けられた状態で、その管体の奥部側から管外側へ向かって凹む凹部を有し、その凹部は、底部とその底部の周囲に周壁部を有して、前記通気孔は前記周壁部に形成されている構成を採用することができる。
この構成においても、通気孔の向きが、管体に対して径方向に向くので、管外から管内へと向かう光の通るルートが屈曲することで、管内への異物の侵入や光の侵入を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明は、管体の端部に取り付けられるキャップに、揮発した溶剤を管外へ排出できる機能と、管外からの異物の侵入を抑える機能とを有する複数の通気孔を備えたので、溶剤系塗装を施した部分から揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、粉体塗装を施した部分に対しては、キャップによって異物の侵入や光の侵入を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態を示す断面図
【図2】(a)は、同実施形態のキャップの斜視図、(b)(c)(d)(e)(f)(g)は、それぞれ変形例のキャップの斜視図
【図3】管体に対する塗装の区分を示す断面図
【図4】(a)は従来例の断面図、(b)はキャップの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、上水道等に用いられる管体(鋳鉄管)pに対して管内面塗装を行う場合における、その管内面塗装の乾燥方法、及びその管内面塗装の乾燥方法に使用する管体保護用のキャップ10に関するものである。
【0032】
管体pは、図3に示すように、管内外径一定の直管部4を挟んで、図中右側に示す一端に挿し口2を、左側に示す他端に受口3を備えている。
【0033】
この実施形態では、この管体pの外面に対して所定の塗装(外面塗装)を行った後、図3に符号B、符号Cで示す部分に粉体塗装(一次塗装)を行う。この粉体塗装としては、例えば、エポキシ樹脂粉体塗装を採用することができる。また、この実施形態では、一次塗装の塗装厚は、符号Bで示す部分で150μm以上、符号Cで示す部分で300μm以上としている。
【0034】
その後、符号Aで示す受口3側の管端部の管内面3aに溶剤系塗装(二次塗装)を施す。この溶剤系塗装としては、例えば、エポキシ樹脂塗料を採用することができる。また、この実施形態では、二次塗装の塗装厚は、60μmとしている。
なお、図中に示すように、受口3の内面のうち、符号Aで示す溶剤系塗装を施した部分と、符号Bで示す粉体塗装を施した部分とは、一部重ね塗りが行われている。
【0035】
この後、管体pは乾燥工程へ移送され、管内面への一次塗装、二次塗装による塗装面の乾燥を行う。
【0036】
さらに、その乾燥後、受口3の管内面3aに出荷前塗装を行う。具体的には、受口3の内面をエアブロー等により清掃し、その後、符号Dで示す部分(この実施形態では、符号A及び符号Bで示す部分と一致)に溶剤系塗料を上塗りすることで、出荷前塗装としている。この出荷前塗装における溶剤系塗装としては、例えば、アクリル樹脂塗料を採用することができる。また、この実施形態では、その塗装厚は、20μmとしている。
【0037】
この出荷前塗装により、符号Dで示す部分、すなわち、符号A及び符号Bで示す部分が溶剤系塗装、符号Cで示す部分が粉体塗装を施した部分となる。
【0038】
そして、出荷前塗装が乾燥した後、図1に示すように、受口3側の端部に、管体保護用のキャップ10を嵌めて取り付ける。キャップ10の詳細を図2(a)に示す。なお、挿し口2側の端部には、この実施形態では、図1に示すように、従来と同様のキャップ1を取り付けたが、上記と同じキャップ10を取り付けることもできる。このとき、キャップ10は、その凹部を挿し口2側に向けて、その挿し口2の外周に嵌めて固定できる。
【0039】
この図2(a)に示すキャップ10の構成について説明すると、キャップ10は、内部に中空部を有する筒状の本体部14と、その中空部の一端側の端部を閉じる端面板部15とを備えている。本体部14は、他端側から一端側に向かうにつれて縮径するテーパー面11を有しているから、全体としてキャップ10の外面は円錐台状を成している。
【0040】
このため、キャップ10が受口3側の端部に取り付けられると、本体部14のテーパー面11が、その全周に亘り、受口3の端部内面に接触している状態である。テーパー面11と受口3の端部内面とが接触するから、密着度合いが高められている。キャップ10の緩みも防止される。
【0041】
このキャップ10には、図中に示すように、本体部14を内外に貫通し、外面側のテーパー面11に開口する通気孔20が多数設けられている。キャップ10を受口3に嵌めると、その通気孔20は、本体部14内側の中空部と受口3内の空間とを連通する。
【0042】
この通気孔20は、キャップ10の本体部14に設けた開口に網目状部21を嵌めて固定することによって形成されている。
すなわち、通気孔20が小さい孔の集合であるから、その通気孔20は、気体の流通を許容し、また、管内への異物の侵入を抑える機能を発揮できるようになっている。さらに、管内への光の透過を所定量以下に抑える機能も発揮できるようになっている。
また、通気孔20の向きが、管体pに対して径方向に向くので、管外から管内へと向かう光の通るルートが屈曲することでも、管内への異物の侵入や光の侵入を最小限に抑える機能を高めている。
【0043】
以上のように、この通気孔20を通じて、出荷前塗装によって溶剤系塗装を施した部分D(D=A+B)から揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、また、この構成からなる通気孔20であれば、管内への異物の侵入防止の効果も期待できる。
さらに、粉体塗装を施した部分Cに対しては、管外からの光の侵入を所定量以下に抑えることができる。光の侵入を所定量以下に抑えることで、粉体塗装の塗装面の劣化を回避できる。
【0044】
なお、管内に水分が入らないようにするためには、通気孔20の位置が本体部14の側方、あるいは上方になるように、キャップ10を嵌める向き(管軸周りの方位)を決定することが望ましい。
【0045】
図2(b)〜(g)に、キャップ10の変形例を示す。
【0046】
まず、図2(b)に示すキャップ10は、端面板部15に、多数の小さな孔の集合からなる通気孔20を設けたものである。キャップ10は全体が樹脂製であり、通気孔20が形成されている部分を含めて一体成型されている。
この例では、通気孔20が、シャワーヘッドの散水孔状に形成されているから、孔が広範囲に分散して配置されることにより、気体の流通の許容、及び、異物の侵入、光の侵入の抑制の各面において有利である。
【0047】
つぎに、図2(c)に示すキャップ10は、端面板部15に網目状部21を一体成型したものである。
通気孔20が小さい孔の集合であるから、揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、また、通気孔は、管外からの異物の侵入を抑え、また、光の侵入を所定量以下に抑える機能を発揮できる点については同様である。
【0048】
図2(d)に示すキャップ10は、図2(a)に示す態様において、通気孔21を形成するための網目状部21をキャップ10と一体に成型するとともに、その網目状部21を周方向に沿って断続的に配置したものである。
【0049】
さらに、図2(e)に示すキャップ10は、内部に中空部を有する筒状の本体部14と、その一端を閉じる蓋17とで構成されている。その本体部14と蓋17との間に、網目状部21としてガーゼ、紙、織布、不織布等、あるいは多孔質体としてスポンジ等からなる素材を介在させている。
【0050】
このガーゼ、紙、織布、不織布、スポンジ等は、無数の通気孔20を有しているから、揮発した溶剤を円滑に管外へ排出することができ、また、その通気孔20が、管外からの異物の侵入を抑え、光の侵入を所定量以下に抑える機能を発揮できる点については同様である。さらに、それに加え、ガーゼ、紙、織布、不織布、スポンジ等を採用したことにより、光の侵入するルートが屈曲して、管内への光の侵入を抑える効果も発揮している。
なお、このガーゼ、紙、織布、不織布、スポンジ等の素材は、図2(e)に示す態様での使用に限定されず、前述の各実施形態において、通気孔20内にこれらの素材を詰めることによって、気体の流通を維持しながら、光の侵入をさらに抑える効果を発揮することができる。
【0051】
さらに、他の変形例として、図2(f)に示すキャップ10がある。このキャップ10は、中空部の一端側の端部を閉じる端面板部15の中央に、その管体の奥部側から管外側へ向かって凹む凹部16を備えたものである。凹部16によって、キャップ10の剛性が高められている。
【0052】
その凹部16は、フラットで側面視円形の底部16aと、その底部16aの周囲に円筒面状の周壁部16bを有して、前記通気孔20は前記周壁部16bに形成されている。
この例では、通気孔20の向きが、管体に対して径方向に向くので、管外から管内へと向かう光の通るルートが屈曲することで、管内への光の侵入を最小限に抑えることができる。なお、凹部16の底部16aや周壁部16b等の形状は自由であり、側面視矩形の底部16aとその周囲に形成された角筒面状の周壁部16bであってもよい。
【0053】
また、この周壁部16bに設けられる通気孔20は、例えば、図2(g)に示すキャップ10のように、細長く開口するスリット状とすることで、光の侵入量を絞るようにした構成を採用することもできる。
このスリット状の通気孔20は、図2(f)に示すような周壁部16bに通気孔20を設ける態様に限定されず、前述の各実施形態において、網目状部21等を用いた通気孔20の構成に代えて採用することができる。
【0054】
ただし、通気孔20をスリット状とする場合は、その通気孔20は、本体部14の周面や前記凹部16の周壁部16bなどに設けることが特に望ましい。端面板部15や底部16aなど、管軸方向に直交する面にスリット状の通気孔20を設けると、管内への異物の侵入や光の侵入防止の性能がやや劣るからである。
【0055】
また、いずれの例のキャップ10においても、図2(f)(g)に示すような、突出部12を設けることによって、キャップ10が受口3に噛み込むことを防止することができる。特に、キャップ10がテーパー面11を備える場合は有効である。この突出部12は、図に示すような全周に亘るフランジ状であってもよいし、周方向に断続的であってもよい。
【0056】
なお、この発明による管体保護用のキャップ10を採用し得る管体pは、実施形態に限定されず、他の断面形状を有する管体pに対しても、用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1,10 キャップ
2 挿し口
3 受口
4 直管部
6 穴
11 テーパー面
12 突出部
14 本体部
15 端面板部
16 凹部
17 蓋
20 通気孔
21 網目状部
p 管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体(p)に対して、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップ(10)において、
前記キャップ(10)は、前記溶剤系塗装を施した部分(A,B)から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔(20)を備え、前記複数の通気孔(20)は、前記キャップ(10)に設けた網目状部(21)によって形成されて、前記網目状部(21)の網目で仕切られた各区画内が、それぞれ前記通気孔(20)であることを特徴とする管体保護用のキャップ(10)。
【請求項2】
前記網目状部(21)は不織布であることを特徴とする請求項1に記載の管体保護用のキャップ(10)。
【請求項3】
管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体(p)に対して、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップ(10)において、
前記キャップ(10)は、前記溶剤系塗装を施した部分(A,B)から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔(20)を備え、前記複数の通気孔(20)は、前記キャップ(10)に設けた多孔質体によって形成されて、前記多孔質体の無数の孔部が、それぞれ前記通気孔(20)であることを特徴とする管体保護用のキャップ(10)。
【請求項4】
管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体(p)に対して、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップ(10)において、
前記キャップ(10)は、前記溶剤系塗装を施した部分(A,B)から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔(20)を備え、前記複数の通気孔(20)は、シャワーヘッドの散水孔状に形成された小孔の集合であることを特徴とする管体保護用のキャップ(10)。
【請求項5】
管軸方向端部の管内面に溶剤系塗装を施し、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)よりも奥部の管内面に粉体塗装又はモルタルライニングを施した管体(p)に対して、その溶剤系塗装を施した部分(A,B)側の端部に取り付けられる管体保護用のキャップ(10)において、
前記キャップ(10)は、前記溶剤系塗装を施した部分(A,B)から揮発した溶剤を管外へ排出できる機能を有する複数の通気孔(20)を備え、前記複数の通気孔(20)は、スリット状に形成されたものであることを特徴とする管体保護用のキャップ(10)。
【請求項6】
前記溶剤系塗装を施した部分(A,B)よりも奥部の管内面には粉体塗装が施されており、前記複数の通気孔(20)は、前記粉体塗装を施した部分(C)への管外からの光の侵入を所定量以下に抑えることができるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の管体保護用のキャップ(10)。
【請求項7】
前記キャップ(10)は、内部に中空部を有する筒状の本体部(14)と、その中空部の一端側の端部を閉じる端面板部(15)とを備え、前記本体部(14)の外面が全周に亘り前記管体(p)の内面に接触しており、前記複数の通気孔(20)は、前記本体部(14)に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の管体保護用のキャップ(10)。
【請求項8】
前記本体部(14)は、前記管体(p)の端部に取り付けられた状態で、その管体(p)の奥部側に向かうにつれて縮径するテーパー面(11)を有し、そのテーパー面(11)が全周に亘り前記管体(p)の内面に接触しており、前記複数の通気孔(20)は、前記テーパー面(11)に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の管体保護用のキャップ(10)。
【請求項9】
内部に中空部を有する筒状の本体部(14)と、その中空部の一端側の端部を閉じる端面板部(15)とを備え、前記端面板部(15)は、前記管体(p)の端部に取り付けられた状態で、その管体(p)の奥部側から管外側へ向かって凹む凹部(16)を有し、その凹部(16)は、底部(16a)とその底部(16a)の周囲に周壁部(16a)を有して、前記通気孔(20)は前記周壁部(16a)に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の管体保護用のキャップ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196722(P2010−196722A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39130(P2009−39130)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】