説明

管内ライニング方法

【課題】大きな変異が管に作用した場合にはライニング層が剥離して流路の維持を図ることができるような管内ライニングの形成を、余分な手間を掛けずに実施できるようにする。
【解決手段】材質が互いに異なるライニング層を管内面側に各別に積層させて管内面をライニングする管内ライニング方法であって、前記ライニング層を形成するのに、第1ライニング材を使用して保形成の高い第1ライニング層を形成した後、その第1ライニング層の内周面に、第2ライニング材として、(1)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(3)ヒドロシリル化触媒、からなる付加反応型のシリコーン樹脂を使用して第2ライニング層を形成して管内面をライニングする管内ライニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高強度で保形成の高い材質の第1ライニング層と、その内面に伸長性の高い材質の第2ライニング層と言った具合に、材質が異なるライニング層を管内面側に各別に積層させる管内ライニング方法に関し、通常時には、前記第1ライニング層を主としてライニング層の安定が図れ、地震やその他の要因によって大きな変異が管に加わって、管や第1ライニング層に亀裂・破断が生じるような場合には、第2ライニング層がその変異に追従して管の密閉性を維持できるようにする管内ライニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の管内ライニング方法の技術について、既に、特許文献1及び特許文献2において、外水、土圧、不等沈下、地震等の大きな変異により管自体が亀裂・破断しても前記第2ライニング層がこの変異に追従して管内流体の漏洩を防止するため管内ライニング技術を開示している。前記特許文献1に記載の技術は、ピグを用いて保形成の高い第1ライニング層(主成分はエポキシ樹脂組成物)と伸長性の高い第2ライニング層(主成分は弾性エポキシ樹脂組成物)の2層で管内ライニング層を形成し、通常時の管路の保形に関しては、第1ライニング層が主として作用し、大きな変異が管に作用して亀裂・破断するような場合に第2ライニング層が主として作用することを狙いとしたものである。
また、特許文献2に記載の技術は、特許文献1に記載の技術を更に改良したもので、第2ライニング層が第1ライニング層から剥離しやすいように第1ライニング層の表面を難接着処理してから第2ライニング層を形成することを特徴とするものである。第2ライニング層の剥離を促進することによって、管や第1ライニング層の亀裂・破断による悪影響が第2ライニング層に及びにくくすることが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−54762号公報
【特許文献2】特開2002−79176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該管内ライニング技術においては、上述のように、通常時には、第1・第2両ライニング層とも密着状態を保持することができる一方、前記大きな変異により管自体が亀裂・破断した場合には、前記第2ライニング層がこの変異に追従して管内流体の漏洩を防止し易くするために、第2ライニング層が第1ライニング層から容易に剥離できるようにしておく必要がある。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に示す従来技術によれば、第1ライニング層と第2ライニング層との剥離性が悪く、前記大きな変異が作用するに伴って、管自体や第1ライニング層と共に第2ライニング層まで亀裂・破断する危険性があり、改善が望まれる。
また、前記特許文献2に示す従来技術によれば、第2ライニング層を形成する前に、第1ライニング層の内周面に難接着処理を行うという別工程が一つ増え、余分なライニング手間が掛かると言った問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、大きな変異が管に作用した場合にはライニング層が剥離して流路の維持を図ることができるような管内ライニングの形成を、余分な手間を掛けずに実施できる管内ライニング方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の特徴構成は、材質が互いに異なるライニング層を管内面側に各別に積層させて管内面をライニングする管内ライニング方法であって、前記ライニング層を形成するのに、第1ライニング材を使用して保形成の高い第1ライニング層を形成した後、その第1ライニング層の内周面に、第2ライニング材として、(1)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(3)ヒドロシリル化触媒、からなる付加反応型のシリコーン樹脂を使用して第2ライニング層を形成して管内面をライニングするところにある。
【0008】
また、請求項2の発明の特徴構成は前記第1のライニング層がアミン化合物、リン化合物、硫黄化合物、スズ化合物のいずれか1つ以上を含む組成物である、ところにある。
【0009】
請求項1の発明の特徴構成によれば、第2ライニング材が未硬化状態の場合は粘着性を有しているので、第1ライニング層との密着性を確保することができ、例えば、管内に未硬化のライニング材を位置させてピグを圧送することでそのピグでライニング材を押し退けながらライニング層を形成すると言った簡単な施工方法によってでも、容易に第1ライニング層の表面に密着した第2ライニング層を形成することが可能となる。更に、硬化した後の第2ライニング材は接着力が小さいので第1ライニング層と弱く固着しており、ライニング完了状態では二つの層がお互いに密着した二層ライニングを形成しているが、変異により管または第1ライニング層が亀裂・破断すると第2ライニング層は簡単に剥離して筒状の第2ライニング層の形状を保持したまま変異に追従できる。従って、管が亀裂・破断しても、管内流体の漏洩防止を図ることが可能となる。
【0010】
第2ライニング層は(1)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(3)ヒドロシリル化触媒、からなる付加反応型のシリコーン樹脂であり、第1ライニング層との接着力を極力低下させることができる。また、この硬化物は伸び特性に優れ、追従性に優れるものである。
【0011】
請求項2の発明の特徴構成によれば、第1ライニング層にアミン化合物、リン化合物、硫黄化合物、スズ化合物のいずれか1つ以上を含む樹脂を使用し、かつ第2ライニング層に、前記付加硬化型シリコーン樹脂を使用することにより、第1ライニング層と第2ライニング層の界面において、第2ライニング層の付加型シリコーン樹脂の効果阻害が発生し、未硬化の状態となる。この原理は前記(1)、(2)、(3)成分からなる付加型シリコーンはアミン化合物やリン化合物、硫黄化合物、スズ化合物が存在すると、(3)成分がこれらと反応をしてしまい(1)と(2)のヒドロシリル化反応を促進しないすなわち失活してしまうからである。ただし、まったく反応効果が進まないのではなく、増粘をしてベトベトとした状態となる。これが第1ライニング層と第2ライニング層の間、厳密には、第1ライニング層と接触する第2ライニング層の最外面で発生する。よって、第1ライニング層と第2ライニング層の硬化物の間は第2ライニング層の粘着層が介在すし、長期にわたり粘着状態を保つことになる。よって、第1ライニング層と第2ライニング層は必要なときには剥離することができ、かつ粘着層が存在するので、両層の密着力が存在し容易には剥離しない。
【0012】
従って、第2ライニング層は第1ライニング層と直接接着せず、ライニング完了状態では二つの層がお互いに粘着層を介して密着した2層ライニングを形成しているが、変異により管または第1ライニング層が亀裂・破断すると、第1ライニング層と第2ライニング層は簡単に剥離して筒状の第2ライニング層の形状を保持したまま変異に追従することができる。従って、管が亀裂・破断しても、管内流体の漏洩防止を図ることが可能となる。また、一旦、第1ライニング層と第2ライニング層が剥離しても粘着層が存在するため、第1ライニング層が破断されていない軽い変異であれば、再度密着した状態に復帰することができる。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態で説明した管内ライニング方法によれば、簡単な施工方法によって、迅速に第1ライニング層2A・第2ライニング層2Bの二層構成のライニング層2を形成することが可能となる。第1ライニング層にアミン化合物、リン化合物、硫黄化合物、スズ化合物が含まれない場合であった場合、第1ライニング層と第2ライニング層は弱い接着力で形成され、第1ライニング層がアミン化合物、リン化合物、硫黄化合物、スズ化合物のいずれか1つ以上を含む組成物であった場合、第2ライニング層の第1ライニング層との接触面は未硬化となり、粘着層を介しての密着となる。よって、変異により管または第1ライニング層が亀裂・破断しても、第2ライニング層2Bは簡単に第1ライニング層2Aから剥離して筒状の第2ライニング層の形状を保持したまま変異に追従でき、ガス漏れを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1、図2は、地中に埋設されている都市ガス供給用のガス管(管の一例である)Pの腐食によるガス漏れを補修したり、予防するために、ガス管Pの内面1に、材質が互いに異なる第1ライニング材7Aと第2、ライニング材7Bとの2つのライニング材をピグ5,6で順次積層して、それらの第1ライニング材7A、第2ライニング材7Bがそれぞれ硬化することで第1ライニング層2A、第2ライニング層2Bが形成され、この2つの硬化樹脂層からなるライニング層2で前記内面1をライニングしてあるガス管Pのライニング構造を示す。前記第1ライニング層2Aは、保形成の高い合成樹脂で成型してあり、第2ライニング層2Bは、第1ライニング層2Aとの付着力が低いと共に伸び特性の高い付加硬化型シリコーン樹脂で形成してある。
【0016】
前記ライニング層2でガス管Pの内面1をライニングする本発明による管内ライニング方法を説明する。
[1]図3(イ)に示すように、ライニング区間の両端位置を掘削してピット10,11を形成し、各ピット10,11内に露出させたガス管Pを切除して、一方のピット10側のガス管Pの端部内側に第1ライニング材7Aを充填すると共に、第1ピグ5を装着し、図3(ロ)に示すように、一方のピット10側のガス管P端部に空気供給ホース9を接続して、空気供給ホース9から供給される加圧空気で移動する第1ピグ5によって第1ライニング材7Aを圧送して、ガス管Pの内面1に第1ライニング層2Aを先行して積層する。
[2]次に、図3(ハ)に示すように、一方のピット10側の第1ライニング層2Aの端部内側に第2ライニング材7Bを充填すると共に、第1ピグ5よりも小径の第2ピグ6を装着し、図3(ニ)に示すように、一方のピット10側のガス管P端部に空気供給ホース9を接続して、空気供給9から供給される加圧空気で移動する第2ピグ6によって第2ライニング材7Bを圧送して、第1ライニング層2Aの内側に第2ライニング層2Bを後続して積層する。
[3]そして、常温状態でライニング層2を硬化させて、図1,図2に示したように、ガス管Pの内面1をライニングする。
【0017】
前記第1ライニング材7Aは、保形性の高い樹脂から選択すればよいが、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、環状硫黄化合物などから選択される1種以上を含む主剤と、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、変性ポリアミドアミン、芳香族ポリアミン、三級アミン、ポリメルカプタンなどから選択される1種以上を含む硬化剤を混合して硬化するものであれば良い。また、希釈剤、充填材、揺変剤などを適宜添加しても良い。
【0018】
また、前記第2ライニング材7Bは、(1)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(3)ヒドロシリル化触媒からなる付加反応型のシリコーン樹脂である。
【0019】
(1)成分のオルガノポリシロキサンは、第2ライニング材組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが必要である。(A)成分中のアルケニル基として具体的には、ビニル基,アリル基,ブテニル基,ペンテニル基,ヘキセニル基,ヘプテニル基が例示され、好ましくはビニル基である。(1)成分中のアルケニル基の結合位置は特に限定されず、例えば、分子鎖末端、分子鎖側鎖、分子鎖末端と分子鎖側鎖が挙げられる。また、(1)成分中のアルケニル基以外の有機基として具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペチル基,ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基;ベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基,3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロ置換アルキル基等の一価炭化水素基が例示され、好ましくはメチル基,フェニル基である。また、(1)成分の分子構造は特に限定されず、具体的には、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐状、網状が例示され、これらの構造を有するオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物であってもよい。また、(1)成分の粘度は特に限定されず、例えば、25℃における粘度の値が1000〜500,000mPa・sの範囲であることが好ましく、さらに10,000〜100,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0020】
このような(1)成分のオルガノポリシロキサンとして具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン,分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン,分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルポリシロキサン,分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,R3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるシリコーンレジン,RSiO3/2単位からなるシリコーンレジン,R2SiO2/2単位とRSiO3/2単位からなるシリコーンレジン,R2SiO2/2単位とRSiO3/2単位とSiO4/2単位からなるシリコーンレジン、およびこれらの二種以上の混合物が例示される。上記シリコーンレジンの単位式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、但し、上記単位式中の少なくとも1個のRはアルケニル基であることが必要である。上記シリコーンレジンの単位式中のRとして具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,オクチル基等のアルキル基;ビニル基,アリル基,ブテニル基,ペンテニル基,ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基;ベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基,3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロ置換アルキル基が例示される。
【0021】
(2)成分の一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、第2ライニング材の組成物を硬化させるための架橋剤として作用する。(2)成分中のケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、例えば、分子鎖末端、分子鎖側鎖、分子鎖末端と分子鎖側鎖が挙げられる。また、(2)成分中の有機基として具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペチル基,ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基;ベンジル基,フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基,3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロ置換アルキル基等のアルケニル基を除く一価炭化水素基が例示され、好ましくはメチル基,フェニル基である。また、(2)成分の分子構造は特に限定されず、具体的には、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐状、環状、網状が例示され、これらの構造を有するオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物であってもよい。また、(2)成分の粘度は特に限定されず、例えば、25℃における粘度の値が1〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、さらに5〜1,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0022】
このような(2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン,分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0023】
(3)成分のヒドロシリル化触媒は第2ライニング材組成物の硬化を促進するための触媒であり、一般に、ヒドロシリル化反応用触媒として周知の白金もしくは白金化合物が使用できる。このような(C)成分として具体的には、白金黒,白金担持のアルミナ粉末,白金担持のシリカ粉末,白金担持のカーボン粉末,塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,塩化白金酸とオレフィンとの錯体,塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体が例示され、さらにはこれら例示の白金系触媒をメチルメタクリレート樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリスチレン樹脂,シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂中に分散して微粒子化した白金系触媒が例示される。
【0024】
本組成物において、(3)成分の配合量は、本発明の組成物を硬化させるに十分な量であればよく、例えば、(1)成分と(2)成分の合計量に対して、(3)成分中の白金金属として1〜100ppmとなる量であることが好ましい。
【0025】
また、第2ライニング材組成物において、貯蔵安定性を向上させ、その取扱作業性を向上させるための任意の成分として、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン,3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロトトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の硬化抑制剤を配合することができる。この硬化抑制剤の配合量は、(1)成分100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲であることが好ましい。また、硬化物に適当な硬度と強度を付与するための任意の成分として無機質充填剤を配合することが好ましい。この無機質充填剤として具体的には、ヒュームドシリカ,結晶性シリカ,焼成シリカ,湿式シリカ,フュームド酸化チタン,カーボンブラックおよび無機質充填剤をオルガノアルコキシシラン,オルガノクロロシラン,オルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物により疎水化処理した上記無機質充填剤が例示される。この無機質充填剤の配合量は、(1)成分100重量部に対して50重量部以下であることが好ましい。
【0026】
[実施例]
第1ライニング材としてビスフェノールF型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミン系硬化剤を主成分としたスリーボンドユニコム株式会社製OG−16−23/20を用い、第2ライニング材として、(1)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(3)ヒドロシリル化触媒、からなる付加反応型のシリコーン樹脂である、東レ・ダウコーニング株式会社製SH9555を使用して、管内ライニングを実施し、第1ライニング層2Aと第2ライニング層2Bとの剥離性について確認を実施した。以下にその結果を示す。
【0027】
二層ライニング層の形成
前記第1ライニング材7Aをガス管Pに充填して、第一ピグ5を用いて管内に第1ライニング層2Aを形成する。ついで、前記第2ライニング材7Bの主剤と硬化剤とを混合してガス管Pに充填し第2ピグ6を用いて第1ライニング層2Aの内側に第2ライニング層2Bを形成し、室温条件で1日放置して、ライニング層2を硬化養生させる。
養生後の二層ライニングを目視観察した結果、第2ライニング層2Bが完全に第1ライニング層2Aを被覆しており、ライニング層Bは剥がれることなく正常な二層ライニングを観察できた。
【0028】
剥離性の評価1
前記二層ライニングを形成したガス管Pに対して、40℃環境下に1時間位置させた後に−5℃環境下に1時間位置させるヒートサイクルを1サイクルとして、このヒートサイクルを10サイクル繰り返すことで温度負荷をかけ、その状態での二層ライニングの状態を目視観察した。
観察の結果、第2ライニング層2Bはこのヒートサイクル試験で第1ライニング層2Aから剥離は起きていなかった。
【0029】
剥離性の評価2
前記二層ライニングを形成したガス管Pの外側の鋼管部分のみを切断して、管の軸方向に両端を引っ張って第1ライニング層2Aに亀裂を入れた。更にガス管Pの両端を引っ張って第2ライニング層2Bの状態を目視観察した。
観察の結果、第2ライニング層2Bは第1ライニング層2Aから剥離し、且つ、筒状の形状を保持したままの伸長した状態を観察できた。更に伸長した第2ライニング層2Bの表面を観察したところ、亀裂、傷などの発生すること無く表面が滑らかであることが観察できた。
(3)本発明による管内ライニング方法は、先の実施形態で説明したように二層ライニングによるライニングに適用することに限らず、例えば、3層以上のライニング層を積層させる場合にも適用させることができる。すなわち複層数のライニング層の内、いずれかの層に前記第1ライニング層を積層させ、その内側に前記第2ライニング層を積層させるものであってもよい。
(4)本発明による管内ライニング方法は、各ライニング層の形成方法としてピグを使用することに限らず、例えば、吹きつけによる方法や、蒸気法などを採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による管内ライニング方法は、先の実施形態で説明したガス管を対象とするものに限らず、例えば、上水道管や下水道管や、蒸気管や、石油パイプラインなどの管の内側をライニングするために使用することも可能である。また、既設管だけでなく、工場などで、内側をライニングしてある管を製造するために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】管のライニング構造を示す縦断面図
【図2】管のライニング構造を示す横断面図
【図3】管のライニング構造を示す説明図
【符号の説明】
【0032】
2 ライニング層
2A 第1ライニング層
2B 第2ライニング層
7A 第1ライニング材
7B 第2ライニング材
P 管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質が互いに異なるライニング層を管内面側に各別に積層させて管内面をライニングする管内ライニング方法であって、前記ライニング層を形成するのに、第1ライニング材を使用して保形成の高い第1ライニング層を形成した後、その第1ライニング層の内周面に、第2ライニング材として、(1)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(3)ヒドロシリル化触媒、からなる付加反応型のシリコーン樹脂を使用して第2ライニング層を形成して管内面をライニングする管内ライニング方法。
【請求項2】
前記第1のライニング層がアミン化合物、リン化合物、硫黄化合物、スズ化合物のいずれか1つ以上を含む組成物である、請求項1に記載の管内面をライニングする管内ライニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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