説明

管分岐部密栓方法、流体管及び管分岐部密栓装置

【課題】流体管の側面に設けられた管分岐部を密栓するに際し、栓部材を簡便にロック状態にできると共に、そのロック状態が独りでに解除されず、しかも栓部材のロック状態を簡便に解除できる管分岐部密栓方法と、その方法に用いうる流体管及び管分岐部密栓装置を提供すること。
【解決手段】外周に突起21aを有する栓部材2を管分岐部1aに挿入し、係合壁11の欠落部12を突起21aが通過した状態にする挿入工程と、栓部材2を回転させて、突起21aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合し、栓部材2の軸方向移動を規制するロック工程とを備え、前記挿入工程では、バヨネット溝14に突起21aを嵌入して前方周壁面15にて受け止め、前記ロック工程では、栓部材2を後退させて突起21aを後方周壁面16にて受け止め、周方向に間隔を置いて設けられた一対の規制壁面17,18の間に突起21aを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部を密栓するための管分岐部密栓方法と、その方法に用いうる流体管及び管分岐部密栓装置に関し、特に不断水工法により接続された分岐管を仕切弁ごと撤去する場合に有用である。
【背景技術】
【0002】
古くなった既設の水道管(流体管の一例)を更新するに際しては、水道水の利用者に対する利便性を考慮し、管路を上流側で止水することなく不断水の状態を維持したまま施工することが望まれる。そこで、不断水工法を利用して既設の水道管の途中に分岐管を接続し、その分岐管により形成したバイパスで通水状態を保持するようにすれば、断水せずとも水道管の更新を行うことができる。かかる不断水工法は、例えば下記特許文献1に記載されている。
【0003】
図41は、既設の水道管を更新する手順の一例を示す概略図である。管路における矢印は水の流れを表している。まず、管路中のA区間を対象とし、その両端に割T字管81,82を装着して各々に仕切弁83を接続する(図41(a))。次に、各仕切弁83に不図示の穿孔装置を接続し、割T字管81,82で囲まれた管路部分を穿孔した後、穿孔装置を仕切弁83から取り外す。そして、分岐管84を接続してバイパスを形成すると共に、仕切弁83を開状態とし、弁体を内蔵したストッパー85を本管に設置して閉状態とする(図41(b))。これにより、不断水の状態を維持したまま、A区間にある既設の水道管を新設管路8Aに更新することができる。
【0004】
A区間における水道管の更新が完了したら、ストッパー85を開状態として本管に通水する。この段階でA区間のバイパスは不要となるため、分岐管84を撤去する(図41(c))。続いて、B区間を対象とし、上記と同じ要領で分岐管86を接続してバイパスを形成すると共に、仕切弁89を開状態とし、ストッパー85を閉状態とする(図41(d))。このとき、割T字管87は、A区間において新設の水道管に装着される。そして、不断水の状態を維持したまま、B区間にある水道管を新設管路8Bに更新し、それが完了したら分岐管86を撤去する(図41(e))。かかる工程を繰り返すことで、既設の水道管を順次に更新することができる。
【0005】
ところで、上記のような水道管の更新工事においては、分岐管を撤去する工程が煩雑であり、特に分岐管を撤去するにあたり本管から仕切弁83,89を取り外すには、本管にて不断水の状態を維持したまま密栓することが必要となり、作業が非常に煩雑となる。そのため、従来は、分岐管だけを取り外して仕切弁は残置させておくことが行われていたが、将来同じ場所を掘削した際に仕切弁を重機で引っ掛けてしまうという不安があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、分岐管を仕切弁ごと撤去し得る方法として、下記特許文献2,3が開示されている。この方法では、既設管の穿孔箇所に環状コアを挿入し、その環状コアを拡径して密着係止させた後、螺合作用又は止めリングを介した嵌合作用により栓体を取り付けて密栓する。しかし、これらの方法では、不断水の状態を維持したまま環状コアから栓体を容易に離脱できないため、本管に分岐管を再び接続し且つ密栓を解除して通水させる場合には、とても使い勝手が悪い。
【0007】
また、図41(d)のように新設管からバイパスを分岐させる場合には、新設管に割り構造の割T字管を装着して穿孔するのではなく、その新設管の一部を予め一体構造のT字管で構成しておき、そのT字管の側面に設けられた管分岐部に仕切弁を介して分岐管を接続することも考えられるが、下記特許文献2,3記載の発明はそもそも割T字管の撤去方法であるため、かかる場合には適用し得ない。
【0008】
一方、下記特許文献4には、シール材を挟持する一対の弁体を割T字管の管分岐部に挿入して密栓するための装置が記載されている。しかし、この装置では、管分岐部に対する弁体の固定と該弁体同士の固定を行うのに、弁体を直に操作する必要がある。それ故、シール材で管分岐部を密封した後、弁体やシール材を固定する前に、管分岐部から仕切弁等を離脱しなければならず、栓部材を挿入、固定して密封するという作業を一連に実施することができない。加えて、管分岐部の内周面にボルトを圧接することによって弁体を固定するため、管分岐部に蓋を取り付けるまでは弁体の固定が心許無い。
【0009】
本発明者は、分岐管を仕切弁ごと撤去できるよう、上記のようにして配管された一体構造の流体管、或いは穿孔した既設管に装着された割り構造の流体管に対し、その側面に設けられた筒状の管分岐部を密栓することを考え、更に作業性や栓部材の安定性を考慮して、栓部材の突起を管分岐部の係合壁に係合させて固定する手法(本出願時において未公知)を想到した。
【0010】
しかし、水流等の作用によって栓部材が自然に回転し、突起と係合壁との係合が勝手に外れることも考えられ、かかる手法では、栓部材のロック状態が独りでに解除されるおそれがあることが判明した。これに対し、管分岐部を栓部材で密栓した後、その管分岐部の開口に蓋を取り付けて栓部材を覆うこともできるが、作業者の知らない間に栓部材のロック状態が解除されていると、蓋を取り外すと同時に、水圧により栓部材が急激に抜け出ることになるため、非常に危険である。
【0011】
このように、上記の手法では、管分岐部に挿入にした栓部材を簡便にロック状態にできるだけでなく、栓部材のロック状態が独りでに解除されることがなく、それでいて必要な場合には栓部材のロック状態を簡便に解除できることが重要になる。そのうえ、この密栓作業は、管分岐部の内部が見えない状況で行われるため、栓部材の簡便な操作により実行できることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−154004号公報
【特許文献2】特開2002−267086号公報
【特許文献3】特開2005−106083号公報
【特許文献4】特開昭63−13997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体管の側面に設けられた管分岐部を密栓するに際し、栓部材を簡便にロック状態にできると共に、そのロック状態が独りでに解除されず、しかも栓部材のロック状態を簡便に解除できる管分岐部密栓方法と、その方法に用いうる流体管及び管分岐部密栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明の請求項1に記載の管分岐部密栓方法は、流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部に栓部材を挿入し、前記管分岐部の内周面及び前記栓部材の外周の一方に設けられた係合壁の欠落部を、他方に設けられた突起が通過した状態にする挿入工程と、前記栓部材を回転させて、前記突起と前記係合壁との周方向位置を合わせて軸方向に係合し、前記栓部材の軸方向移動を規制するロック工程とを備え、前記挿入工程では、前記欠落部を通じて前記突起をバヨネット溝に嵌入し、前記バヨネット溝の第一周壁面にて前記突起を受け止め、前記ロック工程では、前記栓部材を回転させて前記突起の周方向位置を相対的にずらすと共に、前記栓部材を挿入方向後方に移動させて前記突起を前記バヨネット溝の第二周壁面にて受け止め、周方向に間隔を置いて設けられた一対の規制壁面の間に前記突起を配置するものである。
【0015】
本発明の管分岐部密栓方法では、管分岐部に栓部材を挿入して回転させることで、栓部材の軸方向移動を規制してロック状態とし、該栓部材により管分岐部を密栓することができる。管分岐部の内周面及び栓部材の外周のうち、一方には欠落部を有する係合壁が設けられ、他方には突起が設けられ、これらを係合させることにより栓部材が簡便で且つ安定的に固定される。また、栓部材による密栓を解除するには、栓部材を回転して突起と係合壁との周方向位置をずらし、管分岐部から栓部材を引き抜くだけでよいため、簡便な作業で済む。
【0016】
管分岐部の内周面に係合壁を設け、栓部材の外周に突起を設けている場合、栓部材をロック状態にするときの動作、及び、そのロック状態を解除するときの動作は、詳しくは下記の通りである。まず、挿入工程では、管分岐部に栓部材が挿入され、その栓部材の突起が係合壁の欠落部を通過した状態となる。突起は欠落部を通じてバヨネット溝に嵌入され、第一周壁面にて受け止められる。したがって、作業者は、突起が第一周壁面に当接するところまで栓部材を押し込めばよい。
【0017】
次に、ロック工程では、栓部材を回転させて突起の周方向位置をずらし、該栓部材を後退させる。このとき、作業者は、突起が第二周壁面に当接するところまで栓部材を後退させればよい。栓部材は、突起が係合壁と係合して軸方向移動が規制され、ロック状態となる。しかも、一対の規制壁面の間に突起が配置されるため、その規制壁面の間で栓部材の回転移動が規制された状態となる。これにより、水流等の作用により栓部材が自然に回転しても、ロック状態が独りでに解除されることがない。
【0018】
栓部材のロック状態を解除するときは、栓部材を押し込んで第一周壁面に突起を当接させ、該栓部材を回転して突起の周方向位置をずらし、突起が欠落部を通過するようにして栓部材が引き抜かれる。作業者は、突起が第一周壁面に当接するところまで栓部材を押し込んだ後、栓部材を回転させて引き抜くようにすればよい。管分岐部の内周面に突起を設け、栓部材の外周に係合壁を設けた場合も、これと略同様である。以上のように、本発明では、管分岐部の内部が見えない状況でありながらも、栓部材の簡単な操作によって、栓部材をロック状態にしたり、そのロック状態を解除したりすることができる。
【0019】
本発明によれば、上記のようにして管分岐部を密栓できることから、不断水工法により接続された分岐管の撤去作業においては、該分岐管を仕切弁ごと撤去することが可能となる。しかも、栓部材の回転操作により栓部材の軸方向移動を規制できるため、仕切弁等を離脱する作業を介在させることなく、栓部材を挿入、固定して密封するという作業を効率良く実行できる。本発明では、管分岐部を有する流体管としてT字管や十字管その他の異形管を採用でき、その構造は一体構造でもよいが、既設管に装着可能な割り構造でも構わない。
【0020】
本発明の請求項2に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1に記載の管分岐部密栓方法であって、前記ロック工程では、前記突起が前記第一周壁面に沿って摺動するように前記栓部材を回転させ、次いで前記第一周壁面に連設されたガイド壁面によって前記突起を前記第二周壁面に案内するものである。かかる方法によれば、バヨネット溝の第一周壁面で突起を受け止めた後、その第一周壁面に沿って突起を移動させて第二周壁面に案内することができる。そのため、作業者は、栓部材の回転量や栓部材を後退させるタイミングなどを特に気にする必要がなく、栓部材をロック状態にする作業をより簡便に且つ確実に実行できる。
【0021】
また、本発明の請求項3に記載の流体管は、筒状の管分岐部が側面に設けられた流体管において、前記管分岐部の内周面に、欠落部を有する係合壁と、その欠落部に通ずるバヨネット溝とが設けられており、前記バヨネット溝が、前記欠落部と対向する第一周壁面と、前記第一周壁面よりも前記管分岐部の開口側に設けられた第二周壁面と、前記第二周壁面の周方向両側に設けられた一対の規制壁面とを備えるものである。
【0022】
かかる構成の流体管は、上述した管分岐部密栓方法に用いることが可能である。即ち、管分岐部に挿入された栓部材の突起が欠落部を通じてバヨネット溝に嵌入されると、第一周壁面によって該突起を受け止められる。また、その突起の周方向位置をずらして後退させると、第二周壁面によって該突起を受け止められると共に、一対の規制壁面の間に突起が配置され、栓部材をロック状態にすることができる。
【0023】
更に、本発明の請求項4に記載の流体管は、筒状の管分岐部が側面に設けられた流体管において、前記管分岐部の内周面に、欠落部を有する係合壁と、その欠落部を出入口とし、前記分岐部に挿入された栓部材の突起を嵌入可能に形成されたバヨネット溝とが設けられており、前記バヨネット溝が、前記欠落部を通じて嵌入された前記突起を受け止め可能な第一周壁面と、前記第一周壁面よりも前記栓部材の挿入方向後方に設けられた第二周壁面と、前記第二周壁面の周方向両側に設けられた一対の規制壁面とを備えるものである。かかる構成の流体管は、上記と同様に、上述した管分岐部密栓方法に用いることが可能である。
【0024】
本発明の請求項5に記載の流体管は、請求項3又は4に記載の流体管であって、前記第一周壁面と前記第二周壁面とが互いに対向して周方向に延在し、前記バヨネット溝が、前記第一周壁面に連設され且つ前記第一周壁面から周方向に離れるにつれて前記第二周壁面側に延在するガイド壁面を備えるものである。かかる構成によれば、バヨネット溝の第一周壁面で突起を受け止めた後、その第一周壁面に沿って突起を移動させて第二周壁面に案内することができる。そのため、作業者は、栓部材の回転量や栓部材を後退させるタイミングなどを特に気にする必要がなく、栓部材をロック状態にする作業をより簡便に且つ確実に実行できる。
【0025】
本発明の請求項6に記載の流体管は、請求項5に記載の流体管であって、前記ガイド壁面がテーパ状に形成されているものである。これにより、突起を第二周壁面に円滑に案内できる。
【0026】
本発明の請求項7に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1又は2に記載の管分岐部密栓方法であって、前記挿入工程又は前記ロック工程では、シリンダー部材が内蔵するピストン部材に前記栓部材又は前記栓部材と連結した操作軸を連結し、前記シリンダー部材の内部と前記管分岐部の内部とを連通させて前記シリンダー部材の内部に流体を充満して、前記シリンダー部材の内部の流体圧を前記ピストン部材に作用させるものである。
【0027】
かかる方法によれば、シリンダー部材内の流体圧を管分岐部内の流体圧と同じにできることから、管分岐部内の流体が栓部材を押し返すように作用して生じるスラスト力が、シリンダー部材内の流体がピストン部材に作用して生じるスラスト力の分だけ差し引かれることになる。このため、栓部材を流体圧に抗して押し込み易くなり、押し込んだ栓部材をスムーズに回転させることができる。
【0028】
本発明の請求項8に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1又は2に記載の管分岐部密栓方法であって、前記挿入工程では、前記栓部材又は前記栓部材と連結した操作軸に押込部材の当接部を当接させ、前記当接部が備える弾性体の弾性変形を規制手段により規制した状態にて、前記押込部材の操作により前記当接部に推進力を付与して前記栓部材を挿入方向に押圧し、前記ロック工程では、前記栓部材の回転に伴って前記規制手段による規制を解除し、前記栓部材の挿入方向後方への移動を前記弾性体の弾性変形によって吸収するものである。
【0029】
この場合、挿入工程では、当接部に付与される推進力を利用して栓部材を押圧することから、栓部材を流体圧に抗して簡便に押し込むことができる。このとき、当接部が備える弾性体の弾性変形は規制手段によって規制されている。また、ロック工程では、栓部材を回転させた際に規制手段による規制が解除され、栓部材の挿入方向後方への移動を弾性体の弾性変形によって吸収することで、栓部材が流体圧により急激に押し戻されることを防止できる。
【0030】
また、本発明の請求項9に記載の管分岐部密栓装置は、シール材が外嵌装着された栓部材と、前記栓部材に着脱自在に連結され、前記栓部材の回転及び軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸と、内部に連通する供給口が設けられたシリンダー部材と、前記シリンダー部材に先端部を突出させて内蔵され、前記操作軸に連結されるピストン部材とを備えるものである。
【0031】
かかる密栓装置によれば、供給口を通じてシリンダー部材の内部を管分岐部内の内部と連通することができる。これにより、シリンダー部材内の流体圧を管分岐部内の流体圧と同じにして、管分岐部内の流体が栓部材を押し返すように作用して生じるスラスト力から、シリンダー部材内の流体がピストン部材に作用して生じるスラスト力の分だけ差し引くことができる。その結果、栓部材を流体圧に抗して押し込み易くなり、押し込んだ栓部材をスムーズに回転させることができる。
【0032】
本発明の請求項10に記載の管分岐部密栓装置は、請求項9に記載の管分岐部密栓装置であって、前記シリンダー部材が前記操作軸に対して軸をずらして配置され、前記ピストン部材の先端部が前記操作軸の後端部よりも前方に位置するように、前記シリンダー部材の位置を固定する固定治具と、前記ピストン部材と前記操作軸とを連結する連結治具とを備えるものである。上記構成によれば、操作軸の延長方向における作業スペースを小さくできるため、広い周囲スペースを確保できない場所での密栓作業が可能になり、ピット形成作業などの施工作業に要する時間を短縮して作業効率を高めることができる。
【0033】
また、本発明の請求項11に記載の管分岐部密栓装置は、シール材が外嵌装着された栓部材と、前記栓部材に着脱自在に連結され、前記栓部材の回転及び軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸と、前記操作軸に当接する当接部を有する押込部材とを備え、前記押込部材の操作により前記当接部に推進力を付与することで、前記栓部材を挿入方向に押圧可能に構成されたものである。かかる密栓装置では、当接部に付与される推進力を利用して栓部材を押圧することにより、栓部材を流体圧に抗して簡易に押し込むことができる。
【0034】
本発明の請求項12に記載の管分岐部密栓装置は、請求項11に記載の管分岐部密栓装置であって、前記当接部が、弾性体と、その弾性体の弾性変形を規制する規制手段とを備え、前記当接部を前記操作軸に当接した状態で前記栓部材を回転することで前記規制手段による規制が解除され、前記栓部材の挿入方向後方への移動を前記弾性体の弾性変形によって吸収するように構成されたものである。これにより、栓部材を押し込む際には、弾性体の弾性変形を規制した状態で栓部材を適切に押圧することができる。また、栓部材の回転に伴って規制手段による規制が解除されるため、栓部材の挿入方向後方への移動を弾性体の弾性変形により吸収し、栓部材が流体圧により急激に押し戻されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】管分岐部に仕切弁を介して分岐管が接続された水道管の縦断面図
【図2】図1の管分岐部の要部を拡大して示す縦断面図
【図3】図1の管分岐部の正面図
【図4】密栓作業を説明するための平面視断面図
【図5】本発明の第1実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端とを示す断面図
【図6】図5のB−B矢視断面図
【図7】第1実施形態に係る操作軸の後方端の断面図
【図8】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図9】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図10】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図11】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図12】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図13】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図14】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図15】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図16】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図17】本発明に係る管分岐部密栓装置の一例を示す平面視断面図
【図18】図17の管分岐部密栓装置の変形例を示す平面視断面図
【図19】図18の管分岐部密栓装置を用いて栓部材を押し込んだ様子を示す図
【図20】本発明に係る管分岐部密栓装置の別例を示す平面視断面図
【図21】当接部の分解図
【図22】クラッチ部材141を前方から見た正面図
【図23】クラッチ部材142を後方から見た背面図
【図24】当接部の(a)正面図と(b)断面図
【図25】図20の管分岐部密栓装置を用いて栓部材を押し込んだ様子を示す図
【図26】当接部の(a)正面図と(b)断面図
【図27】本発明の第2実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端とを示す断面図
【図28】第2実施形態に係る操作軸の後方端の断面図
【図29】第2実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図30】第2実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図31】第2実施形態における密栓解除を説明するための断面図
【図32】本発明の第3実施形態で用いられる流体管の管分岐部を示す縦断面図
【図33】第3実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端とを示す断面図
【図34】第3実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図35】第3実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図36】本発明の別実施形態に係る密栓方法を説明するための縦断面図
【図37】本発明の別実施形態に係る密栓方法を説明するための平面視断面図
【図38】図37に示した栓部材が備える係合具の側面図
【図39】図37に示した栓部材の断面図
【図40】図37に示した栓部材により密栓した様子を示す断面図
【図41】既設の水道管を更新する手順の一例を示す概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施形態について、流体管としての水道管に接続された分岐管を撤去する場合を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。図1は、管分岐部に仕切弁を介して分岐管が接続された水道管の縦断面図である。図2は、図1の管分岐部の要部を拡大して示す縦断面図である。図3は、その管分岐部の正面図である。図3におけるA−A矢視断面が、図1,2の縦断面に相当する。
【0037】
水道管1(本発明に係る流体管の一例)は、図1にて紙面に垂直となる方向に沿って延びる管路の一部を構成し、本実施形態では分割部を有しない一体構造のT字管で構成されている。水道管1の内部は通水状態にあり、後述する方法によって、不断水の状態を維持したまま管分岐部1aが密栓され、分岐管8が仕切弁9ごと撤去される。
【0038】
本実施形態のように一体構造のT字管で構成された水道管1は、それ自体が新設されるものであれば、その新設に際して分岐管8が接続される箇所に予め使用できる。即ち、図41の例で言えば、(d)にて割T字管87が装着される箇所に対し、(b)においてA区間の水道管を更新する時点で、かかる一体構造のT字管を予め管路に組み込んでおくことができる。この場合、通常の不断水工法のように割T字管を水道管に装着する必要がなくなり、工程を省略できる。
【0039】
水道管1の側面には、本体内部と連通する筒状の管分岐部1aが設けられており、管分岐部1aの内周面には、径方向内側に隆起した係合壁11が周方向に設けられている。係合壁11は欠落部12を有し、本実施形態では周方向の2箇所に欠落部12が形成されている。欠落部12は、係合壁11が設けられた内周面の軸方向端面1bにて開口し、後述する係合具の突起が嵌入可能に形成されている。係合壁11及び欠落部12の周方向長さや数は特に制限されない。
【0040】
管分岐部1aの内周面には、図2に示すような欠落部12に通ずるバヨネット溝14が2つ形成されており、係合壁11はバヨネット溝14の溝壁の一部として、欠落部12はバヨネット溝14の出入口として形成されている。バヨネット溝14は、欠落部12と対向する前方周壁面(前記第一周壁面に相当)15と、前方周壁面15よりも管分岐部1aの開口側(図2右側)に設けられた後方周壁面(前記第二周壁面に相当)16と、後方周壁面16の周方向両側に設けられた一対の規制壁面17,18とを備える。また、本実施形態では前方周壁面15と後方周壁面16とが互いに対向して周方向に延在し、バヨネット溝14が、前方周壁面15に連設され且つ前方周壁面15から周方向に離れるにつれて後方周壁面16側に延在するテーパ状のガイド壁面19を備える。
【0041】
分岐管8は、管分岐部1aに仕切弁9を介して接続されている。仕切弁9は、図1右側となる分岐管側端部が分岐管8にフランジ接続され、その反対側となる流体管側端部が水道管1の管分岐部1aに接続されていて、両端部間に連通可能な通路を形成している。仕切弁9は、その通路を遮断自在に出退する弁体91を内蔵しており、図1では下降した弁体91によって通路が遮断された状態にある。
【0042】
仕切弁9の流体管側端部は筒状挿口92として形成され、管分岐部1aに挿入されている。管分岐部1aには、筒状挿口92を受け止める段部13が形成されており、その隅部にOリング93が装着されている。仕切弁9の外周部には挿通孔を有するフランジ(不図示)が設けられており、管分岐部1aのフランジが有するボルト孔1c(図4参照)と前記挿通孔に挿通したボルトをナットで締め付けることで、仕切弁9が管分岐部1aに強固に接続されている。かかる構成では、フランジ接続に比べて水道管1から仕切弁9の分岐管側端部までの距離を短縮できるため、分岐管8の配設エリアが小さくなり、広い周囲スペースを確保できない場合に有用となる。
【0043】
不断水の状態を維持したまま、水道管1から分岐管8を仕切弁9ごと撤去するには、管分岐部1aに仕切弁9を接続した状態で、管分岐部1a内に栓部材を挿入して固定する必要がある。その際、仕切弁9の離脱作業を介在させずに、栓部材を挿入、固定して密封することが、作業性や栓部材の安定性の観点から望ましい。本発明は、かかる要請に対応しうるものであり、具体的な実施形態として以下に第1〜第3実施形態を説明する。
【0044】
[第1実施形態]
図4は、密栓作業を説明するための平面視断面図である。まずは、仕切弁9内の通路を弁体91により遮断したまま、仕切弁9から分岐管8を取り外す。次に、図4に示すように、密栓装置の栓部材2を仕切弁9の分岐管側端部に挿入すると共に、その仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続する。合フランジ95を接続することで、挿入開始時における栓部材2の移動ストロークを確保でき、栓部材2の芯出し及び挿入作業が簡便化される。この密栓装置は、栓部材2と、栓部材2を管分岐部1aに挿入して操作するための操作軸3とを備える。
【0045】
図5は、栓部材2と操作軸3の前方端との断面図である。図6は、図5のB−B矢視断面図である。以後、栓部材2の挿入方向に準じて、図5の左方向を前方、図5の右方向を後方と呼ぶ。また、栓部材2の挿入方向に沿って後方から見た場合に、軸周りとなる時計回りの回転を右回転、反時計回りの回転を左回転と呼ぶ。これらの呼び方は、後述の第2,3実施形態でも同様である。
【0046】
栓部材2は、外周に突起21aが形成された係合具21と、係合具21に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具22と、中栓具22を軸平行に取り囲む環状のシール材23とを有する。係合具21は、円筒状に形成され、その外周に一対の突起21aが突設されている。突起21aは、管分岐部1aの係合壁11の内径よりも大きい外径を有しつつ、その係合壁11の欠落部12を通過可能に形成されている。
【0047】
係合具21の後方側外周面には雄ねじ21bが形成されており、筒状をなす接続部材24の前方側内周面に形成された雌ねじと相互に螺合している。係合具21は、突起21aよりも前方側に前方筒部21cを有し、その前方筒部21cの前方端に隣接してシール材23が配置されている。前方筒部21cの内周には、図6に示すように一対のガイド突部21dが軸方向に沿って設けられており、ガイド突部21dの後方には、貫通孔21eを有する円板状部21fが設けられている。
【0048】
中栓具22は、前方筒部21cに収容された円柱状部22aと、その前方端にて外周側に張り出した張出部22bと、貫通孔21eに挿通された軸部22cとを有する。軸部22cの外周面には雄ねじが形成されており、貫通孔21eよりも大径の六角ナット25が螺合されている。六角ナット25の後方には、C字状の落下防止リング26が軸部22cに外嵌されている。
【0049】
円柱状部22aには、ガイド突部21dが嵌入される一対のガイド溝22dが形成されており、六角ナット25を回転したときに中栓具22が共廻りしないように構成されている。なお、共廻りを防止する構造としては、これに限られるものではない。例えば、径方向に延びる貫通孔を前方筒部21cに設け、その貫通孔に挿通したボルトを内周側に突出させ、ガイド突部21dの代わりにガイド溝22dに嵌入するようにしてもよい。
【0050】
シール材23は、円柱状部22aを取り囲むようにして装着されており、張出部22bと前方筒部21cとの間に形成された凹陥部22eに収容されている。密栓作業時におけるシール材23の損傷及び脱落を防止するうえで、シール材23の外径は、張出部22b及び前方筒部21cの外径と同等以下であることが好ましい。
【0051】
操作軸3は、栓部材2に着脱自在に連結され、係合具21の回転、及び、中栓具22の係合具21に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸3が、係合具21に着脱自在に連結される円筒状の主軸31と、中栓具22に着脱自在に連結される丸棒状の中軸32と、主軸31の後方側に取り付けられる反力受け部材33とを備える。
【0052】
主軸31は、合フランジ95の中心孔95aを軸方向に摺動自在に貫通しており、その中心孔95aの内周には主軸31との隙間を密封するOリングが付設されている。主軸31の前方側部分は比較的大径に形成されていて、外周面に形成された突部31aが係合具21の後方端と接続部材24とによって挟持固定されている。排水孔31bは、密栓作業時に内部に浸入した水を排出するための円孔である。
【0053】
中軸32は、主軸31に内挿されており、比較的大径に形成された前方側部分が中栓具22に嵌め合いで連結されている。本実施形態では、六角ナット25が嵌め込まれるように、中軸32の前方端に形成された筒状部32aが六角形に形成されているが、これ以外の多角形状を利用した嵌め合いでも構わない。主軸31と中軸32との軸方向の間隔は、中軸32に外挿されたスペーサー32bによって確保されている。スペーサー32bは、例えば砲金や樹脂材により形成される。
【0054】
図7は、操作軸3の後方端の断面図である。反力受け部材33は、軸直角方向に突出した一対のバー33aを有する筒状体をなし、主軸31に外嵌されている。バー33aの内側にはボルト33bが設けられ、主軸31を貫通して中軸32を押圧固定している。反力受け部材33よりも後方に突出した中軸32の後方端32cには、中軸32を回転させるためのハンドル(不図示)が装着される。バー33aには必要に応じて連結具(不図示)が取り付けられ、水道管1又は合フランジ95と反力受け部材33とが連結される。
【0055】
図4に示す如く仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続した後は、仕切弁9の弁体91を上方に退避させて通路を連通状態にする。このとき、栓部材2が水圧を受けるため、レバーホイスト等の連結具によって反力受け部材33を水道管1や合フランジ95等に連結しておき、反力を受け止めることが好ましい。この場合、レバーホイストのジャッキを介して操作軸3を押し込むことで、栓部材2を水圧に抗して簡便に前進させることができる。
【0056】
次に、操作軸3を前方に押し込み、図8に示すように栓部材2を管分岐部1aに挿入して、係合具21の突起21aが係合壁11の欠落部12を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部12を通過した突起21aは、図9に示すようにバヨネット溝14に嵌入され、前方周壁面15によって受け止められる。したがって、作業者は、突起21aが前方周壁面15に当接するところまで、栓部材2を押し込めばよい。なお、図示の都合上、図311,14〜16に示す正面図では栓部材2を実線で示している。
【0057】
続いて、図10に示すように、主軸31を回転操作することで係合具21を右回転し、突起21aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材2の軸方向移動を規制してロック状態とする(前記ロック工程に相当)。なお、係合具21と中栓具22との相対回転が規制されているため、中栓具22も一緒に回転する。水道管1は通水状態にあり、栓部材2は前方から流体圧力(即ち水圧)を受けるため、突起21aと係合壁11は強固に係合される。
【0058】
栓部材2をロック状態にするに際しては、栓部材2を右回転して突起21aの周方向位置をずらすと共に、栓部材2を後方に移動させて突起21aを後方周壁面16にて受け止める。本実施形態では、係合具21を右回転させたときに、図11に示すように、突起21aが前方周壁面15に沿って摺動し、ガイド壁面19によって後方周壁面16に案内され、一対の規制壁面17,18の間に配置される。
【0059】
これにより、係合具21は、軸方向移動が規制されると共に、一対の規制壁面17,18の間で回転移動が規制された状態となる。作業者は、突起21aを前方周壁面15に当接させた後、突起21aが規制壁面18に当接するところまで主軸31を右回転すればよい。このように、管分岐部1aの内部が見えない状況でありながらも、簡単な操作によって栓部材2をロック状態にできる。この状態であれば、水流等の作用により係合具21が自然に回転しても、栓部材2のロック状態が独りでに解除されることがない。
【0060】
次に、中軸32を回転操作することで六角ナット25を右回転させる。このとき、ガイド突部21dとガイド溝22dとの係合によって、中栓具22の共廻りが防止されていることから、六角ナット25と中栓具22とを相対回転させることができる。この回転動作に伴うねじ作用によって、中栓具22を係合具21に対して軸方向に相対移動させる。中軸32の回転操作は、後方端32cに取り付けたハンドルを操作して実行できる。このとき、必要に応じてバー33aによる押圧固定を緩めてもよい。
【0061】
本実施形態では、図12に示すように、六角ナット25と中栓具22とを相対回転させると、その回転動作に伴うねじ作用によって中栓具22が後退し、中栓具22が係合具21に近接移動する。これにより、中栓具22と係合具21との間に介在するシール材23を圧縮し、そのシール材23を径方向に拡張変形させて栓部材2と管分岐部1aとの間を密封できる。シール材23は、六角ナット25を回転しない限りは圧縮されないため、栓部材2を管分岐部1aに挿入して固定するまでの間に管分岐部1aの内周面と接触することがなく、シール材23の損傷や脱落が好適に防止される。
【0062】
管分岐部1aの密栓を完了した後は、主軸31から反力受け部材33を取り外し、管分岐部1aから仕切弁9と合フランジ95を離脱させる。そして、操作軸3と栓部材2との連結を解除し、栓部材2を管分岐部1a内に残置させた状態とする。操作軸3を栓部材2から取り外すには、接続部材24と係合具21との螺合を解除するだけでよい。最後に、図13に示すように、管分岐部1aにフランジ蓋96を被せて分岐管の撤去作業を終了する。
【0063】
諸般の事情により密栓した管分岐部1aを再び利用する場合には、上記の手順を逆に行えばよい。即ち、フランジ蓋96を取り外して、栓部材2に操作軸3を連結すると共に、仕切弁9、合フランジ95及び反力受け部材33を取り付けた後、管分岐部1aから栓部材2を取り出し、弁体91を下降させて仕切弁9の通路を遮断すればよい。
【0064】
管分岐部1aから栓部材2を取り出すに際しては、次のような手順となる。まず、図14に示すように、係合具21の突起21aが規制壁面17に当接するところまで主軸31を左回転し、突起21aを前方周壁面15に対向させる。次に、図15に示すように、操作軸3を前方に押し込み、突起21aを前方周壁面15に当接させる。続いて、図16に示すように、主軸31を左回転し、操作軸3を後方に移動させて突起21aをバヨネット溝14から引き抜けば、管分岐部1aから栓部材2が取り出される。
【0065】
このように、管分岐部1aの内部が見えない状況でありながらも、簡単な操作によって栓部材2のロック状態を解除することができる。しかも、栓部材2のロック状態が独りでに解除されることがないため、フランジ蓋96を取り外す作業も安全である。作業者は、図15の操作軸3を前方に押し込む段階で、栓部材2が受ける水圧が如何程かを把握できるため、図16における栓部材2の引き抜き作業を安全に行うことができる。
【0066】
既述のように、密栓作業中は栓部材2が水圧を受けることから、レバーホイスト等の連結具によって水道管1や合フランジ95に密栓装置を連結することが好ましく、その場合には、連結具に設けたジャッキを利用して栓部材2を押し込むことが可能となる。しかし、水圧が強い状況では、連結具がピンと張った状態になるため、操作軸3を操作して栓部材2を回転させることが難しい場合がある。かかる問題に対処した改善策について、図17〜26を参照して説明する。このうち図17,18及び20では、破線枠内に部材の正面図を示している。
【0067】
図17は、本発明に係る管分岐部密栓装置の一例を示す平面視断面図であり、栓部材2や操作軸3は平面図にて示してある。この密栓装置は、シール材23が外嵌装着された栓部材2と、栓部材2に着脱自在に連結され、栓部材2の回転及び軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸3と、内部に連通する供給口100が設けられたシリンダー部材101と、シリンダー部材101に先端部102を突出させて内蔵され、その先端部102が操作軸3に連結されるピストン部材103と、連結管としてのホース111とを備える。
【0068】
シリンダー部材101は水密に構成された筒状体であり、その後端部に設けられた供給口100と排気口104には、それぞれボールバルブ105,106が取り付けられている。ホース111は、ボールバルブ105を介して供給口100に接続されており、その反対側はボールバルブ95dを介して接続筒95bに接続されている。接続筒95bは、合フランジ95の側方に取り付けられ、管分岐部1aの内部と連通している。
【0069】
シリンダー部材101の先端部には、固定治具107が取り付けられている。固定治具107は、栓部材2の挿入方向に延びたステー108と、ステー108の先端部に固定されたプレート110とを備える。ステー108は、操作軸3を操作するときに回転移動するバー33aと接触しないように周方向に離れて配置されている。プレート110のノッチ109には、合フランジ95に溶接された筒状部材95cが嵌め込まれ、これにより水道管1に対するシリンダー部材101の相対位置が固定される。
【0070】
シリンダー部材101を位置固定した状態では、シリンダー部材101及びピストン部材103が操作軸3と同軸上に配置され、操作軸3の後端部にピストン部材103の先端部102が連結される。違う言い方をすれば、ピストン部材103が操作軸3を介在させて栓部材2に連結される。この実施形態では、先端部102が前方を開放した円筒体であり、中軸32の後方端32cを覆うようにして、反力受け部材33に軸方向から当接する例を示す。
【0071】
かかる構成によれば、仕切弁9の弁体91を上方に退避させた状態から、ボールバルブ105とボールバルブ95dを開放することで、シリンダー部材101の内部と管分岐部1aの内部とを連通させて、シリンダー部材101の内部に水を充満することができる。このとき、ボールバルブ106を開放しておけば、シリンダー部材101内の空気が排気口104を通じて排出される。
【0072】
これにより、シリンダー部材101内の水圧と管分岐部1a内の水圧とが同圧となるため、管分岐部1a内の水が栓部材2を押し返すように作用して生じるスラスト力が、シリンダー部材101内の水がピストン部材103に作用して生じるスラスト力の分だけ差し引かれることになる。この場合、操作軸3とピストン部材103が略同径であることが好ましく、それによって双方の受圧面積を同等にしてスラスト力を相殺できるため、密栓作業中に栓部材2が受ける水圧の影響を良好に抑えることができる。
【0073】
挿入工程又はロック工程では、上記のようにしてシリンダー部材101の内部と管分岐部1aの内部とを連通させ、栓部材2を挿入方向に押圧するようにシリンダー部材101内の水圧をピストン部材103に作用させることで、ジャッキなどを使わずとも栓部材2を水圧に抗して簡便に押し込むことができる。図17では、栓部材2を前方に押し込んだ状態を示している。また、栓部材2が受ける水圧の影響を抑えられることから、操作軸3の操作が容易になり、押し込んだ栓部材2をスムーズに回転させることができる。栓部材2の回転動作後、密栓装置は取り外される。
【0074】
図18に示す管分岐部密栓装置は、シリンダー部材101を位置固定する治具と、ピストン部材103と操作軸3との連結構造を除いて、図17と同じ構成である。シリンダー部材101は、固定治具115によって合フランジ95に取り付けられている。シリンダー部材101を位置固定した状態では、シリンダー部材101が操作軸3に対して軸をずらして配置され、ピストン部材103の先端部が操作軸3の後端部よりも前方に位置する。この密栓装置は、固定治具115の他に、ピストン部材103の先端部と操作軸3の後端部とを連結する連結治具120を備える。
【0075】
固定治具115は、シリンダー部材101の先端部に取り付けられたプレート116と、鉤状プレート117と、それらを連結するプレート118とを備える。プレート116には、ピストン部材103を挿通させる挿通孔116aと、ステー123を挿通させる挿通孔116bが形成されている。鉤状プレート117は、合フランジ95に溶接した板材95eに係合し、プランジャー119によって固定される。ステー123は、回転移動するバー33aと接触しないように周方向に離れて配置されている。
【0076】
連結治具120は、ピストン部材103の先端部に接続されたプレート121と、操作軸3の後端部に当接可能な押し込みプレート122と、それらを連結するステー123とを備える。プレート121は、ピストン部材103の先端部が螺合されるボルト孔121aと、ステー123の先端部が螺合されるボルト孔121bとを有し、押し込みプレート122は、ステー123の後端部が螺合されるボルト孔122aを有する。押し込みプレート122のボルト孔122aと反対側の端部は、中軸32の後方端32cから少し離れて位置し、その後方端32cを取り囲み得るようにノッチ124が形成されている。
【0077】
この密栓装置においても、図17の密栓装置と同様にして、栓部材2が受ける水圧の影響を良好に抑えることができる。図18の例では、ピストン部材103を前進させる過程で、押し込みプレート122が操作軸3の後端部(この実施形態では反力受け部材33)に軸方向から当接し、それらが連結された状態で密栓作業が行われるが、ステー123をもっと短くして当初から連結した状態にしても構わない。
【0078】
図19は、図18の状態から栓部材2を前方に押し込んだときの様子を示している。この密栓装置では、操作軸3とシリンダー部材101とが軸方向の位置を重複させていることから、図17の密栓装置よりも操作軸3の延長方向における作業スペースを小さくできる。そのため、広い周囲スペースを確保できない場所での密栓作業が可能になり、ピット形成作業などの施工作業に要する時間を短縮して作業効率を高めることができる。
【0079】
図20は、本発明に係る管分岐部密栓装置の別例を示す平面視断面図であり、栓部材2や操作軸3は平面図にて示してある。この密栓装置は、シール材23が外嵌装着された栓部材2と、栓部材2に着脱自在に連結され、栓部材2の回転及び軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸3と、操作軸3の後端側に配置された当接部127を有する押込部材125とを備える。
【0080】
押込部材125は、水道管1に対して位置が固定される本体部126と、本体部126の操作により軸方向に移動自在に構成された当接部127とを備える。また、本体部126は、操作軸3と平行に延びる送りネジ128と、それらと平行に延びるステー129と、本体部126の位置を固定する固定治具130とを備える。
【0081】
送りネジ128は、一対のプレート131,132により回転自在に支持され、プレート132を貫通した側の端部に丸ハンドル133が連結固定されている。ステー129は、プレート131,132に両端部を固定されている。送りネジ128及びステー129は、回転移動するバー33aと接触しないように周方向に離れて配置される。プレート131,132には、送りネジ128の端部を挿通支持するための挿通孔131a,132aと、ステー129の端部を支持固定するための取付孔131b,132bが形成されている。更に、プレート131には、貫通孔131cとノッチ134が形成されている。
【0082】
固定治具130は、プレート131とプランジャー135を有する。プレート131のノッチ134には、合フランジ95に溶接した筒状部材95cが嵌め込まれ、貫通孔131cに差し込んだプランジャー135は、板材95eにネジで固定された板材95fに取り付けられる。これにより、水道管1に対する本体部126の相対位置が固定される。なお、板材95eと板材95fとは一体物であってもよい。
【0083】
図21は、当接部127の分解図である。当接部127は、クラッチ部材141と、クラッチ部材142と、バネ143(前記弾性体に相当)と、そのバネ143の弾性変形を規制する規制手段とを備える。この規制手段は、後述するように互いに当接する突部144,147により構成される。図22は、クラッチ部材141を前方から見た正面図であり、図23は、クラッチ部材142を後方から見た背面図である。図24の正面図では、クラッチ部材141にクラッチ部材142の突部147と突起149を重ねて表示している。
【0084】
クラッチ部材141は、ネジこま145が装着される挿通孔141aと、1本のステー129が挿通される挿通孔141bと、クラッチ部材142が取り付けられる取付孔141cと、前方に向かって突出する一対の突部144とを有する。ネジこま145は送りネジ128の外周に螺合し、丸ハンドル133を操作して送りネジ128を回転させると、ねじ作用によって当接部127がステー129にガイドされながら移動する。
【0085】
クラッチ部材142は、前方を開放した筒体部146と、筒体部146の前端部から後方に向かって突出する一対の突部147と、筒体部146の後方に設けられた雄ねじ部148と、前端面に突設された位置決め用の突起149と、調整ハンドル150とを有する。筒体部146の内径は、中軸32の後方端32cを収容可能な程度に大きく、その外径は取付孔141cの内径と同等以下に設定されている。
【0086】
図20,24に示す状態では、クラッチ部材141の突部144にクラッチ部材142の突部147を突き合わせて、取付孔141cよりも後方に突き出した雄ねじ部148にナット151を締結している。バネ143は、クラッチ部材142の筒体部146に装着され、突部144,147同士の突き合わせにより軸方向長さが確保された空間153内に、圧縮代を残した状態で収容されている。即ち、突部144,147同士を突き合わせることで、バネ143の弾性変形を規制している。クラッチ部材142は、取付孔141cの軸周りに回転自在に支持され、筒体部146とクラッチ部材141との間にはベアリング152が装着されている。
【0087】
栓部材2を管分岐部1aに挿入するに際しては、まず、丸ハンドル133を操作して送りネジ128を回転させ、当接部127を前進させて操作軸3の後端部に当接させる。それと同時に、反力受け部材33の嵌入孔33cに突起149を嵌入し、操作軸3に対するクラッチ部材142の周方向位置を固定する。このとき、調整ハンドル150により突起149の周方向位置を調整できるが、突部144,147同士が完全に位置ずれしない範囲で行われる。
【0088】
次に、操作軸3に当接させた当接部127を更に前進させ、図25に示すように栓部材2を挿入方向に押圧する。当接部127は押込部材125の本体部126に螺合されており、その本体部126の回転動作に伴うねじ作用により推進力が付与されるため、栓部材2を水圧に抗して簡易に押し込むことができる。この段階においても、突部144,147同士を突き合わせていることにより、バネ143の弾性変形は規制されている。
【0089】
栓部材2を前方に押し込んだ後、操作軸3の操作により栓部材2を回転してロック状態にする。このとき、栓部材2の回転に伴ってクラッチ部材142が回転し、バネ143の弾性変形に対する規制が解除される。つまり、挿入工程では図24の状態であったものが、栓部材2の回転に連動して図26のように突部144,147同士の周方向位置がずれ、クラッチ部材142が後方に移動可能となり、バネ143が圧縮される状態となる。
【0090】
そして、回転した栓部材2が挿入方向後方へ移動する際、この移動をバネ143の弾性変形によって吸収する。即ち、当接部127自体は後方に移動しないものの、バネ143の圧縮により栓部材2の後方への移動を許容する。これにより、バネ143の反発力を利用して、栓部材2が水圧により急激に押し戻されることを防止できる。なお、図24において、バネ143を少し圧縮して反発力が予め生じる状態にしておくことで、水圧による急激な反力をより確実に緩和できる。
【0091】
以上のように、図17〜26を参照して説明した改善策に係る密栓方法及び密栓装置によれば、レバーホイスト等のジャッキを具備した連結具を使わずとも、栓部材2を容易に押し込むことができ、そのうえ栓部材2の回転操作をスムーズに行うことができる。密栓装置を構成するプレートやステーなどの部材の形状は、上記したものに限られない。これらの改善策は、第1実施形態だけでなく、後述する第2,3実施形態など他の実施形態においても適用できる。
【0092】
[第2実施形態]
第2実施形態は、以下に説明する構成の他は、第1実施形態と同様の構成・作用であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。図27は、第2実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端との断面図である。この密栓装置は、栓部材4と、栓部材4を管分岐部1aに挿入して操作するための操作軸5とを備えている。栓部材4は、外周に突起41aが形成された係合具41と、係合具41に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具42と、中栓具42を軸平行に取り囲む環状のシール材43とを有する。
【0093】
係合具41の後方側には、軸中心を挟んだ2箇所に貫通孔41bが設けられ、その各々に規制部材としてのリベット45が挿通されている。リベット45の先端は中栓具42の円孔42gに嵌入されており、係合具41と中栓具42との相対移動がリベット45によって規制されている。係合具41の前方筒部41cの内周面には雌ねじ41dが形成されていて、中栓具42の外周面の雄ねじ42hと相互に螺合している。この螺合は左ネジによるもので、中栓具42を係合具41に対して相対的に右回転させると、そのねじ作用によって中栓具42は後方に移動する。
【0094】
中栓具42は、前方筒部41cに収容された円筒状部42aと、その前方にて外周側に張り出した張出部42bと、後方にて比較的小径に形成された連結部42cとを有する。連結部42cは、係合具41よりも後方に突き出ており、その外周面には雄ねじ42dが形成され、内周側には多角形状(本実施形態では六角形状)の嵌合孔42fが形成されている。連結部42cの雄ねじ42dは、接続部材44の内周面に形成された雌ねじと相互に螺合している。この螺合は右ネジによるもので、雄ねじ42hと雌ねじ41dとの螺合とは逆回りになっている。
【0095】
シール材43は、円筒状部42aを取り囲むようにして装着されており、張出部42bと前方筒部41cとの間に形成された凹陥部42eに収容されている。密栓作業時におけるシール材43の損傷及び脱落を確実に防止できるよう、シール材43の外径は、張出部42b及び前方筒部41cの外径と同等以下に設定されている。
【0096】
操作軸5は、栓部材4に着脱自在に連結され、係合具41の回転、及び、中栓具42の係合具41に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸5が、中栓具42に着脱自在に連結される丸棒状の芯軸51と、その芯軸51の後方側に取り付けられた反力受け部材53(図28参照)とを備える。芯軸51の前端には、断面が多角形状(本実施形態では六角形状)をなして中栓具42の嵌合孔42fに嵌合される柱状部51aが設けられており、その柱状部51aの後方に鍔部51bが周設されている。
【0097】
接続部材44は、係合具41の後方端の内径よりも大きい外径を有するフランジ状の前方端部44aと、鍔部51bの外径よりも小さい内径を有する内フランジ状の後方端部44bとを有する筒状体であり、芯軸51は、鍔部51bが中栓具42の後方端と接続部材44の後方端部44bとによって挟持固定されている。操作軸5の後方側では、図28に示すように、一対のバー53aを有する反力受け部材53が、角柱状に形成された芯軸51の後端部に外嵌され、ナット部53bの締め付けによって固定されている。
【0098】
仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続した後は、前述した第1実施形態と同様に、仕切弁9の弁体91を上方に退避させて通路を連通状態とし、操作軸5を前方に押し込み、栓部材4を管分岐部1aに挿入して、係合具41の突起41aが係合壁11の欠落部12を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部12を通過した突起41aはバヨネット溝14に嵌入され、前方周壁面15によって受け止められる(図9参照)。
【0099】
続いて、図29に示すように、操作軸5を回転操作することにより、中栓具42と、その中栓具42に対する相対移動がリベット45により規制されている係合具41を右回転し、突起41aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材4の軸方向移動を規制する(前記ロック工程に相当)。このとき、突起41aは、バヨネット溝14の一対の規制壁面17,18の間に配置される(図11参照)。
【0100】
次に、突起41aが規制壁面18に当接した状態、即ち係合具41の右回転を規制した状態から、操作軸5を回転操作し、中栓具42を更に右回転させてリベット45に所定の負荷を作用させる。そうすると、図30に示すようにリベット45が剪断され、係合具41と中栓具42との相対移動の規制が解除される。その結果、中栓具42を係合具41に対して相対的に右回転でき、そのねじ作用によって中栓具42を係合具41に近接移動させ、シール材43を圧縮により拡張変形させて、栓部材4と管分岐部1aとの間を密封できる。リベット45は、例えば銅などの軟質金属で形成される。
【0101】
このように、本実施形態では、芯軸51の回転操作のみで、栓部材4の軸方向移動を規制するための係合具41の回転と、栓部材4と管分岐部1aとの間を密封するための中栓具42の軸方向移動とが行われ、しかもシール材43の損傷や脱落も好適に防止される。そのため、栓部材4の操作が非常に簡便化されたものとなり、操作軸5の機構も簡略化されたものとなる。
【0102】
管分岐部1aの密栓を完了した後は、芯軸51から反力受け部材53を取り外し、管分岐部1aから仕切弁9と合フランジ95を離脱させ、操作軸5と栓部材4との連結を解除し、栓部材4を残置させた管分岐部1aにフランジ蓋96を被せて分岐管の撤去作業を終了する。操作軸5を栓部材4から取り外すには、連結部42cと接続部材44との螺合を解除するだけでよい。
【0103】
密栓した管分岐部1aを再び利用する場合には、フランジ蓋96を取り外して、栓部材4に操作軸5を連結すると共に、仕切弁9、合フランジ95及び反力受け部材53を取り付けた後、管分岐部1aから栓部材4を取り出し、弁体91を下降させて仕切弁9の通路を遮断すればよい。管分岐部1aから栓部材4を取り出す際には、操作軸5の回転操作により中栓具42を左回転し、そのねじ作用によって中栓具42を前方に移動させ、シール材43の圧縮を解除する。
【0104】
上記において、中栓具42を左回転し始めたときには、それに伴って係合具41も左回転するが、すぐに突起41aが規制壁面17に当接し(図14参照)、中栓具42が前方に移動できるようになる。シール材43の圧縮を解除した後、更に中栓具42が前方に移動すると、図31に示すように接続部材44の前方端部44aと係合具41の後方端とが軸方向に押し当たって一体化される。このため、操作軸5を前方に押し込んで左回転させることで、管分岐部1aから栓部材4を取り出すことができる(図15,16参照)。
【0105】
[第3実施形態]
第3実施形態は、以下に説明する構成の他は、第1実施形態と同様の構成・作用であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。本実施形態では、図32に示すように、管分岐部1aがバヨネット溝14の前方にて内径が比較的小さい小径域1dを有している。小径域1dの後方端には、後方に向かって拡径するテーパ面1eが形成されている。小径域1dの内径は、後述するシール材63の圧縮前の外径よりも小さく設定されている。
【0106】
図33は、第3実施形態における栓部材と操作軸の前方端との拡大断面図である。この密栓装置は、栓部材6と、栓部材6を管分岐部1aに挿入して操作するための操作軸7とを備えている。栓部材6は、外周に突起61aが形成された係合具61と、係合具61に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具62と、中栓具62を軸平行に取り囲む環状のシール材63とを有する。
【0107】
係合具61は筒状体をなし、その後方側外周面には雄ねじ61bが形成されていて、筒状をなす接続部材64の前方側内周面に形成された雌ねじと相互に螺合している。中栓具62を係合具61に対して相対的に右回転させると、そのねじ作用によって中栓具62は前方に移動する。係合具61の内周面には雌ねじ61cが形成されていて、中栓具62の後方筒部62bの外周面に形成された雄ねじ62fと相互に螺合している。
【0108】
中栓具62は、外周に収容溝62cが形成された円板状部62aと、係合具61に挿通された後方筒部62bとを備える。収容溝62cの深さ寸法はシール材63の径寸法よりも小さく、シール材63は外周側に張り出して中栓具62に装着されている。収容溝62cの後方には、前方に向かって拡径するテーパ面62dが形成されている。円板状部62aの後端面は係合具61の前端面が当接した状態になっている。
【0109】
操作軸7は、栓部材6に着脱自在に連結され、係合具61の回転、及び、中栓具62の係合具61に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸7が、係合具61に着脱自在に連結される円筒状の主軸71と、中栓具62に着脱自在に連結される丸棒状の中軸72と、主軸71の後方側に取り付けられる反力受け部材とを備える。
【0110】
主軸71の前方側部分は比較的大径に形成されていて、外周面に形成された突部71aが係合具61の後方端と接続部材64とによって挟持固定されている。中軸72は、主軸71に内挿され、前方端には断面が多角形状(本実施形態では六角形状)をなす柱状部72aが設けられている。柱状部72aは、中栓具62の後方筒部62bに形成された多角形状(本実施形態では六角形状)の嵌合孔62eに挿入され、中軸72と中栓具62とが嵌め合いによって連結されている。主軸71及び中軸72の後方端並びに反力受け部材の構造は、前述した第1実施形態と同様である。
【0111】
仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続した後は、前述した第1実施形態と同様に、仕切弁9の弁体91を上方に退避させて通路を連通状態とし、操作軸7を前方に押し込み、栓部材6を管分岐部1aに挿入して、係合具61の突起61aが係合壁11の欠落部12を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部12を通過した突起61aはバヨネット溝14に嵌入され、前方周壁面15によって受け止められる(図9参照)。この段階で、シール材63は未だ小径域1d内に配置されていないことが好ましい。
【0112】
続いて、図34に示すように、主軸71を回転操作することで係合具61を右回転し、突起61aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材6の軸方向移動を規制する(前記ロック工程に相当)。このとき、突起61aは、バヨネット溝14の一対の規制壁面17,18の間に配置される(図11参照)。
【0113】
次に、中軸72を回転操作することで中栓具62を右回転し、中栓具62と係合具61とを相対回転させ、その回転動作に伴うねじ作用によって中栓具62を係合具61に対して軸方向に相対移動させる。本実施形態では、図35に示すように、中栓具62を係合具61に対して相対的に右回転させると、栓部材6の挿入方向前方に中栓具22が移動し、シール材63が小径域1dに挿入される。これにより、シール材63を小径域1dの内周面で圧縮して、栓部材6と管分岐部1aとの間を密封できる。作業者は、中栓具62のテーパ面62dが小径域1dのテーパ面1eに当接するところまで、中栓具62を前進させればよい。
【0114】
管分岐部1aの密栓を完了した後は、主軸71から反力受け部材を取り外し、管分岐部1aから仕切弁9と合フランジ95を離脱させ、操作軸7と栓部材6との連結を解除し、栓部材6を残置させた管分岐部1aにフランジ蓋96を被せて分岐管の撤去作業を終了する。操作軸7を栓部材6から取り外すには、係合具61と接続部材64との螺合を解除するだけでよい。
【0115】
密栓した管分岐部1aを再び利用する場合には、上記の手順を逆に行えばよい。即ち、フランジ蓋96を取り外して、栓部材6に操作軸7を連結すると共に、仕切弁9、合フランジ95及び反力受け部材を取り付けた後、管分岐部1aから栓部材6を取り出し(図14〜16参照)、弁体91を下降させて仕切弁9の通路を遮断すればよい。
【0116】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、密栓を実施する流体管が、分割部を有しない一体構造のT字管である例を示したが、本発明はこれに限られず、十字管など管分岐部を有する他の異形管でも構わない。また、本発明は割り構造の流体管に対しても適用でき、図36に例示するように、既設の水道管90に装着された割T字管97の管分岐部97aを密栓することが可能である。この場合、管分岐部97aの内周面には欠落部99を有する係合壁98が設けられる。
【0117】
(2)前述の実施形態では、栓部材の外周に設けた突起を、管分岐部の内周面に設けたバヨネット溝に嵌入する例を示したが、本発明では、栓部材の外周に設けたバヨネット溝に、管分岐部の内周面に設けた突起を嵌入するようにしても構わない。この場合、管分岐部の内周面のバヨネット溝に錆やゴミが溜まる心配がないため、より確実な密栓作業を実行することができる。
【0118】
図37に示す水道管161では、管分岐部161aの内周面の周方向の2箇所に突起162が設けられている。また、栓部材170の外周には、図38に示すように、径方向外側に隆起した係合壁171が周方向に設けられている。係合壁171は、前方に向かって開口した欠落部172を有し、この欠落部172を通じて突起162がバヨネット溝174に嵌入される。バヨネット溝174は、前掲したバヨネット溝14を反転した形状であり、前方周壁面(前記第二周壁面に相当)175と、後方周壁面(前記第一周壁面に相当)176と、一対の規制壁面177,178と、ガイド壁面179とを備える。
【0119】
図39に示すように、栓部材170は、外周にバヨネット溝174が設けられた係合具181と、係合具181に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具182と、中栓具182を軸平行に取り囲む環状のシール材183とを有する。係合具181は、バヨネット溝174を有する前方筒部181aと、外周に雄ねじが形成された軸部181bとを有し、中栓具182は、外周側に張り出した張出部182aと、軸部181bが挿通される挿通孔182bと、軸部181bに螺合された六角ナット182cとを有する。シール材183は、前方筒部181aの後方端と張出部182aとの間に配置されている。
【0120】
操作軸190は、栓部材170に着脱自在に連結され、係合具181の回転、及び、中栓具182の係合具181に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。操作軸190は、円筒状の主軸191と、それに内挿された丸棒状の中軸192とを備え、操作軸190の後方側部分は前掲した操作軸3と同様に構成されている。主軸191の先端部には六角ナット182cが嵌め込まれており、中軸192の先端部は軸部181bの後端部181cに連結固定されている。
【0121】
密栓作業では、図37に示す状態から栓部材170を前進させて管分岐部161aに挿入し、突起162が係合壁171の欠落部172を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部172を通過した突起162はバヨネット溝174に嵌入され、後方周壁面176によって受け止められる。続いて、ハンドル193を介した中軸192の操作により係合具181を右回転させ、突起162の周方向位置を相対的にずらし、突起162と係合壁171との周方向位置を合わせてロック状態とする(前記ロック工程に相当)。係合具181を右回転させると、突起162がガイド壁面179によって前方周壁面175に案内され、一対の規制壁面177,178の間に配置される。
【0122】
次に、主軸191を操作して六角ナット182cを回転させ、その回転動作に伴うねじ作用により中栓具182を係合具181に対して軸方向に相対移動させる。本実施形態では、図40に示すように、中栓具182が前進することで、シール材183が圧縮されて径方向に拡張変形し、栓部材170と管分岐部161aとの間が密封される。
【0123】
この実施形態のように、バヨネット溝174よりも後方にシール材183が配置されている場合には、シール材183が突起162を通過する必要がなく、したがってシール材183の外径を大きく設定することができる。その結果、管分岐部161aの内径を大きく設定して、流量を確保し易くなるという利点が生まれる。
【0124】
(3)本発明ではバヨネット溝の形状が図2や図38で示したものに限られず、趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、ガイド壁面がテーパ状に延びるのではなく、円弧状に湾曲したものでも構わない。また、バヨネット溝は、ガイド壁面を有するものに制限されず、例えば前述したバヨネット溝14において、前方周壁面15と規制壁面18とが直交するものでもよい。
【0125】
(4)本発明の管分岐部密栓方法に用いられる栓部材の構造は、管分岐部に設けられた係合壁の欠落部を通過可能な突起を外周に有し、或いは管分岐部に設けられた突起が係合壁の欠落部を通じて嵌入されるバヨネット溝を有して、管分岐部との間を密封できるものであれば、特に限られるものではない。前述の実施形態では、栓部材をロック状態にした後に中栓具を操作してシール材を圧縮し、栓部材と管分岐部との間を密封する例を示したが、本発明では、栓部材をロック状態にする前にシール材が管分岐部との間を密封するものでも構わない。
【0126】
したがって、本発明の管分岐部密栓方法に用いられる栓部材は、前述の実施形態で示したような複雑な構造を有するものではなく、例えば単なる円柱状部材の外周に突起又はバヨネット溝を設けると共に、その突起又はバヨネット溝の前方又は後方にシール材を装着したような構造でもよい。但し、前述の実施形態に係る栓部材であれば、栓部材をロック状態にした後にシール材を圧縮できることから、シール材の損傷や脱落を良好に防止することができる。
【0127】
(5)前述の実施形態では、通水状態にある流体管の密栓について説明したが、本発明に係る流体管であれば、たとえ空管状態であっても栓部材を簡便にロック状態にすることができる。
【0128】
(6)本発明は、水道管の更新のために分岐管を撤去するときに限られず、その他の事情により流体管の管分岐部を密栓する場合において適用できるものである。
【0129】
(7)前述の実施形態では、流体管として水道管を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、水以外の各種の液体・気体などの流体に用いる流体管に適用できる。
【符号の説明】
【0130】
1 水道管
1a 管分岐部
1d 小径域
2,4,6 栓部材
3,5,7 操作軸
8 分岐管
9 仕切弁
11 係合壁
12 欠落部
14 バヨネット溝
15 前方周壁面(第一周壁面)
16 後方周壁面(第二周壁面)
17 規制壁面
18 規制壁面
19 ガイド壁面
21,41,61 係合具
21a,41a,61a 突起
22,42,62 中栓具
23,43,63 シール材
24,44,64 接続部材
25 六角ナット
31,71 主軸(第一操作部材)
32,72 中軸(第二操作部材)
33,53 反力受け部材
45 リベット(規制部材)
51 芯軸
95 合フランジ
96 フランジ蓋
100 供給口
101 シリンダー部材
103 ピストン部材
115 固定治具
120 連結治具
125 押込部材
127 当接部
143 バネ(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部に栓部材を挿入し、前記管分岐部の内周面及び前記栓部材の外周の一方に設けられた係合壁の欠落部を、他方に設けられた突起が通過した状態にする挿入工程と、前記栓部材を回転させて、前記突起と前記係合壁との周方向位置を合わせて軸方向に係合し、前記栓部材の軸方向移動を規制するロック工程とを備え、
前記挿入工程では、前記欠落部を通じて前記突起をバヨネット溝に嵌入し、前記バヨネット溝の第一周壁面にて前記突起を受け止め、
前記ロック工程では、前記栓部材を回転させて前記突起の周方向位置を相対的にずらすと共に、前記栓部材を挿入方向後方に移動させて前記突起を前記バヨネット溝の第二周壁面にて受け止め、周方向に間隔を置いて設けられた一対の規制壁面の間に前記突起を配置する管分岐部密栓方法。
【請求項2】
前記ロック工程では、前記突起が前記第一周壁面に沿って摺動するように前記栓部材を回転させ、次いで前記第一周壁面に連設されたガイド壁面によって前記突起を前記第二周壁面に案内する請求項1に記載の管分岐部密栓方法。
【請求項3】
筒状の管分岐部が側面に設けられた流体管において、
前記管分岐部の内周面に、欠落部を有する係合壁と、その欠落部に通ずるバヨネット溝とが設けられており、
前記バヨネット溝が、前記欠落部と対向する第一周壁面と、前記第一周壁面よりも前記管分岐部の開口側に設けられた第二周壁面と、前記第二周壁面の周方向両側に設けられた一対の規制壁面とを備えることを特徴とする流体管。
【請求項4】
筒状の管分岐部が側面に設けられた流体管において、
前記管分岐部の内周面に、欠落部を有する係合壁と、その欠落部を出入口とし、前記分岐部に挿入された栓部材の突起を嵌入可能に形成されたバヨネット溝とが設けられており、
前記バヨネット溝が、前記欠落部を通じて嵌入された前記突起を受け止め可能な第一周壁面と、前記第一周壁面よりも前記栓部材の挿入方向後方に設けられた第二周壁面と、前記第二周壁面の周方向両側に設けられた一対の規制壁面とを備えることを特徴とする流体管。
【請求項5】
前記第一周壁面と前記第二周壁面とが互いに対向して周方向に延在し、前記バヨネット溝が、前記第一周壁面に連設され且つ前記第一周壁面から周方向に離れるにつれて前記第二周壁面側に延在するガイド壁面を備える請求項3又は4に記載の流体管。
【請求項6】
前記ガイド壁面がテーパ状に形成されている請求項5に記載の流体管。
【請求項7】
前記挿入工程又は前記ロック工程では、シリンダー部材が内蔵するピストン部材に前記栓部材又は前記栓部材と連結した操作軸を連結し、前記シリンダー部材の内部と前記管分岐部の内部とを連通させて前記シリンダー部材の内部に流体を充満して、前記シリンダー部材の内部の流体圧を前記ピストン部材に作用させる請求項1又は2記載の管分岐部密栓方法。
【請求項8】
前記挿入工程では、前記栓部材又は前記栓部材と連結した操作軸に押込部材の当接部を当接させ、前記当接部が備える弾性体の弾性変形を規制手段により規制した状態にて、前記押込部材の操作により前記当接部に推進力を付与して前記栓部材を挿入方向に押圧し、
前記ロック工程では、前記栓部材の回転に伴って前記規制手段による規制を解除し、前記栓部材の挿入方向後方への移動を前記弾性体の弾性変形によって吸収する請求項1又は2記載の管分岐部密栓方法。
【請求項9】
シール材が外嵌装着された栓部材と、前記栓部材に着脱自在に連結され、前記栓部材の回転及び軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸と、内部に連通する供給口が設けられたシリンダー部材と、前記シリンダー部材に先端部を突出させて内蔵され、前記操作軸に連結されるピストン部材とを備える管分岐部密栓装置。
【請求項10】
前記シリンダー部材が前記操作軸に対して軸をずらして配置され、前記ピストン部材の先端部が前記操作軸の後端部よりも前方に位置するように、前記シリンダー部材の位置を固定する固定治具と、前記ピストン部材と前記操作軸とを連結する連結治具とを備える請求項9記載の管分岐部密栓装置。
【請求項11】
シール材が外嵌装着された栓部材と、前記栓部材に着脱自在に連結され、前記栓部材の回転及び軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸と、前記操作軸に当接する当接部を有する押込部材とを備え、前記押込部材の操作により前記当接部に推進力を付与することで、前記栓部材を挿入方向に押圧可能に構成された管分岐部密栓装置。
【請求項12】
前記当接部が、弾性体と、その弾性体の弾性変形を規制する規制手段とを備え、前記当接部を前記操作軸に当接した状態で前記栓部材を回転することで前記規制手段による規制が解除され、前記栓部材の挿入方向後方への移動を前記弾性体の弾性変形によって吸収するように構成された請求項11記載の管分岐部密栓装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate