説明

管分岐部密栓方法及び管分岐部密栓装置

【課題】流体管の側面に設けられた管分岐部の密栓とその解除が簡便で、しかもシール材の損傷や脱落を防止できる管分岐部密栓方法と、その方法に用いうる管分岐部密栓装置を提供すること。
【解決手段】まず、外周に突起21aが形成された係合具21と、係合具21に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具22と、中栓具22を軸平行に取り囲むシール材23とを有する栓部材2を筒状の管分岐部1aに挿入し、突起21aが管分岐部1aの内周面に設けられた係合壁11の欠落部を通過した状態にする。次いで、係合具21を回転し、突起21aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材2の軸方向移動を規制する。そして、中栓具22を係合具21に対して軸方向に相対移動させることによりシール材23を圧縮し、栓部材2と管分岐部1aとの間を密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部を密栓するための管分岐部密栓方法と、その方法に用いうる管分岐部密栓装置に関し、特に不断水工法により接続された分岐管を仕切弁ごと撤去する場合に有用である。
【背景技術】
【0002】
古くなった既設の水道管(流体管の一例)を更新するに際しては、水道水の利用者に対する利便性を考慮し、管路を上流側で止水することなく不断水の状態を維持したまま施工することが望まれる。そこで、不断水工法を利用して既設の水道管の途中に分岐管を接続し、その分岐管により形成したバイパスで通水状態を保持するようにすれば、断水せずとも水道管の更新を行うことができる。かかる不断水工法は、例えば下記特許文献1に記載されている。
【0003】
図27は、既設の水道管を更新する手順の一例を示す概略図である。管路における矢印は水の流れを表している。まず、管路中のA区間を対象とし、その両端に割T字管81,82を装着して各々に仕切弁83を接続する(図27(a))。次に、各仕切弁83に不図示の穿孔装置を接続し、割T字管81,82で囲まれた管路部分を穿孔した後、穿孔装置を仕切弁83から取り外す。そして、分岐管84を接続してバイパスを形成すると共に、仕切弁83を開状態とし、弁体を内蔵したストッパー85を本管に設置して閉状態とする(図27(b))。これにより、不断水の状態を維持したまま、A区間にある既設の水道管を新設管路8Aに更新することができる。
【0004】
A区間における水道管の更新が完了したら、ストッパー85を開状態として本管に通水する。この段階でA区間のバイパスは不要となるため、分岐管84を撤去する(図27(c))。続いて、B区間を対象とし、上記と同じ要領で分岐管86を接続してバイパスを形成すると共に、仕切弁89を開状態とし、ストッパー85を閉状態とする(図27(d))。このとき、割T字管87は、A区間において新設の水道管に装着される。そして、不断水の状態を維持したまま、B区間にある水道管を新設管路8Bに更新し、それが完了したら分岐管86を撤去する(図27(e))。かかる工程を繰り返すことで、既設の水道管を順次に更新することができる。
【0005】
ところで、上記のような水道管の更新工事においては、分岐管を撤去する工程が煩雑であり、特に分岐管を撤去するにあたり本管から仕切弁83,89を取り外すには、本管にて不断水の状態を維持したまま密栓することが必要となり、作業が非常に煩雑となる。そのため、従来は、分岐管だけを取り外して仕切弁は残置させておくことが行われていたが、将来同じ場所を掘削した際に仕切弁を重機で引っ掛けてしまうという不安があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、分岐管を仕切弁ごと撤去し得る方法として、下記特許文献2,3が開示されている。この方法では、既設管の穿孔箇所に環状コアを挿入し、その環状コアを拡径して密着係止させた後、螺合作用又は止めリングを介した嵌合作用により栓体を取り付けて密栓する。しかし、これらの方法では、不断水の状態を維持したまま環状コアから栓体を容易に離脱できないため、本管に分岐管を再び接続し且つ密栓を解除して通水させる場合には、とても使い勝手が悪い。
【0007】
また、図27(d)のように新設管からバイパスを分岐させる場合には、新設管に割り構造の割T字管を装着して穿孔するのではなく、その新設管の一部を予め一体構造のT字管で構成しておき、そのT字管の側面に設けられた管分岐部に仕切弁を介して分岐管を接続することも考えられるが、下記特許文献2,3記載の発明はそもそも割T字管の撤去方法であるため、かかる場合には適用し得ない。
【0008】
一方、下記特許文献4には、シール材を挟持する一対の弁体を割T字管の管分岐部に挿入して密栓するための装置が記載されている。しかし、この装置では、管分岐部に対する弁体の固定と該弁体同士の固定を行うのに、弁体を直に操作する必要がある。それ故、シール材で管分岐部を密封した後、弁体やシール材を固定する前に、管分岐部から仕切弁等を離脱しなければならず、栓部材を挿入、固定して密封するという作業を一連に実施することができない。加えて、管分岐部の内周面にボルトを圧接することによって弁体を固定するため、管分岐部に蓋を取り付けるまでは弁体の固定が心許無い。
【0009】
本発明者は、分岐管を仕切弁ごと撤去できるよう、上記のようにして配管された一体構造の流体管、或いは穿孔した既設管に装着された割り構造の流体管に対し、その側面に設けられた筒状の管分岐部を密栓することを考え、更に作業性や栓部材の安定性を考慮して、栓部材の突起を管分岐部の係合壁に係合させて固定する手法(本出願時において未公知)を想到した。しかし、かかる手法においては、栓部材を挿入して固定するまでの間にシール材が管分岐部の内周面と接触し、シール材の損傷や脱落を生じ易いことが判明した。
【特許文献1】特開2002−154004号公報
【特許文献2】特開2002−267086号公報
【特許文献3】特開2005−106083号公報
【特許文献4】特開昭63−13997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体管の側面に設けられた管分岐部の密栓とその解除が簡便で、しかもシール材の損傷や脱落を防止できる管分岐部密栓方法と、その方法に用いうる管分岐部密栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明の請求項1に記載の管分岐部密栓方法は、外周に突起が形成された係合具と、前記係合具に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具と、前記中栓具を軸平行に取り囲むシール材とを有する栓部材を、流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部に挿入し、前記突起が前記管分岐部の内周面に設けられた係合壁の欠落部を通過した状態にする挿入工程と、前記係合具を回転し、前記突起と前記係合壁との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、前記栓部材の軸方向移動を規制するロック工程と、前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動させることにより前記シール材を圧縮し、前記栓部材と前記管分岐部との間を密封するシール工程と、を備えるものである。
【0012】
本発明の管分岐部密栓方法では、管分岐部に栓部材を挿入して回転させることにより、栓部材の軸方向移動を規制して位置を固定できる。この栓部材は、係合具に形成された突起を管分岐部に設けられた係合壁に係合させて、簡便で且つ安定的に固定される。シール材による密封は、中栓具を係合具に対して軸方向に相対移動させることにより行われるため、挿入工程及びロック工程では、管分岐部の内周面にシール材を接触させることなく、該シール材の損傷や脱落を防止できる。また、栓部材による密栓を解除するには、栓部材を回転して突起と係合壁との周方向位置をずらし、管分岐部から栓部材を引き抜くだけでよいため、簡便な作業で済む。
【0013】
本発明によれば、上記のようにして管分岐部を密栓できることから、不断水工法により接続された分岐管の撤去作業においては、該分岐管を仕切弁ごと撤去することが可能となる。しかも、係合具の回転操作により栓部材の軸方向移動を規制できるため、仕切弁等を離脱する作業を介在させることなく、栓部材を挿入、固定して密封するという作業を効率良く実行できる。本発明では、管分岐部を有する流体管としてT字管や十字管その他の異形管を採用でき、その構造は一体構造でもよいが、既設管に装着可能な割り構造でも構わない。
【0014】
本発明の請求項2に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1に記載の管分岐部密栓方法であって、前記シール工程では、前記中栓具を前記係合具に近接移動させることにより、前記中栓具と前記係合具との間に介在する前記シール材を圧縮し、該シール材を径方向に拡張変形させて前記栓部材と前記管分岐部との間を密封するものである。この密栓方法では、中栓具を係合具に近接移動させることによりシール材による密封が行われることから、挿入工程及びロック工程では、シール材を管分岐部の内周面に接触させることなく、該シール材の損傷や脱落を確実に防止することができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1に記載の管分岐部密栓方法であって、前記シール工程では、前記中栓具を前記栓部材の挿入方向前方に移動させて、前記シール材の外径よりも内径が小さい前記管分岐部の小径域に挿入し、該中栓具に装着されている前記シール材を前記小径域の内周面で圧縮して、前記栓部材と前記管分岐部との間を密封するものである。この密栓方法では、中栓具を管分岐部の小径域に挿入することによりシール材による密封が行われることから、挿入工程及びロック工程では、シール材を管分岐部の内周面に接触させることなく、該シール材の損傷や脱落を確実に防止することができる。
【0016】
本発明の請求項4に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1〜3いずれかに記載の管分岐部密栓方法であって、前記係合具に着脱自在に連結される第一操作部材と、前記中栓具に着脱自在に連結される第二操作部材とを有する操作軸を用いて、前記ロック工程では、前記第一操作部材を操作することで前記係合具を回転し、前記シール工程では、前記第二操作部材を操作することで前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動させるものである。この場合、シール工程における中栓具の軸方向移動を操作する部材が、ロック工程における係合具の回転を操作する部材とは別であることから、軸方向移動が規制された係合具に対して中栓具を簡便に相対移動させることができる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1〜3いずれかに記載の管分岐部密栓方法であって、前記中栓具に着脱自在に連結される操作軸と、前記係合具と前記中栓具との相対移動を規制する規制部材とを用いて、前記ロック工程では、前記操作軸を操作することにより、前記中栓具と、該中栓具に対する相対移動が規制されている前記係合具とを回転し、前記シール工程では、前記係合具の回転を規制した状態から前記中栓具を更に回転させて前記規制部材を剪断し、前記係合具と前記中栓具との相対移動の規制を解除した上で、前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動させるものである。この場合、シール工程における中栓具の軸方向移動を操作する部材によって、ロック工程における係合具の回転を操作することから、栓部材の操作を簡便化するとともに操作軸の機構を簡略化できる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の管分岐部密栓方法は、請求項1〜5いずれかに記載の管分岐部密栓方法であって、前記中栓具が前記係合具又はその他の部材に螺合されており、前記シール工程では、前記中栓具が螺合された相手方部材と前記中栓具とを相対回転させ、その回転動作に伴うねじ作用によって前記中栓具を軸方向に移動させるものである。この方法によれば、中栓具が螺合された相手方部材と該中栓具との相対回転に伴うねじ作用を利用することから、中栓具を係合具に対して軸方向に相対移動させる操作が簡便となる。
【0019】
また、本発明の請求項7に記載の管分岐部密栓装置は、外周に突起が形成された係合具と、前記係合具に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具と、前記中栓具を軸平行に取り囲むシール材とを有する栓部材と、前記栓部材に着脱自在に連結され、前記係合具の回転、及び、前記中栓具の前記係合具に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸とを備えるである。
【0020】
本発明の管分岐部密栓装置によれば、操作軸を操作することで、流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部に栓部材を挿入し、その状態で栓部材の係合具を回転したり、中栓具を係合具に対して軸方向に相対移動させたりできる。このため、上述したように、係合具の突起が管分岐部の内周面に設けられた係合壁の欠落部を通過した状態とし、該係合具を回転して突起と係合壁とを係合させることで栓部材の軸方向移動を規制でき、更にその状態から中栓具を軸方向移動させることでシール材に働き掛けて、栓部材と管分岐部との間を密封することができる。したがって、栓部材を管分岐部に挿入して固定するまでの間に、管分岐部の内周面にシール材を接触させることなく、シール材の損傷や脱落を防止できる。
【0021】
この密栓装置によれば、上記のようにして管分岐部を密栓できることから、不断水工法により接続された分岐管の撤去作業においては、該分岐管を仕切弁ごと撤去することが可能となる。その際、操作軸を操作することによって、係合具の回転と、中栓具の係合具に対する軸方向の相対移動とを実行できることから、仕切弁等を離脱する作業を介在させることなく、栓部材を挿入、固定して密封する作業を一連に実施できる。
【0022】
本発明の請求項8に記載の管分岐部密栓装置は、請求項7に記載の管分岐部密栓装置であって、前記中栓具と前記係合具との間に前記シール材が介在し、前記中栓具を前記係合具に近接移動させると、前記シール材が圧縮されて径方向に拡張変形するものである。かかる構成では、中栓具を係合具に近接移動させることによりシール材を圧縮し、その圧縮作用を利用してシール材を径方向に拡張変形できることから、栓部材を管分岐部に挿入して固定するまでの間に、シール材が管分岐部の内周面と接触するのを防いで、該シール材の損傷や脱落を確実に防止することができる。
【0023】
本発明の請求項9に記載の管分岐部密栓装置は、請求項7に記載の管分岐部密栓装置であって、前記シール材が外周側に張り出して前記中栓具に装着されており、前記栓部材の前記操作軸が連結される側とは反対の方向に、前記中栓具を前記係合具に対して相対移動できるように構成されたものである。かかる構成では、軸方向移動が規制された係合具に対して、中栓具と共にシール材を相対移動できるため、管分岐部にシール材の外径よりも内径が小さい小径域を設けておくことにより、該小径域にてシール材を圧縮して密封することができる。その結果、栓部材を管分岐部に挿入して固定するまでの間に、シール材が管分岐部の内周面と接触するのを防いで、該シール材の損傷や脱落を確実に防止することができる。
【0024】
本発明の請求項10に記載の管分岐部密栓装置は、請求項7〜9いずれかに記載の管分岐部密栓装置であって、前記操作軸が、前記係合具に連結される第一操作部材と、前記中栓具に連結される第二操作部材とを有し、前記第一操作部材を操作することで前記係合具を回転でき、前記第二操作部材を操作することで前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動できるように構成されたものである。この場合、中栓具の係合具に対する相対移動を操作する部材が、係合具の回転を操作する部材とは別であることから、軸方向移動が規制された係合具に対して中栓具を簡便に相対移動させることができる。
【0025】
本発明の請求項11に記載の管分岐部密栓装置は、請求項7〜9いずれかに記載の管分岐部密栓装置であって、前記係合具と前記中栓具との相対移動を規制する規制部材が設けられ、前記操作軸を操作して前記中栓具を回転させると、その回転動作に連動して前記係合具が回転し、前記係合具の回転を規制した状態から前記中栓具を更に回転させて所定の負荷が作用すると、前記規制部材が剪断されて前記係合具と前記中栓具との相対移動の規制が解除されるものである。この場合、中栓具の係合具に対する相対移動を操作する部材によって、係合具の回転を操作できることから、栓部材の操作を簡便化するとともに操作軸の機構を簡略化できる。
【0026】
本発明の請求項12に記載の管分岐部密栓装置は、請求項7〜11いずれかに記載の管分岐部密栓装置であって、前記中栓具が前記係合具又はその他の部材に螺合されており、前記中栓具が螺合された相手方部材と前記中栓具とを相対回転させると、その回転動作に伴うねじ作用によって前記中栓具が前記係合具に対して軸方向に相対移動するものである。この構成によれば、中栓具が螺合された相手方部材と該中栓具との相対回転に伴うねじ作用を利用することから、中栓具を係合具に対して軸方向に相対移動させる操作が簡便となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施形態について、流体管としての水道管に接続された分岐管を撤去する場合を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。図1は、管分岐部に仕切弁を介して分岐管が接続された水道管の縦断面図である。図2は、図1の管分岐部の要部を拡大して示す縦断面図である。図3は、その管分岐部の正面図である。図3におけるA−A矢視断面が、図1,2の縦断面に相当する。
【0028】
水道管1は、図1にて紙面に垂直となる方向に沿って延びる管路の一部を構成し、本実施形態では分割部を有しない一体構造のT字管で構成されている。水道管1の内部は通水状態にあり、後述する方法によって、不断水の状態を維持したまま管分岐部1aが密栓され、分岐管8が仕切弁9ごと撤去される。
【0029】
本実施形態のように一体構造のT字管で構成された水道管1は、それ自体が新設されるものであれば、その新設に際して分岐管8が接続される箇所に予め使用できる。即ち、図27の例で言えば、(d)にて割T字管87が装着される箇所に対し、(b)においてA区間の水道管を更新する時点で、かかる一体構造のT字管を予め管路に組み込んでおくことができる。この場合、通常の不断水工法のように割T字管を水道管に装着する必要がなくなり、工程を省略できる。
【0030】
水道管1の側面には、本体内部と連通する筒状の管分岐部1aが設けられており、管分岐部1aの内周面には、径方向内側に隆起した係合壁11が周方向に設けられている。係合壁11は欠落部12を有し、本実施形態では周方向の2箇所に欠落部12が形成されている。欠落部12は、係合壁11が設けられた内周面の軸方向端面1bにて開口し、後述する係合具の突起が嵌入可能に形成されている。係合壁11及び欠落部12の周方向長さや数は特に制限されない。
【0031】
管分岐部1aの内周面には、図2に示すような欠落部12に通ずるバヨネット溝14が2つ形成されており、係合壁11はバヨネット溝14の溝壁の一部として、欠落部12はバヨネット溝14の出入口として形成されている。バヨネット溝14は、欠落部12と対向する前方周壁面15と、前方周壁面15と軸方向端面1bとの間に配置された後方周壁面16と、後方周壁面16の周方向両側に設けられた一対の規制壁面17,18と、前方周壁面15に連設されたテーパ状のガイド壁面19とを備える。
【0032】
分岐管8は、管分岐部1aに仕切弁9を介して接続されている。仕切弁9は、図1右側となる分岐管側端部が分岐管8にフランジ接続され、その反対側となる流体管側端部が水道管1の管分岐部1aに接続されていて、両端部間に連通可能な通路を形成している。仕切弁9は、その通路を遮断自在に出退する弁体91を内蔵しており、図1では下降した弁体91によって通路が遮断された状態にある。
【0033】
仕切弁9の流体管側端部は筒状挿口92として形成され、管分岐部1aに挿入されている。管分岐部1aには、筒状挿口92を受け止める段部13が形成されており、その隅部にOリング93が装着されている。仕切弁9の外周部には挿通孔を有するフランジ(不図示)が設けられており、管分岐部1aのフランジが有するボルト孔1c(図4参照)と前記挿通孔に挿通したボルトをナットで締め付けることで、仕切弁9が管分岐部1aに強固に接続されている。かかる構成では、フランジ接続に比べて水道管1から仕切弁9の分岐管側端部までの距離を短縮できるため、分岐管8の配設エリアが小さくなり、広い周囲スペースを確保できない場合に有用となる。
【0034】
不断水の状態を維持したまま、水道管1から分岐管8を仕切弁9ごと撤去するには、管分岐部1aに仕切弁9を接続した状態で、管分岐部1a内に栓部材を挿入して固定する必要がある。その際、仕切弁9の離脱作業を介在させずに、栓部材を挿入、固定して密封することが、作業性や栓部材の安定性の観点から望ましい。本発明は、かかる要請に対応しうるものであり、その密栓方法と密栓装置に関する具体的な実施形態として、以下に第1〜第3実施形態を説明する。
【0035】
[第1実施形態]
図4は、密栓作業を説明するための平面視断面図である。まずは、仕切弁9内の通路を弁体91により遮断したまま、仕切弁9から分岐管8を取り外す。次に、図4に示すように、密栓装置の栓部材2を仕切弁9の分岐管側端部に挿入すると共に、その仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続する。合フランジ95を接続することで、挿入開始時における栓部材2の移動ストロークを確保でき、栓部材2の芯出し及び挿入作業が簡便化される。この密栓装置は、栓部材2と、栓部材2を管分岐部1aに挿入して操作するための操作軸3とを備える。
【0036】
図5は、栓部材2と操作軸3の前方端との断面図である。図6は、図5のB−B矢視断面図である。以後、栓部材2の挿入方向に準じて、図5の左方向を前方、図5の右方向を後方と呼ぶ。また、栓部材2の挿入方向に沿って後方から見た場合に、軸周りとなる時計回りの回転を右回転、反時計回りの回転を左回転と呼ぶ。これらの呼び方は、後述の第2,3実施形態でも同様である。
【0037】
栓部材2は、外周に突起21aが形成された係合具21と、係合具21に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具22と、中栓具22を軸平行に取り囲む環状のシール材23とを有する。係合具21は、円筒状に形成され、その外周に一対の突起21aが突設されている。突起21aは、管分岐部1aの係合壁11の内径よりも大きい外径を有しつつ、その係合壁11の欠落部12を通過可能に形成されている。
【0038】
係合具21の後方側外周面には雄ねじ21bが形成されており、筒状をなす接続部材24の前方側内周面に形成された雌ねじと相互に螺合している。係合具21は、突起21aよりも前方側に前方筒部21cを有し、その前方筒部21cの前方端に隣接してシール材23が配置されている。前方筒部21cの内周には、図6に示すように一対のガイド突部21dが軸方向に沿って設けられており、ガイド突部21dの後方には、貫通孔21eを有する円板状部21fが設けられている。
【0039】
中栓具22は、前方筒部21cに収容された円柱状部22aと、その前方端にて外周側に張り出した張出部22bと、貫通孔21eに挿通された軸部22cとを有する。軸部22cの外周面には雄ねじが形成されており、貫通孔21eよりも大径の六角ナット25(前記相手方部材に相当)が螺合されている。六角ナット25の後方には、C字状の落下防止リング26が軸部22cに外嵌されている。
【0040】
円柱状部22aには、ガイド突部21dが嵌入される一対のガイド溝22dが形成されており、六角ナット25を回転したときに中栓具22が共廻りしないように構成されている。なお、共廻りを防止する構造としては、これに限られるものではない。例えば、径方向に延びる貫通孔を前方筒部21cに設け、その貫通孔に挿通したボルトを内周側に突出させ、ガイド突部21dの代わりにガイド溝22dに嵌入するようにしてもよい。
【0041】
シール材23は、円柱状部22aを取り囲むようにして装着されており、張出部22bと前方筒部21cとの間に形成された凹陥部22eに収容されている。密栓作業時におけるシール材23の損傷及び脱落を防止するうえで、シール材23の外径は、張出部22b及び前方筒部21cの外径と同等以下であることが好ましい。
【0042】
操作軸3は、栓部材2に着脱自在に連結され、係合具21の回転、及び、中栓具22の係合具21に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸3が、係合具21に着脱自在に連結される円筒状の主軸31(前記第一操作部材に相当)と、中栓具22に着脱自在に連結される丸棒状の中軸32(前記第二操作部材に相当)と、主軸31の後方側に取り付けられる反力受け部材33とを備える。
【0043】
主軸31は、合フランジ95の中心孔95aを軸方向に摺動自在に貫通しており、その中心孔95aの内周には主軸31との隙間を密封するOリングが付設されている。主軸31の前方側部分は比較的大径に形成されていて、外周面に形成された突部31aが係合具21の後方端と接続部材24とによって挟持固定されている。排水孔31bは、密栓作業時に内部に浸入した水を排出するための円孔である。
【0044】
中軸32は、主軸31に内挿されており、比較的大径に形成された前方側部分が中栓具22に嵌め合いで連結されている。本実施形態では、六角ナット25が嵌め込まれるように、中軸32の前方端に形成された筒状部32aが六角形に形成されているが、これ以外の多角形状を利用した嵌め合いでも構わない。主軸31と中軸32との軸方向の間隔は、中軸32に外挿されたスペーサー32bによって確保されている。スペーサー32bは、例えば砲金や樹脂材により形成される。
【0045】
図7は、操作軸3の後方端の断面図である。反力受け部材33は、軸直角方向に突出した一対のバー33aを有する筒状体をなし、主軸31に外嵌されている。バー33aの内側にはボルト33bが設けられ、主軸31を貫通して中軸32を押圧固定している。反力受け部材33よりも後方に突出した中軸32の後方端32cには、中軸32を回転させるためのハンドル(不図示)が装着される。バー33aには必要に応じて連結具(不図示)が取り付けられ、水道管1又は合フランジ95と反力受け部材33とが連結される。
【0046】
図4に示す如く仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続した後は、仕切弁9の弁体91を上方に退避させて通路を連通状態にする。このとき、栓部材2が水圧を受けるため、レバーホイスト等の連結具によって反力受け部材33を水道管1や合フランジ95等に連結しておき、反力を受け止めることが好ましい。この場合、レバーホイストのジャッキを介して操作軸3を押し込むことで、栓部材2を水圧に抗して簡便に前進させることができる。
【0047】
次に、操作軸3を前方に押し込み、図8に示すように栓部材2を管分岐部1aに挿入して、係合具21の突起21aが係合壁11の欠落部12を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部12を通過した突起21aは、図9に示すようにバヨネット溝14に嵌入され、前方周壁面15によって受け止められる。したがって、作業者は、突起21aが前方周壁面15に当接するところまで、栓部材2を押し込めばよい。なお、図示の都合上、図9,11,14〜16に示す正面図では栓部材2を実線で示している。
【0048】
続いて、図10に示すように、主軸31を回転操作することで係合具21を右回転し、突起21aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材2の軸方向移動を規制する(前記ロック工程に相当)。なお、係合具21と中栓具22との相対回転が規制されているため、中栓具22も一緒に回転する。水道管1は通水状態にあり、栓部材2は前方から流体圧力(即ち水圧)を受けるため、突起21aと係合壁11は強固に係合される。
【0049】
本実施形態では、係合具21を右回転させたときに、図11に示すように、突起21aが前方周壁面15に沿って摺動し、ガイド壁面19によって後方周壁面16に案内され、一対の規制壁面17,18の間に配置される。これにより、係合具21は、軸方向移動が規制されると共に、一対の規制壁面17,18の間で回転移動が規制された状態となる。作業者は、突起21aを前方周壁面15に当接させた後、突起21aが規制壁面18に当接するところまで主軸31を右回転すればよい。この状態であれば、水流等の作用により係合具21が自然に回転しても、栓部材2のロック状態が独りでに解除されることがない。
【0050】
次に、中軸32を回転操作することで六角ナット25を右回転させる。このとき、ガイド突部21dとガイド溝22dとの係合によって、中栓具22の共廻りが防止されていることから、六角ナット25と中栓具22とを相対回転させることができる。この回転動作に伴うねじ作用によって、中栓具22を係合具21に対して軸方向に相対移動させる。中軸32の回転操作は、後方端32cに取り付けたハンドルを操作して実行できる。このとき、必要に応じてバー33aによる押圧固定を緩めてもよい。
【0051】
本実施形態では、図12に示すように、六角ナット25と中栓具22とを相対回転させると、その回転動作に伴うねじ作用によって中栓具22が後退し、中栓具22が係合具21に近接移動する。これにより、中栓具22と係合具21との間に介在するシール材23を圧縮し、そのシール材23を径方向に拡張変形させて栓部材2と管分岐部1aとの間を密封できる(前記シール工程に相当)。シール材23は、六角ナット25を回転しない限りは圧縮されないため、栓部材2を管分岐部1aに挿入して固定するまでの間に管分岐部1aの内周面と接触することがなく、シール材23の損傷や脱落が好適に防止される。
【0052】
管分岐部1aの密栓を完了した後は、主軸31から反力受け部材33を取り外し、管分岐部1aから仕切弁9と合フランジ95を離脱させる。そして、操作軸3と栓部材2との連結を解除し、栓部材2を管分岐部1a内に残置させた状態とする。操作軸3を栓部材2から取り外すには、接続部材24と係合具21との螺合を解除するだけでよい。最後に、図13に示すように、管分岐部1aにフランジ蓋96を被せて分岐管の撤去作業を終了する。
【0053】
諸般の事情により密栓した管分岐部1aを再び利用する場合には、上記の手順を逆に行えばよい。即ち、フランジ蓋96を取り外して、栓部材2に操作軸3を連結すると共に、仕切弁9、合フランジ95及び反力受け部材33を取り付けた後、管分岐部1aから栓部材2を取り出し、弁体91を下降させて仕切弁9の通路を遮断すればよい。このように、本発明によれば管分岐部1aの密栓を解除する作業も非常に簡便となる。
【0054】
本実施形態では、管分岐部1aから栓部材2を取り出すに際して、次のような手順となる。まず、図14に示すように、係合具21の突起21aが規制壁面17に当接するところまで主軸31を左回転し、突起21aを前方周壁面15に対向させる。次に、図15に示すように、操作軸3を前方に押し込み、突起21aを前方周壁面15に当接させる。続いて、図16に示すように、主軸31を左回転し、操作軸3を後方に移動させて突起21aをバヨネット溝14から引き抜けば、管分岐部1aから栓部材2が取り出される。作業者は、図15の操作軸3を前方に押し込む段階で、栓部材2が受ける水圧が如何程か把握できるため、図16における栓部材2の引き抜き作業を安全に行うことができる。
【0055】
[第2実施形態]
第2実施形態は、以下に説明する構成の他は、第1実施形態と同様の構成・作用であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。図17は、第2実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端との断面図である。この密栓装置は、栓部材4と、栓部材4を管分岐部1aに挿入して操作するための操作軸5とを備えている。栓部材4は、外周に突起41aが形成された係合具41と、係合具41に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具42と、中栓具42を軸平行に取り囲む環状のシール材43とを有する。
【0056】
係合具41の後方側には、軸中心を挟んだ2箇所に貫通孔41bが設けられ、その各々にリベット45(前記規制部材に相当)が挿通されている。リベット45の先端は中栓具42の円孔42gに嵌入されており、係合具41と中栓具42との相対移動がリベット45によって規制されている。係合具41の前方筒部41cの内周面には雌ねじ41dが形成されていて、中栓具42の外周面の雄ねじ42hと相互に螺合している。この螺合は左ネジによるもので、中栓具42を係合具41(前記相手方部材に相当)に対して相対的に右回転させると、そのねじ作用によって中栓具42は後方に移動する。
【0057】
中栓具42は、前方筒部41cに収容された円筒状部42aと、その前方にて外周側に張り出した張出部42bと、後方にて比較的小径に形成された連結部42cとを有する。連結部42cは、係合具41よりも後方に突き出ており、その外周面には雄ねじ42dが形成され、内周側には多角形状(本実施形態では六角形状)の嵌合孔42fが形成されている。連結部42cの雄ねじ42dは、接続部材44の内周面に形成された雌ねじと相互に螺合している。この螺合は右ネジによるもので、雄ねじ42hと雌ねじ41dとの螺合とは逆回りになっている。
【0058】
シール材43は、円筒状部42aを取り囲むようにして装着されており、張出部42bと前方筒部41cとの間に形成された凹陥部42eに収容されている。密栓作業時におけるシール材43の損傷及び脱落を確実に防止できるよう、シール材43の外径は、張出部42b及び前方筒部41cの外径と同等以下に設定されている。
【0059】
操作軸5は、栓部材4に着脱自在に連結され、係合具41の回転、及び、中栓具42の係合具41に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸5が、中栓具42に着脱自在に連結される丸棒状の芯軸51と、その芯軸51の後方側に取り付けられた反力受け部材53(図18参照)とを備える。芯軸51の前端には、断面が多角形状(本実施形態では六角形状)をなして中栓具42の嵌合孔42fに嵌合される柱状部51aが設けられており、その柱状部51aの後方に鍔部51bが周設されている。
【0060】
接続部材44は、係合具41の後方端の内径よりも大きい外径を有するフランジ状の前方端部44aと、鍔部51bの外径よりも小さい内径を有する内フランジ状の後方端部44bとを有する筒状体であり、芯軸51は、鍔部51bが中栓具42の後方端と接続部材44の後方端部44bとによって挟持固定されている。操作軸5の後方側では、図18に示すように、一対のバー53aを有する反力受け部材53が、角柱状に形成された芯軸51の後端部に外嵌され、ナット部53bの締め付けによって固定されている。
【0061】
仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続した後は、前述した第1実施形態と同様に、仕切弁9の弁体91を上方に退避させて通路を連通状態とし、操作軸5を前方に押し込み、栓部材4を管分岐部1aに挿入して、係合具41の突起41aが係合壁11の欠落部12を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部12を通過した突起41aはバヨネット溝14に嵌入され、前方周壁面15によって受け止められる(図9参照)。
【0062】
続いて、図19に示すように、操作軸5を回転操作することにより、中栓具42と、その中栓具42に対する相対移動がリベット45により規制されている係合具41を右回転し、突起41aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材4の軸方向移動を規制する(前記ロック工程に相当)。このとき、突起41aは、バヨネット溝14の一対の規制壁面17,18の間に配置される(図11参照)。
【0063】
次に、突起41aが規制壁面18に当接した状態、即ち係合具41の右回転を規制した状態から、操作軸5を回転操作し、中栓具42を更に右回転させてリベット45に所定の負荷を作用させる。そうすると、図20に示すようにリベット45が剪断され、係合具41と中栓具42との相対移動の規制が解除される。その結果、中栓具42を係合具41に対して相対的に右回転でき、そのねじ作用によって中栓具42を係合具41に近接移動させ、シール材43を圧縮により拡張変形させて、栓部材4と管分岐部1aとの間を密封できる(前記シール工程に相当)。リベット45は、例えば銅などの軟質金属で形成される。
【0064】
このように、本実施形態では、芯軸51の回転操作のみで、栓部材4の軸方向移動を規制するための係合具41の回転と、栓部材4と管分岐部1aとの間を密封するための中栓具42の軸方向移動とが行われ、しかもシール材43の損傷や脱落も好適に防止される。そのため、栓部材4の操作が非常に簡便化されたものとなり、操作軸5の機構も簡略化されたものとなる。
【0065】
管分岐部1aの密栓を完了した後は、芯軸51から反力受け部材53を取り外し、管分岐部1aから仕切弁9と合フランジ95を離脱させ、操作軸5と栓部材4との連結を解除し、栓部材4を残置させた管分岐部1aにフランジ蓋96を被せて分岐管の撤去作業を終了する。操作軸5を栓部材4から取り外すには、連結部42cと接続部材44との螺合を解除するだけでよい。
【0066】
密栓した管分岐部1aを再び利用する場合には、フランジ蓋96を取り外して、栓部材4に操作軸5を連結すると共に、仕切弁9、合フランジ95及び反力受け部材53を取り付けた後、管分岐部1aから栓部材4を取り出し、弁体91を下降させて仕切弁9の通路を遮断すればよい。管分岐部1aから栓部材4を取り出す際には、操作軸5の回転操作により中栓具42を左回転し、そのねじ作用によって中栓具42を前方に移動させ、シール材43の圧縮を解除する。
【0067】
上記において、中栓具42を左回転し始めたときには、それに伴って係合具41も左回転するが、すぐに突起41aが規制壁面17に当接し(図14参照)、中栓具42が前方に移動できるようになる。シール材43の圧縮を解除した後、更に中栓具42が前方に移動すると、図21に示すように接続部材44の前方端部44aと係合具41の後方端とが軸方向に押し当たって一体化される。このため、操作軸5を前方に押し込んで左回転させることで、管分岐部1aから栓部材4を取り出すことができる(図15,16参照)。
【0068】
[第3実施形態]
第3実施形態は、以下に説明する構成の他は、第1実施形態と同様の構成・作用であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。本実施形態では、図22に示すように、管分岐部1aがバヨネット溝14の前方にて内径が比較的小さい小径域1dを有している。小径域1dの後方端には、後方に向かって拡径するテーパ面1eが形成されている。小径域1dの内径は、後述するシール材63の圧縮前の外径よりも小さく設定されている。
【0069】
図23は、第3実施形態における栓部材と操作軸の前方端との拡大断面図である。この密栓装置は、栓部材6と、栓部材6を管分岐部1aに挿入して操作するための操作軸7とを備えている。栓部材6は、外周に突起61aが形成された係合具61と、係合具61に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具62と、中栓具62を軸平行に取り囲む環状のシール材63とを有する。
【0070】
係合具61は筒状体をなし、その後方側外周面には雄ねじ61bが形成されていて、筒状をなす接続部材64の前方側内周面に形成された雌ねじと相互に螺合している。中栓具62を係合具61(前記相手方部材に相当)に対して相対的に右回転させると、そのねじ作用によって中栓具62は前方に移動する。係合具61の内周面には雌ねじ61cが形成されていて、中栓具62の後方筒部62bの外周面に形成された雄ねじ62fと相互に螺合している。
【0071】
中栓具62は、外周に収容溝62cが形成された円板状部62aと、係合具61に挿通された後方筒部62bとを備える。収容溝62cの深さ寸法はシール材63の径寸法よりも小さく、シール材63は外周側に張り出して中栓具62に装着されている。収容溝62cの後方には、前方に向かって拡径するテーパ面62dが形成されている。円板状部62aの後端面は係合具61の前端面が当接した状態になっている。
【0072】
操作軸7は、栓部材6に着脱自在に連結され、係合具61の回転、及び、中栓具62の係合具61に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸7が、係合具61に着脱自在に連結される円筒状の主軸71(前記第一操作部材に相当)と、中栓具62に着脱自在に連結される丸棒状の中軸72(前記第二操作部材に相当)と、主軸71の後方側に取り付けられる反力受け部材とを備える。
【0073】
主軸71の前方側部分は比較的大径に形成されていて、外周面に形成された突部71aが係合具61の後方端と接続部材64とによって挟持固定されている。中軸72は、主軸71に内挿され、前方端には断面が多角形状(本実施形態では六角形状)をなす柱状部72aが設けられている。柱状部72aは、中栓具62の後方筒部62bに形成された多角形状(本実施形態では六角形状)の嵌合孔62eに挿入され、中軸72と中栓具62とが嵌め合いによって連結されている。主軸71及び中軸72の後方端並びに反力受け部材の構造は、前述した第1実施形態と同様である。
【0074】
仕切弁9の分岐管側端部に合フランジ95を接続した後は、前述した第1実施形態と同様に、仕切弁9の弁体91を上方に退避させて通路を連通状態とし、操作軸7を前方に押し込み、栓部材6を管分岐部1aに挿入して、係合具61の突起61aが係合壁11の欠落部12を通過した状態にする(前記挿入工程に相当)。欠落部12を通過した突起61aはバヨネット溝14に嵌入され、前方周壁面15によって受け止められる(図9参照)。この段階で、シール材63は未だ小径域1d内に配置されていないことが好ましい。
【0075】
続いて、図24に示すように、主軸71を回転操作することで係合具61を右回転し、突起61aと係合壁11との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、栓部材6の軸方向移動を規制する(前記ロック工程に相当)。このとき、突起61aは、バヨネット溝14の一対の規制壁面17,18の間に配置される(図11参照)。
【0076】
次に、中軸72を回転操作することで中栓具62を右回転し、中栓具62と係合具61とを相対回転させ、その回転動作に伴うねじ作用によって中栓具62を係合具61に対して軸方向に相対移動させる。本実施形態では、図25に示すように、中栓具62を係合具61に対して相対的に右回転させると、操作軸7が連結される側とは反対の方向(即ち、栓部材6の挿入方向前方)に中栓具22が移動し、シール材63が小径域1dに挿入される。これにより、シール材63を小径域1dの内周面で圧縮して、栓部材6と管分岐部1aとの間を密封できる(前記シール工程に相当)。作業者は、中栓具62のテーパ面62dが小径域1dのテーパ面1eに当接するところまで、中栓具62を前進させればよい。
【0077】
管分岐部1aの密栓を完了した後は、主軸71から反力受け部材を取り外し、管分岐部1aから仕切弁9と合フランジ95を離脱させ、操作軸7と栓部材6との連結を解除し、栓部材6を残置させた管分岐部1aにフランジ蓋96を被せて分岐管の撤去作業を終了する。操作軸7を栓部材6から取り外すには、係合具61と接続部材64との螺合を解除するだけでよい。
【0078】
密栓した管分岐部1aを再び利用する場合には、上記の手順を逆に行えばよい。即ち、フランジ蓋96を取り外して、栓部材6に操作軸7を連結すると共に、仕切弁9、合フランジ95及び反力受け部材を取り付けた後、管分岐部1aから栓部材6を取り出し(図14〜16参照)、弁体91を下降させて仕切弁9の通路を遮断すればよい。
【0079】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、密栓を実施する流体管が、分割部を有しない一体構造のT字管である例を示したが、本発明はこれに限られず、十字管など管分岐部を有する他の異形管でも構わない。また、本発明は割り構造の流体管に対しても適用でき、図26に例示するように、既設の水道管90に装着された割T字管97の管分岐部97aを密栓することが可能である。この場合、管分岐部97aの内周面には欠落部99を有する係合壁98が設けられる。
【0080】
(2)前述の実施形態では、管分岐部の内周面に図2の如き形状のバヨネット溝が形成された例を示したが、本発明は欠落部を有する係合壁が設けられているものであれば、これに制限されず、趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、ガイド壁面がテーパ状に延びるのではなく円弧状に湾曲したり、バヨネット溝がコ字状や鉤形状に形成されていても構わない。また、前述したバヨネット溝14において、ガイド壁面19を備えずに、前方周壁面15と規制壁面18とが直交するものでもよい。
【0081】
(3)本発明は、水道管の更新のために分岐管を撤去するときに限られず、その他の事情により流体管の管分岐部を密栓する場合において適用できるものである。
【0082】
(4)前述の実施形態では、流体管として水道管を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、水以外の各種の液体・気体などの流体に用いる流体管に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】管分岐部に仕切弁を介して分岐管が接続された水道管の縦断面図
【図2】図1の管分岐部の要部を拡大して示す縦断面図
【図3】図1の管分岐部の正面図
【図4】密栓作業を説明するための平面視断面図
【図5】本発明の第1実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端とを示す断面図
【図6】図5のB−B矢視断面図
【図7】第1実施形態に係る操作軸の後方端の断面図
【図8】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図9】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図10】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図11】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図12】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図13】第1実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図14】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図15】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図16】管分岐部の縦断面図とその正面図
【図17】本発明の第2実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端とを示す断面図
【図18】第2実施形態に係る操作軸の後方端の断面図
【図19】第2実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図20】第2実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図21】第2実施形態における密栓解除を説明するための断面図
【図22】本発明の第3実施形態で用いられる流体管の管分岐部を示す縦断面図
【図23】第3実施形態に係る栓部材と操作軸の前方端とを示す断面図
【図24】第3実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図25】第3実施形態に係る密栓方法を説明するための断面図
【図26】本発明の別実施形態に係る密栓方法を説明するための縦断面図
【図27】既設の水道管を更新する手順の一例を示す概略図
【符号の説明】
【0084】
1 水道管
1a 管分岐部
1d 小径域
2,4,6 栓部材
3,5,7 操作軸
8 分岐管
9 仕切弁
11 係合壁
12 欠落部
14 バヨネット溝
15 前方周壁面
16 後方周壁面
17 規制壁面
18 規制壁面
19 ガイド壁面
21,41,61 係合具
21a,41a,61a 突起
22,42,62 中栓具
23,43,63 シール材
24,44,64 接続部材
25 六角ナット
31,71 主軸(第一操作部材)
32,72 中軸(第二操作部材)
33,53 反力受け部材
45 リベット(規制部材)
51 芯軸
95 合フランジ
96 フランジ蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に突起が形成された係合具と、前記係合具に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具と、前記中栓具を軸平行に取り囲むシール材とを有する栓部材を、流体管の側面に設けられた筒状の管分岐部に挿入し、前記突起が前記管分岐部の内周面に設けられた係合壁の欠落部を通過した状態にする挿入工程と、
前記係合具を回転し、前記突起と前記係合壁との周方向位置を合わせて軸方向に係合させ、前記栓部材の軸方向移動を規制するロック工程と、
前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動させることにより前記シール材を圧縮し、前記栓部材と前記管分岐部との間を密封するシール工程と、を備える管分岐部密栓方法。
【請求項2】
前記シール工程では、前記中栓具を前記係合具に近接移動させることにより、前記中栓具と前記係合具との間に介在する前記シール材を圧縮し、該シール材を径方向に拡張変形させて前記栓部材と前記管分岐部との間を密封する請求項1に記載の管分岐部密栓方法。
【請求項3】
前記シール工程では、前記中栓具を前記栓部材の挿入方向前方に移動させて、前記シール材の外径よりも内径が小さい前記管分岐部の小径域に挿入し、該中栓具に装着されている前記シール材を前記小径域の内周面で圧縮して、前記栓部材と前記管分岐部との間を密封する請求項1に記載の管分岐部密栓方法。
【請求項4】
前記係合具に着脱自在に連結される第一操作部材と、前記中栓具に着脱自在に連結される第二操作部材とを有する操作軸を用いて、
前記ロック工程では、前記第一操作部材を操作することで前記係合具を回転し、
前記シール工程では、前記第二操作部材を操作することで前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動させる請求項1〜3いずれか1項に記載の管分岐部密栓方法。
【請求項5】
前記中栓具に着脱自在に連結される操作軸と、前記係合具と前記中栓具との相対移動を規制する規制部材とを用いて、
前記ロック工程では、前記操作軸を操作することにより、前記中栓具と、該中栓具に対する相対移動が規制されている前記係合具とを回転し、
前記シール工程では、前記係合具の回転を規制した状態から前記中栓具を更に回転させて前記規制部材を剪断し、前記係合具と前記中栓具との相対移動の規制を解除した上で、前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動させる請求項1〜3いずれか1項に記載の管分岐部密栓方法。
【請求項6】
前記中栓具が前記係合具又はその他の部材に螺合されており、前記シール工程では、前記中栓具が螺合された相手方部材と前記中栓具とを相対回転させ、その回転動作に伴うねじ作用によって前記中栓具を軸方向に移動させる請求項1〜5いずれか1項に記載の管分岐部密栓方法。
【請求項7】
外周に突起が形成された係合具と、前記係合具に対して軸方向の相対移動が可能に組み合わされた中栓具と、前記中栓具を軸平行に取り囲むシール材とを有する栓部材と、
前記栓部材に着脱自在に連結され、前記係合具の回転、及び、前記中栓具の前記係合具に対する軸方向の相対移動を操作可能に構成された操作軸とを備える管分岐部密栓装置。
【請求項8】
前記中栓具と前記係合具との間に前記シール材が介在し、前記中栓具を前記係合具に近接移動させると、前記シール材が圧縮されて径方向に拡張変形する請求項7に記載の管分岐部密栓装置。
【請求項9】
前記シール材が外周側に張り出して前記中栓具に装着されており、前記栓部材の前記操作軸が連結される側とは反対の方向に、前記中栓具を前記係合具に対して相対移動できるように構成された請求項7に記載の管分岐部密栓装置。
【請求項10】
前記操作軸が、前記係合具に連結される第一操作部材と、前記中栓具に連結される第二操作部材とを有し、前記第一操作部材を操作することで前記係合具を回転でき、前記第二操作部材を操作することで前記中栓具を前記係合具に対して軸方向に相対移動できるように構成された請求項7〜9いずれか1項に記載の管分岐部密栓装置。
【請求項11】
前記係合具と前記中栓具との相対移動を規制する規制部材が設けられ、前記操作軸を操作して前記中栓具を回転させると、その回転動作に連動して前記係合具が回転し、前記係合具の回転を規制した状態から前記中栓具を更に回転させて所定の負荷が作用すると、前記規制部材が剪断されて前記係合具と前記中栓具との相対移動の規制が解除される請求項7〜9いずれか1項に記載の管分岐部密栓装置。
【請求項12】
前記中栓具が前記係合具又はその他の部材に螺合されており、前記中栓具が螺合された相手方部材と前記中栓具とを相対回転させると、その回転動作に伴うねじ作用によって前記中栓具が前記係合具に対して軸方向に相対移動する請求項7〜11いずれか1項に記載の管分岐部密栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−96241(P2010−96241A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266633(P2008−266633)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(501492487)
【出願人】(397012923)大成機工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】