説明

管材のつば部成形加工機

【課題】つば出し加工時の挫屈変形を抑え、構造が簡単で安価な、管材のつば部成形加工機の提供を目的とする。
【解決手段】管材の端部を外側に折り曲げてつば部を成形する加工機であって、管材の端部に押圧しながら摺接する自転及び公転する略円錐形状のローラーと、前記ローラーを自転自在に支持するローラー支持部と、前記ローラー支持部をつば部の曲げ角度に合せて外側方向に回動しながら傾斜する回動傾斜制御手段と、前記ローラーが公転するようにローラー支持部を回転支持する回転ブラケットとを有し、前記回転ブラケットは前後方向に移動制御され、ローラ支持部の前記回動中心をつば部の曲げ起点よりも外側で且つ前方に位置させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管やSUS管等の金属製管材の端部を外側に折り曲げてつば部を拡開成形する加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の技術分野においては、管材の端部を外側に折り曲げ加工することで拡開したつば部を形成する、いわゆるフレア加工を施したフレア加工管が採用されている。
フレア加工機としては円錐状の1次ローラーで管材の端部を約40〜50°位に折り曲げ、その後に2次ローラーで約90°まで外側に折り曲げ拡開するものが知られている(特許文献1)。
従来、このように2段階に工程を分けてつば出し加工をせざるを得なかったのは、管材の内側やつば部に挫屈変形が生じるからである。
しかし、1次ローラーと2次ローラーによる段階的なフレア加工機は構造が複雑になり高価となるものであった。
また、特許文献2に管材の内面に当接しながら回転する押圧部材を備えたつば出し加工装置を開示するが、比較的口径が小さい管径に対するつば部の幅が大きいものやSUS管等の場合につば部の曲げ起点付近の管材内側に座屈変形が生じてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−82184号公報
【特許文献2】特開平7−314053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、つば出し加工時の挫屈変形を抑え、構造が簡単で安価な、管材のつば部成形加工機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る管材のつば部成形加工機は、管材の端部を外側に折り曲げてつば部を成形する加工機であって、管材の端部に押圧しながら摺接する自転及び公転する略円錐形状のローラーと、前記ローラーを自転自在に支持するローラー支持部と、前記ローラー支持部をつば部の曲げ角度に合せて外側方向に回動しながら傾斜する回動傾斜制御手段と、前記ローラーが公転するようにローラー支持部を回転支持する回転ブラケットとを有し、前記回転ブラケットは前後方向に移動制御され、ローラー支持部の前記回動中心をつば部の曲げ起点よりも外側で且つ前方に位置させたことを特徴とする。
本明細書では、ローラーが管材に向けて前進する方向を前方と表現し、管材の外周に対して内外方向を表現する。従って、ローラー支持部の前記回動中心をつば部の曲げ起点よりも外側で且つ前方に位置させたとは、ローラー支持部が前方に向けて円弧を描くように回動する回動中心が外側に曲げられるつば部の裏側(管材側)で管材の内周面より外側に位置することになる。
【0006】
本発明はローラーが自転及び公転しながら、つば出しされるつば部の折り曲げ角度が0から90°になるまで円錐形状のローラーを外側方向に回動させながら傾斜させることで、つば部をローラーの摺接摩擦力で外側に引っ張るように作用し、金型で拘束されていないつば部の曲げ起点付近の管内側の座屈変形を防止し、1つのローラーだけでフレア加工ができる。
このようにローラーが公転しながら管材の外側方向に回動移動する機構としては、ローラー支持部の両端はローラー支持部材に連結されていて、前記回転ブラケットは左右の側壁と後部壁とからなる前方が開口した略コ字形状であり、前記回動傾斜制御手段は、アームの前端部を前記ローラー支持部材に軸着し、後端部を回転ブラケットの前記左右の側壁に設けた前後方向のガイド部に沿って前後方向に移動制御されたアーム支持シャフトに連結してあり、前記ローラー支持部材は前記アームの前端部軸着よりも前後方向及び上下方向にずれた位置で左右の前記側壁と回動軸にて連結することで、ローラー支持部の回動中心となる当該回動軸をつば部の曲げ起点よりも外側で且つ前方に位置させる方法が挙げられる。
回転ブラケットを前方に開口部を有するコ字形状にした趣旨は、ローラー支持部の回動軸をつば部の裏側に位置させるためであり、従って、管材のつば部を内側に呑み込むように開口部を形成した構造であれば、コ字形状に限定されるものではない。
このように、回転ブラケットの左右の側壁と内側でローラー支持部材が回動軸で連結され、例えば、アームの前端部軸着が当該回動軸より外側(図3で上方)で後方にずれた位置で軸着してあると、アームの前進移動に合わせて、軸着部が回動軸を中心にして前方に円弧を描くように回動しつつ、ローラーの先端側が管材の中心に向けて傾斜する。
従って、ローラーは回転ブラケットにより側面で管材のつば部を押し付けるように摺接公転するとともに回動軸を中心にして、前方且つ外側に円弧を描くように回動する際にローラーの摩擦力でつば部を外側方向に引っ張るように作用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る管材のつば部成形加工機にあっては、従来1次ローラーと2次ローラーとの二段階に分けてつば出し成形する必要があったのに比較して、1次ローラーのみで90°までの折り曲げ加工が可能になり簡単な構造で生産性の高い加工機が実現した。
また、つば部の折り曲げ角度に応じてローラーが外側方向に移動しつつ傾斜するので、つば部を外側方向にローラーの摩擦力で引っ張るようになり、SUS管のように従来はつば出し成形が難しいといわれていた材質に対しても折り曲げ起点付近管材内側に座屈変形を生じさせることなくつば出し加工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る加工機の全体構成図を示す。
【図2】つば出し加工の流れを示す。
【図3】アームの動きを説明した図を示す。
【図4】つば出し加工に伴うローラーの動きを示す。
【図5】管材の内面に摺接するローラーの作用点の移動を模式的に示す。
【図6】ローラーの回動中心がつば部の曲げ起点に位置する場合のローラーの動きを示す。
【図7】アームを後退させることで、ローラーを回動させる例を示す。
【図8】ローラーの公転半径を変更できる可変機構を備えた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るつば部成形加工機の全体図を図1に示し、図2〜図4につば出し成形の流れを示す。
ベースフレーム60から駆動モーター40及びブラケット回転部材11を支持する支持フレーム61を立設してある。
駆動モーター40の主軸に連結した駆動ギヤ41は必要に応じて伝達ギヤ42を介してブラケット回転ギヤ43に歯合してある。
ブラケット回転ギア43の回転によりブラケット回転部材11が回転制御されている。
ブラケット回転部材11の内側には、スプライン連結したブラケット移動制御シャフト11aが内設されている。
ブラケット移動制御シャフト11aの内側には、アーム移動制御シャフト21が前後方向移動制御し、内設されている。
ブラケット移動制御シャフト11aは、2次シリンダー14に設けたピストンロッド14aに回転自在に連結してあり、ピストンロッド14aの前進により回転ブラケット10が前進する。
ピストンロッド12aは、ハウジング50内に設けたベアリング52,53を介した連結部材51にて連結され、1次シリンダー12にて前進及び後退する。
また、駆動モーター40の回転によりブラケット回転ギヤ43に連結したブラケット回転部材11が回転し、回転ブラケット10が回転する。
なお、1次シリンダーと2次シリンダーは本実施例のように複動でなく、それぞれ単独シリンダー制御でもよい。
このように、ブラケット移動制御シャフト11aとアーム移動制御シャフト21とをそれぞれ異なるシリンダー機構で前進、後退制御したことにより、ローラーの回動・傾斜と前進・後退制御を相対制御できる。
【0010】
回転ブラケット10の部分の拡大図を図3に示し、要部断面図を図4に示す。
回転ブラケット10は左右の側壁10a,10bの後端側を後部壁10cで連結した略コ字形状になっている。
アーム移動制御シャフト21の先端部が側面視略弓形に湾曲したアーム20の後端に左右方向のアーム支持シャフト22を介して連結してある。
なお、本明細書では前後方向と直交する方向を左右方向と表現する。
アーム支持シャフト22は、回転ブラケット10の左右側壁10a,10bに設けた前後方向のガイド部(ガイド長孔)13に沿って前後方向に移動可能になっている。
一方、アーム20の先端部はローラー支持部材32に軸着部24を介して回転自在に軸着してある。
本実施例はローラー支持部材32に深い溝部を形成し、この溝部にアーム20の先端部が挿入された状態で軸着部24で軸着した例となっている。
ローラー支持部31には自転自在に円錐状のローラー30が取り付けられている。
ローラー支持部材はアーム20の先端部を軸着した軸着部24より図3で下方(内側)及び前方に位置をずらして設けた回転軸33にて回動自在に軸着してある。
これにより、アーム移動制御シャフト21が前進し、アーム20の後端部が矢印Sに示すように前進すると軸着部24が円弧を描きながら前方に移動し、ローラー支持部材32が回動軸33を回動中心にして前方に回動する。
これにより、円錐形状のローラー30が図4(b)〜(d)に示すようにローラー30の側面摺接部が外側に移動しながら公転する。
よって、ローラー30は回転ブラケット10の回転により公転し、且つ、自転しながらつば部を外側方向に引っ張るように移動する。
【0011】
このようにローラー30を移動制御した理由を図5及び図6に基づいて以下説明する。
図5(a)及び図6(a)に示すように管材1を金型70にて上下から保持し、金型の端部(ローラー側)からつば部幅Lに相当する長さだけ突出させ、ローラー30の先端側を管材1の内面に当てる。
この際につば部1aは金型70のコーナー部に位置する管材1の内側、曲げ起点Rを曲げ支点にして外側に折り曲げられる。
従来は図6に示すようにこの曲げ起点Rを回動中心にしてローラーが90°方向に立ち上がる構造であったために、つば部に働く押圧力Fにより金型で拘束されていない管材1の内側に座屈αが生じやすかった。
特にSUS管や小口径の管材では従来この座屈αを抑えることができなかった。
そこで、本発明は図5(b),(c)に示すように、回動軸33の位置をつば部の曲げ起点Rよりも外側で前方(つば部の裏側)に位置させたので、つば部1aの曲げ角度が強くなるに従いローラー30は外側に移動しながら公転及び自転する。
図5で、曲げ初めのある作用点をPとすると、Pに作用していた力は回動軸33を回動中心0として半径Lの円弧を描くと、作用点PはP→Pと曲げ角度が強くなるにつれてつば部1aの外側方に移動する(図5にdで示した長さ分)。
このときのローラー30とつば部1aとの間の摩擦力fでつば部が外側に引っ張られるので、管材の内側に挫屈変形が生じるのを抑える。
【0012】
図7には、アームが後退することで管材の内側に対してローラの側面摺接部がローラーの根元側に移動しながら外側に傾斜する例を示す。
図1〜図4の実施例とは逆にアーム120の先端軸着部124がローラーの前後方向回動軸133よりも下側で且つ、前方に位置をずらして設けた例である。
このようにするとアーム120の後端を後方に引っ張ると、図7(b)に示すように回動軸133よりも後方に取り付けたローラー30が円弧を描きながら起立する方向に回動し、その際にローラー30の円錐側面角を考慮して回転ブラケット10を前進、後退制御する。
【0013】
ローラー30は円錐台形状になっているので、その側面の長さによりある程度管材の管径の大小差を吸収できる。
しかし、例えば、管の呼び径65Aと200Aのように大きく管径が異なると、ローラー30の公転半径が大きく異なり、ローラーの長さだけでは吸収できない。
そこで、図8に回転ブラケット10の取り付け位置を上下方向に可変できるようにした構造例を示す。
左右の側壁10a,10bを取付けベース10eに上下方向の長孔からなるスライド孔10dを介して取り付ける例になっている。
本実施例では取り付け安定性を考慮して、図8の状態で取付けベースの上側に10f,10g,10hの3段階にめねじ孔を設け、下側にめねじ孔10iを設け、2本のボルト10j,10kをスライド孔10dに挿通し、上側のボルト10jの取り付け高さとこのスライド孔10dの長さとで回転ブラケット10の取り付け高さを可変でき、図8(b)に示す径の大きい管材と図8(c)に示す小さな径の管材1にも簡単な段取り替えで対応できる。
この場合に、アーム移動制御シャフト21を上下に移動させずにアーム支持シャフト22との連結位置を上下に可変できるように、アーム移動制御シャフト21の先端側に上下方向長孔の連結孔21bを有する連結ブロック21aを取り付け、この上下方向に長孔の連結孔21bに左右方向のアーム支持シャフト22を挿通し、連結した。
なお、ローラー30を公転内外方向に可変できればよく、図8に示した構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0014】
1 管材
1a つば部
10 回転ブラケット
10a 側壁
10b 側壁
11 ブラケット回転部材
11a ブラケット移動制御シャフト
12 1次シリンダー
12a ピストンロッド
13 ガイド部
14 2次シリンダー
14a ピストンロッド
20 アーム
21 アーム移動制御シャフト
22 アーム支持シャフト
24 軸着部
30 ローラー
31 ローラー支持部
32 ローラー支持部材
33 回動軸
40 駆動モーター
41 駆動ギヤ
42 伝達ギヤ
43 ブラケット回転ギヤ
50 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材の端部を外側に折り曲げてつば部を成形する加工機であって、
管材の端部に押圧しながら摺接する自転及び公転する略円錐形状のローラーと、
前記ローラーを自転自在に支持するローラー支持部と、
前記ローラー支持部をつば部の曲げ角度に合せて外側方向に回動しながら傾斜する回動傾斜制御手段と、
前記ローラーが公転するようにローラー支持部を回転支持する回転ブラケットとを有し、
前記回転ブラケットは前後方向に移動制御され、
ローラ支持部の前記回動中心をつば部の曲げ起点よりも外側で且つ前方に位置させたことを特徴とする管材のつば部成形加工機。
【請求項2】
前記ローラー支持部の両端はローラー支持部材に連結されていて、
前記回転ブラケットは左右の側壁と後部壁とからなる前方が開口した略コ字形状であり、
前記回動傾斜制御手段は、アームの前端部を前記ローラー支持部材に軸着し、後端部を回転ブラケットの前記左右の側壁に設けた前後方向のガイド部に沿って前後方向に移動制御されたアーム支持シャフトに連結してあり、
前記ローラー支持部材は前記アームの前端部軸着よりも前後方向及び上下方向にずれた位置で左右の前記側壁と回動軸にて連結することで、ローラー支持部の回動中心となる当該回動軸をつば部の曲げ起点よりも外側で且つ前方に位置させたことを特徴とする請求項1記載の管材のつば部成形加工機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−152811(P2012−152811A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16135(P2011−16135)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(391033724)シーケー金属株式会社 (32)