説明

管楽器用掃除具

【課題】管内の水分を効率良く拭き取ることができるようにすること。
【解決手段】平面視正方形状をなすスワブ11と、このスワブ11に取り付けられた紐状部材12とを備えて管楽器用掃除具10が構成されている。紐状部材12は、頂点11Dから、当該頂点11Dを形成しない頂点11A,11B間の辺上であって、その辺の頂点11A,11Bを除く取付位置Pに亘って取り付けられている。取付位置Pから、スワブの四点の頂点11A〜11Dの各距離はそれぞれ異なるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管楽器用掃除具に係り、更に詳しくは、管内に付着した水分等を拭き取ることができる管楽器用掃除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クラリネット等の管楽器は、演奏によって呼気に含まれる水分が管内に付着するため当該管内を拭き取りできる管楽器用掃除具が利用されている(特許文献1〜3参照)。この種の掃除具50としては、図4に示されるように、一端側に錘51を有する紐状部材52と、この紐状部材52の他端側に縫着される平面視正方形をなす布製のスワブ53とを備えたものがある。紐状部材52は、スワブ53の対角線に沿って相対する二点の頂点を通過するように取り付けられる。また、他の掃除具50としては、図5に示されるように、平面視長方形のスワブ53の対角線に沿って紐状部材52を取り付けたものが知られている。かかる掃除具50を用いて管内の水分を拭き取る場合、先ず、錘51を管体の一端側から挿入して他端側に出して管体の他端側に引き出された紐状部材52を引っ張り、これにより、スワブ53を管体の一端から他端に向かって通過させて管体の内周面を拭き取りできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3105350号公報
【特許文献2】特開2001−112461号公報
【特許文献3】実開平2−149995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記掃除具50による管内の拭き取りにおいて、紐状部材52を持ってスワブ53を垂れ下げたときに、スワブ53の自重で図4(A)及び(B)中横方向に最も集まる領域が管内でのスワブ53の最大太さDとなる。この最大太さDは、スワブ53の紐状部材52への取付領域の図4(B)中最上端位置、すなわち、スワブ53の同図中上方の頂点を中心として左右の各頂点をそれぞれ通るスワブ53の面内での円弧Rの長さに応じたものとなる。このスワブ53の最大太さDとなる部分が、管内により密着し易くなり、管内の多くの水分が最大太さDとなる部分によって吸水されて拭き取られることとなる。
【0005】
しかしながら、図4の掃除具50にあっては、吸水作用を発揮する領域がスワブ53の最大太さDとなる部分に集中し、それ以外の部分では太さが急に細くなるために管体の内面に接触し難くなり、水分の拭き取りが不十分になる、という不都合がある。このため、自ずからスワブ53を管内に複数回通して拭き取りを行う傾向があるが、吸水作用を発揮するスワブ53の最大太さDとなる部分は、一回目の拭き取りで十分に濡れた状態となり易くなるため、更に拭き取りを行っても最大太さDとなる部分で吸水し難くなって拭き取り効果が十分に得られなくなる。
【0006】
ここで、図5の掃除具50のように、スワブ53を長方形とした場合、スワブ53の同図中右側の頂点を通る部分において最大太さDとなるが、その部分の前記円弧Rの長さを、正方形のスワブ53と同じに設定しようとすると、スワブ53が大型化して取扱性が低下する、という不都合を招来する。
【0007】
ところで、管体がテーパ形状となるオーボエやファゴット等では、管体の最大径側から最小径側にスワブ53を通過させるため、当該最小径側の内径に応じてスワブ53のサイズが決定される。このため、管体の最大径側では、スワブ53の密着性が低下して水分の拭き取りが不十分になる、という不都合がある。ここで、スワブの形状を大きい長台形状とし、管体の最大径側から可能な限りスワブを押し込んだ後引き戻して拭き取りを行うタイプの掃除具もあるが、この場合、スワブの長さが相当長くなる他、引き戻しのための紐状部材が別途必要となり、使い勝手が悪くなる、という不都合を生じる。
【0008】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に基づいて案出されたものであり、その目的は、管内の水分を効率良く拭き取ることができる管楽器用掃除具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、平面視方形状をなすスワブと、このスワブに取り付けられた紐状部材とを備えた管楽器用掃除具において、
前記紐状部材は、スワブの一の頂点から、当該頂点を形成しない辺上の頂点を除く取付位置に亘って取り付けられる、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記取付位置から、スワブの四点の頂点の各距離がそれぞれ異なる、という構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スワブの頂点から前述した取付位置に亘って紐状部材が取り付けられるので、同じサイズ及び形状のスワブの対角線上に紐状部材を取り付けた場合に比べ、管内で最大太さに近い寸法の太さとなる領域を拡大することができる。これにより、スワブの管内での密着度を高めて吸水効率を向上することができ、管内にスワブを通す回数を減らして清掃作業の負担軽減を図ることが可能となる。また、同一の吸水量に対してスワブのサイズを従来より縮小化することができ、取り扱いを楽にすることができる。更に、従来のように最大太さとなる部分にスワブが集中することを緩和して管内でフレキシブルにスワブを通過させることができ、適応可能な管体の径寸法を拡大してテーパ形状の管体の拭き取りも容易且つ効率的に行うことができる。
【0012】
また、取付位置からスワブの四点の頂点までの各距離をそれぞれ異なるようにした場合、最大太さに近い寸法の太さとなる領域をより良く拡大してスワブと管内との密着性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は、実施形態に係る管楽器用掃除具の概略平面図、(B)は、図1(A)の管楽器用掃除具の使用状態を示す説明図。
【図2】(A)は、実施形態に係る管楽器用掃除具の比較用の説明図、(B)は、従来構造の掃除具の比較用の説明図。
【図3】比較結果を示すグラフ。
【図4】(A)は、従来例に係る掃除具の概略平面図、(B)は、図4(A)の掃除具の使用状態を示す説明図。
【図5】(A)は、他の従来例に係る掃除具の概略平面図、(B)は、図5(A)の掃除具の使用状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、方形とは、当該方形を形成する頂点が面取りされたものや、円弧状とされたものも含む。
【0015】
図1において、管楽器用掃除具10は、平面視正方形状をなすスワブ11と、このスワブ11に取り付けられた紐状部材12とを備えて構成されている。
【0016】
前記スワブ11は、吸水性、保水性に富む繊維からなるシートにより構成されている。ここで、以下の説明において、説明の便宜上、図1(A)中スワブ11の左上の頂点について「11A」、右上の頂点について「11B」、左下の頂点について「11C」、右下の頂点について「11D」の符号を付す。スワブ11の各頂点11A〜11Dは、それぞれ四分円状に形成されている。
【0017】
前記紐状部材12は、紐や糸、帯からなり、清掃を行う楽器の管体の長さに応じた長さに設定されている。紐状部材12の一端側すなわち図1(A)中下端側領域は、スワブ11の面内で直線状に縫着されている。具体的には、スワブ11の頂点11Dに紐状部材12の下端が位置するよう取り付けられる。そして、紐状部材12は、頂点11Dから、当該頂点11Dを形成しない辺、本実施形態では頂点11A,11B間の辺上であって、その辺の頂点11A,11Bを除く取付位置Pに亘って取り付けられている。取付位置Pから、スワブの四点の頂点11A〜11Dの各距離はそれぞれ異なるように設定されている。取付位置Pと頂点11Dとを直線で結んだ線すなわち紐状部材12が縫着された部分と、頂点11D,11B間の辺とのなす角度θは、本実施形態では32°に設定されている。また、紐状部材12の他端側すなわち図1(A)中上端側には、錘13が取り付けられている。
【0018】
以上の構成において、管楽器用掃除具10をクラリネット等の管楽器に使用する場合、従来と同様に、錘13を管体の一端側から他端側に通過させて当該他端側に引き出された紐状部材12を引っ張ることにより、管体内にスワブ11が通過して管内の水分の拭き取りが行われる。管内の拭き取りにおいて、管内でのスワブ11の太さは、前記取付位置Pを中心とする円弧Rのスワブ11面内での長さに応じたものとなるので、本実施形態では、頂点11Bを含む領域付近で最大太さDとなる。
【0019】
ここで、図2(A)及び(B)に示されるように、本実施形態の掃除具10と従来構造の掃除具10’との管内でのスワブ11を比較する。従来構造の掃除具10’は、紐状部材12をスワブ11の対角線上に取り付けることで、スワブ11の頂点11Aを取付位置Pとし、スワブ11の形状及びサイズは本実施形態のスワブ11と同一とする。
比較の結果をグラフとして図3に示す。
【0020】
図3のグラフから、実施形態では、従来構造に比べ、円弧Rの長さがピーク値前後において緩やかに増減することが理解することができる。換言すれば、実施形態の方が、スワブ11が最大太さDに近い寸法の太さとなる領域を拡大可能となり、具体的には、グラフ中、円弧の長さr1以上となる距離は、実施形態が従来構造の約1.7倍となり、円弧の長さr2以上となる距離は、実施形態が従来構造の約1.5倍となって拡大化を図ることができる。これにより、スワブ11において管内で水分が付着して吸水し得る領域を分散及び拡大でき、管体内周面にスワブ11をより良く密着させて水分拭き取りの効率アップを図ることが可能となる。更には、実施形態の方が、スワブ11の吸水量を増大することができ、言い換えれば、スワブ11のサイズを縮小しても従来構造と同一の吸水量を実現可能となる。
【0021】
また、実施形態の最大太さDは、従来構造に比べて83〜88%に収まり、スワブ11のサイズを変更することなく、より細い内径の管体からなる楽器に利用することができる。
更に、スワブ11における水分を吸水し得る領域の分散により、当該領域を取付位置Pに近付けることができ、加えて、スワブ11のサイズを縮小できるので、スワブ11が管内で拡がり易くなり、テーパ形状の管体にも利用できる柔軟性を発揮することが可能となる。
【0022】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0023】
例えば、スワブ11の形状は、頂点を円弧状としない正方形や、長方形等に変更してもよい。
また、図1において、前記取付位置Pは、スワブ11における頂点11A,11C間の辺上(頂点11A,11Cを除く)としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10・・・管楽器用掃除具、11・・・スワブ、12・・・紐状部材、P・・・取付位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視方形状をなすスワブと、このスワブに取り付けられた紐状部材とを備えた管楽器用掃除具において、
前記紐状部材は、スワブの一の頂点から、当該頂点を形成しない辺上の頂点を除く取付位置に亘って取り付けられていることを特徴とする管楽器用掃除具。
【請求項2】
前記取付位置から、スワブの四点の頂点の各距離がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1記載の管楽器用掃除具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−43659(P2011−43659A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191645(P2009−191645)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(595138753)ヤマハミュージックトレーディング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】