説明

管状体

【課題】軽量で且つ高強度となりうるシャフトの製造方法の提供。
【解決手段】この製造方法では、その内部にリブ16を有する管状体18が得られる。この製造方法は、マンドレル2の長手方向に沿って2以上の分割体d1に分割されているマンドレル2を用意する工程と、少なくとも1の上記分割体d1にリブ用プリプレグr1を巻き付ける工程と、上記リブ用プリプレグr1を巻き付ける工程の後、全ての上記分割体d1を合体させて第1中間体10を得る工程と、上記第1中間体10の外側に外周部用プリプレグg1を巻き付けて、第2中間体を得る工程と、上記第2中間体を加熱して、硬化積層体を得る工程と、上記硬化積層体から上記マンドレル2を抜く工程とを含む。好ましくは、上記マンドレルが、周方向において均等に分割される。好ましくは、上記リブ用プリプレグr1において、巻き始め端部t2と巻き終わり端部t1とが重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフト等の管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
管状体は、様々な用途を有する。管状体は、内部が空洞であるため、軽量で且つ高剛性である。より軽量で且つ剛性と強度とに優れた管状体は、様々な用途に役立ちうる。
【0003】
管状体の用途の一例は、ゴルフクラブシャフトである。炭素繊維を用いたゴルフクラブシャフトが市販されている。このシャフトは、カーボンシャフトとも称されている。炭素繊維により、軽量で且つ高強度なカーボンシャフトが製造されうる。
【0004】
軽量なシャフトは、ヘッドスピードの向上に寄与する。ヘッドスピードの観点からは、より軽量なシャフトが好ましい。軽量な管状体は、多くの分野において有効である。
【0005】
一方、軽量化は、強度の低下を招く。また軽量化により、シャフト剛性の過度な低下が生じやすい。多くの分野において、軽量で且つ強度の高い管状体には、価値がある。
【0006】
特開平9−117968号公報は、中空部にリブ状の補強部を有するゴルフクラブ用シャフトを開示する。この構造は、軽量でありながら強度及び剛性が維持されたシャフトに役立つ可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−117968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開平9−117968号公報に記載の製造方法では、その軸方向に分割されたマンドレルが用いられる(特開平9−117968号の図2参照)。この公報に記載の製造方法では、分割されたマンドレルの空隙部に、プリプレグが挿入される(特開平9−117968号の段落[0016]参照)。この製造方法の場合、プリプレグが挿入される工程において、プリプレグの配置される位置がバラつくことがある。また、この公報の図4には、「空隙部から突出した部分」が示されている。このシャフトでは、「突出した部分」が短く、この短い突出部分のみが、外側のプリプレグと接合される。よって、空隙部に配置されたプリプレグと、外周のプリプレグとの接合部分は、少ない。また、この「突出した部分」の長さにバラツキが生じた場合、この接合部分が更に少なくなりうる。よって、特開平9−117968号公報に記載のシャフトでは、管本体と補強部との接合強度が低くなりやすい。
【0009】
本発明者は、新たな技術思想に基づき、軽量で且つ高強度となりうる管状体の製造方法を発明するに至った。
【0010】
本発明の目的は、軽量で且つ高強度となりうる管状体の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その内部にリブを有する管状体の製造方法である。この製造方法は、マンドレルの長手方向に沿って2以上の分割体に分割されているマンドレルを用意する工程と、少なくとも1の上記分割体にリブ用プリプレグを巻き付ける工程と、上記リブ用プリプレグを巻き付ける工程の後、全ての上記分割体を合体させて第1中間体を得る工程と、上記第1中間体の外側に外周部用プリプレグを巻き付けて、第2中間体を得る工程と、上記第2中間体を加熱して、硬化積層体を得る工程と、上記硬化積層体から上記マンドレルを抜く工程とを含む。
【0012】
好ましくは、上記マンドレルは、周方向において均等に分割されている。好ましくは、上記マンドレルの分割数が、偶数である。上記合体状態のマンドレルにおいて、上記リブ用プリプレグが巻き付けられている上記分割体と、上記リブ用プリプレグが巻き付けられていない上記分割体とが、周方向において交互に配置されていてもよい。また、上記リブ用プリプレグが、全ての上記分割体に巻き付けられていてもよい。
【0013】
上記リブ用プリプレグの長手方向長さが、管状体の全長よりも短くされてもよい。上記リブ用プリプレグが、上記分割体の長手方向の一部に巻き付けられてもよい。上記リブが、上記管状体の長手方向の一部に配置されてもよい。上記リブ用プリプレグの、上記分割体における巻き付け位置に基づいて、上記リブの長手方向位置が調整されてもよい。
【0014】
上記リブ用プリプレグにおいて、巻き始め端部と巻き終わり端部とが重なっていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
その内部にリブを有する管状体が効率的に製造されうる。軽量で且つ高強度な管状体が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る製造方法に用いられるマンドレルの全体図である。
【図2】図2は、図1のF2−F2線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図1のF2−F2線に沿った断面によりカットされたマンドレルの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態の製造方法を説明するための図である。
【図5】図5は、巻き終わり端部t1及び巻き始め端部t2に関する説明のための図である。
【図6】図6(A)は、第2実施形態の製造方法に用いられるマンドレルの断面図である。図6(B)は、第2実施形態の製造方法で得られるシャフトの断面図である。
【図7】図7は、第2実施形態の製造方法を説明するための図である。
【図8】図8(A)は、第3実施形態の製造方法に用いられるマンドレルの断面図である。図8(B)は、第3実施形態の製造方法で得られるシャフトの断面図である。
【図9】図9は、第3実施形態の製造方法を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の第4実施形態の製造方法を説明するための図である。
【図11】図11は、実施例1に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図12】図12は、実施例2に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図13】図13は、実施例3に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図14】図14は、実施例4に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図15】図15は、実施例5に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図16】図16は、実施例6に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図17】図17は、実施例7に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図18】図18は、実施例8に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図19】図19は、実施例9に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図20】図20は、実施例10に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図21】図21は、実施例11に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図22】図22は、実施例12に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【図23】図23は、実施例13に用いられるプリプレグを、巻き付ける順で上から並べた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、以下においては、ゴルフクラブシャフトを例として説明がなされる。しかし、本発明は、ゴルフクラブシャフト以外の管状体にも適用される。以下における「シャフト」との文言は、全て、「管状体」という文言に置き換えられうる。
【0018】
本願において「長手方向」とは、シャフトの長手方向であり、分割体の長手方向でもある。本願において「周方向」とは、シャフトの周方向であり、合体状態におけるマンドレルの周方向でもあり、合体状態における第1中間体の周方向でもある。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る管状体の製造に用いられるマンドレル2の全体図である。本実施形態における管状体は、ゴルフクラブシャフトである。図2は、図1のF2−F2線に沿った断面図である。図3は、図1のF2−F2線に沿った断面によりカットされたマンドレル2の斜視図である。
【0020】
マンドレル2は、長手方向に沿って分割されている。マンドレル2は、複数に分割されている。マンドレル2は、その全長に亘って分割されている。マンドレル2は、周方向において均等に分割されている。マンドレル2は、周方向に4分割されている(図2及び図3参照)。なお、マンドレル2は、周方向において不均等に分割されていてもよい。
【0021】
マンドレル2の材質は限定されない。典型的なマンドレル2の材質は、鋼である。
【0022】
マンドレル2は、2つの分割面V1、V2を有する(図2参照)。マンドレル2の分割面V1、V2は、マンドレル2の中心軸線を含む。分割面V1と分割面V2とは、直交している。分割面V1と分割面V2との交線が、マンドレル2の中心軸線である。
【0023】
マンドレル2は、複数の分割体を有する。分割体の数は、分割数に等しい。本実施形態のマンドレル2は、4つの分割体d1を有する。4つの分割体d1は、全て、同一である。以下では、説明の都合上、図2における右上の分割体d1が第1の分割体d11とされ、図2における右下の分割体d1が第2の分割体d12とされ、図2における左下の分割体d1が第3の分割体d13とされ、図2における左上の分割体d1が第4の分割体d14とされる。
【0024】
分割体d1同士は、分離可能である。図3では、4つの分割体d1が分離した状態が示されている。一方、図1及び図2では、全ての分割体d1が合体している。本願では、全ての分割体d1が合体した状態が、合体状態とも称される。合体状態には、リブ用プリプレグr1が巻き付けられる前の合体状態Aと、リブ用プリプレグr1が巻き付けられた後の合体状態Bとがある。これら合体状態A及び合体状態Bのいずれもが、本願では、単に、合体状態とも称される。図1には、合体状態を保持しうる保持部材k1が示されている。図1の実施形態では、先端用保持部材k11と、後端用保持部材k12とが用いられている。先端用保持部材k11は、キャップである。後端用保持部材k12は、キャップである。先端用保持部材k11及び後端用保持部材k12により、複数の分割体d1が束ねられている。先端用保持部材k11及び後端用保持部材k12は、着脱可能である。分割体d1を束ねて保持部材k1を装着することにより、合体状態が維持される。保持部材k1は、プリプレグが巻き付けられない位置に設けられるのが好ましい。図1の形態では、プリプレグが巻き付けられない先端部と、プリプレグが巻き付けられない後端部とに、保持部材k1が設けられている。
【0025】
合体状態のマンドレル2は、本体部4と、先端部6と、後端部8とを有する(図1参照)。本体部4は、プリプレグが巻き付けられる部分である。先端部6は、先端用保持部材k11が装着される部分である。後端部8は、後端用保持部材k12が装着される部分である。
【0026】
合体状態において、本体部4の断面形状は、円形である(図2参照)。合体状態のマンドレル2の外径D1は、先端側ほど小さい(図1参照)。マンドレル2は、外径D1が均一な部分を有していても良い。外径D1が、全長に亘って一定であってもよい。
【0027】
保持部材k1の材質は限定されない。保持部材k1の材質として、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。後述するように、本実施形態の製造方法では、分割体d1同士の間にプリプレグが挟まれた状態で、合体状態が保持される。上記合体状態Aと、上記合体状態Bとの間で、マンドレル2の外径は、相違する。本発明の製造方法に適しているという観点から、合体状態Bを維持しうる保持部材k1が好ましい。作業性及び利便性の観点から、上記合体状態A及び上記合体状態Bを維持しうる保持部材k1がより好ましい。
【0028】
図4は、本実施形態に係るシャフトの製造方法を説明するための図である。この図4を参酌しつつ、本実施形態の製造方法が説明される。
【0029】
なお、図4を含め、本願の断面図において、プリプレグの断面は、太線(太い実線)で示される。
【0030】
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所望の形状に裁断される。裁断は、裁断機によりなされてもよいし、カッターナイフ等により手作業でなされてもよい。裁断工程により、分割体d1に巻き付けられるリブ用プリプレグr1と、合体状態のマンドレルの外側に巻き付けられる外周部用プリプレグg1とが得られる。リブ用プリプレグr1及び外周部用プリプレグg1の詳細については、後述される。なお本願では、裁断されたプリプレグが、シートとも称される。
【0031】
リブ用プリプレグr1の一部は、リブを形成する。リブ用プリプレグr1の他の一部は、シャフトの外周部を形成する。
【0032】
リブ用プリプレグr1は、全長プリプレグであってもよいし、部分プリプレグであってもよい。また、リブ用プリプレグr1として、全長プリプレグと部分プリプレグとが併用されていてもよい。
【0033】
なお、全長プリプレグは、シャフト軸方向の全体に亘って設けられる。部分プリプレグは、シャフト軸方向の一部に設けられる。
【0034】
外周部用プリプレグg1は、通常、バイアス層用プリプレグと、ストレート層用プリプレグとを含む。外周部用プリプレグg1が、フープ層用プリプレグであってもよい。外周部用プリプレグg1は、全長プリプレグであってもよいし、部分プリプレグであってもよい。外周部用プリプレグg1として、全長プリプレグと部分プリプレグとが併用されていてもよい。
【0035】
外周部用プリプレグg1は、シャフトの外周部のみを形成する。外周部用プリプレグg1は、リブを形成しない。
【0036】
(2)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、単独では巻き付けにくいプリプレグシートが、他のシートと貼り合わせられる。貼り合わせ工程は、必要に応じてなされる。貼り合わせ工程では、例えば、バイアス層用プリプレグ同士が貼り合わせられる。貼り合わせ工程は、通常、裁断工程の後になされる。外周部用プリプレグg1同士が張り合わされてもよいし、リブ用プリプレグr1同士が張り合わされてもよい。
【0037】
後述されるように、貼り合わせ工程において貼り合わせられる典型例は、バイアス層用プリプレグである。また、リブ用プリプレグr1同士が貼り合わせられてもよく、この例は後述の実施例で示される。
【0038】
(3)第1巻き付け工程
第1巻き付け工程では、分割されているマンドレル2が用いられる。この工程では、少なくとも1の分割体d1に、リブ用プリプレグr1が巻き付けられる。
【0039】
リブ用プリプレグr1は、複数の分割体d1のうちの一部にのみ巻き付けられてもよいし、全ての分割体d1に巻き付けられてもよい。図4の(3)は、全ての分割体d1にリブ用プリプレグr1が巻き付けられた状態を示す。
【0040】
図4の(2)及び(3)では、リブ用プリプレグr1が、分割体d1を約1周している。即ち、リブ用プリプレグr1の分割体d1に対する巻回数は、約1である。より正確には、リブ用プリプレグr1の分割体d1に対する巻回数は、1よりも大きい。巻回数が1より大きいことに起因して、リブ用プリプレグr1の巻き終わり端部t1は、巻き始め端部t2と重なり合う(図4参照)。巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なって、重複部が形成される。
【0041】
なお図4等では、わかりやすい図面とするため、端部t1とを端部t2との間に隙間を設けているが、実際には、端部t1と端部t2とは、隙間無く、重なり合う。また図4等では、わかりやすい図面とするため、端部t1が直線的に描かれているが、実際には、端部t1は、端部t2に沿って、端部t2の外側に重なる。
【0042】
端部t1と端部t2との重複により、同一のリブ用プリプレグr1同士が重なり合う重複部が形成される。この重複部は、強度の向上に寄与しうる。設計寸法では巻回数が1を越えている場合であっても、巻き付けの誤差や寸法誤差等に起因して、巻回数が1未満になることがある。巻回数が1未満である場合、巻き始め端部と巻き終わり端部との間に隙間が生じる。この隙間は、強度を低下させうる。重複部を設けておくことにより、この隙間の発生が抑制される。この観点からは、リブ用プリプレグr1の、分割体d1に対する巻回数は、1.00より大きいのが好ましい。
【0043】
巻き付け工程は、手作業によりなされてもよいし、ローリングマシン等と称される機械によりなされてもよい。
【0044】
(4)合体工程
この工程は、上記第1巻き付け工程の後になされる。図4の(4)が示すように、この工程では、全ての分割体d1を合体させて、第1中間体10を得る。4つの分割体d1を束ねて、先端用保持部材k11及び後端用保持部材k12を装着することにより、第1中間体10が得られる。この第1中間体10は、上記合体状態Bである。
【0045】
(5)第2巻き付け工程
第2巻き付け工程では、上記第1中間体10の外側に、外周部用プリプレグg1が巻き付けて、第2中間体12を得る。図4の(5)では、外周部用プリプレグg1と第1中間体10とが離れているが、実際には、両者は隙間なく重ねられる。
【0046】
図4の(5)が示すように、外周部用プリプレグg1の巻回数は、1.00以上である。このことに起因して、外周部用プリプレグg1は、重複部Tfを有している。この重複部Tfは、強度の向上に寄与する。
【0047】
第2巻き付け工程は、手作業によりなされてもよいし、ローリングマシン等と称される機械によりなされてもよい。
【0048】
(6)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、第2中間体12の外周面にテープが巻き付けられる。このテープは、ラッピングテープとも称される。このラッピングテープは、張力を付与されつつ巻き付けられる。
【0049】
(7)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の第2中間体12が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。この硬化の課程で、マトリクス樹脂が一時的に流動化する。このマトリクス樹脂の流動化により、シート間又はシート内の空気が排出されうる。ラッピングテープの張力(締め付け力)により、この空気の排出が促進されている。この硬化により、硬化積層体(図示省略)が得られる。
【0050】
(8)マンドレルの抜き取り工程及びラッピングテープの除去工程
マンドレル2の抜き取り工程とラッピングテープの除去工程とがなされる。両者の順序は限定されないが、ラッピングテープの除去工程の能率を向上させる観点から、マンドレル2の抜き取り工程の後にラッピングテープの除去工程がなされるのが好ましい。
【0051】
マンドレル2の抜き取りでは、複数の分割体d1が同時に抜き取られても良いし、複数の分割体d1が順次抜き取られても良い。
【0052】
図4の(6)が示すように、マンドレル2の抜き取りにより、その内部にリブ16を有するシャフト(硬化管状体)18が得られる。このシャフト18は、外周部20とリブ16とを有する。分割体d1が存在していた部分には、空洞22が形成される。空洞22の形状は、分割体d1の形状に対応している。シャフトの中空部がリブ16によって仕切られている。リブ16が仕切ることによって形成される空洞22の数は、マンドレル2の分割数に等しい。
【0053】
上記した製造工程から理解されるように、外周部20は、リブ用プリプレグr1及び外周部用プリプレグg1によって形成されている。リブ用プリプレグr1と外周部用プリプレグg1との接触面積は、広い。リブ用プリプレグr1と外周部用プリプレグg1との接着強度は高い。
【0054】
一方、リブ16は、リブ用プリプレグr1のみにより形成されている。この実施形態では、リブ16を構成するリブ用プリプレグr1が、外周部用プリプレグg1にも広く接触している。よって、リブ16と外周部20との接合強度が高い。シャフト18は、強度に優れる。
【0055】
リブ16は、分割体d1(例えば第1分割体d11)に巻き付けられたリブ用プリプレグr1と、その分割体d1の隣の分割体d1(例えば第2分割体d12)に巻き付けられたリブ用プリプレグr1とが重なり合って形成されている。リブ用プリプレグr1同士の接触面積は広い。このことは、強度の向上に寄与しうる。
【0056】
本実施形態では、リブ16の厚みは、実質的に一定である。即ち、リブ16の厚みは、リブ用プリプレグr1の厚みの2倍である。リブ用プリプレグr1の厚みが一定とされることにより、周方向のバラツキが少ないシャフトが得られうる。
【0057】
なお、図4の(6)には、上記重複部等に起因する厚みのバラツキが反映されていない。図4の(6)は、リブ16と外周部20とを示すための概略的な断面図にすぎない。
【0058】
(9)両端カット工程
この工程では、硬化積層体18の両端部がカットされる。このカットにより、シャフトの先端面及び後端面が平坦とされる。
【0059】
(10)研磨工程
この工程では、硬化積層体の表面が研磨される。この研磨は、表面研磨とも称される。硬化積層体の表面には、ラッピングテープの跡として残された螺旋状の凹凸が存在する。研磨により、このラッピングテープの跡としての凹凸が消滅し、表面が平滑とされる。
【0060】
(11)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体に塗装が施される。
【0061】
このような工程を経て得られるシャフト18は、いわゆるカーボンシャフトである。上記プリプレグ(リブ用プリプレグr1及び外周部用プリプレグg1)は、繊維とマトリクス樹脂とを有している。典型的には、この繊維は炭素繊維である。典型的には、このマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。
【0062】
シートの枚数は限定されない。リブ用プリプレグr1の枚数は限定されないし、外周部用プリプレグg1の枚数は限定されない。また、各シートの配置、各シートの形状、各シートにおいて用いられている繊維等は限定されない。また、各シートにおける繊維の配向角度等は限定されない。
【0063】
図5は、リブ用プリプレグr1の巻き終わり端部t1及び巻き始め端部t2に関して説明するための図である。図5(A)、図5(E)及び図5(F)は、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重複した重複部を有する場合を示している。一方、図5(B)、図5(C)及び図5(D)は、重複部を有さない場合を示している。
【0064】
図5(B)では、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが突き合わされている。この形態では、巻回数が1.00である。この形態は、厚みが一定であるという点では理想的である。この観点からは、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが突き合わされているのが好ましい。ただし、巻き付け等の誤差に起因して、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが突き合わされない場合がある。この場合、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2との間に隙間が生じる。この隙間は、ボイドを生じさせうる。このボイドは、シャフトの強度を低下させうる。強度の観点からは、リブ用プリプレグr1の、分割体d1に対する巻回数は、1.00より大きいのが好ましい。即ち強度の観点からは、分割体d1に巻き付けられたリブ用プリプレグr1が、重複部Tfを有するのが好ましい。重複部Tfは、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なった部分である。
【0065】
巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが突き合わされた形態が、図5(B)、図5(C)及び図5(D)に示されている。図5(B)の形態では、突き合わせ位置Tpは、分割体d1のリブ面d1rと、分割体d1の外面d1gとの境界に位置している。図5(C)の形態では、突き合わせ位置Tpは、外面d1gに位置している。図5(D)の形態では、突き合わせ位置Tpは、リブ面d1rに位置している。
【0066】
図5(D)の形態のように、突き合わせ位置Tpがリブ面d1rに位置している場合、リブの強度が低下しやすい。この観点から、突き合わせ位置Tpは、外面d1gに位置しているのが好ましい。
【0067】
図5(A)、図5(E)及び図5(F)のように、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なった重複部Tfを有している場合、重複部Tfにより、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが接合される。重複部Tfの位置は、外面d1gであってもよいし、リブ面d1rであってもよい。なお、リブ強度を優先する場合、重複部Tfは外面d1gに位置させるのが好ましい。一方、シャフト物性の対称性や均一性を優先する場合、重複部Tfは、リブ面d1rに位置させるのが好ましい。
【0068】
シャフト物性の対称性及び強度の観点から、重複部Tfを外面d1gに位置させる場合、重複部Tfの位置は、周方向において略等間隔に配置されるのが好ましい。図4(4)の実施形態では、重複部Tfが、周方向において等間隔に(90度おきに)配置されている。
【0069】
重複部Tfは、外面d1gとリブ面d1rとの境界に位置しているのがよい(図5(A)、図5(E)及び図5(F)参照)。この場合、重複部Tfがリブの根元に配置されるので、強度が向上しうる。重複部Tfが外面d1gとリブ面d1rとの境界に位置する形態は、図5(A)の形態、図5(E)の形態及び図5(F)の形態を含む。図5(A)の形態は、リブ厚みを均一としうる。更に、図5(A)の形態は、生産性の向上に寄与する。図5(E)の形態及び図5(F)の形態は、リブの根元の強度を効果的に向上させうる。
【0070】
図6(A)は、第2実施形態の製造方法に係るマンドレル30の断面図である。図6(B)は、第2実施形態の製造方法に係るシャフト32の断面図である。上記マンドレル2に代えて、このマンドレル30が用いられることで、シャフト32が得られうる。
【0071】
この第2実施形態では、マンドレル30が3つの分割体d1に分割されている。マンドレル30は、周方向に均等に分割されている。このマンドレル30を用いることにより、シャフト32が得られる。このシャフト32は、外周部34と、リブ36とを有する。3つの分割体d1に対応したリブ36が形成されている。
【0072】
図7は、第2実施形態の製造方法に係る第1中間体を示す。なお図7では、理解を容易とするため、隣接するリブ用プリプレグr1同士の間に隙間を設けている。この隙間は、実際の第1中間体には、存在しない。リブ用プリプレグr1の断面は太線で示されている。
【0073】
図7(A)は、重複部38がある場合の第1中間体40を示す。リブ用プリプレグr1のそれぞれにおいて、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なっている。図7(B)は、重複部がない場合の第1中間体42を示す。第1中間体42では、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが突き合わされている。
【0074】
図8(A)は、第3実施形態の製造方法に係るマンドレル50の断面図である。図8(B)は、第3実施形態の製造方法に係るシャフト52の断面図である。上記マンドレル2に代えて、このマンドレル50が用いられることで、シャフト52が得られうる。
【0075】
この第3実施形態では、マンドレル50が2つの分割体d1に分割されている。マンドレル50は、周方向に均等に分割されている。このマンドレル50を用いることにより、シャフト52が得られる。このシャフト52は、外周部54と、リブ56とを有する。2つの分割体d1に対応したリブ56が形成されている。
【0076】
図9は、第3実施形態の製造方法に係る第1中間体を示す。なお図9では、理解を容易とするため、隣接するリブ用プリプレグr1同士の間に隙間を設けている。この隙間は、実際の第1中間体には、存在しない。リブ用プリプレグr1の断面は太線で示されている。
【0077】
図9(A)は、重複部58がある場合の第1中間体60を示す。リブ用プリプレグr1のそれぞれにおいて、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なっている。図9(B)は、重複部がない場合の第1中間体62を示す。第1中間体62では、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが突き合わされている。
【0078】
図10は、第4実施形態の製造方法を説明するための図である。この製造方法で用いられるマンドレル2は、前述した第1実施形態のそれと同じである。
【0079】
図10と、図4とを対比することにより、この第4実施形態と上記第1実施形態との差異が理解できる。図4の実施形態では、全ての分割体d1に、リブ用プリプレグr1が巻かれている。これに対して、本実施形態では、4つの分割体d1のうち、リブ用プリプレグr1が巻かれる分割体d1は、2つである。この点は、図10の(3)及び(4)に示されている。
【0080】
前述の通り、マンドレル2は、周方向において均等に分割されている。そして、マンドレル2の分割数は、偶数(4つ)である。
【0081】
図10の(3)が示すように、本実施形態では、第1の分割体d11及び第3の分割体d13に、リブ用プリプレグr1が巻かれる。第2の分割体d12及び第4の分割体d14には、リブ用プリプレグr1は巻かれない。図10の(4)が示すように、本実施形態では、合体状態のマンドレルにおいて、上記リブ用プリプレグr1が巻き付けられている分割体d1(d11、d13)と、リブ用プリプレグr1が巻き付けられていない分割体d1(d12、d14)とが、周方向において交互に配置されている。図10の(4)は、第1中間体の断面図である。
【0082】
図10の(6)が示すように、この第4実施形態の結果、シャフト70が得られる。このシャフト70も、前述のシャフト18と同様に、断面形状が「+」であるリブ72と外周部74とを有する。なお図10の(6)は、単にシャフト70の概略構成を示す断面図である。図10の(6)において、肉厚分布等の詳細は考慮されていない。
【0083】
シャフト70の場合も、前述したシャフト18と同様、リブ72の厚みは、実質的に一定である。
【0084】
シャフト70と、上記シャフト18とを比較すると、層数が相違している。シャフト70のリブ72は、層数が1である。リブ72の厚みは、リブ用プリプレグr1の厚みに相当する。これと比較して、前述したシャフト18では、リブ16は、層数が2である。シャフト18では、ある分割体d1のリブ用プリプレグr1と、隣接する分割体d1のリブ用プリプレグr1とが重なる。よって、リブ16の厚みは、リブ用プリプレグr1厚みの2倍に相当する。
【0085】
シャフト70において、外周部74の厚みは、周方向において、一定ではない。外周部74には、外周部用プリプレグg1とリブ用プリプレグr1とが重なった部分と、外周部用プリプレグg1とリブ用プリプレグr1とが重なっていない部分とが存在する。即ち、外周部74には、その内側にリブ用プリプレグr1が存在する部分Pr1と、その内側にリブ用プリプレグr1が存在しない部分Pr2とが、混在している。シャフト70の断面図において、上記部分Pr1と上記部分Pr2とは、周方向において交互に配置されている。本発明では、このような実施形態も可能である。後述される実施例のように、リブ用プリプレグr1がフープ層(上記[形態1])である場合、上記部分Pr1と上記部分Pr2との混在は、シャフト70の周方向における均一性を、実質的に阻害しない。
【0086】
上記の通り、本実施形態では、合体状態のマンドレルにおいて、上記リブ用プリプレグr1が巻き付けられている分割体d1と、リブ用プリプレグr1が巻き付けられていない分割体d1とが、周方向において交互に配置されている。この配置により、リブ72の厚みが均一とされる。この配置により、リブの質量を抑制しつつ、厚みが実質的に均一なリブを設けることが可能となる。この配置により、構造的及び物性的な対称性が得られやすい。
【0087】
上記実施形態では、リブは、シャフト長手方向の全体に設けられている。本発明は、この形態に限定されない。リブは、シャフト長手方向の一部に設けられても良い。リブの長手方向における位置及び範囲は、リブ用プリプレグr1の巻き付け位置及び巻き付け範囲によって決定される。リブ用プリプレグr1の巻き付け範囲がシャフト長手方向の一部とされることにより、リブが、シャフト長手方向の一部にのみ設けられる。この実施形態の一例は、後述の実施例によって示される。
【0088】
リブ用プリプレグr1に用いられるプリプレグは限定されない。リブは、シャフトの潰れを効果的に抑制する。特に外周部の薄いシャフトの場合、曲げと潰れとが連動しやすい。潰れとは、シャフトの断面が楕円形になるような変形である。曲げと潰れとの連動性に起因して、シャフトの潰れが抑制されると、シャフトの曲げ強度が向上しうる。潰れを抑制してシャフト強度を向上させる観点から、リブ用プリプレグr1は、フープ層を含むのが好ましい。なお、フープ層を形成するプリプレグは、本願において、フープ層用プリプレグとも称される。
【0089】
リブ用プリプレグr1の繊維と、長手方向との成す角度θ1(度)は限定されない。好ましい角度θ1として、以下の形態が例示される。
[形態1]:角度θ1が90度に近い。具体的には、角度θ1が、70度以上、更には80度以上、更には85度以上。また、角度θ1が、110度以下、更には100度以下、更には95度以下。
[形態2]:角度θ1が0度に近い。具体的には、角度θ1が、−10度以上、更には−5度以上。また、角度θ1が、10度以下、更には5度以下。なお、−10度は170度に等しく、−5度は175度に等しい。
[形態3]:角度θ1が10度以上、更には20度以上、更には30度以上。また、角度θ1が、80度未満、更には70度以下、更には60度以下。
[形態4]:角度θ1が100度以上、更には110度以上、更には120度以上。また、角度θ1が、170度未満、更には160度以下、更には150度以下。
[形態5]:繊維が織られてなる織物を含み、この織物が、少なくとも2方向に配向した繊維を含む。この織物に起因して、角度θ1が2種以上である。
【0090】
強度の観点から、リブ用プリプレグr1の巻回数が0.00を超えて2.00未満(更には1.00以上2.00未満)である場合、上記[形態1]、[形態3]、[形態4]又は[形態5]が好ましく、上記[形態1]又は[形態5]がより好ましい。
【0091】
強度の観点から、リブ用プリプレグr1の巻回数が2.00以上である場合、以下の(a)、(b)又は(c)が好ましい。
(a)[形態1]及び[形態2]を含む。
(b)[形態5]を含む。
(c)[形態3]及び[形態4]を含む。
【0092】
なお、角度θ1が異なる2種以上のプリプレグがリブ用プリプレグr1として用いられる場合、上記貼り合わせ工程において、リブ用プリプレグr1同士が貼り合わされても良い。特に、上記[形態1]のプリプレグと、この[形態1]とは異なる角度θ1を有するプリプレグとがリブ用プリプレグr1として用いられる場合、これらが貼り合わせられるのが好ましい。この貼り合わせにより、上記[形態1]のプリプレグの巻き付け精度及び巻き付け作業性が向上しうる。このリブ用プリプレグr1同士の貼り合わせがなされた例が、後述の実施例3である。
【0093】
外周部用プリプレグg1に用いられるプリプレグは限定されない。通常、外周部は、ストレート層とバイアス層とを有する。ストレート層を形成するプリプレグは、本願においてストレート層用プリプレグとも称される。バイアス層を形成するプリプレグは、本願においてバイアス層用プリプレグとも称される。バイアス層は、斜交層とも称される。
【0094】
ストレート層は、繊維の配向方向がシャフト軸方向に対して実質的に平行とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向方向は、シャフト軸線方向に対して完全に平行とはならない。ストレート層の繊維の配向角度に関し、シャフト軸線に対して、±10度の誤差が許容される。
【0095】
ストレート層の巻回数(層数)は限定されない。ストレート層は、主として、シャフトの曲げ強度及びシャフトの曲げ剛性と相関する。ストレート層の巻回数は、シャフトの曲げ剛性、シャフトの強度、ストレート層に含まれる炭素繊維の弾性率等を考慮して決定される。
【0096】
なお本願において、巻回数は、小数点以下の桁を有しうる。例えば、プリプレグが丁度半周している場合、巻回数は0.5である。前述した図5(A)が示すように、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが僅かに重なっている場合、巻回数は、例えば、1.01以上1.05以下である。
【0097】
バイアス層は、繊維の配向方向がシャフト軸方向に対して実質的に傾斜した層である。通常、互いに逆方向に傾斜したバイアス層のセットが用いられる。通常、バイアス層の炭素繊維とシャフト軸方向との成す角度は、±45度である。巻き付けの際の誤差等に起因して、通常、繊維の配向方向は、シャフト軸線方向に対して完全に45度とはならない。また、バイアス層の角度が45度とされない場合もある。捻れ剛性及び捻れ強度を考慮すると、バイアス層とシャフト軸方向との成す角度の絶対値は、25度以上65度以下が好ましい。
【0098】
バイアス層の巻回数(層数)は限定されない。バイアス層は、主として、シャフトの捻れ強度及びシャフトの捻れ剛性と相関する。バイアス層の巻回数は、シャフトの捻れ剛性、シャフトの捻れ強度、バイアス層に含まれる炭素繊維の弾性率等を考慮して決定される。
【0099】
外周部用プリプレグg1のうち、上記第1中間体に接触して巻かれるプリプレグが、本願において、プリプレグX1とも称される。換言すれば、リブ用プリプレグr1に接触して巻かれる外周部用プリプレグg1が、プリプレグX1である。後述される全ての実施例では、バイアス層用プリプレグが、プリプレグX1である。プリプレグX1の繊維とシャフト軸線との成す角度がθ2(度)とされる。
【0100】
この角度θ2と、上記角度θ1との差の絶対値|θ1−θ2|には、好ましい範囲がある。管状体の本体部分(管状体の、リブ以外の部分)とリブとの境界面における剛性を高め、この境界面近傍における破損を抑制する観点から、絶対値|θ1−θ2|は、20度以上が好ましく、30度以上がより好ましく、また、70度以下が好ましく、60度以下がより好ましい。なお、管状体の本体部分に接触するリブ用プリプレグが2層以上存在する場合、この2層以上の層のうちの少なくとも1層における角度θ1が、上記絶対値|θ1−θ2|の好ましい範囲を満たせばよい。また、リブ用プリプレグの繊維が織物である場合、この織物のうちの少なくとも1種における角度θ1が、上記絶対値|θ1−θ2|の好ましい範囲を満たせばよい。
【0101】
シャフトの捻れ剛性が過小である場合、打球の方向安定性が不足し、シャフト強度も不足しやすい。シャフトの捻れ剛性の観点から、バイアス層の巻回数の合計Tb1は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、上記巻回数の合計Tb1は、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がより好ましい。シャフト軸線に対する角度がプラス45度であるバイアス層の数がB1であり、シャフト軸線に対する角度がマイナス45度であるバイアス層の数がB2であるとき、上記巻回数の合計Tb1は、[B1+B2]である。
【0102】
外周部には、必要に応じて、先端部を補強する層(先端部補強層)が設けられる。打球時において、シャフトの先端部には、大きな衝撃力が作用しやすい。この先端部補強層は、シャフトの強度を効果的に高めうる。強度の観点から、この先端部補強層は、ストレート層であるのが好ましい。先端部補強層を形成するプリプレグは、外周部用プリプレグg1であってもよいし、リブ用プリプレグr1であってもよい。
【0103】
外周部には、必要に応じて、後端部を補強する層(後端部補強層)が設けられる。曲げ強度の観点からは、後端部補強層は、ストレート層であるのが好ましい。一方、後端部の外径は、比較的大きい。外径が大きく且つ薄い部位は、潰れやすい。潰れ剛性の観点からは、後端部補強層は、フープ層であるのが好ましい。後端部補強層を形成するプリプレグは、外周部用プリプレグg1であってもよいし、リブ用プリプレグr1であってもよい。
【0104】
マンドレルの分割数は限定されない。リブを設ける観点から、マンドレルの分割数は、2以上とされる。リブによる補強効果を高め、かつ周方向の均一性を高める観点から、マンドレルの分割数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。生産性の観点、及び、リブの質量が過大となることを防止する観点から、マンドレルの分割数は、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。
【0105】
重複部Tfの周方向長さLは限定されない。裁断寸法等のバラツキに起因して、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重ならない場合がある。このような場合を減らす観点から、長さLは、0.3(mm)以上が好ましく、0.4(mm)以上がより好ましく、0.5(mm)以上がより好ましい。シャフト重量を抑制する観点から、長さLは、3.0(mm)以下が好ましく、2.5(mm)以下がより好ましく、2.0(mm)以下がより好ましい。
【0106】
リブ用プリプレグr1の樹脂含有率R1は限定されない。樹脂含有率R1が過小である場合、タック性(粘着性)が低下し、分割体への巻き付けが行いにくい。この観点から、樹脂含有率R1は、24質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、26質量%以上がより好ましい。樹脂含有率R1が過大である場合、硬化工程の後、余分な樹脂に起因するバリが多く発生し、マンドレルの抜き取りが行いにくい。この観点から、樹脂含有率R1は、40質量%以下が好ましく、38質量%以下がより好ましく、36質量%以下がより好ましい。
【0107】
上記プリプレグX1の樹脂含有率R2は限定されない。樹脂含有率R2が過小である場合、タック性が低下し、第1中間体への巻き付けが行いにくい。この観点から、樹脂含有率R2は、20質量%以上が好ましく、22質量%以上がより好ましく、24質量%以上がより好ましい。軽量化の観点から、樹脂含有率R2は、30質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、26質量%以下がより好ましい。
【0108】
比(R1/R2)は限定されない。分割体は、合体状態のマンドレルに比較して、細い。また、分割体の断面形状は、非円形である。よって、断面円形のマンドレルへの巻き付けに比較して、分割体への巻き付けは、行いにくい。分割体への巻き付けを容易とする観点から、樹脂含有率R1は、樹脂含有率R2よりも大きいのが好ましい。また、樹脂含有率R2が過大である場合、重量が増加する。これらの観点から、比(R1/R2)は、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。樹脂含有率R1が過大である場合、又は、樹脂含有率R2が過小である場合、前述のように好ましくない。従って、比(R1/R2)は、1.9以下が好ましく、1.7以下がより好ましい。
【0109】
プリプレグに用いられている繊維は限定されない。強度及び弾性率の観点から、炭素繊維が好ましい。
【0110】
炭素繊維は限定されない。炭素繊維として、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が例示される。強度の観点からは、PAN系炭素繊維が好ましい。弾性率の自由度の高さの観点からは、ピッチ系炭素繊維が好ましい。
【0111】
PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリルを原料とする。PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリルを焼成して得られる。
【0112】
ピッチ系炭素繊維は、ピッチを原料とする。ピッチ系炭素繊維は、ピッチを紡糸し熱処理して得られる。ピッチの典型例は、石油ピッチである。石油ピッチは、原油を高温で蒸留したときの残渣である。ピッチ系炭素繊維として、等方性ピッチ系炭素繊維及び異方性ピッチ系炭素繊維が挙げられる。異方性ピッチ系炭素繊維は、メソフェーズピッチ系炭素繊維とも称される。高い弾性率が得られやすいという観点から、好ましいピッチ系炭素繊維は、メソフェーズピッチ系炭素繊維である。
【0113】
本発明で用いられ得るプリプレグの例が、表1に示される。
【0114】
【表1】

【実施例】
【0115】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0116】
[実施例1]
図6(A)に示される3分割のマンドレルを用いた。また、図11に示されるプリプレグe11からe17を用意した。前述の実施形態と同様にして、図6(B)に示される断面形状を有するシャフトを得た。
【0117】
なお実施例1では、第1の分割体にプリプレグe11が巻き付けられ、第2の分割体にプリプレグe12が巻き付けられ、第3の分割体にプリプレグe13が巻き付けられた。第1の分割体に対するプリプレグe11の巻回数は、1.05とされた。巻回数が1.00を越えているため、プリプレグe11において、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なる重複部が形成された。第2の分割体に対するプリプレグe12の巻回数は、1.05とされた。巻回数が1.00を越えているため、プリプレグe12において、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なる重複部が形成された。第3の分割体に対するプリプレグe13の巻回数は、1.05とされた。巻回数が1.00を越えているため、プリプレグe13において、巻き終わり端部t1と巻き始め端部t2とが重なる重複部が形成された。
【0118】
プリプレグe14とプリプレグe15とは、貼り合わせられた(図11参照。)この貼り合わされたプリプレグのセットが、巻き付けられた。他の全ての実施例でも、バイアス層は、この方法で巻き付けられた。
【0119】
実施例1の仕様が、表2及び表3に示される。
【0120】
[実施例2]
図2に示される4分割のマンドレルを用いた。また、図12に示されるプリプレグe21からe28を用意した。前述の実施形態と同様にして、図4(6)に示される断面形状を有するシャフトを得た。
【0121】
なお実施例2では、第1の分割体にプリプレグe21が巻き付けられ、第2の分割体にプリプレグe22が巻き付けられ、第3の分割体にプリプレグe23が巻き付けられ、第4の分割体にプリプレグe24が巻き付けられた。第1の分割体に対するプリプレグe21の巻回数は、1.05とされた。第2の分割体に対するプリプレグe22の巻回数は、1.05とされた。第3の分割体に対するプリプレグe23の巻回数は、1.05とされた。第4の分割体に対するプリプレグe24の巻回数は、1.05とされた。
【0122】
実施例2の仕様が、表2及び表4に示される。
【0123】
[実施例3]
図2に示される4分割のマンドレルを用いた。また、図13に示されるプリプレグe31からe40を用意した。
【0124】
実施例3では、リブ用プリプレグr1同士が貼り合わせられた。実施例3では、上記[形態1]のリブ用プリプレグr1と、上記[形態2]のリブ用プリプレグr1とが貼り合わせられた。図13において、プリプレグe31とプリプレグe32とは、重なっている。プリプレグe31は、ストレート層用プリプレグである。プリプレグe32は、フープ層用プリプレグである。プリプレグe31とプリプレグe32とが貼り合わされた。この貼り合わされたプリプレグのセットが、分割体d1に巻き付けられた。同様にして、プリプレグe33とプリプレグe34とは、互いに貼り合わされた後、分割体d1に巻き付けられた。同様にして、プリプレグe35とプリプレグe36とは、互いに貼り合わされた後、分割体d1に巻き付けられた。
【0125】
表2、表5及び図13に示される事項の他は、実施例1と同様にして、実施例3に係るシャフトを得た。
【0126】
この実施例3では、フープ層用プリプレグとストレート層用プリプレグ(フープ層用以外のプリプレグ)とが貼り合わされているため、巻き付ける際にフープ層用プリプレグが繊維方向に沿って裂けることがない。よって、フープ層用プリプレグを分割体に巻き付ける際の作業性が向上している。
【0127】
[実施例4]
図8(A)に示される2分割のマンドレルを用いた。また、図14に示されるプリプレグe41からe46を用意した。前述の実施形態と同様にして、図8(B)に示される断面形状を有するシャフトを得た。
【0128】
なお実施例4では、第1の分割体にプリプレグe41が巻き付けられ、第2の分割体にプリプレグe42が巻き付けられた。第1の分割体に対するプリプレグe41の巻回数は、1.05とされた。第2の分割体に対するプリプレグe42の巻回数は、1.05とされた。
【0129】
実施例4の仕様が、表2及び表6に示される。
【0130】
[実施例5]
図2に示される4分割のマンドレルを用いた。また、図15に示されるプリプレグe51からe56を用意した。図10で示される実施形態と同様にして、図10(6)に示される断面形状を有するシャフトを得た。図10の実施形態でも説明されたように、この実施例5では、合体状態のマンドレルにおいて、リブ用プリプレグr1が巻き付けられている分割体と、リブ用プリプレグr1が巻き付けられていない分割体とが、周方向において交互に配置された。
【0131】
なお実施例5では、第1の分割体にプリプレグe51が巻き付けられ、第3の分割体にプリプレグe52が巻き付けられた。第1の分割体に対するプリプレグe51の巻回数は、1.05とされた。第3の分割体に対するプリプレグe52の巻回数は、1.05とされた。
【0132】
実施例5の仕様が、表2及び表7に示される。
【0133】
[実施例6]
表2、表8及び図16に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例6に係るシャフトを得た。
【0134】
[実施例7]
表2、表9及び図17に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例7に係るシャフトを得た。
【0135】
[実施例8]
表2、表10及び図18に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例8に係るシャフトを得た。
【0136】
[実施例9]
表2、表11及び図19に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例9に係るシャフトを得た。
【0137】
[実施例10]
表2、表12及び図20に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例10に係るシャフトを得た。
【0138】
[実施例11]
表2、表13及び図21に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例11に係るシャフトを得た。
【0139】
[実施例12]
表2、表14及び図22に示された事項の他は、実施例2と同様にして、実施例12に係るシャフトを得た。
【0140】
[実施例13]
図23に示すように、リブ用プリプレグr1の軸方向長さが、シャフト全長より短くされた。3枚のリブ用プリプレグr1は、シャフトの後端部に配置された。上記プリプレグe11に代えてプリプレグf11(図23参照)を用い、上記プリプレグe12に代えてプリプレグf12(図23参照)を用い、且つ、上記プリプレグe13に代えてプリプレグf13(図23参照)を用いた他は、実施例1と同様ににして、実施例13に係るシャフトを得た。このシャフトの仕様が、表2、表15及び図23に示されている。
【0141】
実施例13の製造方法では、リブ用プリプレグr1(f11、f12、f13)の長手方向長さが、管状体全長(シャフトの全長)よりも短くされ、上記リブ用プリプレグr1の、上記分割体における巻き付け位置に基づいて、上記リブの長手方向位置が調整されている。実施例13では、上記リブが、長手方向の一部(後端部)に配置された。
【0142】
リブの長手方向位置は、リブ用プリプレグr1の巻き付け位置(長手方向の巻き付け位置)によって定まる。実施例13では、後端部にリブ用プリプレグr1を配置したので、リブは後端部に形成される。例えば、先端部にリブ用プリプレグr1を配置した場合、リブは先端部に形成される。実施例13の製造方法では、リブが、シャフト長手方向の一部に配置されうる。
【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

【0147】
【表6】

【0148】
【表7】

【0149】
【表8】

【0150】
【表9】

【0151】
【表10】

【0152】
【表11】

【0153】
【表12】

【0154】
【表13】

【0155】
【表14】

【0156】
【表15】

【0157】
実施例11及び実施例12は、比(R1/R2)が低いため、分割体へのプリプレグr1の巻き付け、及び、第1中間体への上記プリプレグX1(バイアス層用プリプレグ)の巻き付けが行いにくかった。これらの起因して、巻回工程の作業性が、他の実施例と比較して低下した。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上説明された発明は、ゴルフクラブシャフトをはじめとして、あらゆる管状体に適用されうる。この管状体は、例えば、テニスラケット等のスポーツ用品、自動車用シャーシ、タイヤホイール、自転車部材、車椅子用部材、建築用構造材、机や椅子等の家具、キャリーバックのハンドル部分、釣竿及び杖に適用されうる。
【符号の説明】
【0159】
2、30、50・・・マンドレル
4・・・マンドレルの本体部
6・・・マンドレルの先端部
8・・・マンドレルの後端部
10・・・第1中間体
12・・・第2中間体
16、36、56、72・・・リブ
18、32、52、70・・・シャフト(管状体)
20、34、54、74・・・外周部
Tf・・・重複部
r1・・・リブ用プリプレグ
g1・・・外周部用プリプレグ
d1・・・分割体
d11・・・第1の分割体
d12・・・第2の分割体
d13・・・第3の分割体
d14・・・第4の分割体
t1・・・巻き終わり端部
t2・・・巻き始め端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部にリブを有する管状体の製造方法であって、
マンドレルの長手方向に沿って2以上の分割体に分割されているマンドレルを用意する工程と、
少なくとも1の上記分割体にリブ用プリプレグを巻き付ける工程と、
上記リブ用プリプレグを巻き付ける工程の後、全ての上記分割体を合体させて第1中間体を得る工程と、
上記第1中間体の外側に外周部用プリプレグを巻き付けて、第2中間体を得る工程と、
上記第2中間体を加熱して、硬化積層体を得る工程と、
上記硬化積層体から上記マンドレルを抜く工程と、
を含む管状体の製造方法。
【請求項2】
上記マンドレルが、周方向において均等に分割されており、
上記マンドレルの分割数が、偶数であり、
上記合体状態のマンドレルにおいて、上記リブ用プリプレグが巻き付けられている上記分割体と、上記リブ用プリプレグが巻き付けられていない上記分割体とが、周方向において交互に配置されている請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記リブ用プリプレグが、全ての上記分割体に巻き付けられる請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
上記リブ用プリプレグの長手方向長さが、管状体の全長よりも短くされ、
上記リブ用プリプレグが、上記分割体の長手方向の一部に巻き付けられ、
上記リブが、上記管状体の長手方向の一部に配置され、
上記リブ用プリプレグの、上記分割体における巻き付け位置に基づいて、上記リブの長手方向位置が調整されうる請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
上記リブ用プリプレグにおいて、巻き始め端部と巻き終わり端部とが重なっている請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−87924(P2011−87924A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213124(P2010−213124)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】