説明

管理方法

【課題】従事者が管理方式の異なる複数の作業エリア2A、2Bを跨って指定登録する場合にも、当該従事者の被ばく線量を指定登録ベースで集計可能とする。
【解決手段】従事者の作業エリアに対する指定登録情報を従事者マスタテーブル(45g)へ登録する場合、従事者が一の作業エリアに初めて指定登録されたときは当該指定登録日を初期指定日として登録し、従事者が先の指定登録と時間的に重複して別の作業エリアに対して指定登録されたときは複数の指定登録のうち最先の指定登録日を初期指定日として登録し、複数の作業エリアに対して時間的に重複して指定登録された従事者の指定登録情報を、従事者マスタテーブル(45g)上で初期指定日によってグループ化されるように管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線業務従事者の被ばく線量を管理する管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所、核医学治療などの放射線を用いる医療施設などの放射線取扱い施設の放射線管理区域(以下、管理区域)で業務に従事する放射線業務従事者の被ばく線量を管理する放射線管理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる放射線管理システムでは、複数の放射線取扱い施設を統合管理する放射線管理用統合サーバを設け、当該放射線管理用統合サーバが、各放射線取扱い施設の管理区域における放射線業務従事者の被ばく線量を管理することも検討されている。
【0003】
ところで、原子力発電所等の放射線取扱い施設の管理区域で作業する従事者は、放射線業務従事者の指定登録を行う必要がある。放射線業務従事者の指定登録は放射線取扱い施設毎に行われる。これまでは、一人の放射線業務従事者が、複数の放射線取扱い施設を跨って放射線業務に従事する場合、先に放射線業務従事者指定登録されている放射線取扱い施設(A)の指定を解除して当該放射線取扱い施設(A)で作業従事できない状態にしてから、別の放射線取扱い施設(B)に放射線業務従事者として指定登録する管理方式Aが取られていた。しかし、かかる管理方式Aは、複数の放射線取扱い施設を跨って作業する場合、放射線取扱施設を変える度に指定登録の解除と新規指定登録が繰り返される。そこで、管理方式Aを簡略化して、複数の放射線取扱い施設を跨って放射線業務に従事する場合に、複数の放射線取扱い施設に重複して指定登録可能にして柔軟な運用を図る管理方式Bが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−130956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の管理方式A,Bが併存した状態で、管理方式の異なる複数の放射線取扱い施設に跨る指定登録を管理しようとすると、管理方式の異なる放射線取扱い施設間での指定登録データの連携が困難であった。このため、ある放射線業務従事者が管理方式の異なる複数の放射線取扱い施設に跨って重複して指定登録を受けていた場合、当該放射線業務従事者の指定登録ベースでの実績被ばく線量の集計が困難であった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、放射線業務従事者が管理方式の異なる複数のエリアを跨って指定登録した場合にも、当該放射線業務従事者の被ばく線量を指定登録ベースで容易に集計可能な管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の作業エリアに跨って各作業エリアで作業に従事する従事者の被ばく線量を管理する管理方法であって、各作業エリアで作業に従事した従事者の従事者ID、入域実績、個人被ばく線量計の計量値及び作業内容を関連付けた入退域実績データを収集して従事者単位で集計用テーブルに蓄積するステップと、従事者の作業エリアに対する指定登録情報を従事者マスタテーブルへ登録する場合、従事者が一の作業エリアに初めて指定登録されたときは当該指定登録日を初期指定日として従事者マスタテーブルへ登録し、前記従事者が先の指定登録と時間的に重複して別の作業エリアに対して指定登録されたときは複数の指定登録のうち最先の指定登録日を初期指定日として前記従事者マスタテーブルへ登録するステップと、複数の作業エリアに対して時間的に重複して指定登録された従事者の指定登録情報を、前記従事者マスタテーブル上で初期指定日によってグループ化されるように管理するステップと、前記従事者マスタテーブルから指定条件に対応した従事者の指定登録情報を取り出し、取り出された指定登録情報に基づいて前記集計用テーブルから指定条件に対応した被ばく線量を集計するステップと、を具備したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は上記管理方法において、前記従事者マスタテーブルは、複数の作業エリアのいずれにも入域可能に入退域管理する第1の管理方式と、一の作業エリアでの指定登録を一時的に解除して別の作業エリアに入域可能に入退域管理する第2の管理方式とに対応しており、前記従事者マスタテーブルに従事者毎に指定登録単位でレコードを作成し、前記レコードは、作業エリアの識別情報、前記初期指定日、指定登録された指定日、指定登録を解除された解除日、作業エリアから一時的に指定解除された一時解除日を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は上記管理方法において、前記従事者マスタテーブルに作成したレコードは、一人の従事者について複数作成されたレコードのうち最新のレコードを示す第1の最新フラグと、一の作業エリアについて複数作成されたレコードのうち最新のレコードを示す第2の最新フラグと、作業エリアでの指定登録が継続されているか否かを示す指定中フラグとを含み、指定登録に関するイベントが発生する毎にレコードを追加作成し、過去に作成したレコードの第1の最新フラグ、第2の最新フラグ、指定中フラグを逐次更新することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記管理方法において、現在日において従事者が指定登録されている全作業エリアでの総被ばく線量を集計するための指定条件が与えられた場合、当該指定条件に対応した従事者の指定登録情報を前記従事者マスタテーブルから取り出し、取り出された指定登録情報に基づいて前記集計用テーブルから従事者の総被ばく線量を集計することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記管理方法において、過去日において従事者が指定登録又は指定解除されている全作業エリアでの総被ばく線量を集計するための指定条件が与えられた場合、当該指定条件に対応した従事者の指定登録情報を前記従事者マスタテーブルから取り出し、取り出された指定登録情報に基づいて前記集計用テーブルから従事者の総被ばく線量を集計することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射線業務従事者が管理方式の異なる複数のエリアを跨って指定登録した場合にも、当該放射線業務従事者の被ばく線量を指定登録ベースで容易に集計可能な管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線管理システムの全体概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線管理システムにおけるマスタ/スレーブ関係を説明するための図である。
【図3A】第1の実施の形態に係る放射線取扱い施設の機能構成図である。
【図3B】第1の実施の形態に係る統合サーバの機能構成図である。
【図4】第1の実施の形態に係る従事者マスタテーブルを説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態に係る第1の管理方式を説明するための図である。
【図6】第1の実施の形態に係る第2の管理方式を説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態に係る従事者の被ばく線量の集計動作を説明するための図である。
【図8】第1の実施の形態に係る入退域チェック情報の反映動作を説明するための図である。
【図9】第1の実施の形態に係る統合サーバと放射線取扱い施設との間のデータ通信の異常発生時の動作を説明するための図である。
【図10A】第1の実施の形態に係る統合サーバと放射線取扱い施設との間のデータ通信の復旧時の動作を説明するための図である。
【図10B】第1の実施の形態に係る統合サーバと放射線取扱い施設との間のデータ通信の復旧時の動作を説明するための図である。
【図10C】第1の実施の形態に係る統合サーバと放射線取扱い施設との間のデータ通信の復旧時の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1の実施の形態に係る放射線管理システムの全体概略構成図である。図1に示すように、放射線管理システム1は、放射線取扱い施設2A〜2Cと、ISDNや光回線などの広域ネットワーク3を介して放射線取扱い施設2A〜2Cと接続される統合サーバ4(放射線管理用統合サーバ)とから構成される。
【0015】
放射線取扱い施設2A〜2Cは、原子力発電所などの放射線を取り扱う施設である。以下、放射線取扱い施設2A〜2Cを区別しない場合、放射線取扱い施設2と総称する。放射線取扱い施設2の数は、図1に示す3つに限られるものではなく、一つ以上であればよい。放射線取扱い施設2には、入退域管理装置21、WBC(Whole Body Counter)装置22、サイトコントローラ23、端末24等が設けられる。
【0016】
入退域管理装置21は、放射線管理区域での放射線管理業務に従事する放射線業務従事者(以下、従事者という)の入域又は退域を管理する装置であり、例えば、入退ゲートなどに設置される。入退域管理装置21は、ICカードや無線タグなどのリーダ/ライタを具備し、当該リーダ/ライタを用いて読み取った従事者の識別情報および従事者が管理区域内で携帯する個人被ばく線量計の計量値をサイトコントローラ23に送信する。
【0017】
WBC装置22は、従事者の内部被ばくの線量評価を行う装置である。サイトコントローラ23は、内部ネットワーク(例えば、LAN(Local Area Network)や無線LAN)を介して入退域管理装置21及びWBC装置22に接続される。サイトコントローラ23は、入退域管理装置21から従事者の入退域データを収集して管理する。また、サイトコントローラ23は、WBC装置22から従事者のWBCデータを収集して管理する。
【0018】
統合サーバ4は、複数の放射線取扱い施設2を統合管理するサーバである。統合サーバ4は、各放射線取扱い施設2のサイトコントローラ23から従事者の入退域データやWBCデータを収集し、単独の放射線取扱い施設2において又は複数の放射線取扱い施設2を跨って業務に従事する従事者の被ばく線量を管理する。なお、統合サーバ4は、PC(Personal Computer)などの端末5及び端末24に接続されており、当該端末5又は端末24からの指示を受け付けることにより、放射線取扱い施設2に対する従事者の指定登録及び複数の放射線取扱い施設2に対する従事者の重複指定登録を管理可能に構成されている。また、統合サーバ4は、端末5又は端末24からの指示を受け付けることにより、従事者の被ばく線量を管理及び集計可能に構成されている。
【0019】
ここで、指定登録とは、特定の放射線取扱い施設2の放射線管理区域内での放射線業務に従事可能にするため、該当従事者を特定の放射線取扱い施設2の放射線業務従事者に指定して登録することをいう。また、重複指定登録とは、先に放射線業務従事者指定登録されている放射線取扱い施設の指定を解除せずに、別の放射線取扱い施設に放射線業務従事者として指定登録することをいう。したがって、従事者は指定登録されていない又は指定登録が解除された放射線取扱い施設2では放射線業務に従事できない。
【0020】
図2は、第1の実施の形態に係る放射線管理システムにおける各種管理/実績データに関するマスタ/スレーブ関係を説明するための図である。図2では、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間のマスタ/スレーブ関係を説明するが、統合サーバ4と放射線取扱い施設2B、2Cとの間においても同様の関係がある。
【0021】
図2に示すように、統合サーバ4は、通信部41と、放射線取扱い施設2A〜2Cにおける従事者の入退域チェックのための情報を保持する入退域チェック用マスタデータベース(DB)42と、放射線取扱い施設2A〜2Cにおける従事者の放射線管理業務に関する実績データを保持する実績マスタデータベース(DB)43とを具備する。入退域チェック用マスタDB42は、後述する放射線取扱い施設2A〜2Cのサイトコントローラ23で保持される入退域チェック用データベース(DB)232のマスタデータベースとして機能する。
【0022】
放射線取扱い施設2Aのサイトコントローラ23は、通信部231と、入退域チェック用マスタDB42のスレーブデータベースとしての入退域チェック用DB232と、自施設内における従事者の放射線管理業務に関する実績データを保持する実績蓄積バッファ233とを具備する。実績蓄積バッファ233は、自施設内に所定期間(例えば、二日分)の実績データを蓄積可能に構成されている。実績蓄積バッファ233の実績データは、更新毎(リアルタイム)、或いは、所定周期で統合サーバ4の実績マスタDB43に反映される。
【0023】
図3A及び3Bは、第1の実施の形態に係る放射管理システムの機能構成を説明するための図である。なお、図3Aでは、放射線管理施設2Aの機能構成を説明するが、放射線取扱い施設2B、2Cも放射線取扱い施設2Aと同様の機能構成を有する。
【0024】
図3Aに示すように、放射線取扱い施設2Aのサイトコントローラ23は、通信部231、入退域チェック用DB232、実績蓄積バッファ233に加えて、入域チェック処理部234、実績反映処理部235、システム管理処理部236、WBCデータ反映処理部237を具備する。
【0025】
入退域チェック用DB232は、作業マスタテーブル232aと、作業者マスタテーブル232bと、入退域チェック情報テーブル232cと、を具備する。作業マスタテーブル232aは、例えば、従事者の識別情報である従事者IDと、当該従事者が従事可能な放射線管理業務(作業件名)とを関連付けて記憶する。作業者マスタテーブル232bは、例えば、従事者IDと、従事者の氏名とを関連付けて記憶する。入退域チェック情報テーブル232cは、例えば、従事者IDと、従事者の入退域チェック情報とを関連付けて記憶する。入退域チェック情報としては、例えば、入域時刻、退域時刻、所定期間における被ばく線量(日線量、月線量など)が挙げられる。なお、作業マスタテーブル232a、作業者マスタテーブル232b、入退域チェック情報テーブル232cで保持されるデータは、後述する統合サーバ4の入退域チェック用マスタDB42から、通信部231を介して更新毎(リアルタイム)又は所定周期(例えば、一日周期)でダウンロードされるものである。
【0026】
入域チェック処理部234は、入退域管理装置21からの取得情報に基づいて従事者の入域チェック処理を行う。具体的には、入域チェック処理部234は、入退域管理装置21から従事者IDを含む入域要求を受信し、当該従事者IDに基づいて作業マスタテーブル232aから、従事者IDが従事可能な作業件名を抽出する。入域チェック処理部234は、抽出した作業件名を示す作業リストを入退域管理装置21に送信する。当該作業リストは、例えば、入退域管理装置21の表示画面に表示される。入退域管理装置21において、従事者の操作により選択された作業件名は、従事者IDとともに入域チェック処理部234に入力される。
【0027】
また、入域チェック処理部234は、当該作業件名と従事者IDとに基づいて作業者マスタテーブル232bや入退域チェック情報テーブル232cを参照し、従事者の入域チェックを行う。例えば、入域チェック処理部234は、入退域チェック情報テーブル232cで記憶された入退域チェック情報に基づいて資格判定し、放射線管理区域への従事者の入域を許可又は拒否する。入域チェック処理部234は、資格判定結果(すなわち、許可又は拒否)を入退域管理装置21に送信する。
【0028】
入退域管理装置21は、入域チェック処理部234からの入域チェック結果に基づいて入退ゲートの開閉を行う。具体的には、入退域管理装置21は、従事者の入域を許可する場合、入退ゲートを開いて、従事者ID、入域時刻、作業件名などを後述する実績反映処理部235に出力する。一方、入退域管理装置21は、従事者の入域を拒否する場合、入退ゲートを開けずに、警報を鳴らして、その旨を後述するシステム管理処理部236に通知する。
【0029】
実績蓄積バッファ233には、入退域情報233aと、警報履歴233bと、WBC実績233cと、装置状態233dとが格納される。入退域情報233aとしては、例えば、従事者IDと、従事者の入退域情報(例えば、入域時刻、退域時刻)とが記憶される。警報履歴233bとしては、例えば、放射線管理区域への入域が拒否された従事者の従事者IDと、日時などが記憶される。WBC実績233cとしては、例えば、従事者IDと、従事者のWBCデータなどが記憶される。装置状態233dとしては、例えば、入退域管理装置21の識別情報と、入退域管理装置21の装置状態(正常又は異常)などが記憶される。このような実績蓄積バッファ233は、所定期間(例えば、直近の数日間)の上記データを格納可能に構成されている。
【0030】
実績反映処理部235は、入退域管理装置21からの取得情報に基づいて従事者の入域実績或いは退域実績の反映処理を行う。具体的には、入退域管理装置21において従事者の入域が許可された場合、実績反映処理部235は、入退域管理装置21から入力された従事者ID、入域時刻、作業件名に基づいて、実績蓄積バッファ233の入退域情報233aと、入退域チェック用DB232の入退域チェック情報テーブル232cを更新する。同様に、入退域管理装置21において従事者の退域が検出された場合、実績反映処理部235は、入退域管理装置21から入力された従事者ID、退域時刻、作業件名に基づいて、入退域情報233aと、入退域チェック情報テーブル232cを更新する。
【0031】
システム管理処理部236は、入退域管理装置21の異常が検出された場合、実績蓄積バッファ233の装置状態233dを「異常」に更新する。また、システム管理処理部236は、入退域管理装置21から従事者の入域を拒否したことが通知された場合、警報履歴233bの情報を更新する。
【0032】
WBCデータ反映処理部237は、WBC装置22から入力されたWBCデータに基づいて、WBC実績233cの情報を更新する。
【0033】
図3Bに示すように、統合サーバ4は、通信部41、入退域チェック用マスタDB42、実績マスタDB43に加えて、実績反映処理部44、集計用マスタデータベース(DB)45、画面処理部46、個人集計処理部47を具備する。
【0034】
入退域チェック用マスタDB42は、作業マスタテーブル42aと、作業者マスタテーブル42bと、入退域チェック情報テーブル42cと、を具備する。なお、作業マスタテーブル42aと、作業者マスタテーブル42b、入退域チェック情報テーブル42cの記憶項目は、作業マスタテーブル232aと、作業者マスタテーブル232b、入退域チェック情報テーブル232cと同様である。上述のように、作業マスタテーブル42a、作業者マスタテーブル42b、入退域チェック情報テーブル42cで保持されるデータは、通信部41を介して、各放射線取扱い施設2に所定周期(例えば、一日周期)又は更新毎(リアルタイム)にダウンロードされる。
【0035】
実績マスタDB43は、入退域情報テーブル43aと、警報履歴テーブル43bと、WBC実績テーブル43cと、を具備する。入退域情報テーブル43a、警報履歴テーブル43b、WBC実績テーブル43cにおいては、それぞれ、放射線取扱い施設2A〜2Cのサイトコントローラ23から取得された入退域情報233a、警報履歴233b、WBC実績233cが記憶される。入退域情報テーブル43a、警報履歴テーブル43b、WBC実績テーブル43cで保持されるデータは、各放射線取扱い施設2における入退域情報233a、警報履歴233b、WBC実績233cの更新毎にリアルタイムで更新される。なお、統合サーバ4と放射線取扱い施設2A〜2Cのデータ通信の異常発生時には、復旧後に更新されてもよい。
【0036】
実績反映処理部44は、実績マスタDB43の入退域情報テーブル43aを参照し、後述する入域情報テーブル45a、作業実績テーブル45b、立入実績テーブル45c及び評価線量テーブル45dを更新する。なお、実績反映処理部44は、実績マスタDB43の入退域情報テーブル43aから取得した入退域情報に所定の演算処理を施して、演算処理結果に基づいて入域情報テーブル45a、作業実績テーブル45b、立入実績テーブル45c、評価線量テーブル45dを更新してもよい。
【0037】
集計用マスタDB45は、入域情報テーブル45a、作業実績テーブル45b、立入実績テーブル45c、評価線量テーブル45d、教育受講履歴テーブル45e、健康診断受検履歴テーブル45f、従事者マスタテーブル45g、WBC受検履歴テーブル45hを具備する。
【0038】
入域情報テーブル45aは、例えば、従事者IDと、従事者の入域実績(例えば、入域時刻と退域時刻)とを関連付けて記憶する。作業実績テーブル45bは、例えば、従事者IDと、作業件名とを関連付けて記憶する。立入実績テーブル45cは、例えば、従事者IDと、従事者の被ばく線量とを関連付けて記憶する。
【0039】
評価線量テーブル45dは、例えば、従事者IDと、従事者の入域実績と、従事者の評価線量と、を関連付けて記憶する。なお、従事者の評価線量は、入域情報テーブル45aの入域実績、作業実績テーブル45bの作業件名、立入実績テーブル45cの被ばく線量に基づいて、算出される。
【0040】
教育受講履歴テーブル45eは、例えば、従事者IDと、従事者の教育受講日と、教育を受講した放射線取扱い施設2の施設名(受講施設)とを関連付けて記憶する。健康診断受検履歴テーブル45fは、例えば、従事者IDと、従事者の健康診断受検日と、受検した放射線取扱い施設2の施設名(受検施設)とを関連付けて記憶する。WBC受検履歴テーブル45hは、例えば、従事者IDと、従事者のWBC装置22による内部被ばく線量の受検日(WBC受検日)と、受検した放射線取扱い施設2の施設名(受検施設)とを関連付けて記憶する。
【0041】
従事者マスタテーブル45gは、複数の放射線取扱い施設のいずれにも入域可能に入退域管理する第1の管理方式と、一方の放射線取扱い施設での指定登録を一時的に解除して他方の放射線取扱い施設に入域可能に入退域管理する第2の管理方式とに対応した統合従事者マスタである。従事者マスタテーブル45gにおいて放射線取扱い施設2毎に従事者の指定登録を管理する。図4は、従事者マスタテーブル45gの管理項目を説明するための図である。図4に示すように、従事者マスタテーブル45gは、「施設名」と、「施設間移動開始日」と、「施設間移動終了日」と、「初期指定日」と、「指定日」と、「解除日」と、「一時解除日」と、「従事者最新フラグ」と、「施設毎最新フラグ」と、「指定中フラグ」とを関連付けて記憶する。
【0042】
ここで、「施設名」とは、放射線取扱い施設2の識別情報である。「施設間移動開始日」とは、特定の放射線取扱い施設2に指定登録された従事者が他の放射線取扱い施設2でも重複指定登録される場合に当該他の放射線取扱い施設2での従事者の登録開始日を示す情報である。「施設間移動終了日」とは、当該他の放射線取扱い施設2での従事者の登録終了日を示す情報である。
【0043】
また、「初期指定日」とは、いずれの放射線取扱い施設2にも指定登録されていない従事者が特定の放射線取扱い施設2に指定登録された日を示す情報である。「指定日」とは、放射線取扱い施設2に従事者が指定登録された日を示す情報である。「解除日」とは、放射線取扱い施設2での従事者の指定登録解除日を示す情報である。「一時解除日」とは、放射線取扱い施設2での従事者の指定登録を一時解除する場合に一時解除された日を示す情報である。
【0044】
また、「従事者最新フラグ」とは、所定のタイミングにおける従事者の最新レコードを示すフラグである。例えば、「従事者最新フラグ」には、所定のタイミングにおける従事者の最新レコードであれば“1”が設定され、最新レコードでなければ“0”が設定される。「施設毎最新フラグ」とは、所定のタイミングにおける従事者の放射線管理施設2毎の最新レコードを示す情報である。例えば、「施設毎最新フラグ」には、所定のタイミングにおける従事者の放射線取扱い施設2毎の最新レコードであれば“1”が設定され、最新レコードでなければ“0”が設定される。「指定中フラグ」とは、各放射線取扱い施設2における従事者の指定登録状態を示す情報である。例えば、「指定中フラグ」には、放射線取扱い施設2に従事者が指定登録されていれば“1”、指定登録解除されていれば“0”、指定登録申請中であれば“3”が設定される。
【0045】
図5及び6を参照し、従事者マスタテーブル45gについてさらに詳述する。従事者マスタテーブル45gは、放射線取扱い施設2間の異なる管理方式に対応しており、放射線取扱い施設2毎に放射線業務従事者の指定登録を管理する。図5は、第1の管理方式を説明するための図であり、図6は、第2の管理方式を説明するための図である。なお、図5及び6では、特定の従事者(以下、従事者αという)が放射線取扱い施設2A及び2Bに跨って業務に従事した場合における従事者マスタテーブル45gのレコード作成例を示している。なお、図5及び6のデータ設定は例示にすぎず、図5及び6に示す設定方法に限られるものではない。
【0046】
第1の管理方式は、従事者αが複数の放射線取扱い施設2に重複指定登録される場合に、複数の放射線取扱い施設2の双方に従事者αが入域できるように管理する方式である(前述の。図5においては、従事者αが、タイミング(1)において放射線取扱い施設2Aに初期指定され、タイミング(2)において放射線取扱い施設2Aに加えて放射線取扱い施設2Bにも重複指定され、タイミング(3)において放射線取扱い施設2Bから指定解除され、タイミング(4)において放射線取扱い施設2Aからも指定解除される。また、従事者αは、タイミング(5)において放射線取扱い施設2Bに初期指定され、タイミング(6)において放射線取扱い施設2Bから指定解除される。
【0047】
以下、タイミング(1)の年月日を初期指定日A、タイミング(2)の年月日を重複指定日B、タイミング(3)の年月日を解除日C、タイミング(4)の年月日を解除日D、タイミング(5)の年月日を初期指定日E、タイミング(6)の年月日を解除日Fと称して、説明を行う。
【0048】
図5のタイミング(1)では、従事者αが放射線取扱い施設2Aに初期指定されるので、従事者マスタテーブル45gでは、「施設名」として「放射線取扱い施設2A」、「施設間移動開始日」、「初期指定日」及び「指定日」として「初期指定日A」を設定したデータ1が生成される。データ1は、従事者αにとっての最新データであるため、データ1の「従事者最新フラグ」は「1(最新)」に設定される。また、データ1は、従事者α及び放射線管理施設2Aにとっても最新データであるため、データ1の「施設毎最新フラグ」も「1(最新)」に設定される。また、従事者αは放射線取扱い施設2Aに指定登録された状態であるため、データ1の「指定中フラグ」は「1(指定中)」に設定される。
【0049】
図5のタイミング(2)では、従事者αが放射線取扱い施設2Aに加えて放射線取扱い施設2Bにも重複指定登録されるので、従事者マスタテーブル45gでは、「施設名」として「放射線取扱い施設2B」、「施設間移動開始日」及び「指定日」として「重複指定日B」、「初期指定日」として「初期指定日A」を設定したデータ2が従事者α用に生成される。データ2は、従事者αにとっての最新データであるため、データ2の「従事者最新フラグ」は「1(最新)」に設定される。一方、上述のデータ1は、従事者αにとっての最新データではなくなったため、データ1の「従事者最新フラグ」は「0(非最新)」に更新される。
【0050】
また、図5のタイミング(3)では、従事者αが、放射線取扱い施設2Bから指定解除されるので、従事者マスタテーブル45gでは、上述のデータ2の「施設間移動終了日」及び「解除日」に「解除日C」が設定される。また、上述のデータ2の「指定中フラグ」は「0(指定解除)」に更新される。
【0051】
また、図5のタイミング(4)では、従事者αが放射線取扱い施設2Aからも指定解除されるので、従事者マスタテーブル45gでは、上述のデータ1の「施設間移動終了日」及び「解除日」に「解除日D」が設定される。また、データ1の「指定中フラグ」は「0(指定解除)」に更新される。また、データ1は、従事者αの最新データになったため、データ1の「従事者最新フラグ」は、「1(最新)」に更新される。一方、データ2は、従事者αにとっての最新データではなくなったため、データ2の「従事者最新フラグ」は「0(非最新)」に更新される。
【0052】
また、図5のタイミング(5)では、従事者αが放射線取扱い施設2Bに新たに初期登録されるので、従事者マスタテーブル45gでは、「施設名」として「放射線取扱い施設2B」、「施設間移動開始日」、「初期指定日」及び「指定日」として「初期指定日E」を設定したデータ3が生成される。データ3は、従事者αにとっての最新データであるため、データ1の「従事者最新フラグ」は「1(最新)」に設定される。一方、データ1は、従事者αにとっての最新データではなくなったため、データ1の「従事者最新フラグ」は「0(非最新)」に更新される。また、従事者α及び放射線取扱い施設2Bにとっての最新データはデータ3であるので、データ2の「施設毎最新フラグ」は「0(非最新)」に設定される。
【0053】
また、図5のタイミング(6)では、従事者αが放射線取扱い施設2Bから指定解除されるので、従事者マスタテーブル45gでは、上述のデータ3の「施設間移動終了日」及び「解除日」に「解除日F」が設定される。また、データ3の「指定中フラグ」は「0(指定解除)」に更新される。
【0054】
従事者マスタテーブル45gによれば、第1の管理方式の複数の放射線取扱い施設2に対する従事者αの重複指定を、初期指定日を用いてグループ化して管理できる。例えば、図5においては、重複指定登録に係るデータ1及び2の初期指定日は、初期指定日Aで同一である。このため、重複指定登録に係るデータ1及び2を同一の初期指定日Aでグループ化できる。この結果、第1の管理方式の複数の放射線取扱い施設2に従事者αが重複指定される場合であっても、従事者αの複数の放射線取扱い施設2に対する指定登録状態を一括して管理できる。
【0055】
第2の管理方式は、従事者αが複数の放射線取扱い施設2に重複指定される場合に、一方の放射線取扱い施設2での指定登録を一時的に解除して他方の放射線取扱い施設2に従事者αが入域できるように管理する方式である。第2の管理方式は、先に指定登録した放射線取扱い施設2の指定登録を一時解除しなければ新たな放射線取扱い施設2を指定登録できない点で、第1の管理方式と異なる。
【0056】
図6においては、従事者αが、タイミング(1)において放射線取扱い施設2Aに初期指定され、タイミング(2)において放射線扱い施設2Aから一時的に指定登録解除された上で放射線取扱い施設2Bに重複指定登録される。また、従事者αが、タイミング(3)において放射線取扱い施設2Bから指定登録解除されると放射線取扱い施設2Aに再指定登録され、タイミング(4)において放射線取扱い施設2Aからも指定登録解除される。また、従事者αは、タイミング(5)において放射線取扱い施設2Bに初期指定登録され、タイミング(6)において放射線取扱い施設2Bから指定登録解除される。
【0057】
以下、タイミング(1)の年月日を初期指定日A、タイミング(2)の年月日を一時解除日B及び重複指定日C、タイミング(3)の年月日を再指定日D及び解除日E、タイミング(4)の年月日を解除日F、タイミング(5)の年月日を初期指定日G、タイミング(6)の年月日を解除日Hと称して、説明を行う。また、以下では、第1の管理方式との相違点を中心に説明を行う。
【0058】
図6のタイミング(1)では、第1の管理方式と同様に、データ1が生成される。図6のタイミング(2)では、従事者αが放射線取扱い施設2Aから一時的に登録解除されるので、データ1の「一時解除日」が「一時解除日B」に設定される。なお、従事者αは放射線取扱い施設2Aから一時的に登録解除されたにすぎないため、データ1の「指定中フラグ」は「1(指定中)」に維持される。
【0059】
図6のタイミング(3)では、従事者αは、一時的に登録解除された放射線取扱い施設2Aに再指定登録されるので、従事者マスタテーブル45gでは、「施設名」として「放射線取扱い施設2A」、「施設間移動開始日」及び「指定日」として「再指定日D」を設定したデータ3が生成される。データ3は、従事者αにとっての最新データであるため、データ3の「従事者最新フラグ」は「1(最新)」に設定される。一方、データ1は、従事者α及び放射線取扱い施設2Aの双方にとって最新データではないため、データ1の「従事者最新フラグ」及び「施設毎最新フラグ」は「0(非最新)」に更新される。
【0060】
図6のタイミング(4)では、従事者αは、放射線取扱い施設2Aからも指定解除されるので、従事者マスタテーブル45gでは、上述のデータ3の「施設間移動終了日」及び「解除日」に「解除日F」が設定される。また、データ3の「指定中フラグ」は「0(指定解除)」に更新される。また、タイミング(4)において、データ1の「施設間移動終了日」は、「再指定日D」から1日減算した日が設定され、データ1の「指定中フラグ」は、「0(指定解除)」に更新される。図6のタイミング(5)では、第1の管理方式と同様に、データ4が生成されて更新される。
【0061】
従事者マスタテーブル45gによっても、第2の管理方式の複数の放射線取扱い施設2に対する従事者αの重複指定登録を、初期指定日を用いてグループ化して管理できる。例えば、図6においては、重複指定登録に係るデータ1〜3の初期指定日は、初期指定日Aで同一である。このため、重複指定登録に係るデータ1〜3を同一の初期指定日Aでグループ化できる。この結果、第2の管理方式の複数の放射線取扱い施設2に従業者αが重複指定登録される場合であっても、従事者αの複数の放射線取扱い施設2に対する指定登録状態を一括して管理できる。
【0062】
以上の従事者マスタテーブル45gによれば、第1及び第2の管理方式のいずれの場合であっても、従事者αの重複指定登録を管理できる。このため、異なる管理方式毎に重複指定登録管理のための管理用テーブルを設ける必要がなく、重複指定登録の管理に係る実装負荷を軽減できる。
【0063】
画面処理部46は、端末5又は/及び端末24からの入力指示を受け付けて、集計用マスタDB45を参照して、従事者αの被ばく線量を各種条件で集計する。画面処理部46は、集計結果を端末5又は/及び端末24に出力する。端末5においては、表示画面に集計結果が表示される。
【0064】
個人集計処理部47は、集計用マスタDB45の更新に応じて、従事者αの入退域チェック情報を集計し、集計した入退域チェック情報を入退域チェック情報テーブル42cに反映させる。入退域チェック情報テーブル42cに反映された入退域チェック情報は、更新毎(リアルタイム)或いは所定周期で放射線取扱い施設2A〜2Cのサイトコントローラ23にダウンロードされる。
【0065】
次に、以上のように構成された放射線管理システム1の動作について説明する。第1に、従事者αの被ばく線量の集計動作、第2に、各放射線取扱い施設2の入退域チェック情報の反映動作、第3に、統合サーバ4と各放射線取扱い施設2との間のデータ通信の異常発生時の動作、第4に、統合サーバ4と各放射線取扱い施設2との間のデータ通信の復旧時の動作について説明する。
【0066】
第1に、従事者αの被ばく線量の集計動作を説明する。統合サーバ4の画面処理部46は、統合サーバ4に接続された端末5または広域ネットワークを介して端末24から従事者αの指定条件が入力されると、指定条件(1)に基づいて集計用マスタDB45から集計データを取得する。集計データは、画面処理部46から端末5または広域ネットワークを介して端末24に出力され、端末5または広域ネットワークを介して端末24の表示部(図示なし)に表示される。図5及び図7を参照し、このような所定の指定条件に基づく集計動作を詳述する。図7は、所定の指定条件と従事者マスタテーブル45gのデータとの関係を示す図である。
【0067】
なお、以下では、従事者マスタテーブル45gのデータは管理方式1で管理される例(図5参照)を説明するが、管理方式2(図6参照)で管理される場合にも適宜適用可能である。また、図5のタイミング(5)(6)の間が現在日Xであるものとし、タイミング(2)(3)との間が過去日Yであるものとして説明を行う。
【0068】
図7に示す指定条件(1)は、現在日Xにおいて指定登録されている特定の放射線取扱い施設2(ここでは、2B)での従事者αの被ばく線量を取得するための条件である。このような指定条件(1)は、従事者マスタテーブル45gの「施設名」が「放射線取扱い施設2B」であり、「施設間移動開始日」が現在日X以前の年月日であり、「施設間移動終了日」が未設定又は現在日Xより後の年月日であり、「施設毎最新フラグ」が「1(最新)」であり、「指定中フラグ」が「1(指定中)」であることを要求する。図5に示すように、現在日Xにおいて従事者αは、初期指定日Eで放射線取扱い施設2Bに指定登録されているので、個人集計処理部47は、指定条件(1)を満たすデータとして図5に示す従事者マスタテーブル45gからタイミング(5)のデータ3を取得する。個人集計処理部47は、従事者マスタテーブル45gから取得されたデータ3に基づいて、作業実績テーブル45b、立入実績テーブル45c、評価線量テーブル45dを参照し、放射線取扱い施設2Bにおける現在日Xでの従事者αの被ばく線量を集計する。このような指定条件(1)によると、従事者αが現在立ち入っている放射線取扱い施設2(ここでは、2B)における被ばく線量を収集可能となる。
【0069】
図7に示す指定条件(2)は、過去日Yにおいて指定登録又は指定解除されている特定の放射線取扱い施設2(ここでは、2B)での従事者αの総被ばく量を取得するための条件である。このような指定条件(2)は、従事者マスタテーブル45gの「施設名」が「放射線取扱い施設2B」であり、「施設間移動開始日」が過去日Y以前の年月日であり、「施設間移動終了日」が未設定又は過去日Yより後の年月日であることを要求する。また、指定条件(2)では、すでに指定解除された初期指定日のデータも集計対象となるように、「指定中フラグ」が「1(指定中)又は0(解除中)」であることを要求する。図5に示すように、過去日Yにおいて従事者αは、初期指定日Aで放射線取扱い施設2Bに指定登録されているので、個人集計処理部47は、指定条件(2)を満たすデータとして図5に示す従事者マスタテーブル45gからタイミング(2)のデータ2を取得する。個人集計処理部47は、上述のように、データ2に基づいて放射線取扱い施設2Bにおける過去日Yでの従事者αの被ばく線量を集計する。このような指定条件(2)によると、過去の所定年月日で立ち入っている特定の放射線取扱い施設2(ここでは、2B)における従事者αの総被ばく線量を集計可能となる。
【0070】
図7に示す指定条件(3)は、現在日Xにおいて重複指定登録されている全放射線取扱い施設2での従事者αの総被ばく線量を取得するための条件である。このような指定条件(3)は、従事者マスタテーブル45gの「施設名」が制限されない点で指定条件(1)と異なる。図5に示すように、現在日Xにおいて従事者αは放射線取扱い施設2Bでのみ指定登録されているので、個人集計処理部47は、データ3を取得し、データ3に基づいて現在日Xでの従事者αの被ばく線量を集計する。このような指定条件(3)によると、従事者αの入域チェック処理に用いられる現在の被ばく線量を集計可能となる。より具体的には、現在日Xにおいて重複指定登録されている複数の放射線取扱い施設2での従事者αの総被ばく線量を取得できるので、当該総被ばく線量に基づいて従事者αの特定の放射線取扱い施設2の(放射線)管理区域への入域を許可するか否かを判定できる。
【0071】
図7に示す指定条件(4)は、過去日Yにおいて指定登録又は指定解除されている全放射線取扱い施設2での従事者αの総被ばく線量を取得するための条件である。このような指定条件(4)は、従事者マスタテーブル45gの「施設名」が制限されない点で指定条件(2)と異なる。図5に示すように、過去日Yにおいて従事者αは放射線取扱い施設2A及び2Bで指定登録されているので、個人集計処理部47は、データ1及び2を取得し、データ1及び2に基づいて過去日Yでの従事者αの総被ばく線量を集計する。このような指定条件(4)によると、従事者αの入域チェック処理に用いられる過去の総被ばく線量を集計可能となる。
【0072】
図7に示す指定条件(5)は、放射線取扱い施設2に関係なく、従事者αの最新データを取得するための条件である。このような指定条件(5)は、従事者マスタテーブル45gの「従事者最新フラグ」が「1(最新)」であることが要求される。例えば、図5のタイミング(2)(3)の間において、従事者αは放射線取扱い施設2A及び2Bに重複指定されているので、個人集計処理部47は、指定条件(5)を満たすデータとしてデータ2を取得する。このような指定条件(5)によると、従事者αが複数の放射線取扱い施設2に重複登録される場合に、従事者αが現在立ち入っている放射線取扱い施設2における被ばく線量を集計可能となる。
【0073】
なお、従事者αの指定条件は、上述の指定条件(1)〜(5)に限られるものではない。従事者マスタテーブル45gの「施設名」、「施設間移動開始日」、「施設間移動終了日」、「初期指定日」、「指定日」、「解除日」、「一時解除日」、「従事者最新フラグ」、「施設毎最新フラグ」、「指定中フラグ」の少なくとも一つの値を指定して指定条件とすればよい。
【0074】
以上のように、異なる管理方式1及び2に対応した従事者マスタテーブル45gにより、従事者αの指定登録が一括管理されているので、従事者αが管理方式の異なる複数の放射線取扱い施設2を跨って指定登録した場合にも、従事者マスタテーブル45gから従事者αの指定登録を所定の指定条件で抽出でき、当該従事者αの被ばく線量を指定登録ベースで容易に集計できる。
【0075】
第2に、放射線取扱い施設2における入退域チェック情報の反映動作を説明する。図8は、入退域チェック情報の反映動作を説明するための図である。図8では、放射線取扱い施設2Aのサイトコントローラ23において従事者αの入退域実績データが更新された場合に、統合サーバ4を経由して放射線取扱い施設2B及び2Cのサイトコントローラ23に当該従事者αの入退域実績データが反映される。
【0076】
図8に示すように、放射線取扱い施設2Aの実績反映処理部235は、入退域管理装置21から入力された入退域実績データを実績蓄積バッファ233に格納し、通信部231及び41を介して統合サーバ4の実績マスタDB43の入退域情報テーブル43aにも格納する。なお、入退域実績データには、例えば、従事者ID(ここでは、従事者αのID)と、従事者αの入域実績(2011/2/2 10:00〜2011/2/2 11:00)及び実績線量(0.01)が含まれる。なお、入退域実績データには、従事者αの作業内容などが含まれても良い。
【0077】
上述のように入退域情報テーブル43aが更新されると、不図示の実績反映処理部は、更新された従事者αの入退域実績データに基づいて、集計用マスタDB45の入域情報テーブル45a、作業実績テーブル45b、立入実績テーブル45c、評価線量テーブル45dを更新する。個人集計処理部47は、集計用マスタDB45に記憶された従事者αの情報に基づいて、従事者αの入退域チェック情報を生成する。
【0078】
図8において、入退域チェック情報は、従事者マスタテーブル45g、WBC受検履歴テーブル45h、健康診断受検履歴テーブル45f、教育受講履歴テーブル45eから抽出された従事者αの情報に基づいて生成される。生成された入退域チェック情報は、個人集計処理部47によって、入退域チェック用マスタDB42の入退域チェック情報テーブル42cに格納され、通信部41及び231を介して、放射線取扱い施設2A〜2Cの入退域チェック情報テーブル232cに反映される。
【0079】
このように、特定の放射線取扱い施設2において従事者αの入退域実績が更新された場合に、各放射線取扱い施設2で用いられる入退域チェック情報をリアルタイムで更新できる。
【0080】
第3に、統合サーバ4と放射線取扱い施設2との間のデータ通信の異常発生時の動作について説明する。図9は、統合サーバ4と放射線取扱い施設2との間のデータ通信の異常発生時の動作を説明するための図である。なお、図9では、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間で異常が発生した場合を説明するが、統合サーバ4と放射線取扱い施設2B又は2Cとの間で異常が発生した場合も同様に動作可能である。なお、図9では、図3A及び図3Bで説明した放射線管理システム1の機能構成の一部を省略しているが、不図示の機能構成を有していてもよい。また、図9のサイトコントローラ23は、図3Aでは不図示の2次実績反映処理部238及び集計用DB239を備えているが、図3Aのサイトコントローラ23がこれらの構成を備えていてもよい。
【0081】
統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間で異常が発生した場合、放射線取扱い施設2Aのサイトコントローラ23は、統合サーバ4から入退域チェック用のマスタデータをダウンロードすることができない。このため、サイトコントローラ23は、入退域管理装置21からの入退域実績データに基づいて、入退域チェック情報を自ら生成する。具体的には、図9に示すように、サイトコントローラ23の2次実績反映処理部238は、実績蓄積バッファ233に格納された入退域情報233aを、自装置内の集計用DB239の入域情報テーブル239aに反映させる。入域チェック処理部234は、入退域管理装置21からの入域要求があった場合に、入退域チェック用DB232に加えて、集計用DB239の入域情報テーブル239aを参照して、従事者αの入域チェックを行う。
【0082】
このように、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間でデータ通信の異常が発生した場合でも、サイトコントローラ23は、自装置内の集計用DB239に従事者αの入退域情報を格納し、当該入退域情報に基づいて従事者αの入退域チェックを行う。この結果、入退域チェック用DBのデータを統合サーバ4からダウンロードできない場合であっても、従事者αの入退域チェックを適切に行うことができる。
【0083】
第4に、統合サーバ4と放射線取扱い施設2との間のデータ通信の復旧時の動作について説明する。図10は、統合サーバ4と放射線取扱い施設2との間のデータ通信の復旧時の動作を説明するための図である。なお、図10では、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間で異常が復旧した場合を説明するが、統合サーバ4と放射線取扱い施設2B又は2Cとの間の異常が復旧した場合も同様に動作可能である。
【0084】
図10Aは、データ通信の復旧時の入退域実績の反映動作を説明するための図である。図10Aに示すように、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間のデータ通信が復旧した場合、サイトコントローラ23の実績蓄積バッファ233に蓄積された入退域情報が、通信部231及び41を介して、統合サーバ4の実績マスタDB43に反映される。
【0085】
図10Bは、データ通信の復旧時の入退域チェック情報の反映動作を説明するための図である。図10Aの実績マスタDB43の更新に伴い、集計用マスタDB45が更新される。これに伴い、図10Bに示すように、入退域チェック用マスタDBの内容も更新される。これらの更新内容を反映させるために、更新差分は、通信部41を介してサイトコントローラ23に送信される。サイトコントローラ23においては、通信部231で受信された更新差分を入退域チェック用DBに反映させる。このように、データ通信の復旧時には、統合サーバ4のマスタデータとサイトコントローラ23のスレーブデータとが等値化されるので、従事者の入退域チェックを適切に行うことができる。
【0086】
図10Cは、データ通信の復旧時の管理情報の反映動作を説明するための図である。図10Aの実績マスタDB43の更新に伴い、統合サーバ4は、サイトコントローラ23における入域チェックのための管理情報も更新する。このような管理情報は、入退域チェック用マスタDB42で保持されて、通信部41及び通信部231を介して、入退域チェック用DB232に反映される。
【0087】
このように、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間でデータ通信が復旧した場合には、統合サーバ4と放射線取扱い施設2Aとの間でデータの等値化が図られる。したがって、復旧前後において入退域チェックを適切に行うことができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…放射線管理システム、2、2A、2B、2C…放射線取扱い施設、21…入退域管理装置、22…WBC装置、23…サイトコントローラ、231…通信部、232…入退域チェック用DB、232a…作業マスタテーブル、232b…作業者マスタテーブル、232c…入退域チェック情報テーブル、233…実績蓄積バッファ、233a…入退域情報、233b…警報履歴、233c…WBC実績、233d…装置状態、234…入域チェック処理部、235…実績反映処理部、236…システム管理処理部、237…WBCデータ反映処理部、238…2次実績反映処理部、239…集計用DB、239a…入域情報テーブル、3…広域ネットワーク、4…統合サーバ、41…通信部、42…入退域チェック用マスタDB、42a…作業マスタテーブル、42b…作業者マスタテーブル、42c…入退域チェック情報テーブル、43…実績マスタDB、43a…入退域情報テーブル、43b…警報履歴テーブル、43c…WBC実績テーブル、44…実績反映処理部、45…集計用マスタDB、45a…入域情報テーブル、45b…作業実績テーブル、45c…立入実績テーブル、45d…評価線量テーブル、45e…教育受講履歴テーブル、45f…健康診断受検履歴テーブル、45g…従事者マスタテーブル、45h…WBC受検履歴テーブル、46…画面処理部、47…個人集計処理部、5…端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業エリアに跨って各作業エリアで作業に従事する従事者の被ばく線量を管理する管理方法であって、
各作業エリアで作業に従事した従事者の従事者ID、入域実績、個人被ばく線量計の計量値及び作業内容を関連付けた入退域実績データを収集して従事者単位で集計用テーブルに蓄積するステップと、
従事者の作業エリアに対する指定登録情報を従事者マスタテーブルへ登録する場合、従事者が一の作業エリアに初めて指定登録されたときは当該指定登録日を初期指定日として従事者マスタテーブルへ登録し、前記従事者が先の指定登録と時間的に重複して別の作業エリアに対して指定登録されたときは複数の指定登録のうち最先の指定登録日を初期指定日として前記従事者マスタテーブルへ登録するステップと、
複数の作業エリアに対して時間的に重複して指定登録された従事者の指定登録情報を、前記従事者マスタテーブル上で初期指定日によってグループ化されるように管理するステップと、
前記従事者マスタテーブルから指定条件に対応した従事者の指定登録情報を取り出し、取り出された指定登録情報に基づいて前記集計用テーブルから指定条件に対応した被ばく線量を集計するステップと、
を具備したことを特徴とする管理方法。
【請求項2】
前記従事者マスタテーブルは、複数の作業エリアのいずれにも入域可能に入退域管理する第1の管理方式と、一の作業エリアでの指定登録を一時的に解除して別の作業エリアに入域可能に入退域管理する第2の管理方式とに対応しており、
前記従事者マスタテーブルに従事者毎に指定登録単位でレコードを作成し、前記レコードは、作業エリアの識別情報、前記初期指定日、指定登録された指定日、指定登録を解除された解除日、作業エリアから一時的に指定解除された一時解除日を有することを特徴とする請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
前記従事者マスタテーブルに作成したレコードは、一人の従事者について複数作成されたレコードのうち最新のレコードを示す第1の最新フラグと、一の作業エリアについて複数作成されたレコードのうち最新のレコードを示す第2の最新フラグと、作業エリアでの指定登録が継続されているか否かを示す指定中フラグとを含み、
指定登録に関するイベントが発生する毎にレコードを追加作成し、過去に作成したレコードの第1の最新フラグ、第2の最新フラグ、指定中フラグを逐次更新することを特徴とする請求項2に記載の管理方法。
【請求項4】
現在日において従事者が指定登録されている全作業エリアでの総被ばく線量を集計するための指定条件が与えられた場合、当該指定条件に対応した従事者の指定登録情報を前記従事者マスタテーブルから取り出し、取り出された指定登録情報に基づいて前記集計用テーブルから従事者の総被ばく線量を集計することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の管理方法。
【請求項5】
過去日において従事者が指定登録又は指定解除されている全作業エリアでの総被ばく線量を集計するための指定条件が与えられた場合、当該指定条件に対応した従事者の指定登録情報を前記従事者マスタテーブルから取り出し、取り出された指定登録情報に基づいて前記集計用テーブルから従事者の総被ばく線量を集計することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の管理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公開番号】特開2012−198199(P2012−198199A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31526(P2012−31526)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2011−60388(P2011−60388)の分割
【原出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】