説明

管継手構造

【課題】樹脂管の抜け、漏れが生じにくい管継手構造とする。
【解決手段】一端に管接続部1cを他端に管受入れ部1aを有する胴体部1を備え、前記管受入れ部1aの内面には一端側から他端側に向かって徐々に拡がるテーパ面6が形成されている。そのテーパ面6と前記樹脂管pの外周面との間に弾性リング30を介在させ、前記樹脂管p内に他端側から一端側に向かって徐々に拡がるテーパ外面21を有するインコア20を差し入れてそれを前記管受入れ部1a内に挿入する。キャップ体5を前記胴体部1にねじ込むことにより、前記弾性リング30を介してポリエチレン管pを外側から締付け、前記インコア20の一端が前記管受入れ部1a内の段部1bに当たることでその樹脂管p内に押し込まれてその樹脂管pを拡径させる。インコア20の一端にはフランジ部24が設けられ、そのフランジ部24が前記樹脂管pの一端側端面aと前記段部1bとの間に挟まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道用ポリエチレン管等の各種樹脂管の管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、水道管に用いられるポリエチレン管等の樹脂管において、その樹脂管の管同士を接続する部分の管継手構造として、従来から、例えば、図8に示すものがある。
【0003】
この管継手構造Aは、筒状を成す胴体部1の内周奥部にOリング2が装着可能となっており、そのOリング2を介して胴体部1内に、一端側の管受入れ部1aから他端側の奥部へと向かってポリエチレン管pが挿入可能である。
胴体部1の一端側の管受入れ部1a内周には雌ネジ部3が形成されている。また、その一端側には、筒状を成すキャップ体5が装着可能であり、そのキャップ体5の外周には、前記雌ネジ部3にねじ合う雄ネジ部4が形成されている。その雌ネジ部3と雄ネジ部4との螺合により、胴体部1にキャップ体5がねじ込み可能である。
【0004】
キャップ体5は袋ナットとも呼ばれ、その中央に、一端側から他端側に向かってポリエチレン管pが挿通可能な孔5aを有し、且つ、その内周には、一端側から他端側に向かって徐々に広くなるテーパ面6が形成されている。
このキャップ体5の内側に弾性リング8を装着する。弾性リング8は他端側から一端側に向かって徐々に狭まる断面楔状を成し、その内周に周方向の突条7を複数列有している。
【0005】
Oリング2を装着した胴体部1内にポリエチレン管pを奥部まで挿入し、キャップ体5をねじ込むことにより、弾性リング8を介してポリエチレン管pを外側から締付けて固定する。このとき、断面楔状の弾性リング8とテーパ面6を備えたキャップ体5の作用により、胴体部1とポリエチレン管pとが強固に一体化される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
また、図9に示すように、ポリエチレン管p内にインコア10と呼ばれる筒状の部材を配置した管継手構造Bもある。
【0007】
この管継手構造Bでは、ポリエチレン管pを胴体部1内に挿入する際に、そのポリエチレン管p内にインコア10を差し入れておく。インコア10は、その外周面が一端側(ポリエチレン管pの入口側)から他端側(ポリエチレン管p内の奥側)に向かって徐々に狭まるテーパ面11となっている。また、インコア10の外周一端寄りの部分には、滑り防止のための溝13が形成されている。
【0008】
この状態で、ポリエチレン管pを胴体部1内に挿入した際に、そのインコア10の一端側端面12が胴体部1内の奥部に設けられた段部1bに当たることで、そのインコア10はポリエチレン管p内に深く押し込まれる。
このインコア10の押し込みにより、ポリエチレン管pの端部はその口径が拡がるように変形し拡径されるので、外周側に位置する弾性リング8、押圧リング9及びキャップ体5との密着度合いがさらに高められ、抜け止めの効果を発揮している。(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−240867号公報
【特許文献2】特開2000−110975号公報
【特許文献3】配水用ポリエチレンパイプシステム協会 水道配水用ポリエチレン管金属継手 PTC B 21:2008 平成20年7月4日改正 第6頁付表1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記図9の管継手構造Bでは、インコア10の押し込み作用によりポリエチレン管pの端部を拡径することで、図8に示す管継手構造Aよりも相対的に抜け止めの効果が高められている。
【0011】
しかし、この管継手構造Bによっても、著大な引張荷重が作用した場合には、管降伏荷重に至る前段でその荷重に耐えきれず、ポリエチレン管pが継手から抜けたり漏れが生じたりすることがある。
耐震性の観点から、管継手構造には著大な引張荷重が作用した場合にも、抜け、漏れが生じない強度が求められている。
【0012】
そこで、この発明は、著大な引張荷重が作用した場合にも、抜け、漏れが生じにくい管継手構造とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明は、一端に管接続部を他端に管受入れ部を有する胴体部の前記管受入れ部内に樹脂管が挿入可能であり、前記胴体部の他端側にキャップ体がねじ込み可能で、前記管受入れ部の内面には一端側から他端側に向かって徐々に拡がるテーパ面が形成されており、前記テーパ面と前記樹脂管の外周面との間に環状の弾性リングを介在させ、前記樹脂管内に一端側から他端側に向かって徐々に狭まるテーパ外面を有するインコアをその樹脂管の端部より差し入れ、前記樹脂管の一端側端部を前記管受入れ部内に挿入して前記キャップ体を前記胴体部にねじ込むことにより、前記弾性リングを介して前記樹脂管を外側から締付け、前記インコアの一端が前記管受入れ部の奥部に形成された段部に当たることでその樹脂管内に押し込まれて、その樹脂管を拡径させるとともに、前記弾性リングを前記樹脂管の外周面に食い込ませて、前記胴体部と前記樹脂管とを固定する管継手構造を採用した。
【0014】
インコアによる樹脂管の拡径作用と、弾性リングによる樹脂管の外径側からの食い込み作用とを併用させたことにより、そのインコアや弾性リングを介して、樹脂管、胴体部、キャップ体の一体性を高めることができ、継手の強度向上に寄与し得る。
【0015】
このとき、前記弾性リングの素材としては、例えば、ゴム、樹脂、金属などを採用できるが、弾性リングを、樹脂管を構成する素材よりも硬い素材で形成されている構成とすれば、弾性リングによる樹脂管の外周面への食い込み作用を、より顕著に発揮させることができる。特に、弾性リングの素材を樹脂とすれば、結果が良好である。
【0016】
また、これらの各構成において、前記弾性リングはその内周に突起を備え、前記突起が、前記樹脂管の外周面に食い込む構成とすれば、突起に力が集中するので、弾性リングによる樹脂管の外周面への食い込み作用をさらに高めることができる。
さらに、前記弾性リングの軸方向端縁に切欠きを設けた構成を採用することもできる。切欠きがあれば、その切欠きの周方向幅が縮小することで、前記食い込みの際の弾性リングの縮径がスムーズである。
【0017】
また、これらの各構成において、前記インコアの一端にフランジ部を設け、そのフランジ部が前記樹脂管の一端側端面と前記段部との間に挟まれる構成を採用することができる。
インコアの一端にフランジ部を設けたことから、そのフランジ部が樹脂管の一端に当たることにより弾性リングとインコアとの一体性が高まり、両者が分離しにくくなる。インコアと樹脂管とが分離しにくくなれば、そのインコアによる樹脂管への拡径作用が緩みにくくなる。このため、継手の耐震性が向上し、管降伏荷重まで引張り荷重を加えても、継手が抜けたり漏水を生じたりすることを防止できる。
【0018】
さらに、これらの各構成において、前記インコアのテーパ外面に周方向に伸びる突条を備え、その突条が前記樹脂管の内面に接する構成を採用することができる。
インコアの突条が樹脂管の内面に接すれば、その突条に接触圧が集中するので、インコアと樹脂管との一体性をさらに高めることができる。
【0019】
また、前記インコアのテーパ外面に突条を複数列備えた構成において、前記インコアの一端側端面から前記突条のうち最も他端側に位置するものまでの距離は、前記インコアの一端側端面からそのインコアのテーパ外面のうち前記樹脂管の内面に接している部分の最も他端側までの距離の1/2以上に設定されていることが望ましい。
インコアが樹脂管内に押し込まれる際、インコアの突条はできるだけ早い段階で樹脂管の内面に接することが望ましいからである。
【0020】
特に、前記インコアの一端側端面から前記突条のうち最も他端側に位置するものまでの距離が、前記キャップ体の胴体部に対するねじ込み可能深さ以上に設定されている構成とすれば、キャップ体が胴体部にねじ込まれた初期の段階で、必ずインコアの突条が樹脂管の内面に接している状態となり、そのキャップ体の胴体部へのねじ込みによって、終始、インコアから樹脂管への拡径力が伝達されやすくなる。このため、インコアと樹脂管との一体性を高める上で有利である。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、インコアの樹脂管に挿入する部分にテーパ外面を設けてそのインコアにより樹脂管を拡径させ、弾性リングを樹脂管の外周面に食い込ませたことにより、そのインコアや弾性リングを介して、樹脂管、胴体部、キャップ体の一体性が高まり、樹脂管が継手から外れにくくなる。樹脂管が外れにくくなることにより、継手の耐震性が向上し、仮に、管降伏荷重まで引張荷重を加えても、継手から樹脂管が抜けたり漏水が生じたりすることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は一実施形態の断面図、(b)はその要部拡大図
【図2】図1の実施形態のインコアを示し、(a)は正面図、(b)は斜視図、(c)は断面図
【図3】図1の実施形態の弾性リングを示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は断面図
【図4】(a)は他の実施形態の断面図、(b)はその要部拡大図
【図5】図4の実施形態のインコアを示し、(a)は正面図、(b)は斜視図、(c)は断面図
【図6】さらに他の実施形態の断面図
【図7】図6の実施形態の弾性リングを示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は断面図
【図8】従来例の断面図
【図9】従来例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。この実施形態は、水道管に用いられるポリエチレン管(樹脂管)pにおいて、そのポリエチレン管pを接続する部分の管継手構造Cである。なお、このポリエチレン管pに代えて、ポリエチレン以外の樹脂からなる樹脂管pを採用してもよい。
【0024】
この管継手構造Cは、図1(a)に示すように、一端に管接続部1cを他端に管受入れ部1aを有する胴体部1を備え、その胴体部1他端の前記管受入れ部1a内にポリエチレン管pの一端側端部が挿入可能である。なお、胴体部1一端の前記管接続部1cには、別の機器(図示せず)が接続可能である。
【0025】
前記管受入れ部1aの外周には雄ネジ部4が形成されている。また、その一端側には、筒状を成すキャップ体5が装着可能である。そのキャップ体5の内周には、前記雄ネジ部4にねじ合う雌ネジ部3が形成されている。その雌ネジ部3と雄ネジ部4との螺合により、胴体部1にキャップ体5がねじ込み可能で、そのねじ込みにより前記キャップ体5の装着が可能である。
また、キャップ体5は、その他端側に内径方向に伸びる鍔部を有し、その鍔部の内側が、前記ポリエチレン管p挿通用の孔5aとなっている。
【0026】
前記管受入れ部1aの内面には、一端側から他端側に向かって徐々に拡がるテーパ面6が形成されている。ポリエチレン管pは、このテーパ面6に弾性リング(抜け止めリング)30を宛がった状態で、前記管受入れ部1a内に挿入されている。
【0027】
また、そのポリエチレン管p内には、その端面a側からインコア20が挿入されている。インコア20は、図2に示すように筒状の部材で構成され、その外周に、他端側から一端側に向かって徐々に拡がるテーパ外面21を有している。また、その一端にフランジ部24を有している。
【0028】
さらに、そのテーパ外面21には、周方向に伸びる突条23aを複数列備えた凹凸部23が形成されている。この実施形態では、凹凸部23は、3列の突条23aを備える。
【0029】
また、この実施形態では、突条23aはその先端が先鋭であり、その先端よりも一端側(フランジ部24側)の面が管軸方向に対して直角方向で、他端側の面が管軸に対して一定の勾配を有する傾斜面21b,21cであり、全体として断面鋸歯状の凹凸部23となっている。傾斜面21b,21cの勾配は自由に設定できるが、この実施形態では、傾斜面21b,21cの勾配は同一としている。また、フランジ部24に隣接する裾部の外周面21aと、フランジ部24から遠い側の端部付近の外周面21dの各勾配も自由に設定できるが、この実施形態では、管軸方向に対する傾斜の勾配が同一であり、その外周面21a,21dの勾配は、前記凹凸部23を構成する前記傾斜面21b,21cの勾配よりも緩やかとなっている。
【0030】
なお、この実施形態では、前記先端よりも一端側(フランジ部24側)の面は、管軸方向に対して直角方向となっているが、これを管軸に対して一定の勾配を有する傾斜面としてもよい。突条23aの先端は、インコア20がポリエチレン管pから抜けることを防止する機能を発揮できる形状であることが望ましい。
【0031】
インコア20を、そのポリエチレン管pの端部より差し入れ、ポリエチレン管pは、管受入れ部1aの奥部に形成された段部1bまで挿入されている。この挿入は、キャップ体5の胴体部1へのねじ込みにより、キャップ体5の鍔部が弾性リング30を軸方向に押すことで、徐々に送り込み可能となっている。このとき、図1に示すように、キャップ体5のねじ込みにより、ポリエチレン管pの端部が、インコア20のテーパ外面21により拡径され、拡径されたポリエチレン管pの先端部へ弾性リング30の先端33が食い込むとともに、拡径されたポリエチレン管pの外周面bに弾性リング30の突起31が食い込むことにより、胴体部1へのポリエチレン管pの挿入がスムーズに行える。この食い込みは、弾性リング30が、ポリエチレン管pよりも硬い樹脂で形成されていることから、その食い込みが顕著に生じるようになっている。
【0032】
このように、キャップ体5をねじ込むことで、その弾性リング30と、胴体部1が備えるテーパ面6の楔作用により、ポリエチレン管pが外側から締付けられ、胴体部1とポリエチレン管pとが強固に一体化されている。
【0033】
このとき、そのフランジ部24が前記ポリエチレン管pの端面aと前記段部1bとの間に挟まれるので、そのフランジ部24がポリエチレン管pの一端に当たることにより、弾性リングによるインコア20とポリエチレン管pとの一体性が高まり、両者が分離しにくくなっている。
インコア20とポリエチレン管pとが分離しにくくなれば、そのインコア20によるポリエチレン管pへの拡径作用が緩みにくい。このため、継手の耐震性が向上し、管降伏荷重まで引張り荷重を加えても、継手が抜けたり漏水を生じたりすることを防止できる。
【0034】
なお、この実施形態では、弾性リング30は、その外面に、胴体部1の管受入れ部1aの斜面に対応する他端側から一端側に向かって徐々に狭まるテーパ面32を備えている。また、その内周に周方向の突起31を複数列有している。
【0035】
この管継手構造Cの構築方法について説明すると、図1(b)に示すように、前記ポリエチレン管pの外周にキャップ体5を取り付け、そのキャップ体5の内側に弾性リング30を嵌める。そして、前記ポリエチレン管pの端面a側の端部を前記管受入れ部1a内に挿入する。このとき、予め、インコア20をポリエチレン管p内に挿入しておく。インコア20は、複数列の前記突条23aのうち、最も他端側に位置するものが、ポリエチレン管pの内面cに接するまで挿入しておくことが望ましい。
【0036】
前記キャップ体5を前記胴体部1にねじ込むことにより、そのキャップ体5の鍔部で弾性リング30が軸方向に押され、弾性リング30がテーパ面6の狭まる方向へ入り込んでいくことにより、その弾性リング30を介してポリエチレン管pが外側から締付けられる。また、ポリエチレン管p及びインコア20が、胴体部1の管受入れ部1a内に徐々に挿入されていく。
【0037】
このとき、図1(b)に示すように、インコア20のフランジ部24の一端(外側端面)22が、まず、前記管受入れ部1aの奥部に形成された段部1bに当たり、その状態で、キャップ体5のねじ込みが開始される。このねじ込み開始時に、既に、インコア20の突条23aのうち最も他端側に位置するものがポリエチレン管pの内面cに接しているから、その突条23aに接触圧が集中して、インコア20とポリエチレン管pとの一体性が高められている。また、キャップ体5のねじ込み開始初期の段階から継続して突条23aのポリエチレン管pに対する噛み込み効果が期待できる。
この噛み込みによって、ポリエチレン管pとインコア20との一体性が高まり、インコア20がポリエチレン管pから抜けにくい状態となっているから、ポリエチレン管pに対する拡径の力が途中で緩んでしまうことなく、継手構築完了まで終始拡径の効果が持続される。
【0038】
これは、図1(b)に示すように、インコア20の外側端面22から前記突条23aのうち最も他端側に位置するものまでの距離L2が、前記キャップ体5の胴体部1に対するねじ込み可能深さL3以上に設定されていることによる効果であり、キャップ体5が胴体部1にねじ込まれた初期の段階で、必ずインコア20の突条23aがポリエチレン管pの内面cに接している状態となるからである。この効果は、もちろん、継手構築完了後も持続される。
【0039】
なお、突条23aによる前記作用を顕著にするためには、インコア20の外側端面22から前記突条23aのうち最も他端側に位置するものまでの距離L2は、前記インコア20の外側端面22からそのインコア20のテーパ外面21のうち前記樹脂管pの内面cに接している部分の最も他端側までの距離L1に対して、少なくとも1/2以上に設定されていることが望ましい。
インコア20がポリエチレン管p内に押し込まれる際、インコア20の突条23aはできるだけ早い段階でポリエチレン管pの内面cに接することが望ましいからである。
【0040】
このように、インコア20の外側端面22が、前記管受入れ部1aの段部1bに当たった状態で、キャップ体5のねじ込みによりポリエチレン管pが徐々に管受入れ部1a内に挿入されていくから、インコア20は、ポリエチレン管p内に徐々に入り込んでいく。
【0041】
このとき、インコア20のテーパ外面21が、他端側から一端側に向かって徐々に径が拡がる形状であるから、ポリエチレン管pの管受入れ部1a内への挿入とともに、そのインコア20がポリエチレン管pを徐々に押し広げるように変形させ、その外径を拡げていく。
このインコア20によるポリエチレン管pの拡径により、そのポリエチレン管pとインコア20、弾性リング30、及び胴体部1との密着度合いが高まり、継手の抜け防止、漏水防止に寄与している。
【0042】
また、キャップ体5の胴体部1に対するねじ込み初期の段階(雄ネジ部4と雌ネジ部3とがねじ合った時点)から、インコア20の前記突条23aが、前記ポリエチレン管pの内面cに噛み込んでいることから、そのポリエチレン管pを拡径させる作用を安定且つ継続させることができる。すなわち、そのキャップ体5の胴体部1へのねじ込みによって、終始、インコア20からポリエチレン管pへの拡径力が伝達されやすくなり、インコア20とポリエチレン管pとの一体性を高める上で有利となっている。
【0043】
また、この実施形態では、弾性リング30はその内周に突起31を備え、キャップ体5を完全にねじ込んで管継手構造Cを構築した状態(図1(a)の状態)で、その突起31が、前記ポリエチレン管pの外周面bに食い込んでいる。
このため、インコア30とポリエチレン管pとの一体性を高めることができ、継手の強度向上に寄与している。
【0044】
また、その弾性リング30には、周方向に沿って複数の切欠き34が設けられている。各切欠き34は弾性リング30を径方向に貫通するように設けられている。この実施形態では、図3に示すように、周方向に沿って等分方位に8つの切欠き34を設けている。
この切欠き34を設けたことにより、弾性リング30がテーパ面6の狭まる方向に押し込まれる際に、その切欠き34の幅(周方向への幅)が縮小する方向に弾性リング30が変形して、ポリエチレン管pの外周面bへの食い込み力が発生しやすくなる効果を発揮させている。
【0045】
他の実施形態を図4及び図5に示す。この実施形態では、インコア20の各突条23aの先端よりも一端側(フランジ部24側)の面が管軸方向に対して直角方向で、他端側の面が管軸に対して一定の勾配を有する傾斜面21cであり、全体として断面鋸歯状の凹凸部23となっている。また、フランジ24に隣接する裾部の外周面21aの勾配も、前記凹凸部23を構成する前記傾斜面21cの勾配と同一である。なお、フランジ24から遠い側の端部付近の外周面21dの勾配は、前記凹凸部23を構成する前記傾斜面21cの勾配よりも緩やかとなっている。
【0046】
フランジ部24の裾部において、インコア20の外径が特に大きくなっていることから、インコア20をポリエチレン管pに押し込む際において、そのフランジ部24がポリエチレン管pの一端側端面aに当たる直前において、ポリエチレン管pに作用する拡径力が急激に増大する。このため、ポリエチレン管pに対する拡径方向への押し付け力を効果的に作用させることができる。
【0047】
さらに他の実施形態を図6及び図7に示す。この実施形態では、弾性リング30’は、他端側から一端側に向かって徐々に狭まるテーパ面32’が、その弾性リング30’の外面のほぼ全長(軸方向全長)に亘って形成されている。このため、弾性リング30’は、他端から一端に向かってその全長に亘って徐々に狭まる断面楔状を成している。
また、この弾性リング30’は、その内周の突起31を省略しており、弾性リング30’の内面とポリエチレン管pの外周面bとが面接触している。
【0048】
弾性リング30’に、前述の実施形態のような突起が設けられていないが、ポリエチレン管pの外周面bに対して食い込みの効果を発揮できる点は同様である。
【符号の説明】
【0049】
1 胴体部
1a 管受入れ部
1b 段部
1c 管接続部
2 Oリング
3 雌ネジ部
4 雄ネジ部
5 キャップ体(袋ナット)
6 テーパ面
7 突条
8 弾性リング
9 押圧リング
10,20 インコア
11,21 テーパ外面
12 一端側端面
13 溝
21a 裾部の外周面
22 一端(外側端面)
23 凹凸部
23a 突条
24 フランジ部
24a 外縁
24b 切欠き
30,30’ 弾性リング(抜け止めリング)
31 突起
32,32’ テーパ面
33 先端
34,34’ 切欠き
a 端面
b 外周面
c 内面
p 樹脂管(ポリエチレン管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に管接続部(1c)を他端に管受入れ部(1a)を有する胴体部(1)の前記管受入れ部(1a)内に樹脂管(p)が挿入可能であり、前記胴体部(1)の他端側にキャップ体(5)がねじ込み可能で、前記管受入れ部(1a)の内面には一端側から他端側に向かって徐々に拡がるテーパ面(6)が形成されており、
前記テーパ面(6)と前記樹脂管(p)の外周面(b)との間に環状の弾性リング(30)を介在させ、前記樹脂管(p)内に他端側から一端側に向かって徐々に拡がるテーパ外面(21)を有するインコア(20)をその樹脂管(p)の端部より差し入れ、前記樹脂管(p)の一端側端部を前記管受入れ部(1a)内に挿入して前記キャップ体(5)を前記胴体部(1)にねじ込むことにより、前記弾性リング(30)を介して前記樹脂管(p)を外側から締付け、前記インコア(20)はその一端(22)が前記管受入れ部(1a)の奥部に形成された段部(1b)に当たることでその樹脂管(p)内に押し込まれて、その樹脂管(p)を拡径させるとともに、前記弾性リング(30)を前記樹脂管(p)の外周面(b)に食い込ませて、前記胴体部(1)と前記樹脂管(p)とを固定する管継手構造。
【請求項2】
前記弾性リング(30)は、前記樹脂管(p)を構成する素材よりも硬い素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の管継手構造。
【請求項3】
前記弾性リング(30)はその内周に突起(31)を備え、前記突起(31)が、前記樹脂管(p)の外周面(b)に食い込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手構造。
【請求項4】
前記弾性リング(30)の軸方向端縁に切欠き(34)を設けたをことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の管継手構造。
【請求項5】
前記インコア(20)の一端にフランジ部(24)を設け、そのフランジ部(24)が前記樹脂管(p)の一端側端面(a)と前記段部(1b)との間に挟まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の管継手構造。
【請求項6】
前記インコア(20)のテーパ外面(21)に周方向に伸びる突条(23a)を備え、その突条(23a)が前記樹脂管(p)の内面に接することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の管継手構造。
【請求項7】
前記インコア(20)の一端側端面(22)から前記突条(23a)のうち最も他端側に位置するものまでの距離(L2)は、前記インコア(20)の一端側端面(22)からそのインコア(20)のテーパ外面(21)のうち前記樹脂管(p)の内面(c)に接している部分の最も他端側までの距離(L1)の1/2以上に設定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の管継手構造。
【請求項8】
前記インコア(20)の一端側端面(22)から前記突条(23a)のうち最も他端側に位置するものまでの距離(L2)は、前記キャップ体(5)の胴体部(1)に対するねじ込み可能深さ(L3)以上に設定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の管継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−17356(P2011−17356A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160951(P2009−160951)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000164896)栗本商事株式会社 (16)
【Fターム(参考)】