説明

管継手

【課題】 脱リング現象を確実に防止することができる内面止水型の管継手を提供する。
【解決手段】 外周面に装着溝21が形成された円筒形状の継手本体2と、この継手本体2の装着溝21に装着された弾性素材からなるリング状の止水パッキン3と、から構成され、継手本体2が接続する管に挿入されて、管と継手本体2とを止水パッキン3を介して止水する管継手において、装着溝21に止水パッキン3を装着した際、止水パッキン3の円周方向の伸張率が10ないし30%となるように、装着溝21の外径が止水パッキン3の初期状態における内径よりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管を接続するために用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管を接続するために使用される管継手のうち、主にオレフィン系材料による樹脂管用の管継手は、止水のために設けられる止水パッキンが管の外面に当接するか、或いは管の内面に当接するかによって、外面止水型と内面止水型とに大別される。
【0003】
このうち、外面止水型の管継手では、接続管の外面に管継手が取り付けられるため管継手の外表面が露出し、施工現場における取り扱い時に、この管継手の外表面に傷が付くという問題があった。
【0004】
一方、内面止水型の管継手は、外周面に全周にわたって装着溝が形成された円筒形状の継手本体と、この継手本体の装着溝に装着可能な止水パッキンと、から構成され、継手本体の装着溝に止水パッキンが装着されてなる管継手を、接続管に挿入することにより、止水パッキンを接続管の内周面に当接させるようにしている。このような内面止水型の管継手は、管継手の外表面に傷が付くことがなく、従来から使用されている。
【0005】
具体的には、図2に示すように、外周面に装着溝921が形成された円筒形状の継手本体92と、この継手本体92の装着溝921に装着された弾性素材からなるリング状の止水パッキン93と、から主要部分が構成され、継手本体92が接続管Aに挿入されて、接続管Aと継手本体92とを止水パッキン93を介して止水する管継手91が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−295974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、管継手に使用される止水パッキンは、主にゴム系の弾性材料で形成されている。そして、このような弾性材料では、図3に示すように、一方向に圧縮されると、その方向に垂直な二方向に伸びる性質がある。このため、Oリングに代表される円環体形状の止水パッキンの場合には、その断面が圧縮されると、円周方向に伸びが発生する。
【0007】
また、樹脂管のうち、オレフィン系に属するポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリブテン等の材料を押し出し成型することにより形成される可撓管は、通常、巻回した状態で製品として供給されており、施工現場では、塩ビカッター等の切断器具により所定の長さに切断して使用される。このような可撓管の切断の際、切断面が管軸に対して垂直に切断されず、斜めに切断される場合が多い。
【0008】
このような管軸に対して斜めに切断された管端部を有する樹脂製の接続管を、従来の内面止水型の管継手に接続する場合を図4ないし図7に示す。
【0009】
ここで止水パッキン93としては、JISB2401に規定される形状寸法のOリングが採用され、このOリングの装着溝921としてはJISB2406に規定される形状寸法が採用されている。
【0010】
まず、斜め切断された管端部を有する接続管Aに管継手91を挿入していくと、接続管Aの先端部A1が止水パッキン93に当接する。このとき、止水パッキン93の、接続管
Aの先端部A1の内周面と当接する部分が、接続管Aの内周面からの圧縮力を受けて圧縮される(図4参照)。
【0011】
そして、管継手91が接続管Aへ挿入されるにつれて、接続管Aの先端部A1との当接位置を始点として、止水パッキン93に対する接続管Aの内周面が当接する範囲を拡大し、止水パッキン93の、接続管Aの内周面から圧縮を受ける範囲が連続的に増大していく(図5参照)。
【0012】
このように、円周方向に順次圧縮力を受けた止水パッキン93は、円周方向に伸張し、ついには、装着溝921から浮き上がることになる(図6参照)。このような状態で、接続管Aの先端部A1の反対側の端部A2が止水パッキン93に当接すると、止水パッキン93は、装着溝921から浮き上がった部分が横方向から力を受けることになり、装着溝921から押し出されて、接続管Aの内周面と管継手91における継手本体92の外周面との間に挟み込まれることになる(図7参照)。
【0013】
この結果、止水パッキン93が装着溝921から脱落する、所謂脱リング現象が発生し、止水パッキンによる止水性能を発揮することができないという問題があった。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、脱リング現象の発生を確実に防止することのできる内面止水型の管継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明に係る管継手は、外周面に装着溝が形成された円筒形状の継手本体と、この継手本体の装着溝に装着された弾性素材からなるリング状の止水パッキンと、から構成され、継手本体が接続する管に挿入されて、管と継手本体とを止水パッキンを介して止水する管継手において、前記装着溝に止水パッキンを装着した際、止水パッキンの円周方向の伸張率が10ないし30%となるように、装着溝の外径が止水パッキンの初期状態における内径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、止水パッキンが円周方向に伸張率10ないし30%の範囲で伸張して継手本体の外周面に装着されるので、止水パッキンには、予め円周方向に伸びが与えられている。したがって、管軸に対して斜めに切断された管端部を有する接続管に管継手を挿入して、止水パッキンに接続管の内周面が順次当接し、この当接する内周面から止水パッキンが順次圧縮力を受けた場合であっても、止水パッキンがさらに圧縮される圧縮量は少なく、円周方向に伸びたとしても、装着溝から浮き上がって接続管の内周面と管継手の外周面との間に挟み込まれることはない。このように、脱リング現象の発生を確実に防止することができる。
【0017】
ここで、止水パッキンの円周方向の伸張率は、止水パッキンの線径断面における重心位置の周長の伸びで定義される。また、伸張率は、止水パッキン、装着溝、接続管の寸法公差を考慮した止水パッキンの最大圧縮率が高いほど大きく設定し、最大圧縮率が低い場合は比較的小さく設定してよい。
【0018】
なお、伸張率は、大きいほど脱リングを防止するのに有効であるが、伸張率が40%を超えると、止水パッキンが長期にわたって伸張するために止水パッキンのゴム材料が切断されてしまうので、上限を30%に抑えるのが望ましい。また、脱リング現象の発生を防止するとともに止水目的を好適に達成するために、設計データから伸張率の下限を10%とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る管継手によれば、優れた止水性を有するとともに、脱リング現象の発生を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0021】
図1には、本実施形態の管継手1がその一部を破断して示されている。
【0022】
この管継手1は、外周面に全周にわたって装着溝21が形成された円筒形状の継手本体2と、この装着溝21に装着可能なリング状の止水パッキン3と、から構成されている。
【0023】
装着溝21の外径寸法は、止水パッキン3の初期状態における内径寸法よりも大きく設定されており、装着溝21に止水パッキン3を装着した際、止水パッキン3が円周方向に伸張率10ないし30%の範囲で伸張するように図られている。
【0024】
止水パッキン3は、ゴム系の弾性材料で形成されており、本実施形態では断面が円形のOリングが用いられている。
【0025】
なお、止水パッキン3はOリングに限定されるものではなく、例えば断面がV字状のVパッキン、断面がZ字状のZパッキンなどであってもよい。
【0026】
接続管Aは、主としてオレフィン系の樹脂管であって、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリブテン等の材料を押し出し成型することにより形成される可撓管で構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
表1に、止水パッキン3としてOリングを採用した場合において、接続管Aの内径が9.8mmである場合の止水パッキン3の寸法、装着溝21の寸法、伸張率、圧縮率の範囲を示している。
【0028】
なお、伸張率および圧縮率の範囲は、止水パッキン3および装着溝21の寸法公差および管Aの寸法公差に由来するものである。
【0029】
【表1】

上記したように本発明に係る管継手1では、止水パッキン3が初期状態よりも円周方向の伸張率が10ないし30%の範囲で伸張して継手本体2に装着され、予め円周方向に伸びが与えられている。したがって、管軸に対して斜めに切断された管端部A1を有する接
続管Aに管継手1を挿入して、止水パッキン3に接続管Aの内周面が順次当接し、この当接する内周面から止水パッキン3が順次圧縮力を受けた場合であっても、止水パッキン3がさらに圧縮される圧縮量は少なく、円周方向に伸びたとしても、装着溝21から浮き上がって接続管Aの内周面と管継手1の外周面との間に挟み込まれることはない。このように、本発明によれば、脱リング現象の発生を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、脱リング現象を確実に防止することができる管継手に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る管継手を一部を破断して示す側面図である。
【図2】従来の管継手を示す断面図である。
【図3】弾性材料を圧縮した状態を説明する斜視図である。
【図4】(a)は、従来の管継手を斜め切断の接続管に挿入する状態を説明する側面図であり、(b)は、この管継手の止水パッキンを示す正面図である。
【図5】(a)は、従来の管継手を斜め切断の接続管に挿入する状態を説明する側面図であり、(b)は、この管継手の止水パッキンを示す正面図である。
【図6】(a)は、従来の管継手を斜め切断の接続管に挿入する状態を説明する側面図であり、(b)は、この管継手の止水パッキンを示す正面図である。
【図7】従来の管継手を斜め切断の接続管に挿入する状態を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 管継手
2 継手本体
21 装着溝
3 止水パッキン
A 接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に装着溝が形成された円筒形状の継手本体と、この継手本体の装着溝に装着された弾性素材からなるリング状の止水パッキンと、から構成され、継手本体が接続する管に挿入されて、管と継手本体とを止水パッキンを介して止水する管継手において、
前記装着溝に止水パッキンを装着した際、止水パッキンの円周方向の伸張率が10ないし30%となるように、装着溝の外径が止水パッキンの初期状態における内径よりも大きく設定されていることを特徴とする管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−283865(P2006−283865A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103738(P2005−103738)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】