説明

管継手

【課題】不測の外力が生じ、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こっても管体の接合部から流体の漏出を防止する管継手を提供する。
【解決手段】押輪13は、挿口部23の外周面23aに対向する内周面を有し、パッキン1は、押込み部1aの外周面1dに形成され、押輪13の押圧面13cと受口部3との間で挟圧される被挟圧部1gと、押込み部1aに連続して管軸方向に先頭シール部1bと反対側に延設され、押輪13の内周面と挿口部23の外周面23aとの間に位置する延設部1fと、延設部1fに形成され、押輪13の内周面と挿口部23の外周面23aとの間を密封する後方シール部と、が周方向に沿って有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の管体を構成する挿口部と、挿口部に遊挿され、内周面には、端面側から内方に向かって縮径する傾斜面と、傾斜面に連続して更に内方に向かって形成される管軸に対して略平行の平行面と、を有している他方の管体を構成する受口部と、リング状に形成される弾性材から成り、受口部の内周面と挿口部の外周面の間に配置され、傾斜面と挿口部の外周面との間に位置する押込み部と、押込み部に連続して形成され、平行面と挿口部の外周面との間を密封するための先頭シール部と、を有するパッキンと、挿口部の外周面に沿って外嵌されるとともに、パッキンを押圧する押圧面を有する押輪と、受口部と押輪とパッキンとの管軸方向の相対移動が規制されるように、受口部と押輪とを連係して取付けられた取付部材と、を備えた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
押輪により2つの管体を締結した配管の接合部から配管に流れる流体の漏出を防止する手段として、従来図9に示されるようなパッキン101が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。以下、図9に例示されるパッキン101について説明する。すなわち、図9(a)において、一方の管体102の受口部103の内方は、他方の管体122の挿口部123が遊挿されている。
【0003】
管体102の受口部103の端部の内方には、受口部103の開口端から内方に向かって縮径する内周面である傾斜面103bが周方向に沿って形成されている。またこの傾斜面103bに連続して更に内方に向かうともに、管軸に対して略平行である平行面103dが周方向に沿って形成されており、この平行面103d内方側の端部には、管軸方向を向く奥端面103fが周方向に沿って形成されている。
【0004】
パッキン101はリング状に形成され、ゴム等の弾性材から成り、このパッキン101は傾斜面103bと略平行な外周面を有している押込み部101aが周方向に沿って形成されている。またこの押込み部101aの紙面右側には、押込み部101aと連続するとともに、周方向に沿って膨出される先頭シール部101bが形成されている。そして、この押込み部101aの紙面左側の端部に押輪113側の端部に形成された押圧面113cが押圧する被押圧面101cが形成されている。
【0005】
そこで、これら管体102、122を接続されるに際し、先ず、押輪113とパッキン101を順に挿口部123に外嵌した状態で、挿口部123を受口部103内に挿入し、次いで、受口部103に形成されたフランジ部103gと押輪113のフランジ部113bに形成された夫々の取付孔103h、113dにT頭ボルト111を挿通し、ナット112を螺挿して均等に閉め込んでいくと、図9(b)に示されるように、パッキン101の被押圧面101cは押輪113の押圧面113cにより図示白抜矢印方向に押圧される。そして、パッキン101の先頭シール部101bが受口部103の平行面103dと挿口部123の外周面とが当接することで弾性変形し、先頭シール部101bの先端部が奥端面103fと当接するまで押し込まれる。その結果、受口部103の平行面103dと挿口部123の外周面との間が密封され、両管体102、122を流れる流体の漏出防止が成される。
【0006】
【特許文献1】特開平2003−161393号公報(第6頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の流体漏出防止用のパッキン101を備えた管継手では、例えば地震等による不測の外力が生じ、挿口部123が受口部103に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった際には、パッキン101の先頭シール部101bが、挿口部123の外周面と受口部103の内周面と離間し、受口部103の平行面103dと挿口部123の外周面との間の密封性が維持されない状態になり、両管体102、122を流れる流体が、押込み部101aの外周面と受口部103の傾斜面103bとの間、若しくは押込み部101aの内周面と挿口部123の外周面との間を通過して、両管体102、122の外部に漏出するといった問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不測の外力が生じ、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こっても管体の接合部から流体の漏出を防止する管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の管継手は、
一方の管体を構成する挿口部と、
該挿口部に遊挿され、内周面には、端面側から内方に向かって縮径する傾斜面と、該傾斜面に連続して更に内方に向かって形成される管軸に対して略平行の平行面と、を有している他方の管体を構成する受口部と、
リング状に形成される弾性材から成り、前記受口部の内周面と前記挿口部の外周面の間に配置され、前記傾斜面と前記挿口部の外周面との間に位置する押込み部と、該押込み部に連続して形成され、前記平行面と前記挿口部の外周面との間を密封するための先頭シール部と、を有するパッキンと、
前記挿口部の外周面に沿って外嵌されるとともに、パッキンを押圧する押圧面を有する押輪と、
前記受口部と前記押輪と前記パッキンとの管軸方向の相対移動が規制されるように、前記受口部と前記押輪とを連係して取付けられた取付部材と、を備えた管継手において、
前記押輪は、前記挿口部の外周面に対向する内周面を有し、
前記パッキンは、
前記押込み部の外周面に形成され、前記押輪の押圧面と前記受口部との間で挟圧される被挟圧部と、
前記押込み部に連続して管軸方向に前記先頭シール部と反対側に延設され、前記押輪の内周面と前記挿口部の外周面との間に位置する延設部と、
該延設部に形成され、前記押輪の内周面と前記挿口部の外周面との間を密封する後方シール部と、を周方向に沿って有していることを特徴としている。
この特徴によれば、先頭シール部に加えて、被挟圧部と後方シール部が形成されているため、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部が受口部に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、押輪の押圧面と受口部との間の被挟圧部と、押輪の内周面と挿口部の外周面との間の後方シール部と、により依然として、管体の密封が維持される。また、受口部と挿口部との極端な相対移動が起こっても、後方シール部がシールされている限り、管体の密封が維持可能である。
【0010】
本発明の請求項2に記載の管継手は、請求項1に記載の管継手であって、
前記押輪の押圧面は、前記受口部の傾斜面に対向しており、前記パッキンの被挟圧部は、前記押輪の押圧面と前記受口部の傾斜面との間で挟圧されることを特徴としている。
この特徴によれば、受口部の傾斜面に対向した押輪の押圧面により、パッキンの先頭シール部を適正位置に容易に押し込むことができるばかりか、押輪の押圧面と受口部の傾斜面とによりパッキンの被挟圧部を挟圧することができる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の管継手は、請求項2に記載の管継手であって、
前記押輪の押圧面は、前記受口部の傾斜面に向かって該受口部の内方に延びていることを特徴としている。
この特徴によれば、押輪の押圧面を受口部の傾斜面の近傍まで延ばすことができるため、パッキンの被挟圧部の挟圧力が高まり、パッキンの外周面と受口部の傾斜面との間の密封が向上できる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の管継手は、請求項1に記載の管継手であって、
前記押輪の押圧面は、前記受口部の端面に対向しており、前記パッキンの被挟圧部は、前記押輪の押圧面と前記受口部の端面との間で挟圧されることを特徴としている。
この特徴によれば、パッキンの被挟圧部が受口部の外方側の位置に露出されているため、被挟圧部による密封状態を確認できる。
【0013】
本発明の請求項5に記載の管継手は、請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手であって、
前記パッキンの被挟圧部に、前記受口部側に向かって膨出する膨出部が形成されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、パッキンの被挟圧部に受口部側に向かって膨出する膨出部が形成されているため、被挟圧部に作用する挟圧力を膨出部に集中させることができ、この膨出部でパッキンの外周面と受口部との間の密封性を高めることができる。
【0014】
本発明の請求項6に記載の管継手は、請求項1ないし5のいずれかに記載の管継手であって、
前記後方シール部は、前記延設部の外周面及び前記延設部の内周面に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部が受口部に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、押輪の内周面から延設部に向かう力を延設部の外周面に形成された後方シール部が受け、この力を有効に延設部の内周面に形成された後方シール部から挿口部の外周面に作用させ、結果的に延設部の内周面と挿口部の外周面との間の密封が維持される。
【0015】
本発明の請求項7に記載の管継手は、請求項1ないし6のいずれかに記載の管継手であって、
前記延設部の外周面と前記延設部の内周面の少なくとも一方に、後方シール部が複数条形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、不測の外力が生じても、後方シール部が管軸方向に複数条形成されていることで管体の密封性が向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における管継手の全体像を示す分解斜視図である。図2(a)は、パッキン取付け前の管継手を示す一部断面図、(b)は、パッキン取付け後の管継手を示す一部断面図である。図3は、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった時の管継手を示す一部断面図である。図4は、変形例1における管継手のパッキンを示す一部断面図である。図5は、変形例2における管継手のパッキンを示す一部断面図である。図6は、変形例3における管継手のパッキンを示す一部断面図である。図7(a)は、変形例4におけるパッキン取付け前の管継手のパッキンを示す一部断面図、(b)は、パッキン取付け中間段階の管継手を示す一部断面図、(c)は、パッキン取付け後の管継手を示す一部断面図である。図8は、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった時の管継手を示す一部断面図である。
【0018】
図1、2に示されるように、一方の管体の端部に他方の管体を挿入して、水密、若しくは気密にシールする管継手の構造は、従来の構成と略同一構成となっている。具体的には、パッキン1と押輪13と、が挿口部23の外周面23aに外嵌された状態で他方の管体22の対向端部である挿口部23が遊挿される。すなわち、挿口部23の外周面23aと受口部3の内周面との間に所定の間隙を形成して挿入される。そして、パッキン1が、受口部3の内周面と、挿口部23の外周面23aと、の間に押輪13により押込まれ、両管体2、22を気密もしくは水密にシールする。
【0019】
また受口部3のフランジ部3gに所定間隔おきに周方向に複数の取付孔3hが形成されており、ナット12側の端部に周方向に沿って形成された押輪13のフランジ部13bには、この受口部3のフランジ部3gの取付孔3hと同軸となるよう、押輪13のフランジ部13bに複数形成された取付孔13dが所定間隔おきに周方向に設けられている。
【0020】
そして、受口部3のフランジ部3gの取付孔3hと押輪13のフランジ部13bの取付孔13dを取付部材としてのT頭ボルト11とナット12が取付孔3h、13dの個数に対応して取付けられることで、パッキン1と受口部3と押輪13の相対移動が規制される。尚、図1ではT頭ボルト11とナット12は1組のみ示し、その他は省略している。
【0021】
具体的な管継手の構成は、図2(a)に示されるように、管体2の受口部3の端部の内方には、受口部3の端面3aから内方に向かって縮径する内周面である傾斜面3bが周方向に沿って形成されている。また傾斜面3bに連続して更に受口部3の内方に向かうとともに、管軸に対して略平行である平行面3dが周方向に沿って形成されている。更に、平行面3dより更に内方側の端部には、受口部3の外方を向く奥端面3fが周方向に沿って形成される。そして、後述のように、受口部3の内周面、すなわち傾斜面3b及び平行面3dと、挿口部23の外周面23aとの間にパッキン1が嵌入される。
【0022】
本実施例における管継手のパッキン1は、リング状に形成されるゴム等の弾性材から形成されており、このパッキン1には、傾斜面3bと略平行に形成された外周面1dを有している押込み部1aが周方向に沿って形成されている。またこの押込み部1aの図2(a)紙面右方には、押込み部1aと連続するとともに、周方向に沿って自然状態において膨出する先頭シール部1bが形成されている。
【0023】
更に、この押込み部1aにおける図2(a)の紙面左側の端部には、押輪13が押圧する端面である被押圧面1cが受口部3の傾斜面3bに向かって受口部3の内方に延びるよう形成されており、この被押圧面1cと押込み部1aの外周面1dと、が挟圧される被挟圧部1gが押込み部1aの外周面に形成されている。そして、被挟圧部1gには、押込み部1aの外周面1dに対向する受口部3の傾斜面3bに向かって膨出する膨出部9が周方向に沿って形成されている。
【0024】
この押込み部1aの図2(a)紙面左方には、押込み部1aに連続して管軸方向に先頭シール部1bと反対側に延設され、押輪13の内周面と挿口部23の外周面23aとの間に位置する延設部1fが周方向に沿って形成されている。またこの延設部1fにおける図2(a)紙面左側の端部には、延設部1fの外周面1dに、延設部1fの外周面1dに対向する押輪13の内周面に、向かって膨出するとともに、延設部1fの内周面1eに対向する挿口部23の外周面23aに向かって膨出した後方シール部7が周方向に沿って形成されている。
【0025】
尚、押込み部1aの外周面1d及び延設部1fの外周面1dは、パッキン1全体としての外周面1dであることを示し、押込み部1aの内周面1eと及び延設部1fの内周面1eは、パッキン1全体としての内周面1eであることを示す。
【0026】
押輪13は、図2(a)紙面右側に形成されている環状押圧部13aと、前記したフランジ部13bと、から成り、この環状押圧部13aには、受口部3の傾斜面3bに対向するとともに、受口部3の傾斜面3bに向かって受口部3の内方に延びるように押圧面13cが形成されている。またこの押輪13の内周面には、受口部3の端面3a側から管軸方向の外方に向かって縮径するテーパ面13eが形成されており、このテーパ面13eに連続して更に受口部3側の外方に向かうとともに、管軸に対して略平行である平行面13gが周方向に沿って形成されている。更に、平行面13gより更に受口部3側の外方側の端部には、受口部3の外方を向く奥端面13fが周方向に沿って形成される。そして、後述のように、押輪13の内周面、すなわちテーパ面13e及び平行面13gと、挿口部23の外周面23aとの間にパッキン1が嵌入される。
【0027】
次に管体2、22の接続について説明すると、先ず、押輪13とパッキン1を順に挿口部23にあらかじめ外嵌した状態で、挿口部23を受口部3内に挿入する。
【0028】
次いで、受口部3と押輪13の夫々のフランジ部3g、13bに周方向に複数のT頭ボルト11を挿通し、ナット12を螺挿して同方向に均等に閉め込んでいくと、図2(b)に示されるように、パッキン1の被押圧面1cは、押輪13の押圧面13cにより図示白抜矢印方向に向かって押圧され、パッキン1は、受口部3の内方に向かって押込まれる。そして、パッキン1の先頭シール部1bが受口部3の傾斜面3bと挿口部23の外周面23aに当接することで弾性変形し、更に、パッキン1の先頭シール部1bが受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aと当接することで先頭シール部1bが平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間に嵌入され、最終的に先頭シール部1bの先端部が奥端面3fと当接するまで押し込まれる。この結果、先頭シール部1bにより平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間が密封される。具体的には、受口部3の平行面3dと先頭シール部1bの外周面との間が密封されるとともに、挿口部23の外周面23aと先頭シール部1bの内周面との間が密封される。
【0029】
一方、パッキン1の被挟圧部1gに形成された膨出部9は、押輪13により管軸方向に押圧され、この膨出部9は、受口部3の傾斜面3bと当接することで弾性変形し、受口部3の傾斜面3bと挿口部23の外周面23aとの間に押し込まれる。この時、押輪13の押圧により押輪13の押圧面13cから膨出部9に挿口部23の外周面23aに向かって図2(b)の黒塗矢印方向の力が伝達され、この力が膨出部9により受口部3の傾斜面3bに作用されるため、パッキン1の被挟圧部1gは、押輪13の押圧面13cと受口部3の傾斜面3bとの間で挟圧される。よって先頭シール部1bに加えて、膨出部9により補助的に押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間が密封される。
【0030】
更に、この延設部1fにおける図2(b)紙面左側の端部に形成された後方シール部7は、押輪13のテーパ面13eにより図示白抜矢印方向に向かって押圧され、パッキン1の後方シール部7が押輪13のテーパ面13eと挿口部23の外周面23aに当接することで弾性変形し、更に、パッキン1の後方シール部7が押輪13の平行面13gと挿口部23の外周面23aと当接することで後方シール部7が平行面13gと挿口部23の外周面23aとの間に嵌入され、最終的に後方シール部7の後端部が押輪13の奥端面13fと当接するようパッキン1が押輪13により押圧される。この結果先頭シール部1bに加えて、後方シール部7により補助的に押輪13の平行面13gと挿口部23の外周面23aとの間が密封される。
【0031】
地震等による不測の外力が生じた場合は、図3に示されるように、挿口部23が管軸方向にすなわち図示白抜矢印の方向に受口部3に対して相対移動が起こり、弾性変形していたパッキン1の先頭シール部1bが元の自然状態に復元するため、受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間の密封性が維持されない状態になる。
【0032】
しかし上記に示したように、先頭シール部1bに加えて、受口部3の傾斜面3bと押込み部1aの外周面1dとの間に被挟圧部1gが形成されているとともに、押輪13の内周面と挿口部23の外周面23aとの間に後方シール部7が形成されている。ここで受口部3の傾斜面3bと押込み部1aの外周面1dとの間において、押輪13の押圧面13cは、受口部3の傾斜面3bに対向しており、被挟圧部1gが押輪13の押圧面13cと受口部3の傾斜面3bとの間で挟圧されるため、既存の受口部3の傾斜面3bを利用して、この傾斜面3bと押輪13の押圧面13cとによりパッキンの被挟圧部1gを挟圧でき、依然として押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間の密封を維持することができる。
【0033】
またパッキン1の被挟圧部1gに、受口部3の傾斜面3bに向かって膨出する膨出部9が形成されていることにより、押輪13の押圧により押輪13の押圧面13cから膨出部9に挿口部23の外周面23aに向かって図3の黒塗矢印方向の力が伝達され、この力が膨出部9により受口部3の傾斜面3bに作用される。よって被挟圧部1gに作用する挟圧力を膨出部9に集中させることができ、結果的に押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間の密封性を高めることができる。
【0034】
従って、上記に示したように先頭シール部1bに加えて、被挟圧部1gと後方シール部7とが形成されることで、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部23が受口部3に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、押輪13の押圧面13cと受口部3との間の被挟圧部1gと、押輪13の内周面と挿口部23の外周面23aとの間の後方シール部7と、により依然として、管体2、22の密封を維持することができる。
【0035】
特に図3に示されるように、受口部3の端面3aと挿口部23の端面23bとが管軸方向に離間するような受口部3と挿口部23との極端な相対移動が起こっても、後方シール部7がシールされている限り、管体2、22の密封が維持可能である。
【0036】
尚、本実施例の押輪13において上記に示したように、押輪13の押圧面13cは、受口部3の傾斜面3bに対向しており、パッキン1の被挟圧部1gは、押輪13の押圧面13cと受口部3の傾斜面3bとの間で挟圧されている。(図2、図3参照)。
【0037】
このようにすることで、受口部3の傾斜面3bに対向した押輪13の押圧面13cにより、パッキン1の先頭シール部1bを適正位置に容易に押込むことができるばかりか、押輪13の押圧面13cと受口部3の傾斜面3bとによりパッキン1の被挟圧部1gを挟圧することができる。
【0038】
また、押輪13の押圧面13cは、受口部3の傾斜面3bに向かって受口部3の内方に延びている(図2、図3参照)。
【0039】
このようにすることで、押輪13の押圧面13cを受口部3の傾斜面3bの近傍まで延ばすことができるため、パッキン1の被挟圧部1gの挟圧力が高まり、パッキン1の外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間の密封が向上できる。
【0040】
更に尚、押輪13の内周面に、受口部3の端面3a側から管軸方向の外方に向かって縮径するテーパ面13eが形成されている。
【0041】
このようにすることで、押輪13の内周面に形成されたテーパ面13eを利用して、パッキン1を受口部3の内方に向かって管軸方向に補助的に押圧することができるばかりか、後方シール部7を挿口部23の外周面23aに向かって管軸と直交する方向に押圧することができる。
【0042】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。以下に、本発明の実施例における変形例の管継手に係り、図4ないし図8を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
例えば、上記実施例では、延設部1fの端部に後方シール部7が挿口部23の外周面23a及び押輪13の内周面に向かって膨出するように、一体的に後方シール部7が形成されているが、これに限らず変形例1として、図4に示されるようにパッキン1の延設部1fの外周面1dに、後方シール部7aが形成されているのみでもよい。また特に図示はしないが、パッキン1の延設部1fの内周面1eに、後方シール部が形成されているのみでもよい。
【0044】
このようにすることで、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部23が受口部3に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、先頭シール部1bに加えて、延設部1fの内周面1eと挿口部23の外周面23aの間を密封している後方シール部が依然として、延設部1fの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間の密封を維持することができる。
【0045】
更に尚、特に図示しないが、延設部1fの外周面1dに、延設部1fの外周面1dに対向する押輪13の内周面に向かって膨出する後方シール部と、延設部1fの内周面1eに、延設部1fの内周面1eに対向する挿口部23の外周面23aに向かって膨出する後方シール部と、が独立して設けられてもよい。
【0046】
このように、延設部1fの外周面1dと延設部1fの内周面1eと、に夫々後方シール部が形成されていることで、押輪13の内周面から延設部1fに向かう力を延設部1fの外周面1dに形成された後方シール部が受け、この力が有効に延設部1fの内周面1eに形成された後方シール部から挿口部23の外周面23aに作用させ、結果的に延設部1fの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間の密封を維持することができる。
【0047】
変形例2として、延設部1fの外周面1dに後方シール部7b、7cが2条形成されるとともに、延設部1fの内周面1eに、後方シール部8b、8cが2条形成されてもよい。尚、上記2条は延設部1fの外周面1dに、延設部1fの外周面1dに対向する押輪13の内周面に向かって膨出する後方シール部が2箇所形成されており、延設部1fの内周面1eに、延設部1fの内周面1eに対向する挿口部23の外周面23aに向かって膨出する後方シール部が2箇所形成されていることを意味している。また、特に図示はしないが、延設部1fの外周面1dと延設部1fの内周面1eに、夫々後方シール部が3条以上形成されてもよい。更に、特に図示はしないが、延設部1fの外周面1dに後方シール部が複数条形成されているのみでもよく、同様に延設部1fの内周面1eに後方シール部が複数条形成されているのみでもよい。
【0048】
このように、不測の外力が生じても、後方シール部が管軸方向に複数条形成されていることで、両管体2、22の密封性が向上できる。
【0049】
また、上記実施例では、被挟圧部1gに、受口部3側に向かって膨出する膨出部9が形成されているが、これに限らず変形例3として、図6に示されるようにパッキン1の被挟圧部1gに、膨出部9が形成されなくてもよい。
【0050】
これは、被挟圧部1gに膨出部が形成されていなくても、受口部3の傾斜面3bと押輪13の押圧面13cとによりパッキン1の被挟圧部1gを挟圧できるため、押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間の密封を維持することができるからである。
【0051】
変形例4として図7に示されるように、押輪13の押圧面13cは、管軸に対して略直交方向に形成された受口部3の端面3aに対向するように形成されており、押輪13の内周面には、延設部1fの外周面1dに対向するとともに、受口部3の端面3a側から管軸方向の外方に向かって縮径するテーパ面13eを有している。そして、押込み部1aには、押輪13の押圧面13cと受口部3の端面3aとの間で挟圧されるよう被挟圧部1gが形成されており、この被挟圧部1gには、受口部3の端面3a側に向かって膨出する膨出部9と、押輪13の押圧面13cに対向する被押圧面1cと、が形成されている(図7(a)参照)。
【0052】
次に管体2、22の接続について説明すると、先ず、押輪13とパッキン1を順に挿口部23にあらかじめ外嵌した状態で、挿口部23を受口部3内に挿入する。次いで、受口部3と押輪13の夫々のフランジ部3g、13bに周方向に複数のT頭ボルト11を挿通し、ナット12を螺挿して同方向に均等に閉め込んでいくと、図7(b)に示されるように、被押圧面1cは、押輪13の押圧面13cにより図示白抜矢印方向に向かって押圧され、パッキン1は、受口部3の内方に向かって押込まれる。この時、パッキン1の先頭シール部1bは、受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間に嵌入され、この先頭シール部1bにより受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間が密封される。一方、この延設部1fの紙面左側の端部に形成された後方シール部7は、押輪13のテーパ面13eにより図示白抜矢印方向に向かって押圧され、押輪13の平行面13gと挿口部23の外周面23aとの間に嵌入される。この結果、先頭シール部1bに加えて、後方シール部7により補助的に押輪13の平行面13gと挿口部23の外周面23aとの間が密封される。
【0053】
そして、図7(c)に示されるように、更に図示白抜矢印方向に向かって、被押圧面1cが押輪13の押圧面13cにより押圧されると、押輪13の押圧により押輪13の押圧面13cから膨出部9に挿口部23の外周面23aに向かって管軸方向、すなわち図示黒塗矢印方向の力が伝達され、この力が膨出部9により受口部3の端面3aに作用されるため、被挟圧部1gは、押輪13の押圧面13cと受口部3の端面3aとの間で挟圧される。よって先頭シール部1bに加えて、膨出部9により補助的に押込み部1aの外周面1dと受口部3の端面3aとの間が密封される。
【0054】
地震等による不測の外力が生じた場合は、図8に示されるように、挿口部23が図示白抜矢印の方向に受口部3に対して相対移動が起こり、弾性変形していたパッキン1の先頭シール部1bが元の自然状態に復元するため、受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間の密封性が維持されない状態になる。
【0055】
しかし先頭シール部1bに加えて、被挟圧部1gと後方シール部7とが形成されることで、地震等による不測の外力が生じて、挿口部23が受口部3に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、押輪13の押圧面13cと受口部3との間に形成された被挟圧部1gと、押輪13の内周面と挿口部23の外周面23aとの間に形成された後方シール部7と、により依然として、管体2、22の密封が維持される。
【0056】
また、管軸方向に略直交する既存の受口部3の端面3aを利用して、この端面3aと押輪13の押圧面13cとによりパッキン1の被挟圧部1gを挟圧できるばかりか、押輪13の押圧面13cによりパッキン1に作用する押圧方向と、被挟圧部1gに作用する挟圧方向とが同じ管軸方向なため、押圧力を効果的に被挟圧部1gの挟圧に利用できる。更に、上述したように、パッキン1の被挟圧部1gに、受口部3の端面3aに向かって膨出する膨出部9が形成されていることにより、被挟圧部1gに作用する挟圧力を膨出部9に集中させることができ、結果的に押込み部1aの外周面1dと受口部3の端面3aとの間の密封性を高めることができる。
【0057】
特に図8に示されるように、受口部3の端面3aと挿口部23の端面23bとが管軸方向に離間するような極端な相対移動が起こり、受口部3と挿口部23の離脱状態が発生しても、管体2、22の密封が維持可能である。
【0058】
尚、変形例4において上記に示したように、押輪13の押圧面13cは、受口部3の端面3aに対向しており、パッキン1の被挟圧部1gは、押輪13の押圧面13cと受口部3の端面3aとの間で挟圧される。
【0059】
このようにすることで、パッキン1の被挟圧部1gが受口部3の外方側の位置に露出されているため、被挟圧部1gによる密封状態を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例における管継手の全体像を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、パッキン取付け前の管継手を示す一部断面図、(b)は、パッキン取付け後の管継手を示す一部断面図である。
【図3】挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった時の管継手を示す一部断面図である。
【図4】変形例1における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【図5】変形例2における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【図6】変形例3における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【図7】(a)は、変形例4におけるパッキン取付け前の管継手のパッキンを示す一部断面図、(b)は、パッキン取付け中間段階の管継手を示す一部断面図、(c)は、パッキン取付け後の管継手を示す一部断面図である。
【図8】挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった時の管継手を示す一部断面図である。
【図9】(a)は、パッキン取付け前の従来例の管継手を示す一部断面図である。(b)は、パッキン取付け後の従来例の管継手を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 パッキン
1a 押込み部
1b 先頭シール部
1c 被押圧面
1d 外周面
1e 内周面
1f 延設部
1g 被挟圧部
2 管体
3 受口部
3a 端面
3b 傾斜面
3d 平行面
3f 奥端面
3g フランジ部
3h 取付孔
7 後方シール部
7a 後方シール部
7b 後方シール部
7c 後方シール部
8b 後方シール部
8c 後方シール部
9 膨出部
11 T頭ボルト(取付部材)
12 ナット(取付部材)
13 押輪
13a 環状押圧部
13b フランジ部
13c 押圧面
13d 取付孔
13e テーパ面(押輪の内周面)
13f 奥端面
13g 平行面(押輪の内周面)
22 管体
23 挿口部
23a 外周面
23b 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管体を構成する挿口部と、
該挿口部に遊挿され、内周面には、端面側から内方に向かって縮径する傾斜面と、該傾斜面に連続して更に内方に向かって形成される管軸に対して略平行の平行面と、を有している他方の管体を構成する受口部と、
リング状に形成される弾性材から成り、前記受口部の内周面と前記挿口部の外周面の間に配置され、前記傾斜面と前記挿口部の外周面との間に位置する押込み部と、該押込み部に連続して形成され、前記平行面と前記挿口部の外周面との間を密封するための先頭シール部と、を有するパッキンと、
前記挿口部の外周面に沿って外嵌されるとともに、パッキンを押圧する押圧面を有する押輪と、
前記受口部と前記押輪と前記パッキンとの管軸方向の相対移動が規制されるように、前記受口部と前記押輪とを連係して取付けられた取付部材と、を備えた管継手において、
前記押輪は、前記挿口部の外周面に対向する内周面を有し、
前記パッキンは、
前記押込み部の外周面に形成され、前記押輪の押圧面と前記受口部との間で挟圧される被挟圧部と、
前記押込み部に連続して管軸方向に前記先頭シール部と反対側に延設され、前記押輪の内周面と前記挿口部の外周面との間に位置する延設部と、
該延設部に形成され、前記押輪の内周面と前記挿口部の外周面との間を密封する後方シール部と、を周方向に沿って有していることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記押輪の押圧面は、前記受口部の傾斜面に対向しており、前記パッキンの被挟圧部は、前記押輪の押圧面と前記受口部の傾斜面との間で挟圧されることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記押輪の押圧面は、前記受口部の傾斜面に向かって該受口部の内方に延びていることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記押輪の押圧面は、前記受口部の端面に対向しており、前記パッキンの被挟圧部は、前記押輪の押圧面と前記受口部の端面との間で挟圧されることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記パッキンの被挟圧部に、前記受口部側に向かって膨出する膨出部が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手。
【請求項6】
前記後方シール部は、前記延設部の外周面及び前記延設部の内周面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の管継手。
【請求項7】
前記延設部の外周面と前記延設部の内周面の少なくとも一方に、後方シール部が複数条形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−196608(P2008−196608A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32636(P2007−32636)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【Fターム(参考)】