説明

管継手

【課題】 先端形状が不良の可撓管を接続不能として簡単に排除する。
【解決手段】 緊締リング2の内周面2aに、可撓管Bの先端外周のみと対向接触する掛止部4を周方向へ設けることにより、この可撓管Bの先端形状が斜め又は凹凸になるなどの切断ミスがあって、その先端外周と該掛止部4との不接触箇所が存在する時には、可撓管Bの反挿入方向への移動に伴い、上記掛止部4と可撓管Bの外周面B1との圧着が解除されるため、そのまま可撓管Bが引き抜き可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂やゴムなどの弾性材料からなるチューブやホースなどの可撓管を接続するために用いる管継手に関し、それには可撓管を差し込み若干引き戻すだけで工具を使用せずに接続できる管継手も含まれる。
詳しくは、ニップルと、これに対向して周設された緊締リングとの間に可撓管を挿入し、この緊締リングをキャップのテーパー面に沿って反挿入方向へ逆移動させることにより、該緊締リングの内周の掛止部が可撓管の外周面に圧着して可撓管を移動不能に接続する管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手として、本体に一体形成されたニップルと対向して、弾性変形可能なバネ弾性部と内周の掛止部とが一体形成された緊締リングを、押えナットのテーパー面に沿ってホースの挿入方向へ往復動自在に設け、これらニップルと緊締リングとの間にホースを差し込むことにより、該緊締リングがそのバネ弾性部の復元弾発力でテーパー面沿いに押し戻されて、その内周の掛止部をニップル側へ押圧し、ホースを挾圧着して緊密に定着保持するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭58−2489号公報(第1頁、第1図−第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホースを含む可撓管の先端は、例えばカッターやハサミなどを使って手作業により切断することが一般的であり、管継手に対して確実に可撓管を接続するには、可撓管の軸線と略直角となるように切断する必要がある。
しかし乍ら、可撓管の切断面は作業者の経験差や切断状況などにより、その切断角度が軸線に対し傾斜したり、周方向へ同一平面状にならず部分的に凹凸となるような所謂切断ミスが発生することがある。
このような先端形状が不良の可撓管を、従来のような管継手のニップルと緊締リングとの間に挿入すると、先端が軸線と略直角に切断された正常な可撓管と同様に、緊締リングの内周の掛止部が可撓管の外周面に圧着して接続される。
この場合は、先端が軸線と略直角に切断された正常な可撓管を挟み込んで接続したものに比べ、可撓管の先端とニップル外周面との接触面積が不足するため、可撓管が抜け易くなる虞があるだけでなく、それらの間から流体が漏れ易くなるという問題があった。
また、従来のような緊締リングはキャップのテーパー面の内側で往復動するように管継手に内蔵され、可撓管に対する緊締リングの押圧状況を外からは見ることができなかったため、作業者は可撓管の接続作業が完了したことを目視で確認できず、不安感が伴うという問題があった。
更に、特に緊締リングに振動などの衝撃が作用すると、バネ弾性部が弾性変形して緊締リングが可撓管の挿入方向へ移動する可能性があるため、それにより可撓管の保持力に弛みが発生し、管継手から可撓管が抜け易くなる虞もあった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、先端形状が不良の可撓管を接続不能として簡単に排除することを目的としたものである。
第二の発明は、第一の発明の目的に加えて、可撓管の先端全周の形状不良を簡易に検出して先端形状が不良の可撓管を引き抜き可能にすることを目的としたものである。
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の目的に加えて、目印部の露出により可撓管の接続完了を目視で確認することを目的としたものである。
第四の発明は、第三の発明の目的に加えて、緊締リングの戻り移動に伴う可撓管の抜けを完全に防止することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、緊締リングの内周面に、可撓管の先端外周のみと対向接触する掛止部を周方向へ設け、該可撓管の先端形状に応じて、その先端外周と上記掛止部との不接触箇所が存在する時には上記掛止部と可撓管の外周面との圧着を解除して可撓管が移動可能となることを特徴とするものである。
ここで言う「可撓管」とは、例えば合成樹脂やゴムなどの弾性材料からなるチューブやホース又はそれに類似する弾性変形可能な管からなる。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記掛止部を前記緊締リングの周方向へ断続的に適宜間隔毎に複数配置し、これら複数の掛止部のうち所定数未満が可撓管の先端外周に接触した時には、各掛止部と可撓管の外周面とを摺動させて可撓管が移動可能となる構成を加えたことを特徴とする。
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の構成に、前記可撓管の反挿入方向への移動に伴う前記緊締リングの移動でキャップの開口から外へ突出する目印部を該緊締リングに設けた構成を加えたことを特徴とする。
第四の発明は、第三の発明の構成に、前記可撓管の反挿入方向への移動に伴い移動した緊締リングを可撓管の挿入方向へ移動不能に係止する仮止め部を、該緊締リングに前記キャップへ向けて形成した構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、緊締リングの内周面に、可撓管の先端外周のみと対向接触する掛止部を周方向へ設けることにより、この可撓管の先端形状が斜め又は凹凸になるなどの切断ミスがあって、その先端外周と該掛止部との不接触箇所が存在する時には、可撓管の反挿入方向への移動に伴い、上記掛止部と可撓管の外周面との圧着が解除されて、そのまま可撓管が引き抜き可能となる。
従って、先端形状が不良の可撓管を接続不能として簡単に排除することができる。
その結果、切断ミスなどで先端形状が不良の可撓管も接続される従来のものに比べ、可撓管の先端形状不良を原因とする可撓管の抜けと流体の漏れを確実に防止できる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、掛止部を緊締リングの周方向へ断続的に適宜間隔毎に複数配置することにより、可撓管の先端外周と複数の掛止部とが周方向へ適宜間隔毎に対向し、これらの接触箇所が所定数未満の時には、可撓管の反挿入方向への移動に伴い、掛止部と可撓管の外周面とが摺動して両者による圧着が解除される。
従って、可撓管の先端全周の形状不良を簡易に検出して先端形状が不良の可撓管を引き抜き可能にすることができる。
その結果、可撓管の先端形状の不良検出構造を簡素化できて、製造コストの低減化が図れる。
【0009】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の効果に加えて、可撓管の反挿入方向への移動に伴う緊締リングの逆移動で、その内周の掛止部が可撓管の外周面に圧着して可撓管を移動不能に接続すると共に、該緊締リングの目印部がキャップの開口から外へ突出して目視可能となる。
従って、目印部の露出により可撓管の接続完了を目視で確認することができる。
その結果、可撓管に対する緊締リングの押圧状況を外からは見ることができない従来のものに比べ、作業者は可撓管の接続作業が完了したことを目視で確認できるから、安心して作業が完了できて、接続不良などの事故の発生を防ぐことができる。
更に、目印部の突出動を目視により確認するだけで、可撓管の切断ミスの有無及び切断ミスの程度を容易に識別でき、先端形状の不良な可撓管を簡単に見分けることができる。 このため、先端形状の不良な可撓管を即座に引き抜いて、切断ミスの無い先端形状の正常な可撓管に接続し直すことができるから、作業性に優れる。
【0010】
第四の発明は、第三の発明の効果に加えて、可撓管の反挿入方向への移動に伴って緊締リングの移動することにより、該緊締リングの仮止め部をキャップに対して可撓管の挿入方向へ移動不能に係止され、その後に可撓管が挿入方向へ押し込まれても該仮止め部の係止で目印部がキャップ内へ入り込まず、緊締リングの内周の掛止部が可撓管の外周面に圧着し続ける。
従って、緊締リングの戻り移動に伴う可撓管の抜けを完全に防止することができる。
その結果、緊締リングに振動などの衝撃が作用すると、バネ弾性部を弾性変形して緊締リングが可撓管が挿入方向へ移動する可能性がある従来のものに比べ、緊締リングなどに振動などの衝撃が発生したり、可撓管が例えば樹脂製で経時変化によって可撓管の圧着部分に永久歪(クリープ)が発生しても可撓管が抜ける虞がなく、長期に亘って接続保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の管継手Aの実施形態は、図1〜図7に示す如く、可撓管Bの接続端部が差し込まれるニップル1と、このニップル1の外周面1aに可撓管Bの接続端部を挟んで反対側に配置される緊締リング2と、この緊締リング2を可撓管Bの挿入方向(以下「管挿入方向」という、図1,3では左方向)へ往復動自在に案内するキャップ3と、該緊締リング2に取り付けられる掛止部4とから構成される。
これらニップル1と緊締リング2との間に挿入された可撓管Bを、その管挿入方向と逆方向(以下「反挿入方向」という、図1,3では右方向)へ移動させることで、この緊締リング2がキャップ3の内周面3a沿いに反挿入方向へ移動して可撓管Bを径方向へ締め付け、それにより該緊締リング2の内周の掛止部4が可撓管Bの外周面B1に圧着して可撓管Bを移動不能に接続するものである。
【0012】
上記ニップル1は、例えば真鍮などの金属や硬質合成樹脂などの硬質材料で形成されており、例えばチューブやホースなどの可撓管Bの内径と略同じか又はそれよりも若干大きい外径を有する円筒状に形成するか、或いは例えばステンレスなどの変形可能な剛性材料からなる板材をプレス加工やその他の成形加工することで肉厚が薄い円筒状に形成される。
【0013】
このニップル1の外周面1aには、後述する緊締リング2の内周面2aと対向して周方向へ延びる環状凹部1bを形成し、この環状凹部1b内に弾性変形可能な環状シール材1cを嵌入して軸方向へ移動不能に保持すると共に、該環状シール材1cの外周端をニップル外周面1aから突出して、可撓管Bの内周面B2に圧接させる。
【0014】
上記環状シール材1cは、図1(a),3(a)及び図5に示す如く、可撓管Bの挿入や反挿入方向への移動に伴って該環状シール材1cが位置ズレし難くなるように、該環状シール材1cの表面が管挿入方向と反挿入方向へ断面山形状に傾斜して突出させることが好ましい。
【0015】
また、このニップル外周面1aの反挿入方向先端の開口端部は、反挿入方向へ徐々に小径となるテーパー状に傾斜させることが好ましい。
これと反対の管挿入方向基端側には、挿入された可撓管Bの切断面B3と対向する管突き当たり面1dと、後述する緊締リング2の管挿入方向基端面と対向するリング突き当たり面1eを形成している。
【0016】
この緊締リング2は、例えばポリアセタール樹脂やそれ以外の表面の滑り性と耐熱性に優れた合成樹脂などの弾性変形可能な材料で形成されており、可撓管Bの外径よりも大きい内径を有する略円筒状に形成され、その内周面2aを上記ニップル1の外周面1aと略平行にして後述する掛止部4を設けることにより、可撓管Bの外周面B1との摩擦抵抗を大きくし、それにより、可撓管Bの移動に伴って緊締リング2が連動し易くなるようにしている。
【0017】
上記緊締リング2の外周面2bの一部又は略全体は、反挿入方向へ向けて徐々に小径となるテーパー状に傾斜させて、後述するキャップ3の内周面3aと略平行に対向するようにしている。
【0018】
また、上記緊締リング2には、図1(a),3(a)及び図5に示す如く、その開口端から管挿入方向及び反挿入方向のどちらか一方又は両方向へ延びるすり割り2cを周方向へ複数切欠形成して、径方向へ弾性変形し易くしている。
【0019】
そして、上記緊締リング2の反挿入方向の先端外周には、可撓管Bの反挿入方向への移動に伴って、後述するキャップ3の先端開口3bから外へ突出する目印部2dを設け、それに加えて緊締リング2の外周には、該緊締リング2を管挿入方向及び必要に応じて反挿入方向へ移動不能に係止するための仮止め部2eが後述するキャップ3との間に形成される。
【0020】
更に、上記緊締リング2の反挿入方向の先端内周には、その先端縁から挿入方向へ徐々に小径となる逆テーパー部2fを形成することにより、可撓管Bを挿入し易くすることが好ましい。
【0021】
上記キャップ3は、上記可撓管Bの外径よりも大きい内径を有する略円筒状に形成され、上記緊締リング2の締め付け手段として、その内周面3aの一部又は略全体を、反挿入方向先端へ向けて徐々に小径となるテーパー状に傾斜させ、この内周テーパー面3aに沿って上記緊締リング2を反挿入方向へ移動させることにより、該緊締リング2の外周面2bが径方向へ締め付けられて縮径変形するようにしている。
【0022】
上記キャップ3の反挿入方向先端に開口する先端開口3bは、上記緊締リング2の目印部2dの外径よりも若干大径に形成される。
この先端開口3bの近く又はキャップ3の内周の適宜位置には、該目印部2dがキャップ3の先端開口3bから外へ突出した時に、上記緊締リング2の仮止め部2eと係合して該緊締リング2を管挿入方向へ移動不能に保持する戻り防止用の係止部3cが形成され、これに加えて該緊締リング2を反挿入方向へ移動不能に保持する突出移動防止用の係止部3dを形成することが好ましい。
【0023】
また、上記緊締リング2の内周面2aに形成する掛止部4は、挿入される可撓管Bの先端外周のみと対向接触するように周方向へその軸線と直交する同一平面上に設け、該可撓管Bの先端形状に応じて、その先端外周と上記掛止部4との不接触箇所が無い時には、可撓管Bの反挿入方向への移動により該緊締リング2を同方向へ連動させて、掛止部4が可撓管Bの外周面B1に圧着し、また不接触箇所が存在する時には、掛止部4と可撓管Bの外周面B1との圧着を解除するような設定配置としている。
【0024】
その具体例として、この掛止部4を上記緊締リング2の周方向へ適宜間隔毎に複数配置し、これら複数の掛止部4のうち所定数以上が可撓管Bの先端外周に接触した時には、それらの摩擦抵抗で、可撓管Bの反挿入方向への移動により緊締リング2を同反挿入方向へ連動させて、掛止部4が可撓管Bの外周面B1に圧着し、また所定数未満の掛止部4のみが可撓管Bの先端外周に接触した時には、それらの摩擦抵抗が減少するため、各掛止部4と可撓管Bの外周面B1とを摺動させて両者の圧着を解除するような設定配置とすることが好ましい。
【0025】
その他の例として、この掛止部4を上記緊締リング2の周方向へ環状に形成し、これら環状の掛止部4と可撓管Bの先端外周との接触面積が所定量以上の時には、可撓管Bの反挿入方向への移動により緊締リング2を同反挿入方向へ連動させて、掛止部4が可撓管Bの外周面B1に圧着し、また接触面積が所定量未満の時には、該掛止部4と可撓管Bの外周面B1とを摺動させるなどして両者の圧着を解除するような設定配置とすることも可能である。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例1は、図1〜図5に示す如く、前記ニップル1が肉厚の厚い円筒体で、その管挿入方向基端側に前記管突き当たり面1d及びリング突き当たり面1eが形成される環状凸部1fを略全周に亘って設け、この環状凸部1fの外周面に前記キャップ3の基端内周面3eを螺着することで、管挿入方向及び反挿入方向へ移動不能に取り付けると共に、このニップル1の末端には、他の機器の管接続口(図示せず)に接続するための接続具5が連設される場合を示すものである。
【0027】
更に、前記管突き当たり面1d及びリング突き当たり面1eの近くには、作動確認用の貫通孔3fを前記キャップ3に開穿し、この貫通孔3fを通して前記可撓管B及び前記緊締リング2の挿入位置を確認可能にしている。
【0028】
また、前記緊締リング2の目印部2dの近くに仮止め部2eを環状に凸設し、この仮止め部2eと係合して該緊締リング2を管挿入方向へ移動不能に保持する戻り防止用の係止部3cを、前記キャップ3の先端開口縁に凹設し、これに加えて該緊締リング2を反挿入方向へ移動不能に保持する突出移動防止用の係止部3dが、前記キャップ3の先端開口縁から管挿入方向へ少し離れて凹設されている。
【0029】
そして、前記緊締リング2の内周面2aに形成する掛止部4が、その径方向へ移動自在に一体形成した押圧凸状爪4aと、該内周面2aから前記可撓管Bの反挿入方向へ向け斜めに突出する薄板状爪4bとで構成される場合を示している。
【0030】
この押圧凸状爪4aは、その周囲に切り欠き4cを形成すると共に上記テーパー状外周面2bの内側に配置することで弾性変形可能にし、該押圧凸状爪4aの先端内周を鋭角状に尖らせることが好ましく、周方向へ等間隔毎に少なくとも3つ以上、図示例の場合には図5に示すように4つ配置している。
【0031】
上記薄板状爪4bは、金属板などの弾性変形可能な材料で形成された環状体4dの内周に突出するように一体形成され、この薄板状爪4bを周方向へ等間隔毎に上記押圧凸状爪4aよりも多い数、図示例の場合には図5に示すように10つ配置している。
【0032】
また、前記接続具5は、斯かる管継手Aに接続する他の機器の管接続口の内周面に内ネジ部が刻設される場合には、これと対応する外ネジ部5aを刻設し、また該管接続口の外周面に外ネジ部が刻設される場合には、これと対応する内ネジ部を刻設している。
【0033】
図示例の場合には図5に示すように上記ニップル1が、円筒材料を例えば切削加工などで削り出した切削品であり、その管挿入方向基端部には、前記接続具5として外ネジ部5aが刻設されたナットを一体形成している。
【0034】
次に、斯かる管継手Aの管接続方法を工程順に従って説明し、それにより得られる作用効果についても説明する。
先ずは、図1(a)及び図2(a)に示す如く、その切断面B3が略垂直に切断された先端形状の正常な可撓管Bを接続する場合について説明する。
【0035】
このような先端形状の正常な可撓管Bを、ニップル1の外周面1aと緊締リング2の内周面2aとの間に区画形成された挿入空間Sへ向けて差し込むと、図1(b)及び図2(b)に示す如く、緊締リング2に当接してから上記掛止部4の内周に押圧凸状爪4aと薄板状爪4bに順次当接し、そのまま直進して、該可撓管Bの切断面B3が上記管突き当たり面1dに当接して止まる。
【0036】
この可撓管Bと接触した緊締リング2も管挿入方向へ押し込まれるが、図示例の場合には、可撓管Bが挿入される前の時点で該緊締リング2の仮止め部2eとキャップ3の突出移動防止用係止部3dとの係合により、該緊締リング2の管挿入方向基端面が上記リング突き当たり面1eに当接しているため、この時に管挿入方向へ押し込まれることはない。
【0037】
また、緊締リング2の仮止め部2eとキャップ3の突出移動防止用係止部3dとの係合により、キャップ3に対して緊締リング2が反挿入方向へ移動不能に保持されるため、ニップル1に対する緊締リング2及びキャップ3の組立時に該緊締リング2が反挿入方向へ位置ズレすることなく定位置にセットされ、組立作業が容易になるという利点がある。
特に、この組立状態で図示例の如く緊締リング2の管挿入方向基端面を上記ニップル1のリング突き当たり面1eに当接させた場合には、可撓管Bの挿入に伴って該緊締リング2が管挿入方向へ位置ズレしないため、可撓管Bを確実に挿入し接続できる。
【0038】
その後、図1(c)及び図2(c)に示す如く、可撓管Bを逆の反挿入方向へ若干引き戻し移動すると、最初に上記掛止部4の薄板状爪4bの全てが可撓管Bの外周面B1に食い込むと共に、上記掛止部4の押圧凸状爪4aの全てが可撓管Bの外周面B1に当接するため、それらの摩擦抵抗によって緊締リング2も同方向へ連動して反挿入方向へ逆移動し、そのテーパー状外周面2bがキャップ3のテーパー面3aに沿って摺動する。
それにより、上記押圧凸状爪4aの外周が徐々に縮径されて、該押圧凸状爪4aの全てが可撓管Bの外周面B1に圧着して、これら緊締リング2及び掛止部4と可撓管Bが一体化され、可撓管Bを引き戻し移動不能に接続する。
【0039】
図示例では、これら押圧凸状爪4aの先端内周に形成された鋭角状凸部を、可撓管Bの外周面B1に圧接させることで、その圧接部分のみが部分的に圧縮変形している例を示しているが、押圧凸状爪4aの先端形状や可撓管Bの弾性などによって圧縮変形の形状は異なる。
【0040】
その後、更に可撓管Bを反挿入方向へ引き戻し移動すると、上記緊締リング2の反挿入方向の先端外周に設けられた目印部2dが、キャップ3の先端開口3bから外へ突出して、該緊締リング2全体の位置が目視により確認可能となる。
それにより、緊締リング2の内周面2aの掛止部4とニップル1の外周面1aとの間に可撓管Bが更に挟圧着されて緊密に定着保持し続ける。
【0041】
そして、上記緊締リング2の仮止め部2eが、キャップ3の戻り防止用の係止部3cと係合して、該緊締リング2全体が管挿入方向へ移動不能に保持される。
それにより、その後は可撓管Bを誤って管挿入方向へ押したり、振動などの衝撃が発生しても、緊締リング2が管挿入方向へ移動してキャップ3内へ再挿入されず、その結果として可撓管Bに対する保持力に弛みが発生しない。
【0042】
更に、この状態では、緊締リング2の目印部2dがキャップ3の先端開口3bから突出し、その飛び出し状態が戻り防止用の係止部3cで保持されるため、この状況を作業者が見るだけで、可撓管Bの接続作業が完了したことを目視により確認できる。
【0043】
また、キャップ3のテーパー面3aで縮径された緊締リング2の内周面2aにより、可撓管Bの内周面B2がニップル1の外周面1aに圧着されるため、可撓管Bの内周面B2の中でもニップル1の外周面1aから突出する環状シール材1cと対向する部分は、他の部分よりも強く圧縮するため、より多く圧縮変形して、シール強度が高くなる。
【0044】
次は、図3(a)及び図4(a)に示す如く、その切断面B3′が軸線に対して傾斜したり凹凸になるように切断された先端形状の不良な可撓管B′を接続する場合について説明する。
このような先端形状の不良な可撓管B′を、上記ニップル1と緊締リング2との間に区画形成された挿入空間Sへ向けて差し込むと、図3(b)及び図4(b)に示す如く、該可撓管B′は緊締リング2には当接するものの、その先端形状の不良により一部が、上記掛止部4の内周に押圧凸状爪4aと薄板状爪4bのうちいくつかしか当接しない。
この先端形状の不良な可撓管B′をそのまま更に差し込むと、その切断面B3′の先端の一部のみが上記管突き当たり面1dに当接して止まる。
【0045】
しかし、この先端形状の不良な可撓管B′の外周面B1′は、上記掛止部4の内周に押圧凸状爪4aと薄板状爪4bのうちいくつかしか当接していないため、その後、図3(c)及び図4(c)に示す如く、先端形状の不良な可撓管B′を逆方向へ引き戻しても、その外周面B1′と上記押圧凸状爪4a及び薄板状爪4bとの摩擦抵抗が不足して引っ掛からず、滑り抜けてしまう。
【0046】
それにより、この先端形状の不良な可撓管B′と連動せず緊締リング2は逆移動しないため、その反挿入方向の先端外周に設けられた目印部2dは、キャップ3の先端開口3bから外へ突出せずに該キャップ3内に止まり、そのまま先端形状の不良な可撓管B′はニップル1の外周面1aから抜けてしまう。
従って、先端形状の不良な可撓管B′を簡単に識別できる。
【0047】
更に、この先端形状の不良な可撓管B′は、そのまま抜かずにキャップ3内に止め置いても、上述した先端形状の正常な可撓管Bの接続状態に比べて、その内周面B2′とニップル外周面1aとの接触面積が不足するため、該可撓管B′が抜け易くなるだけでなく、可撓管B′の内周面B2′とニップル外周面1aとの間から流体が漏れ易くなる。
【0048】
従って、緊締リング2の目印部2dがキャップ3の先端開口3bから突出するか否かを目視により確認するだけで、可撓管Bの先端形状に切断ミスがあったか否かを容易に識別できると共に、切断ミスの程度が許容範囲内であるか否かを容易に識別できる。
このため、先端形状の不良な可撓管B′を簡単に見分けることができ、この切断ミスがあった先端形状の不良な可撓管B′を即座に引き抜いて、切断ミスのない先端形状の正常な可撓管Bに接続し直すことができるから、作業性に優れるという利点もある。
【実施例2】
【0049】
この実施例2は、図6〜7に示す如く、前記ニップル1の末端に接続具5を設けるのに代えて、その軸方向両側に前記緊締リング2とキャップ3を夫々逆向きに一対ずつ設けることにより、2本の可撓管Bを接続する中間継手とした構成が、前記図1〜図5に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図5に示した実施例1と同じものである。
従って、図6〜7に示す実施例2も上述した実施例1と同様な作用効果が得られる。
【0050】
尚、前示実施例では、前記ニップル1が肉厚の厚い円筒体である場合を示したが、これに限定されず、ニップル1を例えばプレス加工などで肉厚の薄い円筒体に成形加工しても良い。
更に、前記掛止部4が押圧凸状爪4aと薄板状爪4bとで構成される場合を示したが、これに限定されず、前記緊締リング2の内周面2aに掛止部4として管挿入方向へ適宜間隔毎に複数個、凹凸形状となるように形成しても良い。
また、前記ニップル1にキャップ3を螺着することで移動不能に取り付ける場合を示したが、これに限定されず、これらニップル1とキャップ3を接着するなど、公知の固着手段で一体化しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の管継手の一実施例を示す縦断正面図であり、(a)が先端が略垂直な切断面の正常な可撓管を接続する前の状態を示し、(b)が接続中の状態を示し、(c)が接続後の状態を示している。
【図2】同接続工程の一部切欠斜視図である。
【図3】(a)が先端が傾斜したり凹凸のある切断面の異常な可撓管を接続する前の状態を示し、(b)が接続中の状態を示し、(c)が接続後の状態を示している。
【図4】同接続工程の一部切欠斜視図である。
【図5】要部の部分拡大斜視図である。
【図6】本発明の管継手の他の実施例を示す縦断正面図であり、(a)が接続前の状態を示し、(b)が接続中の状態を示し、(c)が接続後の状態を示している。
【図7】同接続工程の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
A 管継手 1 ニップル
1a 外周面 1b 環状凹部
1c 環状シール材 1d 管突き当たり面
1e リング突き当たり面 1f 環状凸部
2 緊締リング 2a 内周面
2b 外周面 2c すり割り
2d 目印部 2e 仮止め部
2f 逆テーパー部 3 キャップ
3a 内周面(テーパー面) 3b 開口(先端開口)
3c 戻り防止用の係止部 3d 突出移動防止用の係止部
3e 基端内周面 3f 貫通孔
4 掛止部 4a 押圧凸状爪
4b 薄板状爪 4c 切り欠き
4d 環状体 5 接続具
5a 外ネジ部 B,B′ 可撓管
B1,B1′ 外周面 B2,B2′ 内周面
B3,B3′ 切断面 S 挿入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップル(1)と、これに対向して周設された緊締リング(2)との間に可撓管(B)を挿入し、この緊締リング(2)をキャップ(3)のテーパー面(3a)に沿って反挿入方向へ移動させることにより、該緊締リング(2)の内周の掛止部(4)が可撓管(B)の外周面(B1)に圧着して可撓管(B)を移動不能に接続する管継手において、
前記緊締リング(2)の内周面(2a)に、可撓管(B)の先端外周のみと対向接触する掛止部(4)を周方向へ設け、該可撓管(B)の先端形状に応じて、その先端外周と上記掛止部(4)との不接触箇所が存在する時には上記掛止部(4)と可撓管(B)の外周面(B1)との圧着を解除して可撓管(B)が移動可能となることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記掛止部(4)を前記緊締リング(2)の周方向へ断続的に適宜間隔毎に複数配置し、これら複数の掛止部(4)のうち所定数未満が可撓管(B)の先端外周に接触した時には、各掛止部(4)と可撓管(B)の外周面(B1)とを摺動させて可撓管(B)が移動可能となる請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記可撓管(B)の反挿入方向への移動に伴う前記緊締リング(2)の移動でキャップ(3)の開口(3b)から外へ突出する目印部(2d)を該緊締リング(2)に設けた請求項1または2記載の管継手。
【請求項4】
前記可撓管(B)の反挿入方向への移動に伴い移動した緊締リング(2)を可撓管(B)の挿入方向へ移動不能に係止する仮止め部(2e)を、該緊締リング(2)に前記キャップ(3)へ向けて形成した請求項3記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150407(P2009−150407A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326106(P2007−326106)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000149309)ジョプラックス株式会社 (19)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】