説明

管継手

【課題】単位面積当たりのシール面の面圧を上げてシール性能をより一層確実に向上させることにある。
【解決手段】流体通路となる貫通孔12が軸線B方向に沿って設けられた継手ボデイ16と、前記継手ボデイ16にチューブ20を接続するナット部材22と、前記継手ボデイ16の開口部24に嵌挿され、チューブ20に挿入される挿入部36と前記チューブ20の一端部から突出する膨出部38とを有するインサートブッシュ26とを備え、前記膨出部38には、開口部24の内壁面に線状に接触してシール機能を営む第1突起部46a〜46cが形成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管材を流体圧機器に液密または気密に接続することが可能な管継手に関する。
【0002】
【従来の技術】従来技術に係る管継手(例えば、実公平7−20471号公報参照)を図8に示す。
【0003】この管継手1は、管材2の一端部から突出する状態に該管材2の一端部内に圧入し前記管材2の一端部を拡径させるインナリング3と、前記インナリング3を圧入した管材2の押し込み部を挿入するための受口4を一端部に形成した継手本体5とを有する。継手本体5の外周部には雄ねじ6が刻設され、前記雄ねじ6に嵌合する雌ねじ7を介して押輪8が前記継手本体5の一端部に外嵌される。
【0004】この場合、前記受口4の奥部には、管材2の一端部から突出させたインナリング3の内端シール部を前記受口4の奥部に当接させるために該受口4の軸線方向と交差するように形成されたシール部9が設けられ、前記シール部9によってシール性能が確保されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術に係る管継手1のシール部9では、インナリング3の内端シール部と受口4の奥部とが面接触した状態でシールされているため、シール面を押圧する力(圧力)、すなわちシール面の面圧が下がりシール性能が低下するという不都合がある。
【0006】本発明は、前記の不都合を克服するためになされたものであり、単位面積当たりのシール面の面圧を上げてシール性能をより一層確実に向上させることが可能な管継手を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、本発明は、流体通路となる貫通孔が軸線方向に沿って設けられ、少なくとも一端部にねじ部が形成された継手ボデイと、前記ねじ部を介して継手ボデイの一端部に螺合することにより、前記継手ボデイに管材を接続するナット部材と、前記継手ボデイの開口部に嵌挿され、管材に挿入される挿入部と前記管材の一端部から突出する膨出部とを有するインサート部材と、を備え、前記インサート部材の膨出部を形成する外周面は、継手ボデイの開口部の軸線方向に平行に延在し、前記外周面に前記継手ボデイの開口部を形成する内壁面に接触してシール機能を営む環状突起部が該開口部の軸線方向に沿って所定間隔離間して複数形成されることを特徴とする。
【0008】本発明によれば、インサート部材の膨出部に形成された環状突起部が、継手ボデイの開口部の壁面に線状に接触した状態でシールする。この結果、面接触してシールする場合と比較して単位面積当たりのシール面の面圧が上がり、より一層シール性能が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明に係る管継手について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0010】図1において、参照数字10は、本発明の実施の形態に係る管継手を示す。
【0011】この管継手10は、流体通路として機能する貫通孔12が軸線B方向に沿って形成され、両端部の外周面に第1雄ねじ部14aおよび第2雄ねじ部14bが刻設された円筒状の継手ボデイ16と、内周面に刻設された雌ねじ部18を前記第1雄ねじ部14aに螺合させ前記継手ボデイ16の一端部に嵌合することにより、該継手ボデイ16に対しチューブ(管材)20を保持するナット部材22とを有する。
【0012】前記第1雄ねじ部14aが刻設された継手ボデイ16の開口部24には、チューブ20の一端部からその一部が突出した状態でインサートブッシュ(インサート部材)26が嵌挿される。前記継手ボデイ16の開口部24は、一端部から徐々に縮径するテーパ面28と、前記テーパ面28に連続し略同一の直径で形成される円筒面30と、前記円筒面30に対して略直交する奥部平面32と、前記奥部平面32と貫通孔12との間に形成されチューブ20側に向かって所定長だけ突出する環状凸部34とから構成される。この場合、前記円筒面30は、開口部24の軸線B方向に対して実質的に平行となるように形成されている。
【0013】インサートブッシュ26は、外周方向へと膨出することによって断面山形状を呈して環状に形成されチューブ20の一端部の孔部内に挿入される挿入部36と、この挿入部36と一体的に形成されチューブ20の一端部から突出する環状の膨出部38とを含む。前記挿入部36と膨出部38との境界部分には、チューブ20の端縁部が当接する環状段部40が形成され、また、前記膨出部38には、前記継手ボデイ16の環状凸部34を受容するための環状凹部42が設けられる。従って、環状凹部42の断面形状は、前記環状凸部34の断面形状に対応する。
【0014】図2に示されるように、前記膨出部38の外周面である第1面44には、相互に所定間隔離間する3条の第1突起部(環状突起部)46a〜46cが環状に形成され、前記第1突起部46a〜46cは、断面台形状を呈しその平坦な頂面47(図3参照)が継手ボデイ16の円筒面30に線状に接触するように形成される。
【0015】この場合、前記膨出部38の第1面44は、開口部24の軸線B方向と実質的に平行に形成された円筒面30に対して実質的に平行に形成される。換言すると、継手ボデイ16の円筒面30とインサートブッシュ26の第1面44とは、それぞれ開口部24の軸線B方向と実質的に平行となるように形成される。しかも、前記円筒面30に対して線状に接触する前記第1突起部46a〜46cの平坦な頂面47も、前記軸線B方向に対して実質的に平行となるように形成されている。
【0016】また、前記膨出部38には、継手ボデイ16の奥部平面32に対し非接触状態となる第2面48が形成され、膨出部38の前記第2面48と継手ボデイ16の奥部平面32との間で第1クリアランス50が形成される。
【0017】前記膨出部38の環状凹部42は、前記第2面48から所定角度傾斜し、継手ボデイ16の環状凸部34の傾斜面52に当接する第3面54と、前記第3面54から延在し環状凸部34の頂部との間で第2クリアランス56を形成する第4面58と、環状凸部34の壁面60と非接触状態に形成され開口部24の軸線B方向に対して実質的に平行となるように形成された第5面64と、前記第5面64に連続し端縁部を形成する第6面66とから構成される。なお、前記膨出部38の第6面66と環状凸部34の裾部との間で第3クリアランス72が形成される。
【0018】従って、膨出部38の外周部に形成された第1面44と、前記第1面44に形成された第1突起部46a〜46cの頂面47と、該膨出部38の環状凹部42に形成された第5面64とは、それぞれ、開口部24の軸線B方向と実質的に平行に設けられており、前記軸線B方向と交差状に設けられていない。
【0019】継手ボデイ16に設けられた環状凸部34の傾斜面52には、図4および図5に示されるように、前記第1クリアランス50と第2クリアランス56とを連通させる複数の溝部68a〜68cが形成され、前記複数の溝部68a〜68cは、所定角度離間し半径方向に沿って放射状に延在するように形成される。
【0020】ナット部材22には、矢印D方向に撓曲自在に形成されたチューブ押圧部70が形成され、該ナット部材22のねじ込み量を増加させることにより、チューブ押圧部70が矢印D方向に撓曲し、インサートブッシュ26とチューブ押圧部70との間でチューブ20が液密に挟持される。
【0021】この場合、継手ボデイ16、ナット部材22およびインサートブッシュ26は、樹脂製材料によって形成されると好適である。
【0022】なお、インサートブッシュ26の第1面44に形成された第1突起部46a〜46cは、2以上の複数であればよく、3条に限定されるものではない(図7R>7参照)。
【0023】また、図6に示されるように、インサートブッシュ26の環状凹部42の第5面64には、継手ボデイ16の環状凸部34の壁面60に対して線状に接触することが可能な2条の第2突起部62a、62bを設け、あるいは、図7に示されるように、前記第2突起部62a、62bを設けることなく前記第5面64を平坦に形成されたインサートブッシュ26aを用いてもよい。なお、図6、図7に示すように、第2突起部62a、62bおよび平坦な第5面64は、いずれも開口部24の軸線B方向と実質的に平行に延在している。
【0024】この場合、前記環状凹部42の第2突起部62a、62bの頂面と環状凸部34の壁面60とは非接触状態にあり、貫通孔12内を流通する圧力流体の作用下に前記第2突起部62a、62bが矢印E方向に押圧されて該第2突起部62a、62bが環状凸部34の壁面60に線状に接触することにより、環状凹部42内に圧力流体が進入することが阻止される(図6並びに図7R>7参照)。なお、前記第2突起部62a、62bは、第1突起部46a〜46cと同様に、断面台形状に形成される。
【0025】本実施の形態に係る管継手10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0026】まず、チューブ20の一端部の孔部内にインサートブッシュ26の挿入部36を嵌挿し、前記チューブ20の一端部に環状段部40が当接するまで前記インサートブッシュ26を圧入する。この結果、チューブ20の一端部が挿入部36の形状に沿って拡径し、チューブ20の内周面と挿入部36の外周面とが液密に保持される。
【0027】続いて、インサートブッシュ26が圧入されたチューブ20の一端部を継手ボデイ16の開口部24に沿って挿入するとともに、予め、チューブ20に遊嵌されているナット部材22の雌ねじ部18を継手ボデイ16の第1雄ねじ部14aに沿って螺回させ、前記ナット部材22を締め付けることにより、チューブ20が継手ボデイ16の開口部24内に液密に保持される。
【0028】すなわち、ナット部材22を締め付けることによりチューブ押圧部70を介してチューブ20と一体的にインサートブッシュ26が継手ボデイ16の開口部24の奥側に向かって押圧され、前記チューブ20およびインサートブッシュ26は、前記インサートブッシュ26の第3面54と継手ボデイ16の環状凸部34の傾斜面52とが当接するまで挿入される。この場合、継手ボデイ16の環状凸部34の傾斜面52がインサートブッシュ26の変位部位の終端を規制するストッパとして機能する。
【0029】前記インサートブッシュ26が軸線B方向に沿って押圧されて変位部位の終端まで到達することにより、該インサートブッシュ26の環状凹部42を形成する傾斜面、すなわち第3面54と継手ボデイ16の環状凸部34の傾斜面52とが係合し、図1に示す状態に至る。この場合、拡径したチューブ20の形状に対応してチューブ押圧部70が半径外方向(矢印D方向)に撓曲し、前記チューブ押圧部70が原形状に復帰しようとする力によってチューブ20がインサートブッシュ26側に押圧される。
【0030】図1に示す状態において、継手ボデイ16に対するチューブ20の接続部位は、インサートブッシュ26の第1突起部46a〜46cの頂面47が継手ボデイ16の円筒面30に線状に接触してシール機能を営む第1シール部と、継手ボデイ16のテーパ面28がチューブ20をインサートブッシュ26側に押圧することによりシール機能を営む第2シール部と、チューブ押圧部70によってチューブ20をインサートブッシュ26側に押圧することによりシール機能を営む第3シール部とによって液密に保持される。
【0031】なお、インサートブッシュ26によってシールされる第1シール部は、継手ボデイ16の開口部24の軸線B方向と実質的に平行に設けられており、前記軸線B方向と交差状に設けられていない。従って、シール構成をここで考慮する必要がなく、結果的に構造が簡素化し、しかも、インサートブッシュ26の挿着、抜脱が容易で、成形型の形状も簡素化することになる。
【0032】この結果、前記第1シール部、第2シール部および第3シール部がそれぞれ共働することにより、継手ボデイ16に対するチューブ20の接続部位が液密に保持される。
【0033】その際、インサートブッシュ26を構成する膨出部38の第2面48と開口部24の奥部平面32とが接触することがなく、前記第2面48と奥部平面32との間で第1クリアランス50が形成される(図2参照)。また、膨出部38の第4面58と環状凸部34の頂部とが接触することがなく、前記第4面58と環状凸部34の頂部との間で第2クリアランス56が形成される(図2参照)。さらに、膨出部38の第5面64と環状凸部34の壁面60とが非接触状態に形成されるとともに、膨出部38の第6面66と環状凸部34の裾部との間で第3クリアランス72が形成される。さらにまた、インサートブッシュ26の第3面54と継手ボデイ16の環状凸部34の傾斜面52とは当接するが、前記傾斜面52に形成された溝部68a〜68cによって第1クリアランス50と第2クリアランス56とが連通状態となる。従って、インサートブッシュ26の膨出部38と継手ボデイ16の開口部24との間において、第1突起部46a〜46cが線状に接触してシールされているのみであり、他の部位ではシールされていない。この結果、第1突起部46a〜46cの単位面積当たりのシール力が向上する一方、他の部位でシール構造を考慮する必要がないため、より一層構造が簡素化する。
【0034】また、インサートブッシュ26の第3面54に環状凸部34の傾斜面52が当接することにより、前記第3面54を矢印方向に押圧する力が作用し、前記押圧力によって第1突起部46a〜46cを開口部24の円筒面30に向かって押圧する力Fが働く(図6参照)。この結果、第1突起部46a〜46cが前記円筒面30側に押圧されることにより、確実にシールされるとともにシール性能を向上させることができる。
【0035】また、本実施の形態では、インサートブッシュ26と継手ボデイ16とのシール部位を面接触させることなく線状に接触させるように形成することにより、接触面積を減少させ、圧力流体の作用下に前記シール部位を押圧する力、すなわち、シール面の面圧が上がって、より一層確実にシール性能を向上させることができる。
【0036】さらに、本実施の形態では、前記継手ボデイ16の環状凸部34の傾斜面52に溝部68a〜68cを設けることにより、インサートブッシュ26の第3面54に当接する傾斜面52の接触面積を減少させて接触抵抗を小さくすることができる。また、インサートブッシュ26を挿入する際に、該インサートブッシュ26と継手ボデイ16の開口部24との間に残留する圧力流体を前記溝部68a〜68cを通じて円滑に逃がすことができる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0038】すなわち、継手ボデイの開口部とインサート部材とを線状に接触させた状態でシールすることにより、面接触してシールする場合と比較してシール部分の単位面積当たりの面圧が上がり、より一層確実にシール性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る管継手の軸線方向に沿った縦断面図である。
【図2】図1に示すA部の拡大図である。
【図3】図2に示す第1突起部の一部省略拡大図である。
【図4】図1に示す管継手の一端部の拡大図である。
【図5】図4の矢印C方向からみた矢視図である。
【図6】図2に示すインサートブッシュの変形例を示す一部省略拡大図である。
【図7】図2に示すインサートブッシュの変形例を示す一部省略拡大図である。
【図8】従来技術に係る管継手を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10…管継手 12…貫通孔
16…継手ボデイ 20…チューブ
22…ナット部材 24…開口部
26、26a…インサートブッシュ 28…テーパ面
30…円筒面 32…奥部平面
34…環状凸部 36…挿入部
38…膨出部 42…環状凹部
44、48、54、58、64、66…面
50、56、72…クリアランス 52…傾斜面
68a〜68c…溝部 70…チューブ押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】流体通路となる貫通孔が軸線方向に沿って設けられ、少なくとも一端部にねじ部が形成された継手ボデイと、前記ねじ部を介して継手ボデイの一端部に螺合することにより、前記継手ボデイに管材を接続するナット部材と、前記継手ボデイの開口部に嵌挿され、管材に挿入される挿入部と前記管材の一端部から突出する膨出部とを有するインサート部材と、を備え、前記インサート部材の膨出部を形成する外周面は、継手ボデイの開口部の軸線方向に平行に延在し、前記外周面に前記継手ボデイの開口部を形成する内壁面に接触してシール機能を営む環状突起部が該開口部の軸線方向に沿って所定間隔離間して複数形成されることを特徴とする管継手。
【請求項2】請求項1記載の管継手において、インサート部材の軸線方向に沿った膨出部の一端部と継手ボデイの開口部との間には、クリアランスが形成されることを特徴とする管継手。
【請求項3】請求項1記載の管継手において、インサート部材の膨出部の一端部には環状凹部が形成されるとともに、前記環状凹部に対応する環状凸部が継手ボデイの開口部に形成され、前記環状凸部の傾斜面に放射状に延在する複数の溝部が形成されることを特徴とする管継手。
【請求項4】請求項3記載の管継手において、インサート部材の環状凹部には、所定間隔離間し開口部の軸線方向と平行に延在する複数の環状の突起部が形成され、前記複数の環状の突起部は、継手ボデイの環状凸部の壁面に接触することにより、流体通路を流通する圧力流体の前記環状凹部内に対する進入を阻止することを特徴とする管継手。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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