説明

管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法

【課題】従来の管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法は、水平な台の上に筐体20を載せてミスアライメントを計測しているが、完全に水平な台を形成することは困難であるので、計測したミスアライメントに誤差が含まれており、孔の経路計測精度が低くなっている。
【解決手段】本発明による管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法は、ロール角φが0°となるように筐体20の傾きを調整しつつ、ブロック30上に筐体20を載置し、方位角ψが互いに180°異なる状態での第1及び第2ピッチ角を演算部に記憶させるとともに、第1及び第2ピッチ角の平均値を求めさせることで、該第1及び第2ピッチ角に含まれていた水平に対する誤差を相殺し、Y軸周りのミスアライメントεを得る構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法に関し、特に、水平に対して所定角度だけ筐体が傾いた位置で、前記筐体の方位角(ψ)を180°変化させ、前記方位角(ψ)が互いに180°異なる状態での各ピッチ角(θ)の平均値を求めることにより、該ピッチ角(θ)に含まれていた水平に対する誤差を相殺し、筐体及びセンサボックスのX軸間のミスアライメントを得ることで、ミスアライメントの計測精度を向上でき、孔の経路計測精度を向上できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の管路位置計測装置としては、最近社内開発し公開公報として公開されていないため特許文献等は開示していないが、図6及び図7に示すように構成されている。図6は従来の管路位置計測装置を示す構成図であり、図7は図6の管路位置計測装置によって計測された孔の経路を示す構成図である。図において、掘削された孔1の中にはプローブ2が移動自在に挿入されており、このプローブ2は、例えばドリル状や、車輪を有する箱状等の筐体20と、該筐体20内に固定配置されたセンサボックス21とから構成されている。前記センサボックス21には、ケーブル巻取器3に巻き取られるように構成されたケーブル4が接続されており、このケーブル4はケーブル中継器5及びケーブル測長器6を介して移動自在に構成されている。前記センサボックス21は、図示はしていないが角速度計、加速度計、及び温度センサ等から構成されており、前記ケーブル4を介して、角速度データ7a、加速度データ7b、及びセンサ温度信号7cを含むデジタル化されたプローブデータ7を出力する。ケーブル測長器6は、前記ケーブル4の移動速度であるケーブル速度8を出力する。これらセンサボックス21及びケーブル測長器6には、例えばCPU、RAM、及びROM等からなる演算部10が接続されており、この演算部10は、前記プローブデータ7及びケーブル速度8の演算処理を行うことで、図7に示すように前記孔1の経路計測を行う。すなわち、演算部10は、前記プローブデータ7に基づいて前記筐体20のピッチ角θ及び方位角ψを求めることで前記筐体20の移動方向を求めるとともに、この移動方向と、前記筐体20の移動速度に相当する前記ケーブル速度8とに基づいて前記孔1の経路計測を行う。なお、演算部10が筐体20の外に配置されている例を示したが、筐体20内に配置されていてもよい。また、プローブデータ7はケーブル4を介して出力されると説明したが、演算部10が筐体20内に配置されている場合には、ケーブル4によって筐体20の移動速度を検出できればよく、ケーブル4が筐体20に接続されていてもよい。
【0003】
ここで、プローブデータ7に基づいて得られる各角度θ,ψは、正確にはセンサボックス21の角度θ,ψであるので、これら角度θ,ψをそのまま利用すると、筐体20とセンサボックス21との間のミスアライメントεにより経路計測に誤差が生じてしまう。従って、筐体20内にセンサボックス21を固定した後に、筐体20とセンサボックス21との間のミスアライメントεを計測する必要がある。そこで従来は、筐体20内にセンサボックス21を固定した後に、水平な台の上に筐体20を載せるとともに筐体20のロール角φを0°として、そのとき求めたピッチ角θをセンサボックス21の左右方向に沿うY軸周りのミスアライメントεとしている。また、筐体20のロール角φを90°として、そのとき求めたピッチ角θをセンサボックス21の上下方向に沿うZ軸周りのミスアライメントεとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法では、水平な台の上に筐体20を載せてミスアライメントεを計測しているが、完全に水平な台を形成することは困難であるので、計測したミスアライメントに誤差が含まれており、孔の経路計測精度が低くなっている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ミスアライメントの計測精度を向上でき、孔の経路計測精度を向上できる管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法は、孔に挿入されるプローブの筐体と、前記筐体内に固定配置されるとともに少なくとも角速度データ及び加速度データを含むプローブデータを出力するセンサボックスと、前記筐体又は前記センサボックスに接続されたケーブルを巻き取るケーブル巻取器と、前記ケーブルのケーブル速度を出力するケーブル測長器と、前記筐体の内又は外に配置されるとともに前記センサボックス及び前記ケーブル測長器に接続され、前記プローブデータに基づいて前記筐体のピッチ角及び方位角を求めるとともに該ピッチ角及び方位角と前記ケーブル速度とに基づいて前記孔の経路計測を行う演算部とを備える管路位置計測装置を用いて、前記筐体の前後方向に沿う第1X軸と前記センサボックスの前後方向に沿う第2X軸との間のミスアライメントを計測する管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法であって、水平に対して第1角度だけ前記筐体が傾いた位置で、前記筐体のロール角を0°とするとともに前記方位角を変化させ、前記演算部に指令信号を入力することで、前記方位角が互いに180°異なる状態での第1及び第2ピッチ角を前記演算部に記憶させる工程と、前記演算部に指令信号を入力することで、前記第1及び第2ピッチ角の平均値を前記演算部に求めさせ、前記第1及び第2ピッチ角に含まれていた前記第1角度を相殺し、前記筐体の左右方向に沿うY軸周りのミスアライメントを得る工程と、前記第1角度と同じ又は異なる第2角度だけ水平に対して前記筐体が傾いた位置で、前記筐体のロール角を90°とするとともに前記方位角を変化させ、前記演算部に指令信号を入力することで、前記方位角が互いに180°異なる状態での第3及び第4ピッチ角を前記演算部に記憶させる工程と、前記演算部に指令信号を入力することで、前記第3及び第4ピッチ角の平均値を前記演算部に求めさせ、前記第3及び第4ピッチ角に含まれていた前記第2角度を相殺し、前記筐体の上下方向に沿うZ軸周りのミスアライメントを得る工程とを含む構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法によれば、第1及び第2ピッチ角の平均値と、第3及び第4ピッチ角の平均値とを求めることで、各ピッチ角に含まれていた水平に対する誤差(第1及び第2角度)を相殺するので、ミスアライメントの計測精度を向上でき、孔の経路計測精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態
本発明の実施の形態による管路位置計測装置の全体としての構成は、従来の構成(図6)と同様であるので、従来例と同一部分は説明を省略し、従来例と異なる部分についてのみ説明する。なお、従来構成と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。この実施の形態の演算部10(図6参照)の動作モードは、孔1の経路計測を行う経路計測モード、及び筐体20の前後方向に沿う第1X軸とセンサボックス21の前後方向に沿う第2X軸との間のミスアライメントεを求めるミスアライメント計測モードで切替可能とされている。この第1及び第2X軸間のミスアライメントεは、筐体20の左右方向に沿うY軸周りのミスアライメントεと、筐体20の上下方向に沿うZ軸周りのミスアライメントεとに分けて考えることができる。これより、管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法について説明するが、まずY軸周りのミスアライメントεの計測方法について説明し、その後にZ軸周りのミスアライメントεの計測方法について説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態による管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法の一場面を示す側面図であり、筐体20のロール角φ及び方位角ψが0°とされている状態を示している。図2は、図1のブロック30を示す正面図である。図に示すように、Y軸周りのミスアライメントεを計測する場合、例えば地面上等に所定間隔を置いて一対のブロック30を設置する。その次に、前記演算部10が前記プローブデータ7に基づいて求めた筐体20のロール角φを参照し、このロール角φが0°となるように筐体20の傾きを調整しつつ、ブロック30に設けられたV字状の溝30a内に筐体20を載置する。その次に、指令信号を演算部10に入力し、この状態での第1ピッチ角θを演算部10に記憶させる。なお、説明を簡単にするために、このときの方位角ψを0°とする。
【0010】
このとき前記筐体20が完全に水平となっていれば、前記第1ピッチ角θがY軸周りのミスアライメントεとなる。しかしながら、筐体20を完全に水平にすることは難しく、例えばブロック30間の高さ誤差や設置された場所の傾斜等に因る水平に対する誤差(第1角度α)が前記第1ピッチ角θに含まれている。すなわち、前記第1ピッチ角θは下記の式(1)のように表される。
θ=ε+α・・・・(1)
【0011】
次に、図3は、図1の筐体20のロール角φが0°とされ方位角ψが180°とされている状態を示す側面図である。前記第1ピッチ角θを演算部10に記憶させた後に、前記ロール角φが0°となるように前記筐体20の傾きを調整しつつ、前後逆向きとなるように筐体20を溝30a内に改めて載置する。すなわち、前記第1ピッチ角θが求められた状態から前記方位角ψを180°だけ変化させ、指令信号を演算部10に入力することで、この状態での第2ピッチ角θを演算部10に記憶させる。
【0012】
ここで、前記第2ピッチ角θには水平に対する誤差(第1角度α)がやはり含まれているが、方位角ψを180°だけ変化させているので、符号が反転した状態で含まれている。すなわち、前記第2ピッチ角θは下記の式(2)のように表される。
θ=ε−α・・・・(2)
【0013】
従って、演算部10に指令信号を入力し、下記の式(3)に示すように前記第1及び第2ピッチ角θ,θの平均値を前記演算部10に求めさせることで、前記第1及び第2ピッチ角θ,θに含まれていた第1角度αを相殺でき、Y軸周りのミスアライメントεを得ることができる。
(θ+θ)/2={(ε+α)+(ε−α)}/2=ε・・・・(3)
【0014】
次に、Z軸周りのミスアライメントεの計測方法について説明する。図4は図3の筐体20のロール角φが90°とされ方位角ψが0°とされている状態を示す側面図であり、図5は図4の筐体20のロール角φが90°とされ方位角ψが180°とされている状態を示す側面図である。Y軸周りのミスアライメントεを計測する場合にはロール角(φ)を0°としていたが、Z軸周りのミスアライメントεを計測する場合にはロール角(φ)を90°とする。すなわち、筐体20を横倒しにすることで方位角(ψ)の中心軸と前記Z軸とを一致させる。
【0015】
その次に、図4,図5に示すように方位角(ψ)が互いに180°異なる状態で演算部10に指令信号を入力し、方位角(ψ)が互いに180°異なる状態での第3及び第4ピッチ角(θ,θ)を演算部10に記憶させる。これら第3及び第4ピッチ角(θ,θ)は、互いに符号が異なる状態で水平に対する誤差(第2角度β)を含んでおり、下記式(4),(5)に示すように表される。
θ=ε+β・・・・(4)
θ=ε−β・・・・(5)
【0016】
従って、前記演算部10に指令信号を入力し、下記の式(6)に示すように前記第3及び第4ピッチ角(θ,θ)の平均値を前記演算部10に求めさせることで、前記第3及び第4ピッチ角(θ,θ)に含まれていた第2角度βを相殺でき、Z軸周りのミスアライメントεを得ることができる。なお、Y軸周りのミスアライメントεを計測したときからブロック30を動かしていなければ、第2角度βは第1角度αと同じである。
(θ+θ)/2={(ε+β)+(ε−β)}/2=ε・・・・(6)
【0017】
前記演算部10は、前記ミスアライメントε,εを求めた後に、該ミスアライメントε,εに基づいて自動的に角度補正値を算出する。また、演算部10は、動作モードが前記経路計測モードとされているときに、前記角度補正値を用いて前記ピッチ角θ及び前記方位角ψを補正し、該補正したピッチ角θ及び方位角ψに基づいて前記孔1の経路計測を行う。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法の一場面を示す側面図である。
【図2】図1のブロックを示す正面図である。
【図3】図1の筐体のロール角φが0°とされ方位角ψが180°とされている状態を示す側面図である。
【図4】図3の筐体のロール角φが90°とされ方位角ψが0°とされている状態を示す側面図である。
【図5】図4の筐体のロール角φが90°とされ方位角ψが180°とされている状態を示す側面図である。
【図6】従来の管路位置計測装置を示す構成図である。
【図7】図6の管路位置計測装置によって計測された孔の経路を示す構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1 孔、2 プローブ、3 ケーブル巻取器、4 ケーブル、6 ケーブル測長器、7 プローブデータ、7a 角速度データ、7b 加速度データ、8 ケーブル速度、10 演算部、20 筐体、21 センサボックス、α,β 第1及び第2角度、ε Y軸周りのミスアライメント、ε Z軸周りのミスアライメント、θ ピッチ角、θ〜θ 第1〜第4のピッチ角、φ ロール角、ψ 方位角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔(1)に挿入されるプローブ(2)の筐体(20)と、前記筐体(20)内に固定配置されるとともに少なくとも角速度データ(7a)及び加速度データ(7b)を含むプローブデータ(7)を出力するセンサボックス(21)と、前記筐体(20)又は前記センサボックス(21)に接続されたケーブル(4)を巻き取るケーブル巻取器(3)と、前記ケーブル(4)のケーブル速度(8)を出力するケーブル測長器(6)と、前記筐体(20)の内又は外に配置されるとともに前記センサボックス(21)及び前記ケーブル測長器(6)に接続され、前記プローブデータ(7)に基づいて前記筐体(20)のピッチ角(θ)及び方位角(ψ)を求めるとともにこれらピッチ角(θ)及び方位角(ψ)と前記ケーブル速度(8)とに基づいて前記孔(1)の経路計測を行う演算部(10)とを備える管路位置計測装置を用いて、前記筐体(20)の前後方向に沿う第1X軸と前記センサボックス(21)の前後方向に沿う第2X軸との間のミスアライメント(ε)を計測する管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法であって、
水平に対して第1角度(α)だけ前記筐体(20)が傾いた位置で、前記筐体(20)のロール角(φ)を0°とするとともに前記方位角(ψ)を変化させ、前記演算部(10)に指令信号を入力することで、前記方位角(ψ)が互いに180°異なる状態での第1及び第2ピッチ角(θ,θ)を前記演算部(10)に記憶させる工程と、
前記演算部(10)に指令信号を入力することで、前記第1及び第2ピッチ角(θ,θ)の平均値を前記演算部(10)に求めさせ、前記第1及び第2ピッチ角(θ,θ)に含まれていた前記第1角度(α)を相殺し、前記筐体(20)の左右方向に沿うY軸周りのミスアライメント(ε)を得る工程と、
前記第1角度(α)と同じ又は異なる第2角度(β)だけ水平に対して前記筐体(20)が傾いた位置で、前記筐体(20)のロール角(φ)を90°とするとともに前記方位角(ψ)を変化させ、前記演算部(10)に指令信号を入力することで、前記方位角(ψ)が互いに180°異なる状態での第3及び第4ピッチ角(θ,θ)を前記演算部(10)に記憶させる工程と、
前記演算部(10)に指令信号を入力することで、前記第3及び第4ピッチ角(θ,θ)の平均値を前記演算部(10)に求めさせ、前記第3及び第4ピッチ角(θ,θ)に含まれていた前記第2角度(β)を相殺し、前記筐体(20)の上下方向に沿うZ軸周りのミスアライメント(ε)を得る工程と
を含むことを特徴とする管路位置計測装置におけるミスアライメント計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−292175(P2008−292175A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135256(P2007−135256)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)