説明

【課題】先受工法において再利用(使い回し)できる管などとして使用可能な管を提供する。
【解決手段】本発明に係る管は、トンネル空洞部から地山に設置されてトンネル空洞部に露出した管を撤去する先受工法において使用する上記管であって、複数の単位管11Aが管の中心Gに沿った方向に連続するように設けられて複数の単位管11Aの端面同士を対向させた管構成体110と、管構成体110における互いに隣り合う個々の単位管の外周面11Hに跨って当該外周面を覆う覆体とを備え、覆体が、管構成体における互いに隣り合う個々の単位管の外周面に跨って設けられて加熱されることにより複数の単位管同士を接続する熱収縮チューブ11Jであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削に先立って切羽前方の地山を補強する先受工法等に使用する管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、軟弱な地盤にトンネルを掘進する際には、トンネル掘削に先立って切羽71前方の地山を補強する地山先受工が行われている。地山先受工の一例としては注入式長尺先受工法がある。この工法は、図13(a)に示すように、切羽71前方の地山50に、トンネル掘削に一般に使用されるドリルジャンボ等の掘削機60を用い、支保工51の背面から5度程度の仰角を付けて複数の鋼製の管52を接続しながら打ち込み、この管52内に図示しない注入管を挿入して地山50内に注入材を注入し、地山50を補強する工法であり、図13(b)に示すように、複数の管52を接続した長尺管53を、切羽天端部に沿って必要な補強の範囲に設置した後、長尺管53内に充填材を充填して補強する。図13(b)に示した上記切羽天端部に沿って必要な補強の範囲を切羽の中心から見た場合の角度範囲は改良範囲θと呼ばれ、当該改良範囲θはほぼ120度である。
長尺管53を設置する際には、図14(a)に示すように、管52内に、先端部に削孔用の拡径ビット13aを備えたロッド13を挿入し、このロッド13の他端側を掘削機60のガイドセル62に搭載された削岩機61に接続し、地山50を削孔しながら管52を地山50内へ挿入する。このとき、3m程度の長さの管52を順次継ぎ足して長尺管53を設置する。また、支保工51を延長して構築するためには、管52の支保工51から下の部分を撤去する必要があることから、撤去作業を容易にするため、図14(b)に示すように、長尺管53の最後端部の管54を、管52に代えて、塩化ビニル管などの破砕し易い樹脂製の管としている(例えば、特許文献1,2参照)。
上述した注入式長尺先受工法では、複数本の管52を継ぎ足して長尺管53としているため、所望の設置角度が得られないなど、長尺管53を精度良く地山50に設置することが困難であるだけでなく、管52,52の接続作業に時間と手間がかかるので、作業効率が悪いといった問題があった。そこで、予め9m程度の長尺管53を準備し、これを地山50内に挿入することも考えられるが、この場合には、長尺管53を地山50に設置するためにストロークの大きな大型の掘削機を準備する必要がある。しかしながら、大型の掘削機は装置が高価で、装備に時間や手間がかかるだけでなく、大型の削岩機を用いて、トンネル空洞部70の横断面となる切羽天端部に沿って長尺管53を多数打設することは、トンネル空洞部70の径がかなり大きな場合を除いては現実的には困難である。
そこで、大型の掘削機を用いることなく、長尺管53を地山50に精度良く設置できるようにするため、本出願人により、トンネル空洞部の切羽とトンネル空洞部の内壁面との境界付近の切羽からトンネル掘削方向に向けて斜め前方にガイド管を設置した後に、ガイド管よりも長尺でかつ径の小さい鋼製の長尺管をガイド管内経由で地山に設置し、ガイド管の内部及び長尺管の内部からガイド管及び長尺管の周囲の地山に注入材を注入してガイド管及び長尺管の周囲の地山を補強する長尺先受工法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−186490号公報
【特許文献2】特開2003−155888号公報
【特許文献3】特開2006−176988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3の発明においては、掘削が進む毎に新しいガイド管を地山50に設置し、長尺管53を設置した後は、支保工51の下に突出するガイド管の端部を切断するなどして撤去し、トンネル掘削の際にはトンネル掘削機でガイド管を破壊しながら掘削する。つまり、ガイド管は使い捨てであるので無駄であり、経済的ではない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、先受工法において再利用(使い回し)できる管などとして使用可能な管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る管は、トンネル空洞部から地山に設置されてトンネル空洞部に露出した管を撤去する先受工法において使用する上記管であって、複数の単位管が管の中心に沿った方向に連続するように設けられて複数の単位管の端面同士を対向させた管構成体と、管構成体における互いに隣り合う個々の単位管の外周面に跨って当該外周面を覆う覆体とを備え、覆体が、管構成体における互いに隣り合う個々の単位管の外周面に跨って設けられて加熱されることにより複数の単位管同士を接続する熱収縮チューブであるので、管の長手方向において単位管を分離しやすく、分離した単位管を再利用して使用可能な管を再構成できる。即ち、先受工法において再利用できる管を提供できるので、経済的な先受工法を実現できる。
熱収縮チューブは、管構成体の外周面全体を覆う熱収縮チューブであることにより、注入材が管の内側から外に漏れるのを確実に防止でき、この管をガイド管としても用いた場合、ガイド管の所定の箇所の周囲に一定量の注入材を確実正確に注入できるようになって好ましい。
単位管が単位管の中心線に沿った分割面により単位管の径方向に複数に分離可能に構成されたので、単位管を径方向に分離しやすく、単位管内の内容物を取り出しやすくなる。
単位管は、径方向に複数に分離された複数の分離部材と、互いに対向する分離部材の分割面間に介在されたパッキンとにより形成されたので、一対の分離部材の分割面と分割面との密封性能が高まり、分離部材の分割面と分割面との間を介する管構成体の内側から外側への流体の漏れを効果的に防止できる。
トンネル空洞部の切羽とトンネル空洞部の内壁面との境界付近の切羽又はトンネル空洞部からトンネル掘削進行方向に沿った直線より徐々に離れるような方向に向けて地山にガイド管を設置した後に、ガイド管よりも径の小さい管をガイド管内経由で地山に設置することにより、トンネル周囲の崩壊を防止する先受工法において、上記ガイド管として使用されるので、上記効果を奏するガイド管を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】管の斜視図(実施形態1)。
【図2】管を分解した状態から組立てた状態までを示す斜視図(実施形態1)。
【図3】長尺先受工法の作業手順の概要を示す模式図(実施形態1)。
【図4】ガイド管の設置方法を示す図(実施形態1)。
【図5】長尺管の設置方法を示す図(実施形態1)。
【図6】長尺管の設置方法を示す図(実施形態1)。
【図7】注入材の注入方法を示す図(実施形態1)。
【図8】ガイド管の分離方法を示す図(実施形態1)。
【図9】管の斜視図(実施形態2)。
【図10】管の斜視図及び断面図(実施形態3)。
【図11】管の断面図(実施形態4)。
【図12】管の断面図(実施形態5)。
【図13】従来の長尺先受工法の概要を示す図。
【図14】従来の長尺管の設置方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1;図2に示すように、実施形態1による管11は、複数の単位管11A;11A…が管の中心Gに沿った方向に連続するように設けられて複数の単位管11A;11A…の端面11F同士を対向させた管構成体110と、管構成体110における互いに隣り合う個々の単位管11A;11Aの外周面11Hに跨って当該外周面11Hを覆う覆体とを備え、覆体として、管構成体110における互いに隣り合う個々の単位管11A;11Aの外周面11Hに跨って設けられて加熱されることにより複数の単位管11A;11A…同士を接続する熱収縮チューブ11Jを用いた構成であり、特に、管構成体110の外周面11Hの全てを覆うように設けられて加熱されることにより、複数の単位管11A;11A…の管の中心Gが一致するように、かつ、複数の単位管11A;11A…の端面11F同士が突き合わされた状態となるように複数の単位管11A同士を接続した熱収縮チューブ11Jを備え、単位管11Aの端面11F同士の突き合わされた部分の外周面11Hの位置において熱収縮チューブ11Jが破断されることで複数の単位管11A;11A…がそれぞれ分離可能となった構成である(図8(a);(b)参照)。
【0008】
単位管11Aは鋼管のような金属製の円筒管である。図2に示すように、単位管11Aは、単位管11Aを円筒の中心Gに沿って縦割りして2分割した形状の2つの半割部材11B;11Bにより形成される。単位管11Aが分離された分離部材としての半割部材11Bは、長手方向に直交する断面が半円弧形状である樋形状に形成される。単位管11Aは、2つの半割部材11B;11Bの分割面11C;11C(半割部材11Bの周に沿った方向の両端面)同士が突き合わされて円筒管に形成されたものである。
【0009】
図1に示すように、単位管11Aの壁には、単位管11Aの内外に貫通する孔11Dが設けられる。この孔11Dに逆止弁11Eが取付けられる。逆止弁11Eは、単位管11Aの内側から単位管11Aの外側への流体の流れのみを許容し、単位管11Aの外側から単位管11Aの内側への流体の流れを阻止する構造である。例えば、逆止弁11Eは、地山に注入する注入材の注入圧力が初期圧5kg/cmにて作動する(弁が開く)ものを用いる。
【0010】
熱収縮チューブ11Jは、例えば、電子線架橋軟質ポリオレフィン樹脂により形成されるものであり、熱を加えることで収縮してチューブの内径が収縮前の1/3〜1/2程度になるものである。
例えば、収縮前のチューブの内径が単位管11Aの外径よりも大きく、収縮後のチューブの内径が単位管11Aの外径よりも小さい熱収縮チューブ11Jと、管の中心Gが一致するように単位管11Aの管の端面11F(管の中心Gに沿った方向の端面)同士が突き合わされて接着テープなどで接続された複数本の単位管11A;11A…からなる管構成体110とを用意し、当該管構成体110を当該熱収縮チューブ11J内に位置させ、当該管構成体110の外周面11H全体を熱収縮チューブ11Jで覆うようにした後に、当該熱収縮チューブ11Jに熱を加える。これにより、熱収縮チューブ11Jの内周面と管構成体110の外周面11Hとが密着するので、管構成体110を構成する複数の単位管11A;11A…が熱収縮チューブ11Jにより接続される。
そして、単位管11Aの外周面11Hに位置する逆止弁11Eを覆っている熱収縮チューブ11Jの部分を除去して、逆止弁11Eを介した単位管11Aの内側から単位管11Aの外側への流体流路を確保することにより、管11が完成する。
【0011】
管11は、熱収縮チューブ11Jにより複数の単位管11Aが長手方向に接続されて熱収縮チューブ11Jを切断することで複数の単位管11A;11A…がそれぞれ分離可能とされ、かつ、熱収縮チューブ11Jを切断することで単位管11Aが単位管11Aの中心線Gに沿った分割面11C;11Cにより単位管11Aの径方向に複数に分離可能に構成される。換言すれば、管11は、管の長手方向に沿って所定間隔で複数に分割可能で、かつ、管の長手方向において分割された単位管11Aが管の径方向に沿って所定間隔で複数に分割可能な構成を備える。よって、管11は、単位管11A同士を簡単に分離でき、後述するガイド管として使用した場合に、回収作業を容易にできる。
【0012】
当該管11は、管構成体110の外周面11H全体を覆って管構成体110の外周面11Hと密着する熱収縮した熱収縮チューブ11Jを備えたことにより、単位管11Aにおける2つの半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介した管構成体110の内側から外側への流体の漏れ防止効果、及び、複数の単位管11Aの管の端面11F;11F間を介した管構成体110の内側から外側への流体の漏れ防止効果が高い管11となる。
従って、当該管11を後述するガイド管として使用し、かつ、地山に挿入して設置した当該ガイド管の周囲の地山に注入材を浸透注入する場合において、注入材が半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間や複数の単位管11Aの管の端面11F;11F間を介してガイド管の内側から外に漏れるのを防止でき、逆止弁11Eを介してガイド管の周囲の地山に注入材を確実に浸透注入できるようになる。
即ち、所定量の注入材を高圧で地山に送り込むことができて、地山に設置されたガイド管の所定の箇所の周囲に確実に注入材を供給できるようになるので、ガイド管の周囲の地山を確実かつ効果的に補強できるようになる。
尚、注入方式として、溶液系の注入材を注入する方式と、ウレタン系の注入材を注入する方式とがある。溶液系の注入材を注入する方式の場合、図外のパッカーを用いてガイド管の逆止弁経由でガイド管の所定の箇所の周囲に一定量の注入材を確実正確に注入する必要がある。実施形態1の管11は、管構成体110の外周面11H全体を1つの筒状の熱収縮チューブ11Jで覆った構成なので、当該管11を溶液系の注入材を注入する場合のガイド管として用いれば、溶液系の注入材が半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間や複数の単位管11Aの管の端面11F;11F間を介してガイド管の内側から外に漏れるのを確実に防止でき、パッカーを用いてガイド管の逆止弁11E経由でガイド管の所定の箇所の周囲に一定量の溶液系の注入材を確実正確に注入できるようになって好ましい。実施形態1の管11を、ガイド管の周囲の地山に上述したウレタン系の注入材を注入する際のガイド管として用いても良いことはもちろんである。
【0013】
実施形態1の管11を、長尺先受工法を実現する際のガイド管11として使用する場合、トンネル掘削における1掘削長に合わせた長さの単位管11Aを複数本繋ぎ合わせた構成のものを用いる。この場合の単位管11Aは、例えば、長さが1m、外径が139mm、内径が120mmの円筒管である。即ち、長尺先受工法では、例えば、当該単位管11Aを図1に示すように3本繋ぎ合わせた全長3mのガイド管11を用いる。
【0014】
以下、ガイド管11を用いる長尺先受工法について説明する。
長尺先受工法は、削孔装置20、ガイド管11、長尺管12、短尺管18、押管16を用いる。
図5に示すように、削孔装置20は、削岩機21と、ロッド13と、ロッド13の先端に設けられた拡径ビット(削孔刃)13aと、ロッド13の後端と削岩機21の出力軸21aとを接続するカップリング14と、ガイドセル22と、スライドセントライザー23;24と、ガイドセル22の上下位置を変更させるガイドセル位置可変機構26と、削岩機21の上面に設けられて長尺管12を保持する保持部材25とを備える。
拡径ビット13aは、掘削時に拡径して回収時に縮径する回収式ビットである。
スライドセントライザー23;24は、それぞれ個々に、昇降手段23m;24mと、長尺管12を把持する把持部23n;24nとを備える。ガイドセル22は、削岩機21及び昇降手段23m;24mを切羽71に対して前後に移動させるためのレールを有する。即ち、削岩機21及び昇降手段23m;24mは、切羽71に対して前後移動可能なようにガイドセル22に取付けられる。昇降手段23m;24mは伸縮するアーム23r;24rを有する。ガイドセル位置可変機構26がガイドセル22の位置を変更することで昇降手段23m;24mのアーム23r;24rが伸縮し、把持部23n;24nとガイドセル22との距離が変わる。
【0015】
長尺管12としては、9m程度の鋼管のような金属製の円筒管が用いられる。長尺管12の壁には、長尺管12の内外に貫通する孔が設けられ、孔に逆止弁12h(図7参照)が取付けられる。逆止弁12hは、長尺管12の内側から長尺管12の外側への流体の流れのみを許容し、長尺管12の外側から長尺管12の内側への流体の流れを阻止する構造である。
図4(a)に示す短尺管18は、ガイド管11を地山50に設置するためのものであるため、例えば、長尺管12よりも短くガイド管11よりも長い3m強程度の鋼管のような金属製の円筒管が用いられる。
図6に示す押管16は、長尺管12の後端をガイド管11内の所定の位置まで押すものであるため、例えば、ガイド管11よりも短い3m弱程度の鋼管のような金属製の円筒管が用いられる。
【0016】
実施形態1による長尺先受工法は、まず、図3(a)に示すように、トンネル空洞部70の切羽71とトンネル空洞部70の内壁面72との境界付近の切羽71からトンネル掘削方向Fに向けて斜め上前方に延長するようにガイド管11を設置する。ガイド管11は、仰角αが付けられて地山50に設置される。仰角αは10°〜15°程度である。
【0017】
ガイド管11は、鋼管のような金属製の円筒管であるが、複数の単位管11Aが長手方向に接続されてそれぞれ分離可能に繋ぎ合わされた構成であるため、削岩機21によってガイド管11に直接打撃を加えてガイド管11を地山50に打ち込もうとすると単位管11Aの端部同士の結合部で折れてしまう可能性がある。そこで、ガイド管11を地山50に設置する場合は、ガイド管11の形状を保持するための短尺管18の外周面を被うようにガイド管11を被せ、短尺管18とガイド管11とを一緒に地山50に設置する。短尺管18は、外径寸法がガイド管11の内径寸法よりも小さく、内径寸法が拡径ビット13aの縮径時の径寸法よりも大きい。
【0018】
例えば、図4(a)に示すように、ガイド管11の管内に短尺管18を通すことにより、短尺管18の外周面にガイド管11を被せ、ロッド13を拡径ビット13a側から短尺管18内に挿入して短尺管18内を貫通させ、ロッド13の後端部には、短尺管18の後端部18e及びガイド管11の後端部11Kを押圧するための押圧体15、及び、カップリング14を設ける。ロッド13の基端部13bと削岩機21の出力軸21aとをカップリング14で接続する。この状態で削岩機21を駆動し、ロッド13を前後移動させるとともに回転させながら、削岩機21をガイドセル22に沿って前方にスライドさせる。これにより、拡径ビット13aによる打撃及び回転により切羽前方の地山50が削孔されるとともに、ロッド13とともに進行する押圧体15が短尺管18及びガイド管11を押すので、短尺管18及びガイド管11が一緒に地山50に設置される。ガイド管11の後端部11Kは、切羽71よりトンネル空洞部70に突出させておく。
ガイド管11を地山50に設置した後に、拡径ビット13aの径を縮小して、削岩機21を後方にスライドさせて、ロッド13及び拡径ビット13aを短尺管18の管内から引き抜いて、押圧体15をロッド13から取外し、ロッド13及び拡径ビット13aを回収する。そして、短尺管18をガイド管11の管内から引き抜いて回収する。
【0019】
以上により、地山50にガイド管11が設置される。なお、ガイド管11の設置後には、ガイド管11が地山50から引き抜けるのを防止するためと地山50の崩壊を防止するため、切羽71よりトンネル空洞部70に突出するガイド管11の後端部11Kの周囲に位置する切羽にコンクリートを吹き付けてガイド管11の口元コーキング73(図3(a);図4(b)参照)を行う。
【0020】
次に、図4(b)に示すように、ロッド13を拡径ビット13a側から長尺管12内に挿入して長尺管12内を貫通させ、ロッド13の後端部には、長尺管12の後端部を押圧するための押圧体15A、及び、カップリング14を設ける。そして、ロッド13をガイド管11の管内に挿入する。これにより、押圧体15Aで押される長尺管12も、図4(c)に示すように、ガイド管11の管内に挿入される。具体的には、図4(b),(c)に示すように、スライドセントライザー23,24を、ガイドセル22に沿って移動可能に取付けるとともに、削岩機21の上面にも保持部材25を設置して、スライドセントライザー23,24と保持部材25とにより、長尺管12を削岩機21の上部に支持した後、後部のスライドセントライザー24を前方(切羽71側)にスライドさせて長尺管12をガイド管11内に挿入する。
【0021】
長尺管12をガイド管11内に挿入した後、図5(a)に示すように、削岩機21を切羽71に向けてスライドさせてカップリング14の近傍まで移動させた後、ガイドセル位置可変機構26によりガイドセル22を上昇させるとともに、昇降手段23m,24mを作動させて、スライドセントライザー23,24の把持部23n,24nとガイドセル22との距離を縮め、削岩機21の中心と長尺管12の中心、すなわち、削岩機21の出力軸21aとカップリング14の接続部との高さを一致させた後、削岩機21の位置を調整して、削岩機21の出力軸21aとカップリング14とを接続する(図5(b)参照)。
なお、上記作業中には、長尺管12に余分な力がかからないように、把持部23n,24nとガイドセル22との距離が縮まる速度を、ガイドセル22の上昇速度に同調させるようにする必要がある。これにより、長尺管12の挿入角度を保持したまま、長尺管12と削岩機21とを確実に接続することができる。
【0022】
その後、図5(b)に示すように、削岩機21を駆動させながら削岩機21を前方にスライドさせることにより、拡径ビット13aが切羽前方の地山50を削孔するととともに、押圧体15Aが長尺管12を押し込むので、長尺管12が地山50内に押し込まれる(図3(b);図3(c)参照)。
【0023】
長尺管12が押圧体15Aにより押されて地山50内に押し込まれた状態では、長尺管12は、先端側が切羽71前方の地山50内に挿入されるが、後端部の3m程度(ガイド管11の長さ分程度)はガイド管11の中にある。そこで、図6(a)に示すように、ロッド13の後端13fと継ぎ足しロッド13Dとの先端13tとを接続具17で繋ぎ、継ぎ足しロッド13Dの後端から押管16を挿入する。つまり、押管16の管内に継ぎ足しロッド13Dを通すようにして継ぎ足しロッド13Dの周囲に押管16を位置させて、押管16の先端16tと長尺管12の後端12eとを着脱可能に接続し、かつ、押管16と継ぎ足しロッド13Dとを連結具19で連結する。押管16の先端16tと長尺管12の後端12eとを着脱可能に接続する接続形態としては、例えば、嵌合構造が採用される。そして、継ぎ足しロッド13Dの後端16eと削岩機21の出力軸21aとをカップリング14により接続した後、図6(b)に示すように、削岩機21を駆動させつつ前方にスライドさせる。これにより、拡径ビット13aが切羽前方の地山50を削孔するととともに、押管16が長尺管12を押圧するので、長尺管12が切羽前面の地山50内に更に挿入される。この際、長尺管12の後端12eがガイド管11内の所定の位置にくるまで長尺管12を押し込む(図3(d);図3(e)参照)。本例では、長尺管12の全長を有効利用するため、長尺管12の後端12eがガイド管11の先端11tの近傍にくるまで長尺管12を押し込むようにしている。
尚、押管16は、長尺管12と径寸法が同じである。押管16の先端16tと長尺管12の後端12eとが例えば嵌合構造により接続されたことで、押管16の内周面と長尺管12の内周面とが同径及び同軸で押管16の内周面と長尺管12の内周面との間が隙間なく繋がれた円管面が形成され、この円管面に形成された管内に後述するダブルパッカー30をスムーズに挿入できる。また、押管16を引き抜くことで、押管16の先端16tと長尺管12の後端12eとの嵌合が容易に解除されるので、押管16の回収作業が容易となる。
また、押管16と長尺管12とが接続され、押管16と継ぎ足しロッド13Dとが連結されていることで、掘削時の長尺管12の軸ぶれを防止でき、長尺管12を地山50にスムーズに押し込めるようになる。
【0024】
押管16で長尺管12を押し込んだ後に、削岩機21を後方にスライドさせ、継ぎ足しロッド13D、ロッド13、拡径ビット13aなどを撤去する。
そして、長尺管12内及びガイド管11内にセメントミルクや水ガラス等の地盤固化剤のような注入材を注入する。
図7(a)〜(c)は、本例の注入材注入方法の詳細を示す図である。まず、図7(a)に示すように、押管16内経由で長尺管12と押管16との境界部に注入用のダブルパッカー30を設置し、上記境界部に注入材を注入して、長尺管12とガイド管11との間の空隙に注入材を充填することによって、長尺管12とガイド管11との間を経由する土砂や水の浸入を防ぐ処理を行う。その後、図7(b)に示すように、ダブルパッカー30を長尺管12内に移動して、注入材を長尺管12の内側から長尺管12の壁面に設けられた逆止弁12h経由で長尺管12の周囲の地山50に浸透注入して、長尺管12の周囲の地山50を補強する。そして、押管16と長尺管12との接続を解除して、押管16をガイド管11内から抜き取った後に、ダブルパッカー30をガイド管11内に設置し、注入材をガイド管11の内側から逆止弁11E経由でガイド管11の周囲の地山50に浸透注入して、ガイド管11の周囲の地山50を補強する。
その後、ダブルパッカー30を回収し、図7(c)に示すように、鋼管内充填用の塩化ビニル管87を用いて、上記長尺管12内及びガイド管11内に注入材を注入する。
【0025】
ガイド管11のトンネル空洞部70側に位置する単位管11A全体又は一部がトンネル空洞部70内に露出する程度まで前方に向けてトンネル掘削が行われた後に、トンネル空洞部70側に位置する単位管11Aを軸方向に垂直に曲げることにより単位管11Aに曲げモーメントを加えてトンネル空洞部70側に位置する単位管11Aをガイド管11の突き合せ部11Gの部位で折り、これにより伸びた熱収縮チューブをカッターなどで切断することにより、トンネル空洞部70側に位置する単位管11Aをガイド管11から分離する(図8(a);(b)参照)。そして熱収縮チューブをガイド管11から剥がしてガイド管11から単位管11Aを分離した後、図8(c)に示すように、分離した単位管11Aを2つの半割部材11B;11Bに分離して回収する。図8(c)において、44は、単位管11A内に充填されていた内容物としての注入材である。さらに、トンネル掘削が行われた後に、トンネル空洞部70内に露出する次の単位管11Aを2つの半割部材11B;11Bに分離して回収する。そして、回収した単位管11Aを再利用して組み合わせて新たなガイド管11を再構成できる。つまり、単位管11Aを再利用して使用可能なガイド管11を再構成できるので、経済的な先受工法を実現できる。
【0026】
実施形態1によれば、複数の単位管11Aが1つの熱収縮チューブ11Jにより長手方向に接続されてそれぞれ分離可能とされたガイド管11を用いたので、ガイド管11の長手方向において単位管11Aを分離しやすく、分離した単位管11Aを再利用して使用可能なガイド管11を再構成できる。即ち、先受工法において再利用できるガイド管11を提供できるので、経済的な先受工法を実現できる。
単位管11Aが単位管11Aの中心線Gに沿った分割面11C;11Cにより単位管11Aの径方向に複数に分離可能に構成されたので、単位管11Aを径方向に分離しやすく、単位管11A内の内容物である注入材を取り出しやすくなるので、簡単に再利用可能な単位管11Aとできる。
また、押管16を用いて、長尺管12の後端12eがガイド管11の先端11tの近傍にくるまで長尺管12を押し込むようにしているので、長尺管12の全長を有効利用できるようになる。
【0027】
実施形態1によれば、管構成体110の外周面11H全体を覆って管構成体110の外周面11Hと密着する熱収縮した熱収縮チューブ11Jを備えた管11をガイド管11として用いたので、単位管11Aにおける2つの半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介した管構成体110の内側から外側への注入材の漏れ、及び、複数の単位管11Aの管の端面11F;11F間を介した管構成体110の内側から外側への注入材の漏れを効果的に防止できるようになり、所定量の注入材を高圧で地山50に送り込むことができて、地山50に設置されたガイド管11の所定の箇所の周囲に確実に注入材を供給できるようになるので、ガイド管11の周囲の地山50を確実かつ効果的に補強できるようになる。特に、実施形態1のガイド管11は、管構成体110の外周面11H全体を1つの筒状の熱収縮チューブ11Jで覆った構成なので、溶液系の注入材を注入する場合のガイド管11として用いれば、溶液系の注入材がガイド管11の内側から外に漏れるのを確実に防止でき、パッカーを用いてガイド管11の逆止弁11E経由でガイド管11の所定の箇所の周囲に一定量の溶液系の注入材を確実正確に注入できるようになって好ましい。即ち、溶液系の注入材を注入する場合に好適なガイド管11を提供できる。
【0028】
実施形態2
実施形態2の管11Xは、複数の単位管11A;11A…が管の中心Gに沿った方向に連続するように設けられて複数の単位管11A;11A…の端面11F同士を対向させた管構成体110と、管構成体110における互いに隣り合う個々の単位管11A;11Aの外周面に跨って当該外周面を覆うように設けられて加熱されることにより単位管11A;11A同士を接続した熱収縮チューブ11Jとを備えた構成であり、特に、図9に示すように、管構成体110の突き合せ部11G及びその近傍の外周面11Hのみをそれぞれ個別に覆うように個別の熱収縮チューブ11Jを設けて熱収縮チューブ11Jを収縮させることで突き合せ部11G及び半割部材11B;11B同士を接続するとともに、管構成体110の両端部に位置される単位管11Aの一端部の外周面11Hを覆うように熱収縮チューブ11Jを設けた後に熱収縮チューブ11Jを収縮させることによって管構成体110の両端部に位置する単位管11Aの半割部材11B;11B同士が接続された構成の管11Xである。
尚、本実施形態2の管11Xを、ガイド管の周囲の地山への注入材の浸透注入を行う場合のガイド管として使用する場合には、注入材が半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介してガイド管の内側から外に漏れる可能性があるので、実施形態2の管11Xは、ガイド管の周囲の地山への注入材の浸透注入を行わない場合のガイド管として使用することが好ましい。即ち、ガイド管の周囲の地山に上述したウレタン系の注入材を注入する際のガイド管として用いることが望ましい。
【0029】
実施形態3
図10に示すように、実施形態3の管11Yは、実施形態2の管11Xを構成する各単位管11Aの半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間にパッキン33を設けた構成とした。
この場合、例えば、分割面11Cに対応した平面板状のパッキン33を用いて、当該パッキン33の平面の両面を分割面11C;11Cに接着剤などで接着する。当該管11Yの場合、パッキン33が、半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介して管11Yの内側から外に注入材が漏れるのをより効果的に防止できる。
従って、実施形態3の管11Yをガイド管として用いた場合、所定量の注入材を高圧で地山に送り込むことができて、地山に設置されたガイド管の所定の箇所に周囲に確実に注入材を供給できるようになるので、ガイド管の周囲の地山を確実かつ効果的に補強できるようになる。即ち、実施形態3の管11Yは、溶液系の注入材を注入する際のガイド管として好適であり、また、ウレタン系の注入材を注入する際のガイド管として用いることもできる。
【0030】
実施形態4
図11に示すように、実施形態4の管11Sは、実施形態2の管11Xを構成する各単位管11Aの半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間に設けるパッキンとして、断面L字状のパッキン34を2つ組み合わせた断面T字状のパッキン35を設けた構成とした。このようなパッキン35の断面T字状の水平部分の裏面を半割部材11B;11Bの内面に接触させ、Tの垂直部の両面を分割面11C;11Cに接着剤などで接着する。
実施形態4の管11Sの場合、半割部材11B;11Bの内面に接触したパッキンの断面T字状の水平部分が、半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介してガイド管の内側から外に注入材が漏れるのをより効果的に抑止するので、実施形態3のパッキン33を備えた管11Yと比べた場合に、半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介したガイド管11Sの内側から外への漏れをより効果的に防止できるようになる。
【0031】
実施形態5
図12に示すように、実施形態5における管11Tは、実施形態2の管11Xを構成する各単位管11Aの半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間に設けるパッキンとして、断面T字状のパッキン36を設けた構成とした。このようなパッキン36;36の断面T字状の水平部分の裏面を半割部材11B;11Bの内面に接触させ、Tの垂直部の両面を分割面11C;11Cに接着剤などで接着する。
実施形態5による管11Tの場合、半割部材11B;11Bの内面に接触したパッキンの断面T字状の水平部分が、半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介してガイド管の内側から外に注入材が漏れるのをより効果的に抑止するので、実施形態4のパッキン35を備えた管11Sと比べた場合に、パッキン34;34間の隙間が無くなるので、半割部材11B;11Bの分割面11C;11C間を介したガイド管11Tの内側から外への漏れをより効果的に防止できるようになる。
【0032】
尚、単位管11Aとして、径方向に分離可能とされていない構成のものを用いてもよい。
上記管11;11Y;11S;11Tは、ガイド管の周囲の地山に注入材を浸透注入しない場合に使用するガイド管としても利用できる。
単位管11Aは、塩化ビニル管などの樹脂製の管を用いてもよい。
拡径ビット13aの軸部13x(図4(b)参照)を長尺管12の先端側の内壁に係合させ、拡径ビット13aの進行に伴って長尺管12が牽引されるように構成してもよい。
ビットとしては、回収可能な拡径ビット13aのほか、掘削後に地山50に残されるロストビットと呼ばれる形式のものを使用してもよい。
【0033】
本発明の管は、トンネル空洞部の切羽とトンネル空洞部の内壁面との境界付近の切羽又は内壁面からトンネル掘削進行方向に沿った直線より徐々に離れるような方向に向けて地山に管を設置することによりトンネル周囲の崩壊を防止する先受工法に使用する管として利用できる他、切羽からトンネル掘削進行方向に沿った直線と平行に地山に管を設置することにより切羽前方の崩壊を防止する切羽補強工法に使用する管としても利用できる。管を切羽補強工法に用いる場合、管の強度を補強するため、管の内側に補強芯材を通せばよい。この場合でも、トンネルの掘削進行に伴って、単位管を回収し、回収した単位管を、新たな注入管、あるいは、先受管を形成するため単位管として再利用することができ、経済的となる。
【符号の説明】
【0034】
11 ガイド管(管)、11A 単位管、11B 半割部材(分離部材)、
11C 分割面、11H 外周面、11J 熱収縮チューブ(覆体)、12 長尺管、
50 地山、70 トンネル空洞部、110 管構成体、G 中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル空洞部から地山に設置されてトンネル空洞部に露出した管を撤去する先受工法において使用する上記管であって、複数の単位管が管の中心に沿った方向に連続するように設けられて複数の単位管の端面同士を対向させた管構成体と、管構成体における互いに隣り合う個々の単位管の外周面に跨って当該外周面を覆う覆体とを備え、覆体が、管構成体における互いに隣り合う個々の単位管の外周面に跨って設けられて加熱されることにより複数の単位管同士を接続する熱収縮チューブであることを特徴とする管。
【請求項2】
熱収縮チューブは、管構成体の外周面全体を覆う熱収縮チューブであることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項3】
単位管が単位管の中心線に沿った分割面により単位管の径方向に複数に分離可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管。
【請求項4】
単位管は、径方向に複数に分離された複数の分離部材と、互いに対向する分離部材の分割面間に介在されたパッキンとにより形成されたことを特徴とする請求項3に記載の管。
【請求項5】
トンネル空洞部の切羽とトンネル空洞部の内壁面との境界付近の切羽又はトンネル空洞部からトンネル掘削進行方向に沿った直線より徐々に離れるような方向に向けて地山にガイド管を設置した後に、ガイド管よりも径の小さい管をガイド管内経由で地山に設置することにより、トンネル周囲の崩壊を防止する先受工法において、上記ガイド管として使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−80238(P2011−80238A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232890(P2009−232890)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】