説明

箱体積載物及び箱体積載物の運搬方法

【課題】低コスト、省資源で、荷役を容易に短時間で行うことができ、荷崩れ防止性及び損傷防止性に優れ、特に高速、長時間の運搬時においても荷崩れ及び損傷が防止される箱体積載物及び箱体積載物の運搬方法を提供すること。
【解決手段】荷物を収納した立方体状又は直方体状の箱体2をXY面方向に各々隣接して複数並設してなる箱体群20を、XY面方向に対して垂直なZ方向に複数段に積載してなる箱体積載物1において、Z方向に隣り合うすべての箱体2の間に防滑シート3が介在し、最上段に載置された箱体群20のみをXY面方向に束ねるように粘着テープ4が巻回され、前記粘着テープ4の巻回により一体化された前記最上段に載置された箱体群20からなる荷重部20Tと、該荷重部20Tより下段側の箱体2及び防滑シート3からなる柔軟部20Fとが形成されていることを特徴とする箱体積載物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱体積載物及び箱体積載物の運搬方法に関し、詳しくは、運搬時の荷崩れを防止する箱体積載物及び箱体積載物の運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数段にわたって箱体を積み上げて運搬する際、積載物の荷崩れが問題となる。
【0003】
特許文献1、2には、例えば倉庫内における運搬のような、低速、短距離の運搬に適した荷崩れ防止技術として、以下の記載がある。
【0004】
即ち、特許文献1の図6には、運搬パレット上に複数段に荷物を積み上げる際に、上下方向に隣り合う荷物の間に防滑シートを介在させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2のFig.1には、複数段に荷物を積み上げる際に、最上段において横方向に隣り合う複数の荷物を囲むように粘着テープを巻回することが記載されている。
【0006】
一方、特許文献1、2、3には、例えばトラック等による運搬のような、高速、長時間の運搬に対応し得る荷崩れ防止技術として、以下の記載がある。
【0007】
即ち、特許文献1の背景技術、及び、特許文献3には、荷物と運搬パレットをストレッチフィルムで巻きつけて固定することが記載されている。特許文献3には、十分な荷崩れ防止性を得るために、幅500mm、厚さ20μmのストレッチフィルムの巻き付け数を16周とすることが記載されている。
【0008】
また、特許文献2のFig.3a及びFig.3bには、粘着テープを、積載された荷物の複数段にわたって、交差模様を描くように複雑に巻き付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−273390号公報
【特許文献2】米国特許5314557号
【特許文献3】紙パ技協誌第60巻第1号、P52−58、秋川英雄他、「PPC用紙向け環境対応型パレット積載ロッキンポップシステムの紹介」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
荷崩れ防止性は、低速、短距離の運搬においては、加速時及び減速時に生じる僅かな横揺れに対応できればよい。それ故、特許文献1の図6、及び、特許文献2のFig.1に示されるように、簡単な構成によって、十分に対応することができた。
【0011】
これに対して、高速、長時間の運搬においては、特許文献1の背景技術、特許文献2のFig.3a及びFig.3b、並びに、特許文献3に示されるように、複雑で手間のかかる構成によって、積載される荷物を固定して対応していた。
【0012】
これらの技術では、ストレッチフィルムや粘着テープを簡単に付け外しができず、荷役が困難で、長時間に及ぶ問題があった。
【0013】
また、これらの高速、長時間の運搬に対応する技術では、ストレッチフィルムや粘着テープの使用量が多くなるため、コスト増の問題や、資源保護の観点からの問題もある。
【0014】
さらに、高速、長時間の運搬では、衝撃による箱体の損傷(具体的には、箱体のキズ付きや破断、あるいは、箱体表面に印刷又は記入された画像や文字の摩耗劣化等)が生じやすい問題がある。
【0015】
近年では、省資源化の要求を満たすために、商品を、運搬時の箱体に梱包した状態で店頭販売する箱売りが盛んに行われるようになっている。また、運搬時の箱体に梱包された複数の商品を、該箱体ごと購入する「まとめ買い」も多く見られる。このとき、上記のような問題を生じた箱体は、客の購買意欲を著しく削ぐ。そのため、商品が箱体ごと販売店から返品されたり、あるいは、販売店が大幅な値下げを行って販売したりすることを余儀なくされ、大きな損害が発生する事態となる。さらには、商品の内容を表示した文字が摩耗劣化して誤読を招けば、例えば販売店において誤った売り場に搬入され、後で客が開封して初めて間違いが判明するなど広範に被害が及ぶ恐れがある。
【0016】
そこで、本発明の課題は、低コスト、省資源で、荷役を容易に短時間で行うことができ、荷崩れ防止性及び損傷防止性に優れ、特に高速、長時間の運搬時においても荷崩れ及び損傷が防止される箱体積載物及び箱体積載物の運搬方法を提供することにある。
【0017】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0019】
(請求項1)
荷物を収納した立方体状又は直方体状の箱体をXY面方向に各々隣接して複数並設してなる箱体群を、XY面方向に対して垂直なZ方向に複数段に積載してなる箱体積載物において、
Z方向に隣り合うすべての箱体の間に防滑シートが介在し、
最上段に載置された箱体群のみをXY面方向に束ねるように粘着テープが巻回され、
前記粘着テープの巻回により一体化された前記最上段に載置された箱体群からなる荷重部と、該荷重部より下段側の箱体及び防滑シートからなる柔軟部とが形成されていることを特徴とする箱体積載物。
【0020】
(請求項2)
前記粘着テープは、下記衝撃強度が600N−cm/10mm以上であることを特徴とする請求項1記載の箱体積載物。
<衝撃強度>
10mm幅×超1000mm長の試料を用い、半径1000mmで揺動するウエイト(10.8kg)で試料の一端を支持し、当該ウエイトの垂下位置から水平方向へ1000mm程度離隔した定位置で試料の他端を支持(一端の支持位置と他端の支持位置の間隔を1000mmとする。)した状態で、前記ウエイトを、前記定位置に向かって振り上げ次いで放すという一連の作業を行い、前記試料の破断が生じた振り上げ角度θを下記算出式へ代入し、導かれた数値をいう。
<算出式>
衝撃強度(N−cm/10mm幅)=(1−cosθ)×W×L
【0021】
(請求項3)
前記粘着テープは、粘着力(JIS Z0237の規定に準拠)が、0.1〜1.0N/25mmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の箱体積載物。
【0022】
(請求項4)
前記粘着テープは、熱可塑性樹脂を主材とするフラットヤーンを経糸及び緯糸として織成した織布の表裏少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂より成る表層膜を被着した基布を具備し、当該基布の片面に粘着剤が塗布されてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の箱体積載物。
【0023】
(請求項5)
前記粘着テープは、経糸又は緯糸の少なくとも一方に、同一方向に配向するフラットヤーンが非接着状態で全体的に重なり合った重層部を有することを特徴とする請求項4記載の箱体積載物。
【0024】
(請求項6)
前記防滑シートは、一軸延伸された熱可塑性合成樹脂線条体からなる布状体の両面に、下記算出式によって求められる戴荷特性NSが50〜300のエチレン−α−オレフィン共重合体からなる防滑層が積層されてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の箱体積載物。
<算出式>
戴荷特性NS=動摩擦係数×10/加圧応力(N)
上記算出式において、加圧応力は、厚さ2mmのシートを成形し、これに先端が直径3.0mmの球状をした金属棒でシート表面を押圧して、金属棒の先端がシートに1mm嵌入するときの荷重をもって示される値とし、動摩擦係数は、JISK−7125によって測定される値とする。
【0025】
(請求項7)
請求項1〜6の何れかに記載の箱体積載物を車両に積載して高速運搬することを特徴とする箱体積載物の運搬方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低コスト、省資源で、荷役を容易に短時間で行うことができ、荷崩れ防止性及び損傷防止性に優れ、特に高速、長時間の運搬時においても荷崩れ及び損傷が防止される箱体積載物及び箱体積載物の運搬方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の箱体積載物の一例を示す側面図
【図2】本発明の箱体積載物の一例を示す上面図
【図3】本発明の箱体積載物の他の例を示す斜視図
【図4】衝撃強度の測定方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の箱体積載物の一例を示す側面図であり、図2はその平面図である。
【0030】
図1及び図2において、1は箱体積載物、2は荷物を収納した立方体状又は直方体状の箱体、3は防滑シート、4は粘着テープである。
【0031】
箱体積載物1は、箱体2をXY面方向に各々隣接して複数並設してなる箱体群20を、XY面方向に対して垂直なZ方向に複数段に積載してなる。
【0032】
XY面方向とは、横軸Xと縦軸Yで形成される面であって、箱体積載物1の載置面方向と一致する。載置面が水平であれば、XY面方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。例えば、傾斜した運搬パレットの載置面に箱体積載物1を形成する場合は、XY面方向は傾斜角だけ水平方向からずれ、Z方向は、傾斜角だけ鉛直方向からずれる。
【0033】
図示の例において、箱体積載物1は、箱体2をXY面方向に隣接して総数9個(3個×3個)並設してなる箱体群20を、Z方向に3段に積載してなる。
【0034】
箱体2は、荷物を収納した立方体状又は直方体状の箱体であれば格別限定されないが、複数の箱体2は、同一形状であることが好ましい。また、複数の箱体2は、同一重量であることが好ましい。
【0035】
箱体2の表面の材質としては、段ボール箱、樹脂、木材等を好ましく挙げることができ、特に段ボール箱が好適である。
【0036】
本発明の箱体積載物1において、Z方向に隣り合うすべての箱体2間には、防滑シート3が介在している。
【0037】
また、本発明の箱体積載物1においては、箱体群20のうち、箱体積載物1の載置面からZ方向に最も離れた段(以下、便宜上、「最上段」という場合がある。)に載置された箱体群20のみを、XY面方向に束ねるように粘着テープ4が巻回されている。
【0038】
粘着テープ4の巻回は、図に示した通り、最上段に載置された箱体群20を形成するすべての箱体2を、互いにXY面方向に密接するように集合させて、これら箱体2を束ねて密接を保持するように、箱体群20の外周を粘着テープ4でXY面方向に巻回してなる。粘着テープ4の粘着層は、内周側に配向され、箱体群20の外周に当接するように配されている。
【0039】
このように、本発明の箱体積載物1では、最上段に載置された箱体群20のみに粘着テープ4を巻回することにより、最上段に載置された箱体群20を形成する荷物2同士は一体化され、一方、最上段より下方の箱体群20を形成する荷物2同士は、互いに個別の運動を行う自由を有する。
【0040】
これは、積載される荷物を固定する思想であった従来の荷崩れ防止手段と比較すれば、全く新しい思想である。
【0041】
この結果、本発明の箱体積載物1において、粘着テープ4の巻回により一体化された最上段の箱体群20からなる荷重部20Tと、これより下段側の箱体2及び防滑シート3からなる柔軟部20Fとが形成される。
【0042】
このような構成とする技術的意義について、以下に詳述する。
【0043】
まず、本発明者が得た知見によれば、高速での運搬においては、低速での運搬に比べて水平方向の揺れだけでなく、垂直方向及び水平方向の振動が大きく作用するようになる。これは、路面の凹凸から受ける衝撃や、カーブを走行する際の遠心力、更にはエンジン等の車体自体から発生する振動等が、高速での運搬においては著しく増大するためである。
【0044】
この結果、高速での運搬時に作用する振動外力は、3次元的な方向を有する複雑で巨大なものとなる。
【0045】
本発明者は、このような振動外力に対して、粘着テープ4の巻回により一体化された最上段の箱体群20からなる荷重部20Tと、これより下段側の箱体2及び防滑シート3からなる柔軟部20Fとを形成し、荷重部20Tと柔軟部20Fとを協働させることで、箱体積載物1全体で振動外力を吸収して、荷崩れ防止を行うことを試みた。
【0046】
振動外力は、箱体積載物1において、まず、下方から上方に向けて伝播する。
【0047】
最上段より下段の箱体2は、個別に運動する自由を有しているので、3次元的な方向を有する複雑で巨大な振動外力を受けて、それぞれが個別の振動を行う。
【0048】
ここで、個別の振動を行う下段側の箱体2は、上段側からの荷重を受けた防滑シート3からの摩擦力により、XY面方向の振動が防止される。この結果、3次元的な方向を有する振動外力は、下段側の箱体2において、Z方向の振動に変換される。
【0049】
Z方向の振動は、下段側の箱体2及び防滑シート3(即ち柔軟部20F)から、粘着テープ4の巻回により一体化された最上段の箱体群20(即ち荷重部20T)に伝播される。
【0050】
この伝播機構の最終段階について詳述すると、荷重部20Tの載置面を形成する柔軟部20Fの上面(即ち防滑シート3の上面)が、下段側の箱体2のZ方向の振動により持ち上がることで、Z方向の振動が荷重部20Tに伝播される。
【0051】
このとき、下段側の箱体2は、それぞれ個別にZ方向の振動を行っているため、防滑シート3の上面の持ち上がりは、全面に亘って均一に持ち上がるのではなく、局所的に持ち上がる(突出する)。防滑シート3の上面が局所的に突出すると、突出部には、荷重部20T、即ち一体化された最上段の箱体群20の全荷重が負荷される。この荷重は、下段側からの箱体2の突出を抑え込むとともに、防滑シート3の摩擦力を増大させて、下段の箱体2のXY面方向への位置ずれを防止する。
【0052】
さらに、個別に振動する下段の箱体2の固有周期と、粘着テープ4の巻回により一体化された最上段の箱体群20の固有周期は異なるため、柔軟部20Fからの振動が荷重部20Tに入力されても、荷重部20Tには振動が蓄積され難い。このため、荷重部20Tには大きな振幅は形成されず、防滑シート3との接触が保持されて、最上段の箱体群20を形成する箱体2の位置ずれも防止される。
【0053】
このように、本発明の箱体積載物1では、粘着テープ4が巻回された最上段の箱体群20からなる荷重部20Tと、これより下段側の箱体2及び防滑シート3からなる柔軟部20Fとが協働して、箱体積載物1全体で振動外力を吸収し、優れた荷崩れ防止性が得られる。
【0054】
更に、箱体積載物1を構成する箱体に振動が生じ難いため、箱体の損傷(箱体のキズ・破断、箱体表面の印刷劣化等)を防止する効果が得られる。
【0055】
これに対して、仮に下段側の複数の箱体を、例えば粘着テープやストレッチフィルムの巻回により一体化(柔軟部を消失)した場合は、一体化された下段側の箱体から最上段の荷重部に入力される振動のエネルギーが、一体化された分だけ増大するため、荷重部によって振動を抑え込むことが困難になる。このため、荷重部に大きな振幅が形成され易くなり、防滑シートとの接触が保持され難くなる。その結果、最上段の荷重部の位置ずれが促進されて、荷崩れ防止性が得られなくなる。さらには、箱体積載物1を構成する箱体の振動も激しくなり、箱体の損傷(箱体のキズ・破断、箱体表面の印刷劣化等)が生じやすくなる。
【0056】
本発明の箱体積載物1は、例えば倉庫内での移動のような30km/h程度以下の低速運搬はもとより、車両に積載して、50〜80km/h、好ましくは70km/h〜80km/hの高速運搬を行った際においても、顕著な荷崩れ防止効果を奏する。
【0057】
上記車両は、移動手段として車輪を有するものであり、トラック、貨車等の装輪車両や、クローラ式の装軌車両等を好ましく例示できる。
【0058】
本発明の箱体積載物1は、車両に限定されず、その他の運搬手段(船舶、航空機、ソリ等)によって運搬する際においても、優れた荷崩れ防止効果を奏する。
【0059】
また、本発明の箱体積載物1は、構成がシンプルであるために、高速、長時間の運搬に用いられてきた従来技術と比較して、極めて簡単に、短時間で荷役ができる効果が得られる。
【0060】
また、本発明の箱体積載物1では、防滑シート3を繰り返し用いることができる。また、粘着テープ4の使用量が僅かでよい。そのため、従来の高速、長時間の運搬時の技術と比較して、大幅なコスト削減、及び省資源を実現する効果が得られる。
【0061】
粘着テープ4の巻回は、切断部を有さない一本の粘着テープによってなされることが好ましい。また、最上段の箱体群20に対して、粘着テープ4は、その一端側が、他端側の外周面上に重なるように巻回されることが好ましい。このとき、一端側と多端側の重なり部の、粘着テープ4の長手方向の形成長さは、10〜20cmであることがより好ましい。
【0062】
上記のように、切断部を有さない一本の粘着テープを用いる場合や、重複部を形成する場合は、箱体2の表面からの粘着テープ4の剥離が防止され、更なる荷崩れ防止効果が得られる。
【0063】
最上段の箱体群20に対する粘着テープ4の巻回位置(高さ)は、最上段の箱体群20の下面から、最上段の箱体群20の高さの50〜85%、好ましくは、60〜75%の高さであることが好ましい。これにより、粘着テープ4の巻回による最上段の箱体群20の一体化が安定し、更なる荷崩れ防止効果が得られる。
【0064】
本発明の箱体積載物1は、運搬パレット上に形成されることが好ましい。これにより、取扱い性が向上する効果が得られる。
【0065】
運搬パレットは、格別限定されず、木製、樹脂製、金属製等、種々の運搬用のパレットを用いることができる。
【0066】
運搬パレットの積載面の防滑性が十分でない場合は、適宜、パレットの積載面と最下段の箱体2との間に防滑シートを介在させることが好ましい。
【0067】
本発明に用いられる防滑シート3は、格別限定されず、通常、載置物の滑り防止等に用いられる防滑シートを用いることができる。
【0068】
防滑シート3は、両面に防滑層が形成されていることが好ましい。両面に防滑層が形成された防滑シート3を、上下方向に積層された箱体2の間に介在させることで、荷崩れ防止性が更に向上する。
【0069】
防滑シートとしては、一軸延伸された熱可塑性合成樹脂線条体からなる布状体の両面に、下記式によって求められる戴荷特性NSが50〜300のエチレン−α−オレフィン共重合体からなる防滑層が積層されてなる防滑シートを好ましく用いることができる。
【0070】
戴荷特性NS=動摩擦係数×10/加圧応力(N)
【0071】
ここで、加圧応力は、厚さ2mmのシートを成形し、これに先端が直径3.0mmの球状をした金属棒でシート表面を押圧して、金属棒の先端がシートに1mm嵌入するときの荷重をもって示される値である。また、動摩擦係数は、JISK−7125によって測定される。
【0072】
このような防滑シートであれば、強靭で機械的強度、耐久性に優れ、また、防滑性が大きく、荷崩れ防止性を更に向上できる。また、防滑シートの回収、再生も容易であるため、更なるコスト削減、及び省資源化を実現できる。
【0073】
戴荷特性NSが50未満では、十分な荷崩れ防止性が得られ難く、一方、戴荷特性NSが300を越えると耐磨耗性が低下し、防滑層に傷が発生し易く、また、摩滅が発生しやすくなる。
【0074】
前記熱可塑性合成樹脂線条体からなる布状体としては、一軸延伸された熱可塑性合成樹脂線条体の織布、交差接合布、編布又は不織布であることが好ましく、一軸延伸された熱可塑性合成樹脂フラットヤーン又はスプリットヤーンからなる熱可塑性合成樹脂線条体を織成又は編製したものであることが、より好ましい。
【0075】
高速運搬は通常長時間の運搬となるが、特に冬場や寒冷地では、防滑シートが長時間低温環境下におかれることにより、シート表面の動摩擦係数が低下する場合がある。このような場合、例えば防滑シートの層内に電熱線などの加熱手段を配して、動摩擦係数を保持することも好ましいことである。
【0076】
本発明に用いられる粘着テープ4は、片面に粘着剤層を有するテープであれば格別限定されない。
【0077】
粘着テープは、衝撃強度が600N−cm/10mm以上であることが好ましい。前記衝撃強度の測定方法(自社法)は、以下の通りである。
【0078】
図4に示す通り、10mm幅×超1000mm長の試料100を用い、半径1000mmで揺動するウエイト(10.8kg)101で試料100の一端を支持し、当該ウエイト101の垂下位置から水平方向へ1000mm程度離隔した定位置102で試料100の他端を支持(一端の支持位置と他端の支持位置の間隔を1000mmとする。)した状態で、前記ウエイト101を、前記定位置102に向かって振り上げ次いで放すという一連の作業を行い、前記試料100の破断が生じた振り上げ角度θを次式へ代入し、導かれた数値とする。
【0079】
衝撃強度(N−cm/10mm幅)=(1−cosθ)×W×L
W(ウエイト重量):10.8kg重×9.8N/kg=106N
L(揺動半径):100cm(1000mm)
【0080】
粘着テープの衝撃強度が、600N−cm/10mm以上を満たすことで、最上段の箱体層20の安定化に寄与し、荷崩れ防止性を更に向上できる。
【0081】
また、粘着テープは、JIS Z0237の規定に準拠する粘着力が、0.1〜1.0N/25mmの範囲であることが好ましい。
【0082】
粘着テープの粘着力が、0.1〜1.0N/25mmを満たすことで、最上段の箱体層20の安定化に寄与して、荷崩れ防止性を更に向上でき、さらに、剥離性にも優れるため、剥離時に箱体を損傷(箱体のキズ・破断、箱体表面の印刷劣化等)することを防止する効果が得られる。
【0083】
粘着テープの素材は、格別限定されず、例えば、PET等の樹脂フィルムに、粘着剤を塗工して得られる粘着テープを好ましく例示できる。
【0084】
より好ましくは、熱可塑性樹脂を主材とするフラットヤーンを経糸及び緯糸として織成した織布の表裏少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂より成る表層膜を被着した基布を具備し、当該基布の片面に粘着剤が塗布された粘着テープを挙げることができ、更に好ましくは、該粘着テープにおいて、経糸又は緯糸の少なくとも一方に、同一方向に配向するフラットヤーンが非接着状態で全体的に重なり合った重層部を有する粘着テープを挙げることができる。このような粘着テープは、引張りや衝撃に対し高い強度を有し、さらに良好な柔軟性と展開性によって箱体の形状に対する追随性に優れるため、最上段の箱体群20の一体化を安定して、更なる荷崩れ防止効果が得られる。また、良好な柔軟性と展開性によって、高い作業効率を実現して、荷役を更に容易に短時間で行うことができる効果が得られる。
【0085】
粘着テープ4の幅は、20〜100mmの範囲であることが好ましい。粘着テープ4の幅がこの範囲内であれば、最上段の箱体群20の一体化を安定して、更なる荷崩れ防止効果が得られる。
【0086】
本発明の箱体積載物1は、別々に積載された箱体群からなる積載物を複合化して形成されてもよい。
【0087】
例えば、図3に示すように、別々に積載された箱体群20、20’からなる積載物10、10’が隣接され、各々の積載物10、10’の最上段に載置された箱体群20、20’を共に水平方向に束ねるように粘着テープ4が巻回され、荷重部20Tが形成されている。
【0088】
このような態様を用いれば、例えば、別々の運搬パレット上に形成された積載物10、10’を別々に車両に載置した後に、各々の積載物10、10’の最上段に載置された箱体群20、20’を共に水平方向に束ねるように粘着テープ4を巻回することで、容易に箱体積載物1を形成できる。
【0089】
次に、本発明の箱体積載方法について説明する。
【0090】
荷物を収納した立方体状又は直方体状の箱体2をXY面方向に総数2以上隣接させた箱体群20を、XY面方向に対して垂直なZ方向に複数段に積載する際に、Z方向に隣り合うすべての箱体2の間に防滑シートを介在させた後、最上段に載置された箱体群20のみをXY面方向に束ねるように粘着テープ4を巻回する。
【0091】
このようにして、粘着テープ4の巻回により一体化された最上段に載置された箱体群20からなる荷重部20Tと、荷重部20Tより下段側の箱体2及び防滑シート3からなる柔軟部20Fとが形成される。
【0092】
箱体群20を積載する工程と、粘着テープ4を巻回する工程は、必ずしも上記の順で行う必要はない。例えば、最初に2以上の箱体群20に粘着テープ4の巻回を行って荷重部20Tを形成しておき、箱体群20を積載する際に、あらかじめ形成された前記荷重部20Tを最上段に載置してもよい。
【0093】
各工程を装置により自動化することも好ましいことである。
【実施例】
【0094】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0095】
(実施例1)
粘着テープ30巻(重量12kg)を内部に封入した段ボール箱(型式:CS(AF)・A1型、寸法:幅286mm×長さ418mm×高さ266mm、材質:K220×SCP120×K220)を36個用意した。
【0096】
木製の運搬用パレット上に、XY面方向に3個×3個、Z方向に4段となるように段ボール箱を積み上げる際に、Z方向に隣り合うすべての段ボール箱の間に下記の製造方法で得た防滑シートを介在させた。
【0097】
さらに、最上段に載置された9個(3個×3個)の段ボール箱群のみをXY面方向に束ねるように下記の製造方法で得た粘着テープAを巻回して荷重部を形成し、箱体積載物を得た。
【0098】
<防滑シート>
基層となる高密度ポリエチレンの両面に、表層材料となる高圧法低密度ポリエチレンを重ねて、インフレーション成形法によって三層の積層フィルムを成形した。
【0099】
得られたフィルムをレザーを用いて一定幅にスリットした後、熱板方式によって温度110℃で7倍に延伸し、次いで、温度120℃の熱風循環オーブン内で6%の弛緩処理を行ない、肉厚構成比(表層:基層:表層)が10:80:10の670デシテックス、1.2mm幅のフラットヤーンを得た。
【0100】
得られたフラットヤーンを織機を用いてタテ5本/インチ、ヨコ5本/インチとなるように織成し、織成された布状体の両面に、メタロセン系触媒を用いて製造したエチレン・α−オレフィン共重合体系低密度ポリエチレンを押出しラミネーション法によって積層して、防滑シートを得た。
【0101】
<粘着テープA>
高密度ポリエチレンを素材とし、420デシテックス、1.15mm幅のフラットヤーンをタテ44本/インチ、ヨコ16本/インチとなるように織成し、織成された布状体の両面に、高圧法低密度ポリエチレンからなる表層膜を押出ラミネーション法によって積層し、基布を得た。
【0102】
得られた基布に、日本カーバイド工業社製ニカゾール「B−8829」100重量部に、日本カーバイド工業社製架橋剤「FX−1008」1.0重量部を配合してなるアクリル系粘着剤を20μmの塗布厚みで塗布し、25mm幅にスリットし、衝撃強度が1910N−cm/10mm、粘着力が0.3N/25mmの粘着テープAを得た。
【0103】
(比較例1)
実施例1において、Z方向に隣り合う段ボール箱の間に防滑シートを介在させないこと以外は実施例1と同様にして、箱体積載物を得た。
【0104】
(比較例2)
実施例1において、粘着テープの巻回を行わないこと以外は実施例1と同様にして、箱体積載物を得た。
【0105】
(実施例2)
実施例1において、粘着テープAに代えて、以下に示す粘着テープBを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、箱体積載物を得た。
【0106】
<粘着テープB>
38μmのPETフィルムに、粘着テープAで用いたものと同様のアクリル系粘着剤を20μmの塗布厚みで塗工して25mm幅にスリットし、衝撃強度が700N−cm/10mm、粘着力が0.3N/25mmの粘着テープBを得た。
【0107】
(実施例3)
実施例1において、粘着テープAに代えて、以下に示す粘着テープCを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、箱体積載物を得た。
【0108】
<粘着テープC>
高密度ポリエチレンを素材する100デシテックス、0.6mm幅のフラットヤーンをタテ46本/インチ、300デシテックス、高密度ポリエチレンを素材する1.2mm幅のフラットヤーンをヨコ16本/インチとなるように織成し、織成された布状体の両面に、高圧法低密度ポリエチレンからなる表層膜を押出ラミネーション法によって積層し、基布を得た。
【0109】
得られた基布に、粘着テープAで用いたものと同様のアクリル系粘着剤を20μmの塗布厚みで塗工し、25mm幅にスリットし、衝撃強度が570N−cm/10mm、粘着力が0.3N/25mmの粘着テープCを得た。
【0110】
(実施例4)
実施例1において、粘着テープAに代えて、以下に示す粘着テープDを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、箱体積載物を得た。
【0111】
<粘着テープD>
基布に、日本合成化学工業社製コーポニール「5672」100重量部に、日本ポリウレタン工業社製コロネート「L−55E」1.0重量部を配合してなるアクリル系粘着剤を40μmの塗布厚みで塗工した以外は、粘着テープAと同様にして、衝撃強度が1910N−cm/10mm、粘着力が2.0N/25mmの粘着テープDを得た。
【0112】
[評価方法]
1.傾斜試験
倉庫内に積載された段ボール箱をトラックなどの運搬用車両に積荷する際は、通常、フォークリフトが用いられる。また、フォークリフトでは、通常、載置面を傾斜させる運転が行われる。傾斜試験に優れる箱体積載物であれば、このようなフォークリフトによる運搬用車両への積荷の適性に優れるものと推定される。
【0113】
そこで、箱体積載物を載せたパレットをフォークリフトで持ち上げ、30度に傾けた時の段ボール箱の状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
【0114】
<評価基準>
○:段ボール箱の落下はなく、位置ずれも極僅かである。
△:段ボール箱の落下はないが、位置ずれが著しい。
×:18個以上の段ボール箱が崩れ、位置ずれも著しい。
【0115】
2.振動試験
箱体積載物を載せたパレットに、JIS Z0232(包装貨物 振動試験方法)の試験方法7.1.1(ランダム振動試験)に準じ、付属書Aの加速度パワースペクトル密度データを1分間のランダム振動波形に再現した振動を30回繰り返して与えた時の段ボール箱の状態を観察した。この振動条件は、高速運搬によって生じる振動に略相当する。
【0116】
段ボール箱の状態は、以下の項目で評価した。
【0117】
2−1 荷崩れ
荷崩れによる段ボール箱の落下は、段ボール箱内に収納された荷物に対して強い衝撃を与え、荷物を破損する原因となる。さらに、段ボール箱自体にも損傷(キズないし破断)を与える原因となり、段ボール箱の機械的強度を低下させたり、店頭に陳列した際に客の購買意欲を削いだりすることになる。本評価では、段ボール箱の落下だけでなく、蓄積により落下を誘発し得る位置ずれについても観察する。
【0118】
そこで、段ボール箱の位置ずれ及び落下を観察し、以下の評価基準で評価した。
【0119】
<評価基準>
◎:段ボール箱の落下はなく、位置ずれも極僅かである。
○:段ボール箱の落下はないが、位置ずれがやや大きい。
△:段ボール箱の落下はないが、位置ずれが著しい。
×:最上段の段ボール箱のみが落下し、位置ずれも著しい。
××:18個以上の段ボール箱が落下し、位置ずれも著しい。
【0120】
2−2 箱体損傷(キズないし破断)
本評価では、落下した段ボール箱以外の段ボール箱を箱体損傷の観察対象としており、即ち、落下の衝撃による損傷ではなく、積載物を構成する段ボール箱間に作用する力(衝突や摩擦)に起因する損傷を観察する。
【0121】
そこで、落下した段ボール箱以外の段ボール箱について、損傷の程度を観察し、以下の評価基準で評価した。
【0122】
なお、本評価では、粘着テープの剥離に伴う箱体の損傷(キズ生成)については観察しない。
【0123】
<評価基準>
◎:キズ、破断共に生じていない。
○:キズがやや目立つが、破断は生じていない。
△:キズの発生は著しいが、破断は生じていない。
×:キズの発生が著しく、一部に破断が生じた。
××:キズの発生が著しく、広範囲にわたって破断が生じた。
【0124】
2−3 印刷劣化
表面の印刷が劣化した段ボール箱は、店頭に陳列した際に客の購買意欲を削ぐことになる。さらに、商品の内容を表示した文字が摩耗劣化して誤読を招けば、例えば販売店において誤った売り場に搬入され、後で客が開封して初めて間違いが判明するなど広範に被害が及ぶ恐れがある。本評価では、箱体表面の印刷文字の劣化について観察するが、箱体表面の印刷文字の劣化が防止されていれば、同様に、箱体表面に印刷された画像や、ペンや鉛筆で記入された文字の劣化についても防止効果が得られるものと推定される。
【0125】
そこで、箱体表面の印刷文字の劣化状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
【0126】
なお、本評価では、粘着テープの剥離に伴う箱体表面の印刷文字の劣化については観察しない。
【0127】
<評価基準>
◎:劣化していない。
○:僅かに劣化しているが、読み取ることはできる。
△:劣化がやや大きいが、読み取ることはできる。
×:劣化が大きく、一部が読み取ることができない。
××:劣化が著しく、ほとんど読み取ることができない。
【0128】
3.剥離性
粘着テープを剥離した際の箱体の表面の状態(荒れ・剥がれ)は、箱体にキズを生じ、さらに、箱体表面に印刷又は記入された画像や文字の劣化を招く原因にもなる。
【0129】
そこで、上記した振動試験後に、最上段の箱体を巻回する粘着テープを剥離し、箱体の状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
【0130】
<評価基準>
○:剥離に伴う箱体の劣化は生じていない。
△:剥離面(箱体表面のうち粘着テープの粘着層が当接していた面)が荒れた。
×:剥離面及びその周辺が、粘着テープと共に剥がれた。
【0131】
まず、実施例1、比較例1及び比較例2の結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
次いで、実施例1〜4の結果を表2に示す。
【0134】
【表2】

【0135】
[評価]
まず、表1に示す結果より、箱体積載物の構成(防滑シート及び粘着テープの有無)による影響を評価する。
【0136】
Z方向に隣り合うすべての箱体の間に防滑シートが介在し、最上段に載置された箱体群のみをXY面方向に束ねるように粘着テープが巻回された実施例1の箱体積載物は、傾斜試験、及び、高速運搬によって生じる振動に略相当するランダム振動試験において、荷崩れ防止性、箱体損傷防止性及び印刷劣化防止性に優れる効果を奏することがわかる。また、箱体損傷防止性及び印刷劣化防止性に優れることから、箱体の振動も防止されていると評価できる。
【0137】
これに対して、防滑シートを有さない比較例1、2の箱体積載物は、高速運搬によって生じる振動に略相当するランダム振動試験において、段ボール箱の落下が生じることがわかる。また、ランダム振動試験において、段ボール箱にキズが多量に発生しており、印刷文字の劣化もやや大きいものとなった。
【0138】
次いで、表2に示す結果より、粘着テープの特性による影響を評価する。
【0139】
粘着テープの衝撃強度が600N−cm/10mm以上である実施例1、2及び4の箱体積載物は、傾斜試験及びランダム振動試験において、荷崩れ防止性、箱体損傷防止性、印刷劣化防止性に優れる効果を奏することがわかる。
【0140】
粘着テープの衝撃強度が600N−cm/10mmに満たない実施例3の箱体積載物は、実施例1、2及び4の場合と比較して、これらの効果にやや劣るものの、箱体や内容物に重大な損傷を引き起こす荷物の落下に至ることはない。
【0141】
粘着力が、0.1〜1.0N/25mmの範囲内である実施例1〜3の箱体積載物では、粘着テープの剥離に伴う箱体の劣化は生じていないことがわかる。
【0142】
なお、粘着力が、0.1〜1.0N/25mmの範囲を超える実施例4の箱体積載物は、粘着テープを剥離した際に、箱体の剥離面及びその周辺が、粘着テープと共に剥がれた。しかるに、粘着テープの剥離に伴う箱体のキズ(剥がれ)は、運搬時に生じるキズ(擦れ、へこみ)と区別可能であり、箱体の内容物の状態に対する不信感を与え難く、また、箱体表面に表示される画像や文字の位置や、粘着テープの巻回位置等を前もって適宜調整することで、画像や文字の劣化は容易に回避可能である。
【符号の説明】
【0143】
1:箱体積載物
2:箱体
20:箱体群
20T:荷重部
20F:柔軟部
3:防滑シート
4:粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を収納した立方体状又は直方体状の箱体をXY面方向に各々隣接して複数並設してなる箱体群を、XY面方向に対して垂直なZ方向に複数段に積載してなる箱体積載物において、
Z方向に隣り合うすべての箱体の間に防滑シートが介在し、
最上段に載置された箱体群のみをXY面方向に束ねるように粘着テープが巻回され、
前記粘着テープの巻回により一体化された前記最上段に載置された箱体群からなる荷重部と、該荷重部より下段側の箱体及び防滑シートからなる柔軟部とが形成されていることを特徴とする箱体積載物。
【請求項2】
前記粘着テープは、下記衝撃強度が600N−cm/10mm以上であることを特徴とする請求項1記載の箱体積載物。
<衝撃強度>
10mm幅×超1000mm長の試料を用い、半径1000mmで揺動するウエイト(10.8kg)で試料の一端を支持し、当該ウエイトの垂下位置から水平方向へ1000mm程度離隔した定位置で試料の他端を支持(一端の支持位置と他端の支持位置の間隔を1000mmとする。)した状態で、前記ウエイトを、前記定位置に向かって振り上げ次いで放すという一連の作業を行い、前記試料の破断が生じた振り上げ角度θを下記算出式へ代入し、導かれた数値をいう。
<算出式>
衝撃強度(N−cm/10mm幅)=(1−cosθ)×W×L
【請求項3】
前記粘着テープは、粘着力(JIS Z0237の規定に準拠)が、0.1〜1.0N/25mmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の箱体積載物。
【請求項4】
前記粘着テープは、熱可塑性樹脂を主材とするフラットヤーンを経糸及び緯糸として織成した織布の表裏少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂より成る表層膜を被着した基布を具備し、当該基布の片面に粘着剤が塗布されてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の箱体積載物。
【請求項5】
前記粘着テープは、経糸又は緯糸の少なくとも一方に、同一方向に配向するフラットヤーンが非接着状態で全体的に重なり合った重層部を有することを特徴とする請求項4記載の箱体積載物。
【請求項6】
前記防滑シートは、一軸延伸された熱可塑性合成樹脂線条体からなる布状体の両面に、下記算出式によって求められる戴荷特性NSが50〜300のエチレン−α−オレフィン共重合体からなる防滑層が積層されてなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の箱体積載物。
<算出式>
戴荷特性NS=動摩擦係数×10/加圧応力(N)
上記算出式において、加圧応力は、厚さ2mmのシートを成形し、これに先端が直径3.0mmの球状をした金属棒でシート表面を押圧して、金属棒の先端がシートに1mm嵌入するときの荷重をもって示される値とし、動摩擦係数は、JISK−7125によって測定される値とする。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の箱体積載物を車両に積載して高速運搬することを特徴とする箱体積載物の運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46193(P2012−46193A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187693(P2010−187693)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(390019264)ダイヤテックス株式会社 (53)
【Fターム(参考)】