説明

節句人形収納箱

【課題】節句人形の飾り付けや片付けに要する工程数が少なくて容易であり、必要なスペースも狭くてすみ、コンパクトな節句人形収納箱を提供することを目的とする。
【解決手段】節句人形及びその付属品を収納する収納容器と、該収納容器の開口を覆う上蓋とを備えた節句人形収納箱において、前記上蓋の上面には、前記節句人形の後方に飾られる屏風が上下に回動可能、且つ立設可能に取り付けられており、該屏風を立設状態とした場合に該屏風の前方に前記節句人形及びその付属品を載せるための載置部が形成されていることを特徴とする節句人形収納箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節句人形の飾付け、片付けの際その手間と余分なスペースを要せず、且つコンパクトである節句人形収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の核家族化、共稼ぎの増加、マンション等の住宅事情により、時間的な余裕の減少や生活空間の狭小化を招いている。このため、節句人形においても、広いスペースと飾るのに手間を要する、多段飾りの節句人形は敬遠され、簡易な一段雛が好まれる傾向にある。更に、近頃では、節句パーティ、ひな祭りツアー等、節句が家族で楽まれるとともに、友人と旅先で楽しまれる時代になりつつある。このため、運搬が可能で、飾り付けおよび片付けが容易で、飾り付けた状態で雛人形、付随道具、付随小道具、五月人形等が紛失、落下等しない節句飾りが求められている。
【0003】
こうした傾向を考慮し、簡単に飾りつけができる節句人形収納箱の提案もなされている(特許文献1)。この節句人形収納箱では、殿および姫の雛人形、及び付随する屏風、親王台、雪洞等の付属品を収納する箱本体と、内蓋及び上蓋とからなり、折り畳み自在な屏風を内蓋に取り付けている。内蓋に取り付けた屏風を展開して立て、内蓋上面を飾り台上面とすることで、節句人形収納箱を飾り台として使用できる。このため、節句人形を飾っている間においても、節句人形収納箱を一時的に保管する場所を確保する必要がないという利点を有する。
【0004】
【特許文献1】特開2000−167258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の節句人形では、その飾り付けに多くの工程を要していた。すなわち、飾り付けに際しては、(1)収納箱の中に収容されている人形や屏風等を保護していたパッキンをはずして取り出し、(2)収容箱の中にパッキンを入れて一時的にどこかへ収容し、(3)取り出した人形等を飾り棚の上に飾る。また、片付けに際しても逆の工程をたどる。すなわち、(4)収容箱の中のパッキンを取り出し、(5)人形等をパッキンで包み、収容箱に入れる。このように、飾り付けと片付けの工程に多くの手間と時間を要し、その工程を進める際には上蓋、箱等を一時的に置くための余分のスペースの確保が必要であるという問題があった。
【0006】
その点、上記特許文献1の節句人形収納箱では、収納箱を飾り台として使用できるため、収納箱を一時的に保管するスペースは必要なくなるものの、飾り付けと片付けには、やはり多くの工程が必要とされ、手間と時間を要していた。
【0007】
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであり、節句人形の飾り付けや片付けに要する工程数が少なくて容易であり、必要なスペースも狭くてすみ、コンパクトな節句人形収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の節句人形収納箱は、節句人形及びその付属品を収納する収納容器と、該収納容器の開口を覆う上蓋とを備えた節句人形収納箱において、前記上蓋の上面には、前記節句人形の後方に飾られる屏風が上下に回動可能、且つ立設可能に取り付けられており、該屏風を立設状態とした場合に該屏風の前方に前記節句人形及びその付属品を載せるための載置部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の節句人形収納箱は、屏風が上蓋の上面に取り付けられているため、紛失する心配が無い。また、屏風を収納容器から取りだす手間もないため、飾りつけの手間が少なくなる。さらには、該屏風を上方へ回動させて立設状態とするだけで、屏風の飾り付けが終了するため、屏風の飾り付け位置について迷うこともなく、速やかに飾り付けをすることができる。また、屏風の前方の載置部に、節句人形及びその付属品を載せることができるため、人形収納箱を飾り台として使用でき、人形収納箱を一時的に保管するスペースは必要なくなる。
したがって、本発明の節句人形収納箱によれば、節句人形の飾り付けや片付けに要する工程数が少なくて容易であり、必要なスペースも狭くてすみ、コンパクトな節句人形収納箱となる。
【0010】
本発明の節句人形収納箱において、節句人形にあらかじめ扇、冠、刀、杓等の小道具を取り付けておけば、節句人形への小道具の取付けと取外しや、小道具の取り出しや収容の手間が掛からないため、さらに好適となる。
【0011】
屏風は前記上蓋に重ねられた状態において該上蓋の上面と面一となるように凹部に収容されていることも好ましい。こうであれば、屏風を上蓋の凹部に収容した状態でも目立つことがなく、すっきりした形状となる。
【0012】
前記上蓋は前記収納容器の一端で開閉可能に取り付けられていることが好ましい。こうであれば、上蓋が収納容器と一体とされるため、上蓋の紛失の心配がなく、上蓋を一時的に保管するスペースも不要となる。
【0013】
前記載置部には、節句人形及び/又はその付属品の下端形状と整合する載置孔が所定の位置に凹設されていることも好ましい。こうであれば、節句人形やその付属品を飾り付ける際に、飾り付け位置について迷うこともなく速やかに飾り付けることができる。また、節句人形や付属品の下端が載置孔と嵌合可能とすれば、節句人形や付属品が倒れることを防止することができる。また、載置孔の底面又は底面の下に磁石又は磁性体を設け、転倒防止を図ることも可能である。
【0014】
また、前記収納容器の内部には、前記節句人形及びその付属品と嵌合可能な収納孔が所定の位置に凹設されていることも好ましい。こうであれば、節句人形及びその付属品の存否の確認が容易となり、紛失を防止することができる。また、節句人形及びその付属品の収納にパッキンや箱や袋等が要らず、収納容器の小型化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、節句人形収納箱Sは、節句人形や付属物を収容する直方体容器形状をなす収納容器1と、収納容器1の開口を塞ぐ上蓋10とを備えており、上蓋10は、図2に示すように、後端で収納容器1と蝶番20a、20bにより開閉可能に取り付けられている。
【0016】
収納容器1の内部には、図3に示すように、紙製の緩衝材からなる収納部材2が敷き詰められており、収納部材2には、節句人形やその付属品を納めるために、節句人形やその付属品の形状と整合する収納孔2a〜2fが凹設されている。図4に示すように、収納孔2aには殿3a、収納孔2bには姫3b、収納孔2c,2dには雪洞3c,3d、収納孔2e,2fには親王台3e,3fがそれぞれ上半分を露出してはめ込まれている。この他、官女、五人囃子、随身、仕丁等の雛人形とそれに付随する、蜀台、三宝、菱餅、貝桶、花などの収納孔や、五月の節句用の場合には、子供大将、大将等の五月人形とそれに付随する鯉幟、幟、兜、鎧、太刀、弓矢等の収容孔を設けてもよい。殿や姫などの節句人形は、衣装着人形、木目込人形、和紙人形、陶器人形、木製人形などでもよく、金属、張子、粘土、土などにより製したものでもよい。また、節句人形は扇、冠、刀、杓等の小道具があらかじめ取り付けられた状態で取り付けられていてもよい。
【0017】
図1に示すように、上蓋10の上面10aには、屏風12がヒンジ13によって後ろにスペースを少し残しつつ、回動可能にかつ立設可能に取り付けられている。屏風12の幅は上蓋10の幅より少し短く、左右にスペースが設けられている。屏風12は上蓋10に重ねられた状態において上蓋10の上面と面一となるように、凹部14に収容されている。凹部14が載置部である。また、図3及び図4に示すように、上蓋10の収納容器1の開口部に対向する面には、スポンジなどの弾性部材10cが取り付けられている。
【0018】
図5に示すように、凹部14の前方左右の位置に、雪洞を載置するための円形形状の載置孔15a、15bが凹設されており、凹部14の後方左右に、親王台を載置するための矩形形状の載置孔16a、16bが凹設されている。なお、前記載置孔15a、15b、16a、16bの形状は、節句人形及びその付属品の下端の形状に合わせて適宜変更可能である。また、載置孔15a、15bの底部には図示しない磁石が埋め込まれている。なお、磁石の代わりに面ファスナーを設けたり、ゴム止めを施すなどして雪洞の転倒を防止するようにしてもよい。
【0019】
前記の収納容器1、上蓋10、屏風12の材質については特に限定はなく、木製、金属製、硬質プラスチック製、紙製等を用いることができる。また、節句人形収納箱Sに豪華さを醸し出すために、色付けしたり、絵柄を施すなどの装飾を施すこともでき、蜀台、雪洞に灯りを灯すこともできる。更に節句の雰囲気を高めるために、収納容器1に電子オルゴールを収納させてもよく、該電子オルゴールは録音可能なものを用いてもよい。更に又、本発明の節句人形収納箱Sに、取っ手その他の運搬手段を設けてもよく、ワンタッチ収納プレート等を設けてもよい。
【0020】
以上のように構成された節句人形収納箱Sの組み立て方について説明する。
図1に示す節句人形収納箱Sの上蓋10を開ける。そして、図4に示す殿3a、姫3b、雪洞3c,3d及び親王台3e,3fを取り出し、上蓋10を閉める。そして、図5に示すように、屏風12の前端部を指で上方に引き上げて、屏風12を立設させる。そして、先に取り出した殿3a、姫3b、雪洞3c,3d及び親王台3e,3fについて、図6に示すように、雪洞3c,3d及び親王台3e,3fを対応する載置孔15a、15b、16a、16bに嵌め込み、この親王台3e,3fの上に殿3a、姫3bを載置する。こうして、飾り付けが終了する。
【0021】
また、飾り付けた節句人形を片付けるには、上記の飾り付けの逆を行えばよい。すなわち、殿3a、姫3bを載置台から取外し、載置孔15a、15b、16a、16bに嵌め込まれている雪洞3c,3d及び親王台3e,3fを取り出す。そして、屏風12の上端部を指で手前に倒して、図1に示すように、屏風12を凹部14に収容する。そして、上蓋10を開け図4に示すように、収納孔2a、2b、2c,2d、2e,2fに対応する殿3a、姫3b、雪洞3c,3d、親王台3e,3fを嵌め込む。そして、上蓋10を閉めて片付けが終了する。
【0022】
以上のように、実施例の節句人形収納箱では、図1に示すように、屏風12が上蓋10の上面10aに取り付けられているため、紛失の心配がない。また、屏風12を収納箱から取りだす手間もないため、飾りつけの手間が少なくなる。さらには、屏風12を上方へ回動させて立設状態とするだけで、屏風12の飾り付けが終了するため、屏風12の飾り付け位置について迷うこともなく、速やかに飾り付けをすることができる。また、屏風12の前方の凹部14に、節句人形及びその付属品を載せることができるため、人形収納箱Sを飾り台として使用でき、人形収納箱Sを一時的に保管するスペースは必要なくなる。
【0023】
また、節句人形にあらかじめ扇、冠、刀、杓等の小道具を取り付けておけば、節句人形への小道具の取付けと取外しや、小道具の取り出しや収容の手間が掛からないため、さらに好適となる。
【0024】
また、上蓋10は、収納容器1の後端で開閉可能に取り付けられているため、上蓋10を紛失する心配が無く、また一時的に保管するスペースも不要となる。
【0025】
また、収納容器1の内部には、節句人形及びその付属品と嵌合可能な収納孔2a〜2fが所定の位置に凹設されているため、節句人形及びその付属品の存否の確認が容易である。さらには、節句人形及びその付属品の収納にパッキン、箱、袋等が要らず、収納容器のスペースを小さくすることができるため、節句人形収納箱のコンパクト化が可能となる。
【0026】
また、上蓋10の上面10aに屏風12が回動可能且つ立設可能に取り付けられているため、片付けが速やかにでき手間が掛からない上、上蓋10等を保管するスペースを確保する必要もない。
【0027】
また、上蓋10の収納容器1の開口部に対向する面には、スポンジなどの弾性部材10cが取り付けられているため、上蓋10を閉じることにより収納容器1の所定の収納孔2a〜2fに嵌め込まれた節句人形(殿3a、姫3b)及びその付属品(雪洞3c,3d、親王台3e,3f)は、運搬等に際し破損等から保護される。
【0028】
また、節句人形及びその付属品の下端形状と整合する載置孔15a、15b、16a、16bが所定の位置に凹設されているため、節句人形やその付属品を飾り付ける際に、飾り付け位置について迷うこともなく速やかに飾り付けることができる。また、節句人形や付属品の下端が載置孔と嵌合可能とすれば、節句人形や付属品が倒れることを防止することができる。また、載置孔の底面又は該底面の下に磁石又は磁性体を設けるならば、転倒防止を図ることができるため、バスや電車等の移動手段内での鑑賞も可能となる。
【0029】
収納容器1に録音可能な電子オルゴールを収納させた場合は、節句のメロディーの他、節句の歌、親族のメッセージも録音再生することができる他、電子オルゴールの出し入れの手間を無くし、紛失防止にもなる。
【0030】
さらに、節句人形収納箱Sの一部に取っ手その他の運搬手段を設けた場合は、節句人形収納箱Sがコンパクトであるため運搬が容易であり、希望する場所で節句飾りを手軽に鑑賞することができる。
【0031】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例の節句人形収納箱の節句人形等を収容した状態での斜視図である。
【図2】実施例の節句人形収納箱の節句人形等を収容した状態での背面図である。
【図3】実施例の節句人形収納箱の上蓋を開けた状態での平面図である。
【図4】実施例の節句人形収納箱の上蓋を開け、節句人形等を収容した状態の平面図である。
【図5】実施例の節句人形収納箱の屏風を立設した状態での斜視図である。
【図6】実施例の節句人形収納箱の節句人形等を飾り終えた状態での斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
S…節句人形収納箱
1…収納容器
2a,2b,2c,2d,2e,2f…収納孔(2a…殿収納用,2b…姫収納用,2c,2d…雪洞収納用,2e,2f…親王台収納用)
3a,3b…節句人形(3a…殿,3b…姫)
3c,3d,3e,3f…付属品(3c,3d…雪洞,3e,3f…親王台)
10…上蓋
10a…上面
12…屏風
14…凹部(載置部)
15a,15b,16a,16b…載置孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
節句人形及びその付属品を収納する収納容器と、該収納容器の開口を覆う上蓋とを備えた節句人形収納箱において、
前記上蓋の上面には、前記節句人形の後方に飾られる屏風が上下に回動可能、且つ立設可能に取り付けられており、該屏風を立設状態とした場合に該屏風の前方に前記節句人形及びその付属品を載せるための載置部が形成されていることを特徴とする節句人形収納箱。
【請求項2】
前記屏風は前記上蓋に重ねられた状態において該上蓋の上面と面一となるように凹部に収容されていることを特徴とする請求項1記載の節句人形収納箱。
【請求項3】
前記上蓋は前記収納容器の一端で開閉可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の節句人形収納箱。
【請求項4】
前記載置部には、節句人形及び/又はその付属品の下端形状と整合する載置孔が所定の位置に凹設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の節句人形収納箱。
【請求項5】
載置孔の底面又は該底面の下には、磁石又は磁性体が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の節句人形収納箱。
【請求項6】
前記収納容器の内部には、前記節句人形及びその付属品と嵌合可能な収納孔が所定の位置に凹設されていることを特徴とする請求項1又は5記載の節句人形収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−100845(P2009−100845A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273447(P2007−273447)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(501346423)株式会社石塚人形 (2)
【Fターム(参考)】