説明

節水具

【課題】節水時に水量を削減しても水勢を維持し、利用者の使用感を損ねることのない節水具を提供する。
【解決手段】本発明の節水具は、内部に複数の貫通水路(7)を有する本体(2)と、本体(2)の中心軸沿いに延長、突起した軸心(3)と、本体(2)と一体で該中心軸と直交する方向に突起したフランジ(4)と、内部が中空で軸心(3)に自由回転可能に挿入したプロペラシャフト(5)と、プロペラシャフト(5)と一体成形した断面が略S字状の螺旋曲面を持つ複数のプロペラ(6)と、を備える。前記複数の貫通水路(7)で絞られた高圧の水流が複数のプロペラ(6)に次々と当たることでプロペラ(6)は連続的に高速で回転し、該回転により水流に高速回転的な推力を加えて水流の勢いを増す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は節水具に関し、特に節水する際に水道の流路を絞って水量が減少しても水勢を維持する節水具に関する。本発明は更に、該節水具を使ったシャワーヘッド、及び本発明の原理を利用した各種の水噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の一環として、水資源保護が社会的に要求されている。特に都市部では水道料金も高いことから、ホテルや病院、オフィスビルなど、大型公共施設を中心に、様々な工夫をして節水に努めている。
【0003】
節水を可能にする最も容易な従来方法は、水道の流路に節水コマを取付けて、水量を削減することである。しかし水量を削減すると水勢が弱まり、利用者は、例えばシャワーや手洗いをする際に、物足らなさなどの違和感を感じるようになる。そこで例えば特許文献1のように、多くの節水コマでは流路を様々に工夫して水の減少感を緩和しようとしている。
【特許文献1】特許公開平9−95985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記の特許文献1では節水コマ内の複数の流路の角度を変えて水流をひねって、ボリューム的な減少感を緩和しているが、吐水の水勢自身が弱いので、やはり物足らなさを感じ、使用感を損ねざるを得ない。他にも同様の目的で多くの節水具が提案、出願されているが、いずれも同様の問題があり、十分な解決策にはなっていない。
【0005】
従って本発明の目的は、節水時に水量を削減しても水勢を維持し、利用者の使用感を損ねることのない節水具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明の実施態様によれば、内部に複数の貫通水路(7)を有する本体(2)と、本体の中心軸沿いに延長、突起した軸心(3)と、本体と一体で、該中心軸と直交する方向に突起したフランジ(4)と、内部が中空で軸心に自由回転可能に挿入したプロペラシャフト(5)と、プロペラシャフト(5)と一体成形し、断面が略S字状の螺旋曲面を持つ複数のプロペラ(6)と、を備え、本体(2)は更に、該中心軸に沿って軸心(3)の延長部(8)を嵌入する挿入穴(9)を備え、軸心(3)は更に前記プロペラシャフト(5)の抜け防止用のストッパ部(11)を有し、複数の貫通水路(7)で絞られた高圧の水流が前記複数のプロペラに次々と当たることでプロペラ(6)を連続的に高速で回転し、該回転により水流に推力を加えて水流の勢いを増すことを特徴とする節水具(1)を提供する。
【0007】
該節水具(1)は、複数のプロペラ(6)数を3枚として互いに120度の角度をなし、複数の貫通水路(7)の数を6本とすることが好適である。
【0008】
また、該節水具の他の応用例として、該節水具を例えば噴水装置の噴出口近くに取り付けると、噴水の勢いや到達距離を増大する噴水装置を提供できる。
【0009】
更に、該節水具を例えば消防ホースの吐出口近くに取り付けると、吐水の勢いや到達距離を増大可能な消防装置を提供できる。
【発明の効果】
【0010】
複数の貫通水路で絞られた高圧の水流が複数のプロペラに次々と当たることでプロペラを連続的に高速で回転し、該回転により水流に推力を追加して水流の勢いを増すことで、水道本来の圧力を効率的に吐水に転移でき、また吐水に回転が加わることで、節水により水量が減少しても水の勢いを維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の節水具1の斜視図で、図2は節水具1の断面図である。図3は節水具1をシャワーヘッド14とホース15間に取付ける際の方法を示す。
【0012】
図示するように本発明の節水具1は、本体2と、本体2の中心軸沿いに延長、突起した軸心3と、同じく本体2と一体で、該中心軸と直交する方向に突起したフランジ4と、内部が中空で軸心3に自由回転可能に挿入したプロペラシャフト5と、プロペラシャフト5と一体成形した断面が略S字状の螺旋曲面を持つ複数のプロペラ6とを備える。また本体2内には該中心軸を中心として複数の貫通水路7を設ける。更に本体2の該中心軸沿いに、軸心3が図の下方に延長した延長部8を嵌挿する挿入穴9を設ける。またパッキン10を、フランジ4上で本体2の周りに配置する。更に軸心3はプロペラシャフト5の抜けを防止するためのストッパ部11を有する。プロペラシャフト5とストッパ部11との間及びプロペラシャフト5と本体2との間には、プロペラ6の回転をスムーズにするスペーサ12,13をそれぞれ設ける。
【0013】
ここでプロペラシャフト5とプロペラ6は軽くて丈夫な、例えばプラスチックで成形し、パッキン10は合成ゴムとする。その他の部分はステンレススチールが望ましい。
【0014】
上記の節水具1の組立ては、まず、軸心3にプロペラシャフト5を通し、プロペラシャフト5を通したまま本体2の挿入穴9に軸心3を挿入する。そして本体2の反対側に出た軸心3の先端部分をカシめることで本体2と軸心3を固定し、プロペラ6を軸心3について自由回転可能なまま固定する。
【0015】
以上のような構成の節水具1において水道水を流すと、図2、3で矢印で示すように、水流は本体2に関してプロペラ6と反対側から本体2の複数の貫通水路7に入り、それぞれの水流は次々とプロペラ6に当たる。プロペラ6は図示するように断面が略S字状の螺旋曲面を持つ。そこでそれぞれの水流が例えばプロペラ6上部に当たるとプロペラ6に反時計方向に回転する力を与え、プロペラ6は連続的に高速で回転する。
【0016】
プロペラ6が高速で回転すると、上記の略S字状の裏面の曲面は水流を押し出すので、水流に回転的な推力を与えることになる。それぞれの水流は貫通水路7で水量が絞られているので高圧になっているが、本発明の複数のプロペラ6はその圧力を受けて効率よくプロペラ6全体の回転力に変化させ、一種のポンプあるいは船のスクリューのような形で、水流に回転的な推力を加える。
【0017】
ここで人間が体感的に感じる水の勢いは、水量や水圧の他に、流速や流れの方向、距離なども関係している。
【0018】
従来の節水具の場合、水量を絞る中で吐水圧も下がり、水道が元々有する水圧を効率的に利用できなかっただけでなく、流速や流れの方向などに関しても有効な変化を与えることができず、水の勢いが不十分であった。
【0019】
しかし本発明の節水具1の場合、水量は下がっても水道が元々有する水圧を効率的に利用して上記の回転的な推力に変えて水圧を維持するだけでなく、吐水に従来の節水具とは比較にならない程の高速回転を与え、吐水量が減っても水の勢いを持続させることができる。その結果、従来の節水具と本発明の節水具1について、同一水量を想定して比較すると、約20%、水圧が増大することが実験から分かっている。
【0020】
図4の表1に、本発明の節水具をシャワーヘッドに取付けた際の節水効果を具体的に示す。表1は、本発明の節水具を取付けたそれぞれの口径のホースに、所定の水流を流して一定時間後にどれだけの水量が流れたか、すなわち何%の節水効果が得られたかを示す。水圧はすべてのケースにおいて一定とし、0.32MPaであった。ここで吐水の勢いの体感度は、口径がφ1.9〜2.0の場合は節水具を取付けていない標準時と比べて強く、φ1.5〜1.8ではほぼ同じで、φ1.4では弱い、という結果が得られた。すなわち20〜40%ほどの節水効果がありながら、水の勢いは標凖時と変わらないという良好な結果がえられた。
【0021】
また図4の表2に、本発明の節水具を取付けたシャワーヘッドを、標準のシャワーヘッド及び従来の代表的な節水シャワーヘッドとの性能を比較した表を示す。表2は、節水具を取付けていない標準シャワーヘッドと比較した、一定時間後の吐水量と、節水効果率と、吐水の飛距離、及び標準シャワーヘッドの飛距離との差とを示す。上記の表では従来品と本発明品の節水効果と飛距離はほぼ同等であるが、体感度については大きな差がある。すなわち従来品は本発明品に比べて、スクリーンの吐水穴の穴径が倍である一方、穴数はかなり少なく、シャワーとして心地良いものとは云えない。しかし本発明品は水勢を維持できるので、穴径が細く、穴数が3.5倍であっても同等の節水効果と飛距離を出してシャワーとして違和感を感じず、心地よい肌触りを提供できる。
【0022】
なお、プロペラ6をスムーズかつ効率的に回転し、吐水に効率的に推力を与えるには、プロペラ6の数は3枚が好ましく、また本体2内の貫通水路7の数は6本が好ましい。それ以外の数ではプロペラ6がスムーズに回転しなかったり、吐水に効率的に推力を与えることができない。
【0023】
以上、本発明の節水具1を説明したが、その吐水の勢いを持続ないし増大する原理は、節水具以外の水噴射装置にも利用できる。例えば噴水装置に利用すれば噴水の勢いや到達距離を増大でき、消防装置に利用すれば、消防水の飛距離を増大できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の節水具1の斜視図である。
【図2】該節水具1の断面図である。
【図3】該節水具1を実際にシャワーヘッドに取付ける際の方法を示す。
【図4】本発明の節水具をシャワーヘッドに取付けた際の性能、及び該シャワーヘッドを標準シャワーヘッド及び従来の代表的な節水シャワーヘッドと性能比較した表である。
【符号の説明】
【0025】
1 節水具
2 本体
3 軸心
4 フランジ
5 プロペラシャフト
6 プロペラ
7 貫通水路
8 延長部
9 挿入穴
10 パッキン
11 ストッパ部
12 スペーサ
13 スペーサ
14 シャワーヘッド
15 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の貫通水路を有する本体と、
前記本体の中心軸沿いに延長、突起した軸心と、
前記本体と一体で、該中心軸と直交する方向に突起したフランジと、
前記内部が中空で前記軸心に自由回転可能に挿入したプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトと一体成形し、断面が略S字状の螺旋曲面を持つ複数のプロペラと、を備え、
前記本体は更に、前記本体の該中心軸に沿って、前記軸心の延長部分を嵌入する挿入穴を備え、前記軸心は更に前記プロペラシャフトの抜け防止用のストッパ部を有し、
前記複数の貫通水路で絞られた高圧の水流が前記複数のプロペラに次々と当たることで前記プロペラを連続的に高速で回転し、該回転により吐水流に推力を追加して水流の勢いを増すことを特徴とする節水具。
【請求項2】
前記本体内の前記複数の貫通水路の数を6本とし、前記複数のプロペラの数を3枚としてそれぞれに対して120度の角度をなすことを特徴とする請求項1の節水具。
【請求項3】
前記節水具を噴水装置の噴出口近くに取り付け、噴水の勢いや到達距離を増大することを特徴とする噴水装置。
【請求項4】
前記節水具を消防ホースの吐出口近くに取り付け、吐水の勢いや到達距離を増大することを特徴とする消防装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−186970(P2007−186970A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28938(P2006−28938)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(504233959)
【Fターム(参考)】