説明

節水器具

【課題】吐水量を制限しつつ、水の吐出方向を容易に調節できるようにする。
【解決手段】蛇口2の給水口3に取り付けられるケーシング11と、内部に給水される水流を絞る通水孔23が形成された絞り部材21と、通水孔23と繋がる複数の吐水孔32が形成され、一方の面を、吐水側開口部13に臨む吐水面31aとして絞り部材21と組み合わされるノズル部材31と、ケーシング11内に配設され絞り部材21と摺接するパッキン51とを備え、絞り部材21とノズル部材31との組立体54は、外面が略半球面状をなし、パッキン51の摺接面が球面状座面をなし、組立体54がケーシング11内において転動し、ノズル部材31の吐水面31aの角度が可変に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水量調節可能に節水を行いながら水流の吐出方向を調節することができる節水器具に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、先に、下記特許文献1記載の節水器具を提案している。この節水器具では、水圧を調節することで節水を行うようにし、水圧が低減されることで、吐出孔から吐出される水流が飛散し、周囲が汚損することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/044703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吐出孔より吐出される水が飛散することを防止するには、水圧の他、吐出方向の制御も水圧や吐水量との関係で重要である。例えば、洗面化粧台の洗面器に対して吐水されるとき、水圧が高く吐水量が多すぎると、吐水や水滴が洗面器の外にまで飛散してしまうおそれがある。特に、洗面器の上の方に向かって吐水されたときには、水滴が洗面器の外にまで飛散し易い。
【0005】
本発明は、吐水量を制限しつつ、水の吐出方向を容易に調節することができる節水器具を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、水の吐出方向の制御の他、吐水量や吐水形態も調節することができる節水器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る節水器具は、給水口に取り付け得る取付開口部と、吐水側として開口した吐水側開口部と、を有してなる略筒状のケーシングと、上記ケーシング内において、上記給水口より給水される水流を絞る通水孔が形成された絞り部材と、上記通水孔と繋がる複数の吐水孔が貫穿され、上記吐水側開口部に臨む吐水面を有し、上記絞り部材と組み合わされて組立体を構成するノズル部材と、上記ケーシング内に配設され、上記組立体との水密性と上記給水口との水密性を確保するパッキンとを備える。
【0008】
上記絞り部材と上記ノズル部材とを含んで構成される上記組立体の外表面が、略半球面状をなし、上記パッキンの上記組立体の略半球面状の外表面と接する面が、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなし、上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部が、上記組立体の最大外径より小さい内径部を有し、上記組立体は、上記パッキンの略球面状の座面に対して摺動可能に配設され、上記吐水面の角度を可変とする。
【0009】
上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部は、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなすようにしても良い。
【0010】
また、上記絞り部材と上記ノズル部材との組立体は、球体の最大直径部分を含むと共に上記吐水側開口部側に上記最大直径以下の直径の面を有する略半球状をなし、上記最大直径以下の直径の面が上記吐水面となるようにしても良い。
【0011】
更に、上記ノズル部材は、上記複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成されており、上記絞り部材は、上記複数の吐水孔の内の何れかの吐水孔を選択的に閉塞する閉塞突起を有し、上記ノズル部材は、上記絞り部材に対して回転可能であり、上記ノズル部材は、回転することによって、すべての吐水孔を開放する準節水位置と上記吐水孔の何れかを上記閉塞突起で閉塞する節水位置とに切り替わるようにしても良い。
【0012】
例えば、上記ノズル部材は、上記環状の吐水孔列が同心円をなすように複数形成され、回転することによって、上記何れかの環状の吐水孔列が上記絞り部材の閉塞突起によって閉塞され節水位置となる。
【0013】
また、上記ノズル部材には、上記絞り部材の通水孔の開口量を調節して吐水量を調節する水量調節体を取り付けるようにしても良い。
【0014】
例えば、上記絞り部材の通水孔には、第一の孔部が複数穿孔され、上記水量調節体には、第二の孔部が形成され、上記水量調節体は、上記ノズル部材に対して回転することで、上記第一の孔部と上記第二の孔部とのずれ量が変わり吐水量を調節する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケーシング内に、絞り部材とノズル部材が設けられることで、吐水量を絞り節水することができる。加えて、絞り部材とノズル部材との組立体は、パッキン内に転動可能且つ摺動可能に取り付けられ、上記吐水面の角度を調節することが可能である。したがって、水の吐出方向を容易に調節することができる。そして、節水をしながら、水圧を上げたときにも、吐出方向を調節することで、吐水や水滴が洗面器の外にまで飛散して、洗面器の周囲が汚損することを防止できる。
【0016】
また、本発明では、ノズル部材の環状の吐水孔列を、絞り部材の閉塞突起で選択的に閉塞するようにしたことで、吐水形態を変えて吐水量調節を行うことができる。
【0017】
更に、本発明では、ノズル部材に絞り部材の通水孔の開口量を調節して吐水量を調節する水量調節体が取り付けられ、この水量調節体によっても吐水量を調節することができる。
【0018】
すなわち、本発明では、吐出方向と吐水量の調節を容易に行うことができ、吐出方向と吐水量のバランスを調節することで、例えば吐水や水滴が洗面器の外にまで飛散することを簡単な操作で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用された節水器具の分解断面図である。
【図2】本発明が適用された節水器具の外周吐水孔列の吐水孔と内周吐水孔列の吐水孔がある位置の断面図である。
【図3】本発明が適用された節水器具の外周吐水孔列の吐水孔のみがある位置の断面図である。
【図4】ケーシングを示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図5】絞り部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図6】ノズル部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は外周吐水孔列の吐水孔と内周吐水孔列の吐水孔がある位置のA−A’断面図、(C)は外周吐水孔列の吐水孔のみがある位置のB−B’断面図、(D)は底面図である。
【図7】閉塞突起と係合凹部の関係を示す内周吐水孔列に沿った断面図であり、(A)は閉塞突起が吐水孔を閉塞した状態を示し、(B)は吐水孔を開放した状態を示す。
【図8】ノズル部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図9】絞り部材の第一の孔部と水量調節体の第二の孔部との重なり度合いを示す平面図であり、(A)、(B)の順に閉じ、(C)が最も閉じた状態であり、(D)は、再度(B)の程度まで開いた状態を示す。
【図10】パッキンを示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図11】本発明が適用された節水器具が外周吐水孔列からのみ吐水する状態を示す断面図であり、(A)は真下に吐水する状態、(B)は図中左側に向けて吐水する状態、(C)は図中右側に向けて吐水する状態を示す。
【図12】本発明が適用された節水器具が外周及び内周の吐水孔列から吐水する状態を示す断面図であり、(A)は真下に吐水する状態、(B)は図中左側に向けて吐水する状態、(C)は図中右側に向けて吐水する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された節水器具について図面を参照して説明する。
【0021】
[全体構成]
図1−図3に示すように、本発明が適用された節水器具1は、水道の蛇口2の給水口3に取り付けられるケーシング11と、蛇口2の給水口3より給水される吐水量を絞る絞り部材21と、水を吐出するノズル部材31と、ケーシング11内に配設されて蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止する水密用のパッキン51とを備えている。
【0022】
[ケーシングの説明]
ケーシング11は、図1−図4に示すように、筒状に形成され、一端が、蛇口等の給水口3に取り付けられる取付開口部12となっており、他端が、水を吐出する側として構成される吐水側開口部13となっている。取付開口部12の内周面には、ねじ溝12aが形成されており、蛇口2のねじ部に締め付けることによって、ケーシング11が蛇口等に取り付くようになっている。勿論、ねじ溝12aの形成部位は、取付開口部12の内周面に限らず、例えば外周面であっても良く、また、給水口3に対してケーシング11を取り付ける手段は、ねじ溝に限定されるものでもない。
【0023】
このケーシング11内の空間部には、上述した絞り部材21とノズル部材31とパッキン51とが内蔵されることになる。吐水側開口部13の近傍には、段部14が形成され、パッキン51の吐水側開口部13側に位置する先端部が係合する。パッキン51は、吐水側開口部13側に位置する先端部が段部14に係合することによって、ケーシング11内に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0024】
吐水側開口部13は、後述する絞り部材21とノズル部材31の組立体54を支持する球面支持部13aを有し、更に、先端側に向かって拡径する吐水口13bが形成されている。球面支持部13aは、後述するパッキン51の拡径部53の曲面と同じ曲率の曲面となっており、組立体54をノズル部材31の吐水面31a近傍で支持し、組立体54が吐水側開口部13より脱落しないようにする。すなわち、この球面支持部13aは、組立体54の最大直径より小さい直径部を有しており、外方に向かって凸状の球面状座面に構成される。また、吐水口13bは、外方に向かって拡径した形状に形成されることで、吐水面31aを傾斜させた際にもノズル部材31の吐水面31aより吐水される水流が吐水側開口部13の周縁に触れないようにしている。
【0025】
[絞り部材の説明]
絞り部材21は、図1−図3及び図5に示すように、略椀形をなし、外側の湾曲面の頂部に、突出部22が形成されている。この突出部22には、中央部に、厚さ方向に貫通した通水孔23が形成されている。この通水孔23は、下流側に向かって凸状に形成された略円錐状の発条底部23aを有し、この発条底部23aには、上流側から下流側に向かって貫通した複数の第一の孔部24が穿孔されている。複数の第一の孔部24は、同じ大きさの孔で等間隔に穿孔され、ここでは四つ等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けられている。なお、第一の孔部24は、この例に特に限定されるものではなく、例えば各孔部の水量が均等になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。通水孔23は、複数の第一の孔部24によって構成することで、蛇口2の給水口3から供給される水の流量を調節可能に制限するようにしている。
【0026】
また、外側の湾曲面の反対側の底面には、通水孔23の周囲に複数の閉塞突起25が複数形成され、後述のノズル部材31からの水の吐出量を制御するための閉塞手段とされる。閉塞突起25は、通水孔23を中心にして、環状に等間隔に形成されている。閉塞突起25は、次に説明するノズル部材31の吐水孔32を選択的に閉塞する。
【0027】
更に、底面には、湾曲面に連続する環状のガイド片26が形成されている。ガイド片26の先端部には、内側に突出してガイド突起26aが複数形成されている。ガイド突起26aは、次に説明するノズル部材31のガイド溝33に係合することによって、絞り部材21に対してノズル部材31が回転し得るようにする。
【0028】
[ノズル部材の説明]
ノズル部材31は、図1−図3及び図6に示すように、略円柱状をなし、外周面が絞り部材21の湾曲面と同じ曲率で湾曲するように形成されている。このノズル部材31には、厚さ方向に貫通した多数の吐水孔32が形成されている。吐水孔32は、例えば直径が1mm弱の大きさとなっている。そして、ノズル部材31の底面が吐水面31aとなっており、平坦に形成されている。具体的に、ノズル部材31には、複数の吐水孔32で構成される環状の外周吐水孔列32aと内周吐水孔列32bとが同心円状に形成されている。外周吐水孔列32aは、常時吐水される部分となり、内周吐水孔列32bは、絞り部材21の閉塞突起25によって選択的に閉塞される。
【0029】
なお、内周吐水孔列32bを構成する吐水孔32の孔径と外周吐水孔列32aを構成する吐水孔32の孔径は、同じであっても良く、また、内周吐水孔列32bを構成する吐出孔32の方が大きくても良く、更に、内周吐水孔列32bを構成する吐水孔32の方が小さくても良い。
【0030】
また、吐水面31aは、平坦面の他、中心が最も窪んだ断面がサイクロイド曲線を描くような曲面といった凹部で形成しても良い。吐水面31aをサイクロイド曲線を描くような曲面で形成したときには、吐水孔32より吐水される水流がやや広がり、ケーシング11の吐水側開口部13より吐水される水流全体を太く見せることができる。
【0031】
具体的に、内周吐水孔列32bでは、図7に示すように、内周吐水孔列32bを構成する各吐水孔32の入口に、閉塞突起25が係合する第一の係合凹部35が形成されている。また、隣接する吐水孔32同士の間には、閉塞突起25が係合する第二の係合凹部36が形成されている。図7(A)に示すように、閉塞突起25が吐水孔32と連続した第一の係合凹部35に係合しているときには、吐水孔32は閉塞され、内周吐水孔列32bからは吐水されない状態となる(節水位置)。一方、図7(B)に示すように、閉塞突起25が吐水孔32,32の間の第二の係合凹部36に係合しているときには、吐水孔32は開放され、内周吐水孔列32bからも吐水される状態となる(準節水位置)。
【0032】
ノズル部材31の外周上端部には、絞り部材21のガイド突起26aが係合するガイド溝33が形成されている。ガイド溝33には、ガイド突起26aが係合することで、絞り部材21に対してノズル部材31が回転するようになる。そして、絞り部材21に対してノズル部材31が回転することで、図7(A)に示す内周吐水孔列32bから吐水されない状態と図7(B)に示す内周吐水孔列32bからも吐水される状態とが切り替えられることになる。
【0033】
なお、内周吐水孔列32bにおいて、隣接する吐水孔32同士の間に設ける第一の係合凹部35の数は、1つでも、複数であっても良い。また、閉塞突起25の数や間隔は、内周吐水孔列32bから吐出する吐水量の切換を何段階行うかによって決められるもので、本発明では特に限定されるものではない。また、同心円状に設けられる環状の吐水孔列は、2つに限定されるものではなく、1つでも、3つ以上であっても良い。吐出孔列が1つの場合は、選択的に幾つかの吐水孔が閉塞突起に閉塞される構成となる。また、吐水孔列を3つ以上設けた場合には、すべて又は幾つかの吐水孔列の吐水孔が、閉塞突起によって選択的に閉塞されるようにすれば良い。
【0034】
ノズル部材31の中央部には、絞り部材21の通水孔23の開口量を調節する水量調節手段としての水量調節体41が取り付けられる取付孔34が形成されている。この取付孔34は、厚さ方向に貫通した貫通孔であり、円筒部34aが形成されていると共に、ノズル部材31の上面側に拡径部34bが形成されている。円筒部34aと拡径部34bとの境界部には、縦方向の凹凸溝34cが周回方向に形成されており、水量調節体41の回転の滑り止めとなっている。
【0035】
[水量調節体の説明]
水量調節体41は、図1−図3及び図8に示すように、流路が形成される流路形成部42とノズル部材31の取付孔34に挿嵌される嵌合部43とを有し、流路形成部42が嵌合部43に対して拡径する形状となっている。流路形成部42には、絞り部材21の通水孔23にある第一の孔部24に対応する第二の孔部44が複数形成されている。複数の第二の孔部44は、第一の孔部24の数に対応しており、同じ大きさの孔が等間隔に、ここでは四つ等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けられている。第二の孔部44のそれぞれは、上面と側面を開口する略L字状の流路によって形成され、上面に、入口44aが形成され、側面に、出口44bが形成されている。第二の孔部44は、この例に特に限定されるものではなく、例えば各孔部の水流が安定になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。
【0036】
絞り部材21の第一の孔部24と水量調節体41の第二の孔部44の入口44aとが最も重なっているときは、最も絞りが開いた状態であり、吐水量も最も大きくなる。そして、図9(A)、図9(B)に示すように、第一の孔部24と第二の孔部44の入口44aとの重なり度合いが小さくなると、その分、流路が狭くなり、吐水量が絞られることになる。図9(C)は、第一の孔部24と第二の孔部44の入口44aとが最もずれ、最も吐水量が絞られた状態となる。更に水量調節体41を絞り部材21に対して相対回転させると図9(D)に示すように再び開口量が大きくなり図9(B)と同等程度の開口量となり、回転に合わせて順次開口量が段階的に変化するように構成される。
【0037】
流路形成部42の入口44aが形成された上面は、中央部が最も低くなるように形成されており、水量調節体41の回転中心軸がズレたり振れたりしないように位置決めすると共に、絞り部材21の発条底部23aによる外方に向かう付勢力によって水量調節体41を常時付勢し、流路形成部42とノズル部材31の中央に穿設される取付孔34における拡径部34bとの接触面の水密性を高めつつ、水量調節体41の意図しない回転を防止するように構成される。
【0038】
なお、第一及び第二の孔部24,44の数は、特に限定されるものではない。また、第一及び第二の孔部24,44は、二つ以上に分岐する流路を形成するように設けることが良く、更に好ましくは、上述のように四方向に等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けるのが良い。また、第一及び第二の孔部24,44の形状は、円形に限定されるものではなく、菱形等の四角形やその他の多角形であっても良い。すなわち、第二の孔部44は、例えば各孔部の水流が安定になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。
【0039】
以上のような流路形成部42は、ノズル部材31の中央にある取付孔34における拡径部34bに嵌合され、これらの当接面の水密性が得られるように構成されることになる。流路形成部42に一体の嵌合部43は、ノズル部材31の中央にある取付孔34の円筒部34aに嵌合される。嵌合部43は、その長さが取付孔34の吐水面31aよりやや突出する長さに形成され、その先端面が手触りを良くするため円弧状面となっている。なお、先端面には、水量調節体41を回転するための「+」や「−」のスクリュドライバの溝等を設けるようにしても良い。
【0040】
また、嵌合部43と流路形成部42との境界部分には、ノズル部材31の取付孔34の内周面に形成された凹凸溝34cに係合する凹凸部45が形成されている。凹凸部45は、凹凸溝34cと係合することで、水量調節体41の回転の滑り止めとなる。
【0041】
水量調節体41は、嵌合部43を、ノズル部材31の取付孔34の円筒部34aに嵌合し、流路形成部42を、拡径部34bに圧接させることによって、ノズル部材31の取付孔34に取り付けられる。すると、流路形成部42の上面とノズル部材31の第一の孔部24が形成された底面との間には、閉塞突起25が第一の係合凹部35又は第二の係合凹部36に突き当たることで空間部46が形成される。空間部46では、水量調節体41の第二の孔部44の出口44bから流出する水流が互いに衝合することで水圧を減圧する。水量調節体41は、取付孔34に取り付けられたとき、嵌合部43の先端部がノズル部材31の吐水面31aより突出する。
【0042】
図9に示すように、流量を調節するには、吐水面31aより突出した嵌合部43の先端部を押圧し持ち上げることで凹凸溝34cと凹凸部45とが係合した状態を解除し、この解除した状態で、水量調節体41を回転することとなる。
【0043】
[パッキンの説明]
パッキン51は、例えばゴムパッキンであり、図1−図3及び図10に示すように、円筒部52と拡径部53とが中心軸線を一致させて一体に形成されている。拡径部53の湾曲面は、絞り部材21の外側の湾曲面の曲率及びノズル部材31の外周面の曲率に対応した球面座面となっている。拡径部53の先端部は、ケーシング11に挿入された際、ケーシング11の吐水側開口部13の近傍に形成された段部14に係合する。また、円筒部52の先端部の外周面には、係合段部56が形成されている。この係合段部56は、例えば蛇口2の先端が係合される。かくして、パッキン51は、吐水側開口部13側に位置する先端部が段部14に係合し、係合段部56に蛇口2が係合圧接されることで、蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止する。
【0044】
図1−図3に示すように、ノズル部材31に水量調節体41が取り付けられ、絞り部材21に組み付けられた組立体54は、略半球状をなし、拡径部53の球面状座面を摺動し、ノズル部材31の吐水面31aの角度を変更し得るように構成される。パッキン51の円筒部52と拡径部53とで構成される外側のコーナ部は、摺動する組立体54の突出部22、すなわち絞り部材21の突出部22が係合し、可動範囲を規制する規制部55となる。
【0045】
[節水器具の組立]
以上のように構成された節水器具1は、次のように組み立てられる。先ず、ノズル部材31の取付孔34には、図9に示すように、絞り部材21の第一の孔部24と水量調節体41の第二の孔部44の入口44aとの重なり度合いを調節して、水量調節体41が取り付けられる。次いで、ノズル部材31は、絞り部材21が組み合わされ、組立体54とされる。
【0046】
この組立体54は、パッキン51に組み合わされる。具体的に、パッキン51の円筒部52に、絞り部材21の突出部22を臨ませるようにして、パッキン51の拡径部53内に組み合わされる。この後、組立体54が組み合わされたパッキン51は、ケーシング11内に配設される。具体的に、パッキン51は、吐水側開口部13側に位置する先端部が段部14に係合される。
【0047】
この後、ケーシング11は、取付開口部12の内周面にあるねじ溝12aを蛇口2のねじ部に締め付けることによって、ケーシング11が蛇口等に取り付けられる。パッキン51は、係合段部56に蛇口2が係合圧接されることで、蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止することができる。
【0048】
[節水器具の動作]
以上のような節水器具1は、蛇口2の給水口3から水が供給されると、水が絞り部材21の通水孔23より第一の孔部24と水量調節体41の第二の孔部44を通って絞り部材21とノズル部材31との間の空間部46に供給される。空間部46には、絞り部材21等で吐水量が絞られて供給されることになる。そして、水流は、第二の孔部44で水流の方向が曲げられ、また、空間部46で、第二の孔部44の出口44bから流出する水流が互いに衝合することで、水圧が減圧される。この後、減圧された水は、ノズル部材31の吐水孔32から吐水される。
【0049】
・吐水方向の調節
以上のような節水器具1では、図2及び図3に示すように、ノズル部材31を絞り部材21に組み合わせてなる組立体54は、上半球に下半球の一部を足した完全なる半球体よりやや大きいものとなる。すなわち、この組立体54は、この組立体54を含む球体の最大直径R1を含む半球体となり、吐水面31aの直径R2が最大直径R1よりやや小さくなる形状となっている。そして、組立体54は、絞り部材21の外面とノズル部材31の外面とで連続的な略半球面状の外表面を構成する。
【0050】
パッキン51の拡径部53を構成する球面とケーシング11の吐水側開口部13近傍の球面支持部13aとは、組立体54の外表面がなす略半球面に対応した連続的な球面をなし、組立体54の転動に伴う摺動を許容する球面座面となっている。
【0051】
なお、本発明では、少なくともパッキン51の拡径部53が球面座面となっていれば、組立体54は転動可能であるから、ケーシング11の球面支持部13aは必ずしも球面座面となっていなくても良い。
【0052】
更に、球面支持部13aの直径R3は、組立体54の最大直径R1より小さくなっており、組立体54がケーシング11より脱落しないようになっている。
【0053】
したがって、組立体54は、例えば、吐水面31aを指等で偏圧的に押圧することによって、絞り部材21の突出部22がパッキン51の規制部55に突き当たるまでの範囲内で、自在に傾けることができる。また、吐水中にあっては、パッキン51の内側の空間において発生する内圧によって、絞り部材21やノズル部材31がパッキン51に圧接されることになる。したがって、吐水面31aの調節した傾きが使用中にずれてしまうこともない。
【0054】
図11(A)及び図12(A)は、吐水面31aの傾きを0°として、吐水方向を鉛直にした状態を示している。また、図11(B)及び図12(B)は、吐水面31aを一方に最大限傾けた状態を示している。この状態では、組立体54を構成する絞り部材21の突出部22がパッキン51の規制部55に突き当たり、これ以上吐水面31aが傾かないようになっている。更に、図11(C)及び図12(C)は、吐水面31aを他方に最大限傾けた状態を示している。この状態でも、組立体54を構成する絞り部材21の突出部22がパッキン51の規制部55に突き当たり、これ以上吐水面31aが傾かないようになっている。
【0055】
なお、この吐水方向の調節を行うに当たっては、上述した水量調節体41は必ずしも設ける必要はない。水量調節体41を設けない場合には、ノズル部材31の取付孔34を設け無ければよい。また、組立体54は、完全な半球体であっても良い。
【0056】
・第一の水量調節
節水器具1では、ノズル部材31を絞り部材21に対して回転させることで、節水の程度を調節することができる。具体的に、この節水器具1において、外周吐水孔列32aからは、常時吐水され、吐水される水流が常に太く見えるようにしている。これに対して、内周吐水孔列32bでは、絞り部材21の閉塞突起25によって、ノズル部材31の吐水孔32が選択的に閉塞される。具体的に、図7(A)及び図11(A)−(C)に示すように、閉塞突起25が吐水孔32と連続した第一の係合凹部35に係合しているときには、吐水孔32は閉塞され、内周吐水孔列32bからは吐水されない状態となる(節水位置)。一方、図7(B)及び図12(A)−(C)に示すように、閉塞突起25が吐水孔32,32の間の第二の係合凹部36に係合しているときには、吐水孔32は開放され、内周吐水孔列32bからも吐水される状態となる(準節水位置)。すなわち、ノズル部材31が準節水位置にあるとき、吐水面31aからの流線は、二重となり、節水位置にあるとき、流線は一重となる。
【0057】
節水器具1では、常に、ノズル部材31が節水位置にあるとき、外周吐水孔列32aから吐水され、その内側で内周吐水孔列32bから吐水されないようになっている。したがって、節水器具1では、内周吐水孔列32bから吐水されず吐水量が減ったことを見た目で分からないようにしながら節水を行うことができる。
【0058】
このノズル部材31の回転操作の方法は特に限定されるものではなく、節水器具1が分解された状態において、絞り部材21に対してノズル部材31を回転させても良い他、分解するまでもなく、組立後の状態において、指や治具を使って、ケーシング11の吐水側開口部13より臨むノズル部材31を回転させても良い。更に、ノズル部材31に、ケーシング11より外部に臨む操作突起を設けて、この操作突起を用いてノズル部材31を回転させても良い。また、絞り部材21、ノズル部材31の何れか一方に、突起を設け、他方に、突起が選択的に係合される凹部を複数設け、絞り部材21とノズル部材31とが相対回転することで、突起が凹部に選択的に係合するようにして、絞り部材21とノズル部材31の相対的位置を一定に保持するようにしても良い。更に、ケーシング11を開口部を設けて、何れの凹部に突起部が係合されているのかを目視できるようにし、設定状態を確認できるようにしても良い。
【0059】
なお、この節水調節を行うに当たっては、上述した水量調節体41を必ずしも設ける必要はない。水量調節体41を設けない場合には、上述のように、ノズル部材31の取付孔34を設けなければよい。
【0060】
・第二の水量調節
節水器具1では、水量調節体41を回転することによって、吐水量を調節することができる。絞り部材21の第一の孔部24と水量調節体41の第二の孔部44の入口44aとが最も重なっているときは、最も絞りが開いた状態であり、吐水量も最も多くなる。そして、図9(A)、図9(B)に示すように、第一の孔部24と第二の孔部44の入口44aとの重なり度合いが小さくなると、その分、流路が小さくなり、吐水量が絞られることになる。図9(C)は、第一の孔部24と第二の孔部44の入口44aとが最もずれ、最も吐水量が絞られた状態となる。更に水量調節体41を絞り部材21に対して相対回転させると図9(D)に示すように再び開口量が大きくなり図9(B)と同等程度の開口量となり、回転に合わせて順次開口量が段階的乃至連続的に変化するようになっている。
【0061】
この水量調節は、例えば、節水器具1が組み立てられた状態において、吐水面31aより突出した嵌合部43の先端部を押圧し持ち上げることで凹凸溝34cと凹凸部45とが係合した状態を解除乃至弱めて解放し、この解放した状態で、水量調節体41を回転させることによってなされる。
【0062】
[節水器具の効果]
以上のような節水器具1によれば、ケーシング11内に、絞り部材21とノズル部材31が設けられることで、吐水量を絞り節水することができる。具体的に、絞り部材によって絞られた水流が、更にノズル部材31によって適度な吐水量と水勢に調節されて吐出孔列32a,32bから吐水されるので、使用感の良好な節水を行うことができる。更に、水量調節体41によって、外部からの簡単な操作で吐出孔列32a,32bに供給される吐水量を調節することもでき、これにより、水圧や吐水量の微調整を行うことが可能となる。
【0063】
加えて、絞り部材21とノズル部材31との組立体54は、パッキン51内に摺動可能に取り付けられ、吐水面31aの角度を可変とする。したがって、外部からの簡単な操作で水の吐出方向を容易に調節することができる。これによって、節水を行いながら、水圧を上げたときにも、吐出方向を調節することで、水滴が洗面器の外にまで飛散して、洗面器の周囲が汚損することを防止できる。すなわち、節水器具1では、吐水や水滴が洗面器の外にまで飛散しない範囲で、使い勝手が良いように、吐水量や吐出方向を容易に微調節することができる。
【0064】
[節水器具の変形例]
なお、以上、本発明が適用された節水器具1について説明したが、節水器具1は、本発明の一例であり、節水器具1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 節水器具、2 蛇口、11 ケーシング、12 取付開口部、12a ねじ溝、13 吐水側開口部、13a 球面支持部、13b 吐水口、14 段部、21 絞り部材、22 突出部、23 通水孔、23a 発条底部、24 第一の孔部、25 閉塞突起、26 ガイド片、26a ガイド突起、31 ノズル部材、31a 吐水面、32 吐水孔、32a 外周吐水孔列、32b 内周吐水孔列、33 ガイド溝、34 取付孔、34a 円筒部、34b 拡径部、34c 凹凸溝、35 第一の係合凹部、36 第二の係合凹部、41 水量調節体、42 流路形成部、43 嵌合部、44 第二の孔部、44a 入口、44b 出口、45 凹凸部、46 空間部、51 パッキン、52 円筒部、53 拡径部、54 組立体、55 規制部、56 係合段部、61 突起、62 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水口に取り付け得る取付開口部と、吐水側として開口した吐水側開口部と、を有してなる略筒状のケーシングと、
上記ケーシング内において、上記給水口より給水される水流を絞る通水孔が形成された絞り部材と、
上記通水孔と繋がる複数の吐水孔が貫穿され、上記吐水側開口部に臨む吐水面を有し、上記絞り部材と組み合わされて組立体を構成するノズル部材と、
上記ケーシング内に配設され、上記組立体との水密性と上記給水口との水密性を確保するパッキンとを備え、
上記絞り部材と上記ノズル部材とを含んで構成される上記組立体の外表面が、略半球面状をなし、
上記パッキンの上記組立体の略半球面状の外表面と接する面が、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなし、
上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部が、上記組立体の最大外径より小さい内径部を有し、
上記組立体は、上記パッキンの略球面状の座面に対して摺動可能に配設され、上記吐水面の角度を可変とすることを特徴とする節水器具。
【請求項2】
上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部は、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなすことを特徴とする請求項1に記載の節水器具。
【請求項3】
上記絞り部材は、上記通水孔の入り口が凸設された突出部となっており、
上記突出部が上記パッキンの内周壁に突き当たることで、上記組立体の可動範囲が規制されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の節水器具。
【請求項4】
上記絞り部材と上記ノズル部材との組立体は、球体の最大直径部分を含むと共に上記吐水側開口部側に上記最大直径以下の直径の面を有する略半球状をなし、
上記最大直径以下の直径の面が上記吐水面となっていることを特徴とする請求項1−請求項3の何れかに記載の節水器具。
【請求項5】
上記ノズル部材は、上記複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成されており、
上記絞り部材は、上記複数の吐水孔の内の何れかの吐水孔を選択的に閉塞する閉塞突起を有し、
上記ノズル部材は、上記絞り部材に対して回転可能であり、
上記ノズル部材は、回転することによって、すべての吐水孔を開放する準節水位置と上記吐水孔の何れかを上記閉塞突起で閉塞する節水位置とに切り替わることを特徴とする請求項1−請求項4の何れかに記載の節水器具。
【請求項6】
上記ノズル部材は、上記環状の吐水孔列が同心円をなすように複数形成され、
回転することによって、上記何れかの環状の吐水孔列が上記絞り部材の閉塞突起によって閉塞され節水位置となることを特徴とする請求項5に記載の節水器具。
【請求項7】
上記ノズル部材には、上記絞り部材の通水孔の開口量を調節して吐水量を調節する水量調節体が取り付けられていることを特徴とする請求項1−請求項6の何れかに記載の節水器具。
【請求項8】
上記絞り部材の通水孔には、第一の孔部が複数穿孔され、
上記水量調節体には、第二の孔部が形成され、
上記水量調節体は、上記ノズル部材に対して回転することで、上記第一の孔部と上記第二の孔部とのずれ量が変わり吐水量を調節することを特徴とする請求項7に記載の節水器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−256668(P2011−256668A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134175(P2010−134175)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(395017405)
【Fターム(参考)】