説明

節類熱水抽出ダシ汁の製造装置

【課題】所望の濁度を有する節類熱水抽出ダシ汁を安定的かつ容易に得ることができる装置を提供する。
【解決手段】攪拌器1を有する混合タンク2と、濾過膜3で第1室4及び第2室5に仕切られた濾過器6と、抽出液タンク7とからなり、混合タンク2の下部と第1室4とを送液ポンプ8を具備したパイプ9にて連結し、第2室5と混合タンク2上部とを、途中に濁度計10及び流路切替弁11をこの順序で具備するパイプ12にて連結し、流路切替弁11と抽出液タンク7とをパイプ13で連結することを特徴とする節類熱水抽出ダシ汁の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の濁度を有する節類熱水抽出ダシ汁を安定的かつ容易に得ることができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラムなどに粉末セルロースを充填して、このカラムの上部から節類熱水抽出ダシ汁を添加し、該充填層を通過させて、清澄なダシ汁を得る装置が知られている(特許文献1参照。)。
しかし、この装置は、初発のダシ汁の有する固形分、コロイド状物質、油脂分の濃度や、ダシ汁と接触する粉末セルロースの粒度、純度、および濃度によって、またダシ汁と粉末セルロースとの接触時間などによって運転条件が異なり、所望の濁度を有するダシ汁を安定的かつ容易に得ることが難しく、所望の濁度を有するダシ汁を得るには高度な熟練と勘を必要とする難点を有する。
【特許文献1】特開2001−120216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、所望の濁度を有する節類熱水抽出ダシ汁を安定的かつ容易に得ることができる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するための装置であって、すなわち、攪拌器1を有する混合タンク2と、濾過膜3で第1室4と第2室5に仕切られた濾過機6と、抽出液タンク7とからなり、混合タンク2の下部と第1室4とを送液ポンプ8を具備したパイプ9にて連結し、第2室5と混合タンク2上部とを、途中に濁度計10及び流路切替弁11をこの順序で具備するパイプ12にて連結し、流路切替弁11と抽出液タンク7とをパイプ13で連結することを特徴とする節類熱水抽出ダシ汁の製造装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、所望の濁度を有する節類熱水抽出ダシ汁を安定的かつ容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明にかかる節類熱水抽出ダシ汁の製造装置について、図1に従って説明する。
【0007】
図1は、本発明に係る節類熱水抽出ダシ汁の製造装置の概略説明図で、攪拌器1を有する混合タンク2と、濾過膜3で第1室4と第2室5に仕切られた濾過機6と、抽出液タンク7とからなり、混合タンク2の下部と第1室4とを送液ポンプ8を具備したパイプ9にて連結し、第2室5と混合タンク2上部とを、途中に濁度計10及び流路切替弁11をこの順序で具備するパイプ12にて連結し、流路切替弁11と抽出液タンク7とをパイプ13で連結する。
【0008】
上記攪拌機1としては、モーター(図面簡略のため図示せず)によって回転駆動するプロペラ式攪拌機、ブレード式攪拌機等が挙げられる。
【0009】
混合タンク2には、パイプ「イ」から節類熱水抽出液が、またパイプ「ロ」から粉末セルロース、珪藻土等の濾過助剤がそれぞれ添加可能になっている。
【0010】
濾過機6としては、内部を濾過膜3で第1室4と第2室5に液密的に仕切り、節類熱水抽出液をこの一方の室から導入し濾過膜3を透過させて他方の室に移動させることにより節類熱水抽出液の濁度を減少させる形式のものが使用される。この濾過機6としては、たとえば垂直リーフ型(縦型、横型)、水平濾板型、キャンドル型等のものが使用できる。
【0011】
濾過膜3の材質としては例えばステンレス等が挙げられる。濾過膜3の目開きは、粉末セルロース(および/または珪藻土などの濾過助剤)が通過しない目開きのものが必要であり、例えば50〜150メッシュの網板等が好適に使用できる。必要により複数の網板を、位相をずらせて重ねて使用してもよい。このような濾過膜を採用すると、粉末セルロースの層14が濾過膜3の全表面に積層し、しかも濾過面積が広いため節類熱水抽出液と粉末セルロースが効率的に接触し、濁度を効率よく低下させる効果を奏する。
【0012】
送液ポンプ8は、混合タンク2の下部と第1室4とを連結するパイプ9の途中において介装され、混合タンク2の下部より節類熱水抽出液を取出して濾過機6に送出するためのもので、流量調節機能(インバーター)を有する。
【0013】
また濁度計10は、濾過機6から取出された節類熱水抽出液の濁度を測定するためのもので、この節類熱水抽出液が所望の濁度、例えばダシ汁の場合好ましいとされている15ppm〜100ppmとなった場合は、流路切替弁11を切替えてパイプ13を介して抽出液タンク7に導くように構成されている。
一方、濾過機6から取出された節類熱水抽出液の濁度が所望の濁度まで十分に低下していない場合は、そのままパイプ12を介して混合タンク2に供給され、再び第1室4に導入するように構成されている。
【0014】
ダシ汁の清澄度(濁度)は、例えば「しょうゆ試験法」(昭和60年3月1日、財団法人日本醤油研究所編集発行)の34〜36ページ記載の濁度の測定方法に準じた方法等により測定することができ、濁度計としては例えばコロナ濁度計UT―11、インライン濁度計としてはASR製301LTモデル等が挙げられる。
濁度計通過時に濁度を測定されたダシ汁は、その濁度に応じて、抽出液タンク7に回収されるか、あるいは再び循環して混合タンクに戻るかいずれかの流路に切替えられる。この切替作業は濁度を指標に手作業で、あるいは予め数値を設定して自動切替えで行うことができる。
【0015】
上記濁度計を用いることは、極めて重要である。すなわち、濁度計10を用いない場合には、初発のダシ汁の有する固形分、コロイド状物質、油脂分の濃度や、ダシ汁と接触する粉末セルロースの粒度、純度、および濃度によって、またダシ汁と粉末セルロースとの接触時間などによって運転条件が異なり、所望の濁度を有するダシ汁を安定的かつ容易に得ることが難しく、所望の濁度を有するダシ汁を得るには高度な熟練と勘が必要とされるからである。
【0016】
本発明は、節類熱水抽出液と粉末セルロースとを循環接触させることにより節類熱水抽出液の濁度を所望の値に減少させるものであるから、節類熱水抽出液の香り及び味が非常に良好な品質のものを安定的かつ容易に得ることができる。
【0017】
本発明の装置を使用して、目標とする濁度に達するまで循環処理を行い、目的の濁度に到達した時点で処理を終了し、節類熱水抽出ダシ汁を得ることができる。たとえば、節類熱水抽出ダシ汁と粉末セルロースとの1回の接触時間を数秒程度とし、接触回数を濾過装置の性能や処理前のダシ汁濁度に応じて1回〜10回前後等に設定することで、目標とする任意の濁度のダシ汁を安定的かつ容易に製造できる。
【0018】
以下、実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0019】
珪藻土とセルロースを混合した濾過助剤を使用し、濾過機としてリーフ式珪藻土濾過機を使用し、所望の濁度を60ppmに設定して節類熱水抽出ダシ汁の製造を行った。
粉砕した鯖節200kgを10倍重量の熱水2000kgで、20分間抽出を行い、1800kgの節類熱水抽出ダシ汁を調製した。この節類熱水抽出ダシ汁の濁度は約300ppmであった。次いでこの節類熱水抽出ダシ汁を本発明の装置に供し、濁度計10における濁度測定値が60ppmとなるまで循環させながら濾過処理を行い、濁度測定値が60ppmとなった時点で流路を切替え、濾過液を抽出液タンクに回収した。抽出液タンク内に回収された節類熱水抽出ダシ汁の濁度は60ppmであり、本発明の装置を使用して、所望の濁度を有する節類熱水抽出ダシ汁を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、所望の濁度を有する節類熱水抽出ダシ汁を安定的かつ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る節類熱水抽出ダシ汁の製造装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1・・・攪拌器
2・・・混合タンク
3・・・濾過膜
4・・・第1室
5・・・第2室
6・・・濾過機
7・・・抽出液タンク
8・・・送液ポンプ
9・・・パイプ
10・・濁度計
11・・流路切替弁
12・・パイプ
13・・パイプ
14・・粉末セルロースの層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌器1を有する混合タンク2と、濾過膜3で第1室4と第2室5に仕切られた濾過器6と、抽出液タンク7とからなり、混合タンク2の下部と第1室4とを送液ポンプ8を具備したパイプ9にて連結し、第2室5と混合タンク2の上部とを、途中に濁度計10及び流路切替弁11をこの順序で具備するパイプ12にて連結し、流路切替弁11と抽出液タンク7とをパイプ13で連結したことを特徴とする節類熱水抽出ダシ汁の製造装置。

【図1】
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