篩
【課題】金属、セラミック、合成樹脂等の超微細な粒子はくっ付きあって塊になり分級されない虞があるため、この点を改善することを目的とする。
【解決手段】複数の孔を有する基板を振動させることにより粒子が基板の入口側から出口側へ孔を通過して分級される篩において、基板の入口側には粒子が互いにくっ付きあって塊となる粒子同士を分離するための複数の突起を形成した篩を提供する。
【解決手段】複数の孔を有する基板を振動させることにより粒子が基板の入口側から出口側へ孔を通過して分級される篩において、基板の入口側には粒子が互いにくっ付きあって塊となる粒子同士を分離するための複数の突起を形成した篩を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超微細な球形の粒子を分級する篩に関するもので、特に金属、セラミック、合成樹脂等の超微細な粒子はくっ付きあって塊になり分級されない虞があるため、この点を改善することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
球形の粒子を効率的に篩い分ける篩装置における篩の作業速度は、あらゆる産業の生産性に直接影響を与える重要な要素技術として知られている。特に、真円に近い球形粒子を効率的に篩うことは、例えば、コスト、品質等の観点から極めて重要な課題となっている。
この篩を用いる場合、篩作業中は篩に対して上下方向、左右方向のほか、ラジアル方向等に駆動させ、常に振動を与えることにより、粒子が篩の孔に接触した後、できる限り速く孔をすり抜けて落下させるようにしている。
【0003】
しかし、粒子は上下の振動により、篩の孔の周囲で舞うことになり、なかなか孔を通過することができないという課題がある。さらに、前後左右のいわゆる二次元平面的振動では、その速度及び加速度によっては、粒子が孔を通過しないで孔の上部を通過する機会が多いために効率的に篩うことができないという問題がある。
【0004】
これらの問題に対し、例えば、下記特許文献1において、篩の孔の形状を長孔にして微粉を篩う場合に分離効率を向上させた微粉分離除去装置が提案されている。
しかしながら、特許文献1では、篩に形成された複数の長孔が互いに平行とされているため、少なくとも二次元平面的振動で粒子を篩う場合、何れか一方の振動方向においては分級速度が遅くなる問題が残されている。
【0005】
これを解決するため、本願出願人は長孔を長手方向の延長線上にて他の長孔の長手方向の中点と直交させるようにした篩を特許文献2で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−170160号公報
【特許文献2】特開2010−253461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1により、分級効率を向上させ、分級作業の生産性を大幅に改善させることが可能な篩を提供することができた。しかしながら、粒子物質の種類によっては粘性があり、孔の入口側において粒子同士がくっ付きあって塊になるため、粒子が孔を通過しなくなり分級されない虞があることが判明した。この現象は、特に1μm〜20μmの超微粒子において顕著に発生することが実施品で確認された。
本発明は、かかる課題に鑑み、粒子同士がくっ付きあって塊になっても、この塊を崩して粒子を分級するようにした斬新な篩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様の発明は、複数の孔を有する基板を振動させることにより粒子が前記基板の入口側から出口側へ前記孔を通過して分級される篩において、前記基板の入口側には前記粒子が互いにくっ付きあって塊となる粒子同士を分離するための複数の突起を形成したことを特徴とする篩である。
【0009】
第2態様の発明は、孔の穴径が1μm〜150μmで、突起の高さ寸法が前記穴径の0.5〜2倍であることを特徴とする篩である。
【0010】
第3態様の発明は、前記突起が合成樹脂、金属、セラミックの何れかで形成されていることを特徴とする篩である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、篩作業中に孔の入口側で粒子が互いにくっ付きあって塊となっても、基板の粒子の入口側で基板とともに振動している突起にこの塊がぶつかりあうことにより塊が崩される。このため、粒子同士が分離して個々の粒となって、孔を通過するようになるので、円滑に分級され篩の作業効率を向上させることができる。
【0012】
特に、突起の高さ寸法を孔の穴径1μm〜150μmの0.5〜2倍にすることにより、突起の強度を維持しつつ粒子の塊を効率良く崩すことができる。これは、突起を孔の穴径の2倍よりも高くすると突起の強度が弱まり、0.5倍よりも低くすると粒子の塊が孔を塞いでしまい、分級されなくなる虞が高いからである。
【0013】
更に、突起を合成樹脂で形成することにより、合成樹脂の柔軟性によって粒子を傷つけないで塊を崩すことができる。また、突起を金属、例えばニッケル、パラジューム、鉄、銅、金、銀等の合金で形成することにより篩を基板と同じ材質である金属と一体に同時に製造することができる。また、突起をセラミックで形成することによりセラミック以外の
例えば、有機物等の不純物を嫌う粒子を篩うときに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す篩の斜視図である。
【図2】第1図のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す篩の動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態を示す篩の製造工程を示す説明図である。
【図5】本発明の他一実施形態を示す篩の製造工程図である。
【図6】本発明の実施形態を示す篩の写真である。
【図7】本発明の他二実施形態を示す篩の斜視図である。
【図8】第7図のB−B断面図である。
【図9】本発明の他二実施形態を示す篩の動作説明図である。
【図10】本発明の他三実施形態を示す篩の斜視図である
【図11】第10図のC−C断面図である。
【図12】本発明の他三実施形態を示す篩の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る篩の実施形態について、図1〜図4に基づいて詳述する。
1はニッケル、パラジューム、鉄、銅、金、銀等の合金によって製作された金属製の篩であり、この基板2には球形等のいろいろな形状の粒子3を上側から下側へ通過させて分級する複数の孔4が形成されている。この孔4の形状は図1に示すような四角穴形状に限定されず、三角穴形状、六角穴形状、丸穴形状等でも良い。また、この孔4は基板2の入口側41の穴径を広くしているが、出口側42の穴径と同一のストレート形状でも良い。
【0016】
基板2には、粒子3が互いにくっ付きあって図3に示すように塊5となる粒子3同士を分離するための複数の円錐状の突起6が、基板2の入口側41に形成されている。
そして、孔4の穴径aは1μm〜150μmであり、突起6の高さ寸法bは孔4の穴径a1μm〜150μmの1.5〜2倍にすることにより、突起6の強度を維持しつつ粒子3の塊5を効率良く崩すようにしている。
これは、突起6を孔4の穴径の2倍よりも高くすると突起6の強度が弱まり、0.5倍よりも低くすると粒子3の塊5が突起6と接触しないで落下して孔4を塞いでしまい、分級されなくなる虞が高いからである。
【0017】
以下、篩1の製造工程について図4に基づいて説明する。7はステンレス等の基盤で、この基盤7の上に第1段のレジスト(感光性樹脂)8をコートする。そして基盤7の上にニッケル9を電鋳で析出させると、ニッケル9がレジスト8の中心81に向かって外周から覆いかぶさって環状の庇部91が形成される。次に、ニッケル9の上の平坦部92に第2段のレジスト(感光性樹脂)10をコートする。
【0018】
このコートされたレジスト10の間のニッケル9の上に離型剤を介してニッケル11を電鋳で析出させるとニッケル9の庇部91で囲まれている窪み93が埋まり、この埋まった部分が突起6となる。その後、レジスト10を溶剤で溶かすと、この溶けた部分が孔4となり、ニッケル11を取り外して上下反転すると、図1及び図2に示す篩1を製造することができる。
このように、突起6を篩1と同じ材質である、例えばニッケル等の金属で形成するようにすると、突起6を篩1と一体に同時に製作でき、製造工程を簡略化することができる。
【0019】
尚、突起6は、円錐状の突起6の孔形状を有するスクリーン印刷により、耐熱・耐久性のある合成樹脂で形成することもできる。
以下、このスクリーン印刷による製造工程について、図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、窪み111を有するニッケル基板11上にワイヤ121とワイヤ122からなるスクリーンマスク12とスキージー13を用いてインク14によりメッシュを形成する。形成するインク14は、有機物(エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、紫外光硬化樹脂等)や、セラミック(アルミナ、シリカ、等)のスラリー状のものや、アルコキシドセラッミクの混合物で良い。
【0020】
次に図5(b)に示すように、スクリーン印刷後はスクリーンマスク12を離型し、インク14を重合又は焼成する。一般には、Ni電鋳材が基板11の場合はそれ自身に酸化皮膜があり離型性を有しているので、重合又は焼成後は容易に離型することができる。
しかし、必要によっては、弗素系の離型剤を予め薄くコートした方が好ましい。
次に、図5(c)に示すように、インク14を重合又は焼成したことによりメッシュが形成されるときに、窪み111にインク14が充填され、離型されればその充填個所が突起61となって形成される。
【0021】
次に図5(d)に示すように、重合又は焼成されたインク14がメッシュとなって基板11から離型されることにより、突起61が一体となって上述した有機物やセラミック等の素材で出来上がる。
この工法は、スクリーン印刷で基板11上にインク14からなるメッシュと突起61を一体形成したが、この基板11をベースにインジェクション成形でメッシュを製作すれば、突起61を有する有機物のメッシュを形成することもできる。
このように合成樹脂で形成することにより、突起61の先鋭部12で粒子3の塊5を崩すとき、合成樹脂の柔軟性によって粒子3を傷つけることはないので、好ましい。
また、また、突起61をセラミックで形成することによりセラミック以外の例えば有機物等の不純物を嫌う粒子を篩うときに有効である。
【0022】
そして、本発明に係る篩1を所定の周波数と振幅を備えた振動手段によって上下方向、左右方向のほか、ラジアル方向等に振動させて、凝集し易い粒子3の分級を行う篩い作業を実行すると、粒子の粘性や吸着により粒子3同士が孔4の入口側で粒子が互いにくっ付きあって塊5となる場合がある。
【0023】
この場合、図3に示すように基板2と一緒に振動している突起6の先鋭部12にこの塊5がぶつかりあって塊5が崩され、粒子3同士が分離して矢印のように孔4を通過するようになるため、円滑に分級され篩1の作業効率を向上させることができた。このことは、次に示す性能試験の結果から立証できた。
【0024】
本発明に係る篩装置の性能試験の結果を説明する。
図6の写真で示すように、穴径が14μmで30ピッチの孔4が850個/1平方インチあり、高さ7μmの多数の突起6をライン幅に設けた篩1を用意した。
そして、この篩1を周波数35kHzの振とう機で10分間振動させながら粒径5〜20μmの有機樹脂の粒子3を篩1の上から散布すると、凝集してくっ付きあった粒子3の塊5が突起6の先鋭部12により崩されて分離分散していることが篩1の上部で目視でき、14μm以下の粒子を分級回収したところ、突起6を有さない従来の篩と比較すると、1.5〜2倍も回収効率が高いことが確認できた。
【0025】
図7〜図9は本発明の他一実施形態を示すもので、突起62の形状を三角錐形状にしたものであり、突起62以外の他の構成部品については図1〜図3と同一符号を付して詳細な説明は省略する。
この他一実施形態においても、図9に示すように、図3で上述した実施形態の場合と同様に基板2と一緒に振動している突起62の先鋭部121にこの塊5がぶつかりあって塊5が崩され、粒子3同士が分離して矢印のように孔4を通過するようになるため、円滑に分級され篩1の作業効率を向上させることができる。
【0026】
図10〜図12は本発明の他二実施形態を示すもので、突起63の形状を円柱形状にしたものであり、突起63以外の他の構成部品については図1〜図3と同一符号を付して詳細な説明は省略する。
この他二実施形態においても、図12に示すように、図3で上述した実施形態の場合と同様に基板2と一緒に振動している突起63の先端部122にこの塊5がぶつかりあって塊5が崩され、粒子3同士が分離して矢印のように孔4を通過するようになるため、円滑に分級され篩1の作業効率を向上させることができる。
尚、突起63の先端部122が平坦であるため、図3及び図9の場合と比較して塊5が崩されにくい虞があるため、突起63の個数を上述した実施形態よりも多くした方が好ましい。
このように、突起6、61、62、63は何れの形状であっても塊5を崩すことは可能であり、突起形状であれば他の異なる形状でも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、上記実施例の如く、粘性や吸着により凝集し易い粒子を分級する篩作業において極めて有効である。
【符号の説明】
【0028】
1 篩
2 基板
3 粒子
4 孔
5 塊
6 突起
61 突起
62 突起
63 突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、超微細な球形の粒子を分級する篩に関するもので、特に金属、セラミック、合成樹脂等の超微細な粒子はくっ付きあって塊になり分級されない虞があるため、この点を改善することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
球形の粒子を効率的に篩い分ける篩装置における篩の作業速度は、あらゆる産業の生産性に直接影響を与える重要な要素技術として知られている。特に、真円に近い球形粒子を効率的に篩うことは、例えば、コスト、品質等の観点から極めて重要な課題となっている。
この篩を用いる場合、篩作業中は篩に対して上下方向、左右方向のほか、ラジアル方向等に駆動させ、常に振動を与えることにより、粒子が篩の孔に接触した後、できる限り速く孔をすり抜けて落下させるようにしている。
【0003】
しかし、粒子は上下の振動により、篩の孔の周囲で舞うことになり、なかなか孔を通過することができないという課題がある。さらに、前後左右のいわゆる二次元平面的振動では、その速度及び加速度によっては、粒子が孔を通過しないで孔の上部を通過する機会が多いために効率的に篩うことができないという問題がある。
【0004】
これらの問題に対し、例えば、下記特許文献1において、篩の孔の形状を長孔にして微粉を篩う場合に分離効率を向上させた微粉分離除去装置が提案されている。
しかしながら、特許文献1では、篩に形成された複数の長孔が互いに平行とされているため、少なくとも二次元平面的振動で粒子を篩う場合、何れか一方の振動方向においては分級速度が遅くなる問題が残されている。
【0005】
これを解決するため、本願出願人は長孔を長手方向の延長線上にて他の長孔の長手方向の中点と直交させるようにした篩を特許文献2で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−170160号公報
【特許文献2】特開2010−253461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1により、分級効率を向上させ、分級作業の生産性を大幅に改善させることが可能な篩を提供することができた。しかしながら、粒子物質の種類によっては粘性があり、孔の入口側において粒子同士がくっ付きあって塊になるため、粒子が孔を通過しなくなり分級されない虞があることが判明した。この現象は、特に1μm〜20μmの超微粒子において顕著に発生することが実施品で確認された。
本発明は、かかる課題に鑑み、粒子同士がくっ付きあって塊になっても、この塊を崩して粒子を分級するようにした斬新な篩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様の発明は、複数の孔を有する基板を振動させることにより粒子が前記基板の入口側から出口側へ前記孔を通過して分級される篩において、前記基板の入口側には前記粒子が互いにくっ付きあって塊となる粒子同士を分離するための複数の突起を形成したことを特徴とする篩である。
【0009】
第2態様の発明は、孔の穴径が1μm〜150μmで、突起の高さ寸法が前記穴径の0.5〜2倍であることを特徴とする篩である。
【0010】
第3態様の発明は、前記突起が合成樹脂、金属、セラミックの何れかで形成されていることを特徴とする篩である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、篩作業中に孔の入口側で粒子が互いにくっ付きあって塊となっても、基板の粒子の入口側で基板とともに振動している突起にこの塊がぶつかりあうことにより塊が崩される。このため、粒子同士が分離して個々の粒となって、孔を通過するようになるので、円滑に分級され篩の作業効率を向上させることができる。
【0012】
特に、突起の高さ寸法を孔の穴径1μm〜150μmの0.5〜2倍にすることにより、突起の強度を維持しつつ粒子の塊を効率良く崩すことができる。これは、突起を孔の穴径の2倍よりも高くすると突起の強度が弱まり、0.5倍よりも低くすると粒子の塊が孔を塞いでしまい、分級されなくなる虞が高いからである。
【0013】
更に、突起を合成樹脂で形成することにより、合成樹脂の柔軟性によって粒子を傷つけないで塊を崩すことができる。また、突起を金属、例えばニッケル、パラジューム、鉄、銅、金、銀等の合金で形成することにより篩を基板と同じ材質である金属と一体に同時に製造することができる。また、突起をセラミックで形成することによりセラミック以外の
例えば、有機物等の不純物を嫌う粒子を篩うときに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す篩の斜視図である。
【図2】第1図のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す篩の動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態を示す篩の製造工程を示す説明図である。
【図5】本発明の他一実施形態を示す篩の製造工程図である。
【図6】本発明の実施形態を示す篩の写真である。
【図7】本発明の他二実施形態を示す篩の斜視図である。
【図8】第7図のB−B断面図である。
【図9】本発明の他二実施形態を示す篩の動作説明図である。
【図10】本発明の他三実施形態を示す篩の斜視図である
【図11】第10図のC−C断面図である。
【図12】本発明の他三実施形態を示す篩の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る篩の実施形態について、図1〜図4に基づいて詳述する。
1はニッケル、パラジューム、鉄、銅、金、銀等の合金によって製作された金属製の篩であり、この基板2には球形等のいろいろな形状の粒子3を上側から下側へ通過させて分級する複数の孔4が形成されている。この孔4の形状は図1に示すような四角穴形状に限定されず、三角穴形状、六角穴形状、丸穴形状等でも良い。また、この孔4は基板2の入口側41の穴径を広くしているが、出口側42の穴径と同一のストレート形状でも良い。
【0016】
基板2には、粒子3が互いにくっ付きあって図3に示すように塊5となる粒子3同士を分離するための複数の円錐状の突起6が、基板2の入口側41に形成されている。
そして、孔4の穴径aは1μm〜150μmであり、突起6の高さ寸法bは孔4の穴径a1μm〜150μmの1.5〜2倍にすることにより、突起6の強度を維持しつつ粒子3の塊5を効率良く崩すようにしている。
これは、突起6を孔4の穴径の2倍よりも高くすると突起6の強度が弱まり、0.5倍よりも低くすると粒子3の塊5が突起6と接触しないで落下して孔4を塞いでしまい、分級されなくなる虞が高いからである。
【0017】
以下、篩1の製造工程について図4に基づいて説明する。7はステンレス等の基盤で、この基盤7の上に第1段のレジスト(感光性樹脂)8をコートする。そして基盤7の上にニッケル9を電鋳で析出させると、ニッケル9がレジスト8の中心81に向かって外周から覆いかぶさって環状の庇部91が形成される。次に、ニッケル9の上の平坦部92に第2段のレジスト(感光性樹脂)10をコートする。
【0018】
このコートされたレジスト10の間のニッケル9の上に離型剤を介してニッケル11を電鋳で析出させるとニッケル9の庇部91で囲まれている窪み93が埋まり、この埋まった部分が突起6となる。その後、レジスト10を溶剤で溶かすと、この溶けた部分が孔4となり、ニッケル11を取り外して上下反転すると、図1及び図2に示す篩1を製造することができる。
このように、突起6を篩1と同じ材質である、例えばニッケル等の金属で形成するようにすると、突起6を篩1と一体に同時に製作でき、製造工程を簡略化することができる。
【0019】
尚、突起6は、円錐状の突起6の孔形状を有するスクリーン印刷により、耐熱・耐久性のある合成樹脂で形成することもできる。
以下、このスクリーン印刷による製造工程について、図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、窪み111を有するニッケル基板11上にワイヤ121とワイヤ122からなるスクリーンマスク12とスキージー13を用いてインク14によりメッシュを形成する。形成するインク14は、有機物(エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、紫外光硬化樹脂等)や、セラミック(アルミナ、シリカ、等)のスラリー状のものや、アルコキシドセラッミクの混合物で良い。
【0020】
次に図5(b)に示すように、スクリーン印刷後はスクリーンマスク12を離型し、インク14を重合又は焼成する。一般には、Ni電鋳材が基板11の場合はそれ自身に酸化皮膜があり離型性を有しているので、重合又は焼成後は容易に離型することができる。
しかし、必要によっては、弗素系の離型剤を予め薄くコートした方が好ましい。
次に、図5(c)に示すように、インク14を重合又は焼成したことによりメッシュが形成されるときに、窪み111にインク14が充填され、離型されればその充填個所が突起61となって形成される。
【0021】
次に図5(d)に示すように、重合又は焼成されたインク14がメッシュとなって基板11から離型されることにより、突起61が一体となって上述した有機物やセラミック等の素材で出来上がる。
この工法は、スクリーン印刷で基板11上にインク14からなるメッシュと突起61を一体形成したが、この基板11をベースにインジェクション成形でメッシュを製作すれば、突起61を有する有機物のメッシュを形成することもできる。
このように合成樹脂で形成することにより、突起61の先鋭部12で粒子3の塊5を崩すとき、合成樹脂の柔軟性によって粒子3を傷つけることはないので、好ましい。
また、また、突起61をセラミックで形成することによりセラミック以外の例えば有機物等の不純物を嫌う粒子を篩うときに有効である。
【0022】
そして、本発明に係る篩1を所定の周波数と振幅を備えた振動手段によって上下方向、左右方向のほか、ラジアル方向等に振動させて、凝集し易い粒子3の分級を行う篩い作業を実行すると、粒子の粘性や吸着により粒子3同士が孔4の入口側で粒子が互いにくっ付きあって塊5となる場合がある。
【0023】
この場合、図3に示すように基板2と一緒に振動している突起6の先鋭部12にこの塊5がぶつかりあって塊5が崩され、粒子3同士が分離して矢印のように孔4を通過するようになるため、円滑に分級され篩1の作業効率を向上させることができた。このことは、次に示す性能試験の結果から立証できた。
【0024】
本発明に係る篩装置の性能試験の結果を説明する。
図6の写真で示すように、穴径が14μmで30ピッチの孔4が850個/1平方インチあり、高さ7μmの多数の突起6をライン幅に設けた篩1を用意した。
そして、この篩1を周波数35kHzの振とう機で10分間振動させながら粒径5〜20μmの有機樹脂の粒子3を篩1の上から散布すると、凝集してくっ付きあった粒子3の塊5が突起6の先鋭部12により崩されて分離分散していることが篩1の上部で目視でき、14μm以下の粒子を分級回収したところ、突起6を有さない従来の篩と比較すると、1.5〜2倍も回収効率が高いことが確認できた。
【0025】
図7〜図9は本発明の他一実施形態を示すもので、突起62の形状を三角錐形状にしたものであり、突起62以外の他の構成部品については図1〜図3と同一符号を付して詳細な説明は省略する。
この他一実施形態においても、図9に示すように、図3で上述した実施形態の場合と同様に基板2と一緒に振動している突起62の先鋭部121にこの塊5がぶつかりあって塊5が崩され、粒子3同士が分離して矢印のように孔4を通過するようになるため、円滑に分級され篩1の作業効率を向上させることができる。
【0026】
図10〜図12は本発明の他二実施形態を示すもので、突起63の形状を円柱形状にしたものであり、突起63以外の他の構成部品については図1〜図3と同一符号を付して詳細な説明は省略する。
この他二実施形態においても、図12に示すように、図3で上述した実施形態の場合と同様に基板2と一緒に振動している突起63の先端部122にこの塊5がぶつかりあって塊5が崩され、粒子3同士が分離して矢印のように孔4を通過するようになるため、円滑に分級され篩1の作業効率を向上させることができる。
尚、突起63の先端部122が平坦であるため、図3及び図9の場合と比較して塊5が崩されにくい虞があるため、突起63の個数を上述した実施形態よりも多くした方が好ましい。
このように、突起6、61、62、63は何れの形状であっても塊5を崩すことは可能であり、突起形状であれば他の異なる形状でも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、上記実施例の如く、粘性や吸着により凝集し易い粒子を分級する篩作業において極めて有効である。
【符号の説明】
【0028】
1 篩
2 基板
3 粒子
4 孔
5 塊
6 突起
61 突起
62 突起
63 突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔を有する基板を振動させることにより粒子が前記基板の入口側から出口側へ前記孔を通過して分級される篩において、前記基板の入口側には前記粒子が互いにくっ付きあって塊となる粒子同士を分離するための複数の突起を形成したことを特徴とする篩。
【請求項2】
前記孔の穴径が1μm〜150μmで、前記突起の高さ寸法が前記穴径の0.5〜2倍であることを特徴とする請求項1に記載の篩。
【請求項3】
前記突起が合成樹脂、金属、セラミックの何れかで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の篩。
【請求項1】
複数の孔を有する基板を振動させることにより粒子が前記基板の入口側から出口側へ前記孔を通過して分級される篩において、前記基板の入口側には前記粒子が互いにくっ付きあって塊となる粒子同士を分離するための複数の突起を形成したことを特徴とする篩。
【請求項2】
前記孔の穴径が1μm〜150μmで、前記突起の高さ寸法が前記穴径の0.5〜2倍であることを特徴とする請求項1に記載の篩。
【請求項3】
前記突起が合成樹脂、金属、セラミックの何れかで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の篩。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−196617(P2012−196617A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61786(P2011−61786)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(396026710)株式会社オプトニクス精密 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(396026710)株式会社オプトニクス精密 (34)
【Fターム(参考)】
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