説明

簡易おむつ

【課題】 必要最低限の長さの股間部を使い捨て使用でき、装着感を向上できるとともに、安定して装着することが可能な簡易おむつを提供する。
【解決手段】 この簡易おむつ10は、着用者の股間の前面側から背面側にかけて覆うことが可能な長手形状を有する使い捨ての股間部30と、再使用可能である周状の胴回り部20とを備えている。胴回り部20には股下方向に延出する延出部24があり、この下縁部付近の係止部26で、胴回り部20と股間部30の両端との着脱が可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易おむつに関し、より詳しくは、使い捨ての股間部と、再使用可能な胴回り部とからなる簡易おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者、身障者等の要介護者(以下、着用者とする)が排泄を行う際の介助方法には、おむつや尿器等が挙げられ、これらは着用者の生活習慣、体調、介護レベルなどに対応して異なる。例えば、おむつや、尿取りパッドを始めとするおむつ補助具は、尿意や便意を感じられない人や、伝えられない人、又は身体を動かすことが極めて困難な状態である人等に使用されている。
【0003】
一般に、尿取りパッドのような短いパッドを装着する方法として、普段使用している下着に、パッドを粘着剤などで貼り付ける方法が行われている。しかし、着用者である高齢者が普段使用している下着は、ゆとりのある大きさの下着が一般的であり、パッドを身体に密着させる機能は低く、漏れが発生しやすい。このため、密着性の高い下着を着用したり、専用の下着を着用したりして、下着とパッドの密着性を改善することが検討されている。
【0004】
上記の密着性を改善する手段として、例えば、特許文献1には、おむつなどの衣類を着用者の股領域に維持するための取り付けシステムが開示されている。図6に示すように、このおむつ40は、おむつ本体60の前後両端部の角付近に、一対のストラップ50がそれぞれ連結され、この連結状態で、ストラップ50を着用者の胴部に配置することで、おむつ本体60が股間に装着される。そして、このストラップ50の伸縮性によって、おむつ本体60を着用者の股間に密着させるものである。
【特許文献1】特開平7−453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のストラップ50は、着用者の左右の腰骨に引っ掛けるようにしておむつ本体60を固定するため、以下の問題を生じる。すなわち、おむつ本体60の長さを充分に長くすれば、図7に示すように、ストラップ50が腰周りに対して水平に近くなる。しかし、おむつ本体60を、その両側から吊り下げているので、おむつ本体60の部分が下に垂れ下がりやすくなり、密着性が不十分で漏れ易い。また、おむつ本体60が股間に当たる面積が大きいため、蒸れが生じやすくなり、装着感もよくない。更に、使い捨てとなるおむつ本体部分が不必要に大きいので不経済であり、コストが高くなる。したがって、おむつ本体60は漏れを生じない範囲で小さいほうが好ましい。
【0006】
一方、上記のストラップによって、図8に示すように、長手方向の長さが短いおむつ本体60’を吊り下げた場合には、ストラップ50’の水平方向に対する角度が大きくなり、腰骨部分へのストラップの引っ掛かりが少なくなってしまう。このため、おむつ本体60’がずれやすく、装着時の安定性が低下するという問題点がある。
【0007】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要最低限の長さの股間部を使い捨て使用でき、装着感を向上できるとともに、安定して装着することが可能な簡易おむつを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る簡易おむつは、具体的に以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 着用者の股間の前面側から背面側にかけて覆うことが可能な長手形状を有する、使い捨ての股間部と、再使用可能であり、前記着用者の胴回りに密着するとともに、前記股間部の前記前面側及び前記背面側の両端を支持する周状の胴回り部と、を備え、前記胴回り部は、前記着用者の胴回りから、少なくとも前記着用者の股下方向にかけて延出する延出部を有し、この延出部の下縁部付近に、前記股間部の両端との着脱を行うための係止部を備える簡易おむつ。
【0010】
(1)の発明によれば、再利用可能な胴回り部から股下方向に延出する延出部を有し、この延出部の下縁部付近に、股間部の両端との着脱を行うための係止部を備えたので、延出部の分だけ股間部の長さを短くすることができる。したがって、使い捨てされる股間部は最小限の大きさでよいので、股間部の製造コストの削減に効果的であり、使い捨てによる廃棄物を削減することができる。また、股間部の無駄な長さを短くすることができるので、装着感も向上できる。更に、周状の胴回り部から延出する延出部に股間部の両端を係止できるので、股間部は延出部で支持されるので下方に垂れ下がることがなく、股間への密着性を向上して漏れを防止し易くなる。更にまた、胴回り部を周状とすることで、連結した状態で足を入れて装着する通常の方法の他、先に胴回り部のみを装着した後、股間部の両端を延出部に連結する方法で装着することもできるので、装着方法を多様化して装着効率を向上することができる。
【0011】
(2) 前記胴回り部は、全体として帯状をなしている(1)に記載の簡易おむつ。
【0012】
(2)の発明によれば、胴回り部を全体として帯状としたことによって、胴回り部の密着度が向上するので、着用者はより安定して股間部を装着することが可能となる。また、胴回り部が肌に当たる面積が大きくなるため、着用感の向上を図ることができる。なお、「胴回り部」としては、布又は不織布からなることが好ましい。また、密着性を上げるために一定方向に伸縮性を有する素材を用いてもよい。
【0013】
(3) 前記胴回り部は、前記着用者の胴回りに密着する紐状部材と、この紐状部材から、前記着用者の股下方向にかけて延出する延出部材とからなる(1)記載の簡易おむつ。
【0014】
(3)の発明によれば、胴回り部を着用者の胴回りに密着する紐状部材と、この紐状部材から、前記着用者の股下方向にかけて延出する延出部材とからなるものとしたことによって、着用者は紐を結ぶだけで、より容易に胴回り部を装着することが可能となる。また、紐状部材を用いることによって、余分な延出部が不要となるので、胴回り部の製造コストをより低減できる。
【0015】
(4) 前記股間部は、着用者側に配置される透水性表面シートと、その反対面側に配置される不透水性表面シートと、これら両シート間に介在する吸収体とからなる(1)から(3)いずれか記載の簡易おむつ。
【0016】
(4)の発明によれば、股間部を着用者側に配置される透水性表面シートと、その反対面側に配置される不透水性表面シートと、これら両シート間に介在する吸収体とからなるものとしたことによって、尿などの排泄物を充分に吸収し、漏らすことなく保持することが可能となる。
【0017】
(5) 前記係止部が面ファスナーである(1)から(4)いずれかに記載の簡易おむつ。
【0018】
(5)の発明によれば、係止部を面ファスナーとしたことによって、股間部を胴回り部に容易に装着することが可能となる。なお、「面ファスナー」とは、例えば、「マジックテープ」(登録商標)のように、鉤状の突起が一面についた面部材と、パイル状の突起が一面についた面部材とが一組みとなった留め具を通常意味するが、本発明においては、面ファスナーとして鉤状の突起が一面についた面部材のみを用いてもよい。この場合、例えば股間部の上記の表面シートを不織布とすることで、パイル状の突起が一面についた部材に代用することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の簡易おむつによれば、必要最低限の大きさの股間部を使用できるので、装着感を向上できるとともに、経済的な股間部のみの使い捨てを行うことができる。また、着用者の体型や股間部の形状の影響を受けることなく安定して装着することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたっては、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態における簡易おむつ10は、図1に示すように胴回り部20と股間部30とを備えている。
【0022】
胴回り部20は再使用可能であり、伸縮性を有する伸縮部22から着用者の股下方向にかけて全体的に延出する延出部24を備え、全体として筒状をなしている。本実施形態では、伸縮部にゴムを使用している。また、延出部24の下縁部には、係止部26(本実施例では面ファスナー)が設けられている。係止部26は、面ファスナーの他、ボタン、リボン、フックなどであってもよく、これらを組み合わせて使用してもよく特に限定されない。
【0023】
胴回り部20の幅Wは、着用者の大きさに合わせて適宜設定可能であり特に限定されないが、10〜15cmであることが好ましい。これによって、股間部30との係止位置を下げて股間部の長手方向を短くできる。また、胴回り部20の円周は着用者の胴回りに合わせて適宜設定可能であり特に限定されないが、70〜100cmであることが好ましい。
【0024】
使い捨ての股間部30は、着用者側に配置される透水性表面シートと、その反対面側に配置される不透水性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸収体と、を備えている。この股間部30は、市販の尿取りパッドなどを用いてもよい。なお、股間部30全体の短手方向の幅Wは10cm〜30cmであることが好ましく、また、長手方向の長さは20cm〜60cmであることが好ましい。なお、股間部30の長手方向の両端部付近の透水性表面シート側には、胴回り部20の係止部26に対応する位置に被係止部31(例えば面ファスナー)が設けられていてもよい。
【0025】
図2は股間部30を取り外した状態の斜視図である。股間部30は、不透水性表面シート36の上に、吸収体34が配置され、それを包み込むようにして透水性表面シート32が配置されている。吸収体34の寸法は、透水性表面シート22及び不透水性裏面シート36よりも小さい。股間部30の外縁部はホットメルト、接着剤等で接着され、長手方向の略中心部には伸縮性を有する伸縮部材(例えばギャザー)38が設けられている。また、股間部30の長手方向両端の係止部26に対応する位置には、上記の被係止部31が設けられている。なお、被係止部は必ずしも設けなくてもよい。
【0026】
透水性表面シート32の材料としては、耐湿性ティシュー紙の不織ウェブまたはシート、合成ポリマーフィラメント(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなど)からなるスパンボンド、メルトブロウンまたはボンドカードウェブ、あるいは、レーヨンまたはコットンなどの天然ポリマーフィラメントのウェブ等が挙げられる。
【0027】
不透水性裏面シート36の材料としては、厚さ15〜60μmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート、または不織布、紙及びこれらのラミネート材料等が挙げられる。また、無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことで得られる通気性フィルムであっても良い。
【0028】
吸収体34は、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、高分子吸収体、合成繊維等を単独又はこれらを混合したものからなり、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。また、吸収性を高めるためにカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エチレンマレインアニドライドコポリマー、ポリビニルエーテル、ヒドルキシプロピルセルロース、ポリビニルモルホリン、ビニルスルホン酸のポリマー及びコポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン等の高吸水性ポリマーを添加してもよい。
【0029】
上記の構成からなる簡易おむつ10の使用に際しては、着用者はまず胴回り部20を着用し、前面側又は背面側の延出部24の下縁に備えられている係止部26に股間部30の被係止部31取り付ける。次いで、着用者の股下を通じて他方の延出部24に股間部30の他端を取り付ける。したがって、胴回り部20を着用したまま、股間部30の脱着が簡易に可能である。なお、あらかじめ胴回り部20に股間部30を取り付けた状態で、着用してもよい。
【0030】
<変形例>
図3の簡易おむつ10’は、伸縮部22にゴムの代わりに紐28を用いている点が、上記の図1の実施形態と異なっている。このように、伸縮部22を紐28とすることで、着用者は、自分のウエストに合わせて伸縮部22の紐を調節して着用することができる。
【0031】
<第2実施形態>
本実施形態においては、図4に示すように、簡易おむつ11における胴回り部20が、左右で結ばれる紐状部材21と、この紐状部材21から着用者の股下方向にかけた部分にのみ延出する二枚の延出部23、23で構成されている点が第1実施形態と異なっている。なお、この実施形態においては、二枚の延出部23、23は、紐状部材21に縫目27によって縫い付けられて固定されている。延出部23の幅Wは10〜40cmであることが好ましい。この実施形態によれば、着用者は自分のウエストに合わせて紐状部材21の長さを両側で調節して着用することができる。なお、この紐状部材21は紐又はゴムであることが好ましい。
【0032】
<変形例>
図5の簡易おむつ11’は、二枚の延出部23、23’のうち、図5における前面側の延出部23の上部が紐状部材21’に固定されておらずに、筒状部29となって左右に移動可能になっており、更に紐状部材21’が一箇所のみで結ばれている点が、上記の図4の実施形態と異なっている。このように、筒状部29を設けることによって、着用者は最適な位置に股間部30をずらして装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態の簡易おむつの一例を示す斜視図である。
【図2】図1における股間部を示した拡大斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の簡易おむつの他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態の簡易おむつの一例を示す視図である。
【図5】本発明の第2実施形態の簡易おむつの他の例を示す斜視図である。
【図6】従来の簡易おむつの一例を示す斜視図である。
【図7】従来の簡易おむつを装着した状態の一例を示す正面図である。
【図8】従来の簡易おむつを装着した状態の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0034】
10、10’、11、11’ 簡易おむつ
20、25 胴回り部
21、21’ 紐状部材
22 伸縮部
23、24、 延出部
26 係止部
27 縫目
28 紐
29 筒状部
30 股間部
31 被係止部
32 透水性表面シート
34 吸収体
36 不透水性裏面シート
38 伸縮部材
、W、W

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股間の前面側から背面側にかけて覆うことが可能な長手形状を有する、使い捨ての股間部と、
再使用可能であり、前記着用者の胴回りに密着するとともに、前記股間部の前記前面側及び前記背面側の両端を支持する周状の胴回り部と、を備え、
前記胴回り部は、前記着用者の胴回りから、少なくとも前記着用者の股下方向にかけて延出する延出部を有し、この延出部の下縁部付近に、前記股間部の両端との着脱を行うための係止部を備える簡易おむつ。
【請求項2】
前記胴回り部は、全体として帯状をなしている請求項1記載の簡易おむつ。
【請求項3】
前記胴回り部は、前記着用者の胴回りに密着する紐状部材と、この紐状部材から、前記着用者の股下方向にかけて延出する延出部材とからなる請求項1記載の簡易おむつ。
【請求項4】
前記股間部は、着用者側に配置される透水性表面シートと、その反対面側に配置される不透水性表面シートと、これら両シート間に介在する吸収体とからなる請求項1から3いずれかに記載の簡易おむつ。
【請求項5】
前記係止部が面ファスナーである請求項1から4いずれかに記載の簡易おむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−51240(P2006−51240A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235975(P2004−235975)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】