説明

簡易の隔離設備、隔離壁およびトイレ付ベッド

【課題】安全で高い気密性を備え、一つで簡易治療から高度な医療現場や感染対策まで対応できる簡易の隔離設備を提供する。
【解決手段】外部から気密に遮断された室と、室内の空気の状態を調整する空気調整手段Aとを備えた隔離室Cであって、隔離室Cは、室を形成する、天井11と、床12と、両者間に設けられた複数の壁とを備えており、室内には、室を形成する複数の壁のうち、二つの側壁13の間に配設され、室を主室PCと前室ACに分割し得る隔壁2を備えており、隔壁2は、室内を主室PCと前室ACに分割する分割位置と、室の一の側壁に沿うように配置された収納位置と、の間で移動可動に設けられており、隔壁2が分割位置に配置された状態において、隔壁2と室内面との間における空気の流れを制御する気流調整手段3を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用や感染症のために使用できる簡易の隔離設備、隔離壁およびトイレ付ベッドに関する。さらに詳しくは、隔離室内に移動可能な隔壁を備えた簡易の隔離設備と隔離壁およびトイレ付ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害に起因して、発生当初は、医療行為を必要とする被災者が続出する。かかる医療行為としては、(1)高度な医療(例えば、開腹手術など)、と(2)一般的な医療(例えば、簡単な縫合、治療など)が想定される。
【0003】
(1)高度な医療の現場では、患者を無菌状態下で管理するため、医療の現場を無菌に近い状態にし、かつ、患者に接する医療スタッフも無菌状態にする必要がある。このためには、患者を無菌状態下にするための場所(以下単に主室という)と、医療スタッフが無菌状態になるための場所(以下単に前室という)が必要となる。かかる環境を調整するためには、前室は室外に対して陽圧にし、主室は前室に対してさらに陽圧にする必要がる。すると、空気の流れを、主室から前室そして室外へと一方向に流れるようにすることができるので、患者を無菌状態下で管理することができる。
【0004】
また、(2)一般的な医療の現場では、高度な医療の現場までの無菌状態までは要求されないが、様々な菌等を含む外気の空気を流入しにくい環境が望まれている。つまり、患者の患部等を外気の菌等に暴露されないようにするために、上記(1)のような前室までは設けなくとも、医療行為を行う主室を室外よりも陽圧にする必要がある。すると、空気の流れを、主室から室外へと一方向に流れるようにすることができるので、患者が外気の菌等に接触することがない。
【0005】
一方、避難生活に伴って、もともと免疫力の低い者(老人や子供など)や精神的ストレスによって免疫力が低下する者が続出する。このような被災者は、健常者に比べて免疫力が低下しているため肺炎等といった病気にかかりやすくなる。そのため、かかる被災者を、上記(2)と同様の環境に保護する必要がある。
【0006】
さらに、感染症の問題もある。例えば、新型のウイルス等による感染症があげられる。
このような感染症は、(3)感染力のみならず、病原性も非常に強いもの(例えば、SARSなど)と、(4)感染力は強いが、病原性はさほど強くないもの(例えば、新型インフルエンザなど)がある。
【0007】
(3)感染力のみならず、病原性も非常に強い感染症対策では、感染力および病原性の強いウイルス等の感染源を外部に漏洩させないために、感染者を外部と隔離し、かつ、感染者に接する医療スタッフの防護服等も外部と隔離する必要がある。このためは、感染者を隔離するための主室と、医療スタッフの防護服等を着脱するための前室が必要となる。かかる環境を調整するためには、前室は室外より陰圧にし、主室は前室よりさらに陰圧にする必要がる。すると、空気の流れを、室外から前室そして主室へと一方向に流れるようにすることができるので、感染源を外部に漏洩させることがない。
【0008】
また、(4)感染力は強いが、病原性はさほど強くない感染症対策では、感染源が感染力は強いが病原性が低いウイルス等であるため、医療スタッフが防護服等の着用までは要求されない。よって、上記(3)のような前室まで設けなくともよい。しかし、感染力が強いため、感染源を外部に流出しないようにするためには、感染者を治療等する主室を室外よりも陰圧にする必要がある。すると、空気の流れを、室外から主室へと一方向に流れるようにすることができるので、感染源を外部に漏洩させることがない。
【0009】
以上のごとく、主室と前室との間の空気の流れを調整するためには、主室および前室が高い気密性を備えなければならない。
【0010】
さらに、災害時等では、緊急性を有するため、可搬性がよくなければならない。
【0011】
そこで、上述の、空気の流れを調整した環境と可搬性とを備える技術が、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されている。
これらの特許文献で開示された技術は、空気の流れをある程度調整することができる環境の部屋を備えている。また、人力で簡易に組み立てることができ、かつ、コンパクトに収納できるため、緊急時の可搬性の点において優れている。
【0012】
しかしながら、特許文献1、2および3記載の技術では、ビニールシート等で外壁等が構成されているため、使用しているときに傷、穴等ができると、気密性が保てなくなる。
そうすると、医療関係者が知らない間に感染源が外部に漏洩するという危険性を否定できない。
また、特許文献2記載の技術では、入り口内部にエアロック空間を有しているが、かかる空間は、複数枚のカーテン状の可撓性シートを天井部から下げているだけであるため、気密性を確保できない。
つまり、上述の技術では、高い気密性を確保できる主室、前室を備えることができないため、所定の空気の流れを調整することができない。
【0013】
そこで、気密性を確実に確保する技術が、特許文献4に開示されている。
特許文献4には、室内を陽圧または陰圧条件に制御するバイオクリーンルームを運搬可能モジュールによって構成したユニットとし、このユニットを他の可搬モジュールと連結したユニットホスピタルが開示されている。かかるユニットは、モジュール本体およびその接合部を気密構造としているため、気密性や医療スタッフの安全性という面から優れている旨が記載されている。
【0014】
しかしながら、特許文献4記載の技術においては、ユニットは、例えば手術室、廊下などといった単位施設として構成されており、大きく重量が重くなるため、ユニットを運搬する手段は、大型車に限定されてしまう。このため災害時に、道路の崩壊等で封鎖され大型車が通行できなくなった場合、ユニットを設置場所まで運搬させることができない。
そして、このように大きく重量が重いユニットを設置するには、それを支持する基礎が必要となる。よって、基礎をコンクリート等で強固に形成しなければならないため、設置までに時間と手間がかかるため、緊急時に対応することはできない。
【0015】
従って、上述したように、人力による可搬性と、一つで上述の4つの場面に対応できる安全で高い気密性と、を有するものは現在存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004-141239号公報
【特許文献2】特開平7-461号公報
【特許文献3】特開2008-237704号公報
【特許文献4】特開平4-333782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上記事情に鑑み、安全で高い気密性を備え、一つで簡易治療から高度な医療現場や感染対策まで対応できる簡易の隔離設備を提供することを目的とする。また、既存の部屋の室内に取付けて室内を分割できる隔離壁を提供することを目的とする。さらに、トイレ付車椅子として使用することもできるトイレ付ベッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1発明の簡易の隔離設備は、外部から気密に遮断された室と、該室内の空気の状態を調整する空気調整手段とを備えた隔離室であって、該隔離室は、前記室を形成する、天井と、床と、両者間に設けられた複数の壁とを備えており、前記室内には、前記室を形成する複数の壁のうち、二つの側壁の間に配設され、前記室を主室と前室に分割し得る隔壁を備えており、該隔壁は、前記室内を前記主室と前記前室に分割する分割位置と、前記室の一の側壁に沿うように配置された収納位置と、の間で移動可動に設けられており、前記隔壁が分割位置に配置された状態において、該隔壁と前記室内面との間における空気の流れを制御する気流調整手段を備えていることを特徴とする。
第2発明の簡易の隔離設備は、第1発明において、前記天井および床は、その内面が平滑な面で形成されており、前記隔壁は、その隔壁上端縁および隔壁下端縁と前記天井面および床面の平滑面と、の間に位置するように前記気流調整手段が設けられており、前記気流調整手段は、その基部が前記隔壁の端縁に取付けられた板状の弾性部材であって、前記隔壁を分割位置に配置したときに、該弾性部材が該隔壁の端縁部と前記天井面および床面の平滑面との間において湾曲可能であり、該弾性部材が湾曲した状態において、その一方の面が前記天井面および床面の平滑面に面接触した状態となるように取付けられていることを特徴とする。
第3発明の簡易の隔離設備は、第1または第2発明において、前記隔壁は、その一端縁が、連結手段により一の前記側壁に対して該隔壁を前記床面に沿って揺動し得るように連結されており、該隔壁を揺動させて前記収納位置から前記分割位置に配置したときに、該隔壁の他端縁が接する他の前記側壁には、前記隔壁の他端縁を係合し得る取付手段が設けられていることを特徴とする。
第4発明の簡易の隔離設備は、第1、第2または第3発明において、前記隔離室は、前記天井、床、側壁を構成する板状の板状部材と、隣接する該板状部材の端縁との間に配置された組立部材と、から形成されており、該組立部材には、前記部屋を組立てたときに、前記板状部材の端縁を収容し得る収容溝が形成されており、該収容溝の内面には、前記板状部材の端縁を前記収容溝に嵌合して収容した状態において、両者間に配置され両者間の隙間をシールするシール部材が設けられていることを特徴とする。
第5発明の簡易の隔離設備は、第4発明において、前記シール部材が、柔軟性を有する部材であり、該柔軟性を有する部材は、前記収容溝の内面に対向するように一対設けられており、前記収容溝の内面に該柔軟性を有する部材が取付けられた状態において、その内向する端縁間が前記板状部材の端縁の厚さより小さくなるように形成されていることを特徴とする。
第6発明の隔離壁は、天井、床および複数の壁を備えた部屋の室内に設けられ、該室内を分割するために使用される隔壁であって、該隔壁は、前記室内の一の側壁近傍に配設される柱部材と、該柱部材に対して揺動し得るように、該柱部材にその一の側端縁が連結された板状部材と、前記一の側壁と異なる側壁に取付けられる、前記板状部材の他の側端縁を係合離脱可能に連結する固定部材と、前記柱部材を前記室内の一の側壁近傍に配設したときに、前記板状部材の上下端縁と前記部屋の天井および床との間に配設される気流調整手段とを備えていることを特徴とする。
第7発明の隔離壁は、第6発明において、前記気流調整手段は、その基端部が前記板状部材の上下端縁に取付けられた板状の弾性部材であって、該弾性部材は、前記柱部材を前記室内の一の側壁近傍に配設したときに、前記板状部材の上下端と前記天井および床との間において湾曲可能であり、湾曲した状態において、その一方の面が前記天井および床に面接触した状態となるように取付けられていることを特徴とする。
第8発明のトイレ付ベッドは、介護に使用されるベッドであって、該ベッドは、上面に開口が設けられたベッド本体と、該ベッド本体の開口部に配置される、座部にトイレを備えたトイレ付車椅子とを備えており、該トイレ付車椅子は、前記座部との連結部を支点として、上面が水平になった倒伏位置と、該倒伏位置から上方に揺動した起立位置との間で揺動可能に設けられた背もたれ部と、前記座部との連結部を支点として、上面が水平になった水平位置と、該水平位置から下方に揺動した下方位置との間で揺動可能に設けられた脚部とを備えており、前記ベッド本体は、前記トイレ付車椅子の背もたれ部を起立倒伏させるリンク機構を備えており、前記トイレ付車椅子は、前記脚部を揺動させるチェーン機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明によれば、隔離室内を隔壁で分割して前室を設けることができるので、隔離室の外部に前室を設ける場合に比べて、簡単な構造とすることができる。また、隔壁が移動可能であるので、隔壁を移動して収納位置に配置した場合、前室として使用していた部分も主室として使用できるので、固定式の隔壁を設けた場合に比べて、隔離室内に収容することができる患者等を多くすることができる。
さらに、隔離室内部の空気を浄化して外部に排出または外部の空気を浄化して隔離室に供給する空気調整手段を使用すれば、室内圧を外部に比べて陽圧陰圧にすることができる。すると、隔壁を移動して前室を設けた状態では、高度の医療や病原性の強い感染症に対応することができ、かつ、隔壁を収納位置に配置して隔離室とした状態では、一般的な医療や病原性の弱い感染症に対応できる。つまり、かかる隔離室だけで、高度医療、一般医療、病原性および感染力の強い感染症、病原性が弱いが感染力が強い感染症といった4つの状況に緊急に対応することができる。
第2発明によれば、隔離室の天井および床の内面を平滑な面で形成し、かつ、その平滑な面と隔壁の端縁部との間に設けられた板状の弾性部材を湾曲させて、その一の面を上記平滑な天井面および床面に面接触させるので、隔壁を分割位置に配置したときに、主室と前室との空気の流れを上記天井面等が平滑でない場合に比べて制御することができ、気密性の高い主室と前室を形成することができる。
第3発明によれば、隔壁を連結手段により収納位置から分割位置まで移動すれば、その他端縁を他の側壁に容易に係合できるので、隔離室を隔壁により容易に主室と前室とに分割することができる。
第4発明によれば、板状の天井、床、壁の板状部材の端縁を組立部材の溝(以下単に収容溝という)に嵌め込むだけで隔離室を形成することができるので、かかる隔離室の設置および解体作業を非常に簡単に行うことができる。よって、かかる隔離室の設置に専門家は不要になるので、緊急時にあっては迅速にかかる隔離室を設置することができる。
しかも、各部材の大きさおよび重量を人力で運べる程度にすれば、小スペースの場所に収納することができ、その収納場所から各部材を人力で設置場所まで運搬することができるので、災害時等の緊急性を要する場合でも、迅速にかかる隔離室を人力で搬出し設置することができる。さらに、災害等により大型車が使用できない場合であっても、各部材を人力で搬送できるので、大型車でなければ搬送することができないプレハブ型の部屋を使用する場合に比べて、可搬性を高くすることができる。
また、隔離室の壁等に板状の部材を使用するので、壁等をビニール等のシート状部材で形成する場合に比べ破損等が起こりにくく、室内の空気が外部に漏れる危険性を少なくすることができる。
さらに、組立部材の収容溝の内面にシール部材を設けているので、この収容溝に板状の部材の端縁を嵌め込んで隔離室を組立てしさえすれば、気密性を備えた隔離室を組み立てることができる。そうすると、空気調整手段により室内を陰圧にした場合、感染源が外部に漏洩することを防止することができ、室内を陽圧にした場合、室外の空気が室内に侵入することを防止することができる。
第5発明によれば、組立部材に形成された収容溝の内面に対向するように一対の柔軟性を有する部材を設けて、その柔軟性を有する部材の内面間を壁等を構成する板状部材の端縁の厚さよりも小さく形成するので、板状部材を収容溝に容易に嵌合できる。しかも、板状部材の端縁を柔軟性を有する部材に密着させることができ、組立部材と板状部材との隙間のシール性を高くすることができる。
第6発明によれば、天井、床および複数の壁を備えた部屋であれば、室内の側壁間に容易に移動可能な隔離壁を取付けることができるので、病院等の通常の病室を容易に隔離壁で2室に分割することができる。しかも、隔離壁が備える気流調整手段により、2室間の空気の流れを制御することができるので、病院等の通常の病室を所定の気圧に調整が必要な隔離病室にすることができる。
第7発明によれば、室内に隔離壁を取付けて室内を二室に分割したときに、部屋の天井および床と隔離壁の上下端縁との間に設けられた板状の弾性部材を湾曲させて、その一の面を上記天井面および床面に面接触させることができる。すると、隔離壁に分割された2空間を、高い気密性にすることができる。
第8発明によれば、ベッド本体の開口部に座部にトイレを備えたトイレ付車椅子を配置して、このトイレ付車椅子の背もたれ部を水平位置まで倒伏させ、かつ、脚部を水平位置まで動かせば、背もたれ部と座部と脚部の上面全体を水平にすることができる。この水平な上面をベッドの床として使用すれば、歩行困難な介護者等のためのトイレ付ベッドとして使用することができる。また、このトイレ付ベッドの床のうち、背もたれ部の床はベッド本体部に設けられたリンク機構を介して所定の位置まで起立させることができ、かつ、脚部の床はトイレ付車椅子に設けられたチェーン機構を介して所定の下方位置まで動かすことができる。すると、背もたれ部を所定の位置まで起立させ、かつ、脚部を所定の下方位置まで動かせば、介護者等は座部にトイレを備えたトイレ付椅子として使用することができる。しかも、このトイレ付椅子はトイレ付車椅子としてベッド本体から容易に取り外して移動することができるので、要介護者等はベッドから車椅子に乗りなおさなくても着座したままで移動することができる。よって、寝たきりの人を介護する者の作業を軽減することができる。とくに、夜間作業が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の隔離室Cの天井11、床12、側壁13を透視化した斜視図であって、(A)は隔離室Cの室内に隔壁2を主室PCと前室ACとに分割して配置(分割位置)した状態の隔離室Cの概略説明図であり、(B)は隔壁2を収納位置に配置した状態の隔離室Cの概略説明図である。
【図2】隔壁2を分割位置に配置した状態の隔離室Cの概略説明図であり、(B)は(A)の平面図である。
【図3】隔壁2を収納位置に配置した状態の隔離室Cの概略説明図であり、(B)は(A)の平面図である。
【図4】(A)は、図2(B)の部分平面拡大図であり、(B)は図3(B)の部分平面拡大図である。
【図5】隔壁2を分割位置に配置した状態の隔離室Cの平面拡大図(図4(A))の隔壁2を詳細に説明した図面であり、(X)は隔壁2と側壁13aとの部分拡大平面断面図であり、(Y)は隔壁2内の連結部分拡大平面断面図であり、(Z)は隔壁2の他端縁2eと側壁13bとの取付部分拡大平面断面図である。
【図6】隔壁2に備えられた気流調整手段3の説明図であり、(A)は低圧側の室に気流調整手段3の先端3eを配置した状態の説明図であり、(B)は(A)の説明図における気流調整手段3と床面12sとの拡大断面図であり、(C)は高圧側の室に気流調整手段3の先端3eを配置した状態の説明図である。
【図7】隔離室Cのコーナーに配設される組立部材30の切り取り断面斜視図である。
【図8】隔離室Cを組立たときのコーナーを切り取ったときの切り取り断面斜視図である。
【図9】組立部材30の収容溝30gに柔軟性を有する部材31の説明図であり、(A)はこの組立部材30に天井等を構成するパネル等の端縁を嵌合して隔離室Cを組み立てたときの部分断面図であり、(B)は(A)の使用例を示した図である。
【図10】隔離室Cの出入口の扉Dの一実施例の部分断面図である。
【図11】隔離室Cの出入口の扉Dの他実施例の部分断面図である。
【図12】樹脂製シートで隔壁2全体を覆う構成を採用した場合の隔壁2の説明図であり、(A)は天井側の部分正面図であり、(B)はその部分断面図であり、(C)は隔壁2内の連結部分拡大平面断面図である。
【図13】図4(A)の側壁13に設けられた可動壁40の説明図であり、(A)は可動前の状態を示す部分拡大平面断面図であり、(B)は可動後の状態を示す部分拡大平面断面図である。
【図14】本実施形態の隔離室Cの室内で使用し得るトイレ付ベッド100の斜視図である。
【図15】(A)は図14のトイレ付ベッド100の本体斜視図であり、(B)はトイレ付ベッド100に使用し得る背もたれ部91と、座部92と、脚部93を備えたトイレ付車椅子Tの斜視図である。
【図16】図14の平面図である。
【図17】図14の側面断面図である。
【図18】図16のXVIII矢視図の部分側面拡大図であり、とくにリンク機構120について説明する図であり、(A)は背もたれ部91を倒伏した状態を説明する図であり、(B)は起立させた状態を説明する図である。
【図19】図16のXIX矢視図の部分側面図であり、とくにチェーン機構130について説明する図であり、(A)は脚部93の水平位置の状態を説明する図であり、(B)は脚部93の下方位置の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の隔離設備は、医療用または感染症隔離室等に使用し得る気密な部屋であって、その室内に移動可能な隔壁を設けたことに特徴を有している。
【0022】
以下、本発明の隔離設備の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
まず、本実施形態の隔離室Cの概略について説明する。
図1において、符号Cは、本実施形態の隔離室を示している。
本実施形態の隔離室Cは、板状の部材(例えばポリカーボネイト製の板状の部材等)で形成された天井11および床12と、両者間に設けられた複数の側壁13から形成されている。
【0024】
側壁13には、隔離室Cへ人が出入することができる扉Dが設けられている。図10に示すように、この扉Dは片引き戸であって、隔離室Cに設けた扉枠部材D1に取付けられている。そして、扉Dの室内側の上端縁および下端縁のコーナーと扉枠部材D1との間には、柔軟性を有するシール部材D3が設けられている。この柔軟性を有するシール部材D3によって、扉Dの上端縁および下端縁と扉枠部材D1の間の隙間を埋めるような構成となっている。
【0025】
なお、扉Dの取付構造は、図11に示すような構成も採用することができる。
具体的には、扉枠部材D1は、片引き戸の上下端縁を収容する収容溝の幅が片引き戸の厚さと略同じ大きさに形成されている。これにより、かかる構成の扉Dは、図10よりもさらに簡単な構造にすることができる。また、かかる構造の場合、室内を陰圧にすると、片引き戸は室外の気圧差に起因して室内に向かって押されるから、上下端縁と収容溝の内面が密着し、片引き戸と戸枠部材D1との間がシールされる。
また、扉Dは、後述するように、片引き戸を採用して、片引き戸を取付ける側壁13の一部に可動壁を設ければ、扉D1の横幅よりも大きい大型器具(例えばベッド等)を室内に搬入することができるので好ましい(図13)。
【0026】
隔離室Cは、空気調整手段Aを備えている。空気調整手段Aは、空気浄化フィルタ等を備えた装置22と、空気ダクト21と、を備えている。空気ダクト21は、側壁13に設けられた通気口20に連結するように設けられている。
【0027】
なお、空気浄化フィルタは、高性能フィルタ(例えば、細菌、ウイルス等の拡散防止に対応できるHEPAフィルタ等)を備えているものであれば特に限定されない。
また、通気口20は、側壁面13に限らず天井11に設けることも可能であり、連結する空気ダクト21との連結部は、隙間をシールして連結部分からの空気の漏れを防止している。
【0028】
そして、側壁13または天井11には、高性能フィルタを備えた空気通用口Vが設けられており、このフィルタを通して空気が流入流出できるようになっている。
【0029】
このため、空気調整手段Aにより室内の空気を外部に排出または外部の空気を室内に供給して、室内の気圧を外部に比べて陰圧または陽圧にすれば、室内と外部と間に気圧差を設けて、室内を気密に保つことができるので、外部から隔離した隔離室Cを形成することができる。
【0030】
とくに、この隔離室Cの室内に病原性が弱いが感染力が強い感染症の患者等を隔離した場合、室内を陰圧にすれば、感染症の感染源は空気調整手段Aの空気浄化フィルタ等により浄化されて外部に排出される。しかも、空気の流れを室外から室内へという一方向にのみ流れるように制御されるので、室外に感染源が漏洩するおそれもない隔離室Cを形成することができる。
【0031】
逆に、空気調整手段Aにより室内を陽圧にした場合、室内圧は外部の気圧よりも高くなるので、空気の流れを室内から室外への一方向にのみ流れるように制御することができる。つまり、この隔離室Cは、室内を陽圧にすれば、様々な菌等が含まれる外部の空気が室内に侵入することを制御できるので、室内において一般的な医療行為を行うことができる。言い換えれば、この隔離室Cは、高度の手術等に必要な無菌状態までは要求されないが、ある程度の無菌状態が要求される医療行為に使用することができる。
また、かかる隔離室Cは、室内を陽圧にすれば、様々な菌等が含まれる外部の空気が室内に侵入することを制御できるので、免疫力の低下した人、例えば白血病を患っている患者が利用する病室として使用することができる。
【0032】
また、図2(B)や図3(B)に示すように、この隔離室Cの室内にベッドや簡易トイレ等を設ければ、個人用の隔離設備として使用することも可能である。
例えば、隔離室Cを陰圧にして感染者を隔離する場合、感染源を含む空気が外部に漏れないように隔離室C内の空間を外部から隔離することができる。しかも、隔離室Cの内部に設けた簡易トイレの排泄収集袋等に、殺菌剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム等)を含有させておけば、感染者が排泄した汚物等を殺菌することができる。つまり、この隔離室Cは、感染源を含む空気および汚物等も外部から隔離することができる。
【0033】
なお、本明細書中の気密とは、完全に空気の流れを防止した状態だけでなく、略気密の状態を含む概念である。略気密の状態とは、室内を陰圧または陽圧にした場合、隔離室Cを形成する天井11、床12、側壁13の隣接する端縁間に存在する隙間において、空気の流れが一方向に制御されるレベルの気密性を意味している。
言い換えれば、隔離室Cは、出入口の扉Dを閉じた状態において、室内に空気が自由に侵入したり漏洩したりしない程度に気密性が保たれた構成になっている。例えば、空気の流れは、空気調整手段Aにより室内を外部に比べ陰圧にすれば、その気圧差により、室外から室内へ、という一方向にのみ空気が流れるような構造となっている。
【0034】
次に、隔壁2を備えた構成を有する隔離室Cについて説明する。
図1(A)または図2(A)において、符号2は室内を分割する隔壁を示している。
図1(A)または図2(A)に示すように、隔壁2は、隔離室Cを形成する複数の側壁13のうち、二つの側壁13の間に配設されている。しかも、隔壁2は、その上端縁が天井11に接し、また下端縁が床12に接して、室内を二つの室に分割するように配設されている。
ここで、分割された室のうち隔離室Cの扉Dを有する室を前室ACとし、他方の室を主室PCとする。
【0035】
隔壁2は、通用扉Eと、空気浄化フィルタ(例えばHEPAフィルタ等)を備えた図示しない空気通用口と、を備えている。
このようにして形成された気密な隔離室Cの前室ACは、主室PCに出入りする際の準備空間として使用することができる。
例えば、隔壁2に設けられた高性能フィルタは、空気が通過するときの圧力損失が数百Paである。隔離室Cの室内を上記空気調整手段Aにより陰圧にした場合、主室PCは前室ACに比べ陰圧にでき、前室ACは外部に比べ陰圧にすることができる。つまり、主室PCの気圧をP1、前室ACの気圧をP2とすると、P1<P2とすることができる。すると、隔離室Cに外部から人が出入りするとき、その空気の流れは、前記圧力差により外部から前室AC、そして主室PCと流れるように制御することができる。よって、人が出入りしても外部にウイルス等が漏れることがない。
【0036】
とくに、主室PCを陰圧にして、主室PCに病原性および感染力の強い感染症の患者等を隔離した場合、前室ACでは、主室PCに隔離した病原性および感染力が強い感染症の患者等に従事する医療スタッフが、感染源に汚染された可能性のある防護服や術着等の着脱等を行うことができる。
従って、かかる条件にすれば、この隔離室Cは、病原性および感染力が強いウイルス等を外部から隔離する隔離設備として使用することができるし、人が出入りしても外部にウイルス等が漏れることがない。
【0037】
また、隔離室Cの室内を空気調整手段Aにより陽圧にした場合、隔離室Cを前記のように陰圧にした場合とは逆、つまり、主室PCは前室ACに比べ陽圧にでき、前室ACは外部に比べ陽圧にすることができる。主室PCと前室ACの気圧差の関係は、P1>P2とすることができる。隔離室Cに外部から人が出入りするときの空気の流れは、前記圧力差から、主室PCから前室AC、そして外部へと流れるように制御することができる。つまり、人が出入りしても外部から病原菌等を流入させない。
【0038】
とくに、主室PCを陽圧にして、主室PCに高度な医療行為(例えば開腹手術)を必要とする患者等を隔離した場合、この患者等は、略無菌に近い状態に隔離することができる。しかも、前室ACでは、このような略無菌状態に隔離した患者等に従事する医療スタッフが、無菌状態の術着等を着脱することができる。
従って、かかる条件にすれば、この隔離室Cは、高度の手術等に必要な無菌状態の手術室等として使用することができる。
【0039】
なお、主室PCだけでなく、上記前室ACにも空気調整手段Aを設けた構成も採用することができる。前室ACに空気調整手段Aを設ければ、前室ACの室圧を空気調整手段Aを設けない場合に比べ、室内気圧を厳密に調整することができ、しかも、所定の室圧に調整できるまでの時間を短くすることができる。かかる構成を採用した場合には、隔壁2に空気通用口等を設けなくても前室ACを所定の室圧に調整することができるので好ましい。
【0040】
(移動可能な隔壁2の説明)
本発明の隔離室Cは、移動可能な隔壁2を備えていることに特徴を有している。
本実施形態の隔離室Cに備えられた隔壁2は、分割位置(図2参照)と収納位置(図3参照)との間で移動することができるように構成されている。
【0041】
具体的には、図4(A)に示すように、隔壁2は、隔離室Cの室内を主室PCと前室ACの二室に分割する分割位置に配置することができるようになっている。また、図4(B)に示すように、隔壁2は、分割位置に配置した状態から、隔壁2の一の端縁を支点として揺動するように移動させれば、一の側壁13に隔壁2が沿うように配置された収納位置に収納できるようになっている。
【0042】
図4に示すように、隔壁2は、その一端縁が、その一端縁と側壁13aとの間に配設された連結手段16により側壁13aに連結されている。この連結手段16は、側壁13aに対して分割位置に配置した状態と、側壁13aに沿う位置に配置された収納位置との間で揺動し得るように隔壁2を側壁13aに連結するものである(図4および図5(X))。
例えば、連結手段16は、板状のゴム製の弾性部材あって、隔壁2の一の端縁の縦軸方向に沿って延びた長方形の躯体状部材を採用することができる。かかる連結手段16の場合、一の端縁を隔壁2の一の端縁に接合し、その幅方向の他端縁を側壁13aに接合するように形成して、隔壁2と側壁13a間との間に配設する。すると、隔壁2をこの連結手段16によって、隔壁2を収納位置から揺動して分割位置に配置することができる。
なお、かかる連結手段16は、躯体状部材とヒンジ等の両方によって側壁13aと隔壁2を連結する構成としてもよい。この場合には、隔壁2と側壁13aをヒンジ等だけで連結する場合に比べ隔壁2と側壁13aの間に形成される隙間を少なくして主室PCと前室ACの空気の自由流動を制御できるし、躯体状部材だけよりも強いので好ましい。
【0043】
また、図4(A)に示すように、隔壁2は2枚の板状の部材2A、2Bによって構成することができる。この場合、板状の部材2A、2Bの間に両者を揺動可能に連結する連結部材2Cを採用することが好ましい。例えば、連結部材2Cとして、前記板状の部材2A、2Bの端縁の縦軸方向に沿って延びた、板状のゴム製の弾性部材である長方形の躯体状部材を採用することができる。この場合、躯体状部材の幅方向の両端縁を前記2枚の板状の部材2A、2Bの端縁と接合させれば、両者が揺動し得るように連結することができる(図5(Y))。
すると、連結部材2Cにより隔壁2を構成する板状の部材のうちの一の板状の部材2Bを、他の板状の部材2Aに対して略90度揺動させて、板状の部材2Bの他端縁(つまり、隔壁2の他端縁2eに相当する端縁)を側壁13bに取付けることができる。つまり、隔壁2を、平面図において、側壁13aと側壁13b間にL字状に配設して室内を2室に分離することができる。
なお、ヒンジ等と併用すれば強度等の点で好ましい。
【0044】
以上のごとき構成とすれば、隔壁2は、分割位置(図4(A))に配置した状態から、隔壁2を床面12sに沿うように揺動させて収納位置に配置された状態(図4(B))に移動させることができる。つまり、隔壁2を分割位置に配置した状態においては、隔離室Cは主室PCと前室ACを備えることができ、隔壁2を収納位置に配置した状態においては、隔離室Cは一つの部屋にできる。
言い換えれば、隔離室2に移動可能な隔壁2を備えるだけで、この隔離室Cは、一の部屋のみで構成する隔離室Cと、前室ACおよび主室PCを備えた隔離室Cを形成することができる。
【0045】
よって、この隔離室Cは、移動可能な隔壁2によって、室内に前室ACを設けることができるので、隔離室Cの外に別個新たに前室を設ける場合に比べて、一の隔離室内に隔壁2を移動させるだけで前室ACを設ける簡単な構造とすることができる。
また、隔壁2が移動可能であるので、隔壁2を移動させて収納位置に配置した場合、前室ACとして使用していた部分も主室PCとして使用できるので、室内に固定された隔壁を備えた隔離室に比べて、隔離室C内の使用可能空間の自由度が増加でき、収容することができる患者等を多くすることができる。
言い換えれば、この隔離室Cは、移動可能な隔壁2を備えるだけで、上述したような一つの室内の場合と、二つの室内を備えた場合、の両者の機能を備えることができるのである。
【0046】
従って、本発明の隔離室Cは、上述のごとき構成とすれば、隔離室Cを一つだけで、高度医療、一般医療、病原性および感染力の強い感染症、病原性が弱いが感染力が強い感染症に対応できる機能を発揮することができるのである。
【0047】
なお、隔壁2は、室内を前室ACと主室PCに分割することができる構成であれば特に限定されず、隔壁2が一枚の板状の部材からなる場合も採用することができる。かかる場合、隔壁2を収納位置に配置したときに、折畳んで収納する場合に比べ収納スペースを小さくすることができるという利点が得られる。
【0048】
また、連結手段16は、隔壁2を揺動させることができるものであれば、その材質はゴム製に限定されない。
【0049】
さらに、天井面11sと床面12sとの間に柱Pを設けて、この柱Pに連結手段16を介して隔壁2を取付けるようにしてもよい。
例えば、柱Pが、柱Pの先端面および基端面から出没する固定具(ストッパー、フランス落とし等)を備えていれば、所定の位置で柱Pを固定することができる。この固定具の先端にシール部材等(例えば柔軟性を有する部材)が設けられていれば、天井面11sまたは床面12sに固定具を押圧して柱Pを固定することができる。
【0050】
そしてかかる構成を採用すれば、柱Pを所定の位置に配設するだけで、隔壁2を取付けることができるので、隔壁2を設けても側壁13に負担を与えない。しかも、図5(X)に示すように、隔壁2の一端縁と側壁13aの間に配設する連結手段16の端縁を柱Pにボルト等で強固に固定して接合することも可能となる。
そして、固定具の先端のシール部材等がシリコンゴム等であれば、本体と天井面11sおよび床面12sとの間に形成される隙間をシールすることができる。
【0051】
なお、上記例では、隔壁2に通用口Eを設けた場合を説明したが、隔壁2に通用口Eを設けない構成を採用することもできる。この場合でも、主室PCで作業する医療スタッフ等は、隔壁2の端縁2eを移動開閉すれば、隔壁2に通用口Eを設けた場合と同様に、前室ACにおいて、防護服等を着脱することができる。つまり、分割位置に配置された状態の隔壁2の他端縁2eを移動させて主室PCと前室ACとを出入りする構成を採用しても、隔離室Cを陰圧にした場合、感染源等を隔離室C外に漏洩させない構造とすることができるのである。言い換えれば、本発明の隔離室Cに上記のごとき構成を採用しても、上述と同様の機能、つまり、隔離室Cを一つだけで、高度医療、一般医療、病原性および感染力の強い感染症、病原性が弱いが感染力が強い感染症に対応できる機能を発揮することができるのである。
【0052】
(気流調整手段3の説明)
次に、上記移動可能な隔壁2が気流調整手段3を備えている隔離室Cについて説明する。
隔壁2は、上述したように隔壁2は移動可能であるので、隔壁2の上下端縁と天井面11sおよび床面12sとの間に一定の隙間が形成される。かかる隙間は、隔壁2を分割位置に配置したときに、主室PCを陰圧にしたとしても、主室PC内に隔離した病原性ウイルス等がこの隙間を介して前室ACに流れ込むおそれがある。そうすると、隔離室Cの出入りに際して、隔離した感染源が外部へ漏洩するおそれがある。
【0053】
そこで、図6(A)に示すように、隔壁2は、その上下端縁に板状の気流調整手段3を備える構成を採用することが好ましい。
かかる構成とすれば、本実施例の隔離室Cに移動可能な隔壁2を設けても、気流調整手段3により、感染源の外部への漏洩を防止することができる。
【0054】
以下、気流調整手段3について説明する。
図6(A)に示すように、気流調整手段3は、隔壁2の上下端縁と天井面11sおよび床面12sの間に設けられている。
なお、隔壁2の上端縁2ue、下端縁2deに設けられた、気流調整手段3は実質同様の構成を有するので、以下では、隔壁2の上端縁2ueに設けられた気流調整手段3についてのみ説明する。
【0055】
図6に示すように、気流調整手段3は、隔壁2の上端縁2ueと天井面11sとの間に設けられている。この気流調整手段3として、例えば、板状の弾性部材を採用することができる。この板状の弾性部材は、この基端部3dが隔壁2の上端縁2ueに沿うように配設されており、しかも、その基端部3dを支点として揺動し得るように設けられている。また、この板状の弾性部材の縦幅は、前記隙間よりも長くなるように形成されている。
【0056】
以上のごとき構成であるから、隔壁2を分割位置に配置した状態において、気流調整手段3は、その先端部3eの一面を天井面11sに対して面接触し得るように湾曲する。そうすると、気流調整手段3によって隔壁2の上端縁2ueと天井面11sとの隙間を流通する空気を制御し得るので、主室PCに隔離した病原性ウイルス等を隔離室Cの外部に漏洩させない構成を備えた隔離室Cを形成することができる。
【0057】
具体例として、主室PCを空気調整手段Aにより陰圧にする場合の気流調整手段3の説明をする。
図6(B)は、隔壁2を分割位置に配置した状態の断面図であり、紙面の気流調整手段3の縦断面図の左側が前室AC、右側が主室PCである。
【0058】
図6(B)に示すように、主室PCを陰圧にする場合、気流調整手段3の先端は、室内の圧力の低い室、つまり、主室PCの気圧をP1、前室ACの気圧をP2とするとP1<P2の状態となる主室PCに向かって配置する。言い換えれば、先端部3eを、気流調整手段3の縦軸線上に対して主室PC側に配向させる。
すると、気流調整手段3は、弾性部材であるのでその弾性力により、その先端部3eが天井面11sおよび床面12sに面接触して所定のシール性(気密性)を確保することができる。
そして、P1<P2であるので、図6(B)に示すように、気流調整手段3の縦断面図の左側の面(湾曲外面)に向かって圧力がかかる(図6(B)白抜き矢印)。
しかも、前記圧力(図6(B)白抜き矢印)にともない、気流調整手段3の先端部3eと床面12sとの接触面は完全に気密にされない。よって、前室ACは、図6(B)黒塗り矢印に示すように、前室ACの空気が主室PC側にある程度流通できるので、所定の室圧にすることができる。
例えば、主室PCの内圧を-20Paに設定すれば、前室ACの室内圧は-15Pa程度に維持することができる。
【0059】
一方、主室PCを空気調整手段Aにより陽圧にする場合の気流調整手段3の説明をする。
図示しないが、主室PCを陽圧にすれば、主室PCと前室ACの圧力関係は、P1(主室)>P2(前室)とすることができる。この場合も、気流調整手段3の先端3eは、主室PCを陰圧にする場合と同様に、室内の圧力の低い室、つまり、P1>P2の状態である前室ACに向かって配置されている。
すると、気流調整手段3は前室AC側にその先端部3eが配置するように湾曲して配設することができ、その湾曲外面に向かって、つまり主室PC側から前室AC側に向かって圧力がかかる。
これにより、気流調整手段3は、弾性部材であるのでその弾性力により、その先端部3eが天井面11sおよび床面12sに面接触して所定のシール性(気密性)を確保することができる。しかも、上記圧力(P1(主室)>P2(前室))にともない、気流調整手段3の先端部3eと天井面11s等との接触面は完全に気密にされない。よって、主室PC側の空気を前室AC側にある程度流通させることができるので、前室ACを所定の室圧に保つことができる。
例えば、主室PCの内圧を+20Paに設定すると、前室ACの室内圧は+15Pa程度に維持することができる。
【0060】
上記のごとき構成であるので、移動可能な隔壁2に気流調整手段3を備えれば、主室PCまたは前室ACの空気の流れは、気流調整手段3と天井面11sまたは床面12sとの間で一方向に制限して流通させることができる。そのため、隔壁2の上下端縁と天井面11sおよび床面12sの間の隙間を介して病原性ウイルス等の漏洩を防止することができるし、前室AC内を所定の圧力に調整することもできる。
さらに、隔壁2に、気流調整手段3を設けて、前室ACを所定の気圧にすることができれば、主室PCと前室ACの圧力差を所定の圧力差に維持するための空気浄化フィルタを備えた図示しない空気通用口を設けなくてもよいので、隔壁2の構造を簡単にすることができる。
【0061】
また、気流調整手段3である板状の弾性部材の先端3eを、室内の圧力の高い室に向かって配置する構成も採用することができる。
図6(C)に示すように、主室PCを陰圧にする場合、気流調整手段3の先端部3eを、主室PCよりも気圧の高い前室AC側に向かって配置すると、湾曲した気流調整手段3の湾曲内面に向かって圧力がかかる(図6(C)白抜き矢印)。
すると、気流調整手段3の先端部3eを、弾性部材の弾性力に加えて、前記圧力により、天井面11sおよび床面12sに先端部3eをさらに面接触させることができるので、上述した先端部3eを気圧の低い室に向かって湾曲させた場合に比べ、シール性(気密性)を高めることができる。言い換えれば、使用中の主室PCの気密性を高めたい場合に有効である。
【0062】
なお、隔壁2を分割位置に配置した状態において、気流調整手段3の先端部3eを室内の圧力の高い室に向かって配置する構成を採用する場合、主室PCと前室AC間の空気の流通を略完全に遮断することになる。そのため、隔壁2は、主室PC内を所定の圧力に維持するための空気浄化フィルタ等を備えた空気通気用口を設けることが好ましい。
【0063】
また、前室AC内の圧力を所定の室圧に調整するために、前室ACに空気調整手段Aを設ける構成も採用してもよい。かかる構成を採用すれば、主室PCと前室ACの圧力、つまり両者の圧力差を所望の状態に調整することが可能となるので好ましい。しかも、圧力差を所望の状態に調整するまでの時間を短くすることができるので好ましい。
【0064】
なお、気流調整手段3は、その基端部3dが、隔壁2の上端縁2ueおよび下端縁2deに取付けることができる構造であれば特に限定されない。例えば、隔壁2の上端縁等に、基端部3bを収容し得る溝が上端縁2ueおよび下端縁2deに沿って形成されているものであれば、隔壁2の上端縁2ueおよび下端縁2deに気流調整手段3を簡単に嵌合して取付けることができるので好ましい。
【0065】
(樹脂製シートで覆った隔壁2の説明)
また、図12に示すように、移動可能な隔壁2は、隔壁2を樹脂製のシートで覆った構成を採用することもできる。
例えば、隔壁2を一対の薄い板状部材(例えばカーボン製)とその両者間に縦軸に沿って前記板状部材を連結する連結部材とで構成すれば、この隔壁2の内部には縦軸に沿って連通する連通孔が形成される。この隔壁2は、一枚の板状の部材で同じ厚さに構成される隔壁2に比べ軽量化することができる。
【0066】
一方、この隔壁2を分割位置に配置したときに、隔壁2の内部に形成された連通孔を通して主室PCと前室ACの空気が自由に流通し得るので、かかる隔壁2によっては所望の効果を得ることが困難となる。
しかし、図12に示すように、基端部が前記連通孔の開口部を塞ぐように上端縁2ueに沿ってカバー部材2Jを設ければ、前記連通孔を通して主室PCと前室ACの空気の自由な流通をある程度防止することができる。
【0067】
また、図12に示すように、かかる隔壁2全体を樹脂製のシート2Sで覆うように(例えばラミネート加工等)形成すれば、カバー部材2Jと隔壁2を構成する板状部材と隙間を流通する空気の流れを完全に防止することができる。
とくに、このカバー部材2Jは、その先端部に気流調整手段3の基端部を取付けるように形成されていることが好ましい。すると、かかる隔壁2の上端縁2ueに設けられたカバー部材2Jの先端部に気流調整手段3を設けることができるので、一枚のプレートで同じ厚みの隔壁2を構成する場合に比べ、強度を維持しながら軽量化した隔壁2を形成することができる。しかも、かかる隔壁2を採用しても、一枚のプレートで構成される隔壁2と同じ機能を発揮させることができる。
【0068】
また、図12(C)に示すように、2枚の板状部材で構成する隔壁2を前記樹脂製シートで覆った場合、両者間の側端縁に形成される連結部2nは、両樹脂製のシート2Sの端縁間、つまり図12(C)に示す2m、2m間を熱融着等することによって形成することが好ましい。すると、前述の連結部材2Cを隔壁2に設けなくても、両板状部材を連結させることもできる。
なお、2枚の板状部材を一枚の樹脂製のシートで覆えば、前記連結部2nを設けない簡単な構造とすることができるので好ましい。
【0069】
なお、かかる構成の隔壁2の下端縁2deにも、気流調整手段3が同様に設けられているのは、いうまでもない。
【0070】
(天井面11sおよび床面12sの形状の説明)
図6に示すように、天井面11sおよび床面12sを平滑な面になるように形成すれば、隔壁2を分割位置に配置したときに、上記天井面11sや床面12sが平滑でない場合に比べて、主室PCと前室ACとの空気の流れを容易に制御することができるので好ましい。
気流調整手段3を湾曲に形成して、その先端部3eを天井面11sおよび床面12sに面接触させる場合、天井面11sおよび床面12sが凹凸または波状等に形成されていれば、天井面11sおよび床面12sと先端部3eとの接地面に多数の隙間が形成されるので、主室PCと前室ACとの空気の流れを隔壁2に備えた気流調整手段3で制御することが困難となる。
一方、天井面11sおよび床面12sを平滑に形成すれば、気流調整手段3の先端部3eと上記平滑面とを密接に面接触させることができる。これにより、隔壁2に備えた気流調整手段3により主室PCと前室ACとの空気の流れをより容易に制御することができるので、天井面11sおよび床面12sを平滑な面に形成することが好ましい。
【0071】
(隔壁2の他端縁の取付手段17の説明)
図4(A)に示すように、隔壁2を分割位置に配置したときに、隔壁2は、その他端縁2eが接する側壁13bに他端縁2eが係合するようにして取付けられる取付手段17を備えれば、隔壁2を側壁13aと側壁13bとの間、つまり、分割位置に安定して配設することができる。
図5(Z)に示すように、取付手段17は、隔壁2の他端縁2eに係合片17Lを備えており、他端縁2eが接する側壁13bには係合片17Lを係合させる係合具17Tが設けられている。
例えば、係合片17Lには、シリコンゴム製の気密ガスケットを採用することができ、係合片17Lを係合させる係合具17Tにはひれ形状のガスケットを採用することもできる。取付手段17は、シリコンゴム製の気密ガスケットを使用する場合、隔壁2の他端縁2eを側壁13bに取り付けた状態において、隔壁2の他端縁2eと側壁13bとの両者間に形成される隙間をシールすることができるので好ましい。
これにより、隔壁2は、隔壁2を分割位置に配置する際に、その他端縁2eを側壁13bに設けられた係合片17Lを係合させる係合具17Tに嵌めるだけで、容易に側壁13bに係合することができる。しかも、上記ガスケットがシリコンゴム製であるので、他端縁2eと側壁13bの両者間の気密性を確保し得る。
【0072】
なお、側壁13に係合具17Tを取付ける場合、側壁13をある程度厚くする必要がる。しかし、側壁13の側板の厚さはある程度薄くするのであれば、側壁13に係合具17Tを設ける代わりに、図5(Z)に示すように、側壁13aと隔壁2の一の端縁との間に配設した柱Pと同様の柱部41を、隔壁2の他端縁2eと側壁13bとの間に配設し、この柱部41に係合具17Tを設ける構成を採用することが好ましい。
【0073】
(可動壁40の説明)
隔壁13bの一部に移動可能な可動壁40を設けた構成を採用することもできる。
具体的には、図13に示すように、側壁13の側端縁に配設された後述する組立部材33にヒンジ43によって可動壁40の壁部42を設ける。そして、壁部42の他の側端縁に前記柱部41を取付ける。また、柱部41には、前述の係合具17Tを設ける。
柱部41は、前記柱Pと同様の固定具手段を備えているので、所定の位置で柱部41を固定できる。
一方、柱部41の固定具手段を解除すれば、壁部42がヒンジ43を支点に揺動可能となる。これにより、扉Dを移動させて(図13(A)のa方向)、可動壁40をヒンジ43を支点に隔離室Cの外側に移動すれば(図13(B)b方向)、その開口間口l分だけ隔離室Cの出入口を大きくすることができる。つまり、隔離室Cの出入口の幅は、可動壁40を開かない状態の幅W(図4)と、可動壁40を開いた状態の幅(W+l)にすることができるのである。よって、可動壁40を開かない状態の幅W以上の横幅を有するベッド等を搬入等する場合、かかるベッド等は、可動壁40を移動して隔離室Cの出入口を広くすれば、容易に室内に搬入等することができる。
なお、ヒンジ43は、その上端が後述する天井側の組立部材33に接しており、その下端が後述する床側の組立部材33に接するように配設されている。
また、図13に示すように、可動壁40と側壁13の側端縁の間に配設された後述する組立部材33の一の収容溝30gにシール部材を設けてもよい。この一の収容溝30gがシール部材等で塞がれていなければ、この溝に病原菌等が溜まるおそれがある。よって、この収容溝30g内にシール部材を設ければ、このような病原菌が留まることを防止することができるので好ましい。
【0074】
(室内に取付可能な隔離壁の説明)
前記隔壁2を天井、床および複数の壁を備えた既存の部屋に取り付け可能にしてもよい。この場合、部屋の室内に取付けられる隔離壁を以下の構成とすれば、上述した移動可能な隔壁2と同様の機能を発揮させることができる。
例えば、隔離壁として、室内の一の側壁13a近傍に配設される柱Pと、この柱Pに対して揺動し得るように、この柱Pにその一の側端縁が連結手段16により連結された板状部材を備え、かつ、前記室内の一の側壁13aと異なる側壁13bに取付けられる、前記板状部材の他の側端縁2eを係合離脱可能に連結する固定部材(例えば取付部材17)とを備えたものを採用することができる。つまり、複数の壁を備えた部屋であれば、室内の一の側壁13a近傍に柱Pを配設し、他の側壁13bに固定部材17を設ければ、例えば、病院等の通常の病室を容易に移動可能な隔離壁を取付けることによって2室に分割することができる。
しかも、この隔離壁にも、上述したような気流調整手段3が設けられれば、隔離壁を構成する板状部材の他端縁2eを室内の他の側壁13bに設けられた固定部材17に取付けて室内を主室PCと前室ACに分割した状態において、かかる2室の空気の流れを制御することができるので、病院等の通常の病室を所定の気圧に調整が必要な隔離病室にすることができる。
しかも、室内に隔離壁を取付けて室内を二室(主室PCと前室AC)に分割したときに、部屋の天井11および床12と隔離壁の上下端縁2ue、2deとの間に設けられた板状の弾性部材を湾曲させて、その一の面を上記天井面11sおよび床面12sに面接触させるのことができるで、気密性の高い隔離室にすることができる。
なお、隔離壁に上述した樹脂製シートで覆う構成を採用することも可能である。
【0075】
(組立式の隔離室Cの説明)
本実施形態の隔離室Cは、簡単に分解および組立ができる構成であれば、災害等の緊急時に使用することができるので好ましい。
例えば、災害等で道路が崩壊等して隔離室等を搬入することができる大型車等が通交不可能な状況において、隔離室Cは、分解した隔離室Cの部材等を接地可能な場所まで人力で搬送して、組立することができ得るような構成である。
以下では、隔離室Cを設置する場所まで、人力で搬送することに適した構成を有する本実施形態の隔離室Cの一実施形態について説明する。
【0076】
(天井等の部材の説明)
隔離室Cを構成する天井11、床12、側壁13の部材は、板状のパネルである。このパネルの材質は、特に限定されず、隔離室Cを各部材ごとに分解したときに、各部材が人力で搬送できる程度の重量であるものが好ましい。また、パネルは、室内を陽圧または陰圧にしたときに、撓み等を起こさない程度の強度を有する材質で形成されたものが好ましい。
例えば、板状のパネルがポリカーボネイト製、アクリル製等の合成樹脂板であれば、耐衝撃性が高く、軽くて割れにくいので好ましい。また、かかる材質で形成された板状のパネルは、厚さを略6mmにしても所望も強度維持することができる。さらに、かかる板状パネルが長手方向の長さが略3000mm、組立たときの高さが略2000mmのものであれば、人力で各部材を搬送することができるので好ましい。
なお、重量および強度面が十分に確保できるものであれば、アクリル製等の合成樹脂板等に限定されず、ベニヤ等のパネル材でも可能である。
【0077】
(組立部材30、33、34の説明)
図8に示すように、分解可能な隔離室Cは、板状の部材(以下単にパネルという)で構成する天井11、床12、側壁13と、その各部材が隣接するパネルの端縁との間、つまり、隔離室Cの各コーナー部に配設された組立部材30と、このコーナー間の辺に配設された組立部材33とから形成されている。
図7に示すように、組立部材30、33には、隔離室Cを上記パネルで組み立てるときに、各パネルの端縁を収容する収容溝30gが形成されている。収容溝30gは、例えば、内向する面の距離が略6mm強、つまり、上述のアクリル製のパネルの厚さと略同じ大きさになるように形成されている。また、収容溝30gの深さは、パネルを嵌め込みやすいように形成されており、例えばその溝の深さは略20mmに形成されている。
これにより、天井11、床12、側面13の各パネルの端縁を組立部材30、33の収容溝30gに嵌合して隔離室Cは形成することができる。つまり、天井等のパネルの端縁は、組立部材30、33の収容溝30gに収容されているので、隔離室Cの各コーナーは組立部材30、33が配設されるように形成されている。
しかも、収容溝30gの内面間の幅がパネル端縁の厚さと略同じ長さに形成されているので、隔離室C内を陰圧にした場合、パネルの端縁と収容溝30gとが密着し隙間をシールすることができる。
なお、扉Dを取付けるための枠部材D1が接する天井11および床12の端縁に配設する組立部材に組立部材33を使用することができるが、この場合、一の収容溝を形成する部分が天井11および床12から出入口に、その下方および上方から突出してしまうので、隔離室Cに出入りするための出入口の縦幅が狭くなる。よって、枠部材D1が接する天井11および床12の端縁に配設する組立部材には、図10または図11に示すような組立部材34を使用することが好ましい。かかる組立部材34は、収容溝30gを形成する部分が1箇所だけ、つまり、天井11および床12の端縁を収容する収容溝30gを形成する部分のみが形成されたものである。このような組立部材34を枠部材D1が接する天井11および床12の端縁に配設すれば、天井11および床12から出入口に、その下方および上方から突出する部分がなくなり、隔離室Cに出入りするための出入口の縦幅を広くすることができる。
【0078】
また、図7に示すように、コーナーに使用される組立部材30と、このコーナー間の辺に配設される組立部材33とを組み立てるときに、両者の端縁部に形成された孔に組立部材連結具32の端縁をそれぞれ挿入して両者を連結するように組み合わせば、安定して組み立てることができるので好ましい。
【0079】
また、組立部材30は、アルミ製またはステンレス製であって、上記のごとき構成に形成し、かつ、長手方向の長さが上述したパネルと略同じ大きさである略3000mmに形成する。すると、組立部材30の重量は、人力で搬送できる程度の重量になるので好ましい。しかも、組立部材30の材質がアルミ製またはステンレス製であれば、軽くて錆びにくいので好ましい。
【0080】
なお、その材質は、ステンレス等と同様の強度等を有するものが好ましく、硬質な合成樹脂製も採用することが可能である。
【0081】
(シール部材31の説明)
次に、組立部材30の収容溝30gの内側に、シール部材31が設けられた組立部材30について説明する。
なお、組立部材33と組立部材30は配設される位置が異なるだけで、パネルを収納する収容溝の構造は同じであるので、組立部材30にシール部材31を設けた場合についてのみ説明する。
シール部材31は、組立部材30の収容溝30gに天井等を構成するパネルの端縁を嵌合したときに、両者間の隙間を埋めるように収容溝30gの内面と前記パネルの端縁の間に配設されるよう設けられている。
例えば、シール部材31は、板状であって、長手方向の長さは組立部材30の長手方向の長さと略同じに形成されており、その幅が収容溝30gの深さよりもやや小さく、その厚さが収容溝30gの内面間距離よりもやや小さくなるように形成されている。
そして、このシール部材を組立部材30の収容溝30gの内側に対向するように設ける。
【0082】
なお、図9(B)に示すように、シール部材31は、収容溝30gの内側全体に配設するように設けてもよい。
【0083】
すると、このようなシール部材31を収容溝30gに配設すれば、その略中央に溝30hが形成される。この溝31hは、その溝幅、つまり、対向する溝の内面の距離が、収容溝30gに嵌合するパネルの端縁よりも小さくなるように形成される(図9(B))。
この溝31hによって、パネルの端縁を収容溝30gに嵌め込みやすくすることができる。
しかも、シール部材31が柔軟性を有する部材であれば、シール部材31はパネルの端縁に密着することができるので好ましい。
【0084】
なお、シール部材31が、弾性部材(例えばシリコンゴム製)であれば、収容溝30gに天井等のパネルの端縁を嵌め込んだときに、シリコンゴムの弾性力によりパネルの端縁をさらに強固に保持することができるので好ましい。
また、シール部材31の代わりに、上記隙間をシールテープ等でシールする構成も採用することができる。
【0085】
このように、図9(A)に示すように、柔軟性を有するシール部材31によって、組立部材30の収容溝30gに天井等を構成するパネルの端縁を嵌め込んだときに、パネルの端縁と収容溝30gとの間に形成される隙間をシールすることができる。
つまり、収容溝30gにシール部材31を設けた組立部材30を使用して隔離室Cを組立てれば、高い気密性を備えた隔離室Cを組み立てることができる。
【0086】
以上のごとき構成を備えた組立部材30、33を使用すれば、天井11、床12、側壁13の板状のパネルの端縁を組立部材30、33の収容溝30gに嵌め込むだけで、高い気密性を有する隔離室Cを組み立てることができる。
しかも、この組立式の隔離室Cの設置および解体作業を非常に簡単に行うことができる。つまり、この組立式の隔離室Cは、組立部材30、33とそこに嵌め込むパネルにそれぞれ対応する番号等を明記すれば、専門家を要せずに組立てることができるので好ましい。
すると、緊急時等において、隔離室の組立の専門家がいない場合であっても、この組立式の隔離室Cを迅速に設置することができる。
さらに、上述のように各部材の大きさ、および重量は、人力で運べる程度、例えば、上述の構成であれば、分解したとき総重量を45kg程度とすることができ、かつ、厚さ10cm程度、長さ3m程度、高さ2m程度にすることができる。
よって、組立式の隔離室Cは、通常の人によって、容易に分解して、小さいスペースの場所(例えば、公民館、小学校等の倉庫など)に収納することができ、かつ、必要に応じて、人力で収納場所から各部材を設置場所まで運搬することができる。
そのため、災害時等の緊急性を要する場合には、隔離室Cの設置が要請されている場所に近い収納場所から、分解してある隔離室Cを人力で搬出および搬送して、迅速に隔離室Cを設置することができる。
またさらに、災害等により大型車が使用できない場合であっても、上述のごとく各部材を人力で搬送できるので、大型車でなければ搬送することができないユニット型またはプレハブ型の気密性を有する部屋を使用する場合に比べて、可搬性を高くすることができる。
【0087】
また、隔離室Cの壁等に板状のパネル部材を使用するので、壁等をビニール等のシート状部材で形成された隔離部屋を使用する場合に比べ破損等が起こりにくいので、室内の空気が外部に漏れるという危険性を少なくすることができる。
【0088】
(トイレ付ベッドの説明)
本実施形態の一例として、隔離室C内に図14に示すようなこのトイレ付ベッド100を設ければ、個人用の隔離設備として使用することもできる。かかるトイレ付ベッド100には、図14に示すようなトイレ付ベッド100を採用することができる。このトイレ付ベッド100は、図14および図15に示すように、ベッド本体Bとトイレ付車椅子Tから構成されている。
【0089】
まず、トイレ付車椅子Tについて説明する。
図15に示すように、トイレ付車椅子Tは、背もたれ部91と、座部92と、脚部93および座部92の下部に設けられたフレームとから構成されている。背もたれ部91の基端部は、座部92の一の端縁に連結し、かつ、背もたれ部91の上面が、この連結部を支点として水平となる倒伏位置から起立位置まで搖動可能に設けられている。また、脚部93の基端部は、座部92の他の端縁に連結し、かつ、脚部93の上面が、この連結部を支点として水平位置から下方位置まで搖動可能に設けられている。
つまり、トイレ付車椅子Tは、背もたれ部91を起立させ、脚部93を下方位置に配設した状態から、背もたれ部91を座部92との連結部を支点として搖動し、上面が水平となる倒伏位置まで移動させ、かつ、脚部93を座部92との連結部を支点として搖動し水平位置まで移動させることができる。すると、背もたれ部91と座部92と脚部93のそれぞれの上面を水平にでき、しかも、略面一にすることができる。
なお、図15(B)に示すように、トイレ付車椅子Tは、座部92に孔が形成されており、その下部にはトイレbpが設けられている。その下部側面には、汚物回収扉94が設けられている。この汚物回収扉94は、トイレbp内の汚物等を回収するためであり、かつ、視覚的にトイレbpを隠すためのものである。なお、この座部92の下部側面に設けられるものは、トイレbp内の汚物等を回収でき、かつ、視覚的にトイレbpを隠すことができるものであれば、扉に限定されない。例えば、樹脂製のシートで形成されたカーテン式や開き式等を採用することもできる。とくに、カーテン式であれば、扉を採用した場合に比べ、開き面積を小さくすることができるので好ましい。
【0090】
次に、ベッド本体Bについて説明する。
図15に示すように、ベッド本体Bは、上面に開口部102aを形成したフレーム102で構成されている。この開口部102aは、トイレ付車椅子Tを本体B内部に配置することができる程度の大きさに形成されている。
具体的には、この開口部102aは、トイレ付車椅子Tの脚部93をその上面が水平となる水平位置に配設したときに開口部102aがトイレ付車椅子Tにより塞がれる大きさに形成されている。また、この開口部102aには、トイレ付車椅子Tを配置して背もたれ部91をその上面が水平になる倒伏位置まで移動したときに、背もたれ部91の背面と正面が接し得る可動床101が配設されている。さらに、可動床101は、その基端部がベッド本体Bの中央近傍に配設された軸に連結されており、倒伏位置から起立位置の間をこの軸を支点として揺動可能に設けられている。なお、この軸は、背もたれ部91と脚部92との連結部の近傍に配設されている。
つまり、ベッド本体Bは、ベッド本体Bの開口部102aにトイレ付車椅子Tを配置して、背もたれ部91を可動床101に接するように倒伏位置まで移動させて、かつ、脚部93を水平位置まで移動させれば、背もたれ部91と座部92と脚部93のそれぞれの上面、および、開口部102aを囲むフレーム102との上面が略面一の状態になるように形成されている。
よって、ベッド本体Bの開口部102aに座部92にトイレbpを備えたトイレ付車椅子Tを配置して、このトイレ付車椅子Tの背もたれ部91をその上面が水平になる位置まで倒伏させ、かつ、脚部93を水平位置まで動かせば、背もたれ部91と座部92と脚部93の上面全体が略面一かつ水平な状態とすることができるから、この水平な上面をベッドの床として使用することができる。
【0091】
以下、ベッド本体Bの開口部102aにトイレ付車椅子Tを配置して、トイレ付車椅子Tの背もたれ部91、座部92、脚部93の上面を略面一になるように配設した状態から、トイレ付車椅子Tをベッドから分離して使用するまでの各状態について説明する。
とくに背もたれ部91を倒伏位置から起立位置までの間を起立倒伏させるように動かすためのリンク機構120と、脚部93を下方位置から水平位置まで動かすためのチューン機構130について説明する。
【0092】
図16に示すように、リンク機構120はベッド本体Bに設けられており、チューン機構130はトイレ付車椅子Tに設けられている。
【0093】
(リンク機構120の説明)
上述のように、開口部102aにトイレ付車椅子Tを配置した状態において、背もたれ部91を起立位置から倒伏位置まで起立倒伏させるリンク機構120について説明する。
【0094】
具体的には、図16および図18に示すように、ベッド本体Bには、ネジ軸であるストローク軸123が設けられている。このストローク軸123は、水平に対して所定の角度で配設されており、その基端部は、減速機124に連結されている。減速機124には、ストローク軸123に直交するハンドル軸Sも連結されている。このハンドル軸Sはその端縁にハンドルを備えている。なお、ハンドル軸Sを回転させるとストローク軸123が中心軸まわりに回転するように減速機124は構成されている。
ストローク軸123には、その先端部にナット部材122が螺合されている。このナット部材122には、リンク軸126が連結されている。リンク軸126は、その両端縁がガイドレール125を摺動するよう形成されており、ガイドレール125は、前記ストローク軸126と同じ角度になるように本体Bの側面内に配設されている。そして、リンク軸126には、アーム121の一の端縁が回動可能に連結されており、このアーム121の他端縁は、可動床101の背面101sに回動可能に連結されている。
【0095】
上記のごとき構成であるので、ハンドルを回転すればその回転力は、減速機124に伝達され、ストローク軸123が回転する。すると、ストローク軸123に沿ってナット部材122とともにリンク軸126が、図18(A)のa方向に移動するので、アーム121によって可動床101をその上面が水平状態から所定の位置まで起立させることができる(図18(A)のb方向)。このとき背もたれ部91は、可動床101に接して配置されており、軸が近接しているので、可動床101を起立させることによって座部92と背もたれ部91との連結部を支点として背もたれ部91も揺動され、背もたれ部91を所定の起立位置まで移動させることができる。
また、ハンドルを逆転させれば、その回転力は、減速機124に伝達され、ストローク軸123が回転する。すると、ストローク軸123に沿ってナット部材122とともにリンク軸126が、図18(A)のaの逆方向に移動するので、アーム121によって可動床101を起立状態から所定の位置まで倒伏させることができる。このときも背もたれ部91は、可動床101を倒伏させることによって座部92と背もたれ部91との連結部を支点として背もたれ部91も揺動され、背もたれ部91を所定の倒伏位置まで移動させることができる。
【0096】
なお、上記のようにナット部材122が移動する代わりに、ナット部材122を固定して、その軸であるストローク軸123が軸方向に移動する構成を採用してもよい。
【0097】
(チェーン機構130の説明)
次に上述のように、開口部102aにトイレ付車椅子Tを配置した状態において、脚部93を下方位置から水平位置まで移動させるチューン機構130について説明する。
【0098】
具体的には、図16および図19に示すように、ハンドル軸Sには、スプロケット131Xが取付けられている。背もたれ部91と座部92の連結部の近傍にハンドル軸Sと平行に配設された軸には、スプロケット131Yが取付けられている。そして、このスプロケット131Xとスプロケット131Yの間には、チェーン132が巻きかけられている。
スプロケット131Yが設けられている軸には、ギヤ131Ysが取付けられており、このギヤ131Ysと係合するようにギヤ131Zが設けられている。このギヤ131Zは、背もたれ部91と座部92との連結部の下部フレームに配設された軸133に取付けられている。この軸133には、脚部可動手段134のひも状部材134b(例えばワイヤ等)の一の端縁が連結されている。このひも状部材134bの他端縁は座部92の下部に設けられた複数のプーリ134aを介して、脚部93の背面に連結されている。
また、脚部93の背面と、脚部93と座部92との連結部の下部に設けられた前側フレームと、の間には、脚部支持部材135が設けられている。脚部支持部材135は、水平にした脚部93の支柱として使用されるものである。具体的には、伸縮自在、かつ、脚部93を上方に付勢する機能を有するものである。また、その一の端縁は脚部93の背面に回動可能に連結されており、他端縁は、座部92下部の前側フレームに回動可能に連結されている。なお、この脚部支持部材135として、内部にスプリング、ガス等を有する構成のとするもの、例えばスプリングステー等を挙げることができる。
【0099】
上記のごとき構成により、ハンドルを回転すれば、その回転力はチェーン132を介してスプロケット131Zに伝達される。すると、スプロケット131Zの軸133に連結したひも状部材134bを、図19(A)のa方向に向かって移動させることができる。
つまり、ひも状部材134bがスプロケット131Zの回転とともに、軸133に巻かれるので、水平位置に配置されている脚部93は、脚部93と座部92との連結部を支点として、脚部支持部材135の支持力に反し、図19(B)のb方向の下方位置まで搖動して移動されるのである。
一方、ハンドルを逆回転させれば、下方位置に配置されている脚部93を、脚部支持部材135の支持力に従って水平位置まで移動させることができる。そのとき、スプロケット131Zの軸133に巻かれているひも状部材134bは、図19(A)のaと反対方向に移動するように形成されている。
【0100】
以上のごとき構成であるので、ベッド本体Bにトイレ付車椅子Tを配置した状態において、背もたれ部91を所定の起立位置までリンク機構120を介して起立させて、脚部93を下方位置までチューン機構130を介して移動させれば、かかる状態のベッドは、トイレ付椅子を備えたベッドとして使用することができる。
【0101】
なお、背もたれ部91を、例えば水平に対して略80度の角度に起立されていれば、要介護者等は安定して着座することができるので好ましい。
【0102】
つまり、以上のごとき構成とすれば、トイレ付ベッド100は、ベッド本体Bの開口部102aに座部92にトイレbpを備えたトイレ付車椅子Tを配置して、このトイレ付車椅子Tの背もたれ部91をその上面が水平になる位置まで倒伏させ、かつ、脚部92を水平位置まで動かせば、背もたれ部91と座部92と脚部93の上面全体を略面一の状態になるように水平にすることができる。この水平な上面をベッドの床として使用すれば、歩行困難な介護者等のためのトイレ付ベッド100として使用することができる。
また、このトイレ付ベッド100の床のうち、背もたれ部91の床はベッド本体B部に設けられたリンク機構120を介して所定の位置まで起立させることができ、かつ、脚部93の床はトイレ付車椅子Tに設けられたチェーン機構130を介して所定の下方位置まで動かすことができる。すると、背もたれ部91を所定の位置まで起立させ、かつ、脚部93を所定の下方位置まで動かせば、介護者等は座部92にトイレbpを備えたトイレ付椅子として使用することができる。しかも、このトイレ付椅子はトイレ付車椅子Tとしてベッド本体Bから容易に取り外して移動することができるので、要介護者等はベッドから車椅子に乗りなおさなくても着座したままで移動することができる。
【0103】
なお、上記例は、チューン機構とリンク機構を連動させた場合について説明したが、両者を独立した構成とすることもできる。例えば、ギヤ131Zの軸133の端縁にハンドル等の駆動部を連結し、ストッパ部材等を設ければ、単独で構成することができる。言い換えれば、リンク機構とチューン機構の連動手段、つまりベッド本体Bに設けられたスプロケット131X、131Y、チェーン132およびギヤ131Ysを採用しない簡単な構成とすることができる。
また、駆動部としての手動式ハンドルに代えてモータ式等も採用してもよいし、脚部支持部材135には、例えばスプリング式、ガス式の他に油圧式等を採用してもよい。
さらに図17に示すように、脚部ストッパ部材136を採用すれば、脚部93を水平位置で容易に固定することができるので好ましい。
【0104】
(背もたれストッパの説明)
本実施例のトイレ付ベッド100は、背もたれ部91と脚部93を所定の位置まで動かせば、要介護者等は座部92に着座したままトイレ付車椅子Tとしてベッド本体Bから取り外して移動することができる。かかる際に、背もたれ部91が所定の位置で固定される構成を採用すれば、要介護者等は安心してトイレ付車椅子Tを使用することができるので好ましい。
例えば、背もたれ部91が水平に対して所定の角度で固定し得るストッパ手段を採用することができる。
ストッパ手段は、背もたれ部91内部に設けられた移動可能な棒状部材と、背もたれ部91と座部92との連結部近傍下部に設けられた筒状部材とから構成されている。棒状部材は、背もたれ部91に設けられた収容部に収容されており、背もたれ部91が起立状態になると、下方に移動するように構成されている。
また、筒状部材は、背もたれ部91が起立状態になったときに、棒状部材が移動する移動方向の延長線上に配置されている。
そして、棒状部材は、背もたれ部91が起立状態になったときにでも、その上端は収納孔内にとどまるようになっている。
これにより、背もたれ部91を水平に対して所定の起立位置まで起こせば、背もたれ部91内部に設けられた棒状部材が下方に移動して、その基端部を筒状部材の孔に嵌入係止することができるので、背もたれ部91を所定の位置で固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の隔離設備は、医療用や感染症のために使用するのに適している。
【符号の説明】
【0106】
2 隔壁
3 気流調整手段
11 天井
12 床
13 側壁
16 連結手段
17 取付手段
30 組立部材
30g 収容溝
31 シール部材
40 可動壁
100 トイレ付ベッド
120 リンク機構
130 チェーン機構
A 空気調整手段
AC 前室
B ベッド本体
bp トイレ
C 隔離室
D 扉
E 通用扉
P 柱
PC 主室
T トイレ付車椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から気密に遮断された室と、該室内の空気の状態を調整する空気調整手段とを備えた隔離室であって、
該隔離室は、
前記室を形成する、天井と、床と、両者間に設けられた複数の壁とを備えており、
前記室内には、前記室を形成する複数の壁のうち、二つの側壁の間に配設され、前記室を主室と前室に分割し得る隔壁を備えており、
該隔壁は、
前記室内を前記主室と前記前室に分割する分割位置と、前記室の一の側壁に沿うように配置された収納位置と、の間で移動可動に設けられており、
前記隔壁が分割位置に配置された状態において、該隔壁と前記室内面との間における空気の流れを制御する気流調整手段を備えている
ことを特徴とする簡易の隔離設備。
【請求項2】
前記天井および床は、
その内面が平滑な面で形成されており、
前記隔壁は、
その隔壁上端縁および隔壁下端縁と前記天井面および床面の平滑面と、の間に位置するように前記気流調整手段が設けられており、
前記気流調整手段は、
その基部が前記隔壁の端縁に取付けられた板状の弾性部材であって、
前記隔壁を分割位置に配置したときに、該弾性部材が該隔壁の端縁部と前記天井面および床面の平滑面との間において湾曲可能であり、
該弾性部材が湾曲した状態において、その一方の面が前記天井面および床面の平滑面に面接触した状態となるように取付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の簡易の隔離設備。
【請求項3】
前記隔壁は、
その一端縁が、連結手段により一の前記側壁に対して該隔壁を前記床面に沿って揺動し得るように連結されており、
該隔壁を揺動させて前記収納位置から前記分割位置に配置したときに、該隔壁の他端縁が接する他の前記側壁には、
前記隔壁の他端縁を係合し得る取付手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の簡易の隔離設備。
【請求項4】
前記隔離室は、
前記天井、床、側壁を構成する板状の板状部材と、
隣接する該板状部材の端縁との間に配置された組立部材と、から形成されており、
該組立部材には、
前記部屋を組立てたときに、前記板状部材の端縁を収容し得る収容溝が形成されており、
該収容溝の内面には、
前記板状部材の端縁を前記収容溝に嵌合して収容した状態において、両者間に配置され両者間の隙間をシールするシール部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1,2または3記載の簡易の隔離設備。
【請求項5】
前記シール部材が、
柔軟性を有する部材であり、
該柔軟性を有する部材は、
前記収容溝の内面に対向するように一対設けられており、
前記収容溝の内面に該柔軟性を有する部材が取付けられた状態において、その内向する端縁間が前記板状部材の端縁の厚さより小さくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項4記載の簡易の隔離設備。
【請求項6】
天井、床および複数の壁を備えた部屋の室内に設けられ、該室内を分割するために使用される隔壁であって、
該隔壁は、
前記室内の一の側壁近傍に配設される柱部材と、
該柱部材に対して揺動し得るように、該柱部材にその一の側端縁が連結された板状部材と、
前記一の側壁と異なる側壁に取付けられる、前記板状部材の他の側端縁を係合離脱可能に連結する固定部材と、
前記柱部材を前記室内の一の側壁近傍に配設したときに、前記板状部材の上下端縁と前記部屋の天井および床との間に配設される気流調整手段とを備えている
ことを特徴とする隔離壁。
【請求項7】
前記気流調整手段は、
その基端部が前記板状部材の上下端縁に取付けられた板状の弾性部材であって、
該弾性部材は、
前記柱部材を前記室内の一の側壁近傍に配設したときに、前記板状部材の上下端と前記天井および床との間において湾曲可能であり、
湾曲した状態において、その一方の面が前記天井および床に面接触した状態となるように取付けられている
ことを特徴とする請求項6記載の隔離壁。
【請求項8】
介護に使用されるベッドであって、
該ベッドは、
上面に開口が設けられたベッド本体と、
該ベッド本体の開口部に配置される、座部にトイレを備えたトイレ付車椅子とを備えており、
該トイレ付車椅子は、
前記座部との連結部を支点として、上面が水平になった倒伏位置と、該倒伏位置から上方に揺動した起立位置との間で揺動可能に設けられた背もたれ部と、
前記座部との連結部を支点として、上面が水平になった水平位置と、該水平位置から下方に揺動した下方位置との間で揺動可能に設けられた脚部とを備えており、
前記ベッド本体は、
前記トイレ付車椅子の背もたれ部を起立倒伏させるリンク機構を備えており、
前記トイレ付車椅子は、
前記脚部を揺動させるチェーン機構を備えている
ことを特徴とするトイレ付ベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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