簡易型口腔乾燥症診断キット
【課題】口腔乾燥症の簡便かつ信頼できる検査キットを提供する。
【解決手段】被験者の唾液をペーパークロマトグラフイーの濾紙に定量的にしみ込ませて展開するペーパークロマトグラフィーの原理とヨードデンプン反応とを組み合わせた簡便な診断濾紙を作成し、局方過酸化水素水あるいは新規発色試薬の滴下による呈色反応から口腔乾燥症を診断する。
【解決手段】被験者の唾液をペーパークロマトグラフイーの濾紙に定量的にしみ込ませて展開するペーパークロマトグラフィーの原理とヨードデンプン反応とを組み合わせた簡便な診断濾紙を作成し、局方過酸化水素水あるいは新規発色試薬の滴下による呈色反応から口腔乾燥症を診断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔乾燥症の程度を簡便に測定する検査キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔乾燥症は唾液腺の器質的障害、分泌神経の障害、全身の代謝性疾患などにより唾液分泌量が低下し、口腔粘膜の乾燥症状を呈する疾病である。その結果、口内疼痛、灼熱感、味覚異常、嚥下障害、義歯不適合、睡眠障害、会話障害、口臭、ウ蝕、歯周疾患、口角糜爛、口腔カンジダ症などの併発を惹起する。平成13年度の厚生労働省の長寿科学総合研究事業[高齢者の口腔乾燥症と唾液物性の研究]による調査では、高齢者の27.7%は常に口腔乾燥感を自覚しており、軽度の乾燥自覚者を含めると56.7%の高率であった。また、65歳未満の若年層においても、常時乾燥感自覚者が10.5%、経度を含めると35.1%で、年齢に関わりなく口腔乾燥症が多く認められている(非特許文献1)。一方、Field ら (非特許文献2)は人口の10%以上が口腔乾燥症であると報告している。
【0003】
口腔乾燥症の早期発見、診断は全身並びに口腔の健康維持にとって重要である。しかしながら、その診断法として唾液分泌量の測定、唾液腺造影などが行われているが、操作の煩雑性などから必ずしも十分に活用されていない。
【0004】
我々はペーパークロマトグラフイーの原理とヨードデンプン反応を組み合わせた簡便な診断濾紙を作成し、局方過酸化水素水(オキシドール)あるいは新規発色薬の滴下による青色あるいは褐色の呈色反応による口腔乾燥症の診断キットを考案した。
【0005】
【非特許文献1】柿木保明、岩木悦央:口腔乾燥感と口腔乾燥度に関する研究―高齢者の口腔乾燥症と唾液物性に関する研究、平成14年度厚生科学研究費研究報告書、2003年22−26頁
【非特許文献2】Field ら、Gerontology、2001年18巻21−24頁,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、口腔乾燥症の診断において、簡易でかつ信頼できる方法がないことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶液が、定量的にしみこんで展開されるというペーパークロマトグラフイーの原理とヨードデンプン反応を組み合わせた簡便な診断濾紙を作成し、それを被験者の口に一定時間含ませた後、局方過酸化水素水(オキシドール)あるいは、新規発色薬の滴下による青色あるいは褐色の色調に発色することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔乾燥症診断キットは、被験者が、一定時間、当該診断濾紙を口に含んだ後、発色薬である局方過酸化水素水(オキシドール)あるいは新規発色薬の滴下を反応させることによって青色あるいは褐色の色調に発色することより、肉眼的に簡単に結果を判定できるという利点がある。今までの測定方法では、簡易に唾液分泌量を定量することはできなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
クロマトグラフィー用の濾紙を短冊状に切り、その端から一定位置にデンプンとヨウ化カリウムを含ませた部分を作り、その後、発色液によって青色あるいは褐色の色調に発色することによって、最小の仕掛けで、定量的に唾液の分泌量の測定を実現した。
【実施例1】
【0010】
検出用試薬組成物の組成と作成
検出用試薬組成物とは、予め濾紙に塗布しておく試薬を呼ぶ。検出用試薬組成物は、可溶性デンプン(関東化学株式会社)及びヨウ化カリウム(関東化学株式会社)を用いて下記のように調製した。すなわち、デンプン溶液は、可溶性デンプン1gを0.1M Tris-塩酸緩衝液 (pH7.3) 99mlに溶解して1%溶液を作成した。ヨウ化カリウム溶液は、ヨウ化カリウム4.97gを0.1M
Tris-塩酸緩衝液 (pH7.3)100mlに溶解して0.3Mヨウ化カリウム溶液を作成した。次に、作成したデンプン溶液3 mlとヨウ化カリウム溶液1mlを混合して、検出用試薬組成物を調製した。次に、この検出用試薬0.1mlを直径23mmのクロマトグラフィー用濾紙(厚さ0.7
mm ; Advantec, No.526; Toyo Roshi Kaisha,
Ltd., Japan)に滴下し、暗所下で乾燥させて検出用試薬組成物を作製した。
【0011】
口腔乾燥症診断用濾紙の組成と作成
検出用試薬組成物の濾紙を直径6.0 mmに裁断し、予め図1のように3箇所に直径6.0 mm の穴を開けたクロマトグラフィー用濾紙(67 x 21.0mm; 厚さ0.7mm ; Advantec,
No.526; Toyo Roshi Kaisha, Ltd., Japan)に填め込み、口腔乾燥症診断用濾紙を作製した(図1)。尚、直径6mmの各濾紙片(ディスク)中には51マイクログラムのデンプン、85マイクログラムのヨウ化カリウムを含有している。
【0012】
デンプン濃度の適正化とヨードデンプン反応
デンプン濃度とヨードデンプン反応の関係を調べるために、種々の濃度(0.062 % 〜2%)のデンプン溶液3mlと0.3M ヨウ化カリウム溶液 1mlを混合して、種々なる検出用試薬を調製した。図2に示すように、ヨードデンプン反応はデンプン濃度の増加と共に強く反応した。従って、十分なヨードデンプン反応を示す1 %のデンプン濃度を使用した。
【0013】
ヨウ化カリウム濃度の適正化とヨードデンプン反応
ヨードデンプン反応の至適ヨウ化カリウム濃度を調べるために、種々なる濃度(0.001M から3M)のヨウ化カリウム溶液1 mlと1 % デンプン溶液3 mlを混合して、種々なる検出用試薬を調製した。図3に示すように、ヨードデンプン反応はヨウ化カリウム溶液の濃度の増加と共に強く反応した。しかしながら、ヨウ化カリウム溶液の濃度の上昇はヨードの分離度が悪くなり、テーリングが見られた。それゆえに0.3M ヨウ化カリウム溶液を最適とした。
【0014】
過酸化水素濃度とヨードデンプン反応
ヨードデンプン反応の至適過酸化水素濃度を調べるために、種々の濃度(0.0375%〜3%)の過酸化水素溶液を調製した。1% デンプン溶液3mlと0.3Mヨウ化カリウム溶液 1mlよりなる検出用試薬組成物において、ヨードデンプン反応は0.0375%以上の過酸化水素溶液で発色が目視され、過酸化水素濃度の上昇と共に強く反応した(図4)。取り扱うヒトの安全性と薬局ならいつでも手に入る利便性から局方過酸化水素水(オキシドール)を使用することにした。
【0015】
唾液量とヨードデンプン反応
健常者(20−25歳の男女、男性36人;女性20人)の唾液(混合唾液すなわち耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺の混合)を用いて、唾液量(200マイクロリットル〜600マイクロリットル)と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応の関係について調べた。2分間当たり口腔乾燥症診断用濾紙に吸収された唾液量とヨードデンプン反応の関係は図5に示したように、唾液量の増加と共にヨードデンプン反応が消失した。尚、ヨードデンプン反応は濾紙片上に局方過酸化水素水(オキシドール)0.1 mlの滴下により判定した。
【0016】
唾液量と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応結果調べた。それぞれ、混合唾液を吸収させた後、局方過酸化水素水(オキシドール)で発色させ、その後、検出用試薬組成物のディスクをはずした。反応済の検出用試薬組成物のディスクをはずして、別の紙の上に並べると図5となった。
【0017】
吸収唾液量200マイクロリットルの短冊では、I、II、IIIのいずれの場所も青色に発色した。唾液吸収量の増加とともにIIIの位置から、青色の発色が失われ、350マイクロリットルでは、IIIが完全に消え、500マイクロリットルで、IIの色が失われ、600マイクロリットルでは、Iの大部分の色が失われた。これらの結果から定量性のあることが認められた。
【0018】
口腔乾燥症の判定
口腔乾燥症診断濾紙を口腔内(舌下)に挿入し、2分間、安静時唾液を採取した。次いで口腔乾燥症診断濾紙を取り出し、濾紙片上に局方過酸化水素水(オキシドール)0.1 mlを滴下し、2秒後、直径6.0
mmの濾紙片(ディスク)の色調より口腔乾燥症を判定した。判定は、過酸化水素水を滴下した面と反対の面の色調の変化を観察すると容易であった。
【0019】
図6に示したように、安静時唾液が、10分間で1ml未満の被験者は、重度の口腔乾燥症と判定できる。重度の被験者の口は、粘膜の乾燥が認められる。これは、歯科医の診断所見と本願の濾紙発色法の結果は、3つの穴のうちいずれもが発色する3/3となり、結果がよく一致している。軽度の被験者は、粘ちょう度のある唾液で、10分あたりの唾液量は、2mlから4ml未満であり、発色法では、1つの穴のみ発色する1/3であった。中等度の被験者は、所見では、泡沫状唾液の存在する例が多く、所見で中等度と観察された被験者は、10分間で1ml以上3ml未満であり、発色では、1/3から3/3と幅があった。正常者は、すべて発色せず、0/3と判定された。
【0020】
口腔乾燥症の判定の文献例
厚生労働省のシェーグレン症候群の診断基準(厚生省1999年厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班)(非特許文献3)によれば、口腔乾燥症の判定基準は唾液分泌機能の低下、すなわち(1)唾液分泌量の測定、(2)唾液腺造影、(3)唾液腺シンチグラフを用いて判断している。唾液分泌量は、安静時唾液量であり、15分間で1.5mlが基準値とされている。ガム試験は、ガムを10分間噛みその間の唾液量が、10mlを基準値としている。Saxonテストでは、刺激唾液を測定しており、ガーゼを口の中に入れて、ガーゼを一定の速度で2分間噛み、重量測定から唾液量を測定して、2分あたり2gが基準値としている。
【0021】
一方、研究者によっては、口腔乾燥症と判断する基準は、下記のようにいろいろである(非特許文献4から6)。それらの数値の中で、おおよそ2分あたりの分泌量を200マイクロリットルとするのが、妥当である。よって、本発明においては、基準となる位置を200マイクロリットルとした試作品を完成させた。
【0022】
非特許文献4によれば、1分間あたり50マイクロリットル+/−90マイクロリットルの唾液分泌量が、口腔乾燥症の基準値としている。
非特許文献5によれば、1分あたり115マイクロリットル+/−20マイクロリットル未満の唾液量で、口腔乾燥症と判定している。
非特許文献6によれば、安静時全唾液量において90マイクロリットル+/−110マイクロリットルの被験者を乾燥症とし、360マイクロリットル+/−330マイクロリットルの被験者を正常と判定している。
非特許文献3においては、15分あたり1.5ml以下を乾燥症としている。従って、2分あたりにすると200マイクロリットルとなる。
【0023】
【非特許文献3】ENIF 医薬ニュース、2006年、15巻、20-22頁
【非特許文献4】Kalk WWI ら Ann. Rheum Dis、2001年、60巻、1110−1116頁
【非特許文献5】Rhodus N. L. ら J. Otolaryngol.、2000年、29巻、28−34頁
【非特許文献6】Marton K. ら J. Prosthet Dent. 2004年 91巻 577-581頁
【0024】
非特許文献7では、口腔乾燥症の原因について次のような症例報告を挙げている。すなわち、放射線照射に起因する唾液腺障害によって、唾液分泌量は1分あたり46マイクロリットルまで減少し、口腔乾燥症と判定している。そして全身の外分泌腺機能低下によるシェーグレン症候群の唾液分泌量は、1分あたり60マイクロリットル、薬剤投与に起因する分泌神経の反応低下による唾液分泌量は、1分あたり90マイクロリットで、それぞれ口腔乾燥症と判定している。
【0025】
【非特許文献7】Aframian D. J. ら Oral Disease, 2007年13巻 88-92頁
【実施例2】
【0026】
臨床検査試験
安静時唾液に関しては、ドライマウス研究会(鶴見大学歯学部、斎藤一郎教授、代表幹事)の定義では、「15分間で1.5ml以下を口腔乾燥症と診断する」とされている。当該発明の検査キットは10分間、口に含むことを想定している。従って、10分間で1.0ml以下は口腔乾燥症と診断することになる。30人の被験者を用いて試験した。
実施例2で、3穴の濾紙で行ったが、正常値と異常値をスクリーニングするだけであれば、1穴でも可能なはずである。1穴の検査キットを試作した。穴の中心点は、濾紙の先端から26mmに位置するように設置した。
結果を図7に示した。被験者30人について、1穴の診断キットを用いて試験した結果である。正常者は、まったく発色せず、陰性(−)となった。乾燥症の被験者は、多くは陽性(+)となり、一部、半分が発色する擬陽性(+/−)となった。
【実施例3】
【0027】
穴を用いず検出用試薬のスポットによる診断用濾紙の作成
実施例1、2、3では、濾紙に穴を空けて、その穴に検出用試薬を浸透させた同じサイズの丸い濾紙(ディスク)を挿入していた。しかし、この操作は、細かく煩雑である。これを改良すべく、濾紙上に直接、検査用試薬をスポットする方法を考案した。
用いた試薬は、1%デンプン溶液3mlと0.3Mヨウ化カリウム溶液1mlよりなる検出用試薬組成物を8連のマイクロピペットを用いて、6.0mm間隔で4マイクロリットル(デンプン30マイクログラムおよびヨウ化カリウム50マイクログラム含有)を直線的に、5箇所にスポットした。最初のスポットの位置は、濾紙の端から14mmの位置とした。暗所で乾燥させた後、121℃、15分オートクレーブによって滅菌して、使用した。
健常者(20−25歳の男女、男性36人;女性20人)の唾液(混合唾液すなわち耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺の混合)を用いて、唾液量(0マイクロリットルから600マイクロリットル)と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応の関係について調べた。2分間当たり口腔乾燥症診断用濾紙に吸収された唾液量とヨードデンプン反応の関係は図8の写真に示したように、唾液量の増加と共にヨードデンプン反応が消失した。尚、ヨードデンプン反応は濾紙片上に局方過酸化水素水(オキシドール)0.1mlの滴下により判定した。図9は判定結果をプラスとマイナスによってわかりやすく示したものである。
【0028】
図8においては、11枚の診断濾紙があり、その左から混合唾液をそれぞれ、0マイクロリットル、100マイクロリットル、150、200、250、300、350、400、450、500、600マイクロリットルと容量を定めて吸収させた。
その結果、図8の結果を判断したのが図9であり、これからも明らかなように、唾液量の増加とともに青く発色するスポットは、下から減少していき、定量性が認められた。
【実施例4】
【0029】
発色液の改良
発色液は、過酸化水素を主成分とするが、その溶液の組成によって発色の鮮明さが変わることがわかった。すなわち、3%過酸化水素水(局方過酸化水素水;オキシドール)を用いて発色させた場合は、スポット上の青い発色が濾紙の周囲に滲んだ。これを改良するために次のような組成の発色試薬を発明した。改良した発色試薬の組成は、過酸化水素水(30%)1容量に対して、精製水1容量、エタノール7容量を混合したものである。この改良発色試薬を用いることにより発色したスポット上の色は、濾紙上で滲むことなく、明瞭になった。よって、エタノールなどアルコール類を溶液の組成として加えることにより識別が容易になった。
【0030】
改良の例を具体的に示すと次のようになる。従来の局法過酸化水素水を用いたものと改良した発色試薬を用いたものを合わせて示した。発色直後の呈色反応は、改良法においては滲むことなく明瞭であった(図10)。
エタノールを添加した改良法においては、もう一つの良い点があった。過酸化水素水のみでの発色では、発色後時間が経つにつれて、発色位置が変わってくる。10分後の写真を示した(図11)。一方、改良法のエタノール添加では、その変化はなく、安定した発色が得られた。さらに60分放置しても安定した発色が保存されていた(図12)
尚、アセトンは滲まないけれども発色の程度は弱く、DEMSO(Dimethyl
Sulfoxide)では、発色が阻害されて判定できなかった。
【実施例5】
【0031】
pHおよび緩衝液の違いによる発色の程度
ヨードデンプン反応がpHによって変化があるかを調べた。ヨウ化カリウムとデンプンからなる検出用試薬組成物の溶液は、pH5からpH8は0.1Mリン酸緩衝液で調製し、pH9からpH10は0.1M Tris-塩酸緩衝液で調製した。 その結果、青色あるいは褐色の発色はpH5からpH9までは検出可能であるが、pH10では、発色は阻害された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
被験者の口に含ませ唾液を回収した濾紙においてヨードデンプン反応を行うことによって簡単な操作で口腔乾燥症の診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】口腔乾燥症診断用濾紙を示した説明図である。(実施例1)濾紙の大きさは、縦67mm、横21mmであり、その短冊状の濾紙の中央線に沿って3つの穴をあけた。この図の右端(挿入部)を口の中に挿入して、唾液面に当てて、唾液を吸収する。穴IIIの中心点の位置は、右の端から26mm、穴IIの中心点は、38mm、そして穴Iの中心点は、42mmである。穴の直径は6mmである。
【図2】デンプン濃度の適正化とヨードデンプン反応を示した説明図である。(実施例1)
【図3】デンプン濃度の適正化とヨードデンプン反応を示した説明図である。(実施例1)
【図4】過酸化水素濃度とヨードデンプン反応を示した説明図である。(実施例1)
【図5】唾液量と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応を示した図である。(実施例2) 図5の横軸に記載した数字は、吸収させた混合唾液量(マイクロリットル)を示し、吸収量は200〜600マイクロリットルである。ローマ数字のI、II、IIIは、図1に示したように検出用試薬組成物を浸透させた濾紙を入れた穴の位置を示している。それぞれ、混合唾液を吸収させた後、局方過酸化水素水(オキシドール)で発色させ、その後、検出用試薬組成物のディスクをはずした。反応済の検出用試薬組成物のディスクをはずして、別の紙の上に並べると図5となった。
【図6】口腔乾燥症の判定を示した説明図である。(実施例1)正常者は、まったく発色せず、陰性(−)となった。乾燥症の被験者は、多くは陽性(+)となり、一部、半分が発色する擬陽性(+/−)となった。
【図7】口腔乾燥症の判定(1穴式)を示した説明図である。(実施例2)被験者30人について、1穴の診断キットを用いて試験した結果である。正常者は、まったく発色せず、陰性(−)となった。乾燥症の被験者は、多くは陽性(+)となり、一部、半分が発色する擬陽性(+/−)となった。
【図8】口腔乾燥症の判定(スポット式)を示した説明図である。(実施例3)11枚の診断濾紙があり、その左から混合唾液をそれぞれ、0マイクロリットル、100マイクロリットル、150、200、250、300、350、400、450、500、600マイクロリットルと容量を定めて吸収させた。その結果、図8と図9で明らかなように、唾液量の増加とともに青く発色するスポットは、下から減少していき、定量性が認められた。
【図9】唾液量と呈色反応の判定を示した説明図である。(実施例3)図8の結果を判定として示したもの。プラスとマイナスによってわかりやすく示したものである
【図10】従来法の発色液と改良法の発色液の発色比較(発色直後)を示した説明図である。(実施例4)写真の左は、エタノールを添加した改良法の発色液。右は、局方過酸化水素水のみの発色液。
【図11】従来法の発色液と改良法の発色液の発色比較(発色後10分放置)を示した説明図である。(実施例4)写真の左は、エタノールを添加した改良法の発色液。右は、局方過酸化水素水のみの発色液。
【図12】従来法の発色液と改良法の発色液の発色比較(発色後60分放置)を示した説明図である。(実施例4)写真の左は、エタノールを添加した改良法の発色液。右は、局方過酸化水素水のみの発色液。
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔乾燥症の程度を簡便に測定する検査キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔乾燥症は唾液腺の器質的障害、分泌神経の障害、全身の代謝性疾患などにより唾液分泌量が低下し、口腔粘膜の乾燥症状を呈する疾病である。その結果、口内疼痛、灼熱感、味覚異常、嚥下障害、義歯不適合、睡眠障害、会話障害、口臭、ウ蝕、歯周疾患、口角糜爛、口腔カンジダ症などの併発を惹起する。平成13年度の厚生労働省の長寿科学総合研究事業[高齢者の口腔乾燥症と唾液物性の研究]による調査では、高齢者の27.7%は常に口腔乾燥感を自覚しており、軽度の乾燥自覚者を含めると56.7%の高率であった。また、65歳未満の若年層においても、常時乾燥感自覚者が10.5%、経度を含めると35.1%で、年齢に関わりなく口腔乾燥症が多く認められている(非特許文献1)。一方、Field ら (非特許文献2)は人口の10%以上が口腔乾燥症であると報告している。
【0003】
口腔乾燥症の早期発見、診断は全身並びに口腔の健康維持にとって重要である。しかしながら、その診断法として唾液分泌量の測定、唾液腺造影などが行われているが、操作の煩雑性などから必ずしも十分に活用されていない。
【0004】
我々はペーパークロマトグラフイーの原理とヨードデンプン反応を組み合わせた簡便な診断濾紙を作成し、局方過酸化水素水(オキシドール)あるいは新規発色薬の滴下による青色あるいは褐色の呈色反応による口腔乾燥症の診断キットを考案した。
【0005】
【非特許文献1】柿木保明、岩木悦央:口腔乾燥感と口腔乾燥度に関する研究―高齢者の口腔乾燥症と唾液物性に関する研究、平成14年度厚生科学研究費研究報告書、2003年22−26頁
【非特許文献2】Field ら、Gerontology、2001年18巻21−24頁,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、口腔乾燥症の診断において、簡易でかつ信頼できる方法がないことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶液が、定量的にしみこんで展開されるというペーパークロマトグラフイーの原理とヨードデンプン反応を組み合わせた簡便な診断濾紙を作成し、それを被験者の口に一定時間含ませた後、局方過酸化水素水(オキシドール)あるいは、新規発色薬の滴下による青色あるいは褐色の色調に発色することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔乾燥症診断キットは、被験者が、一定時間、当該診断濾紙を口に含んだ後、発色薬である局方過酸化水素水(オキシドール)あるいは新規発色薬の滴下を反応させることによって青色あるいは褐色の色調に発色することより、肉眼的に簡単に結果を判定できるという利点がある。今までの測定方法では、簡易に唾液分泌量を定量することはできなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
クロマトグラフィー用の濾紙を短冊状に切り、その端から一定位置にデンプンとヨウ化カリウムを含ませた部分を作り、その後、発色液によって青色あるいは褐色の色調に発色することによって、最小の仕掛けで、定量的に唾液の分泌量の測定を実現した。
【実施例1】
【0010】
検出用試薬組成物の組成と作成
検出用試薬組成物とは、予め濾紙に塗布しておく試薬を呼ぶ。検出用試薬組成物は、可溶性デンプン(関東化学株式会社)及びヨウ化カリウム(関東化学株式会社)を用いて下記のように調製した。すなわち、デンプン溶液は、可溶性デンプン1gを0.1M Tris-塩酸緩衝液 (pH7.3) 99mlに溶解して1%溶液を作成した。ヨウ化カリウム溶液は、ヨウ化カリウム4.97gを0.1M
Tris-塩酸緩衝液 (pH7.3)100mlに溶解して0.3Mヨウ化カリウム溶液を作成した。次に、作成したデンプン溶液3 mlとヨウ化カリウム溶液1mlを混合して、検出用試薬組成物を調製した。次に、この検出用試薬0.1mlを直径23mmのクロマトグラフィー用濾紙(厚さ0.7
mm ; Advantec, No.526; Toyo Roshi Kaisha,
Ltd., Japan)に滴下し、暗所下で乾燥させて検出用試薬組成物を作製した。
【0011】
口腔乾燥症診断用濾紙の組成と作成
検出用試薬組成物の濾紙を直径6.0 mmに裁断し、予め図1のように3箇所に直径6.0 mm の穴を開けたクロマトグラフィー用濾紙(67 x 21.0mm; 厚さ0.7mm ; Advantec,
No.526; Toyo Roshi Kaisha, Ltd., Japan)に填め込み、口腔乾燥症診断用濾紙を作製した(図1)。尚、直径6mmの各濾紙片(ディスク)中には51マイクログラムのデンプン、85マイクログラムのヨウ化カリウムを含有している。
【0012】
デンプン濃度の適正化とヨードデンプン反応
デンプン濃度とヨードデンプン反応の関係を調べるために、種々の濃度(0.062 % 〜2%)のデンプン溶液3mlと0.3M ヨウ化カリウム溶液 1mlを混合して、種々なる検出用試薬を調製した。図2に示すように、ヨードデンプン反応はデンプン濃度の増加と共に強く反応した。従って、十分なヨードデンプン反応を示す1 %のデンプン濃度を使用した。
【0013】
ヨウ化カリウム濃度の適正化とヨードデンプン反応
ヨードデンプン反応の至適ヨウ化カリウム濃度を調べるために、種々なる濃度(0.001M から3M)のヨウ化カリウム溶液1 mlと1 % デンプン溶液3 mlを混合して、種々なる検出用試薬を調製した。図3に示すように、ヨードデンプン反応はヨウ化カリウム溶液の濃度の増加と共に強く反応した。しかしながら、ヨウ化カリウム溶液の濃度の上昇はヨードの分離度が悪くなり、テーリングが見られた。それゆえに0.3M ヨウ化カリウム溶液を最適とした。
【0014】
過酸化水素濃度とヨードデンプン反応
ヨードデンプン反応の至適過酸化水素濃度を調べるために、種々の濃度(0.0375%〜3%)の過酸化水素溶液を調製した。1% デンプン溶液3mlと0.3Mヨウ化カリウム溶液 1mlよりなる検出用試薬組成物において、ヨードデンプン反応は0.0375%以上の過酸化水素溶液で発色が目視され、過酸化水素濃度の上昇と共に強く反応した(図4)。取り扱うヒトの安全性と薬局ならいつでも手に入る利便性から局方過酸化水素水(オキシドール)を使用することにした。
【0015】
唾液量とヨードデンプン反応
健常者(20−25歳の男女、男性36人;女性20人)の唾液(混合唾液すなわち耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺の混合)を用いて、唾液量(200マイクロリットル〜600マイクロリットル)と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応の関係について調べた。2分間当たり口腔乾燥症診断用濾紙に吸収された唾液量とヨードデンプン反応の関係は図5に示したように、唾液量の増加と共にヨードデンプン反応が消失した。尚、ヨードデンプン反応は濾紙片上に局方過酸化水素水(オキシドール)0.1 mlの滴下により判定した。
【0016】
唾液量と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応結果調べた。それぞれ、混合唾液を吸収させた後、局方過酸化水素水(オキシドール)で発色させ、その後、検出用試薬組成物のディスクをはずした。反応済の検出用試薬組成物のディスクをはずして、別の紙の上に並べると図5となった。
【0017】
吸収唾液量200マイクロリットルの短冊では、I、II、IIIのいずれの場所も青色に発色した。唾液吸収量の増加とともにIIIの位置から、青色の発色が失われ、350マイクロリットルでは、IIIが完全に消え、500マイクロリットルで、IIの色が失われ、600マイクロリットルでは、Iの大部分の色が失われた。これらの結果から定量性のあることが認められた。
【0018】
口腔乾燥症の判定
口腔乾燥症診断濾紙を口腔内(舌下)に挿入し、2分間、安静時唾液を採取した。次いで口腔乾燥症診断濾紙を取り出し、濾紙片上に局方過酸化水素水(オキシドール)0.1 mlを滴下し、2秒後、直径6.0
mmの濾紙片(ディスク)の色調より口腔乾燥症を判定した。判定は、過酸化水素水を滴下した面と反対の面の色調の変化を観察すると容易であった。
【0019】
図6に示したように、安静時唾液が、10分間で1ml未満の被験者は、重度の口腔乾燥症と判定できる。重度の被験者の口は、粘膜の乾燥が認められる。これは、歯科医の診断所見と本願の濾紙発色法の結果は、3つの穴のうちいずれもが発色する3/3となり、結果がよく一致している。軽度の被験者は、粘ちょう度のある唾液で、10分あたりの唾液量は、2mlから4ml未満であり、発色法では、1つの穴のみ発色する1/3であった。中等度の被験者は、所見では、泡沫状唾液の存在する例が多く、所見で中等度と観察された被験者は、10分間で1ml以上3ml未満であり、発色では、1/3から3/3と幅があった。正常者は、すべて発色せず、0/3と判定された。
【0020】
口腔乾燥症の判定の文献例
厚生労働省のシェーグレン症候群の診断基準(厚生省1999年厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班)(非特許文献3)によれば、口腔乾燥症の判定基準は唾液分泌機能の低下、すなわち(1)唾液分泌量の測定、(2)唾液腺造影、(3)唾液腺シンチグラフを用いて判断している。唾液分泌量は、安静時唾液量であり、15分間で1.5mlが基準値とされている。ガム試験は、ガムを10分間噛みその間の唾液量が、10mlを基準値としている。Saxonテストでは、刺激唾液を測定しており、ガーゼを口の中に入れて、ガーゼを一定の速度で2分間噛み、重量測定から唾液量を測定して、2分あたり2gが基準値としている。
【0021】
一方、研究者によっては、口腔乾燥症と判断する基準は、下記のようにいろいろである(非特許文献4から6)。それらの数値の中で、おおよそ2分あたりの分泌量を200マイクロリットルとするのが、妥当である。よって、本発明においては、基準となる位置を200マイクロリットルとした試作品を完成させた。
【0022】
非特許文献4によれば、1分間あたり50マイクロリットル+/−90マイクロリットルの唾液分泌量が、口腔乾燥症の基準値としている。
非特許文献5によれば、1分あたり115マイクロリットル+/−20マイクロリットル未満の唾液量で、口腔乾燥症と判定している。
非特許文献6によれば、安静時全唾液量において90マイクロリットル+/−110マイクロリットルの被験者を乾燥症とし、360マイクロリットル+/−330マイクロリットルの被験者を正常と判定している。
非特許文献3においては、15分あたり1.5ml以下を乾燥症としている。従って、2分あたりにすると200マイクロリットルとなる。
【0023】
【非特許文献3】ENIF 医薬ニュース、2006年、15巻、20-22頁
【非特許文献4】Kalk WWI ら Ann. Rheum Dis、2001年、60巻、1110−1116頁
【非特許文献5】Rhodus N. L. ら J. Otolaryngol.、2000年、29巻、28−34頁
【非特許文献6】Marton K. ら J. Prosthet Dent. 2004年 91巻 577-581頁
【0024】
非特許文献7では、口腔乾燥症の原因について次のような症例報告を挙げている。すなわち、放射線照射に起因する唾液腺障害によって、唾液分泌量は1分あたり46マイクロリットルまで減少し、口腔乾燥症と判定している。そして全身の外分泌腺機能低下によるシェーグレン症候群の唾液分泌量は、1分あたり60マイクロリットル、薬剤投与に起因する分泌神経の反応低下による唾液分泌量は、1分あたり90マイクロリットで、それぞれ口腔乾燥症と判定している。
【0025】
【非特許文献7】Aframian D. J. ら Oral Disease, 2007年13巻 88-92頁
【実施例2】
【0026】
臨床検査試験
安静時唾液に関しては、ドライマウス研究会(鶴見大学歯学部、斎藤一郎教授、代表幹事)の定義では、「15分間で1.5ml以下を口腔乾燥症と診断する」とされている。当該発明の検査キットは10分間、口に含むことを想定している。従って、10分間で1.0ml以下は口腔乾燥症と診断することになる。30人の被験者を用いて試験した。
実施例2で、3穴の濾紙で行ったが、正常値と異常値をスクリーニングするだけであれば、1穴でも可能なはずである。1穴の検査キットを試作した。穴の中心点は、濾紙の先端から26mmに位置するように設置した。
結果を図7に示した。被験者30人について、1穴の診断キットを用いて試験した結果である。正常者は、まったく発色せず、陰性(−)となった。乾燥症の被験者は、多くは陽性(+)となり、一部、半分が発色する擬陽性(+/−)となった。
【実施例3】
【0027】
穴を用いず検出用試薬のスポットによる診断用濾紙の作成
実施例1、2、3では、濾紙に穴を空けて、その穴に検出用試薬を浸透させた同じサイズの丸い濾紙(ディスク)を挿入していた。しかし、この操作は、細かく煩雑である。これを改良すべく、濾紙上に直接、検査用試薬をスポットする方法を考案した。
用いた試薬は、1%デンプン溶液3mlと0.3Mヨウ化カリウム溶液1mlよりなる検出用試薬組成物を8連のマイクロピペットを用いて、6.0mm間隔で4マイクロリットル(デンプン30マイクログラムおよびヨウ化カリウム50マイクログラム含有)を直線的に、5箇所にスポットした。最初のスポットの位置は、濾紙の端から14mmの位置とした。暗所で乾燥させた後、121℃、15分オートクレーブによって滅菌して、使用した。
健常者(20−25歳の男女、男性36人;女性20人)の唾液(混合唾液すなわち耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺の混合)を用いて、唾液量(0マイクロリットルから600マイクロリットル)と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応の関係について調べた。2分間当たり口腔乾燥症診断用濾紙に吸収された唾液量とヨードデンプン反応の関係は図8の写真に示したように、唾液量の増加と共にヨードデンプン反応が消失した。尚、ヨードデンプン反応は濾紙片上に局方過酸化水素水(オキシドール)0.1mlの滴下により判定した。図9は判定結果をプラスとマイナスによってわかりやすく示したものである。
【0028】
図8においては、11枚の診断濾紙があり、その左から混合唾液をそれぞれ、0マイクロリットル、100マイクロリットル、150、200、250、300、350、400、450、500、600マイクロリットルと容量を定めて吸収させた。
その結果、図8の結果を判断したのが図9であり、これからも明らかなように、唾液量の増加とともに青く発色するスポットは、下から減少していき、定量性が認められた。
【実施例4】
【0029】
発色液の改良
発色液は、過酸化水素を主成分とするが、その溶液の組成によって発色の鮮明さが変わることがわかった。すなわち、3%過酸化水素水(局方過酸化水素水;オキシドール)を用いて発色させた場合は、スポット上の青い発色が濾紙の周囲に滲んだ。これを改良するために次のような組成の発色試薬を発明した。改良した発色試薬の組成は、過酸化水素水(30%)1容量に対して、精製水1容量、エタノール7容量を混合したものである。この改良発色試薬を用いることにより発色したスポット上の色は、濾紙上で滲むことなく、明瞭になった。よって、エタノールなどアルコール類を溶液の組成として加えることにより識別が容易になった。
【0030】
改良の例を具体的に示すと次のようになる。従来の局法過酸化水素水を用いたものと改良した発色試薬を用いたものを合わせて示した。発色直後の呈色反応は、改良法においては滲むことなく明瞭であった(図10)。
エタノールを添加した改良法においては、もう一つの良い点があった。過酸化水素水のみでの発色では、発色後時間が経つにつれて、発色位置が変わってくる。10分後の写真を示した(図11)。一方、改良法のエタノール添加では、その変化はなく、安定した発色が得られた。さらに60分放置しても安定した発色が保存されていた(図12)
尚、アセトンは滲まないけれども発色の程度は弱く、DEMSO(Dimethyl
Sulfoxide)では、発色が阻害されて判定できなかった。
【実施例5】
【0031】
pHおよび緩衝液の違いによる発色の程度
ヨードデンプン反応がpHによって変化があるかを調べた。ヨウ化カリウムとデンプンからなる検出用試薬組成物の溶液は、pH5からpH8は0.1Mリン酸緩衝液で調製し、pH9からpH10は0.1M Tris-塩酸緩衝液で調製した。 その結果、青色あるいは褐色の発色はpH5からpH9までは検出可能であるが、pH10では、発色は阻害された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
被験者の口に含ませ唾液を回収した濾紙においてヨードデンプン反応を行うことによって簡単な操作で口腔乾燥症の診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】口腔乾燥症診断用濾紙を示した説明図である。(実施例1)濾紙の大きさは、縦67mm、横21mmであり、その短冊状の濾紙の中央線に沿って3つの穴をあけた。この図の右端(挿入部)を口の中に挿入して、唾液面に当てて、唾液を吸収する。穴IIIの中心点の位置は、右の端から26mm、穴IIの中心点は、38mm、そして穴Iの中心点は、42mmである。穴の直径は6mmである。
【図2】デンプン濃度の適正化とヨードデンプン反応を示した説明図である。(実施例1)
【図3】デンプン濃度の適正化とヨードデンプン反応を示した説明図である。(実施例1)
【図4】過酸化水素濃度とヨードデンプン反応を示した説明図である。(実施例1)
【図5】唾液量と口腔乾燥症診断用濾紙のヨードデンプン反応を示した図である。(実施例2) 図5の横軸に記載した数字は、吸収させた混合唾液量(マイクロリットル)を示し、吸収量は200〜600マイクロリットルである。ローマ数字のI、II、IIIは、図1に示したように検出用試薬組成物を浸透させた濾紙を入れた穴の位置を示している。それぞれ、混合唾液を吸収させた後、局方過酸化水素水(オキシドール)で発色させ、その後、検出用試薬組成物のディスクをはずした。反応済の検出用試薬組成物のディスクをはずして、別の紙の上に並べると図5となった。
【図6】口腔乾燥症の判定を示した説明図である。(実施例1)正常者は、まったく発色せず、陰性(−)となった。乾燥症の被験者は、多くは陽性(+)となり、一部、半分が発色する擬陽性(+/−)となった。
【図7】口腔乾燥症の判定(1穴式)を示した説明図である。(実施例2)被験者30人について、1穴の診断キットを用いて試験した結果である。正常者は、まったく発色せず、陰性(−)となった。乾燥症の被験者は、多くは陽性(+)となり、一部、半分が発色する擬陽性(+/−)となった。
【図8】口腔乾燥症の判定(スポット式)を示した説明図である。(実施例3)11枚の診断濾紙があり、その左から混合唾液をそれぞれ、0マイクロリットル、100マイクロリットル、150、200、250、300、350、400、450、500、600マイクロリットルと容量を定めて吸収させた。その結果、図8と図9で明らかなように、唾液量の増加とともに青く発色するスポットは、下から減少していき、定量性が認められた。
【図9】唾液量と呈色反応の判定を示した説明図である。(実施例3)図8の結果を判定として示したもの。プラスとマイナスによってわかりやすく示したものである
【図10】従来法の発色液と改良法の発色液の発色比較(発色直後)を示した説明図である。(実施例4)写真の左は、エタノールを添加した改良法の発色液。右は、局方過酸化水素水のみの発色液。
【図11】従来法の発色液と改良法の発色液の発色比較(発色後10分放置)を示した説明図である。(実施例4)写真の左は、エタノールを添加した改良法の発色液。右は、局方過酸化水素水のみの発色液。
【図12】従来法の発色液と改良法の発色液の発色比較(発色後60分放置)を示した説明図である。(実施例4)写真の左は、エタノールを添加した改良法の発色液。右は、局方過酸化水素水のみの発色液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔乾燥症を診断するために、ヨウ化カリウムとデンプンを予め浸透させておいた濾紙を製造し、その一端を口に入れて唾液を吸収させ、一定時間後に口から出して、発色試薬として局方過酸化水素水(オキシドール)を塗布して、青色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項2】
請求項1において発色試薬(検出用試薬組成物)の組成を、塩素イオン溶液(過塩素酸溶液あるいは次亜塩素酸ナトリウム溶液)を塗布して、青色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項3】
請求項1において検出用試薬組成物の組成を、過酸化水素水に加えてアルコール類を混合した溶液を塗布して、褐色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項4】
請求項1において、請求項3の検出用試薬組成物の組成を、過酸化水素水(30%)1容量に対して、精製水1容量、エタノール7容量を混合した溶液を塗布して、褐色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項5】
請求項1において口腔乾燥症診断用の濾紙にヨウ化カリウムとデンプンを予め浸透させる位置を全面に浸透させるのではなく、特定の位置にスポットする、もしくは、線上に塗布した口腔乾燥症診断キット。
【請求項1】
口腔乾燥症を診断するために、ヨウ化カリウムとデンプンを予め浸透させておいた濾紙を製造し、その一端を口に入れて唾液を吸収させ、一定時間後に口から出して、発色試薬として局方過酸化水素水(オキシドール)を塗布して、青色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項2】
請求項1において発色試薬(検出用試薬組成物)の組成を、塩素イオン溶液(過塩素酸溶液あるいは次亜塩素酸ナトリウム溶液)を塗布して、青色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項3】
請求項1において検出用試薬組成物の組成を、過酸化水素水に加えてアルコール類を混合した溶液を塗布して、褐色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項4】
請求項1において、請求項3の検出用試薬組成物の組成を、過酸化水素水(30%)1容量に対して、精製水1容量、エタノール7容量を混合した溶液を塗布して、褐色の発色によって唾液の分泌量を測定する方法および口腔乾燥症診断用キット。
【請求項5】
請求項1において口腔乾燥症診断用の濾紙にヨウ化カリウムとデンプンを予め浸透させる位置を全面に浸透させるのではなく、特定の位置にスポットする、もしくは、線上に塗布した口腔乾燥症診断キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−264988(P2009−264988A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116506(P2008−116506)
【出願日】平成20年4月27日(2008.4.27)
【出願人】(506185665)
【出願人】(593013074)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月27日(2008.4.27)
【出願人】(506185665)
【出願人】(593013074)
【Fターム(参考)】
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