説明

簡易散水装置

【課題】 市内を走行する多数台のトラックに配設して広域的に且つ持続的に路面に散水を行わせ、ヒートアイランド現象を抑制することができる簡易散水装置を提供する。
【解決手段】 トラック1のキャビンルーフ2上に水タンク3を設置すると共に該トラック1のフロントバンパの下端部に散水バー4を装着し、上記水タンク3とこの散水バー4間を配管5によって連結、連通して、該配管5の中間部に設けている開閉バルブ6を運転席内から運転手が操作することにより、水タンク3内の水を配管5を通じて散水バー4側に自然流下させ、散水バー4から路面に散水するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のトラック上に設置して走行路面に散水を行うようにした簡易散水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の夏季におけるヒートアイランド現象の主要因の一つとして、道路表面の舗装化があげられている。舗装表面は緑化等の対策が困難であり、散水された水の気化熱により路面温度を下げることが有効な手段である。近年、古くからの日本の風習である打ち水をイベントとして行ったり、散水車を動員して車道部に水を撒くなどの取組みが行われているが、これらは、散水範囲、散水時間が限定的であるため、都市を冷却する効果はあまり期待できず、むしろ啓発効果が期待されている。
【0003】
このような散水車としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、運転席後方の車体上に大容量の水タンクを搭載すると共に車体の前後下端に複数個の散水ノズルを有する散水バーを装着し、さらに、上記水タンクとこれらの散水バー間を配管によって連結、連結して該配管中に介装しているポンプと上記散水ノズルと運転席から遠隔操作することにより、路面に散水を行うように構成している。
【特許文献1】実開平5−7724号公報
【特許文献1】実開平5−88658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、散水車は散水専用の特殊な構造に構成されていて、極めて高価であるため、道路管理者等が保有する台数にも限界がある。そのため、ヒートアイランド現象を抑制するには、市内を広域的に且つ持続的に散水を行う必要があるにもかかわらず、この要求を満たすことが困難であり、また、経費をかけて台数を増やしても、都市部に乗り入れることは、かえってヒートアイランド現象の要因でもある排気ガスを増大させる結果となる。さらに、散水車を運転するには特殊な技術を必要とするといった問題点がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、都市部などの道路上を縦横無尽に走行している運送トラックを利用して広域的に且つ持続的に散水を可能にした簡易散水装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の簡易散水装置は、請求項1に記載したように、トラックのキャビンルーフ上に着脱自在に設置される水タンクと、トラックの車体下端部に着脱自在に装着される散水バーと、上記水タンクと散水バーとを連結、連通させる配管と、水タンクから散水バーへの水の流通の開放、遮断を行う開閉バルブとから構成している。
【0007】
このように構成した簡易散水装置において、請求項2に係る発明は、上記トラックのキャビンルーフ上にキャリアを固着し、このキャリア上に金具を介して水タンクを積載、設置するように構成していることを特徴とし、請求項3に係る発明は、上記散水バーをフロントバンパの下端部に沿って装着する一方、水タンクからこの散水バーに連結、連通させる上記配管を可撓性ホースから形成すると共にこの配管の中間部に運転席から開閉操作が可能な開閉バルブを設け、水タンクと散水ノズル間の水頭差を利用して水タンク内の水を配管を通じて散水バーから噴霧させるように構成している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る簡易散水装置によれば、トラックのキャビンルーフ上に着脱自在に設置される水タンクと、トラックの車体下端部に着脱自在に装着される散水バーと、上記水タンクと散水バーとを連結、連通させる配管と、水タンクから散水バーへの水の流通の開放、遮断を行う開閉バルブとから構成しているので、構造が簡単で安価に供給することができ、運送会社等が保有している既存の商用の運送トラックを改造することなく該トラックのキャビンルーフ上の空間を利用してこのキャビンルーフ上に水タンクを設置、固定すると共に車体の下端部に散水バーを取付け、上記水タンクとこの散水バー間を開閉バルブを有する配管によって接続するだけで、トラックを簡単且つ経済的に簡易散水車に構成することができるものであり、さらに、運転席から開閉バルブの開閉操作を行うだけで、何等の技術を要することなく簡単に散水作業を行うことができる。しかも、このようにトラックを簡易散水車に構成しても、荷台は水タンク等に全く関係なくそのまま使用できるから、通常通りの運送業務を行いながら、散水作業を行うことができる。
【0009】
また、トラックのキャビンルーフ上面は、荷台程広くなくて大容量の水タンクを設置することができないが、市内には多数の商用の運送トラックが殆ど絶え間なく走行しているために、これらの運送トラックに本発明の簡易散水装置を配設しておくことによって、道路に広域的且つ持続的な散水が可能となってヒートアイランド現象を抑制することができる。このようなトラックの利用による散水作業は、行政による散水マップや散水区域の作成と共に民間輸送業者の協力トラックの運転手に配付することにより、事故防止とともに大きな散水効果を期待することができる。
【0010】
さらに、水タンクは目立ち易いトラックのキャビンルーフ上に設置しているから、この水タンクの外周面にステッカーの貼着等による広告表示を行うことにより、宣伝効果を倍増させることができ,また、冬季においては上記水タンク内に塩水を収容して路面に噴霧することにより、路面の凍結防止を行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、トラックのキャビンルーフ上にキャリアを固着し、このキャリア上に金具を介して上記水タンクを積載、設置するように構成しているので、トラックのキャビンルーフ上に水タンクを容易に且つ安定した状態に設置、固定することができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明によれば、上記散水バーをフロントバンパの下端部に沿って装着する一方、水タンクからこの散水バーに連結、連通させる配管を可撓性ホースから形成すると共にこの配管の中間部に運転席から開閉操作が可能な開閉バルブを設け、水タンクと散水ノズル間の水頭差を利用して水タンク内の水を配管を通じて散水バーから噴射させるように構成しているので、水タンクを上述したようにトラックのキャビンルーフ上を利用して簡単に設置することができると共に散水バーもフロントバンパの下端部に沿って容易に装着することができ、その上、水タンクと散水バー間の配管作業もドアの前端縁に沿って何等邪魔になることなく簡単に行うことができる。
【0013】
さらに、この配管の中間部に運転席から開閉操作が可能な開閉バルブを設けているので、運転手がこの開閉バルブを直接的に操作して簡単に散水作業を行うことができる。この際、トラックのキャビンルーフ上の水タンクとフロントバンパの下端部に沿って装着した散水バーとの間の比較的大きい高低差を利用して水タンク内の水を配管を通じて散水ノズルに自然流下させるので、ポンプ等を装備することなく一定の噴霧圧でもって路面に円滑に散水することができる。また、トラックのフロント側で散水バーから路面に散水するように構成しているので、後方の車両に対しての飛散も殆ど生じることなく、第三者や通行車両に危険を及ぼす虞れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を具体的な実施の形態を図面について説明すると、1は運送業者等が保有している既存のトラックで、運転席を有するキャビン2側に本発明の簡易散水装置が配設されている。簡易散水装置はトラック1の上記キャビン2のルーフ2a上に着脱自在に積載、設置される水タンク3と、トラック1の車体下端部にその長さ方向を路幅方向に水平に向けた状態に着脱自在に装着される散水バー4と、上記水タンク3の下端部と散水バー4の一端開口部とを連結、連通した配管5と、この配管5の長さ方向の中間部に介装されて上記水タンク3から散水バー4への水の流通の開放、遮断を行う開閉バルブ6とから構成されている。
【0015】
この簡易散水装置をさらに詳しく説明すると、水タンク3は硬質合成樹脂製のタンクであって、約100リットルの水を収容することができる大きさを有しており、その上面に蓋体(図示せず)によって開閉可能な給水口3aを設けていると共に底面における前端側部に配管5の上端を連結、連通させる送水ポート3bを設けている。そして、この水タンク3はキャビンルーフ2a上にキャリア7と適宜な連結金具(図示せず)を介して固定される。このキャリア7はトラック1の上記キャビンルーフ2a上にそのキャリアステー7aを固着することによって積載、設置されているが、水タンク3の外底面に該キャリア7を一体に装着しておき、このキャリア7をそのステー7aを介してキャビンルーフ2a上に適宜な連結金具を介して固着してもよい。
【0016】
一方、散水バー4はトラック1の車体幅に略等しい長さを有する金属製の管体からなり、この散水バー4には長さ方向に一定間隔毎に下方に向かって斜め前方に開口している広角の噴霧ノズル8を取付けている。この散水バー4はトラック1の車体下端部におけるフロントバンパ9の下端部に沿って水平状に配設され、適宜な連結金具(図示せず)によって着脱自在に装着される。そして、上記全ての噴霧ノズル8には開閉弁等を設けることなくその上端部を散水バー4に直接、連通させた状態で取付けられていて、噴霧ノズル8に送水することによって該噴霧ノズル8から噴霧させるように構成している。
【0017】
この散水バー4の一端開口部と上記水タンク3の送水ポート3b間を連結、連通させる配管5は、塩化ビニルホース等の可撓性を有する軟質合成樹脂製のホースからなり、その長さ方向の中間部におけるキャビン内の運転席から手の届く位置に開閉操作可能な開閉コックからなるバルブ6を設けている。配管5はその上端開口部を上記水タンク3の送水ポート3bに連結、連通させると共にこの送水ポート3bからキャビン2におけるフロントウインドガラス10の一側端縁を支持したフロントピラー11とこのフロントピラー11から下方部のキャビン2の前面における一側端下部に沿って配設され、その下端を散水バー4の一端開口部に接続している。そして、上記フロントピラ11に沿って配設している配管部分に上記開閉コックからなるバルブ6を設けて、トラック1の停止時には散水停止、発進時には散水開始作業を運転席から直接、行えるようにしている。
【0018】
このように構成した簡易給水装置は、運送業者等が保有している多数台のトラック1におけるキャビン2のルーフ2a上にその水タンク3をキャリア7を介して積載、設置すると共に、該トラック1のフロントバンパ9の下端部に散水バー4を装着し、さらに、キャビン2の前面一側端に沿って該キャビン2の高さ方向に配管5を配設、固定して該配管5の上下開口端を上記水タンク3の送水ポート3bと散水バー4の一端開口部とにそれぞれ連結、連通させる。この際、配管5の長さ方向の中間部に設けている開閉バルブ6がキャビン2のフロントウインドガラス10の一側端縁を支持したフロントピラー11上に位置するように配管する。
【0019】
そして、上記トラック1が荷台上に荷物を積載して目的地に向かう際に、キャビンルーフ2a上の水タンク3に給水口3aを通じて給水し、満タン状態にする。この状態にして走行し、その走行中に水タンク3内の水を散水バー4の噴霧ノズル8から路面に噴射させることによって散水する。この場合、多数台のトラック1に対して、予め、それぞれのトラック1の走行予定道路における散水すべき区域を設定しておき、その区域の道路上を走行するトラック1から路面に散水するようにして市内等の道路を広域的且つ持続的に冷却し、ヒートアイランド現象を抑制する。
【0020】
散水操作は、トラック1が散水すべき所定の道路上に達した時に、運転手が運転席からサイドウインドガラス12を開放して手の届く位置に配設している上記開閉バルブ6を開放することにより行われる。開閉バルブ6を開放すると、水タンク3内の水が配管5内を通じて自然流下し、フロントバンパ9の下端部に装着している散水バー4内に流入してこの散水バー4に取り付けている複数個の噴霧ノズル8から路面に向かって噴射される。この際、水タンク3内の水はこの水タンク3と散水バー4との間の高さ(水頭)に相当した一定の噴霧圧でもって噴霧ノズル8から路面に噴射される。
【0021】
所定長の道路上に対する散水作業が終了すると、運転手が運転席から開閉バルブ6を閉止する操作を行って散水を停止させる。なお、散水バー4から散水する水の噴霧量は、噴霧ノズル等の口径等によって変化するが、通常、毎分4〜8リットル程度に設定される。また、散水バー4はトラック1のフロント側にのみ配設しているが、リア側の車体下端にも配設しておいてもよい。
【0022】
上記のように、トラック1のキャビン2側に装着した本発明簡易散水装置は、夏期において道路のヒートアテイランド現象を抑制するための散水装置として使用しているが、冬季における路面凍結防止用としても使用することができる。即ち、トラック1のキャビンルーフ2a上に積載、設置している水タンク3内に数%濃度の塩水を充満させておき、トラック1が所定の道路上を走行する際に、運転手が上記開閉バルブ6を開放することによって配管5を通じて塩水を自然流下させて散水バー4に取付けている噴霧ノズル8から路面に噴射させ、凍結温度を降下させて凍結防止を行うことができる。なお、本発明の簡易散水装置は、トラック以外に路面バス等の大型車両上に配設して路面に散水を行うように構成することもできる。
【0023】
また、水タンク3と散水バー4間を連結する上記配管5として、図3に示すように、配管5の管途中に後方に分岐した有底短筒形状の分岐凹部51を設けて上方の配管部5Aからこの分岐凹部51を介して下方の配管部5Bを前方に分岐させていると共に、上方の配管部5Aの開口端下方に位置する該分岐凹部51と下方の配管部5Bとの分岐部52における下部内周面を上方に向かって緩やかに湾曲した凸円弧状面53に形成し、この凸円弧状面53を有する分岐部52内に球体54を前後転動自在に配設して下方の配管部5Bの上端開口部と分岐凹部51の開口端とのいずれか一方を閉止し、他方を開放するように構成しておいてもよい。
【0024】
このように構成しておくと、トラック1が一定の加速力で発進、走行すると、球体54は慣性力によって凸円弧状面53を後方に転がり移動して分岐凹部51の開口端内に入り込み、従って、下方の配管部5Bの上端開口部が開放されて上方の配管部5Aから該配管部5Bを通じて散水バー4側に水タンク3内の水を流下させることができる一方、トラック1に一定の減速力を発生させると、球体54は前方に移動して下方の配管部5B側の上端開口部を閉止し、上方の配管部5Aからの連通を遮断して上方の配管部5A側に設けている上記バルブ6が開放しているにもかかわらず、散水を停止することができる。このため、トラック1を運転しながら路面に散水中において、運転手はバルブ6を開放したままにしておいても、交差点等において停止時には自動的に散水が停止され、発進時には散水を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の簡易散水装置を備えたトラックの簡略側面図。
【図2】その正面図。
【図3】配管構造の変形例を示す簡略縦断側面図。
【符号の説明】
【0026】
1 トラック
2 キャビン
2a キャビンルーフ
3 水タンク
4 散水バー
5 配管
6 開閉バルブ
7 キャリア
8 噴霧ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックのキャビンルーフ上に着脱自在に設置される水タンクと、トラックの車体下端部に着脱自在に装着される散水バーと、上記水タンクと散水バーとを連結、連通させる配管と、水タンクから散水バーへの水の流通の開放、遮断を行う開閉バルブとからなることを特徴とする簡易散水装置。
【請求項2】
トラックのキャビンルーフ上にキャリアを固着し、このキャリア上に金具を介して水タンクを積載、設置するように構成していることを特徴とする請求項1に記載の簡易散水装置。
【請求項3】
散水バーをフロントバンパの下端部に沿って装着する一方、水タンクからこの散水バーに連結、連通させる配管を可撓性ホースから形成すると共にこの配管の中間部に運転席から開閉操作が可能な開閉バルブを設け、水タンクと散水ノズル間の水頭差を利用して水タンク内の水を配管を通じて散水バーから噴霧させるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の簡易散水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−23660(P2007−23660A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209001(P2005−209001)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000235163)範多機械株式会社 (26)
【出願人】(505272733)
【Fターム(参考)】