説明

簡易施工カーペットタイルおよびビニルタイルとその連続製造方法およびその敷設方法。

【課題】敷設する床が粗面な材質や、埃などが付着している状態でも、床面を汚すことな
く簡易に施工でき、目地部分からの水や異物の浸入が軽減できるカーペットタイルおよび
ビニルタイルとその製造方法、敷設方法を提供すること。
【解決手段】平行に向かい合う二辺の側面に、厚み0.03mm以上の粘着層が形成され
たカーペットタイルおよびビニルタイルを市松敷きで敷設することにより、単位カーペッ
トタイルおよびビニルタイルが連結し、敷設後のズレが防止され、目地部分がシールされ
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工時に接着剤を床面に塗工しなくても簡易に施工でき、目地から水や埃の浸入を防ぐカーペットタイルおよびビニルタイルとその連続製造方法およびその敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーペットタイルおよびビニルタイルの施工方法として、敷設する床面に接着剤を塗工してカーペットタイルおよびビニルタイルを貼り付ける方法が行われているが、接着剤の塗工には熟練を要し、また、接着剤の廃缶が発生するという問題があり、さらに、接着剤が有する揮発性物質が害を及ぼすという問題点があった。また、接着剤が床面を汚すため、床の材質によっては接着剤を塗工できない場合があった。
【0003】
そこで近年、カーペットタイルおよびビニルタイル製造時に予め裏面に粘着剤や、滑り止めを加工することにより、床面に接着剤を塗工しなくても施工できる自己粘着性カーペットタイルおよびビニルタイルが知られている。
【0004】
このような自己粘着性カーペットタイルおよびビニルタイルは、2枚のカーペットタイルおよびビニルタイルの裏面どうしを張り合わせた状態で箱詰めされるため、施工時に、張り合わせたカーペットタイルおよびビニルタイルどうしが簡単に分離できることが要求される。
【0005】
そのため、特許文献1では2枚のカーペットタイルを張り合わせた時に粘着剤部分が互いに接触しないように、または、一部分のみが重なり合うように粘着剤が加工されている。また、特許文献2では粘着剤の組成により、この問題点に対応している。また、特許文献3では側面の少なくとも一部分に、粘着糊を塗布した糊付タイルが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−293902広報
【特許文献2】特開2001−329682広報
【特許文献3】特開平3−5562広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1および2の方法では、カーペットタイルの裏面に粘着剤層が形成されているため、箱詰め後の経時で、張り合わせたカーペットタイルどうしの分離に支障が生じ、さらには粘着剤層と床が接触するため、施工後の床への汚染という問題点があり、例えば木質床などには使用できなかった。さらに、このようにタイルカーペットの裏面へ粘着加工したものは、施工する床が粗面な材質や、埃などが付着している状態では、粘着力が著しく低下するため使用できなかった。
【0008】
特許文献3は、上記問題点に対して有効な方法ではあるが、[作用]の項で記述されている「該床タイルの側面を合わせて敷並べれば、粘着部分同士が粘着される」ためには、隣り合うタイルの側面の粘着部分が同じ位置で合致する必要があり、さらに四辺全部に粘着糊を加工しなければならないので、加工コスト的に満足のいくものではない。さらには、側面の一部分への粘着加工の場合は、敷設後の目地部分から水や埃が浸入して裏面にまわり、様々な支障を引き起こす。
【0009】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたもので、施工する床が粗面な材質や、埃などが付着している状態でも床面に接着剤を塗工することなく簡易に施工できて、箱詰めの際に裏面どうしを張り合わせた2枚のカーペットタイルおよびビニルタイルが施工時には簡単に分離でき、さらには、粘着剤が床を汚すことのなく、敷設後は目地部分から水や埃が入り難く、低コストで加工可能なカーペットタイルおよびビニルタイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、正方形のカーペットタイルおよびビニルタイルの四辺の側面のうち、平行に向かい合う二辺の側面に切れ目なく連続して粘着層が形成されていることを特徴とするカーペットタイルおよびビニルタイルで解決される。この粘着層の形成が平行に向かい合う二辺の側面であるため、連続製造が可能となる。さらに、隣り合う本発明のカーペットタイルおよびビニルタイルを互いに90度ずつ方向を変えて敷設する、いわゆる市松敷きで施工することによりすべての単位カーペットタイルが連結される。
【0011】
本発明に関わるカーペットタイルおよびビニルタイルの形状は、正方形であり、重ね合わせた側面の目地部分が合致することが要求される。
【0012】
本発明に関わるカーペットタイルおよびビニルタイルの側面の幅は、2.0mm以上が好ましい。
【0013】
本発明に関わるカーペットタイルおよびビニルタイルの裏面に形成される裏面材料層は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリアクリル樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、ニードルパンチ不織布など、特に制限はない。
【0014】
カーペットタイルおよびビニルタイルは高温再加熱により、寸法変化や反りや歪が生じるため、本発明に関わる粘着剤は80℃以下で乾燥、造膜できる水性エマルジョン系粘着剤であることが好ましい。水性エマルジョン系粘着剤は、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、合成ゴム、及びこれらの共重合体、混合体など、特に限定されない。さらに、発泡剤や発泡機によるフォーム加工であってもよい。
【0015】
また、目地部分の遮水性をより高めるためには、上記粘着層は耐水性または撥水性を有
することが好ましい。
【0016】
本発明に関わる粘着層の厚みは、0.05mm以上が好ましい。粘着層が薄すぎると隣
接するカーペットタイルおよびビニルタイルの側面への接着が劣り、充分な滑り抵抗強度や遮水性が得られない。
【0017】
本発明のカーペットタイルおよびビニルタイルは、単位カーペットタイルおよびビニルタイルを直列に隙間なく並べて走行させ、繋がった左右の二側面に粘着剤を連続して塗工することにより製造できる。塗布方法は、例えば、スクリーン法、グラビア法、ロールコート、転写法、ノズル押出し塗布、スプレー吹き付け、ドクターナイフコート、刷毛塗りなど、特に限定はないが、塗布厚みおよび塗布幅を制御できることが要求される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように、カーペットタイルおよびビニルタイルの四辺の側面のうち、平行に向かい合う二辺の側面に、厚み0.05mm以上の粘着層が切れ目なく連続して形成されており、そのカーペットタイルおよびビニルタイルが市松敷きで敷設されること
により個々の単位カーペットタイルおよびビニルタイルが連結され、床面に接着剤を塗工
しなくても滑り抵抗強度が確保され、簡易施工が可能となる。
【0019】
しかも、粘着層が裏面に形成されていないので、2枚のカーペットタイルおよびビニル
タイルの裏面どうしを重ね合わせて箱詰めしても何ら問題はなく、敷設する床が粗面な材質や、埃などが付着している状態でも、カーペットタイルおよびビニルタイルの滑り抵抗強度に影響はない。
【0020】
また、粘着層が床面に接触しないので、床を汚すこともない。
【0021】
さらに、カーペットタイルおよびビニルタイルの目地部分がシールされるため、目地部分から水や異物が浸入し、タイルの裏面にまわるという不具合を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態についてカーペットタイルを例に、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明のカーペットタイルの一実施形態を示す斜視図である。本発明に係るカーペットタイル1は四角形で、織物などにより形成される表面材料層2と、樹脂もしくはニードルパンチ不織布などにより形成される裏面材料層3を有し、この裏面材料層3の側面四辺のうち平行に向かい合う二辺の長さ方向に連続して粘着層4を形成したものである。
【0024】
本発明における図2のカーペットタイルを、市松敷きで敷設した時の単位カーペットタイルの連結状態は、図3に示すように、すべての単位カーペットタイルが連結され、個々の単位カーペットタイルの滑り抵抗強度が確保される。さらにすべての目地部分が粘着層でシールされるため、水や埃の浸入を防止する。
【実施例】
【0025】
次にカーペットタイルの実施例により、本発明を説明する。実施例における測定値は次のように行った。
【0026】
1.滑り抵抗試験
ズレ防止性、剪断強度の測定として、滑り抵抗試験を行い測定した。表材がナイロンパイルの織物で、裏材が厚み3mmのポリ塩化ビニルからなるカーペットタイルを15×15cmに裁断したものを試験試料とし、敷設床材に置き敷きして引っ張り試料とした。この引っ張り試料に隣接する三辺に、別の試験試料を市松敷きで密着させ、敷設床材に固定した。測定は、引っ張り試料に600gの垂直荷重を均一にかけて、引っ張り試料の開放された側から水平方向に引っ張った時の滑り抵抗力を測定した。敷設床材として、メラミン塗装木質板と未塗装木質板を使用した。
【0027】
2.目地部分の遮水性試験
20×20cmの試験試料二枚を、ガラス板に敷いた吸水紙の上に、市松様に側面を密着させて敷設し、二枚の目地部分に30gのマジックリン(花王株式会社)1%水溶液を
流し3分間放置後、目地を通過して吸水紙に吸収された水溶液の重量を測定した。
【0028】
3.粘着層の厚み測定
粘着層の断面を、25倍率のデジタルマイクロスコープ(KEYENCE製)で測定した。
【0029】
(実施例1)
15×15cm試験試料の縦方向の二側面に、アクリルエマルジョン系粘着剤を長さ15cm、幅2mmの範囲に切れ目なく連続して塗布し乾燥させ、0.01mm厚の粘着層が形成されたものを四枚作成して、そのうちの一枚を引っ張り試料として床材に敷設し、他の三枚を引張り試料の三辺に市松様に密着させて床材に固定した。この引っ張り試料を滑り抵抗試験試料とした。20×20cm試験試料の縦方向の二側面に、同様に粘着剤を塗布、乾燥し、0.01mm厚の粘着層が形成されたものを二枚作成し、市松様に密着させて遮水性試験試料とした。
【0030】
(実施例2)
実施例1と同様に、15×15cm試験試料に同粘着剤を塗布、乾燥し、0.02mm厚の粘着層が形成されたものを滑り抵抗試験試料とした。また実施例1と同様に、20×20cm試験試料に、0.02mm厚の粘着層が形成されたものを遮水性試験試料とした。
【0031】
(実施例3)
実施例1と同様に、15×15cm試験試料に同粘着剤を塗布、乾燥し、0.03mm厚の粘着層が形成されたものを滑り抵抗試験試料とした。また実施例1と同様に、20×20cm試験試料に、0.03mm厚の粘着層が形成されたものを遮水性試験試料とした。
【0032】
(実施例4)
実施例1と同様に、15×15cm試験試料に同粘着剤を塗布、乾燥し、0.05mm厚の粘着層が形成されたものを滑り抵抗試験試料とした。また実施例1と同様に、20×20cm試験試料に、0.05mm厚の粘着層が形成されたものを遮水性試験試料とした。
【0033】
(実施例5)
実施例1と同様に、15×15cm試験試料に同粘着剤を塗布、乾燥し、0.10mm厚の粘着層が形成されたものを滑り抵抗試験試料とした。また実施例1と同様に、20×20cm試験試料に、0.10mm厚の粘着層が形成されたものを遮水性試験試料とした。
【0034】
(比較例1)
実施例に使用したのと同品のカーペットタイルをそのまま15×15cmに裁断したものを滑り抵抗試験試料とした。同様に、20×20cmに裁断したものを遮水性試験試料とした。
【0035】
(比較例2)
市販の裏面糊付カーペットタイルNT−400(株式会社サンゲツ)を15×15cmに裁断したものを滑り抵抗試験試料とした。同様に、20×20cmに裁断したものを遮
水性試験試料とした。
【0036】
実施例1〜5および比較例1、2で得られた試験試料を用いて、滑り抵抗試験と目地部分の遮水性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、比較例1の通常カーペットタイルを置き敷きしたものは、滑り抵抗強度および遮水性において不十分であった。また、比較例2の裏面糊付カーペットタイルにおいては、表面が平滑な塗装床では滑り抵抗強度に効果がみられるが、表面が粗な未塗装床では強度の低下が起こった。また、目地部分の遮水性は比較例1と同様不十分であった。
【0039】
これに対し、実施例1、2は滑り抵抗強度および遮水性において、比較例と大差は見られず、実施例3で効果が現れ、実施例4、5では滑り抵抗強度および遮水性ともに顕著な効果が得られた。
【0040】
本発明は、以上のように、カーペットタイルおよびビニルタイルの四辺の側面のうち、平行に向かい合う二辺の側面に、厚み0.05mm以上の粘着層が切れ目なく連続して形成されており、そのカーペットタイルおよびビニルタイルが市松敷きで敷設されること
により個々の単位カーペットタイルおよびビニルタイルが連結され、床面に接着剤を塗工
しなくても滑り抵抗強度が確保され、簡易施工が可能となる。
【0041】
しかも、粘着層が裏面に形成されていないので、2枚のカーペットタイルおよびビニル
タイルの裏面どうしを重ね合わせて箱詰めしても何ら問題はなく、敷設する床が粗面な材質や、埃などが付着している状態でも、カーペットタイルおよびビニルタイルの滑り抵抗強度に影響はない。
【0042】
また、粘着層が床面に接触しないので、床を汚すこともない。
【0043】
さらに、カーペットタイルおよびビニルタイルの目地部分がシールされるため、目地部分から水や異物が浸入し、タイルの裏面にまわるという不具合を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、接着剤の廃缶がなくなり、床を汚すことなく、簡易にカーペットタイルおよびビニルタイルの敷設および除去ができるため、事務所や店舗のリニューアルが簡便となる。さらに、接着剤が有する揮発性物質の害がないため、一般家庭のフローリングへの敷設も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のタイルカーペットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のタイルカーペットにおいて、平行に向かい合う二辺の側面に粘着層を形成した場合の、正面図である。
【図3】図2のタイルカーペットの、市松敷きでの連結状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 単位タイルカーペット
2 表面材料層
3 裏面材料層
4 粘着層
5 パイル目の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方形のカーペットタイルおよびビニルタイルにおいて、四辺の側面のうち、平行に向かい合う二辺の側面の裏面材料層断面に、粘着層が側面の長さ方向に切れ目なく連続して形成されていることを特徴とする、カーペットタイルおよびビニルタイル。
【請求項2】
前記粘着層が0.05mm以上の厚みで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカーペットタイルおよびビニルタイル。
【請求項3】
前記粘着層が、80℃以下の温度で乾燥、造膜できる水性エマルジョン系粘着剤で形成されていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載のカーペットタイルおよびビニルタイル。
【請求項4】
カーペットタイルおよびビニルタイルを直列に隙間なく並べて走行させ、その側面に
粘着剤を連続して塗工していくことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカーペットタイルおよびビニルタイルの連続製造方法。
【請求項5】
隣り合うカーペットタイルおよびビニルタイルを、敷設時に互いに90度ずつ方向を変えて施工することを特徴とする、請求項1〜3に記載のカーペットタイルおよびビニルタイルの施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−281129(P2009−281129A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201417(P2008−201417)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(502450549)
【Fターム(参考)】