説明

米水飴の製造方法とこれを使用したジャム及びその製造方法

【課題】 ジャムやその他の食品材料に広く使用でき、植物繊維が多く、体に優しい米水飴の製造方法と、この米水飴を使用することで、加熱だけで所定の粘度と所定のBrixに調整可能なジャム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 採取された生の大麦を、浸漬、乾燥を繰り返し、発芽・発根させる工程と、前記発芽・発根させた大麦に所定温度の温水を加えて破砕する工程と、米、もち米又は玄米或いは稗、粟を蒸す工程と、前記蒸した米、もち米又は玄米或いは稗、粟に、前記破砕した生の大麦を破砕して加えて攪拌する攪拌工程と、その後、保温容器で所定時間保温する工程とを備え、米水飴1を製造する。さらに、前記米水飴1を加熱殺菌する工程と、Brixを計りながら所定のBrix値まで煮詰めて、ジャムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、採取された生の大麦を発芽・発根させて製造する米水飴の製造方法とこれを使用したジャム及びその製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
ジャムとは、果実や果汁に含まれているペクチンに糖類と酸が作用して、ゼリー状に柔らかく固まる作用を利用した加工食品である。原料となる果物にペクチンが不足している場合、ペクチンを補うことでゼリー化させる。酸が不足している場合、商業生産の現場ではクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などを、家庭ではレモン果汁、酸味の強いリンゴ(紅玉など)などを加える。原料果実の風味を残すため、無加熱の超高圧下で調理し加える砂糖の量を少なくしたものも流通している。なお、完成したときに果実の原型が比較的保たれているものは、プレザーブ(preserve)という。オレンジやレモンなどの柑橘類を原料とし、果皮が含まれているものは特にマーマレード(marmalade)という(以上は、ウイキペディアを引用)。本願明細書中のジャムには、プレザーブ(preserve)とマーマレード(marmalade)を含む。
このようなジャム、特に市販されているジャムには、砂糖を多く使用したものが多い。
【0003】
このため、健康志向が叫ばれる今日、砂糖の量を減らすために、砂糖の代わりに水飴を使用したジャムが開発されている。水飴(みずあめ)は、デンプンを酸や糖化酵素で糖化して作られた粘液状の甘味料である。古くは、玄米を発芽させ、玄米中の糖化酵素を利用して製造されていたが、時代が下ると、発芽玄米より効率の良い麦芽が糖化酵素の供給源として利用されるようになり(麦芽水飴)、現在では、デンプンに酸を加え、加水分解して作られている(酸糖化法)。還元水飴というものもあるが、これは水飴を加工した糖アルコールを主成分とする甘味料であり、水飴ではない。酸糖化法で製造された水飴は、無色透明でほぼ水分と糖質しか含まないが、麦芽水飴は原料に由来するミネラル分がわずかに含まれ風味を有し、蜂蜜に似た琥珀色をしている。この色が飴色の由来である(以上は、ウイキペディアを引用)。
【0004】
特許文献としては、高糖化還元水飴を添加することによって、低カロリー、低甘味ですっきりした味質を持つなどの効果を有するジャムが開示され(特許文献1)、この特許文献の中には、製造例1として、「還元水飴(ソルビトール46%、マルチトール50%、マルトトリイトール3%、デキストリンアルコール類1%)を10g(固形分換算)用い、これを固形分濃度99%に調製し、結晶種として特開2002−253167の実施例3記載の方法で調製した粉末還元水飴を4g添加し、80℃で約5分練合し、50℃の恒温室に保存した。24時間後、結晶化した本品を室温に取り出し、冷却後、乳鉢で粉砕し、乾燥したところ、粉末還元水飴13.5gを得た。この結晶粉末は室温に放置しても固結せず流動性を有し安定であった。そして、実施例1として、「イチゴ果汁200gに、糖質を固形分換算で180g、ペクチン6g、クエン酸1g、香料0.2g、水200gを添加し、Brix40になるまで煮詰めてイチゴジャムを調製した。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−61131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように、水飴を使用したジャムと呼ばれるものも製造されてはいる。水飴を使用したジャムは、上記特許文献にもあるように、低カロリー、低甘味ですっきりした味質を持つなどの効果を有する。これは、言い方を変えると、水飴を使用したジャムは、粘性がでないことを意味する。すなわち、ジャムは、上記のようにそのゼリー状(所定のBrix)に特徴を有するものであるが、水飴を使用すると、一般にゼリー状にすることと所定のBrixにすることが難しくなる。そこで、従来の水飴を使用したジャムでは、一般的に「増粘多糖類=ゲル化剤」を添加して粘度を保つ製法が多いことによる。なお、Brix(ブリックス)は、溶液中の固形分濃度を表す目盛名である。単位は「%」または「度」。 主に食品産業、ワイン、精糖、果実農業などで、ショ糖濃度(糖度)を表す際に用いられる。
しかしながら、健康志向の点から、せっかく水飴を使用したにもかかわらず、「増粘多糖類=ゲル化剤」を添加して粘度を保つ製法や、着色したりすると、体に優しい食品の追求と言う意味では、満足したものとは言えない。また、水あめでは、ジャム製造の際の加熱調整が難しい。
【0007】
一方、種種様々な食品が開発される中で、ジャムや水飴と言われるものにも変化が生じており、水飴の例では、和菓子のつや出しや照り焼きのてり出し等や、保湿目的で使われる等、食材への応用の広がりをみせている。マクロビオティックでは砂糖の代わりに甘味料として使われることが多く、海外での需要も高まっている。ジャムについても、その用途の広がりを有するが、これらの要因から、粘性の程度にも広がりを見せている。
したがって、水飴としては、体に優しい自然形のもので(食品添加物を含まず。)、種種様々な用途に使用し得る状態で提供することが望まれるところであり、さらに栄養価が高いことが理想的である。種種様々な用途に使用し得る状態で提供するためには、特にその使用用途に応じたジャムとしての粘度(とろとろ感)と所定のBrixにすることが重要であるが、それを温度調整だけで行なうことは難しく、従来は、「増粘多糖類=ゲル化剤」を添加して粘度を保つ製法で行なっている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ジャムやその他の食品材料に広く使用でき、植物繊維が多く、体に優しい米水飴の製造方法(有機製法を活かした製造方法)と、この米水飴を使用することで、加熱だけで所定の粘度と所定のBrixに調整可能なジャム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、大麦麦芽(生モルト)を使用すると、植物繊維が多く、酵素の活性化が大きく表れることと、米、もち米、又は玄米或いは稗、粟を糖化してできた糖を使用しており、植物繊維が多く、これにより粘性を調整し易く(とろとろ感を調整し易い)、ジャム等として使用するときに、所定の粘度に調整し易い米水飴の製造方法と、所定の粘度で所定のBrixが得られ易いやすいジャム及びその製造方法を見出し、本願発明を完成させた。また、水飴の場合と比較して、上記米水飴のほうが、ジャム類の製造に粘度やBrix値や色(琥珀色)の点等でも好適であることを見出して、本願発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本願発明の米水飴の製造方法は、採取された生の大麦を、浸漬、乾燥を繰り返し、発芽・発根させる工程と、前記発芽・発根させた大麦に所定温度の温水を加えて破砕する工程と、米、もち米又は玄米或いは稗、粟のうちの少なくとも1種を蒸す工程と、前記蒸した米、もち米又は玄米或いは稗、粟に、前記破砕した生の大麦を破砕して加えて攪拌する攪拌工程と、その後、保温容器で所定時間保温する工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、大麦の種子中には不活性の糖化酵素(アミラーゼ)が多量に含まれており、発芽・発根によって酵素が活性化される。これによって、種子中の澱粉質が糖化され麦芽糖が生成される。大麦を発芽・発根させることで澱粉質の糖化という有用な化学反応が容易に得られる。また、米、もち米、又は玄米或いは稗、粟のうちの少なくとも一種を糖化してできた糖を使用しており、植物繊維が多く、これにより粘性を調整し易く(とろとろ感)を調整し易い。玄米は、植物繊維が豊富になり、もち米を使用すると、味が甘く濃くなるとともに、粘性を出しやすい。玄米の代わりに、稗や粟を用いても良い。また、粟と稗を混合したものを使用したり、これらを白米やもち米に混合させても良い。
ここで、乾燥大麦を使用した場合と、本願発明の大麦麦芽(生モルト)を使用した場合とを比較検討すると、乾燥大麦を使用すると、乾燥させた大麦の皮の味が残り苦味をのこすことと、粘度を出し難かった。また、生モルトを使用したほうが、琥珀色(飴色)が映え、透明感も併せて有するものであるのに対して、乾燥した大麦を使用した場合は、琥珀色(飴色)が出し難く、透明感にも劣るものとなった。
すなわち、前記保温容器内で所定時間保温した後、こし布を使用してろ過すると、琥珀色(飴色)が映え、透明感も併せて有する米水飴が製造できる。
【0011】
本発明としては、前記破砕する工程の所定温度の温水の温度が30〜50℃であり、前記蒸し工程で蒸したものを保温容器で50〜65度で保温することを特徴とする。前記保温容器内で50〜65度で保温するためには、発泡スチロール容器で密閉させ、温度を維持させると良い。これにより、ジャムの製造方法において、とろとろ感(粘性)の調整が加熱による簡単な方法で実現できる。
【0012】
本発明の米水飴を使用したジャムの製造方法は、前記米水飴を加熱殺菌する工程と、Brixを計りながら所定のBrix値まで加熱して、ジャムを製造する。
本発明によれば、上記保温容器で所定時間保温しているので、Brixを計りながら所定のBrix値まで煮詰めて、ジャムを製造する。すなわち、殺菌等のために、再度十分に加熱する必要は無い。
ここで、米水飴として使用する場合は、ろ過の必要性があるが、米水飴ではなくジャム等に使用する場合は、ろ過の必要も無く、ろ過をしないことで、更に食物繊維が多い米水飴をジャムの糖類として使用する。なお、ろ過をするとしても、布によるろ過で十分である。このような製造方法で製造される米水飴ジャムは、その前提とする米水飴が生モルトや米等を蒸しているので、糖化や粘度を一定に保つような製法を取り入れられており、加熱だけで「とろとろ感」を調整することが容易である。煮詰めるようにしてしまうと、味の上で好ましくない。
【0013】
本発明の米水飴を使用したジャムの製造方法は、前記米水飴を加熱して前記所定の粘度(とろとろ感)と所定のBrix値になるように調整して、その後、味を確認してから、リンゴやオレンジやブルーベリー等の果実を投入し混合し、その後、所定時間熟成させることを特徴とする。ここで、一般的には、加熱殺菌(例えば95℃以上で1時間)して、果実を加える製造方法が主流であるが、本発明によれば、果実はなるべくその形を残すようにして加える(プレザーブ:preserve)。これは有機農産物をそのまま使用することを消費者にアピールする意味もあるが、栄養価(植物繊維等)をできるだけ残す意味でもある。
本発明によれば、浸透圧作用で、果実から出る水分が米水飴に、米水飴からでる糖を果実に移すことができ、これにより栄養価(植物繊維)の高いジャムが製造される。そして、前記所定温度で維持される米水飴を使用しているので、リンゴやオレンジやブルーベリー等の果実を投入して、加熱で調整するだけで良い。
【0014】
本発明としては、前記米水飴を加熱して、所定のBrix値と所定の粘度(とろとろ感)になるように調整して、味を確認してから、イチゴ等の果実を投入し混合し、その後、所定時間熟成させて製造されることを特徴とする米水飴を使用したジャムである。
本願発明のジャムによれば、植物繊維が多く、これにより粘性を調整し易く(とろとろ感を調整し易い)、ジャム等として使用するときに、所定の粘度に調整し易い米水飴の製造方法と、所定の粘度で所定のBrixが得られ易いジャムが製造できる。
このような米水飴を使用したジャムとしては、前記米水飴の麦芽糖が糖全体の50%以上であり、前記ジャムとしての前記果実を加える前の所定のBrix値が75以上であることを特徴とする。
本発明によれば、体に優しい米水飴であり、種種の食材に使用でき(砂糖の代わりとして)、本発明の米水飴からは、加熱だけで所定の粘度と所定のBrixに調整可能なジャムで、低甘味ですっきりした味質を持つジャム類となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の米水飴によれば、米、もち米、又は玄米或いは稗、粟のうちの少なくとも一種を糖化してできた糖を使用しており、植物繊維が多く、体に優しく、これにより、米水飴としての特性である粘性を調整し易く(とろとろ感)を調整し易いものとなる。生モルトを使用することで、有機製法を活かした製造方法である。したがって、ジャム類のみならず、広く食材に利用することができる。
また、本発明の米水飴を使用したジャムの製造方法は、前記米水飴を加熱して前記所定の粘度(とろとろ感)になるように調整して、Brixや味を確認してから、イチゴ等の果実を投入し混合し、その後、所定時間熟成させるので、栄養価をできるだけ残すことができるとともに、前記米水飴からでる糖を果実に移すことができ、これにより栄養価の高いジャムが製造される。そして、前記所定温度で維持される米水飴を使用しているので、食物繊維が多く、体に優しい米水飴の製造方法と、この米水飴を使用することで、加熱だけで所定の粘度と所定のBrixに調整可能なジャムが製造できる。果実は、有機農産物をそのまま使用することと、栄養価をできるだけ残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態の米水飴の製造方法と米水飴を使用したジャム及びその製造方法を示す工程フロー図である。
【図2】本発明の一実施の形態の生モルトを使用して製造した米水飴と比較例の乾燥モルトを使用して製造した米水飴をビン詰めした状態で写真撮影して比較する図である。
【図3】本発明の一実施の形態の米水飴のレオメーターを用いた付着強度試験の様子とその方法を説明する図である。
【図4】本発明の一実施の形態の米水飴のレオメーターを用いた付着強度試験の結果をグラフ化した図である。
【図5】本発明の一実施の形態の米水飴のレオメーターを用いた付着強度試験の結果をグラフ化した図である。
【発明の実施の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(米水飴の製造方法)
本願発明の米水飴の製造方法は、図1に示すように、採取された生の大麦を、浸漬、乾燥を繰り返し、発芽・発根させる工程(A−1、A−2)と、米、もち米又は玄米或いは稗、粟を蒸す工程(B−2)と、前記発芽・発根させた大麦に所定温度の温水を加えて破砕する工程(C−1)と、前記蒸した米、もち米又は玄米或いは稗、粟に、前記破砕した生の破砕した大麦を加えて攪拌する工程(C−2)と、その後保温容器で所定時間保温する工程(C−3)とを備えることを特徴とする。
大麦は、六条大麦を使用したが、二条大麦等を使用しても良い。これらの大麦を水に浸け発芽させる。大麦の種子中には不活性の糖化酵素(アミラーゼ)が多量に含まれており、発芽によって酵素が活性化される。これによって、種子中の澱粉質が糖化され麦芽糖が生成される。大麦を発芽させる事で澱粉質の糖化という有用な化学反応が容易に得られることから水飴の製造に古くから用いられてきた。麦芽糖は、エネルギー源になり、血糖値を上げ、中性脂肪蓄積をするなどの作用や、また、便秘の改善、冷え性解消、高血圧改善、疲労回復等の効果もあると言われている。
【0019】
ここで、大麦は、採取された生の大麦(生モルト)でも乾燥モルトでも良いが、これら両者を比較すると、酵素の活性化が大きく現れ、生モルトの方が植物繊維の含有量に優れ、粘度(とろとろ感)も出し易い。50℃のときのBrix,70℃のときのBrixを測り、その結果、白米やもち米の場合は、50℃〜60℃であり、玄米や稗や粟の場合はこれよりもやや高い60℃〜65℃の範囲が最適であると発見した。ここで、65℃で30分程度で雑菌は死滅することが知られており、他方、65℃以上にすると、発酵菌まで死滅させるおそれが高い。
本実施の形態の米水飴ジャムの最大の特徴は、製品に含まれる糖の原点=マルトースにある。麦芽糖(マルトース)の効能としては、吸収が早いエネルギー源となる。
麦芽糖は、大麦を発芽させ、湯を加えることによってデンプンが糖化されたものに多く含まれることから麦芽糖といわれています。ビール作りに欠かせない糖である。麦芽糖は、ブドウ糖が2分子結合した二糖類です。甘味は砂糖よりも劣るが、旨みが強いのが特徴である。二糖類は唾液中の消化液アミラーゼによって加水分解され、胃を通過するまでにさらに分解され、小腸で消化酵素により分解され単糖類になって吸収される。
比較例として、80℃で12時間乾燥させた乾燥モルトを使用して、米水飴とこれを用いたジャムを製造した。なお、
【0020】
また、米、もち米、又は玄米或いは稗、粟のうちの少なくとも一種を糖化してできた糖を使用する。米ともち米とを比較すると、もち米の方が粘度(とろとろ感)もだし易い。一方、玄米を使用すると、米やもち米よりも植物繊維等の栄養が豊富になる。これらは、二種以上混ぜて使用しても良い。なお、透明感の高い米水飴を製造する場合は、米やもち米を使用して、ろ過工程を追加して、製造するが、ジャムの製造工程に引き継がれることから、ろ過工程は必ずしも必要ではない。
【0021】
本発明としては、前記所定温度の温水の温度が30〜50℃であり、前記蒸し工程で蒸したものを保温容器で50〜65度で保温する。前記保温容器内で50〜65度で保温するためには、発泡スチロール容器で密閉させ、温度を維持させると良い。発泡スチロール容器は、大麦の採取や、生モルトの製造(浸漬と乾燥の繰り返し)等でも使用するので、重宝である。
本実施の形態では、生モルトを使用する場合、乾燥モルトの場合よりも、とろとろ感(粘性)の調整が簡単な方法で実現できるとともに、高い活性力を得ることができる。
【0022】
(米水飴を使用したジャムとその製造方法)
果実を入れないジャムの場合は、本発明の米水飴を使用したジャムの製造方法は、前記米水飴を加熱殺菌する工程と、Brixを計りながら所定のBrix値まで煮詰めて、ジャムを製造する。
本発明によれば、上記保温容器で所定時間保温しているので、Brixを計りながら所定のBrix値まで煮詰めて、ジャムを製造する。すなわち、殺菌等のために、再度加熱する必要は無い。また、米水飴ではなくジャム等に使用する場合は、ろ過の必要も無く、むしろ、ろ過をしないことで食物繊維が多い米水飴をジャムの糖類として使用する。このような製造方法で製造される米水飴ジャムは、米を糖化・煮詰めて粘度を一定に保つような製法を取り入れており、「とろとろ感」を調整することが容易である。
【0023】
イチゴやリンゴやオレンジやブルーベリー等の果実を入れるジャムの場合は、本発明の米水飴を使用したジャムの製造方法は、前記米水飴を加熱して前記所定の粘度(とろとろ感)になるように調整して、Brixや味を確認してから、イチゴ等の果実を投入し混合し、その後、所定時間熟成させる。
ここで、一般的には、加熱殺菌(例えば95℃以上で1時間)して、果実を加える製造方法が主流であるが、本発明によれば、果実はなるべくその形を残すようにして加える。これは有機農産物をそのまま使用することと、栄養価をできるだけ残す意味でもある。
本発明によれば、浸透圧作用で、果実から出る水分が米水飴に、米水飴からでる糖を果実に移すことができ、これにより栄養価の高いジャムが製造される。そして、前記所定温度で維持される米水飴を使用しているので、リンゴやオレンジやブルーベリー等の果実を投入して、加熱で調整するだけで良い。すなわち、米水飴を使用することで、Brixの調整と粘度(とろとろ感)調整が行いやすく、このため後は加熱調製でジャムのBrixの調整と粘度(とろとろ感)調整が可能である。一方、煮込み過ぎると調製をすると、焦げ付いたり、Brixの調整と粘度(とろとろ感)調整が行ない難くなる。
【0024】
本発明としては、前記米水飴を加熱して前記所定の粘度(とろとろ感)になるように調整して、Brixや味を確認してから、イチゴ等の果実を投入し混合し、その後、所定時間熟成させて製造される、米水飴を使用したジャムである。
本願発明によれば、植物繊維が多く、これにより粘性を調整し易く(とろとろ感を調整し易い)、ジャム等として使用するときに、所定の粘度に調整し易い米水飴の製造方法と、所定の粘度で所定のBrixが得られ易いやすいジャムが製造できる。
【実施例1】
【0025】
米水飴を使用してイチゴジャムを最終的にビン詰めでの100g製造するために、次のように製造した。
(米水飴の製造方法)
畑から採取した有機大麦(六条大麦)を2日2晩(48時間)浸水させる。すなわち、水と空気中の酸素で活性化させて大麦を発芽・初根させる。浸水した有機大麦を乾燥、浸水を繰り返し、発芽・発根させる(A−2)。気温(季節)によって温度や回数が変わるが、7月の30度の炎天下で2日間乾燥させた。このように製造した大麦生モルトを所定温度の温水の温度が40℃で測った所定温度の温水を加えてミキサーで破砕した(C−1)。なお、30〜50℃くらいの所定温度の温水を加えてミキサーで破砕しても良い。大麦を5600g使用した。水は、50℃から60℃で10L使用した。
【0026】
次に、前記蒸し工程で蒸したものを保温容器で50〜60℃で保温する。白米の場合は、温度を確かめて50〜65度に保つことが重要であり、後述する玄米や粟や稗を使用する場合はこれよりもやや高めの55℃から65℃に維持することが好ましい。
50℃以下だと糖化速度が鈍くなり65℃以上だと糖化が止まるからである。鍋等を使用すると、1時間半〜2時間おきに様子を見ながら温めなおしするような必要があるが、50〜60℃くらいを目処に維持する。
本実施の形態では、「みつひかり 2005」を10Kg使用した。「みつひかり 2005」は、コシヒカリの血を引く品種で、粘りと甘味が強い米である。本実施の形態では、白米(うるち米)よりも、もち米を使用したほうが、粘性が出しやすく、又、より高い糖度(Brix)が得られることがわかった。
「みつひかり 2005」を使用した本実施の形態では、写真で示すように、琥珀色をした米水飴1が製造されたが、比較例としての乾燥モルトを使用した米水飴2は、濁ったような状態(リンゴジュースのような色)になった。また、比較例としての乾燥モルトを使用した米水飴2は、本実施の形態のものと比較して、苦く、粘度(とろとろ感)も劣るものであった。また、生モルトを使用したほうが、琥珀色(飴色)が映え、透明感も併せて有するものであるのに対して、比較例では、琥珀色(飴色)が出し難く、透明感にも劣るものとなった。これは乾燥モルトの皮が残っているためであると考えられる。
表2は、「プロスキー法」で表示する。「プロスキー法」とは、栄養表示基準で一般の食品に用いる方法で、五訂(増補)日本食品標準成分表で用いた方法がプロスキー変法と呼ばれ、水溶性と不溶性食物繊維を分別して定量する方法である。分析結果の表4で、「大」と表示されているものが、本実施の形態であり、「小」と表示されているものが、比較例である。
【0027】
【表2】

【0028】
次に、 米(「みつひかり 2005」)を使用した本実施の形態と、比較例としての他社(T社:水あめとしては老舗の商品)の米水飴としての「なめらかさ」を比較した。人の食感でも、本実施の形態の方がなめらか感が認識されたが、レオメーターを使用した実験結果(図3から図4参照)においても、本実施の形態の米水飴1は、図4と図5において、マイナス側の最大応力(N)が付着強度である。付着強度が上記T社に比較して約27倍小さく、なめらかな食感が得られることが明らかになった。
なお、ろ過は、こし布を使用したが、比較例のほうは乾燥モルトの皮が残っているために、ろ過作業が難しくなるのに対して(余り目が細かくいと詰まって大変)、本実施の形態では、比較例と比較してろか作業が容易であった。なお、最初に荒いこし布とざるで漉し、さらに目の細かい布巾で沈殿物をろ過しても良い。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
なお、水あめとして製造販売する場合は、ろ過工程が必要になる。透明感を出すためには、膜ろ化が好ましいが、本実施の形態では、簡易な布によるろ過で行なった。これは、琥珀色を出すことに優れることと、植物繊維を除去しないようにすることと、作業の簡素化を考慮したものである。
【0032】
(米水飴ジャムの製造方法)
米水飴プレーン(果実なし)の製造する場合、透明な米水飴を製造するために、白米、又は、もち米を使用して、上記した製造方法で製造して、ここでは、ろ過・圧搾作業を行なった(D1)。膜ろ過により、透明感を出した米水飴プレーン(果実なし)の製造することも可能である。この場合は、白米、又は、もち米が透明感を出し易いため好ましい。
【0033】
(米水飴ジャムの製造方法Z2)
果実としてイチゴを使用して果実入りジャムを製造した。
ろ過・圧搾した液を釜に入れて加熱・殺菌する(D2−1)。加熱・殺菌温度=95℃以上、時間=1時間以上である。丁寧にアクを取り、同時に底に残る細かいモルト粕も取る。そして、Brixを計りながら、決められたBrix値までゆっくり煮詰める。Brixと同時にとろとろ感(とろみ)、味の確認する。そして、果実(イチゴ)を釜に投入し、1時間ねかせる。このようにして製造された本実施の形態の米水飴ジャムの成分の検査結果を表6に示す。そして、このように本実施の形態の製造方法では、果実(イチゴ)を釜に投入し、1時間ねかせるだけで製造可能である。
【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
(米水飴ジャムの製造方法Z2)
果実としてブルーベリーを使用して果実入りジャムを製造した。
すなわち、イチゴの場合と同じようにして、果実(ブルーベリー)を釜に投入し、1時間ねかせる。このようにして製造された本実施の形態の米水飴ジャムの成分の検査結果を表8に示す。このように本実施の形態の製造方法では、果実(イチゴ)を釜に投入し、1時間ねかせるだけで製造可能である。
【0037】
【表7】

【0038】
このようにして製造された本実施の形態の米水飴ジャムは、米水飴を使用したことで、Brix値に比べてあっさり感じられる。その原因は、多くのジャムが多糖類を使用しているのに対して、本発明の製品(米水飴ジャム)は、米水飴から抽出された「マルトース=麦芽糖」という二糖類が糖全体の50%以上占めているからである(表1)。表1において、マルトースの糖構成比54%は、ジャムとしては特徴的である。
【0039】
【表1】

【0040】
また、市販品と比較してBrix値が76と高いことが分かる(表8)。表8から植物繊維が多いことが分かる。なお、エネルギーが高いがこれは植物繊維が多いことが原因と考えられる。表8において、Q社とC社の商品には、Brixの検査を行なっていない。
以上の表から、本実施の形態のジャムは、エネルギーがあるにもかかわらず、甘味が抑えられすっきりした味質を持つとともに、粘性が出易くゼリー状(所定のBrix)にし易く、ジャム類に好適である。また、本願の米水飴に有機栽培の果実を添加すると、比較例と比較して、イチゴやリンゴやオレンジやブルーベリー等の各々果実の色合いが、より十分に醸し出された。
【0041】
【表8】

【0042】
ここで、本発明を適用した実施形態として、イチゴジャムとブルーベリーのジャムを製造したが、リンゴやオレンジやトマトなどにも同じように製造可能である。加熱力による調整だけで、これら以外にも製造可能である。
【0043】
(実施例2)
次に、玄米を使用した場合と、稗や粟を使用した実施例について説明する。これらの場合、上記使用する水の量を上記実施例1の場合よりも多くした(水は、50℃から60℃で10L以上使用した。)。また、前記保温容器内の温度は上記実施の形態の場合よりもやや高い60℃から65℃に維持するようにすると良い。玄米等の場合、水も保温温度も白米やもち米の場合よりも、水も温度も高くすることが好ましい。このようにして、上記実施例1とほぼ同じようなジャムが製造できた。
【符号の説明】
【0044】
1 本実施の形態の米水飴、
2 比較例の米水飴



【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取された生の大麦を、浸漬、乾燥を繰り返し、発芽・発根させる工程と、前記発芽・発根させた大麦に所定温度の温水を加えて破砕する工程と、米、もち米又は玄米或いは稗、粟のうちの少なくとも1種を蒸す工程と、前記蒸した米、もち米又は玄米或いは稗、粟のうちの少なくとも1種に、前記破砕した生の大麦を破砕して加えて攪拌する攪拌工程と、その後、保温容器で所定時間保温する工程とを備えることを特徴とする米水飴の製造方法。
【請求項2】
前記破砕する工程の所定温度の温水の温度が30〜50℃であり、前記蒸し工程で蒸したものを保温容器内で50〜65℃で保温することを特徴とする請求項1記載の米水飴の製造方法。
【請求項3】
前記保温容器内で所定時間保温した後、こし布を使用してろ過することを特徴とする請求項1又は2記載の米水飴の製造方法。
【請求項4】
前記米水飴を加熱殺菌する工程と、
Brixを計りながら所定のBrix値まで加熱して、ジャムを製造することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の米水飴を使用したジャムの製造方法。
【請求項5】
前記米水飴を加熱殺菌する工程と、
所定のBrix値と所定の粘度になるように加熱調整して、味を確認してから、イチゴ、リンゴ、オレンジやブルーベリー等の果実を投入し混合し、その後、所定時間熟成させて製造することを特徴とするジャムの製造方法。
【請求項6】
イチゴ、オレンジ、ブルーベリーなどの果実を加えて、再度加熱して、果実の殺菌と、ジャムとしての粘度とBrix値を所定の値に加熱調整することを特徴とする請求項5記載のジャムの製造方法。
【請求項7】
前記米水飴の麦芽糖が糖全体の50%以上であり、前記ジャムとしての前記果実を加える前の所定のBrix値が75以上であることを特徴とする請求項5又は6記載の米水飴を使用したジャム。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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