説明

米粉麺

【課題】 原料として米粉を用い、食感に優れた麺を、簡便な方法で提供する。
【解決手段】 α化米粉を5〜25重量%含む米粉に、水を加えて混合混練した生地を製麺し、米粉からなる麺を得る。食感の向上を目的に、もち米の粉を、全体の重量の中で、5〜15重量%となるように加えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料として米粉を用いた麺類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の食糧自給率は、農林水産省の統計によると、平成20年度で、カロリーベースで41%、生産額ベースで65%ということで、極めて低い水準で推移している。しかも、前記の数字から推定できるように、我が国における食糧生産コストは、主な食糧輸出国に比較すると、構造的に高いという問題がある。
【0003】
加えて、現時点では、食糧の輸入に特段の支障が顕在化していない状態であるが、長期的に見ると、今後は世界的な食糧不足が懸念されている。この問題に対処するには、現在、後継者難などの理由で耕作されずに放置されている農地や、休耕田を、必要なときにいつでも耕作可能な状態に維持することが焦眉の急であると言える。
【0004】
ところが、我が国の従来の主食である米に目を向けると、消費者の需要の多様化や人口減に伴い、米の消費量が減少傾向にあり、放置されている農地の増加を助長しているのが実情である。
【0005】
このような事態への対処を目的として、米の消費を拡大するために、学校給食に米飯を使用するなどの方策が実施されたり、米を粉末化して、米飯以外の用途への適用が検討されたりしている。そして、後者の用途開発の一環として米粉を用いた麺類が、注目されている。
【0006】
近年になって米粉が注目されている理由の一つに、例えば麦に比較すると、米は粒が硬く、粉にすることが困難であったのが、対応可能な装置が開発されたことによる。しかしながら、米粉を麺にするには、米元来の特性により、粘着力が不足し、製麺が困難であるという問題がる。
【0007】
これを解決する手段として、特許文献1には、玄米から精米した乾燥状態の米を粉砕または磨砕して得られる原料に、水または湯を加えて捏ね、麺生地を調製する方法が開示されている。また、特許文献2には、麺の表層のみを糊化する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの方法では、加工性が低かったり、調製方法が複雑であったりして、米粉を用いた麺の製造方法としては、なお改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開2006−304674号公報
【特許文献2】 特開2007−174911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、原料として米粉を用い、食感に優れた麺を、簡便な方法で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特許文献2には、麺の表層のみを糊化、即ち、α化することが開示されている。この現象は、デンプンを含む食品に水や熱を加えて処理すると、デンプン分子の水素結合のネットワークが崩壊してゲル状になることによるもので、粘りが発現する要因となる。本発明者らは、これを利用して前記課題の解決方法を検討した結果、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
即ち、本発明は、水を除く原料において、α化米粉を5〜25重量%含むことを特徴とする米粉麺であり、さらに、もち米を、水を除く原料全体の重量の中で、5〜15重量%となるように加えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、α化した米粉を通常の米粉に混合することにより、水を加えて練る際に、粘りが発現し、製麺が可能となる。ここでα化した米粉を混合する比率を5〜25重量%に限定したのは、5重量%未満の比率では、十分な粘りが発現せず、製麺が不可能となり、25重量%を超える比率のα化米粉を混合しても、α化米粉を混合する効果の増加が認められなくなるからである。
【0014】
また、本発明においては、5〜15重量%の範囲でα化したもち米粉を加えてもよいが、これは、もち米を加えることで、麺の食感が滑らかになるからである。もち米粉を加える比率を前記のように限定した理由も、5重量%未満では、その効果が十分に現れず、15重量%を超える比率では、効果の増加が認められなくなるからである。なお、本発明で用いるもち米も、その少なくとも一部にα化したものを用いてもよい。
【0015】
また、本発明においては、『つなぎ』のために小麦粉を加える必要ながないので、アレルギー障害により麺類を摂取できない人にも、本発明の麺類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
150メッシュの粒度に調製したうるち米の粉、常法によりα化を施し、やはり150メッシュの粒度に調製したうるち米の粉、250メッシュに調製したもち米の粉、及び水を表1の実施例に示した比率で秤量し、十分に混合混練し、製麺用の押出機を用いて製麺したところ、何ら支障なく製麺が可能であった。しかしながら、同じく表1の比較例に示したように、α化したうるち米の比率を3重量部としたものでは、『ボソボソ』で、製麺が不可能であった。
【0018】
【表1】

【0019】
また、表1には特に示さなかったが、もち米としてアα化したものを用いた場合も同様の効果が得られた。しかも、実施例に示した原料は、一昼夜放置した後でも製麺が可能であった。これはα化した米の保水性に起因すると解される。
【0020】
以上に説明したように、本発明によれば、米粉を原料とした麺類を容易に得ることができ、米の消費量拡大、ひいては我が国の農業保全に寄与することができる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化米粉を、5〜25重量%含む米粉に、水を加えて得られることを特徴とする米麺
【請求項2】
もち米を、5〜15重量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の米麺

【公開番号】特開2011−177160(P2011−177160A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61488(P2010−61488)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(506383456)日本蕎麦街道株式会社 (6)
【Fターム(参考)】