説明

米飯改良剤

【課題】米飯の本来の食感や、風味に極力影響を与えることなく、米飯に効果的にほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与する米飯の品質改良剤、該品質改良剤を用いた米飯類の製造方法、及び該米飯類の製造方法を用いたほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性を向上させた米飯類を提供すること。
【解決手段】米飯の炊飯製造に際して、米飯の品質改良剤として、置換型加工澱粉を加水分解或いは低分子化により、30質量%水溶液における粘度が15mPa・s以上、10質量%水溶液における粘度が3000mPa・s以下の粘度範囲に調整した置換型加工澱粉を加えることにより、米飯に、ほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与するとともに、米飯の本来の食感、風味の米飯を製造する。置換型加工澱粉分解物としては、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉Naの置換型加工澱粉を基材とした分解物を挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非油脂系、非蛋白系、非酵素系の米飯品質改良剤に関し、特に米飯の本来の食感や、風味に極力影響を与えることなく、米飯に効果的にほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与する米飯の品質改良剤、該品質改良剤を用いた米飯類の製造方法、及び該米飯類の製造方法を用いたほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性を向上させた米飯類に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯の製造は、外食産業の増加や無菌包装技術の進歩、冷凍食品の増加等により、工場での一括生産が多く見られるようになってきた。米飯製品を大量製造する際には、炊き上がった米飯をほぐれやすくして成型や計量を容易にしたり、機械に付着するのを防いだりといった機械適性の向上のために、澱粉質や糖質、乳化剤等を加えた炊飯用油や、油脂と水を乳化剤によって乳化させた乳化油脂、更には卵黄等の蛋白製剤などが添加される場合が多い。該澱粉質や糖質としては、マルチトール、蔗糖、トレハロース、デキストリン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストガム、タラガム、ペクチン、水溶性ヘミセルロースなどが用いられ、乳化剤等を加えた炊飯用油や、油脂と水を乳化剤によって乳化させた乳化油脂には、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、蔗糖脂肪酸エステルなどのような乳化剤が用いられる。
【0003】
例えば、澱粉質や糖質を添加して、米飯のほぐれ性を改善する例としては、デキストランを添加するもの(特開2005−328728号公報)、大豆多糖類に、トレハロース、マルチトール、蔗糖等の少糖類を添加するもの(特開2006−238758号公報)、澱粉分解酵素と、トレハロース、ペクチン等を添加するもの(特開2001−275589号公報、特開2003−52319号公報)、難消化デキストリン及びペクチンを添加するもの(特開平9−75022号公報)、及び水溶性ヘミセルロースを添加するもの(特開平6−121647号公報)などが開示されている。
【0004】
特開2002−65184号公報には加工澱粉を含有する米飯用ほぐれ改良剤が開示されている。この米飯用ほぐれ改良剤は非油脂系であるため、油脂系ほぐれ剤の添加で米飯の食感が硬くなったり、食味が油っぽくなったりするなどして、ほぐれ改良剤の添加により、米飯の食味、食感に悪影響を及ぼすことを避けうる点では改善されているが、しかしながら、この方法では、一定の改善は見られるものの、満足のいくほぐれの程度を効果的に得ることは依然として困難であるという問題を残している。また、特開2007−228834号公報には、アミラーゼと増粘多糖類若しくは寒天を配合してなる、澱粉性食品用品質改良剤が開示されている。しかしながら、これらの組み合わせだけでは、いずれも米飯の食感が硬くなったり、ヌルついたり、また原料の風味が米飯の風味に悪影響を与える等の問題があり、特においしい米飯を求められている現在の市場には適していない。
【0005】
また、油脂に乳化剤を加えた乳化油脂を米飯のほぐれ性改善に用いる例としては、例えば、乳化剤として、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いるもの(特開2004−65216号公報)、ジアセチル酒石酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸モノグリセライドを用いるもの(特開2004−49065号公報)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステルを用いるもの(特開2009−82025号公報)などが開示されている。
【0006】
更に、蛋白製剤などを米飯のほぐれ性改善に用いる例としては、卵黄又は全卵のホスホリパーゼ処理物を脂質中に分散させた米飯のバラケ性改善剤(特開2004−41046号公報、特開2005−295957号公報)等が開示されている。その他、アルギン酸類の分解物を米飯のほぐれ性の改良剤として用いるもの(特開2006−296259号公報)が開示されている。
【0007】
一方、米飯類の品質改良剤として、特に米飯の老化防止のために用いられる品質改良剤が開示されている。例えば、特開平9−215476号公報には、クエン酸塩と糖アルコールを含む、米飯の澱粉の老化を抑制する品質改良剤が、特開2001−17099号公報には、醸造酢、砂糖のような糖類、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、プルラン、タマリンドガムなどのような増粘剤からなる低温保存における老化防止のための米飯の品質改良剤が開示されている。これらの品質改良剤は、老化防止の効果を得られたとしても、米飯の食味への影響が避けられず、米飯の用途によっては、適合しない面がある。
【0008】
また、老化防止を目的とし、米飯を改質する目的で各種加水分解酵素を添加する方法も知られている。例えば、特開平7−31396号公報には、米飯類の老化防止を目的として、澱粉分解酵素としてのアミラーゼと蛋白分解酵素としてのパパインの組み合せに、加工澱粉を配合した米飯類の品質改良剤が、特開2007−228834号公報には、アミラーゼと、増粘多糖類若しくは寒天を配合した米飯等の品質改良剤が、特開平10−234320号公報には、トレハロースとアミラーゼを含有する米飯の劣化、老化を防止するための米飯用品質改良剤が開示されている。しかしながら、米飯の製造工程において酵素製剤を加えることは、炊飯時の温度及びpHの制御、酵素自体の品質の制御、更には酵素製剤計量制御等により、最終製品の品質を制御する必要があり、できるなら避けたい手法である。
【0009】
以上は、炊飯後の米飯を無菌密封して製造される一般的な無菌包装米飯用の米飯改良剤に関する従来技術であるが、炊飯と無菌包装を兼ねて製造される加圧加熱殺菌米飯(いわゆるレトルト米飯)用の米飯改良剤も検討されている。レトルト米飯は、生米と水をレトルト処理することによって製造されるが、このようにして製造された米飯は、餅様の板状となり、ほとんどほぐれず、通常の米飯とは程遠いものとなる。
【0010】
このほぐれ性を改善するための技術として、例えば、レトルト処理工程の昇温時間を通常以上(30分以上)とすることにより均一で粒感のあるレトルト米飯を製造する方法(特開2006−158233号公報)、原料米を一部糊化し、冷却した後、レトルト殺菌する方法(特開平6−303926号公報)等が開示されているが、いずれも工程が複雑で、既存の設備をそのまま適用できない場合がある。また、ヤーコン又はキクイモの塊根部及び抽出物を混合するレトルト米飯の製造方法(特開2006−67824号公報)、マンナンを添加し、レトルト加熱することにより、実質的に遊離水なくして、飯粒の内容物が流出しないように安定化させたレトルト米飯を製造する方法(特開平9−84535号公報)等も開示されているが、それぞれ米飯の呈味性及び食感に悪影響を及ぼすことは避けられない。
【0011】
以上のように、今までに米飯類のほぐれ性の改善や、老化防止を目的とした多くの各種品質改良剤が開示されている。しかし、米飯は炭水化物と水分を主体としており、その味は淡白であるが故に飽きがこず、毎日食することができるという特徴を有する反面、その味覚や食感は繊細であり、ほぐれ性の改善や老化防止のための改良剤として、効果的なほぐれ性や老化防止のための改良効果を付与することが可能な蛋白や油脂、乳化剤等の添加は、米飯の淡白な味を損なってしまうことになりかねない。また、一方で、米飯の味覚や風味への影響を極力抑えようとすると、効果的な改善効果が得られないということにもなる。したがって、これらを両立できる米飯の品質改良剤の開発が望まれるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−121647号公報。
【特許文献2】特開平6−303926号公報。
【特許文献3】特開平7−31396号公報。
【特許文献4】特開平9−75022号公報。
【特許文献5】特開平9−84535号公報。
【特許文献6】特開平9−215476号公報。
【特許文献7】特開平10−234320号公報。
【特許文献8】特開2001−17099号公報。
【特許文献9】特開2001−275589号公報。
【特許文献10】特開2002−65184号公報。
【特許文献11】特開2003−52319号公報。
【特許文献12】特開2004−41046号公報。
【特許文献13】特開2004−49065号公報。
【特許文献14】特開2004−65216号公報。
【特許文献15】特開2005−295957号公報
【特許文献16】特開2005−328728号公報。
【特許文献17】特開2006−67824号公報。
【特許文献18】特開2006−158233号公報。
【特許文献19】特開2006−238758号公報。
【特許文献20】特開2006−296259号公報。
【特許文献21】特開2007−228834号公報。
【特許文献22】特開2009−82025号公報。
【特許文献23】特開2005−295957号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、米飯の本来の食感や、風味に極力影響を与えることなく、しかも、米飯に効果的にほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与する米飯の品質改良剤、該品質改良剤を用いた米飯類の製造方法、及び該米飯類の製造方法を用いたほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性を向上させた米飯類を提供すること、特に、非油脂系、非蛋白系、非酵素系の米飯品質改良剤を用い、米飯に効果的に、ほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与するとともに、米飯の本来の食感や、風味を保持した優れた食感、風味の米飯を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、米飯の本来の食感や、風味に極力影響を与えることなく、しかも、米飯に効果的にほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与する米飯の品質改良剤について、非油脂系、非蛋白系、非酵素系の米飯品質改良剤の開発を目的に鋭意探索する中で、酸による加水分解処理、酸化剤による低分子化処理、或いは、酵素による加水分解処理等により、特定の粘度範囲に調整した置換型加工澱粉の分解物を米飯の品質改良剤として用いることにより、米飯に効果的に、ほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与するとともに、米飯の本来の食感や、風味を保持した優れた食感、風味の米飯を製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、30質量%水溶液における粘度が15mPa・s以上、10質量%水溶液における粘度が3000mPa・s以下である置換型加工澱粉の分解物を含有することを特徴とする米飯にほぐれ性、老化防止及び/又は保水性改良効果を付与する米飯の品質改良剤からなる。
【0016】
すなわち、本発明者は、米飯の風味や食感などの品質への影響のある油脂や蛋白、乳化剤といった、非炭水化物系の素材を用いることなく、また炊飯工程で不確定因子となり得る酵素製剤を用いることもなく、製造時の機械適性を改善し、また米飯を保存した際に発生する好ましくない老化臭を抑え、米飯の瑞々しさを保つような米飯改良剤を開発すべく、鋭意探索する中で、置換型加工澱粉を加水分解或いは低分子化により、特定の粘度範囲に調整した置換型加工澱粉を米飯の品質改良剤として使用することによって、上記要求を満足できる米飯の品質改良剤を提供できることを見出した。すなわち、本発明者らは、置換型加工澱粉を加水分解或いは低分子化により、特定の粘度範囲に調整した置換型加工澱粉を加えて炊飯を行うと、驚くべきことに加工澱粉単体を加えるよりもはるかにほぐれに代表される機械適性が改善されることを見出した。同時に米飯特有の老化臭を抑え、米飯の瑞々しさが保たれていた。しかも、米飯の本来の味覚には殆ど影響を与えることがなく、優れた食味、食感の米飯を提供できることを見出した。更に、該加工澱粉分解物に、増粘剤を添加することにより米飯改良剤の効果は更に高められることを見出した。
【0017】
本発明において、米飯の品質改良剤として用いられる置換型加工澱粉分解物としては、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉Naからなる群から選択される一種類以上の置換型加工澱粉を基材とした分解物を挙げることができる。該置換型加工澱粉分解物は、置換型加工澱粉を、酸による加水分解処理、酸化剤による低分子化処理、或いは、酵素による加水分解処理することにより調製することができる。
【0018】
また、本発明においては、置換型加工澱粉分解物に加えて、増粘剤を含有させた米飯の品質改良剤として提供することができる。かかる増粘剤としては、キサンタンガム、グアーガム、ガディガム及びカラギーナンから選択される1種以上の増粘多糖類を、好ましい増粘剤として挙げることができる。かかる場合の置換型加工澱粉分解物と増粘剤との比率は、1:1〜100,000:1であることが好ましい。
【0019】
本発明は、米飯類の炊飯製造に際して、本発明の米飯の品質改良剤を添加、混合することにより、ほぐれ性、老化防止及び/又は保水性を向上させた米飯類の製造方法の発明を包含する。かかる場合の米飯の品質改良は、米飯類の炊飯製造に際して、本発明の米飯の品質改良剤を生米に対して0.1〜10重量%混合して炊飯することにより行うことができる。また、米飯の品質改良を、米飯類の炊飯製造に際して、本発明の米飯の品質改良剤を、炊飯後の白飯に対して0.1〜10重量%混合することにより行うことができる。本発明において、米飯類としては白飯、塩飯又はすし飯を挙げることができる。
【0020】
本発明は、本発明の米飯類の製造方法によって製造された、ほぐれ性、老化防止及び/又は保水性を向上させた米飯類の発明を包含する。該米飯類の1つとしては、生米と水をレトルト処理することによって製造されるレトルト米飯を挙げることができる。
【0021】
すなわち具体的には本発明は、[1]30質量%水溶液における粘度が15mPa・s以上、10質量%水溶液における粘度が3000mPa・s以下である置換型加工澱粉の分解物を含有することを特徴とする米飯にほぐれ性、老化防止及び/又は保水性改良効果を付与する米飯の品質改良剤や、[2]置換型加工澱粉分解物が、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉Naからなる群から選択される一種類以上の置換型加工澱粉を基材とした分解物であることを特徴とする上記[1]に記載の米飯の品質改良剤や、[3]置換型加工澱粉分解物が、置換型加工澱粉を、酸による加水分解処理、酸化剤による低分子化処理、或いは、酵素による加水分解処理することにより調製されたものであることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の米飯の品質改良剤や、[4]置換型加工澱粉分解物に加えて、増粘剤を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の米飯の品質改良剤からなる。
【0022】
また、具体的には本発明は、[5]増粘剤が、キサンタンガム、グアーガム、ガディガム及びカラギーナンから選択される1種以上の増粘多糖類であることを特徴とする上記[4]に記載の米飯の品質改良剤や、[6]置換型加工澱粉分解物と増粘剤との比率が、1:1〜100,000:1であることを特徴とする上記[4]又は[5]に記載の米飯の品質改良剤や、[7]米飯類の炊飯製造に際して、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の米飯の品質改良剤を添加、混合することを特徴とするほぐれ性、老化防止及び/又は保水性を向上させた米飯類の製造方法や、[8]米飯類の炊飯製造に際して、米飯の品質改良剤を生米に対して0.1〜10重量%混合して炊飯することを特徴とする上記[7]に記載の米飯類の製造方法からなる。
【0023】
更に本発明は、[9]米飯類の炊飯製造に際して、米飯の品質改良剤を、炊飯後の白飯に対して0.1〜10重量%混合してなることを特徴とする上記[7]に記載の米飯類の製造方法や、[10]米飯類が白飯、塩飯又はすし飯であることを特徴とする上記[7]〜[9]のいずれか一項に記載の米飯類の製造方法や、[11]上記[7]〜[10]のいずれか一項に記載の米飯類の製造方法によって製造されたことを特徴とするほぐれ性、老化防止及び/又は保水性を向上させた米飯類や、[12]米飯類が、レトルト殺菌されていることを特徴とする上記[11]に記載の米飯類からなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、米飯の本来の食感や、風味に極力影響を与えることなく、しかも、米飯に効果的にほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与する米飯の品質改良剤、該品質改良剤を用いた米飯類の製造方法、及び該米飯類の製造方法を用いたほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性を向上させた米飯類を提供することができる。
【0025】
本発明の米飯改良剤は、米飯に対して炭水化物系の素材を加えることになるので味や風味に対する影響は最小限に抑えることができる。一方で、従来の非油脂系、非蛋白系、非酵素系の米飯品質改良剤の問題点であったほぐれ性等の改善効果を効果的に付与することができ、米飯の大量製造時の作業性を大幅に向上させることができる。また、ほぐれ性を向上させる効果は、おにぎりや寿司のシャリ玉の適度なほぐれにも貢献する。また本発明の米飯改良剤は米飯の老化臭を抑える効果もある。
【0026】
本発明の米飯改良剤は、無菌包装米飯及びレトルト米飯の製造にも適用でき、特に、従来、その製造が困難であった、生米を直接加圧加熱するレトルト米飯を容易に製造することが可能となる。このようにして得られる長期保存可能な無菌包装米飯やレトルト米飯は、レンジや湯煎等で再加熱して喫食でき、また、温水、調味液、スープ等を加えてほぐすことで手軽にお茶漬け、雑炊等への加工が可能であり、非常食としても有用である。加えて、本発明で用いる加工澱粉はレジスタントスターチ(難消化性デンプン)としても知られているため、本発明の米飯改良剤を用いることにより、有益な生理機能、例えば整腸効果や血糖値上昇抑制効果、コレステロール値の低減効果、低GIや低カロリーといった、副次的な効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、置換型加工澱粉を、酸による加水分解処理、酸化剤による低分子化処理、或いは、酵素による加水分解処理することにより、30質量%水溶液における粘度が15mPa・s以上、10質量%水溶液における粘度が3000mPa・s以下である置換型加工澱粉の分解物を含有する、米飯にほぐれ性、老化防止及び/又は保水性改良効果を付与する米飯の品質改良剤からなる。また、本発明は、該品質改良剤を用いた米飯類の製造方法、及び該米飯類の製造方法を用いたほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性を向上させた米飯類からなる。
【0028】
(米飯の品質改良)
本発明の米飯の品質改良は、後述の置換型加工澱粉分解物を、米飯の炊飯製造時に添加することにより行われる。米飯の品質改良剤は、炊飯時又は炊飯後に添加することができる。炊飯時に添加する場合の最適添加量は、対生米で0.1〜10%であり、添加量がこれより少ないと十分な効果が得られず、多いと米飯のほぐれが良くなりすぎ、米飯としての価値が損なわれてしまう。また、米飯改良剤は炊飯後の米飯に混和しても良く、例えばすし飯を作る際に、すし酢に予め混ぜておいて使用することができる。この時の最適添加量は対米飯で0.1〜10%であり、添加量がこれより少ないと十分な効果が得られず、多いと米飯のほぐれが良くなりすぎ、米飯としての価値が損なわれてしまう。
【0029】
また置換型加工澱粉分解物に、キサンタンガム、グアーガム、及びカラギーナンのような増粘剤を併用することで、米飯の品質改良効果を高めることができる。増粘剤の添加量は、置換型加工澱粉分解物と増粘剤の比率1:1〜100,000:1を採用することができ、該増粘剤の添加で米飯の品質改良効果を発現することができる。特に、本発明では増粘多糖類の割合が極めて微小でもその効果が得られる。本発明の米飯の品質改改良剤を用いるに際しては、本発明の米飯の品質改改良剤の効果を損なわない範囲で、油脂系、蛋白系、酵素系の米飯改良剤を併用しても差し支えない。すなわち、各種油脂、油脂系製剤、蛋白質系製剤、糖質・糖アルコール系製剤、乳化剤、pH調整剤、有機酸・有機酸塩系製剤、無機酸・無機酸塩系製剤、酵素製剤等を本発明の米飯改良剤に、単独又は組み合わせて併用することができる。具体例としては、ラクトアルブミン等の各種蛋白質の酵素分解物、オリゴ糖、還元オリゴ糖、クエン酸塩、各種糖質分解物、ソルビトール、マルチトール、トランスグルタミナーゼ、ポリフェノール酸化酵素等を上げることができる。
【0030】
(原料澱粉)
本発明の米飯の品質改改良剤の調製には、置換型加工澱粉を、酸による加水分解処理、酸化剤による低分子化処理、或いは、酵素による加水分解処理することにより、特定の粘度に調整した置換型加工澱粉分解物が用いられる。該置換型加工澱粉分解物の基材となる置換型加工澱粉の原料澱粉としては、自然界に見出される天然澱粉、或いは、交雑育種、転座、逆位、形質変換、またはそれらの変形を含むあらゆる他の遺伝子工学又は染色体工学の手法を含む標準的育種技術により得られた植物に由来する澱粉、或いは、人工的突然変異、及び既知の標準的な突然変異育種方法により生産することが可能な植物により得られた澱粉を用いることができる。該原料澱粉の代表的な供給源は、穀類、塊茎、根、豆果及び果物である。天然源の具体例として、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、米、サゴ、アマランス、タピオカ、カンナ、モロコシ、及びそれらの糯種又は高アミロース品種を挙げることができるが、特に好ましい原料澱粉としては、タピオカ澱粉及び糯種澱粉を挙げることができる。
【0031】
(加工澱粉分解物)
本発明に使用する置換型加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等のいずれの加工澱粉でもよく、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉Naが例示され、このうちの一種類以上を含有するものであれば良い。特に好ましくはヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉Naより選ばれる何れかの置換型加工澱粉を、置換型加工澱粉分解物の基材として挙げることができる。また、本発明において、置換型加工澱粉には、食用澱粉加工に認められている加工、例えば酸処理、アルカリ処理、漂白処理、酵素処理、アルファー化処理、焙焼処理、湿熱処理といった処理を併用しても差し支えない。
【0032】
本発明で使用する置換型加工澱粉加水分解物とは、置換型加工澱粉を何らかの方法で分解し、粘度を低下させたものを指称し、具体的には、置換型加工澱粉を微量の塩酸、硝酸などの酸と共に粉末状で焙焼する焙焼デキストリン、置換型加工澱粉懸濁液に硫酸、塩酸などの酸や次亜塩素酸ソ−ダなどの酸化剤を添加して、粒子状のままで加工澱粉を低分子化した可溶性澱粉、蓚酸、塩酸などの酸を添加して加熱し、澱粉を糊化して低分子化したもの、或いは、αアミラーゼやβアミラーゼ等で加水分解した酵素分解物、及びこれらを水素添加した還元物、などが例示される。形態的には液状、又は噴霧乾燥、或いはドラム乾燥した粉末状であってもよい。また、可溶性澱粉は乾燥時ドラムドライヤ−を用いてα化し冷水可溶性としたものでもよい。更に、溶解性を向上させるために造粒などの物理的処理等によって溶解しやすい形態に加工されたものでもよい。
【0033】
(加工澱粉分解物の粘度)
本発明においては、粘度が、30質量%水溶液において15mPa・s以上、10質量%水溶液において3000mPa・s以下の範囲に属する加工澱粉の分解物を使用する。参考までに、市販のデキストリンでDE(Dextrose Equivalent:ぶどう糖の還元力を100とした場合の、試料の還元力)が20程度のものに関する30質量%の粘度は概ね10mPa・s未満であり、一般的な未加工の澱粉は10質量%において数万mPa・s程度と高粘度を呈する。粘度がこの範囲にない置換型加工澱粉の分解物では本発明の効果が十分に発揮し得ない。すなわち、粘度が30質量%水溶液において15mPa・s未満の置換型加工澱粉分解物を用いた場合には、ほぐれ効果を得る事ができなくなり、また、10質量%水溶液において、3000mPa・s超の置換型加工澱粉分解物を用いた場合には、逆に結着力を増し、ほぐれ効果とは逆の効果を示す傾向となる。
【0034】
(粘度の測定)
本発明において、30質量%水溶液の粘度は、固形分換算で60gの該当試料を内容量200mlのビ−カ−に秤取し、水を加えて合計量を200gとし、試料が冷水可溶の場合はそのまま溶解し、熱水可溶の場合は90℃まで昇温後冷却し、蒸発水分補正後、B型回転粘度計によって30℃の粘度を測定した値として表示される。また、10質量%水溶液の粘度は、固形分換算で20gの該当試料を同ビーカーに秤取し水を加えて合計量を200gとし、以下30質量%水溶液の粘度の測定の場合と同様に測定した値として表示される。
【0035】
(増粘剤)
本発明の米飯改良剤に用いる増粘剤は、一般の飲食品に対して増粘やゲル化を目的として添加される、糊料、増粘剤、ゲル化剤、寒天及び増粘多糖類が例示される。増粘多糖類の具体例として、キサンタンガム、ペクチン、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドガム、ジェランガム、ガディガム、サイリウムシードガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、カラヤガム、プルラン、カルボキシメチルセルロース、カードラン、グルコマンナン等が挙げられる。これらの増粘剤は一種又は二種以上を組み合わせて用いている。本発明においては、特にキサンタンガム、グアーガム、カラギーナン及び/又はガディガムを用いた場合に米飯改良の効果が大きい。
【0036】
(米飯類)
本発明において、米飯に使用される米は粳米が望ましいが、粳米の一部、若しくは全部を糯米に置き換えて、強飯としてもよい。また稗、粟、麦、大麦、胡麻といった米飯の栄養強化を主な目的として使用されている各種雑穀類を適宜加えても差し支えない。
【0037】
本発明でいう米飯類には、味付けをしない白飯、塩やふりかけ等を用いて塩味をつけた塩飯、加水量を増加した白粥、梅、シャケ、玉子等を加えた各種お粥、酢、砂糖、みりん、出汁等が添加されたすし飯等に加え、出汁、醤油、酒、みりん、酢、香料等の各種調味液、塩、砂糖、コショウ等の各種粉末調味料や小豆やササゲ豆といった豆類、野菜、山菜、魚介類、玉子、肉類、加工肉類など各種具材を適宜、炊飯前、もしくは炊飯後に混ぜた炊き込みご飯や混ぜご飯、ピラフ、チャーハン、リゾット類、赤飯や各種おこわ類、更には炊飯後の白飯に前述の各種調味液、各種粉末調味料、各種具材を適宜加え、加熱調理した調理米飯、お茶漬け、雑炊等が含まれる。これらの米飯類の形態としては、給食、弁当、無菌包装パック、レトルトパック、缶詰等が例示されるが、これらに限定されない。この際、各種ふりかけ、お茶漬けの素、雑炊の素等を予め混合するか別添として添えることもできる。
【0038】
また、各種の栄養強化剤や市販の米飯改良剤を併用することもできる。例えば、食物繊維を増強する目的で、難消化性デキストリンやポリデキストロース等を炊飯前、もしくは炊飯後に加えてもよい。またマンナンライス等のこんにゃく米や、スターチライス等の人造米、アルファー化米等に用いても差し支えない。このようにして得られる米飯類は常温、冷蔵、冷凍のいずれの形態でも保存可能であり、喫食時には必要に応じてレンジアップ等の再加熱を行うことも可能である。本発明において、最適な米飯類は、白飯、塩飯、すし飯である。これらの米飯類に本発明の改良剤を配合すれば、ほぐれが良くなるという特性から、おにぎりや寿司用のすし飯、カレー用のご飯として特に好適である。
【0039】
次に、実施例、比較例、試験例により本発明を具体的に説明するが、これら実施例によって本発明が限定されるものではない。以下の実施例、比較例、試験例において他に明記しない限り、「部」は「質量部」である。
【実施例】
【0040】
[比較例1]
水130部に硫酸ソーダ20部、ワキシコーン澱粉100部を加えたスラリーを用意し、これに攪拌下3%苛性ソーダ水溶液30部、オキシ塩化リン0.1部を加え40℃で1時間反応した。得られた試料にプロピレンオキサイド10部を加え、40℃で20時間反応した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して比較剤1を得た。
【0041】
[比較例2]
水130部に硫酸ソーダ20部、タピオカ澱粉100部を加えたスラリーを用意し、これに攪拌下3%苛性ソーダ水溶液30部、プロピレンオキサイド10部を加え、40℃で20時間反応した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して比較剤2を得た。
【0042】
[実施例1−2]
比較剤1及び2の、固形物100部を水200部に懸濁し、加熱攪拌しながら、それぞれ大和化成株式会社製のαアミラーゼ(製品名:クライスターゼKM)0.15部を常法によって作用させ、米飯改良剤1,2を得た。
【0043】
[実施例3]
30℃の水125部にワキシコーン澱粉100部を分散した澱粉乳液を調製し、撹拌下で3%水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを8〜9に維持しながら、無水オクテニルコハク酸3部を添加し、澱粉乳液のpHが変化しなくなるまで反応した後、5質量%硫酸溶液で中和し、水洗後脱水した。脱水ケーキを水に分散させてボーメ18の澱粉乳液とし、澱粉乳液のpHが6±0.2になっていることを確認した後、大和化成製のα−アミラーゼ(クライスターゼL1)を澱粉に対して、0.1%添加し、85℃まで昇温後30分間保持し、澱粉を液化した。10%塩酸水溶液を投入してpHを3.5まで低下して酵素を失活させ、10%苛性ソーダ水溶液で中和し、活性炭で脱色後、噴霧乾燥し、米飯改良剤3を得た。
【0044】
[比較例3]
ワキシーコーン澱粉固形物100部を水200部に懸濁し、加熱攪拌しながら、大和化成株式会社製のαアミラーゼ(製品名:クライスターゼKM)0.15部を常法によって作用させ、比較剤3を得た。
【0045】
[比較例4]
タピオカ澱粉100部、水130部のスラリーを3%苛性ソーダ溶液でpH8.0に調整した。これに次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素として13%)を23部加えて、pHを維持しながら4時間反応させ、塩酸で中和、水洗、脱水、乾燥して比較剤4を得た。
【0046】
[比較例5]
馬鈴薯澱粉100部、水130部のスラリーを3%苛性ソーダ溶液でpH8.0に調整した。これに次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素として13%)を38部加えて、pHを維持しながら4時間反応させた。塩酸で中和、水洗、脱水、乾燥して比較剤5を得た。
【0047】
[比較例6]
ワキシ−コ−ン澱粉4.5kgをパドルドライヤ−(株式会社奈良機械製作所製、容積10L)に採り、攪拌しながら1%塩酸水溶液160gを噴霧し、攪拌混合して均一化した後、60℃に加温して水分含量7.5%に予備乾燥し、加熱温度を115℃にして25分間加熱処理を行った。得られた試料100部に水120部を加えて懸濁液とし、3%苛性ソ−ダ水溶液でpH10に調整した。これに次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素として13%)を3部加えて、pHを維持しながら、1時間処理した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して比較剤6を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例4]
市販の無洗米(きらら397)2合(300g)を手早く洗米し、十分量の水で室温にて30分浸漬した。得られた米の水分をザルで切り、表1に示す米飯改良剤及び比較剤を1.5g添加混合して加水し、総重量を810gとして、家庭用の電気炊飯器で自動炊飯を行った。得られた炊飯米は釜から取り出し、しゃもじで全体をほぐしつつ均質になるようかき混ぜた。水分が飛ばないようにラップをし、常温まで冷ましてから、炊飯米の評価を行った。対照例として添加剤のない炊飯米を設定し、参考例として本発明の米飯改良剤に代えて、市販の米飯改良剤である三栄源エフ・エフ・アイ製の大豆食物繊維(SM700)1.5gを添加した炊飯米もあわせて評価した。評価は、ほぐれ、ねばり、硬さについて、官能検査による10段階評価で行った。評価の数値は、大きいほど、ほぐれが良い、粘りが強い、ご飯が硬い、とした。
【0050】
米飯改良剤1〜3、比較剤1〜6の原料澱粉、加工方法、粘度データ、並びに評価結果を表1に示した。米飯改良剤1〜3はほぐれも良く、ご飯としての総合的な評価も問題ないものと判断された。一方比較剤1〜5はほぐれの改善効果はあまりなく、実際に食べた時に、通常のご飯とは異なる食感となり、ご飯としては違和感があるものとなった。比較剤6は対照例に近く、添加によるほぐれの改善効果はほとんど認められなかった。市販の米飯改良剤は、ほぐれの効果は高く、炊飯米の食感も良好だったものの、炊飯米の外観が弱い褐色を呈し、製品価値を損なってしまっていた。
【0051】
[実施例5]
実施例4の方法に従って米飯改良剤1の添加量を変えて炊飯試験を行った。表2の結果から、添加量を0.5〜2%の範囲で増減させた場合でも炊飯米のほぐれは改善されていた。
【0052】
【表2】

【0053】
[実施例6]
実施例4の方法に従って炊飯試験を行うに当り、生米に対して0.2%の米飯改良剤1及び表3に示す増粘剤1〜3を0.05%添加して同様の評価を行った。結果を表4に示した。増粘剤を併用することで、増粘剤の種類にかかわらずほぐれの改善効果が見られた。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
[実施例7]
実施例4の方法に従って炊飯試験を行うに当り、米飯改良剤1の添加量を対生米0.2%又は0.5%とし、増粘剤1を対生米0.000005%〜0.1%添加したものを同様に評価した。比較例として増粘剤1のみを対生米0.004%又は0.0004%添加したものを評価した。各々の添加量と評価結果を表5に示した。実施例では増粘剤の併用効果により、いずれも炊飯米のほぐれが改善した。一方、増粘剤のみの比較例ではほぐれの改善は全く見られなかった。
【0057】
【表5】

【0058】
[実施例8]
実施例4の方法に従って炊飯試験を行うに当り、米飯改良剤1の添加量を対生米0.5%、増粘剤1の添加量を対生米0.0003%とし、炊飯加水量を510g(生米300gに対する加水倍率1.7倍)又は540g(同1.9倍)としたものを、同様に評価するとともに、炊き上がりの炊飯米重量の生米量に対する比率を重量増加倍率として算出した。対照例として通常の炊飯米(生米に対する加水倍率1.7倍)又は過剰な加水の炊飯米(同1.9倍)における重量増加倍率を同様に計算した。結果を表6に示した。改良剤1及び増粘剤1を添加した場合は、適度なほぐれと自然な粘りの良好な炊飯米が得られ、炊飯米の重量も増加した。
【0059】
【表6】

【0060】
[実施例9]
実施例4の方法に従って炊飯試験を行うに当り、米飯改良剤1又は2を対生米0.5%添加した炊飯米、及び米飯改良剤1及び増粘剤1をそれぞれ対生米0.5%及び0.008%添加した炊飯米を、炊飯後24時間室温で放置した後に官能評価を行った。老化の程度はご飯の硬さ、粘り、食感、香りを総合的に評価し、(10:再調理・再加熱しないと食べられない⇔0:炊きたてを常温まで放冷した状態を維持している)という基準で評価を行った。結果を表7に示した。いずれにおいても、老化臭が軽減し、老化した時に感じられるボソボソとした感覚は非常に弱かった。特に増粘剤1を併用した場合はこの傾向が顕著であり、大変良好な炊飯米の性状を保っていた。一方対照例である米飯改良剤無添加のものは、喫食自体は可能であるものの、冷ご飯に通常認められる独特の老化臭が感じられ、舌触りもボソボソとした感じがあり決して好ましいものではなかった。
【0061】
【表7】

【0062】
[実施例10]
実施例7で得られたそれぞれの炊飯米160gに対して塩1.2gを混合し、市販のおにぎり成型用の型を用いておにぎりを作成した。米飯改良剤を使用した炊飯米を用いたおにぎりは無添加のものと比較してほぐれの良い、良好な食感のおにぎりが得られた。
【0063】
[実施例11]
市販の、「すし酢 昆布だし入り」((株)ミツカン)60mLに対して、それぞれ米飯改良剤1を4.5g、米飯改良剤1及び増粘剤1をそれぞれ4.5g及び0.045g、又は米飯改良剤2を4.5g混和し、試験酢を3点作成した。対照例として米飯改良剤や増粘剤を混和しないすし酢も用意した。別途、市販の無洗米(きらら397)2合(300g)を手早く洗米し、十分量の水で室温で30分浸漬した。得られた米の水分をザルで切り、総重量を810gとして、家庭用の電気炊飯器で自動炊飯を行った。得られたご飯に、試験酢をふりかけ、しゃもじを用いて試験酢が均一に行渡り、熱が逃げるように切り混ぜた。水分が飛ばないようにラップをし、常温まで冷ましてから、市販のすし飯用シャリ玉成型用の型を用いて1個28gのシャリ玉に成型した。得られたシャリ玉のほぐれの評価を行った(表8)。本発明の改良剤を配合した場合はいずれも良好なほぐれを示し、すし飯の改良効果が確認された。
【0064】
【表8】

【0065】
[実施例12]
市販の米を手早く洗米し、生米に対して1.0〜1.6倍重の水を加えた対照サンプル4点、並びにこれらに米飯改良剤1を対生米3〜10%添加したサンプル6点を調製し、パウチに封入した後、120℃30分の条件でレトルト処理を行った。得られたレトルト製品をパウチから出し、かぶる程度のお湯をかけてお湯漬けごはんとし、ほぐれ性とごはんの粒感を評価した。粒感の評価は10段階評価による官能検査で行い、数値が大きいほど、ご飯粒の形がしっかりしている、とした。結果を表9に示す。本発明の改良剤を配合した場合はいずれも良好なほぐれ性を示し、お茶漬け等で求められるごはんの粒感も保たれていた。すなわち本発明によってレトルト米飯の、お茶漬けや雑炊への応用が極めて容易になることが確認された。
【0066】
【表9】

【0067】
[実施例13]
実施例12において加水比率が1.4倍のサンプルをレトルト処理した製品について、パウチの封を開けて電子レンジで加熱し、試食を行った。その結果、米飯改良剤を入れていない対照製品はモチ状の板となっており、米飯としての喫食はできなかったのに対し、米飯改良剤を3%、5%、10%と加えた製品はいずれも良好なほぐれ性を示し、ごはんの粒感も保たれていた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により、米飯の本来の食感や、風味に極力影響を与えることなく、しかも、米飯に効果的にほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性改善効果を付与する米飯の品質改良剤、該品質改良剤を用いた米飯類の製造方法、及び該米飯類の製造方法を用いたほぐれ性、老化防止、及び/又は保水性を向上させた米飯類を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30質量%水溶液における粘度が15mPa・s以上、10質量%水溶液における粘度が3000mPa・s以下である置換型加工澱粉の分解物を含有することを特徴とする米飯にほぐれ性、老化防止及び/又は保水性改良効果を付与する米飯の品質改良剤。
【請求項2】
置換型加工澱粉分解物が、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉Naからなる群から選択される一種類以上の置換型加工澱粉を基材とした分解物であることを特徴とする請求項1に記載の米飯の品質改良剤。
【請求項3】
置換型加工澱粉分解物が、置換型加工澱粉を、酸による加水分解処理、酸化剤による低分子化処理、或いは、酵素による加水分解処理することにより調製されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の米飯の品質改良剤。
【請求項4】
置換型加工澱粉分解物に加えて、増粘剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の米飯の品質改良剤。
【請求項5】
増粘剤が、キサンタンガム、グアーガム、ガディガム及びカラギーナンから選択される1種以上の増粘多糖類であることを特徴とする請求項4に記載の米飯の品質改良剤。
【請求項6】
置換型加工澱粉分解物と増粘剤との比率が、1:1〜100,000:1であることを特徴とする請求項4又は5に記載の米飯の品質改良剤。
【請求項7】
米飯類の炊飯製造に際して、請求項1〜6のいずれか一項に記載の米飯の品質改良剤を添加、混合することを特徴とするほぐれ性、老化防止及び/又は保水性を向上させた米飯類の製造方法。
【請求項8】
米飯類の炊飯製造に際して、米飯の品質改良剤を生米に対して0.1〜10重量%混合して炊飯することを特徴とする請求項7に記載の米飯類の製造方法。
【請求項9】
米飯類の炊飯製造に際して、米飯の品質改良剤を、炊飯後の白飯に対して0.1〜10重量%混合してなることを特徴とする請求項7に記載の米飯類の製造方法。
【請求項10】
米飯類が白飯、塩飯又はすし飯であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の米飯類の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載の米飯類の製造方法によって製造されたことを特徴とするほぐれ性、老化防止及び/又は保水性を向上させた米飯類。
【請求項12】
米飯類が、レトルト殺菌されていることを特徴とする請求項11に記載の米飯類。

【公開番号】特開2012−65645(P2012−65645A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147653(P2011−147653)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】