説明

米飯用品質改良剤ならびにそれを用いた米飯類およびその製造法

【課題】
米飯のほぐれ性を向上させる事、更にはふっくらとした食感や、保存時における澱粉の老化に伴う品質劣化を抑制した良好な品質の米飯類を得るための米飯用品質改良剤を得、これにより品質の良い米飯加工食品を得ることを課題とした。
【解決手段】
豚、鶏、牛等から抽出し濃縮されたエキスでゼリー強度が50g未満の水溶性蛋白質を有効成分として用いことにより、ほぐれ性が改善され、またこのエキスと大豆由来の水溶性多糖類を併せて米飯用品質改良剤として用いることにより、さらにふっくら感があり保存での品質劣化の少ない米飯加工食品を得ることが出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白米や炒飯、ピラフ等の米飯加工食品の分野に関し、特に米飯加工食品のほぐれや食感などの品質の改良剤および改良された米飯類に関する。詳しくは、動物由来のエキス及び大豆水溶性多糖類を品質改良剤として米飯のほぐれ性を向上させ、また澱粉質の老化に伴う経時的な食感の劣化を抑制し、良好な品質の米飯加工食品を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の多様化を背景として、加工食品のニーズは年々高まっている。中でもコンビニエンスストア等の弁当やおにぎり、電子レンジで加熱調理するだけで直ちに喫食可能となる冷凍米飯類、無菌パック米飯類等の米飯加工食品の利用頻度は高く、美味しくて高品質な商品が求められている。これら米飯加工食品においては、米飯のほぐれ性および長期保存時における澱粉質の老化に起因した食味低下の抑制は、極めて重要な品質指標となっている。例えば炒飯やピラフ等の炒め工程を伴う商品においては、米飯のパラパラとしたほぐれ感が美味しさの決め手となる。また、製造工程上においても米飯のほぐれ性は重要であり、良好なほぐれ性が付与された米飯は、飯粒同士やラインへの付着が抑えられるため、飯粒の割れや変形等の品質の低下が抑制され、同時に作業効率も向上する。更に冷凍米飯類においてもほぐれ性は重要である。冷凍米飯類は計量、包装時の利便性や、解凍時の均一な復元性を得るために米飯をバラ状に凍結するが、バラ状凍結工程の際にも米飯のほぐれ性は品質を左右する重要なポイントとなる。
【0003】
一方、近年の中食産業においては、米飯を集中して炊飯した後、配送して店頭に並べられる。従って消費者は炊飯後かなり時間が経過した状態で弁当等を食するケースもあり、米飯の老化に起因した硬化やパサつき感といった食味劣化の克服が重要な課題となっている。
【0004】
以上のような品質的、技術的問題を背景として、米飯粒のほぐれ性を改良し、かつ保存時の食味劣化を抑制する技術が求められており、従来から多くの検討がなされている。ほぐれ性を向上させる方法としては、例えば炊飯時に炊飯油を添加する方法(特許文献1)、食用油脂を乳化した水中油型エマルションを添加する方法(特許文献2、3)、炊飯時に乳化剤を添加する方法(特許文献4)、等が提案されている。しかし炊飯水中での分散性が不十分で米飯への作用むらがあったり、却って油っぽさが増したり風味や食感が悪くなったり、十分なほぐれ性が得られない等の問題があり、未だ更なる改良が期待されていた。
【0005】
米飯保存時の食味劣化抑制に関しては、例えば炊飯前後に酵素処理する方法(特許文献5,6)、カリウム塩やカルシウム塩を添加する方法(特許文献7)等が提案されているが、酵素活性のコントロールが煩雑であったり、風味が悪くなったり等の問題があった。また、水溶性ヘミセルロースを炊飯時に添加することで米飯のほぐれ性を改良し、同時に加水量を増量することで保存時の食味劣化を抑制する方法(特許文献8,9)が開示されているが、米飯のほぐれ性は必ずしも十分ではなく、更なる改良の余地が残されていた。ゼラチンを使用してほぐれ性を向上させる方法(特許文献10)も提案されているが、十分なほぐれ効果が得られなかったり、経時劣化抑制の目的で加水量を増量すると米飯が軟化して食感が極度に低下する等の問題も残されていた。
【0006】
【特許文献1】特開平2−142443号
【特許文献2】特開平1−262762号
【特許文献3】特開2000−93098号
【特許文献4】特開2000−217522号
【特許文献5】特開昭52−117451号
【特許文献6】特開昭60−199355号
【特許文献7】特開2001−238617号
【特許文献8】特開2001−314161号
【特許文献9】特開2004−105197号
【特許文献10】特開2000−60459号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は米飯類のほぐれ性を向上させることで米飯加工食品の食味や作業性の問題を改善する事を主な目的とし、更にはふっくらとした食感や、保存時における澱粉の老化に伴う品質劣化を抑制し、良好な品質の米飯類を得ることであり、それを可能とする米飯用の品質改良剤を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、如上の点に鑑み鋭意研究をした結果、豚、鶏、牛等の畜産動物から抽出し濃縮された天然エキスを使用することで米飯のほぐれ性が著しく向上することを見出した。さらにまた当該エキスと大豆由来の水溶性多糖類(以下水溶性大豆多糖類と記載)とを併用することで、ほぐれ性と米飯の食感が優れて改善され、保存性も良くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、動物由来の冷却凝固性の水溶性蛋白質を含む天然エキスを有効成分とする米飯用ほぐれ改良剤であり、特に天然エキスが豚、鶏、牛等の畜産動物の骨及び/または肉由来である米飯用ほぐれ改良剤であり、このエキス中の固形分がゼリー強度で1g以上50g未満であることを特徴とする米飯用ほぐれ改良剤である。さらに本発明は、米飯の炊飯時に、前記の天然エキスを添加することを特徴とする米飯類の製造法であり、その添加量としては生米に対して0.5〜10重量%となるように添加する米飯類の製造方法である。また本発明は、天然エキスが、生米に対して0.5〜10重量%含まれる米飯類でもある。
【0010】
本発明はまた、動物由来の冷却凝固性の水溶性蛋白質を含む天然エキスと大豆由来の水溶性多糖類とを含んでなる米飯用品質改良剤であり、天然エキスが豚、鶏、牛等の畜産動物の骨及び/または肉由来である米飯用品質改良剤である。また、生米に対してエキス中の水溶性蛋白質が0.5〜10%と、大豆由来の水溶性多糖類量が、0.05〜2%それぞれ含まれる米飯類である。そして米飯の炊飯時に、動物由来の冷却凝固性の水溶性蛋白質を含む天然エキスと大豆由来の水溶性多糖類を含んでなる米飯用品質改良剤を添加することを特徴とする米飯類の製造法である。
【発明の効果】
【0011】
エキスを添加することで十分なほぐれ性が付与された米飯を得ることができる。更には、エキスと水溶性大豆多糖類を添加する事により、炊飯時の加水量を増量しても米飯に十分なほぐれ性を付与し、ふっくらとした弾力のある食感の米飯を得る事が出来る。更に長時間保存した場合であっても澱粉質の老化による硬化やパサつき感といった食味の劣化を抑制した米飯を得る事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の天然エキスは豚、鶏、牛等の畜産動物より通常の手段で抽出されるエキスである。より具体的には、熱水中において骨または肉より加熱抽出処理を行なった後ろ過し、ろ液を遠心分離処理後濃縮することにより得られ、30%以上の蛋白質含量に濃縮するのが一般的である。エキスの処理方法は、上記した方法に限定されず、通常のエキス製造に採用されている条件が自由に適用できる。
【0013】
なお、従来より動物の肉や骨から熱水抽出されるいわゆるエキス類は、天然調味料としてスープやソース、惣菜等のコク味付けや味のベースとして使用されているが、これらエキスが炊飯後の米飯のほぐれ性を向上させ得るという知見はこれまで全く知られていなかった。
【0014】
エキスの主要成分は蛋白質であり、本発明のほぐれ効果は当該エキス中の蛋白質に起因するものである。エキス中の蛋白質は水溶性であり、エキスが冷却凝固性を有するのはこの水溶性蛋白質の特性である。凝固性についてのゼリー強度の強さは重要な意味があり、特定のゼリー強度を有するものが好ましく用いられる。すなわち、日本工業規格「にかわ及びゼラチン」JIS K6503-2001に準じて測定を行なった場合のゼリー強度として1gから50gの範囲にあることを特徴とするものが特に有効である。
【0015】
JIS法のゼリー強度測定とは次の方法による。すなわち、サンプルの固形分濃度6.67%の溶液をゼリーカップに入れ、10℃の恒温槽で17時間冷却して調製したゼリーの表面を、12.7mm径のプランジャーで4mm押し下げられた際の最大圧縮応力をゼリー強度とする。なお、動物由来の水溶性蛋白質としてゼラチンが知られているが、ゼラチンは日本工業規格「にかわ及びゼラチン」JIS K6503-2001にて、ゼリー強度が50g以上のものをゼラチンと定義されているように一般にゼラチンと呼ばれるもので、ゼリー強度が50g未満というものは現実には市場には出回っていない。
【0016】
本発明のエキスについては上記のように、そのゼリー強度が1g以上50g未満であることが好ましく、さらにはゼリー強度が5g以上30g以下であることがより好ましい。ゼリー強度が当該特許の範囲よりも大きくなると炊飯直後のほぐれ性は良好であるが、米飯温度の低下に伴いエキス中の蛋白質がゲル化して付着性が増し、また米飯は硬化し、作業性や食味が低下する。一方、ゼリー強度が当該特許の範囲よりも小さくなると、米飯のほぐれ性は著しく低下する。なお、エキスのゼリー強度とは実質上エキス中の冷却凝固性の水溶性蛋白質の示すゼリー強度に相当する。
【0017】
また、本発明の水溶性大豆多糖類は、その分子量がどの様なものでも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜 数百万、具体的には5,000〜 1,000,000であるのが好ましい。分子量が大き過ぎると粘度が上がり過ぎて作業性が悪くなる。なお、この水溶性大豆多糖類の平均分子量は標準プルラン( 昭和電工( 株) ) を標準物質として0.1モルのNaNO3溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。
【0018】
水溶性大豆多糖類は、大豆多糖類を含む原料から水抽出や場合によっては、酸、アルカリ条件下で加熱溶出させるか、酵素により分解溶出させることができる。
【0019】
本発明における水溶性大豆多糖類は、大豆の子葉由来のものが好ましく、豆腐や豆乳、分離大豆蛋白を製造するときに副生するオカラを利用することができる。水溶性大豆多糖類の製造法の一例を示すと以下のようである。
【0020】
大豆の蛋白質の等電点付近のp Hで、好ましくは80℃ 以上130℃ 以下、より好ましくは100℃ 以上130℃ 以下にて加熱分解し、水溶性画分を分画した後、そのまま乾燥するか、例えば活性炭処理或いは樹脂吸着処理或いはエタノール沈澱処理して疎水性物質あるいは低分子物質を除去し乾燥することによって、水溶性多糖類を得ることができる。
【0021】
この水溶性大豆多糖類は、構成糖として、ガラクトース、アラビノース、キシロース、フコース、ラムノース及びガラクツロン酸を含む多糖類である。なお、加水分解で得られる水溶性大豆多糖類の構成成分の分析結果の詳細は特開平4 - 3 2 5 0 5 8号公報に記載されている。
【0022】
本発明において水溶性蛋白質と水溶性大豆多糖類は、米飯の品質および物性を向上させる効果を得ることができるが、適宜、他の品質改良剤や添加剤と併用することができる。
【0023】
他の品質改良剤や添加剤としては、レシチンやグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等の乳化剤、或いは一般の動植物性油脂や脂溶性ビタミンであるトコフェロール等の油性物質、リボース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、ショ糖、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクトスクロース、イソマルトオリゴ糖等の少糖類、及びエリスリトール、D−ソルビトール、還元乳糖などの糖アルコ─ ル、デキストリン、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トガントガム、グワーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、キトサン、カルボキシメチルセルロース( C M C )、アルギン酸プロピレングリコールエステル、サイリウムシードガム、セルロース、澱粉、加工澱粉など各種澱粉類等の多糖類やこれら多糖類の加水分解物、通常のゼラチン、ホエー等のアルブミン、カゼインナトリウム、可溶性コラーゲン、卵白、卵黄末、大豆蛋白等の蛋白性物質や、食塩等の塩類、エタノールなどのアルコール類等、乳酸、酢酸などの有機酸ならびに酢酸ソーダ等の有機酸塩類などのpH調整剤も挙げられる。
【0024】
本発明における米飯改良剤は、粉末状態、ペースト状態、あるいは溶液の状態で流通販売することができる。
【0025】
また、当該発明における米飯改良剤中のエキスと水溶性大豆多糖類との配合割合は100:0〜1:99、好ましくは100:0〜20:80である。
【0026】
以下、本発明について更に詳しく説明する。本発明において、釜炊き炊飯の場合を例示すると、米を通常通り水で洗米、浸漬、水切りし、次いで炊飯水にエキスと水溶性大豆多糖類を添加して炊飯する。
【0027】
炊飯時の水の量は、米の種類又は米の新旧により異なるため一概に規定できないが、米の種類及び炊飯条件に最も適した、良好な食味を呈する水の量で炊飯するのが普通であり、生米に対して120〜160重量%程度が目安となる。しかし、本発明においては米飯へのほぐれ性付与に加え、経時的な食味劣化を抑制する事を目的とするため、炊飯時の加水量を増量する事が重要である。即ち、上記の最適な炊飯水量よりも103〜130重量%に増量するのが良く、より好ましくは105〜120重量%に増量するのが良い。
【0028】
エキスの添加量は、生米に対して0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%となるように添加するのが良い。添加量が当該特許の範囲よりも多くしても米飯のほぐれ性は向上せず、むしろ硬い食感となり食味が低下する。添加量が当該特許の範囲よりも小さくなると、米飯に十分なほぐれ性を付与することはできない。
【0029】
水溶性大豆多糖類の添加量は、生米に対しては0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%となるように添加するのが良い。当該範囲で水溶性大豆多糖類を添加した場合、炊飯時の加水量を増量しても米飯の軟化を抑制し、良好な食感の米飯を得ることが出来る。添加量が当該特許の範囲よりも多くなると米飯に芯が残った状態で炊き上がる場合がある。添加量が当該特許の範囲よりも小さくなると、炊飯水量の増量の影響で米飯は軟化し、食味が低下する。
【0030】
米飯改良剤を添加する時期については特に制限はなく、炊飯前に添加しても良く、炊飯後の米飯に併せても良い。ただ、米飯の食感改良や保存性改良には炊飯前に添加した方が効果は高い。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の実施態様を説明するが、これは例示であって本願発明の精神がこれらの例示によって制限されるものではない。なお、例中、%は何れも重量基準を意味する。
【0032】
以下に示す実施例において、動物由来の天然エキスは市販されている鶏由来のエキスである「チキンNS」(大日本製薬株式会社製:ゼリー強度13.8g)を用いた。また、水溶性大豆多糖類は市販されている「ソヤファイブ-S」(不二製油株式会社製)を用いた。
【0033】
(実施例1)
浸漬後水切りした米(あきたこまち)に、予め水に分散させたエキスを、生米に対して0.5%となるように添加した。次いで生米に対して総加水量が150%となるように残りの水を加え、家庭用炊飯器(三洋電機株式会社製「マイコン炊飯器ECJ-EA18」)を用いて炊飯した。その後米飯を室温にて約20℃まで冷却し、パネラー6名にて官能評価を行なった。残りの米飯は100gずつラップで包み、20℃のインキュベーター中で24、48時間静置し、同様に6名のパネラーにて官能評価を行なった。官能評価の結果を表1に示した。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、生米に対してエキスを2.0%添加した以外は全く同様の条件とした。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、生米に対してエキスを2.0%、総加水量を180%とした以外は全く同様の条件とした。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、生米に対してエキスを10.0%、総加水量を180%とした以外は全く同様の条件とした。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、生米に対してエキスを2.0%、水溶性大豆多糖類を0.2%、総加水量を150%とした以外は全く同様の条件とした。
【0038】
(実施例6)
実施例1において、生米に対してエキスを2.0%、水溶性大豆多糖類を0.2%、総加水量を180%とした以外は全く同様の条件とした。
【0039】
(対照区1:コントロール)
実施例1において、エキスを無添加とし、炊飯時に添加する加水量総量を生米に対して140%とした以外は全く同様の条件とした。
【0040】
(対照区2)
対照区1において、炊飯時に添加する加水量総量が生米に対して150%とした以外は全く同様の条件とした。
【0041】
(対照区3)
対照区1において、炊飯時に添加する加水量総量が生米に対して180%とした以外は全く同様の条件とした。
【0042】
(比較例1)
実施例1において、エキスは無添加とし、生米に対して水溶性大豆多糖類を0.05%、総加水量を150%とした以外は全く同様の条件とした。
【0043】
(比較例2)
比較例1において、生米に対して水溶性大豆多糖類を0.2%とした以外は全く同様の条件とした。
【0044】
(比較例3)
比較例1において、生米に対して水溶性大豆多糖類を0.2%、総加水量を180%とした以外は全く同様の条件とした。
【0045】
(比較例4)
比較例1において、生米に対して水溶性大豆多糖類を2.0%、総加水量が180%とした以外は全く同様の条件とした。
【0046】
米飯の評価結果は以下の基準による。
<ほぐれ性評価>
◎:米飯がパラパラで非常にほぐれる、○:米飯が適度にほぐれる、△:弱いがほぐれ性あり、×:米飯が塊状になりほぐれない
<食感>
◎:硬さ、弾力共に非常に良好、○:僅かに硬め、もしくはやわらかいが良好、△:かなり硬め、もしくはやわらかい、×:やわらか過ぎべたつく
<保存性>
◎:硬さ、弾力共に非常に良好、○:良好、△:若干硬化、×:硬化に加えパサつき感あり
【0047】
【表1】

【0048】
以上の結果、生米に対してエキスを2.0%以上添加した場合、非常に良好なほぐれ性を有する米飯を得ることができた。更に、エキスを2.0%、水溶性大豆多糖類添加量を0.2%添加し、総加水量を生米に対して150%以上に調整した場合、米飯に十分なほぐれ性を付与し、軟化による食感の著しい低下も起こらない米飯を得ることが出来た。更に同様の条件にて得られた米飯は、炊飯後48時間が経過してもやわらかさと弾力を維持しており、澱粉質の老化による食味の劣化は確認できなかった。
【0049】
(実施例7)
実施例5において、全く同様の炊飯条件にて炊飯した米飯を用いて、米飯の炊飯直後(米飯温度約80℃)と冷却後(米飯温度20℃)における米飯のほぐれ性を評価した。官能評価はパネラー6名により行なった。
【0050】
(比較例5)
実施例7において、エキスの代替として使用する動物由来蛋白質として「BM−206」(ゼライス株式会社製)、ゼリー強度73.0gを使用した以外は全く同様の条件とした。
【0051】
(比較例6)
実施例7において、使用する動物由来蛋白質として「BM−217」(ゼライス株式会社製)、ゼリー強度208.0gを使用した以外は全く同様の条件とした。
【0052】
(比較例7)
実施例7において、使用する動物由来蛋白質として「ゲルアップJ−3557」(三栄源FFI株式会社製)、ゼリー強度370.2gを使用した以外は全く同様の条件とした。
【0053】
(比較例8)
実施例7において、使用する動物由来蛋白質として「BM−229」(ゼライス株式会社製)、ゼリー強度409.3gを使用した以外は全く同様の条件とした。
【0054】
以上の実施例7、比較例5〜8の官能評価の結果を表2に示した。評価の基準は以下の通りである。
<ほぐれ性評価>
◎:米飯がパラパラで非常にほぐれる、○:米飯が適度にほぐれる、△:弱いがほぐれ性あり、×:米飯が塊状になりほぐれない
【0055】
【表2】

【0056】
以上の結果、ゼリー強度が13.8gであるエキスを使用することで、炊飯直後は勿論、冷却した状態においても十分なほぐれ性を有する米飯を得ることができた。
【0057】
(実施例8)
実施例2で調製した米飯を用いて炒飯を調製した。ホットプレートを230℃に加熱し、植物油8g、米飯250gを加え2分間炒めて炒飯を得た。次いで得られた炒飯を室温で放冷し、パネラー6名にて官能評価を行なった。残りの米飯は100gずつラップで包み、20℃のインキュベーター中で24時間静置し、同様に6名のパネラーにて官能評価を行なった。
【0058】
一方、調製後室温で放冷した残りの炒飯100gをラップで包み、ショックフリーザーにて−50℃で急速冷凍した。得られた冷凍炒飯は、600Wの電子レンジにて2分間加熱調理した後、同様にパネラー6名にて官能評価を行なった。官能評価の結果は表3に示した。
【0059】
(実施例9)
実施例8において、実施例5で調製した米飯を使用する以外は全く同様の条件とした。
【0060】
(比較例9)
実施例8において、比較例2で調製した米飯を使用する以外は全く同様の条件とした。
【0061】
(比較例10)
実施例8において、対照区1で調製した米飯を使用する以外は全く同様の条件とした。
【0062】
<作業性>
◎:非常に良好にほぐれ、米飯と油が簡単混ざる、○:良好にほぐれ、米飯と油が混ざる、△:ほぐれ性は弱いが、米飯と油が混ざる、×:飯粒同士が結着し、混ざり難い
<ほぐれ性評価>
◎:米飯が口中でパラパラにほぐれる、○:米飯が適度にほぐれる、△:部分的にほぐれ難い部分がある、×:米飯が塊状になりほぐれない
<食感>
◎:硬さ、弾力共に非常に良好、○:僅かに硬めもしくはやわらかいが良好、△:かなり硬めもしくはやわらかい、×:硬化もしくはやわらか過ぎべたつく
【0063】
【表3】

【0064】
以上の結果、実施例2で調製した米飯(生米に対してエキスを2.0%添加)を使用した炒飯は非常に良好なほぐれ性を示し、炒飯調製時の作業性は良好であった。更に、実施例5で調製した米飯(生米に対してエキスを2.0%、水溶性大豆多糖類を0.2%添加)を使用した炒飯も同様に、非常に良好なほぐれ性及び作業性を示した。また調製直後、24時間保存後、電子レンジ解凍後の米飯は良好なほぐれ性を有し、炒飯の美味しさの特徴であるしたパラパラ感を呈していた。またその食感もやわらかく弾力のある良好なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物由来の冷却凝固性の水溶性蛋白質を含む天然エキスを有効成分とする米飯用品質改良剤。
【請求項2】
天然エキスが豚、鶏、牛等の畜産動物の骨及び/または肉由来である請求項1記載の米飯用品質改良剤。
【請求項3】
エキス中の固形分がゼリー強度で1g以上50g未満であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の米飯用品質改良剤。
【請求項4】
米飯の炊飯時に、請求項1乃至2記載の天然エキスを添加することを特徴とする米飯類の製造法。
【請求項5】
請求項1乃至2の天然エキスの量が、生米に対して0.5〜10重量%となるように添加して炊飯することを特徴とする米飯類の製造方法。
【請求項6】
エキスが、生米状態での量に対して0.5〜10重量%含まれる米飯類。
【請求項7】
動物由来の冷却凝固性の水溶性蛋白質を含む天然エキスと大豆由来の水溶性多糖類を含んでなる米飯用品質改良剤。
【請求項8】
天然エキスが豚、鶏、牛等の畜産動物の骨及び/または肉由来である請求項7記載の米飯用品質改良剤。
【請求項9】
大豆由来の水溶性多糖類量が、生米に対して0.05〜2%含まれる請求項6記載の米飯類。
【請求項10】
米飯の炊飯時に、請求項7乃至8に記載の米飯用品質改良剤を添加することを特徴とする米飯類の製造法。

【公開番号】特開2012−231806(P2012−231806A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196867(P2012−196867)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2007−519023(P2007−519023)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】