説明

粉体から飲料を製造するディスペンサ

【課題】飲用コップからの微粒子を低減して、可溶性の飲料粉体から飲料を製造するためのディスペンサを提案する。
【解決手段】本発明は、飲料用原料粉体から飲料を製造するためのディスペンサであって、希釈液供給手段(11、12、13)と、粉体格納手段(3)と、粉体格納手段から1回分の粉体を計量する供給手段(4)と、1回分の粉体を供給手段から容器(2)に運ぶ案内手段(5)とを備え、案内手段(5)の下端を開閉することができる弁手段(6)をさらに備える、ディスペンサに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性の飲料粉体から飲料を製造するためのディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る飲料用ディスペンサは、1種類以上の飲料用原料を液体と相互作用させて、飲料用原料から飲料を調製する装置である。いくつかの形式の飲料用ディスペンサでは、飲料を調製するために、濃縮物および/または粉体を含む飲料源が水などの液体と混合される。それによって、特に、コーヒー、茶、またはココアなどの温飲料の分野では、飲料の調製のために粉体が用いられる。
【0003】
よって、公知の飲料用ディスペンサは、格納室に格納された所定量の可溶性粉体を混合室または専用収容器に供給するための供給装置を備える。そこには、可溶性粉体と相互作用させ、よって食品成分を形成するために、液体が導入されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に、混合室ではなく飲用コップで可溶性粉体が液体と混合されるディスペンサに関する。このようなディスペンサでは、通常、粉体が供給装置により計量され、漏斗または管状部を通じて飲用コップに案内される。同時に、溶解が生じるように液体が飲用コップに供給される。このような構成には、様々な問題がある。第1に、案内管状部がコップの上方に設けられるので、飲用コップで調製された飲料の蒸気および湿気が立ち昇り案内管状部に入ってしまう。飲料が次々と高速に調製されると、新たに小分けされて管状部により供給された粉体が管状部内の湿気と部分的に反応し、管状部の下端に非衛生的な付着物を生成する。この問題は、概して、管状部に空気を吹き込んで蒸気を逸らすことで解消される。第2に、供給装置から案内漏斗を通じて飲用コップの底に至る粉体の移動量は、大きな落下高を呈する場合がある。その結果として、粉体が漏斗から落下すると、粉体の微粒子が空中に飛散し、ディスペンサを汚す。
【0005】
本発明の目的は、この問題を解消すると共に、飲用コップからの微粒子を低減して、可溶性の飲料粉体から飲料を製造するためのディスペンサを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、飲料用原料粉体から飲料を製造するためのディスペンサであって、
希釈液供給手段と、
少なくとも1つの粉体格納手段と、
粉体格納手段から1回分の粉体を計量する少なくとも1つの供給(dosing)手段と、
1回分の粉体を供給手段から容器に運ぶ案内手段と、
を備え、
案内手段の下端を開閉することができる弁手段をさらに備える、ディスペンサに関する。
【0007】
本発明のディスペンサでは、希釈液供給手段は、通常は飲用コップである容器に希釈液を運ぶことが好ましい。その結果として、飲料は、ディスペンサの混合装置ではなく容器で直接調製される。
【0008】
粉体格納手段は、原末(bulk powder)が導入されるタンクでありうる。粉体格納手段は、可溶性粉体を収容する容器を受けるための筐体でもよい。容器は、缶(can)、小型缶(canister)など硬質の収容器(vessel)、または可撓性のパウチでもよい。粉体は、可溶性のコーヒー、茶、ココア、ミルク、スープ、カプチーノなど可溶性の飲料用原料でありうる。
【0009】
供給手段は、1回分の粉体を格納手段から計量して案内手段に運ぶことができる手段でありうる。供給手段は、穿孔された回転ディスク、螺旋供給機、締切弁、ウォームねじ、たる、スライドチャンバ、その他の公知の粉体供給装置でありうる。供給手段は、粉体格納手段の一部でもよく、または粉体格納手段の出口が設けられた独立した装置でもよい。供給装置は、回転可能に取り付けられると共に、粉体格納手段により供給された粉体を第1の回転位置で受け、この粉体を第2の回転位置で案内手段に下ろすための1以上の凹部を有する部材であることが好ましい。
【0010】
1回分の粉体を容器に運ぶための案内手段は、管状部(tube)を備え、該管状部の下端が容器の上方に設けられることが好ましい。案内手段の一部は、ホッパでありうる。ホッパは、その大きい方の開口が供給手段の出口を取り囲み、その最も小さな開口が、粉体を容器に排出する管状部に接続される。特定の実施形態によれば、ディスペンサは、異なる種類の粉体を格納するいくつかの粉体格納手段を備え、案内手段は、異なる種類の粉体を容器に別々に案内する異なるチャンネルに区分されうる。案内手段のホッパおよび管状部は、粉体の種類の数と同じ数のチャンネルに区分されうる。この実施形態は、味が異なる飲料用原料(コーヒー、コーヒー、ミルクを含むコーヒー混合物、またはスープなど)に対する案内手段の交差汚染を回避する。
【0011】
弁手段は、容器の上方で案内手段の端部を開放または閉鎖するように動作可能なパドルでありうる。パドルは、回転運動または線形運動により動作しうる。
【0012】
弁手段は、ディスペンサが静止している時に案内手段の端部を閉鎖することが好ましい。この実施形態は、案内手段の保護および案内手段の清浄性を保護できる。例えば、それは、案内手段への害虫(アリ、ゴキブリなど)の侵入を防止する。それは、湿気の高い気候条件で案内手段への湿気の進入も防止する。
【0013】
弁手段は、供給手段が作動するときに、案内手段の端部を閉鎖することが好ましい。この構成によって、計量された1回分の粉体は、案内手段の下端を閉鎖するパドルに落下し、弁手段は、1回分の粉体を案内手段に保持し、粉体の微粒子は、ディスペンサの周囲ではなく案内手段に積もる。本発明によれば、供給手段は、弁手段が案内手段の下端を開放するときには作動しない。
【0014】
希釈液供給手段は、弁手段が案内手段の端部を開放するときまたは開放した後に作動しうる。希釈液供給手段は、希釈液の蒸気が案内手段に進入しないように、弁手段が案内手段の端部を開放して再び閉鎖した後に作動する。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、前述したようなディスペンサを用いて飲料を製造する方法であって、
1回分の粉体を保持するように弁手段が案内手段の下端を閉鎖する間に、1回分の粉体を計量して案内手段に運ぶステップと、
供給手段の非作動状態を持続している間に、案内手段の端部を開放して1回分の粉体を容器に運び、同時にまたは引き続いて容器に希釈液を供給ステップと、
を含む方法に関する。
【0016】
この方法は、1回分の粉体を容器に運ぶために案内手段の端部を開放した後で、希釈液を容器に供給する前に案内手段の端部を閉鎖するステップをさらに含むことが好ましい
【0017】
本発明の特徴および利点は、以下の図面との関連にて、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るディスペンサを示す図である。
【図2a】パドルが回転運動により動作可能である、図1の弁手段の変形例を示す図である。
【図2b】パドルが回転運動により動作可能である、図1の弁手段の変形例を示す図である。
【図2c】パドルが回転運動により動作可能である、図1の弁手段の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係るディスペンサ1の横断面を示している。装置1は、液体リザーバ(不図示)と、ヒータ11と、ポンプ12と、とノズル13とを少なくとも有する希釈液供給手段を収容する筐体1aを備える。液体リザーバは、水などの液体をヒータ11およびポンプ12に供給し、よってノズル13に供給するために設けられている。ディスペンサは、コップ2などの受容器のための台16をさらに備える。ディスペンサ1は、その中に、飲用コップ2を選択的に閉鎖するための蓋手段17を備えうる。よって、ユーザは、蓋部材17を開け、台16にコップ2を置き、蓋部材を再び閉じうる。よって、飲料を安全に調製できる。
【0020】
図示の実施形態では、装置1は、可溶性粉体用のブリキ缶31を2つ収容する粉体格納手段3をさらに備える。また、本発明のディスペンサは、可溶性粉体用のブリキ缶を1つまたは3つ以上収容する粉体格納手段3を備えうる。ブリキ缶31からの粉体の供給を可能とするために、ブリキ缶31は、下向きの開口31aを備える。格納手段3は、ブリキ缶の開口31a毎に1以上の開口3aを備える。この開口31aを通じて、格納手段3に接続された供給手段4に粉体が供給されうる。供給手段4の回転を可能にし、よって格納手段3から粉体を下ろすために、供給手段4毎にモータ40が接続されている。
【0021】
装置には可溶性粉体用のブリキ缶31が2つ設けられているので、異なる飲料を調製するために2以上の異なる種類の粉体を供給できる。もちろん、ディスペンサ1内では、ブリキ缶31および供給手段4の数が異なってもよい。
【0022】
供給手段4により下される粉体は、供給手段4からホッパの下端52、そして飲用コップ2内に粉体を案内するホッパ5により受けられる。ホッパ5は、飲用コップ2の上方に設けられる、管状部51の下端52を備えることが好ましい。
【0023】
ディスペンサは、飲料調製プロセスを開始するための単一のボタン18を備えることが好ましい。加えて、ディスペンサは、冷水または温水をコップ2に選択的に供給すると共に、飲料粉体を選択するための追加ボタンを備えうる。よって、ユーザは、冷飲料の調製または温飲料の調製を選択できる。装置は、メインスイッチ(不図示)と、ディスペンサの動作状態をユーザに通知しうる複数の制御インジケータ(不図示)をさらに備える。
【0024】
動作中、供給手段4、案内手段5、および粉体格納手段3は、1回分の所定の可溶性粉体をコップ2に供給できる。コップ2に粉体が供給された後、コップに収容された所定量の粉体と相互作用させるために、所定量の水などの液体がコップ2に供給される。よって、ディスペンサにより飲料製品を簡単かつ高速に調製できる。
【0025】
本発明によれば、ディスペンサは、ホッパ5の管状部51の下端52を開閉するための弁手段6を備える。図1のディスペンサでは、弁手段がパドル61を備える。パドルは、供給手段4によりホッパ5に供給された粉体を保持するために粉体案内手段5の下端52の開口の正面でソレノイド62を押し出し、または保持している粉体をコップ2に落下させるために粉体案内手段5の下端52の開口からソレノイド62を後退させるように、モータにより作動しうる。
【0026】
ディスペンサは、供給手段および弁手段を制御すると共に、これらの作動を調整するための制御手段14をさらに備える。本発明によれば、供給手段は、弁手段が案内手段5の下端を閉鎖した後にのみ作動する。そして、供給手段により供給された粉体は、管状部51を通じて案内手段5内で落下し、粉体案内手段5の下端52を閉鎖しているパドル61により保持される。パドルは、1回分の粉体の全て、特に微粒子をパドル61の上方に積もらせるために、直ちには作動しない。そして、弁手段は、粉体案内手段5の下端52を開放し、1回分の粉体をコップ2に落下させる。粉体案内手段5の下端52とコップ2の底との間の距離が僅かであるので、粉体の微粒子は、コップ2から飛散せず、よって台16を汚さない。
【0027】
弁手段は、微粒子の飛散を避けるために、供給された粉体をコップ2の底のできるだけ近くに保持することが好ましい。
【0028】
弁手段は、コップ2に送出される前の粉体の微粒子が弁手段に積もるように、粉体案内手段5の下端52を開放する前に、供給された粉体を数秒間に亘って案内手段に保持することが好ましい。
【0029】
通常、制御手段14は、弁手段6が案内手段5の下端52を開放するとき、より好ましくは開放した後に希釈液がコップ2に供給されるように、ポンプ12も制御する。パドル61は、希釈液がコップに供給される前に、案内手段5の下端52を再び閉鎖することが好ましい。
【0030】
図2a〜図2cは、本発明のディスペンサに利用可能な他の形式の弁手段を示している。これらの弁手段は、パドル61の回転運動により案内手段5の下端52を開閉する。図2aに示す実施形態によれば、パドル61は、ハンドル65の両方のアーム64に固定されている。これらのアーム64は、湾曲しており、ディスペンサの粉体案内手段に枢動可能に取り付けられている。ハンドルは、モータ駆動式のアクチュエータ62により作動する。モータは、ハンドル65およびアームが回転軸63に対して回転され、よってパドル61をその閉鎖位置から離すように回転させるように、アクチュエータを押圧可能なソレノイドを駆動しうる。ハンドル65は、アーム64およびパドル61と一体的に形成されうる。
【0031】
図2bは、案内手段5の下端に対して2つの異なる位置にあるパドル61を示している。直線は、案内手段5の下端を閉鎖する位置にあるパドル61を示しており、アクチュエータ62は、ハンドル65に力を及ぼしていない。点線は、アクチュエータ62がハンドル65を押し、回転軸63に対して湾曲アーム64を回転させ、案内手段の下端からパドル61を遠ざけている。回転軸63には、ハンドル65を付勢してその非作動位置へ移動させ、その結果として案内手段5を閉鎖するようにパドル61を移動させるためのばねが固定されうる。
【0032】
図2cは、図2bのA−A軸断面を示している。図2cは、案内手段5が2つの漏斗53、54に区分されていることを明らかにしている。この変形例は、異なる格納手段から排出された異なる種類の粉体が案内手段で混合すること、および異なる種類の粉体により飲料の味が変化することを回避している。
【0033】
本発明のディスペンサは、微粒子によるディスペンサの汚れを回避する、という利点を提示している。
【0034】
本発明のディスペンサは、コップに希釈液が導入されると、弁手段が案内手段の下端を自動的に閉鎖するので、この下端に空気を吹き込む必要性を回避する、という利点も提示している。
【符号の説明】
【0035】
11…ヒータ、12…ポンプ、13…ノズル、2…容器、3…粉体格納手段、31…収容器、4…供給手段、5…案内手段、51…管状部、52…下端、6…弁手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用原料粉体から飲料を製造するためのディスペンサであって、
希釈液供給手段(11、12、13)と、
粉体格納手段(3)と、
前記粉体格納手段から1回分の粉体を計量する供給手段(4)と、
前記1回分の粉体を前記供給手段から容器(2)に運ぶ案内手段(5)と、
を備え、
前記案内手段(5)の下端を開閉することができる弁手段(6)をさらに備える、ディスペンサ。
【請求項2】
前記希釈液供給手段(11、12、13)が希釈液を前記容器(2)に運ぶ、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記粉体格納手段(3)が、可溶性粉体を収容する収容器(31)を受けるための筐体である、請求項1または2に記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記供給手段(4)が、回転可能に取り付けられると共に、前記粉体格納手段(3)により供給された粉体を第1の回転位置で受け、該粉体を第2の回転位置で前記案内手段(5)に下ろすための1以上の凹部を有する部材である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項5】
前記1回分の粉体を容器に運ぶための前記案内手段(5)が管状部(51)を備え、該管状部の下端が前記容器(2)の上方に設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項6】
前記弁手段(6)が、前記容器(2)の上方で前記案内手段(5)の端部を開放または閉鎖するように動作可能なパドルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項7】
前記弁手段(6)が、静止時に前記案内手段の端部を閉鎖する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項8】
前記パドルが、回転運動または線形運動によって動作可能である、請求項6または7に記載のディスペンサ。
【請求項9】
前記弁手段(6)が、前記供給手段(4)が作動するときに前記案内手段の端部(52)を閉鎖する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項10】
前記希釈液供給手段(11、12、13)が、前記弁手段(6)が前記案内手段の端部(52)を開放するときまたは開放した後に作動する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のディスペンサを用いて飲料を製造する方法であって、
前記1回分の粉体を保持するように前記弁手段(6)が前記案内手段の下端(52)を閉鎖する間に、前記1回分の粉体を計量して前記案内手段(5)に運ぶステップと、
前記供給手段の非作動状態を持続している間に、前記案内手段の端部(52)を開放して前記1回分の粉体を前記容器(2)に運び、同時にまたは引き続いて前記容器に希釈液を供給するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記1回分の粉体を前記容器に運ぶために前記案内手段の端部(52)を開放した後で、希釈液が前記容器に供給される前に前記端部を閉鎖するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate


【公開番号】特開2012−66076(P2012−66076A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−198603(P2011−198603)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】