説明

粉体の製造方法および製造装置

【課題】 生産性に優れるとともに、表面を修飾する原子あるいは原子団の密度を制御することができる粉体の製造方法およびこの方法に使用される製造装置を提供すること。
【解決手段】製造装置1Aは、表面がハロゲン化された粉体P2を製造するための装置である。この製造装置1Aは、プラズマを発生させるための第一の電極231および第二の電極232と、第一の電極231および第二の電極232間に粉体P1を供給する粉体供給部3と、第一の電極231および第二の電極232間で発生したプラズマにより、プラズマ処理された粉体P1をハロゲン化するハロゲン化手段4とを備える。ハロゲン化手段4は、プラズマ処理された粉体P1が供給される容器(反応容器)43と、容器43中にハロゲン原子を含むガスを供給するガス供給部44とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難燃性等の特性を得るために、臭素化された粉体を製造することが行われている。
たとえば、特許文献1には、臭素化スチレンモノマーを重合させて臭素化ポリスチレンの粉体を得る方法が開示されている。また、特許文献2には、ポリジブロモスチレンを製造し、このポリジブロモスチレンを含む組成物を粉砕して、粉体を得る方法が開示されている。
さらに、特許文献3にはルイス酸触媒等の存在下で、ポリスチレンに臭素等を反応させる方法が開示されている。
また、特許文献4には、粉体をCFガス中でプラズマ処理する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−127617号公報
【特許文献2】特表昭62−501153号公報
【特許文献3】特公昭61−34723号公報
【特許文献4】特公平7−68382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、粉体そのものの特質を変化させず、粒子表面のみを修飾することが求められている。特許文献1〜3に開示された方法では、粒子そのものが臭素化されてしまうため、このような要望に応えることが困難である。
一方、特許文献4に開示された方法では、粒子表面のみをフッ素により修飾することが可能である。しかしながら、プラズマ雰囲気下でフッ素化しているため、粒子表面のフッ素の密度を調整するためには、プラズマ中での粒子の滞留時間をコントロールする必要がある。(例えば、高いフッ素化率を達成するためにはプラズマ中での粒子の滞留時間を長くする必要がある。) そのため、プラズマ中に粒子を対流させたり循環させたりする必要があり、高い生産性を実現することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、粉体をプラズマ処理して、前記粉体を構成する粒子表面に未結合手を形成する工程と、粉体をプラズマ処理する前記工程の後段にて、前記未結合手が形成された前記粉体を、反応性ガス中に供給することで、前記未結合手に前記反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させる工程とを含む粉体の製造方法が提供される。
【0006】
この方法によれば、粉体をプラズマ処理し、反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させることで粉体を構成する粒子表面を修飾することができる。このような本発明では、粉体そのものの特質を変化させず、表面を修飾することができる。
これに加え、本発明では、未結合手を形成する工程と、未結合手に反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させる工程とを別工程としている。そのため、本発明では、プラズマ雰囲気中に粉体を長時間滞留させる必要がないため、従来の生産方法に比べて、生産性を向上させることができる。なお、反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させる工程では、反応性ガスに、プラズマ処理を施した粉体をさらすことで、反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合できるため、多量の粉体を一度に処理することが可能となる。
さらに、粒子表面を修飾する原子あるいは原子団の密度は、反応性ガスとの反応時間や、反応性ガスの濃度を制御することでコントロールできる。
以上より、本発明によれば、表面を修飾する原子あるいは原子団の密度を制御することができ、かつ、生産性に優れた製造方法を提供することができる。
【0007】
また、本発明によれば、以上のような製造方法に使用される製造装置も提供できる。
すなわち、本発明によれば、プラズマを発生させるための第一の電極および第二の電極と、前記第一の電極および前記第二の電極間に粉体を供給する粉体供給部と、プラズマ処理された前記粉体が供給される容器と、前記容器中に反応性ガスを供給するガス供給部とを有する粉体の製造装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産性に優れるとともに、表面を修飾する原子あるいは原子団の密度を制御することができる粉体の製造方法およびこの方法に使用される製造装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一実施形態)
はじめに、図1を参照して、本実施形態の製造装置1Aの概要について説明する。
製造装置1Aは、粉体P1の表面を修飾するための装置である。
本実施形態では、製造装置1Aは、表面がハロゲン化された粉体P2を製造するための装置である。この製造装置1Aは、プラズマを発生させるための第一の電極231および第二の電極232と、第一の電極231および第二の電極232間に粉体P1を供給する粉体供給部3と、第一の電極231および第二の電極232間で発生したプラズマにより、プラズマ処理された粉体P1をハロゲン化するハロゲン化手段4とを備える。
ハロゲン化手段4は、プラズマ処理された粉体P1が供給される容器(反応容器)43と、容器43中にハロゲン原子を含むガスを供給するガス供給部44とを有する。
【0010】
次に、図1および図2を参照して、製造装置1Aについて詳細に説明する。図2は、放電管2の断面図である。
製造装置1Aは、放電管2と、粉体供給部3と、ハロゲン化手段4とを備える。
放電管2は、長手方向が鉛直方向に沿うように配置された三重管により構成されている。具体的には、図2に示すように、放電管2は、第一の筒部201と、この第一の筒部201を囲むように設けられた第二の筒部202と、この第二の筒部202を囲むように設けられた第三の筒部203とを備える。
第一の筒部201内部には、第一の電極231が配置されている。この第一の電極231は、円筒状であり、第一の筒部201の内面に固定されている。この第一の電極231には、高周波電源25から供給される電力が印加される。
【0011】
第一の筒部201の内部には、第一の筒部201内部に冷却媒体(たとえば、水等の液体)を供給するための供給管204が配置されている。冷却媒体は、供給管204から供給され、第一の筒部201と供給管204外面との間を通り、第一の電極231を冷却する。その後、第一の筒部201の上端に設けられた排出管205から排出される。
【0012】
第二の筒部202は、第一の筒部201を囲むように設けられている。この第二の筒部202の外面側には、第二の電極232が配置されている。具体的には、第二の電極232は、第二の筒部202の外面に取り付けられている。
第二の電極232は、第二の筒部202の外面に螺旋状に固定されている。また、第二の電極232は接地されている。第二の電極232は、第一の電極231と対向配置されており、第一の電極231と、第二の電極232とで挟まれた空間が放電室(放電空間)2Aとなる。具体的には、第一の筒部201の外面と、第二の筒部202の内面との間に放電室2Aが形成されることとなる。
【0013】
第三の筒部203は、第二の筒部202を囲むように設けられている。第二の筒部202には、上端部と、下端部にフランジ部202A,202Bが形成され、このフランジ部202A,202Bに挟まれるように第三の筒部203が配置される。
この第三の筒部203の内面と、第二の筒部202外面との間には冷却媒体(たとえば、水等の液体)が供給され、第二の電極232が冷却媒体により冷却される構造となっている。具体的には、第三の筒部203の下端部に冷却媒体を供給するための供給管206が接続され、第三の筒部203の上端部に冷却媒体を排出する排出管207が接続されている。冷却媒体は、下方から上方にむかって流れることとなる。
【0014】
以上のような放電管2には、放電管2内に粉体P1を供給するための粉体供給部3が接続されている。
粉体供給部3は、第一の電極231と第二の電極232との間、すなわち、第一の筒部
201の外面と、第二の筒部202の内面との間に粉体P1を供給するものである。
ここで、粉体P1は、有機粒子であり、たとえば、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂である。粉体P1は、含水率が低いものが好ましい。たとえば、含水率が100ppm以下の粉体であることが好ましい。このような粉体を使用することで、確実に粒子表面をハロゲン化することができる。なお、含水率は、カールフィッシャー式水分計により測定できる。
【0015】
また、粉体P1は、微粒子で構成されることが好ましく、微粒子は、平均粒径が3μm以上、100μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径(d50)は、レーザー回折散乱法(後述するCv値の測定方法と同様の方法)により測定されたものである。このような粒径の粉体を使用することで、粉体P1の落下速度(プラズマ中を通過する時間)を調整し、粉体P1を確実にプラズマ処理しやすくすることができる。
【0016】
さらに、粉体P1は、粒度分布がCV値で30%以下であることが好ましい。
このように、粒度分布が狭い粉体P1を使用することで、粉体P1の落下速度を均一化でき、粉体P1を確実にプラズマ処理することができる。
ここで、CV値は、標準偏差÷粒子径平均値×100で示されるものであり、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、標準偏差は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、メタノール中に粉体を5分間超音波処理することにより分散させ、粒子径の測定を行うことにより算出される。なお、d50値を粒子径平均値とする。
粉体供給部3は、粉体P1が収容された収容部32と、この収容部32を振動させて、収容部32の開口から粉体P1を排出させるためのバイブレータ33とを有する。バイブレータ33には、振動管331が接続され、この振動管331が収容部32内に配置されている。振動管331を振動させることで、収容部32の開口からの粉体P1の排出が調整される。
【0017】
収容部32から排出された粉体P1は、配管Lを通り、第一の筒部201の外面と、第二の筒部202の内面との間に供給される。配管Lには、プラズマを発生させるためのガスを供給するガス供給部7が接続されている。粉体P1は、配管Lに供給され、ガス流にのり、第一の筒部201の外面と、第二の筒部202の内面との間に落下することとなる。
【0018】
さらに、製造装置1Aは、放電管2内でプラズマ処理された粉体P1を回収するとともにハロゲン化を行うハロゲン化手段4を有する。
このハロゲン化手段4は、第二の筒部202に連通し、逆円錐形状に形成された粉体回収槽41と、この回収槽41の下端部に接続された配管42と、配管42の端部に接続された反応容器43と、ガス供給部44と、容器45とを備える。
配管42にはバルブ421が取り付けられている。
【0019】
反応容器43は、放電管2から排出された粉体をハロゲン化するための容器である。この反応容器43には、ハロゲン原子を含むガスを供給するためのガス供給部44が接続されている。また、反応容器43には、ソーダ石灰が充填された容器45が接続されている。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、粒子に対し、難燃性等を付与する場合には、臭素原子が好ましい。ハロゲン原子を含むガスとしては、たとえば、臭素ガス(ハロゲンガス)、ジブロモメタンを含むガス、ブロモホルムを含むガス等が挙げられる。なかでも、ハロゲン化の効率を考慮すると、臭素ガス等のハロゲンガスを使用することが好ましい。
なお、本実施形態では、粒子の表面をハロゲン化するため、反応容器43中には、反応性ガスとして、ハロゲン原子を含むガスを供給しているが、これに限られるものではない。反応性ガスとしては、ハロゲン原子を含むガス以外に、たとえば、酸素、窒素、アンモニア若しくは二酸化炭素等の無機系ガス、テトラエトキシシラン(TEOS)若しくはヘキサメチルジシロキサン等のケイ素を含む有機モノマーガス又はケトン、アルコール、エーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、アルデヒド、アミン類若しくはカルボン酸等の有機モノマーの蒸気等を使用することができる。
このような反応性ガスを使用することで、粒子表面に形成された未結合手に反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させることができる。
【0020】
次に、以上のような製造装置1Aを使用した粉体P2の製造方法について説明する。
はじめに、放電管2内でプラズマを発生させる。具体的には、ガス供給部7から、第一の電極231、第二の電極232間にプラズマ発生用のガスを供給する。プラズマ発生用のガスとしては、たとえば、ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガス等である。これらのガスのうち2以上を混合したガスをプラズマ発生用のガスとしてもよい。これに加え、放電用ガス供給口221からも、プラズマ発生用のガスが供給される。
【0021】
第一の電極231および第二の電極232に印加し、プラズマを発生させる。なお、プラズマを、3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力状態で発生させる(いわゆる大気圧プラズマである)。
次に、粉体供給部3から、放電管2に対し、粉体P1を供給する。このとき、粉体P1の収容部32からの排出量を調整するために、バイブレータ33により、振動管331を振動させる。粉体P1は、ガス供給部7からのガス流にのり、放電管2内に落下する。粉体P1は、プラズマ発生用のガスの一部を用いて、放電管2内の放電室2Aに導かれることとなる。
【0022】
次に、粉体P1は、放電管2内でプラズマ処理され、粉体を構成する粒子表面に未結合手が形成される。アルゴン、ヘリウム等の不活性なガス中に粉体P1が存在している間は、粉体P1の未結合手は、そのままの状態となる。
このような粉体P1は、ハロゲン化手段4に回収される。具体的には、粉体P1は、粉体回収槽41、配管42をとおり、反応容器43に到達する。あらかじめ、反応容器43内には、ガス供給部44からハロゲン原子を含むガスを供給しておく。反応容器43中で、粉体P1の未結合手にハロゲン原子が結合し、粉体P1がハロゲン化されることとなる。これにより、表面がハロゲン化された粉体P2を得ることができる。
なお、反応容器43中のハロゲン原子を含むガスは、ソーダ石灰が充填された容器45を通り、外部に放出される。このとき、ソーダ石灰にハロゲン原子が吸着除去される。
【0023】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、粉体P1をプラズマ処理し、ハロゲン原子を結合させることで粉体を構成する粒子表面をハロゲン化している。この方法は、粉体を構成する粒子そのものの特質を変化させず、表面をハロゲン化することができる。
【0024】
また、本実施形態では、粉体P1をプラズマ処理して、粉体を構成する粒子表面に未結合手を形成した後、未結合手が形成された粉体P1をハロゲンガスにさらすことにより、未結合手にハロゲン原子を結合させてハロゲン化を行っている。このように、未結合手を形成する工程と、ハロゲン化する工程とを別工程とすることで、未結合手の密度を制御しやすくなり、結果的にハロゲン化密度を制御しやすくなる。これにより、所望の特性を有する粉体を得ることができる。
これに加え、未結合手を形成する工程と、ハロゲン化する工程とを別工程とすることでプラズマ雰囲気中に粉体を長時間滞留させる必要がないため、従来の生産方法に比べて、生産性を向上させることができる。なお、ハロゲン化する工程では、ハロゲン原子を含むガスに、プラズマ処理を施した粉体P1をさらすことで、ハロゲン化できるため、多量の粉体P1を一度に処理することが可能となる。
さらに、粒子表面を修飾するハロゲン原子の密度は、ハロゲン原子を含むガスとの反応時間を制御したり、ハロゲン原子を含むガスの濃度を制御したりすることでコントロールできるため、ハロゲン原子の密度が制御しやすい。
さらに、本実施形態では、未結合手が形成された粉体P1を反応容器43内でハロゲン化しており、反応容器43内には、ハロゲン化に必要な量のハロゲン源(ハロゲンガス)を供給すればよい。そのため、ハロゲンガスが無駄になってしまうことを防止できる。
【0025】
さらに、本実施形態では、粉体P1として、ポリオレフィン粒子を使用している。これにより、粉体P1を確実にハロゲン化することができる。これに加え、本実施形態では、水分量の少ないポリオレフィン粒子(水分量が100ppm以下)を使用している。このような粒子を使用することで、粉体を構成する粒子表面のハロゲン化を確実に進行させることができる。すなわち、水分を多く含む粉体を使用した場合には、酸化等の副反応がおこりやすくなってしまうが、本実施形態のように、水分量の少ないポリオレフィン粒子を使用することで、粉体の分解反応等を抑え、ハロゲン化を確実に行うことができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、プラズマ処理を、3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力下で行っているため、プラズマを低圧条件下で発生させるための、真空装置等が不要である。
【0027】
また、本実施形態の製造装置1Aは、第一の筒部201の内側に第一の電極231を設け、冷却媒体により、第一の電極231を冷却している。また、第二の筒部202の外面と、第三の筒部203の内面との間に第二の電極232を設け、第二の電極232を冷却媒体により冷却している。このようにすることで、各電極231,232を冷却し、プラズマ発生時の温度上昇による粉体の溶融、軟化現象を防ぐことが出来る。
【0028】
また、本実施形態では、粉体P1を第一の電極231および第二の電極232間に落下させる構成としている。これにより、第一の電極231および第二の電極232間に多くの粉体P1を簡便に供給することができ、プラズマのエネルギーを有効的に利用することができる。
さらに、粉体P1は、プラズマを発生させるためのガス流にのって、第一の電極231および第二の電極232間に落下している。そのため、ガス流の速度を調整することで、第一の電極231および第二の電極232間に存在する粉体P1の量を調整することができる。
【0029】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、粉体P1を、プラズマを発生させるためのガス流にのせて、第一の電極231および第二の電極232間に落下させていたが、これに限らず、粉体を搬送するための搬送専用のガスを使用してもよい。
さらには、前記実施形態では、粉体供給部3は、バイブレータ33による振動で、粉体P1を供給するとしたが、粉体の供給方法は、これに限られるものではない。
また、前記実施形態の製造装置の構造に加え、図3に示すように、第一の筒部201に、第一の筒部201を振動させるための、振動部6を取り付けてもよい。第一の筒部201を振動させることで、第一の筒部201と第二の筒部202との間に供給された粉体P1に振動を与え、粉体P1が第一の筒部201と第二の筒部202との間の放電室2A中を落下しやすくすることができる。また、粉体P1の落下速度を制御することが可能となる。
さらに、第二の筒部202に対し、振動部を取り付けてもよく、第一の筒部201、第二の筒部202の双方に振動部を取り付けてもよい。
また、前記実施形態では、冷却の媒体として液体を使用したがガスを使用してもよい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例について説明する。
はじめに、臭素化処理(ハロゲン化処理)の処理対象となる粒子(粉体P1)を以下のようにして製造した。
(超高分子量ポリエチレン微粒子(平均粒径9μm)の製造)
(Mg含有担体成分(B1−1)の調製)
無水塩化マグネシウム 95.2g(1.0モル)、デカン 442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール 390.6g(3.0モル)を130℃で2時間反応を行い均一溶液(成分(B1))を得た。次に、充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、成分(B1)50ml(マグネシウム原子換算で50ミリモル)、精製デカン 283ml、およびクロロベンゼン117mlを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM-0.8Sを用い、回転数15000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム52ミリモルを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を5時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム 98ミリモルを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、100mlのトルエンを加えてMg含有担体成分(B1-1)のトルエンスラリーとした。
【0031】
(固体触媒成分(B1-1-A2-172I)の調製)
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、Mg含有担体成分(B1-1)をマグネシウム原子換算で20ミリモル、および精製トルエン 600mlを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、下記遷移金属化合物(A2-172)のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)20mlを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B1-1-A2-172I)の200mlデカンスラリーとした。
【0032】
【化1】

【0033】
(超高分子量ポリエチレン微粒子(平均粒径9μm)の調製)
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mlを装入し、室温でエチレン100リットル/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いて63℃に昇温した後、エチレンを12リットル/hrで流通させたまま、トリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al原子で1.0mmol/ml)1.25ml、固体触媒成分(B1−2−A2−172I)を5.33ml(Zr原子換算で0.00008mmol)を加え、温度を維持したまま3分間攪拌し、エマルゲン E−108(花王(株)製)40mgを加えてすぐ、エチレン圧の昇圧を開始した。10分かけてエチレン圧を0.8MPa・Gに昇圧し、圧を維持するようエチレンを供給しながら65℃で2時間重合を行なった。その後、オートクレーブを冷却し、エチレンを脱圧した。得られたポリマースラリーを濾過後、ヘキサンで洗浄し、80℃で10時間減圧乾燥することにより、ポリマー51.9gを得た。生成ポリマーのメジアン径(d50)は9.4μm、Cv値は13.5%であった。なお、標準偏差、d50は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、メタノールに粉体を5分間超音波処理することにより分散させ、粒子径の測定を行うことにより算出した。
また、製造方法を考慮すると、生成した粉体の含水率は、100ppm以下であると考えられる。
【0034】
(実施例1)
1.プラズマ処理による粉体表面における未結合手の形成
図1に示した製造装置1Aを用いて、上述した超高分子量ポリエチレン微粒子(粉体P1)の処理を行なった。粉体P1を5g、収容部32に収納した後、ヘリウムガスにてガス置換を行ない、収容部32の開口を開けると同時にバイブレータ33を作動させて粉体P1の供給を開始した。
プラズマを形成するために13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマを形成した。第一の電極231,第二の電極232間の放電室2A内で粉体P1がプラズマ処理される。高周波は10kHzのパルスを同期させることにより、電力印加時間と休止時間を50%と50%に区分して電力を供給した。そして、供給高周波電力は、1.8kWから2.5kWになるように調整して供給した。5gの粉体P1に対してプラズマ照射時間30分とした。またヘリウムの供給流量は、ガス供給入口71から1L/分、放電用ガス供給口221からは2L/分であった。
プラズマ処理後の粉体P1は反応容器43に捕集され、続けて臭素ガス処理を行った。
【0035】
2.臭素ガス処理
予め、臭素液を液体窒素で凍結させ蒸気圧を低下させておき、反応容器43は油回転ポンプ(図示せず)で真空引きを行っておいた。次に臭素供給バルブ432を開放し、臭素ガスを反応容器43内に導入し、圧力100Torrに保ちながら粉体P1と臭素とを1時間接触させた。このようにして臭素ガス処理を行なうことで得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により表面元素分析を行なった。その結果、図4に示すように、プラズマ処理を行なった後に、臭素ガスに曝した粉体P2は臭素にかかる信号を示した。その臭素由来のシグナルより、表面元素の組成比を定量したところ、対炭素比率にて0.72%であることが確認できた。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同様の製造装置、同様の超高分子量ポリエチレン微粒子を用いて処理を行った。プラズマ処理による粉体表面における未結合手の形成工程は、実施例1と同じである。
2.臭素ガス処理
予め、臭素液を液体窒素で凍結させ蒸気圧を低下させておき、反応容器43は油回転ポンプ(図示せず)で真空引きを行っておいた。次に臭素供給バルブ432を開放し、臭素ガスを反応容器43内に導入し、圧力100Torrに保ちながら粉体P1と臭素とを2時間接触させた。このようにして臭素ガス処理を行なうことで得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により表面元素分析を行なった。その結果、図4に示すように、プラズマ処理を行なった後に、臭素ガスに曝した粉体P2は臭素にかかる信号を示した。その臭素由来のシグナルより、表面元素の組成比を定量したところ、対炭素比率にて0.88%であることが確認できた。
【0037】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1に示したものと同じ装置を用いたが、プラズマを形成することなく、直接に粉体P1を反応容器43に収納した。実施例1に示した場合と同じように、油回転ポンプ(図示せず)真空引きを行なった後、臭素ガスを導入して圧力100Torrに1時間保つ。このようにして臭素ガス処理を行なった粉体を、X線光電子分光(XPS)にてその表面分析を行なった。分析の結果を同じく図4に示す。図4に示したように、プラズマ処理を行なった後に、臭素ガスに曝した粉体は臭素にかかる信号を僅かに示した。そして、その臭素の表面組成比を定量すると、対炭素比率にて0.08%であることが確認できた。
【0038】
実施例1、2においては、プラズマ処理により、粉体P1に未結合手が生成され、この未結合手に臭素原子が結合していることがわかる。一方、比較例1においては、プラズマ処理を行っていないので未結合手は形成されず、臭素化は行われていないと考えられる。なお、比較例1において、臭素が検出されているのは、臭素分子が物理吸着していること、また、蛍光灯等のわずかな光で臭素ラジカルが生成していることに起因すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる製造装置を示す模式図である。
【図2】製造装置の放電管の長手方向と直交する方向にそった断面図である。
【図3】本発明の変形例にかかる製造装置を示す模式図である。
【図4】実施例1および比較例1の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1A 製造装置
2 放電管
2A 放電室
3 粉体供給部
4 ハロゲン化手段
6 振動部
7 ガス供給部
25 高周波電源
32 収容部
33 バイブレータ
41 回収槽
42 配管
43 反応容器
44 臭素ガス供給部
45 容器
71 ガス供給入口
201 第一の筒部
202 第二の筒部
202A,202B フランジ部
203 第三の筒部
204 供給管
205 排出管
206 供給管
207 排出管
221 放電用ガス供給口
231 第一の電極
232 第二の電極
331 振動管
421 バルブ
432 臭素供給バルブ
L 配管
P1 粉体
P2 粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体をプラズマ処理して、前記粉体を構成する粒子表面に未結合手を形成する工程と、
粉体をプラズマ処理する前記工程の後段にて、前記未結合手が形成された前記粉体を、反応性ガス中に供給することで、前記未結合手に前記反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させる工程とを含む粉体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粉体の製造方法において、
前記未結合手に前記反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させる前記工程では、
未結合手が形成された前記粉体を、プラズマ処理を行うためのプラズマガス雰囲気下から排出して容器中に供給し、前記容器に充填された前記反応性ガスにさらす粉体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉体の製造方法において、
前記反応性ガスは、ハロゲン原子を含むガスであり、
前記未結合手に前記反応性ガスを構成する原子あるいは原子団を結合させる工程では、
前記未結合手にハロゲン原子を結合させる粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の粉体の製造方法において、
前記粉体は、ポリオレフィン粒子の粉体である粉体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の粉体の製造方法において、
前記粉体は、含水率が100ppm以下である粉体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の粉体の製造方法において、
前記粉体をプラズマ処理する際には、プラズマを発生させる放電室中に、前記粉体を落下させ、前記粉体の落下中にプラズマ処理を施す粉体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の粉体の製造方法において、
前記プラズマ処理は、3×10Pa以上、15×10Pa以下で行われる粉体の製造方法。
【請求項8】
プラズマを発生させるための第一の電極および第二の電極と、
前記第一の電極および前記第二の電極間に粉体を供給する粉体供給部と、
プラズマ処理された前記粉体が供給される容器と、
前記容器中に反応性ガスを供給するガス供給部とを有する粉体の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の粉体の製造装置において、
内部に前記第一の電極が配置された第一の筒部と、
この第一の筒部を囲むように配置された第二の筒部と、
前記第二の筒部を囲むように配置された第三の筒部と、
前記第二の筒部と、前記第三の筒部との間に配置された前記第二の電極とを備え、
前記第一の筒部内には、前記第一の電極用の冷却媒体が導入され、
前記第二の筒部と、前記第三の筒部との間には、前記第二の電極用の冷却媒体が導入される粉体の製造装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の粉体の製造装置において、
前記粉体供給部から排出された前記粉体を、プラズマを発生させるためのガス流にのせて、前記第一の電極および前記第二の電極間に落下させる粉体の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載の粉体の製造装置において、
前記粉体供給部は、前記粉体が収容されるとともに、前記粉体を排出するための開口が形成された収容部と、前記収容部の開口から前記粉体の排出を制御するためのバイブレータとを有する粉体の製造装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれかに記載の粉体の製造装置において、
前記第一の電極が取り付けられた第一の筒部と、
この第一の筒部を囲むように配置され、第二の電極が取り付けられた第二の筒部とを有し、
前記第一の筒部と、前記第二の筒部との間に前記粉体が供給され、
前記第一の筒部および前記第二の筒部のうち少なくともいずれか一方には、前記第一の筒部および前記第二の筒部のうち少なくともいずれか一方を振動させる振動部が取り付けられている粉体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−59352(P2010−59352A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228510(P2008−228510)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(502350504)学校法人上智学院 (50)
【Fターム(参考)】