説明

粉体圧縮成形機の杵

【課題】工具を用いることなく、また、組み立てに要する時間を短縮できる構成の粉体圧縮成形機の杵を実現する。
【解決手段】臼孔に挿入されて粉体を圧縮する杵先部材2と、先端側に前記杵先部材が取り付けられて臼孔に対して進退駆動される部材であり、その先端側に径方向に沿って外方に突出した突起部3aを少なくとも1ヶ所は有するホルダ3と、前記杵先部材を保持する杵先保持部41、及び前記ホルダの先端側が挿入される開口部4sを有しており、開口部の外周壁に、前記ホルダの突起部を軸方向に沿って挿抜可能とする受入部4s1と、受入部に周方向に隣接しホルダの突起部と係合して当該突起部を軸方向に沿って挿抜不能とする抜止部4s2とを形成したキャップ4と、前記杵先部材を取り付けた状態の前記ホルダ及び前記キャップに係合してキャップのホルダに対する軸心周りの相対回動を抑止する回り止め部材5とを具備する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杵先部と、この杵先部を保持するホルダ部とを具備する粉体圧縮成形機の杵に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体圧縮成形機の杵の構成として、杵先部と、この杵先部を保持するホルダ部とを有するものが従来より知られている。この種の粉体圧縮成形機の杵の取付構造として、従来、ホルダ部に雄ねじを形成した上で、ホルダ部に杵先部を衝き当て、その後雌ねじを有するキャップをホルダ部にねじ止めすることにより、ホルダ部と杵先部とを互いに固定する構造が採用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、このような構造においては、キャップをホルダ部にねじ止めする際にスパナなどの工具が必要であり、そのような工具を用いてきつくねじ止めしなければ、粉体圧縮成形機を稼働させている間にキャップが緩んでしまうおそれがある。また、誰がねじ止め操作を行った場合であっても同じ締まり方となるように締め付けトルクを管理する必要がある。さらに、ねじ止めの際にキャップを数回転させる手間を要する。そのため、多数の杵を備えた粉体圧縮成形機にこのような構造を採用した場合、金型の組み立てに多大な時間を要するという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−34995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に着目し、工具を用いることなく容易にホルダから杵先部材を着脱でき、また、組み立てに要する手間及び時間を短縮できる構成の粉体圧縮成形機の杵を実現することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る粉体圧縮成形機の杵は、臼孔に充填された粉体を圧縮成形する粉体圧縮成形機用の杵であって、臼孔に挿入されて粉体を圧縮する杵先部材と、先端側に前記杵先部材が取り付けられて臼孔に対して進退駆動される部材であり、その先端側に径方向に沿って外方に突出した突起部を少なくとも1ヶ所は有するホルダと、前記杵先部材を保持する杵先保持部、及び前記ホルダの先端側が挿入される開口部を有しており、開口部の外周壁に、前記ホルダの突起部を軸方向に沿って挿抜可能とする受入部と、受入部に周方向に隣接しホルダの突起部と係合して当該突起部を軸方向に沿って挿抜不能とする抜止部とを形成したキャップと、前記杵先部材を取り付けた状態の前記ホルダ及び前記キャップに係合してキャップのホルダに対する軸心周りの相対回動を抑止する回り止め部材とを具備することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、ホルダの突起部と杵先部材とを合わせるとともにホルダの突起部とキャップの受入部との位相を合わせ、その状態でキャップを開口部側から杵先部材とホルダとにかぶせ、その後キャップを回転させて該キャップの抜止部とホルダの突起部とを係合させることによりホルダにキャップを装着できる、すなわちホルダの先端側に杵先部材を取り付られるとともに、その逆の操作によりホルダの先端側から杵先部材を取り外せる。従って、キャップの着脱を行う際に工具を用いる必要がなく容易にホルダから杵先部材を着脱でき、また、ホルダの先端側に杵先部材を取り付ける際にキャップを1回転以上させる必要がないので、キャップの着脱を行う際にキャップを数回転させる必要がある従来のものと比較して、杵先部材をホルダに取り付ける作業に要する時間を大幅に短縮できる。
【0008】
特に、前記キャップの受入部及び前記キャップの抜止部、並びに前記ホルダの突起部をそれぞれ周方向に3箇所間欠的に設けているものであれば、キャップをホルダに対して安定して取り付けられる。
【0009】
一方、ホルダとキャップとの回り止めを確実に行えるようにするための構成として、前記回り止め部材が、前記ホルダに設けた収納溝及び前記キャップに設けた回り止め部材収納凹部に係り合わせることによりこれらキャップとホルダとの相対回転を規制する部材であるものが挙げられる。
【0010】
そして、前記回り止め部材の先端側に、この回り止め部材を前記キャップの外周壁に内周側で保持させるための保持片を設けているものであれば、この回り止め部材のキャップ及びホルダからの脱落を有効に防止できる。また、前記回り止め部材に磁石を設け、前記ホルダに磁力により接続されるような構成であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、工具を用いることなく容易にホルダから杵先部材を着脱でき、また、組み立てに要する手間及び時間を短縮できる構成の粉体圧縮成形機の杵を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る杵を示す中央縦断面図。
【図2】同実施形態に係る杵を示す分解斜視図。
【図3】同実施形態に係る杵先部材を示す底面図。
【図4】同実施形態に係る杵先部材を示す正面図。
【図5】同実施形態に係るホルダを示す底面図。
【図6】同実施形態に係るホルダを示す正面図。
【図7】同実施形態に係るキャップを示す平面図。
【図8】同実施形態に係るキャップを示す正面図。
【図9】図7におけるx−x断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第一実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る粉体圧縮成形機の杵1は、図1及び図2に示すように、臼孔に充填された粉体を圧縮成形する粉体圧縮成形機用の杵であって、臼孔に挿入されて粉体を圧縮する杵先部材2と、先端側に前記杵先部材2が取り付けられて臼孔に対して進退駆動される部材であり、その先端側に径方向に沿って外方に突出した突起部3aを有するホルダ3と、前記杵先部材2を保持する杵先保持部41、及び前記ホルダ3の先端側が挿入される開口部4sを有しており、開口部4sの外周壁に、前記ホルダ3の突起部3aを軸方向に沿って挿抜可能とする受入部4s1と、受入部4s1に周方向に隣接しホルダ3の突起部3aと係合して当該突起部3aを軸方向に沿って挿抜不能とする抜止部4s2とを形成したキャップ4と、前記杵先部材2を取り付けた状態の前記ホルダ3及び前記キャップ4に係合してキャップ4のホルダ3に対する軸心周りの相対回動を抑止する回り止め部材5とを具備する。
【0015】
具体的には、前記杵先部材2は、図1〜図4に示すように、略円筒状をなし、上述したように先端側が臼穴に挿入されて粉体を圧縮する。また、この杵先部材2の基端側には、前記キャップ4に支持させるべく径方向に拡開した被支持部21を設けている。そして、この杵先部材2の基端側に、キャップ4を介して前記ホルダ3が取り付けられる。
【0016】
前記ホルダ3は、図1、図2、図5、及び図6に示すように、円柱状をなすホルダ本体31と、このホルダ本体31の基端側に設けてなり図示しないローラから押圧力を受ける頭部32と、前記ホルダ本体31の先端側に設けてなりホルダ本体31よりも小さい径なキャップ装着部33とを有する。前記キャップ装着部33は、底面視略正多角形状、より具体的には略正三角形状をなすが、頂点部分はホルダ本体31の中心軸と同心の円弧に沿って面取りを施している。そして、このキャップ装着部33の面取りを施した部分計3箇所の先端部に、径方向に沿って外方に突出した突起部3aをそれぞれ有する。また、前記ホルダ本体31の先端側には、前記回り止め部材5を収納するための回り止め部材収納溝部3xを設けている。この回り止め部材収納溝部3xの断面形状は矩形状をなす。すなわち、この回り止め部材収納溝部3xの底面及び側面はいずれも平面である。さらに、前記回り止め部材収納溝部3xの基端には、前記回り止め部材5の取り外し動作の際に手指を掛けるための指掛け部3yを設けている。この指掛け部3yの底面は、前記回り止め部材収納溝部3xの底面と面一な平面である。そして、上述したように、このホルダ3と前記杵先部材2とを、キャップ4により着脱可能に接続している。
【0017】
前記キャップ4は、図1、図2、図7、図8、及び図9に示すように、略円筒状をなす中空の部材である。このキャップ4の中空部の周壁の先端側には杵先保持部41を設けてなり、この杵先保持部41が前記杵先部材2の被支持部21に衝き当たってこれを保持する。一方、このキャップ4の基端側は、前記ホルダ3の先端側すなわちキャップ装着部33が挿入される開口部4sである。この開口部4sの外周壁には、前記ホルダ3の突起部3aを軸方向に沿って挿抜可能とする前記受入部4s1を、該開口部4sの径を拡開し軸方向に延伸する溝として設けている。また、前記開口部4sの外周壁には、上述したように、前記受入部4s1に周方向に隣接しホルダ3の突起部3aと係合して当該突起部3aを軸方向に沿って挿抜不能とする抜止部4s2を形成している。本実施形態では、互いに周方向に隣接する前記受入部4s1間の部位を前記抜止部4s2としている。さらに、このキャップ4には、基端側を軸方向に切り欠いて回り止め部材収納凹部4xを形成している。そして、このキャップ4と前記ホルダ3との間の回り止めを行うべく、前記回り止め部材5を着脱可能に設けている。
【0018】
前記回り止め部材5は、図1及び図2に示すように、この杵1の使用時において前記ホルダ3の回り止め部材収納溝部3x及び前記キャップ4の回り止め部材収納凹部4xに収納される。また、この回り止め部材5の先端側には、この回り止め部材5を前記キャップ4の外周壁に内周側で保持させるための保持片51を備えている。このような構成であれば、回り止め部材5の着脱を容易に行える。また、粉体圧縮成形機に杵1を取り付ければ、粉体圧縮成形機の図示しない杵保持部により、杵1のホルダ3及び回り止め部材5は保持される。従ってこのような簡単な構成であっても、粉体圧縮成形機に杵1を取り付けた状態で、回り止め部材5がホルダ3から外れることはない。
【0019】
本実施形態の杵1の組立は、例えば以下の手順により行う。
【0020】
まず、ホルダの突起部3aと杵先部材2の突起部2aとを合わせ、キャップ4の受入部4s1とこれら突起部2a、3aとの位相を合わせる。次いで、その状態でキャップ4を開口部4s側から被支持部21とキャップ装着部33とにかぶせる。その後、キャップ4を回転させて該キャップ4の抜止部4s2とホルダ3の突起部3aとを係合させる。そして、回り止め部材5の保持片51をキャップ4の外周壁と杵先部材2の被支持部21の切欠部との間に挿入し、回り止め部材5をホルダ3の回り止め部材収納溝部3x及びキャップ4の回り止め部材収納凹部4x内に収納する。
【0021】
一方、杵1の分解は、例えば以下の手順により行う。
【0022】
まず、指掛け部3yに手指を掛けて回り止め部材5をキャップ4及び杵先部材2から軸方向に離間する方向に引き抜いて回り止め部材5を取り除く。その後、キャップ4を回転させてホルダ3の突起部3aの位相とキャップ4の受入部4s1の位相とを合わせ、キャップ4及び杵先部材2をホルダ3から引き抜く。そして、杵先部材2をキャップ4から引き抜く。
【0023】
以上に述べたように、本実施形態の構成によれば、ホルダの突起部3aと杵先部材2の突起部2aとを合わせ、キャップ4の受入部4s1とこれら突起部2a、3aとの位相を合わせ、その状態でキャップ4を開口部4s側から被支持部21とキャップ装着部33とにかぶせ、その後キャップ4を回転させて該キャップ4の抜止部4s2とホルダ3の突起部3aとを係合させることによりホルダ3にキャップ4を装着する、すなわちホルダ3の先端側に杵先部材2を取り付けることができるとともに、その逆の操作によりホルダ3の先端側から杵先部材2を取り外せる。従って、キャップ4の着脱を行う際に工具を用いる必要がなく、また、ホルダ3の先端側に杵先部材2を取り付ける際にキャップ4を1回転以上させる必要がないので、キャップ4の着脱を行う際にキャップ4を数回転させる必要がある従来のものと比較して、杵先部材2をホルダ3に取り付ける作業に要する時間を大幅に短縮できる。
【0024】
特に、本実施形態では、前記キャップ4の受入部4s1及び前記キャップ4の抜止部4s2、並びに前記ホルダ3の突起部3aをそれぞれ周方向に3箇所間欠的に設けているので、キャップ4をホルダ3に対して安定して取り付けられる。
【0025】
さらに、前記回り止め部材5が、前記ホルダ3に設けた回り止め部材収納溝部3x及び前記キャップ4に設けた回り止め部材収納凹部4xに係り合わせることによりこれらキャップ4とホルダ3との相対回転を規制する部材であるので、ホルダ3とキャップ4との回り止めを確実に行える。
【0026】
そして、前記回り止め部材5の先端側に、この回り止め部材5を前記キャップ4の外周壁に内周側で保持させるための保持片51を設けているので、この回り止め部材5のキャップ4及びホルダ3からの脱落を有効に防止できる。
【0027】
なお、本発明は、以上に述べた実施形態に限られない。
【0028】
例えば、前記キャップの受入部及び前記キャップの抜止部、並びに前記ホルダの突起部は、2箇所以下でもよく、4箇所以上であってもよい。
【0029】
また、回り止め部材とホルダとの間、及び回り止め部材とキャップとの間に、回り止め部材とホルダ又はキャップのうち一方から軸方向に突出させて設けた突起と、この突起と係合可能に他方に設けた係止凹部とを係合させてなる回り止め部を設けるなど、他の手段によりホルダとキャップとの回り止めを行うようにしてもよい。
【0030】
加えて、杵先部材の形状は上述した実施形態におけるものに限定されず、例えば、被支持部に2つの杵先部材が備えられているような構成の杵先部材であってもよい。
【0031】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0032】
1…杵
2…杵先部材
3…ホルダ
3a…突起部
4…キャップ
41…杵先保持部
4s…開口部
4s1…受入部
4s2…抜止部
5…回り止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臼孔に充填された粉体を圧縮成形する粉体圧縮成形機用の杵であって、
臼孔に挿入されて粉体を圧縮する杵先部材と、
先端側に前記杵先部材が取り付けられて臼孔に対して進退駆動される部材であり、その先端側に径方向に沿って外方に突出した突起部を少なくとも1ヶ所は有するホルダと、
前記杵先部材を保持する杵先保持部、及び前記ホルダの先端側が挿入される開口部を有しており、開口部の外周壁に、前記ホルダの突起部を軸方向に沿って挿抜可能とする受入部と、受入部に周方向に隣接しホルダの突起部と係合して当該突起部を軸方向に沿って挿抜不能とする抜止部とを形成したキャップと、
前記杵先部材を取り付けた状態の前記ホルダ及び前記キャップに係合してキャップのホルダに対する軸心周りの相対回動を抑止する回り止め部材と
を具備する粉体圧縮成形機用の杵。
【請求項2】
前記キャップの受入部及び前記キャップの抜止部、並びに前記ホルダの突起部をそれぞれ周方向に3箇所間欠的に設けている請求項1記載の粉体圧縮成形機の杵。
【請求項3】
前記回り止め部材が、前記ホルダに設けた収納溝及び前記キャップに設けた回り止め部材収納凹部に係り合わせることによりこれらキャップとホルダとの相対回転を規制する部材である請求項1又は2記載の粉体圧縮成形機の杵。
【請求項4】
前記回り止め部材の先端側に、この回り止め部材を前記キャップの外周壁に内周側で保持させるための保持片を設けている請求項3記載の粉体圧縮成形機の杵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−106257(P2012−106257A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256675(P2010−256675)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000141543)株式会社菊水製作所 (29)