説明

粉体塗料用樹脂組成物

【課題】 発泡等に起因するピンホールの発生を抑制し、塗膜の平滑性に優れ、耐食性、機械的特性が良好な塗膜を得ることが出来る粉体塗料用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 1分子中にグリシジル基(x1)とアセタール基(x2)とを有する化合物(A)と、前記化合物(A)以外のエポキシ基含有固形樹脂(B)と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)とを含有し、前記化合物(A)の含有量が前記エポキシ基含有固形樹脂(B)と前記化合物(C)との合計100重量部に対して0.5〜10重量部であることを特徴とする粉体塗料用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡等に起因するピンホールの発生を抑制し、塗膜の平滑性に優れ、耐食性、機械的特性が良好な塗膜を得ることが出来る粉体塗料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は溶剤を使用する溶剤型塗料に比べて溶剤を使用しないので、環境汚染や火災の危険性が少ない、貯蔵安定性が良好、保管、運搬などの取り扱いが容易、厚膜塗装が可能などの利点を有するため、近年、その使用量が伸びている塗料材料である。このような粉体塗料の代表的なものとしては、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系の3種類が挙げられる。このような粉体塗料は、家電製品、自動車部品、電子部品、金属家具、建築資材の被覆等に幅広く使用されている。該粉体塗料は一般的に常温で塗装した後、被塗物を180℃〜220℃の高温で焼き付け、粉体塗料のレベリング及び硬化を行って塗膜を得ているが、近年、硬化温度の低温化による省コスト志向や、硬化時の発泡防止による塗膜の平滑性の向上、及び塗膜の構造欠陥であるピンホールの発生の抑制による耐食性の向上等の高性能化志向が高まっている。
【0003】
また、粉体塗料の用途の一つである水道用鋳鉄管の用途においては、鋳造時に鋳鉄管表面に引け巣が発生しやすく、またその製造工程には水圧試験があるため、引け巣内部や鋳鉄管表面に水分が残留することになり、この結果、200℃以上に予熱した鋳鉄管を粉体塗装する際には残留した水分がガス化しピンホールが発生するという問題を抱えており、このピンホールを防止することが重要課題である。
【0004】
これらの要求に対して、例えば、塗料の流れ性を確保し、焼付け過程において発生する揮発成分や粒子に付着した空気等を抜けやすくし、該ピンホール発生を防止する方法として結晶性エポキシ樹脂を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記特許文献1に提案された方法では、粉体塗料の流れ性が良好であることからピンホール等の発生抑制効果や平滑性の向上効果はあるものの、塗膜物性、耐水性等が実用レベルではなく、根本的解決に至っていない。
【0005】
【特許文献1】特開平7−138502号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような実状に鑑み、本発明の課題は、発泡等に起因するピンホールの発生を抑制し、塗膜の平滑性に優れ、耐食性、機械的特性が良好な塗膜を得ることが出来る粉体塗料用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1分子中にグリシジル基とアセタール基とを有する化合物を、前記化合物以外のエポキシ基含有固形樹脂とエポキシ基と反応する官能基を有する化合物との合計100重量部に対して0.5〜10重量部配合した粉体塗料用樹脂組成物を用いることにより、発泡等に起因するピンホールの発生が抑制され、塗膜の平滑性に優れ、耐食性、機械的特性が良好な塗膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、1分子中にグリシジル基(x1)とアセタール基(x2)とを有する化合物(A)と、前記化合物(A)以外のエポキシ基含有固形樹脂(B)と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)とを含有し、前記化合物(A)の含有量が前記エポキシ基含有固形樹脂(B)と前記化合物(C)との合計100重量部に対して0.5〜10重量部であることを特徴とする粉体塗料用樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物を用いることにより、得られる硬化塗膜の優れた機械的強度や耐食性を損なうことなく、硬化時の発泡が少なく、硬化塗膜の平滑性に優れ、ピンホール等の発生も抑えられ、均質性に優れた塗膜を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる化合物(A)は、1分子中にグリシジル基(x1)とアセタール基(x2)とを有するものである。前記グリシジル基(x1)及び前記アセタール基(x2)は下記構造式(3)及び(4)
【0011】
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表されるものである。グリシジル基(x1)は、後述するエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)と反応することが可能であり、前記化合物(A)が硬化後に架橋構造中に組み込まれることから、得られる硬化塗膜の機械的強度に対する悪影響を防止するための必須の官能基である。また、前記アセタール基(x2)は後述するエポキシ基含有固形樹脂(B)とエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)との加熱硬化時に発生するピンホール等の構造欠陥の発生抑制や平滑性の向上を図る効果を発現させるために必要な官能基である。このような官能基を有する化合物(A)を粉体塗料用樹脂組成物中に配合することによって、硬化塗膜の平滑性に優れ、ピンホール等の発生も抑えられ、均質性に優れた機械的強度が良好な硬化物が得られるものである。
【0012】
前記化合物(A)は前述のような効果を発現させるために、その配合量は後述するエポキシ基含有固形樹脂(B)とエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)との合計100重量部に対して0.5〜10重量部であることが必要である。該配合量が0.5重量部未満では、ピンホールの抑制効果が不足し、10重量部を超えると、得られる粉体塗料の軟化点が低下し、粉体塗料としての粉末状態の維持が困難である。
【0013】
前記化合物(A)としては、より一層の効果を発現することから、更にポリオキシアルキレン構造(x3)を有することが好ましい。ポリオキシアルキレン構造(x3)の中でも、構造欠陥の発生抑制や平滑性の向上を図る効果に優れる点から炭素数2〜4のポリオキシアルキレン構造であることが好ましい。また、ポリオキシアルキレン構造(x3)の繰り返し単位が大きくなると、得られる硬化物の架橋密度低下により機械的強度が低下することがあるため、好ましい繰り返し単位としては2〜5である。
【0014】
前記化合物(A)としては、例えば、下記一般式(1)
【0015】
【化2】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは2価の有機基を表す。)
で表される化合物、又は下記一般式(2)
【0016】
【化3】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは2価の有機基であり、R、Rは同一でも異なっていても良い水素原子又はメチル基である。)
で表される化合物が挙げられ、単独でも、2種以上の化合物を併用して用いても良い。
【0017】
これらの中でも、前述のように式(1)及び式(2)中のXがポリオキシアルキレン構造(x3)であることが好ましく、具体的には、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ブチレンオキシブチル基、ジ(ブチレンオキシ)ブチル基又はトリ(ブチレンオキシ)ブチル基であることが好ましい。これらの好ましい化合物を用いる場合は、構造欠陥の発生抑制や平滑性の向上を図る効果が高いため、その配合量としては、後述するエポキシ基含有固形樹脂(B)とエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)との合計100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。また、前記一般式(1)及び式(2)中のRとしては、原料入手が容易である点、及び硬化性が良好である点から水素原子であることが好ましく、更に、前記一般式(2)中のR及びRとしては、得られる硬化塗膜の機械的強度を低下させにくい点からメチル基であることが好ましい。
【0018】
前記化合物(A)の製造方法としては、特に限定されるものではない。例えば、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、ジビニルエーテル類とグリシドール類とのアセタール化反応による製造方法を挙げることができる。
【0019】
前記アセタール化反応は、ジビニルエーテル類中のビニルエーテル基とグリシドール類中の水酸基との付加反応であり下記化学反応式
【0020】
【化4】

で表されるものである。
【0021】
前記ジビニルエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレンレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、トリブチレングリコールジビニルエーテル、テトラブチレングリコールジビニルエーテル等のポリオキシアルキレン構造を含有するジビニルエーテル類;1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,10−デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジビニルエーテル等のアルキレン鎖を有するジビニルエーテル類;1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテル類;ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテルのようなジビニルエーテル類などが挙げられ、単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。
【0022】
これらの中でも、前述のようにポリオキシアルキレン構造(x3)を有する化合物が得られる点から、ポリオキシアルキレン構造を含有するジビニルエーテル類を用いることが好ましい。
【0023】
前記グリシドール類としては、エポキシ基と水酸基とを有するグリシドールやβ位メチル基置換グリシドールなどが挙げられるが、工業的な入手のし易さや経済性を考慮するとグリシドールを用いることが好ましい。
【0024】
前記ジビニルエーテル類とグリシドール類との反応について述べる。反応方法としては、ジビニルエーテル類とグリシドール類とを仕込み、撹拌混合しながら加熱する方法が挙げられる。この場合、必要に応じて、有機溶媒や触媒を使用することができる。使用できる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒等を挙げることができ、用いる原料や生成物の溶解度などの性状や反応条件や経済性等を考慮して適宜選択すればよい。有機溶媒の量としては、原料重量に対して、5〜500重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0025】
また前記触媒としては、通常、無触媒系においても反応は進行するが、反応速度を高めたり、グリシドールの自己重合を防ぐ低温条件で反応を進めたりするためには、触媒を用いた方が好ましい。その触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酸性燐酸エステル類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三弗化ホウ素エーテル錯体、三弗化ホウ素フェノール錯体などのルイス酸等が挙げられ、添加量としては、原料全重量に対して、10ppm〜5重量%の範囲で用いることができる。これらの中でも、酸性燐酸エステル類が反応速度が良好であり、副反応が少ない点等から特に好ましい。
【0026】
ジビニルエーテル類とグリシドール類との反応操作条件としては、通常、室温から150℃、好ましくは20〜100℃の温度で、0.5〜30時間程度、加熱撹拌すればよい。反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、GPC等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡できる。また有機溶媒を使用した場合は、反応終了後、蒸留等でそれを除去し、触媒を使用した場合は、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去することが好ましい。
【0027】
上記反応におけるジビニルエーテル類とグリシドール類との反応比率としては、特に限定されないが、効率よく所望の化合物が得られる点から、ビニルエーテル基/グリシドール基=100/80〜100/150(モル比)になるような仕込み条件で反応させることが好ましい。
【0028】
又、前記一般式(2)で表される化合物の製造方法としては、例えば、特開2004−156024号公報に記載されている、前記ジビニルエーテル類とビスフェノール類とを、前述のアセタール化反応と同様にして反応させて、変性ビスフェノールを得た後、エピハロヒドリンと反応させて水酸基をグリシジルエーテル化する方法が挙げられる。
【0029】
このとき用いることが出来るジビニルエーテル類としては、前述のものが全て例示できる。又、ビスフェノール類としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、及びこれらの置換基含有体等が挙げられ、単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。これらの中でも得られる硬化塗膜の機械的強度を低下させにくい点からビスフェノールAを用いることが好ましい。
【0030】
前記ジビニルエーテル類とビスフェノール類との反応方法としては、前述のグリシドール類との反応方法と同様である。但し、触媒添加系においては、芳香環に対するビニル基の核付加反応を起こさないように、その種類や添加量、及び反応条件を選択する必要がある。
【0031】
上記反応におけるビニルエーテル類とビスフェノール類との反応比率としては、反応生成物1分子中に1個以上の芳香族性水酸基が残るような比率であれば、特に限定されないが、〔ビスフェノール類の芳香族性水酸基〕/〔ジビニルエーテル類のビニルエーテル基〕=80/20〜50/50(モル比)となるような割合が好ましい。
【0032】
次いで、得られた変性ビスフェノール類のグリシジルエーテル化の方法に関して詳述する。該方法としては特に限定されるものではないが、例えば、前記で得られた変性ビスフェノール類とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンの溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。エピハロヒドリンの添加量としては、原料の変性ビスフェノール類中の水酸基1当量に対して、通常、0.3〜20当量の範囲で用いられる。ここで用いるエピハロヒドリンとしては、原料入手が容易である点からエピクロルヒドリンが好ましい。
【0033】
前記アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0034】
また変性ビスフェノール類とエピハロヒドリンとの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる該フェノール類のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0035】
更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量としては、エピハロヒドリンの量に対し通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%である。
【0036】
これらのグリシジルエーテル化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや他の添加溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ない化合物とするために、エピハロヒドリン等を回収した後に得られる粗化合物を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応させて閉環を確実なものにすることもできる。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は粗化合物中に残存する加水分解性塩素1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5.0モルである。反応温度としては通常50〜120℃、反応時間としては通常0.5〜3時間である。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、粗化合物に対して0.1〜3.0重量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的の化合物(A)を得る事ができる。
【0038】
もちろん変性ビスフェノール類を製造して、反応器から取り出すことなくして、そのままエピハロヒドリン類等の原料を仕込み、連続してグリシジルエーテル化するような合理的手段も用いることができる。
【0039】
本発明で用いるエポキシ基含有固形樹脂(B)としては、その構造として特に限定されるものではなく、種々のものを使用することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の固形エポキシ樹脂や1,3,5−トリスグリシジルイソシアヌル酸トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)等の固形樹脂が挙げられ、得られる塗膜の耐食性や機械的強度に優れる点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)を用いることが好ましい。
【0040】
また、エポキシ基含有ビニル系単量体とその他の重合可能なビニル系単量体との共重合体(b2)を用いることも出来る。重合方法は特に規定しないが、ラジカル重合法が工業的に良く用いられる。
【0041】
ここで用いられるエポキシ基含有ビニル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、またはβ−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の各種のグリシジルエステル類、(メタ)アリルグリシジルエーテル、(メタ)アリルメチルグリシジルエーテル等の各種のアリルグリシジルエーテル類、3,4−シクロヘキシルアクリレート、3,4−シクロヘキシルメタクリレート等の各種の脂環式エポキシ基含有ビニル系単量体などが挙げられる。
【0042】
これらのエポキシ基含有単量体類と共重合可能なビニル系単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等の各種のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート等の各種メタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンクグリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれらの各種(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの付加反応主成分等;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸等各種のカルボキシル基含有単量体類、さらにイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の各種の多価カルボキシル基含有単量体と、炭素数1〜18のモノアルキルアルコールとのモノ−ないしはジエステル類;またはN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレ−ト類;ターシャリ−(tert−)ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等の各種アミノ基含有単量体、エチレン、プロピレン、ブテン1等の各種α−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のフルオロオレフィンを除く、各種ハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の各種の芳香族ビニル化合物;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の各種加水分解性シリル基含有単量体;ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等の各種ふっ素含有−α−オレフィン類;トリフルオロメチルトリフルオロビニルエ−テル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、ヘプタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル等の各種のパーフルオロビニルエーテル、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(アルキル基の炭素数が1〜18)等の含ふっ素ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素数9〜11の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の各種脂肪族カルボン酸ビニル類;シクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸の各種ビニルエステル類等が挙げられ、単独でも2種以上の混合物としても使用できる。
【0043】
前記エポキシ基含有ビニル系単量体の使用量としては、得られる塗膜の耐食性、機械的強度に優れる点から、使用するビニル系単量体の総量の20〜100重量%であることが好ましく、特に20〜60重量%であることが好ましい。
【0044】
前記共重合体(b2)としては、例えば、ファインディック A−247S(軟化点109℃)、ファインディック A−224S(軟化点112℃)、ファインディック A−253(軟化点107℃)、ファインディック A−207S(軟化点102℃)、ファインディック A−229−30(軟化点109℃)、ファインディック A−244(軟化点111℃)、ファインディック A−249(軟化点120℃)、ファインディック A−261(軟化点105℃)(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0045】
前記エポキシ基含有固形樹脂(B)のエポキシ当量としては、特に限定されるものではない。また、耐ブロッキング性に優れ、粉体塗料化が容易である点から、環球法(5℃/分昇温法)による軟化点が55〜130℃の範囲であることが好ましく、特にこれらの効果が顕著である点から、且つ環球法(5℃/分昇温法)による軟化点が80〜120℃であることが好ましい。
【0046】
本発明で用いるエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)としては、特に限定されるものでないが、例えば、イミダゾール・イミダゾリン化合物、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジン及びその誘導体等のアミン系硬化剤、或いは多価カルボン酸と多価アルコールから得られるポリエステル樹脂、フェノール樹脂及びその誘導体、酸無水物、二塩基酸等が挙げられる。
【0047】
前記イミダゾール類としては、例えば、メチルイミダゾール、メチルイミダゾリン、ドデシルイミダゾール、ドデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾリン、フェニルイミダゾール、フェニルイミダゾリン、それらの1−シアノエチル化物、イソシアヌル酸付加物、トリメリット酸付加物、イミダゾール、イミダゾリン類とビスフェノール類との反応物等が挙げられる。前記イミダゾール類を前記化合物(C)として使用する場合の配合量としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。
【0048】
前記ジシアンジアミドを前記化合物(C)として使用する場合の配合量としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対し、0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。
【0049】
有機酸ヒドラジンとしては、硬化後に加熱を行う場合の黄変性が著しく改善される点からポリカルボン酸ポリヒドラジド及びその誘導体が好ましく、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等及びそれらの誘導体が挙げられる。前記有機酸ヒドラジンを前記化合物(C)として使用する場合の配合量としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対し、2〜15重量部の範囲であることが好ましい。
【0050】
前記ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸と多価アルコールを反応させて得られる1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する軟化点が80〜130℃であるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂や多価カルボン酸と多価アルコールを反応させて得られる水酸基とカルボキシル基の異なる官能基を有する軟化点が80〜130℃であるポリエステル樹脂が好ましく、例えば、ファインディック M−8520(軟化点105℃)、M−8850(軟化点104℃)、M−8841(軟化点114℃)、M−8630(軟化点119℃)、M−8860(軟化点113℃)、ファインディック M−8830(軟化点108℃)、ファインディック M−8871(軟化点105℃)、ファインディック M−8842(軟化点114℃)、ファインディック A−239J(軟化点118℃)、ファインディック A−239X(軟化点110℃)、ファインディック M−8410(軟化点111℃)、ファインディック M−8420(軟化点116℃)(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。前記ポリエステル樹脂を前記化合物(C)として使用する場合の配合量としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対し、25〜400重量部の範囲であることが好ましい。なお、水酸基含有ポリエステル樹脂に対してはブロックイソシアネ−ト化合物を配合することにより得られる塗膜の防食性や可とう性が向上し、好ましい。
【0051】
前記フェノール樹脂としては、常温で固形であれば特に限定されず、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールホルムアルデヒド樹脂、ビスフェノールAホルムアルデヒド樹脂及びそれらとトリアジンとの反応物、ビスフェノール類とビスフェノール型エポキシ樹脂との反応物等が挙げられ、これらの中でも粉体塗料としての貯蔵安定性、流動性に優れる点から軟化点80〜130℃のフェノール樹脂が好ましく、具体的にはフェノライトTD−2090(軟化点120℃)、VH−4170(軟化点105℃)(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、TH−4100(軟化点113℃、東都化成株式会社製)等の製品として入手できるものが挙げられる。前記フェノール樹脂を前記化合物(C)として使用する場合の配合量としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対し、4〜40重量部の範囲であることが好ましい。また、ビスフェノールAホルムアルデヒド樹脂の場合は、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対し、15〜250重量部の範囲で配合してもよい。
【0052】
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリッド酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水マレイン酸−スチレン共重合体、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。前記酸無水物の配合割合としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対して2〜35重量部の範囲であることが好ましい。
【0053】
前記二塩基酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族二塩基酸を使用できる。前記二塩基酸の配合割合としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対して4〜50重量部の範囲であることが好ましい。
【0054】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を併用しても良い。硬化促進剤としては特に限定されるものではないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、サリチル酸、スベリン酸、セバチン酸等の有機酸、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン(TPP)等の3級ホスフィン類が挙げられる。これらの硬化促進剤としては、エポキシ基含有固形樹脂(B)100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物には、必要に応じて更に充填材を配合することができる。前記充填材としては、特に制限されるものではないが、例えば硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、シリカ、マイカ、アルミナ等の体質顔料、カーボンブラック、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等の着色剤を挙げることができる。前記充填材の使用量としては特に限定されるものではないが、粉体塗料化物中の10〜50重量%となる範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物は、前記化合物(A)、固形樹脂(B)、前記化合物(C)、及び必要に応じて配合される硬化促進剤、添加剤、充填材等を均一に混合することによって得ることが出来、その方法として特に限定されるものではなく、前記化合物(A)は後記する塗料化時に添加しても良いが、得られる粉体塗料がより均一性に優れたものになる点から、固形樹脂(B)に予め混合して使用することが好ましい。その方法としては、例えば、固形樹脂(B)の製造時における取り出し前の溶融状態であるところに添加し均一に攪拌してから取り出すことによって、前記化合物(A)と固形樹脂(B)とを均一な固体状態とする方法が挙げられる。市販の固形樹脂(B)を用いる場合には、予め該固形樹脂(B)を軟化点以上に加温して溶融状態にし、ここに前記化合物(A)を添加し均一に攪拌した後、冷却して固体とする方法が挙げられる。
【0057】
かかる材料を用いての粉体塗料化は、例えば、化合物(A)、固形樹脂(B)、化合物(C)、充填材、硬化促進剤、その他の添加剤などを粗粉砕、配合した後、ヘンシェルミキサー等の粉砕混合機を用いて充分に粉砕、混合し、これを加熱されたニーダーを用いて溶融混練し、冷却後粉砕、分級して得ることができる。前記手法によって得られる粉体塗料としては、平均粒子径20〜150μmであることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で特に断りのない限り、「部」「%」は重量基準である。
【0059】
合成例1 下記構造式(I)で表される化合物(A−1)の合成
【0060】
【化5】

【0061】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにトリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVE−3)202gとグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)148gを仕込み、室温でメチルアシッドフォスフェート(大八社製:商品名AP−1)1gを添加し、70℃まで昇温して8時間撹拌を続けた。GPCで原料の実質的な消失を確認後、内容物を取り出し、無色透明の液体を351g得た。その樹脂はNMRスペクトル(13C)から、またマススペクトルで理論構造に相当するM=350のピークが得られたことから前記構造式(I)で表される化合物(A−1)であることを確認した。この樹脂(A−1)のエポキシ当量は188g/eqであり、GPCによって測定された理論構造体〔構造式(I)の構造〕の含有量は71面積%であった。
【0062】
合成例2 下記構造式(II)で表される化合物(A−2)の合成
【0063】
【化6】

温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228g(1.00モル)とトリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVE−3)172g(0.85モル)を仕込み、120℃まで1時間要して昇温した後に、さらに120℃で6時間反応させて、透明半固形の原料樹脂(変性ビスフェノール)400gを得た。これの水酸基当量は364g/eq.であった。次いで、上記で得られた原料樹脂400g、エピクロルヒドリン925g(10モル)、n−ブタノール185gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液122g(1.5モル)を5時間かけて滴下した、次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、化合物(A−2)を得た。これのエポキシ当量は462g/eq、粘度は12,000mPa・s(25℃、キャノンフェンスケ法)、エポキシ当量から算出される上記構造式中のnの平均値は1.35であることが確認された。
【0064】
実施例1〜22
合成例1〜2で得られた化合物(A−1)、化合物(A−2)及びエポキシ基含有固形樹脂(B)と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)、その他の成分とを、表1〜11に記載の割合で配合し、ヘンシェルミキサーを用いて充分に粉砕、混合し粉体塗料用樹脂組成物を得た。その後、エクストルーダーとして、Buss社製 コ・ニーダーPCS−30を用い、バレル温度を85〜95℃に加熱しながら溶融混練し、押出し、冷却後粉砕、分級して粒径20〜50μmの粉体塗料(P1〜P22)を得た。
【0065】
比較例1〜12
表1〜11に記載の割合で配合し、上記実施例と同様にしてエポキシ樹脂組成物および粉体塗料(Q1〜Q12)を調製した。
【0066】
貯蔵安定性
高さ10mmで直径50mmのガラスシャーレに、作製した粉体塗料を5g敷き、20gで直径40mmのおもりを置き、40℃で1週間保存し、形状の変化を確認した。形状の変化が見られない場合を○、ブツまたはブロッキングが発生した場合は×とした。
得られた結果を表1〜11に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
【表9】

【0076】
【表10】

【0077】
【表11】

【0078】
応用例1〜22、及び比較応用例1〜12
得られた前記粉体塗料(P1〜P22及びQ1〜Q12)を用いて、印加電圧−70kVにて幅70mm×長150mm×厚0.8mmのリン酸亜鉛鋼板へ静電塗装を行った後、電気式乾燥機中にて焼付を行い、塗膜を得た。得られた塗膜の外観、エリクセン試験、塩水噴霧試験を以下の基準に従って行った。結果を表12〜22に示す。
【0079】
硬化塗膜の外観
塗膜表面の平滑度を目視で確認した。ユズ肌、ピンホール等の異常が確認されない場合を良好とした。
○:良好、×:不良
【0080】
エリクセン試験
JIS Z 2247のA法により、塗膜にクラックが入る押し出し量を確認した。単位はmmである。
【0081】
塩水噴霧試験
塗膜面に基材に達する傷を入れ、35℃で5%NaCl水溶液を1000時間連続噴霧した後の塗膜の状態、および傷口にナイフを入れクリープの剥離幅を確認した。状態は膨れが発生した場合を不良とした。また、剥離幅の単位はmmである。
○:問題なし、×:膨れ発生
【0082】
【表12】

【0083】
【表13】

【0084】
【表14】

【0085】
【表15】

【0086】
【表16】

【0087】
【表17】

【0088】
【表18】

【0089】
【表19】

【0090】
【表20】

【0091】
【表21】

【0092】
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にグリシジル基(x1)とアセタール基(x2)とを有する化合物(A)と、前記化合物(A)以外のエポキシ基含有固形樹脂(B)と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)とを含有し、前記化合物(A)の含有量が前記エポキシ基含有固形樹脂(B)と前記化合物(C)との合計100重量部に対して0.5〜10重量部であることを特徴とする粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(A)が更にポリオキシアルキレン構造(x3)を有する化合物(a1)である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)が下記一般式(1)
【化1】

[式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはエチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ブチレンオキシブチル基、ジ(ブチレンオキシ)ブチル基、又はトリ(ブチレンオキシ)ブチル基である。]
で表される化合物、又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R、Xは前記と同じであり、R、Rは同一でも異なっていても良い水素原子又はメチル基であり、nは自然数でありその平均が1.2〜5である。)
で表される化合物である請求項2記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(A)の含有量がエポキシ基含有固形樹脂(B)と前記化合物(C)との合計100重量部に対して1〜5重量部である請求項2記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基含有固形樹脂(B)がビスフェノール型固形エポキシ樹脂(b1)である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基含有固形樹脂(B)がエポキシ基含有ビニル系単量体とその他の重合可能なビニル系単量体との共重合体(b2)である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ基含有固形樹脂(B)の軟化点が55〜130℃である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)がアミン系硬化剤である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項9】
アミン系硬化剤が、イミダゾ−ル類、有機酸ヒドラジン、又はジシアンジアミドである請求項8記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項10】
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)が、軟化点80〜130℃のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)が、軟化点70〜130℃のフェノ−ル樹脂である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項12】
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)が酸無水物である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項13】
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物(C)が二塩基酸である請求項1記載の粉体塗料用樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−241222(P2006−241222A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55783(P2005−55783)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】