説明

粉体用スクレーパー

【課題】装置の面上にある粉体の形態や状態に関わらず、スクレーパーにより上記粉体にかかる力を分散させて圧密を抑えつつ、粉体を除去する。
【解決手段】 装置の所定の面上にある粉体に接触して上記粉体を移動させる板状体1からなるスクレーパーであって、この板状体1は角部1a及び/又は曲部を有し、その角部1a及び/又は曲部が上記粉体10と接触して上記粉体10を上記面に対して移動させる粉体用のスクレーパーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体を圧密させることを避けつつ、装置の所定の面上にある粉体を取り扱うスクレーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を取り扱うプロセスにおいて、その粉体が装置に付着すると、上記粉体の流路を遮ったり、安定運転や生産の妨げとなったりすることがある。そこで、粉体が大量に蓄積する前に、金属製又は樹脂製の平らなスクレーパーで擦り切ったり、均したり、送り出したりして、付着した粉体を移動させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、装置の面に付着する粉体の高さは一定ではないため、粉体の突出部をスクレーパーで擦切ったり均したり送り出したりして移動させる際に、スクレーパーと装置の面との間の隙間に入り込む粉体に集中的に力がかかってしまうことで、そのスクレーパーの直下の粉体を圧密して、粉体を固化させてしまう原因となることがある。
【0004】
そこでこの発明は、装置の面上にある粉体の形態や状態に関わらず、スクレーパーにより上記粉体にかかる力を分散させて圧密を抑えつつ、上記粉体を移動させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、装置の所定の面上にある粉体に接触して上記粉体を移動させる板状体からなるスクレーパーであって、この板状体は角部及び/又は曲部を有し、その角部及び/又は曲部が上記粉体と接触して上記粉体を上記面に対して移動させる、粉体用のスクレーパーにより上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかるスクレーパーを用いて粉体を装置の所定の面に対して移動させると、角部や曲部によってスクレーパーが粉体にかける力が集中せずに分散されるので、粉体が上記面に圧密されて固着することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、装置の所定の面上にある粉体に接触して上記粉体を移動させる板状体からなるスクレーパーであって、この板状体は角部及び/又は曲部を有し、その角部、曲部又はその両方が上記粉体と接触して上記粉体を上記面に対して移動させる、粉体用のスクレーパーである。ここで上記粉体を上記面に対して移動させるとは、上記スクレーパーを動かすことによって移動させる場合だけではなく、上記スクレーパーを固定しつつ上記面を動かすことによって、上記粉体を上記面に対して相対的に移動させる場合も含む。
【0008】
上記粉体を上記面に対して移動させるとは、上記粉体を送り出したり取り除いたりすることに加え、上記粉体の一部を移動させることにより、高さがまちまちである上記粉体を一定の高さに均したり、ある高さ以上にならないように擦り切ったりして、ある一様な表面形態に整えたりすることを含む。
【0009】
上記スクレーパーは、上記板状体の粉体に接触する部分が角部、曲部又はその両方を有するため、上記粉体が積み重なった箇所から移動させる場合にも、上記粉体にかかる力を上記角部、曲部又はその両方によってずらすことで分散させることが出来るので、上記装置の所定の面と上記スクレーパーとの隙間に入り込む上記粉体の一部に局所的な力が加わって固化が起きるのを避けることができる。
【0010】
このようなスクレーパーとしては、上記の角部の先端又は曲部の稜線が、上記粉体を移動させる方向を向いたものと、上記角部、曲部又はその両方が、上記粉体の付着する装置の所定の面側を向いたものと、それらの両方を備えたものとがある。なお、上記の移動させる方向とは、上記スクレーパーを動かす場合にはその方向を、上記スクレーパーを固定して上記粉体が付着する上記装置の所定の面を移動させる場合には、その移動方向の反対方向をいう。
【0011】
まず、上記角部が上記粉体を移動させる方向を向いたスクレーパーについて説明する。これは図1のように、上記板状体1の上下方向となる両側縁の各々の一点1c、1dをつなぐ線分に沿って上記板状体1を折り曲げて角部1aを形成させ、その先端を移動させる方向Aに向け、それぞれの両端縁1bが両翼として、上記の移動させる方向Aに対し斜め後方に延びる状態で使用する角折スクレーパーである。これは、角部1aから両斜め後方に板が延びているため、粉体10が高く盛り上がっている箇所から粉体10を移動させる場合でも、粉体10にかかる力と、移動させられる粉体10とが、板状体1に沿って上記の後方である両端縁1bへ向かって分散されて、局所的に力が集中するのを避けることができる。
【0012】
上記の角折スクレーパーの角部1aの折れ曲がり角度θは、60度以上、170度以下が望ましく、90度以上、120度以下がより望ましい。角度θがありすぎると、角部1aがあっても力の分散が十分でなくなるおそれがあり、一方、小さすぎると、角部1aに力が集中しすぎるおそれがある。
【0013】
また、上記の板状体1は平板だけではなく、角部1aの内角側に向かって曲がった曲板であってもよい。さらに、板状体1は粉体10が積もった面に対して垂直であってもよいし、移動させる方向Aの反対方向に傾いた傾斜を有して上記粉体を擦り上げるものであってもよい。
【0014】
上記の角部1aを構成する両側縁の点1c、1dは、必ずしも両側縁に垂直な線分を形成しなくてもよい。また、上記の両側縁は直線でなくてもよく、上記板状体は長方形でなくてもよい。例えば、上記粉体が集中しやすい角部1aがより上方向に厚くなるように、角部1aを構成する上側の側縁上の点1c付近が、両端縁1b付近と比べて膨らんでいてもよい。
【0015】
次に、上記曲部の稜線が上記粉体を移動させる方向を向いたスクレーパーについて説明する。これは、図2のように、板状体2の上下方向となる両側縁の各々の一点2c、2dをつなぐ線分に沿って、この線分を稜線として上記板状体1を湾曲するように曲げて、曲部2aを形成させ、その曲部を移動させる方向Aに向け、それぞれの両端縁2bが両翼として、上記の移動させる方向Aに対し斜め後方に伸びる状態で使用する曲面スクレーパーである。
【0016】
上記の曲面スクレーパーの上記曲部2aの曲率半径は、5cm以上、20cm以下が望ましく、なお、移動させる方向Aを向いた上記曲部2aの稜線近傍だけではなく、板状体2全体が曲板であってもよい。
【0017】
さらに次に、上記角部、曲部又はその両方が、上記粉体の付着する装置の所定の面側を向いたスクレーパーについて説明する。これは例えば図3乃至図5のように、粉体に接触する上記板状体の装置の所定の面側を向いた一側縁に波状部を形成させた波形スクレーパーである。上記粉体を擦り切ったり均したりする部分が波形により上下しているために、上記粉体が盛り上がった箇所を擦り切る場合であっても、上記粉体にかかる力が波形により分散して、上記粉体を圧密するのを抑えて上記粉体を除去することができる。
【0018】
上記の波状部の形状としては、上下の繰り返しがあれば特に制限されるものではなく、例えば、図3のような角部の連続からなる三角波形だけではなく、図4のように角部と曲部とからなる三角波に湾曲を設けたものや、図5のように曲部の連続であるサイン曲線型波形などが挙げられる。なお、必ずしも同じ波形の繰り返しでなくてもよく、複数種の波形の組み合わせでもよい。
【0019】
また、上記角折スクレーパー及び曲面スクレーパーについて、それらの上記板状体の装置の所定の面側を向いた側縁に、上記の図3乃至5のような波状部を形成させるとより望ましい。上記粉体にかかる力がさらに分散されるためである。
【0020】
この発明にかかるスクレーパーを用いることで、粉体を取り扱うプロセスで、そのプロセスを構成し上記粉体と接触する上記装置の所定の面上にある上記粉体を、上記面に対して圧密して固化させることを抑えつつ、上記粉体を移動させ、擦り切ったり、均したり、送り出したりすることができる。上記スクレーパーの使用方法としては、上記スクレーパー自身を移動させる方向Aに向かって動かす方法のほか、移動させる方向Aと逆方向へ移動するベルトコンベアー等の上で上記スクレーパーを固定する方法でもよい。
【0021】
この発明にかかるスクレーパーを用いることが出来る上記粉体としては、特に制限されるものではないが、圧密により固化しやすい粉体に対して用いると特に効果が発揮される。圧密により固化しやすく、この発明による効果が発揮されやすい粉体としては、例えば硝酸カリウム、尿素等が挙げられる。また、粒径が0.2mm以下である粒子は、種類に関わらず一般に固化しやすいので、この発明にかかるスクレーパーを用いることで有効に粉体を除去できる。
【0022】
この発明にかかるスクレーパーを用いることが出来る上記装置としては、例えば、ベルトコンベアー、バケット、乾燥機などが挙げられる。また、上記装置の所定の面とは上記粉体が乗る面をいい、具体的にはベルトコンベアーの上や、バケットの乗せ面、乾燥機の底面などが挙げられる。
【0023】
上記粉体を載せて動くベルトコンベアーでは、その上の上記粉体を送り出す際にこの発明にかかるスクレーパーを用いると、ベルトコンベアー上に上記粉体を圧密して固化させることを最小限に抑えて上記粉体を扱うことができる。また、バケットでは縁より盛り上がった上記粉体を擦り切る際にこの発明にかかるスクレーパーを用いると、バケット内に上記粉体を押し付けて固化させることを最小限に抑えることができる。乾燥機では、未乾燥の上記粉体が積もっている箇所から上記粉体を広げる際にこの発明にかかるスクレーパーを用いると、上記粉体を圧密して固化させることを最小限に抑えることができる。
【0024】
また、この発明にかかるスクレーパーを単独で用いるのではなく、例えば図6のような回転する枠3に、上記スクレーパー5を2個以上設けることで、それぞれの上記スクレーパー5が連続して、上記装置の面4上にある粉体10を均したり送り出したりする粉体固着抑制装置として用いてもよい。ここで用いるスクレーパーは特にこの形状のスクレーパー5に限定されず、上記の角折スクレーパーや曲面スクレーパー、または波形の異なるスクレーパーであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明にかかる角部を有する角折スクレーパーの斜視図
【図2】この発明にかかる曲部を有する曲面スクレーパーの斜視図
【図3】この発明にかかる端部が三角波形であるスクレーパーの斜視図
【図4】この発明にかかる端部が湾曲した三角波形であるスクレーパーの斜視図
【図5】この発明にかかる端部がサイン波であるスクレーパーの斜視図
【図6】複数のスクレーパーを設けた粉体固着抑制装置の斜視図
【符号の説明】
【0026】
1 板状体(角部)
1a 角部
1b 両端縁
1c 側縁上の点(上方)
1d 側縁上の点(下方)
2 板状体(曲部)
2a 曲部
2b 両端縁
2c、2d 両側縁の一点
3 枠
4 装置の面
5 スクレーパー
10 粉体
θ 角部の角度
A 移動させる方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の所定の面上にある粉体に接触して上記粉体を移動させる板状体からなるスクレーパーであって、この板状体は角部及び/又は曲部を有し、その角部及び/又は曲部が上記粉体と接触して上記粉体を上記面に対して移動させる、粉体用のスクレーパー。
【請求項2】
上記板状体の両側縁の各々の一点をつなぐ線分に沿って上記板状体を曲げて、角部及び/又は曲部を形成させ、上記角部の先端及び/又は曲部の稜線が上記の粉体を移動させる方向を向いた状態で使用する、請求項1に記載のスクレーパー。
【請求項3】
上記板状体の一側縁に波状部からなる上記角部及び/又は曲部を設け、上記波状部を上記装置の所定の面に向けて使用する、請求項1に記載のスクレーパー。
【請求項4】
上記板状体の一側縁に波状部を形成させ、上記波状部を上記装置の所定の面に向けて使用する請求項2に記載のスクレーパー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスクレーパーを用いて、上記装置の所定の面上にある上記粉体を移動させる粉体取扱方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスクレーパーを2個以上設け、それぞれの上記スクレーパーが連続して、上記装置の所定の面上にある上記粉体を移動させる、粉体固着抑制装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate