説明

粉末スプレー塗装ブース

【課題】手動チャンネルから粉末粒子が漏れ出すのを簡単な方法で防止する。
【解決手段】ブースの中を通って塗装すべき物品(12)を自動搬送するための物品通過オリフィス(18、20)を備えた粉末スプレー塗装ブース。ブースは、少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)の一方に、手動塗装チャンネル(40)を備えている。手動塗装チャンネル(40)のオリフィス横断面は、物品通路オリフィスを限定するために、ブース屋根まで延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は請求項1のプレアンブルによるスプレー塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる粉末スプレー塗装ブースはDE第195 24 327 A2号により既知である。ブースから粉末が外向きに漏れ出すことがないように、ブース室内にはスプレー塗装作業中空気及び/又は粉末吸引装置によって負圧が作り出される。2つの物品通過オリフィスの少なくとも1つのところには、ブースの外側に、作業員が物品を一方の側又はもう一方の側からハンドスプレーガンによってスプレー塗装するための塗装作業場所がある。塗装作業場所は手動塗装チャンネルの形を有している。チャンネル屋根の中とブース屋根の中には、物品用の吊り下げ装置を通過させるための隙間がそれぞれ形成されている。吊り下げ装置はブースの上方に配置された搬送装置の一部である。作業中には、空気及び場合によっては過剰粉末(過剰スプレー粉末)を吸引するための吸引装置によって、ブース内に負圧が作り出され、この負圧も過剰粉末の粉末粒子がブースから漏れ出るのを防止することになっている。周知のブースは、粉末粒子が手動塗装チャンネルから漏れ出ることがあり、例えばチャンネル屋根の上に堆積するという欠点を有している。その他の柱形、円形粉末スプレー塗装ブースもDE第36 02 172 C1号、DE第35 38 800 A1号、及びCH-PS第577 346号により周知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明は、手動塗装チャンネルから粉末粒子が漏れ出すのを簡単な方式で防止するという課題を解決するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図面に図示した本発明に従う粉末スプレー塗装ブース2は、直立配置された円筒形ブース壁4とブース屋根6とブース床8を含んでいる。この壁4と屋根6と床8は、その内部で少なくとも自動スプレー装置14によって塗装粉末16を物品12にスプレー塗装することができるブース室10を形成している。ブース壁4の中には、ブース2の上方に配置された搬送装置22によってブース2の中を通って物品12を自動搬送するための2つの物品通過オリフィス18及び20がある。図1に実施例として示された物品12の搬送装置23を逆にすることもできる。物品通過オリフィス18及び20の幅は、それぞれ物品移動方向23に対して横方向に測定して、その間に位置するブース室10の幅よりも狭い。ブース壁4の中には少なくとも1つのスプレー装置導入スリット25、26、27、28、29及び/又は30が形成されており、このスリットを通ってそれぞれ少なくとも1台の自動スプレー装置14を外側から内側にブース2の中に導入可能であり、自動スプレー装置14はスリットの中でスリット縦方向への物品12の搬送路に対して横方向に上下移動可能である。スプレー装置14はリフトスタンド32又はロボットによって運ばれて位置決めされる。
【0006】
ブース2の底8は下向きに狭くなっている漏斗の形状を有しており、漏斗の中では、空気・粉末吸引装置35の吸引管34が接続されている漏斗の最も低い地点まで、過剰粉末(過剰スプレー粉末)を吸引及び/又は滑送することがきる。空気・粉末吸引装置35はブース2の内室10の中に負圧及び吸引力を作り出し、これによって、ブース2から過剰粉末が漏れ出すのが防止され、吸引管34を通って吸引される。吸引された粉末は既知の方式でフィルター及び/又はサイクロンによって吸引空気流から分離され、再利用される。吸引空気流は既知の方式で吸引ファン37によって作り出すことができる。
ブース室は、物品通過オリフィス18及び20の少なくとも1つが、図示の実施例の場合には両方が、チャンネル形手動塗装スタンド(以下、手動塗装チャンネル40と呼ぶ)によって、矢印23によって示された物品搬送路に沿ってブースの外側に延長されており、この手動塗装チャンネル40の中では、作業員が手に持ったハンドスプレー装置42によって物品12を一方の側又はもう一方の側から塗装することができる。両方の手動塗装チャンネル40の各々は、当該の物品通過オリフィス18又は20の側縁から物品搬送路に対して平行に延在するチャンネル後壁44と、2つの屋根部分46及び47からなるチャンネル屋根と、チャンネル床48とを有している。チャンネル後壁44と対向するチャンネル前面50は好ましくは完全に開いているが、そこから作業員が手動塗装チャンネル40の中の物品12を観察し、ハンドスプレー装置42によってスプレー塗装することができる大きなオリフィスを備えたチャンネル前壁によって形成されていてもよい。手動塗装チャンネル40は、少なくともそのブース2の方を向いた端に、当該の物品通過オリフィス18又は20と同じ横断面形状及び横断面面積を有しており、その結果、両者は整列することになる。
【0007】
物品通過オリフィス18及び20は、その上端に、ブース屋根6を2つのブース屋根部62及び63に分割するブース屋根隙間58の中まで達しているオリフィス延長部52をそれぞれ有している。ブース屋根隙間58及びオリフィス延長部52の中を、物品12を搬送装置22に吊り下げている吊り下げ装置61が通過することができる。オリフィス延長部52は下が物品通過オリフィス18及び20と同じ幅であり、上に向かって徐々に狭くなっており、上がブース屋根隙間58と同じ狭い幅になっている。両方の手動塗装チャンネル屋根部46及び47は、オリフィス延長部52の縁に沿って切妻屋根形に傾斜して上向きに、少なくとも物品通過オリフィス18及び20の側縁64及び65からオリフィス延長部52の上端を越えてブース屋根6まで延在しており、そこでは屋根隙間68を形成しつつ相互の間隔が最小になっている。手動塗装チャンネル屋根隙間68はブース屋根隙間58と整列しており、その下縁は理想的には同じ高さである。手動塗装チャンネル屋根隙間68の下縁はブース屋根隙間58の下縁よりも下に位置していても構わないが、しかしながら、常にブース2の物品通過オリフィス18及び20の上縁よりも基本的には高く配置されている。これによって、粉末粒子が、そのスプレー運動エネルギー又はブース2の中の真空によって、例えば屋根隙間68を通って手動塗装チャンネル40から外向きに漏れ出すのが確実に防止される。
【0008】
手動塗装チャンネル屋根部46及び47はブース壁4に固定されており、それによって支えられ、好ましくは溶接される。塗装チャンネル床48は固定配置することもできるし、交換可能な状態に配置することもできる。塗装チャンネル後壁44はガイド手段70の中に除去及び交換可能な状態で配置されている。
ブース2を掃除する場合には、物品通過オリフィス18及び20は、好ましくは、ブースドア72によって、図1に点線で示された運動曲線74に従って閉じることが可能である。
別の実施例によれば、手動塗装チャンネル後壁44は、図示された開放位置又はブース閉鎖位置又は当該の後壁44の位置に選択的に位置決めされる1枚又は複数枚ブースドア72によって形成することができる。
【0009】
好ましい実施例によれば、ブース壁4、ブース屋根6、ブース床8、屋根部46及び47、並びに手動塗装チャンネルの後壁44及び床48はそれぞれプラスチックからなる。これには、プラスチックからなる塗装粉末がほんのわずかしか又は全く付着しないという利点がある。
この発明は直立円筒形ブース2との組み合わせが非常に効果的であるのは、上ブース領域でも下ブース領域でも空気流速度が同じであるか、ほんのわずかしか違わないからである。これによって、ブース2の負圧が、下領域だけではなく、上領域の物品通過オリフィス18及び20のオリフィス延長部52の近くにおいても、十分な空気を手動塗装チャンネル40からブース2の中に吸引し、粉末粒子が手動塗装チャンネル40から外部環境の中に漏れ出すのを防止する。ブース屋根6までの相互に傾斜した塗装チャンネル屋根部46及び47の輪郭に沿って、物品通過オリフィス18及び20をオリフィス延長部52を通って上向きに傾斜させて徐々に狭くなるようにブース屋根6に達するまで形成するという発明の特徴は、例えば長方形のような、水平面の断面形状が異なるブースにも適用することができる。しかしながら、長方形ブースは隅の掃除が困難であるだけではなく、たとえ隅が円形であるとしても、ブースの高さが大きくなるにつれて、吸引空気速度が大きく低下するという欠点がある。
【0010】
図示した実施例の場合には、両方の物品通過オリフィス18及び20は完全に対向配置されており、ブース壁4の中のスリット25〜30は、物品搬送路の両側のブース壁4の中にそれに対して約90°ずらして配置されている。
別の実施例によれば、両方の物品通過オリフィス18及び20は、その間におけるブース壁ウェブの有無にかかわらず、ぴったりと並べて、又は近くに並べて配置することができる。この場合には、塗装すべき物品12を、ブース室の中において、ギリシャ文字のオメガの大文字を形を有する経路に沿って案内することができる。このようなオメガ・ブースの場合には、手動塗装チャンネル40の後壁44は、相互に隣接した、又は相互に移行する両方の物品通過オリフィス18及び20の間に配置されていなければならない。
【0011】
塗装チャンネル屋根部46及び47は図2及び3に従って上向きの円弧形でもよいし、平らで、直線的に傾斜していてもよいし、又は図2及び3に図示された凸形湾曲とは反対に、凹形湾曲を有していてもよい。その他の形も可能であるが、しかしながら基本的には、物品通過オリフィス18及び/又は20は、ブース屋根まで上向きに幅が狭くなっており、塗装チャンネル屋根部46及び47は、この上向きに狭くなっていく上オリフィス部52の縁に追従する。手動塗装チャンネル44は選択的に一方又は両方の物品通過オリフィス18及び22に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図2の2種類の水平断面IA及びIBにおける発明による粉末スプレー塗装ブースの断面図。
【図2】図1の平面II−IIから見た粉末スプレー塗装ブースの側面図。
【図3】図1の垂直断面III −III から見た粉末スプレー塗装ブースの縦断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの自動スプレー装置(14)により物品(12)にスプレー塗装するためのブース室(10)と、塗装すべき物品(12)をブースの上方に延在する搬送装置によってブースの中を通って搬送する際に通ることができる搬送路に対して平行に延在する隙間(58)によって分割されているブース屋根(6)と、物品をブースに出し入れするためのブース壁(4)の中の少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)と、を備えており、物品通過オリフィス(18、20)の少なくとも1つにおいては、ブース室(10)が、内部でハンドスプレー装置(42)を使用して手で物品(12)をスプレー塗装することができる手動塗装チャンネル(40)によって、物品搬送路に沿ってブースの外側に延長されており、ブース室(10)は、手動塗装チャンネル(40)内に延びる吸引力がブース室(10)内に作り出される吸気接続部(34)を備え、手動塗装チャンネル(40)が、それぞれの物品通過オリフィス(18、20)に隣接するチャンネル後壁(44、72)とチャンネル屋根(46、47)とを有し、このチャンネル屋根(46、47)が、チャンネル屋根隙間(68)によって、物品(12)の搬送路の上方において平行に、2つのチャンネル屋根部(46、47)に分割され、この2つのチャンネル屋根部(46、47)を通って吊り下げ装置(64)が動くことができる粉末スプレー塗装ブースにおいて、
少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)は、その上端に、屋根隙間(58)の中に達し、そこから搬送装置(22)の物品吊り下げ装置(61)を突出させることができるよう延長されたオリフィス延長部(52)を有し、オリフィス延長部(52)の幅は、底においては物品通過オリフィス(18、20)の幅と同じであり、頂部に向かって徐々に狭くなり、頂部においてはブース屋根隙間(58)と同じ狭い幅であることと、オリフィス延長部(52)の縁と整列するように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が切妻屋根方式で相互に傾斜して配置されていることと、ブース屋根(6)とほぼ水平になるように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が少なくとも物品通過オリフィス(18、20)の上端から上向きに延在しており、その結果、チャンネル屋根隙間(68)はブース屋根隙間(58)とほぼ同じ高さになるが、しかし物品通過オリフィス(18、20)の最上縁よりも常に高くなることを特徴とする粉末スプレー塗装ブース。
【請求項2】
粉末と接触するブース(2)及び手動塗装チャンネル(40)の全ての表面がプラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項3】
チャンネル後壁が、蝶番によってブース(2)に取り付けられ、必要に応じてそれぞれの物品通過オリフィス(18、20)を閉じることができるブースドア(72)であることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項4】
チャンネル後壁(42)が取り外しできるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項5】
ブース壁(4)が、水平断面図に見られるように、円形・円筒形を有していることと、ブース床(8)が下向きに狭くなっている漏斗形であることと、吸気接続部(34)がブース床の上の漏斗形状の最も低い地点に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の粉末スプレー塗装ブース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−49339(P2008−49339A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264261(P2007−264261)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【分割の表示】特願平9−301706の分割
【原出願日】平成9年11月4日(1997.11.4)
【出願人】(595069712)ゲマ フォルシュタティック アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】