説明

粉末プレス成形装置

【課題】金型やダイを、駆動動力源であるシリンダ内に配置することで、装置の小型化、高精度化を目指した、粉末プレス成形装置を提供する。
【解決手段】シリンダ基体2に搭載し、中心軸Xに沿って列設した第1、第2、第3油圧シリンダと、第1〜第3油圧シリンダを構成するシリンダ部にそれぞれ介装して、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って往復動するピストンと、第1〜第3油圧シリンダのシリンダ部間のうち、いずれかのシリンダ部間に配設したダイ8と、第1〜第3油圧シリンダにおけるピストンにそれぞれ搭載し、ピストンを中心軸Xに沿って駆動させて、ダイ8において、互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を中心軸Xに沿って加圧圧縮して粉末成形品を得る第1、第2、第3金型とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型やダイを、駆動動力源であるシリンダ内に配置することで、装置の小型化、高精度化を目指した、粉末プレス成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉末成形装置は、成形金型とダイセットとそれらを収容する本体フレームとから構成されている。
このような粉末プレス成形装置においては、ダイセット自体には駆動動力源が搭載されていないか、搭載されている場合でも、補助的な動力源に限定されているのが現状である。このような場合、主たるプレス成形動作は、本体フレームに配設されたメイン動力源によりなされるようになっていた。
【0003】
従来技術として、ダイセットを複数のシリンダにより、プレートを駆動させる方式と、単一のシリンダにより駆動させる方式とがある。例えば、特許文献1では、後者の駆動方式により、高精度な成形を目指した例である。すなわち、特許文献1では、粉末加圧時にパンチプレートに曲げモーメントが作用しないようにすると共に、複数段構成を可能とし、さらにダイと上下パンチの相互位置精度を高めることを目的として、ダイプレートに設けられたダイのダイ孔内に挿入されるパンチを駆動するための流体圧シリンダをパンチと同軸的に配置する構成としている。
以上のような構成によれば、ダイセット自身の精度向上が期待できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−15997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粉末成形のダイセットは上のダイセットと下のダイセットそれぞれを本体フレームに取り付けて使用するため、上ダイセットと下ダイセットの高精度な位置合わせを必要とするという課題がある。
本発明は、上述の課題を解決するために提案されたものであって、金型やダイを直接、プレス駆動手段であるシリンダに搭載して、金型同士の高精度な位置合わせを要することなく、装置の小型化、安定した製品を成形可能とするなど、高精度化を目指した、粉末プレス成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明では、粉末プレス成形装置において、シリンダ基体(2)と、このシリンダ基体(2)に搭載し、中心軸(X)に沿って列設した複数の流体圧シリンダと、複数の流体圧シリンダを構成するシリンダ部にそれぞれ介装して、シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って往復動するピストンと、複数の流体圧シリンダのシリンダ部間のうち、いずれかのシリンダ部間に配設したダイ(8)と、複数の流体圧シリンダにおけるピストンにそれぞれ搭載し、ピストンをシリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、ダイ(8)において、互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を中心軸(X)に沿って加圧圧縮して粉末成形品を得る複数の金型とを具備することを特徴とする。
【0007】
これにより、シリンダ基体(2)に配設したプレス駆動手段である複数の流体圧シリンダを利用し、ダイ(8)において、シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って突き合わせて、加圧圧縮可能に、複数の金型を配置したため、複数の金型を位置合わせをする必要はなく、これら複数の金型をシリンダ基体(2)における複数の流体圧シリンダに搭載したことで、装置の小型化、高精度化を実現することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、複数の流体圧シリンダは、シリンダ基体(2)に、中心軸(X)に沿って列設した第1、第2、第3の流体圧シリンダ(3、4、5)であり、第1、第2、第3流体圧シリンダ(3、4、5)は、シリンダ部(31、41、51)と、シリンダ部(31、41、51)にそれぞれ介装して、シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って往復動する第1、第2、第3のピストン(32、42、52)とを有し、複数の金型は、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)にそれぞれ搭載し、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)をシリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、ダイ(8)において、互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を加圧圧縮して粉末成形品を得る第1、第2、第3の金型(10、11、12)であることを特徴とする。
【0009】
これにより、第1、第2、第3の金型(10、11、12)を、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)をシリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、ダイ(8)において、互いに突き合わせることで、投入される粉末成形材料を加圧圧縮して粉末成形品を得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、第1金型(10)は、中心軸(X)に沿う中央孔(10H)と、中央孔(10H)周囲に配設した、位置決めガイド孔(10hg)とを有し、第2金型(11)は、第1金型(10)の中央孔(10H)と同径の中央孔(11H)と、第1金型(10)の位置決めガイド孔(10hg)と同径の位置決めガイド孔(11hg)とを有し、第3金型(12)は、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って支持されるコア部(12c)と、コア部(12c)周囲に同心円状に配置した、結合ロッド(12r)とを有し、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)をシリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、第1金型(10)と第2金型(11)とを、第1、第2金型(10、11)それぞれの中央孔(10H)と中央孔(11H)との位置と、第1、第2金型(10、11)それぞれの位置決めガイド孔(10hg)と位置決めガイド孔(11hg)との位置とを一致させて突き合わせて、第3金型(12)のコア部(12c)を、第2金型(11)の中央孔(11H)に嵌入させると共に、結合ロッド(12r)を、第2金型(11)における位置決めガイド孔(11hg)に嵌入させて、ダイ(8)において、粉末成形品に対応する充填孔(C)を形成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
これにより、第1、第2、第3金型(10、11、12)をダイ(8)において突き合わせる際に、いずれもシリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って移動させるので、第1金型(10)と第2金型(11)とは、第1、第2金型(10、11)それぞれの中央孔(10H)と中央孔(11H)と、第1、第2金型(10、11)それぞれの位置決めガイド孔(10hg)と位置決めガイド孔(11hg)とを位置ずれなく突き合わせることができる。そして、第3金型(12)のコア部(12c)を、第2金型(11)の中央孔(11H)に嵌入させ、結合ロッド(12r)を、第2金型(11)における位置決めガイド孔(11hg)に嵌入させて、ダイ(8)において、粉末成形品に対応する充填孔(C)を形成することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、シリンダ基体(2)には、長手方向、中心軸に沿って、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)を往復動可能にガイドする中心ガイド部(2a、2b)を備えたことを特徴とする。
【0013】
これにより、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)を、軸ずれることなくガイドすることができ、金型を直接取り付けて、第1、第2、第3ピストン(32、42、52)を、金型の型締め動力源として用いることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、流体圧は、油圧であることを特徴とする。
【0015】
これにより、ダイ(8)において、複数の金型を互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を中心軸(X)に沿って、油圧による十分なプレス駆動力で加圧圧縮して粉末成形品を得ることができる。
【0016】
さらに請求項6に記載の発明では、流体圧は、空圧であることを特徴とする。
【0017】
これにより、ダイ(8)において、複数の金型を互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を中心軸(X)に沿って、油圧による十分なプレス駆動力で加圧圧縮して粉末成形品を得ることができる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリンダ基体に配設し、互いに対向すると共に、一軸上を往復動するプレス駆動手段である、流体圧シリンダのピストンに金型を搭載したことで、互いの金型の位置合わせをする必要はなく、成形品の高精度化と、装置自体の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る粉末プレス成形装置の一実施形態を示した、断面説明図である。
【図2a】図1に示す粉末プレス成形装置において、ダイにおける第1、第2、第3金型による加圧圧縮箇所の要部を示した、拡大断面説明図である。
【図2b】図2aに示す、ダイにおける第1、第2、第3金型による加圧圧縮箇所において、A−A線に沿う、切断矢視図である。
【図2c】図2aに示す、ダイにおける第1、第2、第3金型による加圧圧縮箇所において、B−B線に沿う、切断矢視図である。
【図3】図1に示す粉末プレス成形装置において、粉末成形材料を充填した状態を示した、断面説明図である。
【図4】図1に示す粉末プレス成形装置において、加圧圧縮動作時の状態を示した、断面説明図である。
【図5】図1に示す粉末プレス成形装置において、粉末成形品を取り出す状態を示した、断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る粉末プレス成形装置の一実施形態を挙げ、説明する。
図1に粉末プレス成形装置1を示す。
この粉末プレス成形装置1は、流体圧(ここでは油圧)を利用して、粉末成形材料をプレスして成形品を得るもので、鉛直軸方向に設置される、プレス駆動手段を構成するシリンダ基体2を具備する。
このシリンダ基体2は、後述するプレス駆動手段を構成する油圧シリンダを、複数、搭載し支える、直円筒形状のフレーム構造体であり、長手方向、中心軸Xに沿って、後述するプレス駆動手段としてのピストンを、往復動可能にガイドする中心ガイド部2a、2bを設けている。
かかるシリンダ基体2には、図中、シリンダ基体2の上部位、中間部位、下部位にそれぞれ、第1、第2、第3の油圧シリンダ3、4、5が間隔をおいて搭載されている。すなわち、シリンダ基体2には、これら第1、第2、第3の油圧シリンダ3、4、5をそれぞれ構成する、シリンダ部31、41、51が区画形成されている。また、第1油圧シリンダ3におけるシリンダ部31と、第2油圧シリンダ4におけるシリンダ部41間には、側面が開口されていて、粉末成形材料を投入する他、プレス成形を行うと共に成形品の取出しを行う第1の開口室6が設けられている。さらに、第2油圧シリンダ4におけるシリンダ部41と第3油圧シリンダ5におけるシリンダ部51間には、第2の開口室7が設けられている。
【0022】
第1油圧シリンダ3において、シリンダ部31内には、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って、中心ガイド部2aが一体的に突設されている。そして中心ガイド部2aには、第1開口室6に向けて進退可能に第1ピストン32を配設している。この場合、第1ピストン32は、中心ガイド部2aを中心とする内周面に沿って摺動可能なビストンボディ部32aと、中心ガイド部2aを内側に嵌入しているピストンロッド部32bとを有している。かかるピストンロッド部32bの先端部は、シリンダ部31の下部壁31bを貫通して、第1開口室6に突没可能に構成している。
そして、シリンダ部31内の第1ピストン32のビストンボディ部32aが上下に仕切る油圧室S1、S2には、第1ピストン32を作動するための作動油を供給する油圧回路20(後述)を接続している。
【0023】
シリンダ基体2の中間部位の第2油圧シリンダ4において、シリンダ部41は、図中、上下に上部壁41aと下部壁41bとで仕切って構成し、下部壁41bに、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って、中心ガイド部2bが一体的に突設されている。そして中心ガイド部2bには、第1開口室6に向けて進退可能に第2ピストン42を配設している。この場合、第2ピストン42は、中心ガイド部2bを中心とする内周面に沿って摺動可能なピストンボディ部42aと、中心ガイド部2bを内側に嵌入しているピストンロッド部42bとを有している。
かかるピストンロッド部42bの先端部は、シリンダ部41における上部壁41aを貫通して、第1開口室6に突没可能としている。
そして、第2油圧シリンダ4のシリンダ部41においても、第2ピストン42のピストンボディ部42aが上下に仕切る油圧室S1、S2に、第2ピストン42を作動するための作動油を供給する油圧回路20(後述)を接続している。
【0024】
さらにシリンダ基体2の下部位の第3油圧シリンダ5において、シリンダ部51は、第2開口室7の直下、第2開口室7と上部壁51aで仕切って構成している。
かかるシリンダ部51には、第3ピストン52が内装されている。
第3ピストン52は、内周面に沿って摺動可能なピストンボディ部52aと、上部壁51aの中心を貫通して、第2開口室7に向けて突出するピストンロッド部52bとを有している。
かかる第3油圧シリンダ5のシリンダ部51においても、第3ピストン52のピストンボディ部52aが上下に仕切る油圧室S1、S2に、第3ピストン52を作動するための作動油を供給する油圧回路20(後述)を接続している。
【0025】
次に、以上のようなシリンダ基体2において、第1油圧シリンダ3と第2油圧シリンダ4間の第1開口室6には、プレス加工を行う際のダイ8が取付壁9を介して配設されている。
ダイ8は、後述する、第1油圧シリンダ3における第1ピストン32のピストンロッド部32bと、第2油圧シリンダ4における第2ピストン42のピストンロッド部42bの動作方向(上下動方向)と直交するように配設されている。この場合、ダイ8には、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って、後述するが、第1ピストン32のピストンロッド部32bと、第2ピストン42のピストンロッド部42bとに搭載される金型が嵌入可能にダイ孔8Hを開口している。
【0026】
そして、第1油圧シリンダ3における第1ピストン32のピストンロッド部32bには、第1の金型10が搭載される。
また、第2油圧シリンダ4における第2ピストン42のピストンロッド部42bには、第2の金型11が搭載される。
さらに、第3油圧シリンダ5における第3ピストン52のピストンロッド部52bには、第3の金型12が搭載される。
これら第1、第2、第3金型10、11、12は、各油圧回路20から作動油を供給制御してそれぞれ第1、第2、第3油圧シリンダ3、4、5における、第1、第2、第3ピストン32、42、52を上下動制御し、第1開口室6におけるダイ8のダイ孔8Hにおいて、第1〜第3金型10〜12によって製品に対応する空間を画成している。
【0027】
第1金型10は、略円筒体形状のもので、中心軸に沿う中央孔10Hと、中央孔10H周囲に、同心円状に所定間隔毎に、複数穿設した、位置決めガイド孔10hgを有し、第1金型10を第1油圧シリンダ3における第1ピストン32のピストンロッド部32bに搭載した際に、シリンダ基体2の中心軸Xに第1金型10における中央孔10Hの中心が一致するようにしている(図2a、図2b参照)。
第1金型10は外径がダイ孔8Hの内径と略同径としている。中央孔10Hは、後述する第3金型12のコア部の外径に対応し、位置決めガイド孔10hgは、第3金型12のコア部周囲の結合ロッド(後述)を嵌入可能としている。
【0028】
第2金型11は、第1金型10と同形状の略円筒体で、第1金型10の中央孔10Hと同径の中央孔11Hと、第1金型10の位置決めガイド孔10hgと同径の位置決めガイド孔11hgを有している。
かかる第2金型11を第2油圧シリンダ4における第2ピストン42のピストンロッド部42bに搭載した際に、シリンダ基体2の中心軸Xに第2金型11における中央孔11Hの中心が一致し、且つ、位置決めガイド孔11hgは、第1金型10の位置決めガイド孔10hgの位置と一致し、後述する第3金型12のコア部周囲の結合ロッド(後述)を嵌入可能としている。
【0029】
そして、第3金型12は、第3油圧シリンダ5における第3ピストン52のピストンロッド52b先端に結合し、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って、中心ガイド部2bに挿通した、連結軸13を介して連結したコア部12cと、コア部12c周囲に同心円状に配置した、結合ロッド12rとを有している(図2c参照)。そして、かかる第3金型12のコア部12cを、第2金型11の中央孔11Hに嵌入させ、結合ロッド12rを、第2金型11における位置決めガイド孔11hgに嵌入させている。
【0030】
次に、以上のような粉末プレス成形装置1におけるシリンダ基体2の、第1、第2、第3油圧シリンダ3、4、5におけるシリンダ部31、41、51に接続される油圧回路20について、説明する。
油圧回路20は、実質的に、油圧ポンプ201と、各一対の、流量制御弁202、絞り弁203およびストップ弁204とによって構成し、油圧ポンプ201から、それぞれ流量制御弁202、絞り弁203およびストップ弁204を介する二系統の供給路r1、r2と、戻り路r3とを有している。
そして、シリンダ部31、41、51には、それぞれ、側壁上下に、作動油の出入口14u、14dが形成され、シリンダ部31、41、51における第1、第2、第3ピストン32、42、52の動作状況に応じて、各供給路r1、r2を切換えて、出入口14u、14dのうち、いずれかの一方の出入り口から作動油を送り込み、他方の出入り口から、戻り路r3を通じて、作動油を油圧ポンプ201に還流するようにしている。
【0031】
本発明にかかる粉末プレス成形装置1は、以上のように構成されるものであり、次に、粉末成形材料のプレス工程について、以下、説明する。
プレス工程は、(1)粉末成形材料の充填、(2)加圧圧縮(圧搾)、(3)成形品取出しからなる。なお、ここで用いられる粉末成形材料は、特に限定されない。
【0032】
(1)粉末成形材料の充填
粉末成形材料を、周知の手段(図示省略)により、第1開口室6におけるダイ8のダイ孔8Hに充填する際、成形品(後述)に対応する充填孔C(図2a参照)を、第2金型11と第3金型12により、予め形成しておく。なお、第1金型10は、第1開口室6におけるダイ8上面から、外筒10aと中央孔10Hを所定間隔開けた状態の位置に調整しておく(図1参照)。
そのために、第2油圧シリンダ4、第3油圧シリンダ5において、各油圧回路20を動作させて、二系統の供給路r1、r2を切換えて、出入口14u、14dのうち、いずれかの一方の出入口から作動油を送り込み、他方の出入口から、戻り路r3を通じて、作動油を油圧ポンプ201に還流させる。
【0033】
これによって、第2金型11を搭載する第2ピストン42と、第3金型12を搭載する第3ピストン52とを上下動させ、第2金型11と第3金型12とを、所望の高さ位置に調節することができる。
その際、第2金型11は、ダイ8のダイ孔8Hにおいて、外筒11aと中央孔11Hの位置を、成形品の厚さに関係する充填深さの位置にもたらされる。
一方、第3金型12は、コア部12cを第2金型11の中央孔11Hに嵌入し、コア部12cの上端を中央孔11Hから突出させてダイ8上面の高さと同一高さの位置にもたらす。
また、第3金型12の結合ロッド12rは、第2金型11の中央孔11H周囲の位置決めガイド孔11hgに嵌入させ、結合ロッド12rの上端を位置決めガイド孔11hgから突出させてダイ8上面の高さと同一高さの位置にもたらす。
以上のようにして、ダイ8のダイ孔8Hには、成形品に対応する充填孔Cが形成されるので、かかる充填孔Cに粉末成形材料を投入することで、充填孔Cに粉末成形材料が満たされる。
【0034】
(2)加圧圧縮(圧搾)
次に、ダイ8のダイ孔8Hに形成された充填孔Cに粉末成形材料が満たされると、第1油圧シリンダ3における第1ピストン32を下動させ、第1ピストン32のピストンロッド32bに搭載された第1金型10を、ダイ8のダイ孔8Hに向けて下降させる。
そのために、第1油圧シリンダ3に接続された油圧回路20は、二系統の供給路r1、r2を切換えて、供給路r1を通じ、シリンダ部31の出入口14uから上の油圧室S1に作動油を送り込む一方、下の油圧室S2から出入口14dを介し、戻り路r3を通じて、作動油を油圧ポンプ201に還流させるように動作させる。
【0035】
その際、第1油圧シリンダ3における第1ピストン32は、シリンダ基体2の中心軸Xに沿う、中心ガイド部2aに沿って下降するので、第1ピストン32のピストンロッド32bに搭載された第1金型10は、位置ずれを起こすことなく、ダイ8のダイ孔8Hに向けて下降させることができる。
【0036】
第1金型10を下降させると、ダイ孔8Hにおけるダイ8上面に露出する、第3金型12の結合ロッド12rは、第1金型10における中央孔10H周囲の位置決めガイド孔10hgに嵌入可能に突き当たる一方、第3金型12のコア部12cは、第1金型10における中央孔10Hの開口面に嵌入可能に突き当たる。これによって、加圧圧縮工程を開始することができる(図3参照)。
第1油圧シリンダ3の油圧回路20において、油圧ポンプ201を駆動させ、二系統の供給路r1、r2のうちの、供給路r1を通じ、シリンダ部31の出入口14uから上の油圧室S1に作動油を送り込む一方、下の油圧室S2から出入口14dを介し、戻り路r3を通じて、作動油を油圧ポンプ201に還流させるように動作させることで、加圧圧縮工程を進行させることができ、ダイ8のダイ孔8Hにおける充填孔C内の粉末成形材料は、第1金型10と第2金型11とによって、上下方向から加圧圧縮され、粉末成形品Wを得ることができる。
なお、第1金型10と第2金型11とによる加圧圧縮状態は、所定の高温高圧下で、所定時間維持されることで、硬化が進行し、成形品として形成することができる。
【0037】
(3)成形品取出し
そして、上述のような工程で、加圧圧縮工程が終了すると、成形品Wの取出しを行う。 そのために、第1油圧シリンダ3における第1ピストン32を上動させて第1金型10をダイ8のダイ孔8Hから離脱させ、次いで、第2油圧シリンダ4における第2ピストン42を上動させ、第2金型11を突き上げて、充填孔C内の成形品Wを押し出して、取り出すことができる。
【0038】
以上のように、本発明にかかる粉末プレス成形装置1では、互いに対向し、一軸上を往復動するプレス駆動手段である、流体圧シリンダのピストンロッド上に、金型を直接、搭載したことで、互いの金型の位置合わせをする必要はなく、成形品の高精度化と、装置自体の小型化を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、プレス駆動手段の駆動源として、油圧を挙げて説明したが、勿論他の非圧縮性流体(水)、圧縮性流体(エアーなど)も用いることができる。
シリンダ基体に搭載されるプレス駆動手段としての油圧シリンダの数は任意で、成形対象品によっては、第1、第2油圧シリンダによって、第1金型と第2金型とを用いて成形を行う構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 粉末プレス成形装置
2 シリンダ基体
2a、2b 中心ガイド部
3 第1油圧シリンダ
31 シリンダ部
31b 下部壁
32 第1ピストン
32a ピストンボディ部
32b ピストンロッド部
4 第2油圧シリンダ
41 シリンダ部
41a 上部壁
41b 下部壁
42 第2ピストン
42a ピストンボディ部
42b ピストンロッド部
5 第3油圧シリンダ
51 シリンダ部
51a 上部壁
52 第3ピストン
52a ピストンボディ部
52b ピストンロッド部
6 第1開口室
7 第2開口室
8 ダイ
8H ダイ孔
9 取付壁
10 第1金型
10H 中央孔
10hg 位置決めガイド孔
11 第2金型
11H 中央孔
11hg 位置決めガイド孔
12 第3金型
12c コア部
12r 結合ロッド
13 連結軸
14u、14d 出入口
20 油圧回路
201 油圧ポンプ
202 流量制御弁
203 絞り弁
204 ストップ弁
S1、S2 油圧室
r1、r2 供給路
r3 戻り路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末プレス成形装置において、
シリンダ基体(2)と、
このシリンダ基体(2)に搭載し、中心軸(X)に沿って列設した複数の流体圧シリンダと、
前記複数の流体圧シリンダを構成するシリンダ部にそれぞれ介装して、前記シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って往復動するピストンと、
前記複数の流体圧シリンダのシリンダ部間のうち、いずれかのシリンダ部間に配設したダイ(8)と、
前記複数の流体圧シリンダにおけるピストンにそれぞれ搭載し、前記ピストンを前記シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、前記ダイ(8)において、互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を中心軸(X)に沿って加圧圧縮して粉末成形品を得る複数の金型と、
を具備することを特徴とする粉末プレス成形装置。
【請求項2】
前記複数の流体圧シリンダは、前記シリンダ基体(2)に、中心軸(X)に沿って列設した第1、第2、第3の流体圧シリンダ(3、4、5)であり、
前記第1、第2、第3流体圧シリンダ(3、4、5)は、シリンダ部(31、41、51)と、前記シリンダ部(31、41、51)にそれぞれ介装して、前記シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って往復動する第1、第2、第3のピストン(32、42、52)とを有し、
前記複数の金型は、前記第1、第2、第3ピストン(32、42、52)にそれぞれ搭載し、前記第1、第2、第3ピストン(32、42、52)を前記シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、前記ダイ(8)において、互いに突き合わせ、投入される粉末成形材料を加圧圧縮して粉末成形品を得る第1、第2、第3の金型(10、11、12)であることを特徴とする請求項1に記載の粉末プレス成形装置。
【請求項3】
前記第1金型(10)は、中心軸(X)に沿う中央孔(10H)と、中央孔(10H)周囲に配設した、位置決めガイド孔(10hg)とを有し、
前記第2金型(11)は、前記第1金型(10)の中央孔(10H)と同径の中央孔(11H)と、前記第1金型(10)の位置決めガイド孔(10hg)と同径の位置決めガイド孔(11hg)とを有し、
前記第3金型(12)は、シリンダ基体2の中心軸Xに沿って支持されるコア部(12c)と、前記コア部(12c)周囲に同心円状に配置した、結合ロッド(12r)とを有し、
前記第1、第2、第3ピストン(32、42、52)を前記シリンダ基体(2)の中心軸(X)に沿って駆動させて、前記第1金型(10)と前記第2金型(11)とを、前記第1、第2金型(10、11)それぞれの中央孔(10H)と中央孔(11H)との位置と、前記第1、第2金型(10、11)それぞれの位置決めガイド孔(10hg)と位置決めガイド孔(11hg)との位置とを一致させて突き合わせて、前記第3金型(12)のコア部(12c)を、前記第2金型(11)の中央孔(11H)に嵌入させると共に、前記結合ロッド(12r)を、前記第2金型(11)における位置決めガイド孔(11hg)に嵌入させて、前記ダイ(8)において、粉末成形品に対応する充填孔(C)を形成するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の粉末プレス成形装置。
【請求項4】
前記シリンダ基体(2)には、中心軸(X)に沿って、前記第1、第2、第3ピストン(32、42、52)を往復動可能にガイドする中心ガイド部(2a、2b)を備えたことを特徴とする請求項2に記載の粉末プレス成形装置。
【請求項5】
前記流体圧は、油圧であることを特徴とする請求項1ないし4記載のうち、いずれか1に記載の粉末プレス成形装置。
【請求項6】
前記流体圧は、空圧であることを特徴とする請求項1ないし4記載のうち、いずれか1に記載の粉末プレス成形装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−5520(P2011−5520A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151346(P2009−151346)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)