説明

粉末塗装レベリング剤としてのポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルおよびそれらのポリ(メタ)アクリル酸エステルとの混合物

本発明は、(a)重量平均分子量が1000g/molを超え、かつ重量で75%を超えるポリプロピレンオキシド画分を有する少なくとも1種のポリプロピレンオキシド含有ポリエーテル、および任意に(b)少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有してなる粉末塗装レベリング剤に関する。さらに、本発明はかかるレベリング剤の調製および粉末塗料におけるそれらの使用に関し、また前記レベリング剤を含有してなる粉末塗料にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末塗装組成物用粉末塗装レベリング剤であって、ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルおよびそれらのポリ(メタ)アクリル酸エステルとの混合物に、またかかる混合物の製造、および粉末塗装用、特に表面塗装用の組成物におけるレベリング剤(流動制御剤)としての使用に関する。本発明はさらに本発明のレベリング剤を含有してなる粉末塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装表面は通常完全には滑らかではなく、それよりも波形またはみかん肌構造と言われる多少なりとも構造のある表面を有する。これらの表面は、短波形の細かい構造をしているか、または長い波形の粗い構造をしている。多くの場合、この波形は望ましくないものである。表面構造の性質と塗料の組成との間には、特別の従属関係がある。例えば、塗料が、例えば、溶媒を含んでなるか、あるいは溶媒なしであるかは、粉末塗料の場合に特に意味がある。溶媒を含まない粉末塗料の場合、例えば、その組成中にレベリング剤を使用することが何としても必要である;その理由は、これらのレベリング剤がなければ、得られる表面が十分に滑らかとならないからである。
【0003】
非特許文献1は、塗装用の流動促進剤としてのポリ(メタ)アクリル酸エステルおよびポリシロキサンについて記載している。
【0004】
採用されるポリシロキサンは、通常、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンまたはさもなければポリエーテル修飾もしくはポリエステル修飾ポリジメチル−もしくはポリメチルアルキルシロキサンである。
【0005】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合は、2個ないし12個の炭素原子の鎖長のアルキル基をもつアクリル酸アルキルエステルのポリマーまたはコポリマーを使用することが好ましい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例は、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルまたはさもなくばアクリル酸ラウリルである。主として使用される製品は、100,000g/molまでの重量平均分子量を有する。
【0006】
流動促進剤として使用するポリ(メタ)アクリル酸エステル(コ)ポリマーは、そのまま、あるいは有機溶媒中の溶液として採用し得るが、例えば、シリカなどの担体物質上でも使用し得る。このことは、特に、粉末塗料での使用状況に照らしても通例である。使用するかかる製品の量は、塗装製剤形態にもとづき、主として、重量で0.1%ないし2%である。
【0007】
特許文献1は、粉末塗料用のレベリング剤として、さらなる分類の化合物、ポリビニルエーテル類について記載している。
【0008】
これらの流動促進剤の効果は、「液体/気体」の境界面での界面活性にもとづくものであり、この界面でこれらの製品は塗装系の実際の結合剤とのある種の不相容性にもとづいて適応される。この不相容性はこれらのポリマーの分子量を増量させることにより増大させ得る。しかしながら、この不相容性は塗装のある種の曇りの原因となり得、さらにレベリング剤の粘稠度を非常に高くし、結果として使用者にとっての取り扱いの容易さを損なうか、あるいは非常に困難なものとするという欠点がある。さらに、ポリシロキサンは、塗装膜にへこみを形成することで、塗料との不相容性を厳しいものとする傾向がある。このことはポリシロキサンの使用を制限し、特にその使用量を制限する。それにも拘らず、それらはしばしばポリ(メタ)アクリル酸エステルと組合わせて使用されている;その理由は、それらがその流動促進性に加えて、塗料の表面張力を低下させ、その結果、塗料による基板のぬれを介助するからである。
【0009】
特許文献2は、特定のポリエーテル含有化合物を添加することにより、粘稠度低下作用を介して、溶媒由来のポリウレタン塗料をより良好に均一化することについて記載している。
【0010】
特に、粉末塗料の場合、およびコイル被覆に使用される塗料の場合、良好、かつ安価なレベリング剤が緊急に必要である。これらの塗布に際しては、レベリング剤が流動促進性を有しなければならないのみならず、同時に、塗料の基板のぬれを改善し、完全に滑らかな塗装が生じるようにしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第19644728号
【特許文献2】米国特許第3385816号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Performance Enhancement in Coatings, E.W. Orr著(1998,出版者:Hanser、ISBN 3-446-19405-3)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、(a)重量平均分子量が1000g/molを超え、より好ましくは1500g/molを超え、さらに好ましくは2000g/molを超え、重量で75%を超えるポリプロピレンオキシド画分を有する少なくとも1種のポリプロピレンオキシド含有ポリエーテル、および任意に(b)ポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有してなる粉末塗装レベリング剤により達成することが可能となった。該粉末塗装レベリング剤は、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(b)を含有してなる。重量平均分子量は、標準ポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィーにより測定し得る。
【0014】
これらの粉末塗装レベリング剤は、以下では本発明の粉末塗装レベリング剤または本発明のレベリング剤という。
【0015】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸エステルという表記は、本明細書において、当業者周知のものとして、ポリアクリル酸エステルおよびポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはアクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルを、それぞれ表わす。
【0016】
レベリング剤としての純粋なポリ(メタ)アクリル酸エステルに比較して、本発明のレベリング剤はスリップ減少のための粉末塗料において卓越している。「スリップ減少」という用語は、硬化塗料表面上のすべり抵抗の減少を意味する。
【0017】
純粋なポリ(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合、透明な粉末塗料は曇りを生じる傾向がある。しかし、曇りは本発明のレベリング剤を使用したときに生じることはなく、このものは純粋なポリ(メタ)アクリル酸エステルよりもより広い相容性をもつ。
【0018】
本発明の粉末塗装レベリング剤は、以下の成分から構成される:
(a)少なくとも1種のポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルであって、その重量平均分子量が1000g/molを超え、より好ましくは1500g/molを超え、さらにより好ましくは2000g/molを超えるものであり、ポリプロピレンオキシド画分として、重量で75%を超え、好ましくは重量で80%を超え、より好ましくは重量で90%を超え、さらにより好ましくは重量で100%のポリプロピレンオキシド画分を有するポリエーテル;および選択肢として
(b)少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸エステル。
【0019】
本発明のレベリング剤は、2種類の成分(a)および(b)の混合操作により取得し得るものであり、その操作はポリマー溶液の加熱により促進し得る。
【0020】
本発明のレベリング剤を調製するためのさらに好適な方法は、成分(a)を溶媒または担体媒体として使用して、成分(b)を調製することである。
【0021】
2種の成分(a)および(b)は、本発明の粉末塗装レベリング剤中の異なる重量画分に存在し得る。本発明のレベリング剤において、成分(a)は、成分(a)および(b)の総重量画分にもとづいて、好ましくは10%ないし100%の重量で、より好ましくは10%ないし75%の重量で、さらにより好ましくは10%ないし50%の重量で存在する。このことは成分(b)が、本発明の粉末塗装レベリング剤中、成分(a)および(b)の重量画分の総量にもとづいて、好ましくは90%までの重量で、より好ましくは25%ないし90%の重量で、さらにより好ましくは50%ないし90%の重量で存在することを意味する。
【0022】
成分(a)として使用されるポリアルキレンオキシド(本明細書ではポリエーテルともいう)は、それらが75%を超える重量の、好ましくは80%を超える重量の、より好ましくは90%を超える重量の、さらに好ましくは100%の重量のプロピレンオキシド画分を有し、また1000g/molを超える重量平均分子量を有するという事実により注目される。さらに特に好ましくは、それらがC、H、およびO原子のみから構成されることである。
【0023】
該ポリアルキレンオキシドは、モノアルコールから、またはジアルコールから出発して製造される直鎖状ポリアルキレンオキシドであっても良い。従って、この種のポリアルキレンオキシドは、1個または2個の末端ヒドロキシル官能基を有する。しかし、ポリアルキレンオキシドの調製の過程で製造されるこれらのヒドロキシル官能基は、末端基キャップし得るものでもある。このものの例は、ヨウ化メチルでのアルキル化による末端基キャッピングまたは無水酢酸での酢酸エステルの形成である。
【0024】
あるいは、本発明のレベリング剤に使用するポリアルキレンオキシドは、3個以上の側鎖をもつ分枝状のポリアルキレンオキシドであっても良い。
【0025】
好適なポリアルキレンオキシドは、少なくとも1個のヒドロキシル官能基を有してなるものである。その例は、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンコポリマー、およびポリオキシプロピレンエーテルである。
【0026】
成分(b)はポリ(メタ)アクリル酸エステルである。
【0027】
該ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布するモノマーを有し得るが、ブロックコポリマーとして構成されても良いし、またはさもなくばグラジエントコポリマーとして構成されても良い。レベリング剤として適当なブロックコポリマーの例は、WO05/059048およびUS6,197,883に見出される。
【0028】
該ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、重量平均分子量として、好ましくは1000ないし100,000g/mol、より好ましくは2000ないし50,000g/molを有し、さらに好ましくはその範囲は2000ないし20,000g/molである。
【0029】
該ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは、30℃以下の、より好ましくは25℃以下のガラス転移温度を有し、それによってそれらと粉末塗料に使用されるポリ(メタ)アクリル酸エステル結合剤とを有意に識別する。ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は、DIN ISO 11357−2に従って、示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。
【0030】
該ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは、以下のフリーラジカルとして重合する単量体単位から構成される:1ないし22個のC原子を有する直鎖、分枝または環状脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸アルキル、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、および(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸アリール、例えば、メタアクリル酸ベンジルまたはアクリル酸フェニル;アリール基のそれぞれは未置換であるか、または4個まで置換基を有することができる。
【0031】
単量体単位としては、エーテル・アルコール含有単量体単位を使用することも可能である。その例は、メタアクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタアクリル酸フルフリル、メタアクリル酸2−ブトキシエチル、およびアクリル酸2−エトキシエトキシエチルである。
【0032】
また、ポリエステルをカプロラクトン修飾および/またはバレロラクトン修飾単量体単位の形状で、ポリマーベースの分子に取り込ませることも可能である。好ましくは、重量平均分子量220ないし1200g/molを有するカプロラクトン修飾および/またはバレロラクトン修飾(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを使用するが、該ヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは、2個ないし8個の炭素原子を有する直鎖、分枝または環状脂肪族ジオールから誘導する。
【0033】
さらに、フリーラジカルとして重合する単量体単位は、ハロゲン化アルコールのメタアクリル酸エステル、例えば、6個ないし20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸ペルフルオロアルキル、スチレン、および環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、ビニルトルエンおよびp−メチルスチレンからなる群より選択される。
【0034】
本発明のレベリング剤のさらに可能な成分(b)は、EP 1 193 299に記載されているような櫛型コポリマーでも良い。
【0035】
2種類の成分(a)および(b)は、本発明のレベリング剤を形成するために、混合操作により混合し得る;この操作はポリマー溶液の加熱により促進され得る。
【0036】
すでに上に述べたように、本発明のレベリング剤を得る好適な方法は、溶媒または担体媒体として成分(a)を用い、成分(b)を調製することである。
【0037】
この場合、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、すなわち、成分(b)の調製は、当業者既知の方法で、成分(a)中にて実施される。
【0038】
成分(b)は、例えば、アゾ開始剤またはペルオキシド開始剤とのフリーラジカルにより開始される重合反応を介して調製し得る。適切な開始剤は、例えば、ペルオキソ安息香酸tert−ブチルまたは過酸化ジベンゾイルなどのペルオキシドである。しかし、さらに可能なものとして、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物が使用可能である。好ましくは、ペルオキシドを使用する。
【0039】
重合反応は、好ましくは、約40℃ないし180℃、より好ましくは、100℃ないし150℃、さらにより好ましくは、110℃ないし130℃の温度で実施する。所望の重量平均分子量を設定するために、重合反応に際し、例えば、チオール、二級アルコール、または四塩化炭素などのハロゲン化アルキルなどの鎖調節剤(鎖転移剤)を添加することが可能である。ポリ(メタ)アクリル酸エステルのさらなる製造法は、制御された重合反応法、例えば、以下の方法である:
【0040】
− 可逆的付加フラグメンテーション連鎖転移方法(RAFT):特定の重合反応調整剤を用いる場合、この方法はMADIXおよび付加フラグメンテーション連鎖転移とも呼称されるが、本明細書では、例えば、文献(Polym. Int. 2000, 49, 993; Aust. J. Chem 2005, 58, 379; J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2005, 43, 5347; US 6 291 620;WO98/01478;WO98/58974およびWO99/31144)に記載されているように、RAFTとのみいう。
【0041】
− 重合反応調整剤として、例えば、文献(Chem. Rev. 2001, 101, 3661)に開示されているように、重合調節剤(NMP)としてのニトロキシル化合物により制御された重合反応。
【0042】
− 原子転移ラジカル重合反応(ATRP):例えば、WO96/30421に記載。
【0043】
− 基移動重合反応(GTP):例えば、文献(O.W. Webster in "Group Transfer Polymerization", in "Encyclopedia of Polymer Science and Engineering", volume 7, H.F. Mark, N.M. Bikales, C.G. Overberger and G. Menges, Eds., Wiley Interscience, New York 1987, page 580 ff.)に記載された反応。
【0044】
− 有機コバルト錯体により制御されたフリーラジカルによる重合反応:例えば、文献(J. Am. Chem. Soc., 1994, 116, 7973)に記載された反応。
【0045】
本発明のレベリング剤は、0.01%ないし5%の重量、好ましくは、0.05%ないし2%の重量、さらにより好ましくは、0.01%ないし1%の重量の比較的少量で塗装製剤に使用する。
【0046】
本発明のレベリング剤は、塗料の性質および塗布様式により、溶液、エマルジョンとして、シリカなどの粉末に適用するか、または100%の物質として適用され得る。
【0047】
溶媒由来塗料においては、塗料それ自体の溶媒と同様の溶媒に希釈したレベリング剤を使用することが好適である。放射線硬化システムにおいては、好ましくは、レベリング剤を相当する単量体に希釈する。
【0048】
粉末塗料においては、レベリング剤100%のものを使用するか、または粉末形状の担体物質に適用されるこれらのレベリング剤の形状のものを使用する。これらのレベリング剤は、ドイツ特許出願DE−A−195 22 475に従い、ワックス溶融物に取り込ませ得るし、また特に、本発明のレベリング剤が粘稠かつ粘着性であるポリマーの場合、その方法で、流動性良好な固体形状に変換しても良い。粉末塗料のサブタイプである水性粉末スラリーの場合、レベリング剤は水性エマルジョンの形状で添加し得る。これらのエマルジョンは先行技術に従い、乳化剤を助剤として調製する。
【0049】
また、本発明は粉末塗料の調製における、または調製のための、本発明粉末塗装レベリング剤の使用にも関する。
【0050】
本発明はさらに、粉末塗料の総重量にもとづき、本発明のレベリング剤を0.01%ないし5%の重量濃度、好ましくは、0.05%ないし2%の重量濃度、より好ましくは、0.1%ないし1%の重量濃度で含有してなる粉末塗料に関する。
【0051】
前記粉末塗料は、熱硬化性粉末塗装タイプ、例えば、エポキシ樹脂、COOH−官能性ポリエステル樹脂とのハイブリッド系、イソシアヌル酸トリグリシジル−ベース樹脂、テトラヒドロキシアルキルビスアミド−ベース樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂などであると良く、後者は30℃を超えるガラス転移温度、より好ましくは35℃を超えるガラス転移温度を有する。あるいは、該粉末塗料は、例えば、ポリアミド11および12、ポリエチレン、ビニルアルコールとのコポリマー(EVOH系)、塩化ポリビニル、およびフルオロポリマーなどのポリマーをベースとする熱可塑性塗装粉末でも良い。
【0052】
粉末塗料、粉末塗装基礎材料、および粉末塗装製剤形態のさらなる例は、以下の参考文献:Pieter Gillis de Lange "Powder Coatings, Chemistry and Technology(粉末塗装、化学および技術)"、2004(出版社:Vincents Network、ISBN 3-87870-784-3)およびDE 196 44 728およびその引用文献)に一覧掲載されている。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[製造例]
本発明をさらに以下の例により説明する:
ポリエーテル1:ブタノールから出発して調製したモノヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシドポリエーテル、Mw=約1250g/mol
ポリエーテル2:ブタノールから出発して調製したモノヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシドポリエーテル、Mw=約4600g/mol
ポリエーテル3:ブタノールから出発して調製したモノヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシドポリエーテル、Mw=約7300g/mol
ポリエーテル4:ジヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシドポリエーテル、Mw=約850g/mol
【0054】
ポリエーテル5:ジヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシドポリエーテル、Mw=約7500g/mol
ポリエーテル6:ブタノールから出発して調製したモノヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド・コポリエーテル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド比30:70、Mw=約4000g/mol
ポリエーテル7:ジヒドロキシ官能性ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド・ブロック・コポリマー、エチレンオキシド−プロピレンオキシド比80:20、Mw=約9900g/mol
【0055】
重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。この方法では、ポリスチレンを基準として用いた。
【0056】
1)キシレン中、ポリアクリル酸エステル・コポリマーPA1の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えたガラスフラスコに、N2気流下、キシレン(42.5g)を入れ、これを沸騰するまで加熱した。4時間後、アクリル酸2−エチルヘキシル(51.6g)、アクリル酸n−ブチル(118.5g)およびジ−tert−ブチルペルオキシド(0.09g)からなる混合物を計量して加え、反応温度を重合反応の間に上昇させ、重合反応を常に沸騰条件下で行うようにした。次いで、さらにジ−tert−ブチルペルオキシド(0.01g)を加えた。1時間の後反応の後、溶媒を留去した。
【0057】
2)ポリエーテル3中、ポリアクリル酸エステル・コポリマーPA2の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えたガラスフラスコに、N2気流下、ポリグリコールB01/240(57g)を容れ、これを沸騰するまで加熱した。4時間後、アクリル酸2−エチルヘキシル(51.6g)、アクリル酸n−ブチル(118.5g)およびジ−tert−ブチルペルオキシド(0.09g)からなる混合物を計量して加え、反応温度を重合反応の間に上昇させ、重合反応を常に沸騰条件下で行うようにした。次いで、さらにジ−tert−ブチルペルオキシド(0.01g)を加えた。1時間の後反応の後、反応混合物を冷却した。
【0058】
3)PA3:PA1とポリエーテル3との混合物
ポリエーテル3(57g)とPA1(170g)とを室温で混合する。
【0059】
4)粉末1:PA1とシペラナト22との混合物
シペラナト(Siperanat)22(沈降シリカ;メーカー:デグッサ)(35g)を料理用ミキサー(“アシステント”スタンドミキサー;AEG)に容れ、5分間攪拌し、PA1(65g)を計量して加える。
【0060】
5)粉末2:PA3とシペラナト22との混合物
シペラナト22(35g)を料理用ミキサーに容れ、5分間攪拌し、PA3(65g)を計量して加える。
【0061】
粉末塗料の一般的調製:
実施例に示したレベリング剤を10%マスターバッチの形状で粉末塗装樹脂中に取り込ませた。これを開始用の樹脂塊と見做した。マスターバッチは、相当する粉末塗装樹脂を融解し、それをレベリング剤と混合することにより製造する。冷却後、マスターバッチ混合物を細かく破砕する。
【0062】
すべての成分を一緒に秤量し、高速ミクサコ・ラボCM3ミキサーにて、2000rpmで2.5分間、前混合した。その後、この混合物を、プリズムTSE16ツイン−スクリュー押出器により、120℃で押出した。得られる樹脂融解物を冷却し、分画して、レッシュ(Retsch)ZM100固定ディスクミルにて摩砕した。得られた粉末を100μmの篩に通した。
【0063】
このように製造した粉末塗装混合物を次いでリン酸化鉄パネルに静電気的に塗布し、このように塗装したパネルを190℃で12分間硬化させた。
【0064】
得られる粉末塗装表面の評価:
ok:非常に優れて塗布された粉末塗装
MC:直径約1mmまでの微小クレーター
C :可視クレーター、一部は金属面まで到達
【0065】
ウララック(Uralac)P5170による白色ポリエステルハイブリッド粉末塗料の試験
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
ウララック(Uralac)P2617−3による白色ポリエステル粉末塗料の試験
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
ウララックP865による透明ポリエステル粉末塗装の試験
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
ウララックP3495による透明ポリエステルハイブリッド粉末塗装の試験
【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
エピコート3003による透明エポキシ塗装の試験
【0078】
【表9】

【0079】
【表10】

【0080】
ウララックP5170による白色ポリエステルハイブリッド粉末塗装における粉末形状のレベリング剤の試験
【0081】
【表11】

【0082】
すべての成分を一緒に秤量し、高速ミクサコ・ラボCM3ミキサーにて、2000rpmで2.5分間、前混合した。その後、この混合物を、プリズムTSE16ツイン−スクリュー押出器により、120℃で押出した。得られた樹脂融解物を冷却し、分画して、レッシュ(Retsch)ZM100固定ディスクミルにて摩砕した。得られた粉末を100μmの篩に通した。
【0083】
このように製造した粉末塗装混合物を次いでリン酸化鉄パネルに静電気的に塗布し、このように塗装したパネルを190℃で12分間硬化させた。
【0084】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量平均分子量が1000g/molを超え、かつ重量で75%を超えるポリプロピレンオキシド画分を有する少なくとも1種のポリプロピレンオキシド含有ポリエーテル、および任意に(b)少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有してなる粉末塗装レベリング剤。
【請求項2】
前記ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルが、重量で80%を超えるポリプロピレンオキシド画分を有する請求項1記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項3】
前記ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルが、重量で90%を超えるポリプロピレンオキシド画分を有する請求項2記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項4】
前記ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルが、重量で100%のポリプロピレンオキシド画分を有する請求項3記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルが、1000ないし100,000g/molの重量平均分子量を有する請求項1ないし4の1項以上に記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項6】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルが、2000ないし50,000g/molの重量平均分子量を有する請求項5記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項7】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルが、2000ないし20,000g/molの重量平均分子量を有する請求項6記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項8】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度が、30℃未満である請求項1ないし7の1項以上に記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項9】
前記ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルまたはポリエーテル類(a)が、ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテル(a)およびポリ(メタ)アクリル酸エステル(b)の重量画分の総量にもとづいて、重量で10%ないし100%の量で存在する請求項1ないし8の1項以上に記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項10】
前記ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルまたはポリエーテル類(a)が、ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテル(a)およびポリ(メタ)アクリル酸エステル(b)の重量画分の総量にもとづいて、重量で10%ないし75%の量で存在する請求項9記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項11】
前記ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルまたはポリエーテル類(a)が、ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテル(a)およびポリ(メタ)アクリル酸エステル(b)の重量画分の総量にもとづいて、重量で10%ないし50%の量で存在する請求項10記載の粉末塗装レベリング剤。
【請求項12】
請求項1ないし11の1項以上に記載の粉末塗装レベリング剤の製造法であって、ポリプロピレンオキシド含有ポリエーテルまたはポリエーテル類(a)中で、フリーラジカル重合反応により、一つのポリ(メタ)アクリル酸エステルまたは複数のポリ(メタ)アクリル酸エステル類(b)を製造することを特徴とする製造法。
【請求項13】
熱硬化性または熱可塑性粉末塗料における、請求項1ないし11のいずれかに記載し定義した、または請求項12に記載したように調製した粉末塗装レベリング剤の使用。
【請求項14】
前記熱硬化性粉末塗料が、結合剤として、エポキシ樹脂、カルボキシ−官能性ポリエステル樹脂とのハイブリッド系、イソシアヌル酸トリグリシジル−ベース樹脂、テトラヒドロキシアルキルビスアミド−ベース樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の結合剤を含有してなる請求項13記載の使用。
【請求項15】
前記熱可塑性粉末塗料が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリエチレン、ビニルアルコールのコポリマー、塩化ポリビニルおよびフルオロポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有してなる請求項13記載の使用。
【請求項16】
前記粉末塗装レベリング剤をそのまま使用するか、または前記粉末塗料における固体担体材料に結合する請求項13ないし15の1項以上に記載の使用。
【請求項17】
請求項1ないし11の1項以上に記載した、または請求項12の製造法に記載したように調製した粉末塗装レベリング剤を、粉末塗料の総重量にもとづき、重量で0.01%ないし5%の量で含有してなる粉末塗料。
【請求項18】
前記粉末塗装レベリング剤が、粉末塗料の総重量にもとづき、重量で0.05%ないし2%の量で存在する請求項17記載の粉末塗料。
【請求項19】
前記レベリング剤が、粉末塗料の総重量にもとづき、重量で0.1%ないし1%の量で存在する請求項18記載の粉末塗料。
【請求項20】
熱硬化性または熱可塑性粉末塗料である請求項17ないし19の1項以上に記載の粉末塗料。
【請求項21】
前記熱硬化性粉末塗料が、結合剤として、エポキシ樹脂、カルボキシ−官能性ポリエステル樹脂とのハイブリッド系、イソシアヌル酸トリグリシジル−ベース樹脂、テトラヒドロキシアルキルビスアミド−ベース樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の結合剤を含有してなる請求項20記載の粉末塗料。
【請求項22】
前記熱可塑性粉末塗料が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリエチレン、ビニルアルコールのコポリマー、塩化ポリビニルおよびフルオロポリマーからなる群からの少なくとも1種のポリマーを含有してなる請求項20記載の粉末塗料。

【公表番号】特表2010−539259(P2010−539259A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524364(P2010−524364)
【出願日】平成20年8月2日(2008.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006383
【国際公開番号】WO2009/033529
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】