説明

粉末成形装置

【課題】複数の充填部を有する粉末成形装置を用いて材料粉末を圧粉する場合に、充填部ごとの粉末成形品間の密度ばらつきを小さくすることが可能な粉末成形装置を提供すること。
【解決手段】材料粉末Pが充填される複数の充填部Aが形成されたダイ11と、前記ダイ11に対して相対移動可能に取り付けられ前記ダイ11とともに充填部Aを画成する下パンチ21と、前記ダイ11の上方に配置され前記ダイ11に対して進退可能とされた上パンチ31とを備え、前記充填部Aに充填された材料粉末Pを加圧して粉末成形品を成形する粉末成形装置であって、充填された前記材料粉末Pが受ける加圧力を、前記充填部A毎に検出する圧力検出手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料粉末を圧粉して粉末成形品を成形するための粉末成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、金属やセラミックス等の材料粉末を粉末成形品とする場合、充填部が形成されたダイと、ダイとともに充填部を画成する下パンチと、充填部に対して進退可能とされた上パンチとを備えた粉末成形装置を用いて、充填部内に材料粉末を充填したうえで上パンチ及び下パンチにより圧粉することが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
この粉末成形品を高温で焼結することにより、自動車部品や電子部品等の粉末焼結品が生産される。
【0003】
粉末成形品は、密度により焼結時の収縮度合いが異なると焼結後寸法、重量にばらつきが生じるため、成形時の密度ばらつきを抑制する必要があり、そのために種々の技術が開発されている。例えば、上パンチおよび下パンチを充填部内の所定位置まで前進させて、その後、上パンチを所定の加圧力に到達するまで前進させて成形する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73726号公報
【特許文献2】特開2008−266752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に、上パンチ及び下パンチはそれぞれ共通の駆動源(例えば、各ひとつのモータ)により駆動されるため、粉末成形装置が複数の充填部を有する場合には、各充填部への材料粉末の充填量により、各充填部における加圧力に差が生じやすく、その結果、粉末成形品間に密度のばらつきが生じて、ひいては粉末焼結品の寸法がばらつくという問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、複数の充填部を有する粉末成形装置を用いて材料粉末を成形する場合に、充填部ごとの粉末成形品間の密度ばらつきを小さくすることが可能な粉末成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、材料粉末が充填される複数の充填部が形成されたダイと、前記ダイに対して相対移動可能に取り付けられ、前記ダイとともに前記複数の充填部を画成する複数の下パンチと、前記ダイの上方に配置され、前記複数の充填部に対応して配置され前記ダイに対して進退可能とされた複数の上パンチと、を備え、前記充填部に充填された材料粉末を加圧して粉末成形品を成形する粉末成形装置であって、充填された前記材料粉末が受ける加圧力を、前記充填部毎に検出する圧力検出手段を、備えることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る粉末成形装置によれば、複数の充填部を有する粉末成形装置により粉末成形品を成形する場合に、圧力検出手段より各充填部における圧粉時の加圧力を検出することが可能とされているので、各充填部で成形される粉末成形品の密度を把握することができる。その結果、粉末成形品間の密度ばらつきの発生を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粉末成形装置であって、各充填部に対応する複数組の上下パンチは、それぞれ少なくとも前記下パンチと前記上パンチのいずれか一方がパンチ間隔調整機構に連結され、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、各組の上下パンチ間隔を調整するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る粉末成形装置によれば、各組の上下パンチは、それぞれ少なくとも下パンチと上パンチのいずれか一方がパンチ間隔調整機構に連結されていて、圧力検出手段の検出結果に基づき、各組の上下パンチ間隔を調整するので、各充填部における加圧力の差を小さくし、ひいては粉末成形品間の密度ばらつきを小さくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の粉末成形装置であって、前記圧力検出手段が検出する各充填部における複数回の加圧力に基づき、それぞれの前記充填部における加圧力を所定範囲内とするように、前記パンチ間隔調整機構を調整することを特徴とする。
【0012】
この発明に係る粉末成形装置によれば、圧力検出手段が検出する各充填部における複数回の加圧力に基づいて、それぞれの充填部における加圧力を所定範囲内とするようにパンチ間隔調整機構を調整するので、材料粉末供給等の傾向を考慮して粉末成形品間の密度のばらつきを小さくすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末成形装置であって、前記複数の充填部において成形した粉末成形品のうち、前記圧力検出手段が検出した加圧力が設定加圧力範囲外であるものを排除する排除手段を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る粉末成形装置によれば、複数の充填部において成形した粉末成形品のうち、圧力検出手段が検出した加圧力が設定加圧力範囲外であるものを排除手段により排除するので、加圧力が所定範囲外である粉末成形品を確実に排除することができ、ひいては粉末成形品間の密度ばらつきを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粉末成形装置によれば、各充填部における圧粉時の加圧力を把握することにより、粉末成形品間の密度ばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粉末成形装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る粉末成形装置の要部構成を説明する図である。
【図3】第1の実施形態に係る粉末成形装置の作用を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る粉末成形装置の要部構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図3を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態に係る粉末成形装置1は、例えば、図1に示すように、ダイが固定された状態で下ラムに接続された下パンチがダイに対して進退自在とされるダイ固定成形方式の粉末成形装置とされている。
【0018】
粉末成形装置1は、ダイセット(金型)10と、粉末成形プレス50とを備え、ダイセット10は、金属粉末(材料粉末)Pが充填される充填部Aが形成されたダイ11と、ダイ11に対して相対移動可能に取り付けられダイ11とともに充填部Aを画成する下パンチ21と、ダイ11の上方に配置されダイ11に対して進退可能とされた上パンチ31と、下パンチ21を昇降させる昇降機構(パンチ間隔調整機構)80とを備えている。
【0019】
ここで、下パンチ21及び上パンチ31は、ダイ11に形成された充填部Aのうち、対応する充填部Aの軸線Oの上を上下方向に移動可能に構成されており、この実施形態は、例えば、充填部A及び上下パンチ31、21が、それぞれ2つの場合を示している。また、ダイ11は、ダイプレート12の中央部に配置されていて、ダイプレート12には孔18Hが形成されている。
【0020】
下パンチ21は、本体ベッド68に固定されたベースプレート14と相対的に移動可能とされた下パンチプレート13に立設されており、下パンチプレート13は、押上ロッド40を介して押上プレート44と接続されるとともに、押上プレート44がT型ジョイント45と連結されている。
【0021】
また、T型ジョイント45のT溝45Aは、下ラム61のT形状部と接続されており、下ラム61が上下方向に進退することにより押上プレート44とともに下パンチ21及び下パンチプレート13が上下方向に移動するようになっている。また、ダイプレート12は、支持部材41を介してベースプレート14に固定されている。また、押上プレート44とT型ジョイント45とは、接続ロッド46により互いに連結されている。
【0022】
昇降機構80は、例えば、図2に示すように、下パンチプレート13上に設けられそれぞれの下パンチ21と対応するふたつのジャッキ80Jを備えている。
ジャッキ80Jは、昇降モータ81と、昇降モータ81の出力軸に形成されたウォームギア82と、ウォームギア82と係合するウォームホイール83と、スプライン等によりウォームホイール83と係合しウォームホイール83と共に回転する下パンチ支持軸84と、押上ロッド40の外周に形成され下パンチ支持軸84内周の雌ネジ(不図示)と係合する雄ネジとを備えている。
【0023】
また、下パンチ21、押上ロッド40、ウォームホイール83及び下パンチ支持軸84は同軸に配置され、下パンチ支持軸84は、ウォームホイール83及び押上ロッド40と上下方向に移動可能とされている。また、ウォームギア82及びウォームホイール83は、ハウジング85により覆われている。
【0024】
かかる構成により、昇降機構80は、それぞれのジャッキ80Jにおいて昇降モータ81が回転することによりウォームギア82を介してウォームホイール83と下パンチ支持軸84が回転して下パンチ支持軸84が押上ロッド40と相対回転する。
下パンチ支持軸84が押上ロッド40と相対回転することにより、下パンチ支持軸84の雌ネジと押上ロッド40の雄ネジが係合して、下パンチ支持軸84及び下パンチ21の押上ロッド40に対する軸方向位置を変化するようになっている。
【0025】
その結果、下パンチ支持軸84上面に配置された下パンチ21が軸線O方向に移動して上下パンチ31、21間の距離が調整され、充填部A内の金属粉末Pに対する加圧力を調整することができる。
なお、下パンチ21に負荷される圧粉時及び粉末成形品排出時の荷重は、下パンチ支持軸84内周の雌ネジと押上ロッド40外周の雄ネジにより伝達される。
このように、各ジャッキ80Jが、それぞれの上下パンチ31、21の間隔を個別に調整することで、各充填部Aにおける加圧力を小さくすることができるようになっている。
【0026】
複数の上パンチ31は、上パンチプレート34に支持部材34Aを介してそれぞれ設置されるとともに、上パンチプレート34に下方(ダイ11の方向)に向けて立設され、ダイ11の充填部Aに嵌挿可能とされている。また、上パンチプレート34は、その上部に設けられた上部連結部材35及びTジョイント36を介して上ラム71に接続されている。
【0027】
上パンチプレート34にはガイドロッド18が立設され、ガイドロッド18がダイプレート12に形成されたガイド孔18Hに摺動自在に挿入されることで、上パンチ31が、ダイ11に対して上下方向に移動する際にダイ11とずれるのを抑制するようになっている。また、上部連結部材35とTジョイント36とは、接続ロッド37を介して互いに連結されている。
【0028】
また、上パンチ31と上パンチプレート34との間には、圧力検出手段となるロードセル90(圧力検出素子)が設けられ、ロードセル90は、上パンチ31が充填部Aに充填された金属粉末を押圧、圧粉する際の加圧力を検出して制御部Cに入力するようになっている。
【0029】
粉末成形プレス50は、図1に示すように、プレス下側本体部60と、プレス上側本体部70と、制御部Cとを備え、プレス下側本体部60とプレス上側本体部70とは、連結部材52で連結されている。
【0030】
プレス下側本体部60は、下ラム61と、下ラム駆動部62と、本体支持部63と、下ラム駆動部支持板64と、下ラムベースプレート65と、廻り止めロッド66と、下ラムガイドプレート67と、本体ベッド68とを備えており、本体支持部63と、下ラム駆動部支持板64と、下ラムベースプレート65と、下ラムガイドプレート67と、本体ベッド68とは、下方からこの順序で配置され、廻り止めロッド66は、下ラムベースプレート65と下ラムガイドプレート67との間に立設されている。
【0031】
下ラム駆動部62は、下ラム駆動部支持板64に設けられた下ラム駆動モータ62Mと、下ラム駆動モータ62Mの回転軸に設けられた駆動プーリ62Aと、伝達ベルト62Bと、従動プーリ62Cと、従動プーリ62Cと同心とされた下ラム駆動軸62Dとを備えており、伝達ベルト62Bが駆動プーリ62Aと従動プーリ62Cに巻回されて、下ラム駆動モータ62Mの回転が従動プーリ62Cに伝達されて下ラム駆動軸62Dが回転されるようになっている。
【0032】
また、下ラム駆動軸62Dの先端側に形成された雄ネジ62Eが下ラム61の下側端面の中央から軸線に沿って延在する雌ネジ61Aと螺合して配置され、下ラム駆動軸62Dが回転されることにより、下ラム61が上昇下降するようになっている。
【0033】
下ラム61は、下方側に雄ネジ62Eと係合可能な雌ねじ61Aが形成され、下ラム61の外周は下ラムガイドプレート67に設けられたガイド部材67Aに挿入されるとともに上下方向に摺動自在とされ、下ラム61は基端部(下方側)が下ラムベースプレート65に固定されるとともに下ラムベースプレート65に立設されている。
【0034】
下ラムベースプレート65は、その中央部に貫通孔65Aが形成され、下ラム61の雌ネジ61Aが貫通孔65Aと同心とされ、下ラム61の雌ネジ61Aには下ラム駆動軸62Dが挿入され、雄ネジ62Eと雌ネジ61Aが係合されている。
【0035】
また、下ラムベースプレート65に形成された孔65Bに廻り止めロッド66が貫通されることにより、下ラム駆動モータ62Mの下ラム駆動軸62Dが回転した場合に、下ラム61及び下ラムベースプレート65が回転するのが防止されている。
その結果、下ラム駆動モータ62Mの下ラム駆動軸62Dが回転されると、下ラム駆動軸62Dの雄ネジ62Eと下ラム61の雌ネジ61Aが係合して、下ラム駆動モータ62Mの回転が上下方向の移動に変換され、下ラム61が上下方向に進退するようになっている。
【0036】
プレス上側本体部70は、上ラム71と、上ラム駆動部73と、支持板74と、上ラムベースプレート75と、廻り止めロッド76と、上ラムガイドプレート77とを備えており、支持板74と、上ラムベースプレート75と、上ラムガイドプレート77とは、上方からこの順序で配置され、廻り止めロッド76は、上ラムベースプレート75と上ラムガイドプレート77との間に立設されている。
【0037】
上ラム駆動部73は、支持板74に取り付けられた上ラム駆動モータ73Mと、上ラム駆動モータ73Mの回転軸に設けられた駆動プーリ73Aと、伝達ベルト73Bと、従動プーリ73Cと、従動プーリ73Cと同心とされた上ラム駆動軸73Dとを備えており、伝達ベルト73Bが駆動プーリ73Aと従動プーリ73Cに巻回されて、上ラム駆動モータ73Mの回転が従動プーリ73Cに伝達されて上ラム駆動軸73Dが回転されるようになっている。
【0038】
上ラム71は、上ラム71の上方端面の中央に雄ネジ73Eと係合可能な雌ねじ71Aが形成され、上ラム71の外周は上ラムガイドプレート77に設けられたガイド部材77Aに挿入されるとともに上下方向に摺動自在とされ、上ラム71は基端部(上方側)が上ラムベースプレート65に固定されるとともに上ラムベースプレート75に立設されている。
【0039】
また、上ラムベースプレート75に形成された孔75Bに廻り止めロッド76が貫通されることにより、上ラム駆動軸73Dが回転した場合に、上ラム71及び上ラムベースプレート75が回転するのが防止されている。
【0040】
また、上ラム駆動軸73Dの先端側に形成された雄ネジ73Eが上ラム71の下側端面の中央から軸線に沿って形成された雌ネジ71Aと螺合して配置され、上ラム駆動軸73Dが回転されることにより上ラム71が上昇下降するようになっている。
【0041】
制御部Cは、予め設定された手順に基づいて、押上ロッド40、下ラム61、上ラム71及び昇降機構80を制御して、上下パンチ31、21を駆動して、金属粉末pを圧粉して粉末成形品Wを成形してダイ11の外部に排出するとともに、ロードセル90が検出した各充填部Aにおける加圧力に基づいて、下パンチ21の上下方向位置を調整して、各充填部Aにおける加圧力を調整するようになっている。
【0042】
次に、図3を参照して、粉末成形装置1の作用について説明する。図3は、同じ動作をする二組の上下パンチ31、21のうちの一組の動作を模式的に示したものである。
【0043】
まず、図3(A)に示すように、上パンチ31をダイ11の上方の所定位置で停止させて、下パンチ21を充填部Aを画成するダイ11の所定位置に配置し、図示しないシューボックスを移動させて充填部Aに金属粉末Pを充填する。
【0044】
次に、図3(B)に示すように、上ラム駆動モータ73Mを回転させて上パンチ31を充填部Aに向けて下降させるとともに、下パンチ駆動モータ62Mを駆動して下パンチ21を上パンチ31と同じ速度で上昇させて金属粉末Pを上下から圧粉する。
【0045】
次いで、図3(C)に示すように、上パンチ31をさらに前進させて金属粉末Pを圧粉する。ロードセル90は、(B)、(C)における上パンチ31の加圧力を検出する。ロードセル90が検出した各充填部Aの加圧力は制御部Cに入力されて、例えば、データテーブル等を参照して下パンチ21の調整量(上下方向の移動量)が算出され、その結果に基づいて、昇降モータ81が駆動されて、下パンチ21の上下方向位置が調整される。
【0046】
次に、図3(D)に示すように、上パンチ31が下降端に到達したら上ラム駆動モータ73Mを停止して上パンチ31の下降を停止させる。このとき、上パンチ31と下パンチ21により、金属粉末Pを加圧した状態にて短時間保持してもよい。
【0047】
その後、図3(E)に示すように、下ラム61及び上ラム71が同期駆動して上パンチ31と下パンチ21が粉末成形品Wを保持した状態で上昇するように、下ラム駆動モータ62Mと上ラム駆動モータ73Mを駆動する。
【0048】
次に、図3(F)に示すように、粉末成形品Wの下面がダイ11の表面まで上昇して粉末成形品Wをダイ11から抜き出したら下パンチ21の上昇を停止する。下パンチ21の上昇が停止すると粉末成形品Wの保持が解除され、その後、上パンチ31が原位置に上昇するまで上ラム駆動モータ73Mが駆動される。
【0049】
次いで、図示しない取出し装置によって、粉末成形品Wがダイ11から取り除かれたら、図3(G)に示すように、下ラム駆動モータ62Mの下ラム駆動軸62Dが逆回転して下ラム61が下降するとともに下パンチ21が下降して初期位置に戻る。
【0050】
粉末成形装置1によれば、金属粉末Pを複数の充填部Aで粉末成形品Wに成形する場合に、ロードセル90より、各充填部Aの加圧力を検出するので、各充填部Aにおける金属粉末Pの加圧力のばらつきを小さくして、粉末成形品W間の密度ばらつきの発生を抑制することができる。
【0051】
また、粉末成形装置1によれば、各充填部Aと対応する下パンチ21が昇降機構80に連結され、ロードセル90の検出結果に基づいて、各組の上下パンチ間隔を調整するので、各充填部Aにおける加圧力の差を小さくし、ひいては粉末成形品W間の密度ばらつきを小さくすることができる。
【0052】
また、粉末成形装置1によれば、ロードセル90が検出する各充填部Aにおける複数回の加圧力に基づいて各充填部Aにおける加圧力を所定範囲内とするように昇降機構80を調整するので、金属粉末P供給等の傾向を考慮して粉末成形品W間の密度のばらつきを小さくすることができる。
【0053】
また、粉末成形装置1によれば、昇降機構80によりそれぞれの上下パンチ31、21の間隔を調整することにより、各充填部Aにおける加圧力のばらつきを小さくし、ひいては粉末成形品W間の密度のばらつきを小さくすることができる。
【0054】
また、粉末成形装置1によれば、ロードセル90が上パンチ31と上パンチプレート34との間に配置されているので、ロードセル90が上パンチ31に印加される加圧力を正確に検出することができる。
【0055】
次に、図4を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、ロードセル90がダイセット10ではなく、粉末成形プレス50の上パンチプレート34内に設けられている点である。その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。第2の実施形態によれば、ロードセル90が粉末成形プレス50に設けられているので、ダイセット10ごとにロードセル90を設ける必要がなく、設備投資コストを削減することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、ロードセル90を上パンチ31毎に設ける場合について説明したが、下パンチ21に圧力検出手段を設けてもよいし、下パンチ21と上パンチ31の双方に圧力検出手段を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、ロードセル90が検出した加圧力に基づき、昇降機構(パンチ間隔調整機構)80により下パンチ21を上下動することで加圧力を調整する場合について説明したが、昇降機構80による下パンチ21の上下方向位置調整に代えて上パンチ31の上下方向位置を調整してもよいし、下パンチ21と上パンチ31の双方の上下方向位置調整により加圧力を調整してもよい。
【0058】
また、昇降機構80に代えて、サーボ弁により制御される油圧ジャッキ等を用いてもよい。
また、上下パンチ31、21の間隔調整に代えて、各充填部Aへの金属粉末Pの供給量調整により各充填部Aの加圧力を調整してもよい。
【0059】
また、特定の粉末成形品Wをライン外に排除するための排除手段を設けて、粉末成形品Wの中に圧力検出手段が検出した加圧力が所定範囲外であるものが存在する場合に、その粉末成形品Wを粉末成形装置1又はライン外に除去することにより、粉末成形品Wの密度のばらつきを小さくするように構成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、粉末成形装置1がダイ固定式である場合について説明したが、ウィズドローアル方式等、他の作動方式の粉末成形装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る粉末成形装置によれば、複数の充填部に充填された材料粉末を、共通の駆動源により作動する上下パンチにより圧粉する場合に、粉末成形品間の密度のばらつきを小さくすることができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
P 金属粉末(材料粉末)
A 充填部
W 粉末成形品
O 軸線
1 粉末成形装置
10 ダイセット
11 ダイ
13 下パンチプレート
21 下パンチ
31 上パンチ
34 上パンチプレート
50 粉末成形プレス
62 下ラム駆動部
62M 下ラム駆動モータ
73 上ラム駆動部
73M 上ラム駆動モータ
80 昇降機構(パンチ間隔調整機構)
90 ロードセル(圧力検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料粉末が充填される複数の充填部が形成されたダイと、
前記ダイに対して相対移動可能に取り付けられ、前記ダイとともに前記複数の充填部を画成する複数の下パンチと、
前記ダイの上方に配置され、前記複数の充填部に対応して配置され前記ダイに対して進退可能とされた複数の上パンチと、を備え、
前記充填部に充填された材料粉末を加圧して粉末成形品を成形する粉末成形装置であって、
充填された前記材料粉末が受ける加圧力を、前記充填部毎に検出する圧力検出手段を、備えることを特徴とする粉末成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末成形装置であって、
各充填部に対応する複数組の上下パンチは、
それぞれ少なくとも前記下パンチと前記上パンチのいずれか一方がパンチ間隔調整機構に連結され、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、各組の上下パンチ間隔を調整するように構成されていることを特徴とする粉末成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粉末成形装置であって、
前記圧力検出手段が検出する各充填部における複数回の加圧力に基づき、それぞれの前記充填部における加圧力を所定範囲内とするように、前記パンチ間隔調整機構を調整することを特徴とする粉末成形装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末成形装置であって、
前記複数の充填部において成形した粉末成形品のうち、前記圧力検出手段が検出した加圧力が設定加圧力範囲外であるものを排除する排除手段を備えることを特徴とする粉末成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−245562(P2012−245562A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121651(P2011−121651)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)