粉末成形金型装置
【課題】複数の圧粉体を同時に成形する金型装置において、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得る。
【解決手段】フィーダボックス40内に貯留される粉末Pの貯留高さHを、供給口に摺動可能に挿入されるパイプ43の挿入深さによって調節する。そしてフィーダボックス40からキャビティ12に粉末Pを充填し、上下のパンチ51,31でキャビティ12内の粉末Pを圧縮することにより圧粉体を成形する。キャビティ12ごとにフィーダボックス40からの粉末充填量を予め把握しておき、その充填量に応じてフィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さを調節することにより、各キャビティ12において均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。
【解決手段】フィーダボックス40内に貯留される粉末Pの貯留高さHを、供給口に摺動可能に挿入されるパイプ43の挿入深さによって調節する。そしてフィーダボックス40からキャビティ12に粉末Pを充填し、上下のパンチ51,31でキャビティ12内の粉末Pを圧縮することにより圧粉体を成形する。キャビティ12ごとにフィーダボックス40からの粉末充填量を予め把握しておき、その充填量に応じてフィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さを調節することにより、各キャビティ12において均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を圧縮成形して所望形状の圧粉体を得る粉末成形金型装置に係り、特に複数の圧粉体を同時に成形する粉末成形金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軸受等の円筒状の部品を高い寸法精度で生産する場合、押し型内に充填した主に金属粉からなる原料粉末を上下のパンチで圧縮して、図8に示すような中心に孔を有する円筒状の圧粉体P1を成形し、この圧粉体P1を焼結して目的形状の部品を得る粉末冶金法が有効に利用されている。圧粉体P1は、通常、図9に示すように、ダイス70のダイス孔70aに下側からコアロッド71と円筒状の下パンチ72を嵌入させてダイス孔70a内に円筒状のキャビティ70bを形成し、このキャビティ70bに上部開口から粉末Pを供給し、上パンチ73をキャビティ70bに嵌入させて上下のパンチ73,72により粉末Pを軸方向に圧縮するといった手法で成形されている。
【0003】
キャビティ70bへの粉末Pの充填は、粉末Pを貯留するホッパからホースを介して粉末Pの供給を受けているフィーダボックス74を、キャビティ70bの上部開口に対しダイス7の上面に滑動させながら進退させることにより、粉末Pをキャビティ70bに落とし込み、かつダイス70の上面ですり切りを行ってキャビティ70bに粉末Pを充填させている(特許文献1等参照)。
【0004】
粉末冶金法は部品の大量生産といった面でもきわめて有効であるが、さらに効果的に大量生産を可能とするものとして、図10に示すような複数の圧粉体を同時に成形する金型装置が開発されている。この装置では、ダイプレート100に設けられた複数のダイス101のダイス孔102にコアロッド103がそれぞれ挿入されており、コアロッド103に沿って摺動する下パンチ104をダイス孔102に下方から嵌入してキャビティ105を形成し、このキャビティ105にフィーダボックス106によって粉末Pを充填する。そして、図11に示すように各キャビティ105に上パンチ107を嵌入するとともに下パンチ104を上昇させて両パンチ104,107によりキャビティ105内の粉末Pを圧縮し、この後、図12に示すように上パンチ107を退避させるとともに下パンチ104を上昇させて、円筒状の圧粉体P1をダイス孔から上方に抜き出す。これにより、複数の圧粉体P1を同時に得ることができる。
【0005】
ダイス101はダイプレート100内に横方向に並列して設けられ、複数のフィーダボックス106はダイプレート100上をダイス孔102の上方の開口に対して一括して進退するように設けられており、フィーダボックス106内には、上方に設置された図示せぬ1つのホッパから分岐する図示せぬホースを介して、ホッパ内で貯留されている粉末Pが常に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−020802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10〜図12に示した金型装置では、同一の寸法の圧粉体を得るためにキャビティ105は同じ容量、すなわち同じ深さとされ、したがって各フィーダボックス106から各キャビティ105に落下して充填される粉末Pも同一の量が充填される設計である。しかしながら、キャビティ105に充填される粉末Pの量は、各フィーダボックス106から落下する粉末Pの流動特性やキャビティ105(ダイス孔102)の位置等の諸条件が異なることに起因して異なっているのが実情である。粉末充填量はキャビティ105ごとには一定であってばらつきの傾向は同じであるものの、装置全体としては、各キャビティ105の粉末充填量が異なるため圧縮成形された圧粉体P1は密度が異なって重量差が生じ、その結果、品質が不安定であるといった問題を招くことになる。キャビティ105ごとの粉末充填量の違いは、フィーダボックス106、あるいはホッパとフィーダボックス106をつなぐホースなどの改良で是正を試みてきたが、有効な対策とはなっていないのが現状である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の圧粉体を同時に成形する金型装置において、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得ることができる粉末成形金型装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉末成形金型装置は、上下方向に貫通する複数のダイス孔を有するダイプレートと、前記ダイス孔に下方から嵌入され、該ダイス孔に上方に開口するキャビティを形成する下パンチと、前記ダイプレート上を前記ダイス孔の開口に対して進退自在に設けられ、進出時に、自身の内部に供給されている粉末を前記キャビティに落下させて充填するフィーダボックスと、前記ダイス孔に上方から嵌入され、前記下パンチとともに前記キャビティに充填された粉末を圧粉体に圧縮成形する上パンチとを備えた粉末成形金型装置において、前記フィーダボックスに、内部に貯留される粉末の貯留高さを可変とする貯留高さ可変手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、フィーダボックス内に貯留される粉末の貯留高さを貯留高さ可変手段により調節してからキャビティに粉末を充填すると、各キャビティへの粉末の充填量はフィーダボックス内での貯留高さに応じたものとなる。ここで、キャビティごとにフィーダボックスからの粉末充填量を予め把握しておき、その充填量に応じてフィーダボックス内の粉末の貯留高さを調節することにより、各キャビティにおいて均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。
【0011】
これを実現するためには、前記貯留高さ可変手段によって調節される前記フィーダボックス内の粉末の貯留高さは、前記各キャビティに充填される粉末の密度に応じたものであって、前記圧縮成形後の前記圧粉体の成形密度を全てのキャビティにおいて均一にし得る位置であることとすれば可能である。
【0012】
本発明の前記貯留高さ可変手段は、前記フィーダボックス内に進退自在に挿入されて粉末をフィーダボックス内に供給し、その先端開口の高さ位置に応じて粉末の貯留高さが変化する管状部材である形態を含む。
【0013】
また、本発明の前記貯留高さ可変手段は、前記ダイプレートと前記フィーダボックスとの間に介装され、フィーダボックスが上下動可能に支持される筒状部材であって、該筒状部材とフィーダボックスとは、筒状部材に対するフィーダボックスの高さ位置を任意の位置に定める係合手段で係合される形態を含む。この場合の係合手段としては、前記フィーダボックスが前記筒状部材に螺合され、フィーダボックスと筒状部材とを相対回転させることでフィーダボックスが上下動し得るねじが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の圧粉体を同時に成形する金型装置において、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得ることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉末成形金型装置の側面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図2】一実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図3】一実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、キャビティ内の粉末を上下のパンチで圧縮成形している状態を示している。
【図4】一実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、圧縮成形された圧粉体をキャビティ上方に抜き出した状態を示している。
【図5】本発明の他の実施形態に係る粉末成形金型装置の側面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図6】他の実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図7】他の実施形態に係る粉末成形金型装置のフィーダボックスの構成を示す側面図である。
【図8】粉末を圧縮成形して得られる単純円筒状の圧粉体を示す斜視図である。
【図9】フィーダボックスによる一般的な粉末供給状況を示す断面図である。
【図10】従来の複数キャビティ式の粉末成形金型装置の正面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図11】図10に示した粉末成形金型装置において、キャビティ内の粉末を上下のパンチで圧縮成形している状態の正面図である。
【図12】図10に示した粉末成形金型装置において、圧縮成形された圧粉体をキャビティ上方に抜き出した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]粉末成形金型装置の構成
図1および図2は一実施形態の粉末成形金型装置のそれぞれ側面図、正面図を示している。これら図で符号10は、水平に固定されたダイプレートである。ダイプレート10内には、複数(この場合、3つ)の円筒状のダイス11が等間隔に並列して設けられている。ダイプレート10の下方には間隔を空けてコアプレート20が平行に配設されており、ダイプレート10は、ポスト21を介してコアプレート20に支持されている。
【0017】
ダイプレート10とコアプレート20との間には、ベースプレート30が平行に配設されている。ベースプレート30にはポスト21が貫通しており、ベースプレート30はポスト21に沿って上下動可能となっている。コアプレート20には、ベースプレート30を貫通し、各ダイス11の上下方向に貫通するダイス孔11aに同心状に挿入される円柱状のコアロッド22が支持されている。コアロッド22の上端面は、ダイス11の上面と面一である。ベースプレート30上には、コアロッド22に摺動可能に外装されて上端部がダイス孔11a内に摺動可能に嵌入される円筒状の下パンチ31が支持されている。ダイス孔11a内には、ダイス孔11aの内壁面とコアロッド22の外周面と下パンチ31の上端面とにより、円筒状のキャビティ12が形成される。
【0018】
ダイプレート10上には、各ダイス11に対応して複数のフィーダボックス40がセットされている。フィーダボックス40は、底面が開口したボックス本体41の一端上部に斜め上方に延びる短い管状の供給口42が設けられたもので、各フィーダボックス40の供給口42には、上方に設置された1つのホッパから分岐したホース(いずれも不図示)がパイプ(管状部材、貯留高さ可変手段)43を介して接続される。各フィーダボックス40内には、そのホッパ内で貯留されている粉末冶金原料の粉末Pがホースからパイプ43を経て常に供給されるようになっている。
【0019】
各フィーダボックス40は、ダイプレート10上を図1の矢印F・Rに示すように各ダイス孔11aの上方開口、すなわちキャビティ12の開口に対して一括して進退自在に滑動するよう設けられており、図示せぬ往復動機構により駆動される。フィーダボックス40が図1で矢印F方向に動いた進出時(図1および図2の状態)において、フィーダボックス40内の粉末Pがキャビティ12に落下する。そして矢印R方向に後退すると粉末Pはフィーダボックス40ですり切りされ、充満した状態に充填される。上記供給口42は、フィーダボックス40の後退方向、かつ上方に延びている。
【0020】
ダイプレート10上には、各ダイス11に対応して複数の円筒状の上パンチ51が配設されている。これら上パンチ51は上パンチプレート50の下面に、下方に向けて支持されている。上パンチプレート50は昇降機構52によって昇降させられ、下降することにより、ダイス孔11aに上方から嵌入される。上パンチ51はダイス11およびコアロッド22に摺動しながらダイス孔11aに嵌入させられ、下パンチ31とともにキャビティ12に充填された粉末Pを圧縮する。
【0021】
ここで、上記パイプ43について詳述する。パイプ43は、フィーダボックス40の供給口42の内側に摺動可能に挿入されている。供給口42にはロックねじ44が螺合されており、このロックねじ44をねじ込んでその先端をパイプ43に強く当接させることにより、パイプ43の供給口42に対する挿入深さを任意に固定することができるようになっている。
【0022】
パイプ43は、フィーダボックス40内に対して進退自在に挿入され、その先端開口43aの高さ位置は、斜めに延びている供給口42に沿って挿入されていることからフィーダボックス40内への進出量によって変化する。すなわち、パイプ43が深く挿入されると先端開口43aは低い位置に位置付けられ、パイプ43が浅く挿入された状態では、先端開口43aは高い位置に位置付けられる。先端開口43aの高さ位置は、フィーダボックス40で貯留される粉末Pの貯留高さ(図1:Hで示す)と相関し、先端開口43aの高さ位置が低いと貯留高さHは低く、先端開口43aの高さ位置が高いと貯留高さHは高いといったように調節される。なお、ここでの貯留高さHは、ダイプレート10の表面からパイプ43の先端開口43aの上端までの粉末Pの高さ(嵩)を言う。
【0023】
[2]圧粉体の成形
上記構成の金型装置では、はじめに、図2に示すように上パンチプレート50を上昇させて各上パンチ51を退避位置まで上昇させ、この状態から、各フィーダボックス40を各キャビティ12上に向けて往復動させ、各フィーダボックス40内の粉末Pを各キャビティ12に落とし込むとともにすり切りによって充填する。
【0024】
ところで、本実施形態のように複数のキャビティ12に同時に充填される粉末Pの量は、各フィーダボックス40から落下する粉末Pの流動特性やキャビティ12の位置等の諸条件が異なることに起因して異なることは前述の通りである。そこで本実施形態では、まず、事前に各キャビティ12への粉末Pの充填量の特性を調査し、3つのキャビティ12を、図2に示すように、粉末Pが最も充填されにくいキャビティ12A(左側のキャビティ12)、粉末Pが最も充填されやすいキャビティ12C(図中、中央のキャビティ12)、これらの中間のキャビティ12B(右側のキャビティ12)として把握したとする。粉末Pの充填のされやすさはキャビティ12での粉末Pの充填密度と相関し、充填されやすいほど充填密度は高いことになる。
【0025】
そして、粉末Pを充填する前に、図2に示すように各フィーダボックス40に対するパイプ43の挿入深さを、粉末Pが最も充填されにくい方のキャビティ12A、すなわち充填密度が低い方のキャビティ12Aに対応するものから順に深くするように調節する。すなわち、図2に示すようにフィーダボックス40をキャビティ12A,12B,12Cに対応した40A,40B,40Cとすると、パイプ43の挿入深さを、フィーダボックス40A,40B,40Cの順で段階的に深くしていく。パイプ43の挿入深さは、ロックねじ44をねじ込むことで固定される。
【0026】
図2でHa,Hb,Hcはそれぞれフィーダボックス40A,40B,40C内の粉末Pの貯留高さを示しており、上記のようにパイプ43の挿入深さを調節することにより、Ha>Hb>Hcとなる。すなわちフィーダボックス40内での粉末Pの貯留高さは、粉末Pが最も充填されにくいキャビティ12Aに対応するフィーダボックス40Aで最も高く、次いでフィーダボックス40B,40Cの順に低くなっている。
【0027】
以上のように、キャビティ12への粉末Pの充填量に応じて各フィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さを調節した後、各フィーダボックス40を作動させて各キャビティ12に粉末Pを充填する。次いで、図3に示すように各キャビティ12(12A,12B,12C)に上パンチ51を嵌入するとともに下パンチ31をベースプレート30ごと上昇させ、上下のパンチ51,31によりキャビティ12内の粉末Pを圧縮する。
【0028】
粉末Pが圧縮されたら、図4に示すように上パンチ51をキャビティ12から抜き出して上方に退避させるとともに下パンチ31を上昇させて、円筒状の圧粉体P1をダイス孔11aから上方に抜き出す。これにより、複数(3つ)の圧粉体P1を同時に得る。
【0029】
[3]作用効果
本実施形態の金型装置によれば、各フィーダボックス40内に貯留される粉末Pの貯留高さを異ならせた状態で各キャビティ12に粉末Pを充填し、次いで上下のパンチ51,31で各キャビティ12内の粉末Pを圧縮することにより圧粉体P1が成形される。ここで、キャビティ12ごとにフィーダボックス40からの粉末充填量(充填のされやすさ)を予め把握しておき、その充填量に応じて各フィーダボックス40内に貯留される粉末Pの貯留高さを調節することにより、各キャビティ12への粉末Pの実際の充填量はほぼ同量となる。よって、各キャビティ12において均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。その結果、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得ることができる。なお、フィーダボックス40内での粉末Pの貯留高さHは、各キャビティへの粉末Pの充填されやすさ、すなわち充填量に応じて適宜に調節される。
【0030】
[4]他の実施形態
次に、図5〜図7を参照して、本発明の他の実施形態を説明する。これら図で、上記一実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0031】
この場合のフィーダボックス40のボックス本体41は円筒状で、図5および図6に示すように、フィーダボックス40とダイプレート10との間には円筒状のリング(筒状部材、貯留高さ可変手段)60が介装されている。リング60はダイプレート10上を滑動し、フィーダボックス40はリング60を介してダイプレート10上をキャビティ12に対して往復動する。
【0032】
図7に示すようにボックス本体41の外周面の下端部には、雄ねじ(係合手段)45が形成されている。一方、リング60の内周面には、雄ねじ45に螺合する雌ねじ(係合手段)61が形成されており、雌ねじ61を雄ねじ45に螺合させることで、リング60はフィーダボックス40のボックス本体41に相対回転可能にねじ結合されている。
【0033】
リング60はダイプレート10上に載置され、その状態でリング60を回転させると、リング60の回転方向に応じてフィーダボックス40が上下動し、フィーダボックス40の高さ位置が調節されるようになっている。フィーダボックス40は供給口42に接続されてホッパに接続されるホースによって回転が規制されるため、リング60のみを回転させることができ、したがってリング60を回転させるとフィーダボックス40がリング60に対して上下動するのである。
【0034】
この実施形態によれば、リング60を回転させてフィーダボックス40を上下動させることにより、フィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さHを調節することができる。なお、ここでの貯留高さHは、ダイプレート10の表面から供給口42のフィーダボックス40内での開口の上端までの粉末Pの高さ(嵩)を言う。
【0035】
図6は、上記一実施形態の図2と同様に、キャビティ12A,12B,12Cの順で粉末Pの充填量が多いとした場合を示している。本実施形態では、これらキャビティ12A,12B,12Cに対応するフィーダボックス40A,40B,40Cの高さ位置が、この順で高い方から低い方へと設定されている。これによりフィーダボックス40A,40B,40C内の粉末Pの貯留高さHa,Hb,Hcは、Ha>Hb>Hcとなっている。
【0036】
図6に示すように各フィーダボックス40A,40B,40Cの高さ位置を調節して粉末の貯留高さを調節したら、この後は、上記一実施形態と同様にフィーダボックス40A,40B,40Cをダイプレート10上で往復動させて各キャビティ12A,12B,12Cに粉末Pを充填し、上下のパンチ51,31でキャビティ12A,12B,12C内の粉末Pを圧縮して圧粉体P1を得る。
【0037】
本実施形態でも、上記一実施形態と同様に、キャビティ12に対する粉末Pの充填のされやすさ(充填量)に応じてフィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さを調節することができるため、各キャビティ12において均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。
【0038】
なお、上記他の実施形態のように、リング60上にフィーダボックス40を上下動可能に支持する構成は、ねじの螺合の他に、例えばリング60に対しフィーダボックス40を軸方向に延びるガイドに沿って上下動可能に支持し、任意の高さでフィーダボックス40をリング60にねじ止めするといった構成などでも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…ダイプレート
11a…ダイス孔
12…キャビティ
31…下パンチ
40…フィーダボックス
43…パイプ(管状部材、貯留高さ可変手段)
45…雄ねじ(係合手段)
51…上パンチ
60…リング(筒状部材、貯留高さ可変手段)
61…雌ねじ(係合手段)
P…粉末
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を圧縮成形して所望形状の圧粉体を得る粉末成形金型装置に係り、特に複数の圧粉体を同時に成形する粉末成形金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軸受等の円筒状の部品を高い寸法精度で生産する場合、押し型内に充填した主に金属粉からなる原料粉末を上下のパンチで圧縮して、図8に示すような中心に孔を有する円筒状の圧粉体P1を成形し、この圧粉体P1を焼結して目的形状の部品を得る粉末冶金法が有効に利用されている。圧粉体P1は、通常、図9に示すように、ダイス70のダイス孔70aに下側からコアロッド71と円筒状の下パンチ72を嵌入させてダイス孔70a内に円筒状のキャビティ70bを形成し、このキャビティ70bに上部開口から粉末Pを供給し、上パンチ73をキャビティ70bに嵌入させて上下のパンチ73,72により粉末Pを軸方向に圧縮するといった手法で成形されている。
【0003】
キャビティ70bへの粉末Pの充填は、粉末Pを貯留するホッパからホースを介して粉末Pの供給を受けているフィーダボックス74を、キャビティ70bの上部開口に対しダイス7の上面に滑動させながら進退させることにより、粉末Pをキャビティ70bに落とし込み、かつダイス70の上面ですり切りを行ってキャビティ70bに粉末Pを充填させている(特許文献1等参照)。
【0004】
粉末冶金法は部品の大量生産といった面でもきわめて有効であるが、さらに効果的に大量生産を可能とするものとして、図10に示すような複数の圧粉体を同時に成形する金型装置が開発されている。この装置では、ダイプレート100に設けられた複数のダイス101のダイス孔102にコアロッド103がそれぞれ挿入されており、コアロッド103に沿って摺動する下パンチ104をダイス孔102に下方から嵌入してキャビティ105を形成し、このキャビティ105にフィーダボックス106によって粉末Pを充填する。そして、図11に示すように各キャビティ105に上パンチ107を嵌入するとともに下パンチ104を上昇させて両パンチ104,107によりキャビティ105内の粉末Pを圧縮し、この後、図12に示すように上パンチ107を退避させるとともに下パンチ104を上昇させて、円筒状の圧粉体P1をダイス孔から上方に抜き出す。これにより、複数の圧粉体P1を同時に得ることができる。
【0005】
ダイス101はダイプレート100内に横方向に並列して設けられ、複数のフィーダボックス106はダイプレート100上をダイス孔102の上方の開口に対して一括して進退するように設けられており、フィーダボックス106内には、上方に設置された図示せぬ1つのホッパから分岐する図示せぬホースを介して、ホッパ内で貯留されている粉末Pが常に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−020802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10〜図12に示した金型装置では、同一の寸法の圧粉体を得るためにキャビティ105は同じ容量、すなわち同じ深さとされ、したがって各フィーダボックス106から各キャビティ105に落下して充填される粉末Pも同一の量が充填される設計である。しかしながら、キャビティ105に充填される粉末Pの量は、各フィーダボックス106から落下する粉末Pの流動特性やキャビティ105(ダイス孔102)の位置等の諸条件が異なることに起因して異なっているのが実情である。粉末充填量はキャビティ105ごとには一定であってばらつきの傾向は同じであるものの、装置全体としては、各キャビティ105の粉末充填量が異なるため圧縮成形された圧粉体P1は密度が異なって重量差が生じ、その結果、品質が不安定であるといった問題を招くことになる。キャビティ105ごとの粉末充填量の違いは、フィーダボックス106、あるいはホッパとフィーダボックス106をつなぐホースなどの改良で是正を試みてきたが、有効な対策とはなっていないのが現状である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の圧粉体を同時に成形する金型装置において、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得ることができる粉末成形金型装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉末成形金型装置は、上下方向に貫通する複数のダイス孔を有するダイプレートと、前記ダイス孔に下方から嵌入され、該ダイス孔に上方に開口するキャビティを形成する下パンチと、前記ダイプレート上を前記ダイス孔の開口に対して進退自在に設けられ、進出時に、自身の内部に供給されている粉末を前記キャビティに落下させて充填するフィーダボックスと、前記ダイス孔に上方から嵌入され、前記下パンチとともに前記キャビティに充填された粉末を圧粉体に圧縮成形する上パンチとを備えた粉末成形金型装置において、前記フィーダボックスに、内部に貯留される粉末の貯留高さを可変とする貯留高さ可変手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、フィーダボックス内に貯留される粉末の貯留高さを貯留高さ可変手段により調節してからキャビティに粉末を充填すると、各キャビティへの粉末の充填量はフィーダボックス内での貯留高さに応じたものとなる。ここで、キャビティごとにフィーダボックスからの粉末充填量を予め把握しておき、その充填量に応じてフィーダボックス内の粉末の貯留高さを調節することにより、各キャビティにおいて均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。
【0011】
これを実現するためには、前記貯留高さ可変手段によって調節される前記フィーダボックス内の粉末の貯留高さは、前記各キャビティに充填される粉末の密度に応じたものであって、前記圧縮成形後の前記圧粉体の成形密度を全てのキャビティにおいて均一にし得る位置であることとすれば可能である。
【0012】
本発明の前記貯留高さ可変手段は、前記フィーダボックス内に進退自在に挿入されて粉末をフィーダボックス内に供給し、その先端開口の高さ位置に応じて粉末の貯留高さが変化する管状部材である形態を含む。
【0013】
また、本発明の前記貯留高さ可変手段は、前記ダイプレートと前記フィーダボックスとの間に介装され、フィーダボックスが上下動可能に支持される筒状部材であって、該筒状部材とフィーダボックスとは、筒状部材に対するフィーダボックスの高さ位置を任意の位置に定める係合手段で係合される形態を含む。この場合の係合手段としては、前記フィーダボックスが前記筒状部材に螺合され、フィーダボックスと筒状部材とを相対回転させることでフィーダボックスが上下動し得るねじが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の圧粉体を同時に成形する金型装置において、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得ることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉末成形金型装置の側面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図2】一実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図3】一実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、キャビティ内の粉末を上下のパンチで圧縮成形している状態を示している。
【図4】一実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、圧縮成形された圧粉体をキャビティ上方に抜き出した状態を示している。
【図5】本発明の他の実施形態に係る粉末成形金型装置の側面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図6】他の実施形態に係る粉末成形金型装置の正面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図7】他の実施形態に係る粉末成形金型装置のフィーダボックスの構成を示す側面図である。
【図8】粉末を圧縮成形して得られる単純円筒状の圧粉体を示す斜視図である。
【図9】フィーダボックスによる一般的な粉末供給状況を示す断面図である。
【図10】従来の複数キャビティ式の粉末成形金型装置の正面図であって、フィーダボックスからキャビティに粉末が充填された状態を示している。
【図11】図10に示した粉末成形金型装置において、キャビティ内の粉末を上下のパンチで圧縮成形している状態の正面図である。
【図12】図10に示した粉末成形金型装置において、圧縮成形された圧粉体をキャビティ上方に抜き出した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]粉末成形金型装置の構成
図1および図2は一実施形態の粉末成形金型装置のそれぞれ側面図、正面図を示している。これら図で符号10は、水平に固定されたダイプレートである。ダイプレート10内には、複数(この場合、3つ)の円筒状のダイス11が等間隔に並列して設けられている。ダイプレート10の下方には間隔を空けてコアプレート20が平行に配設されており、ダイプレート10は、ポスト21を介してコアプレート20に支持されている。
【0017】
ダイプレート10とコアプレート20との間には、ベースプレート30が平行に配設されている。ベースプレート30にはポスト21が貫通しており、ベースプレート30はポスト21に沿って上下動可能となっている。コアプレート20には、ベースプレート30を貫通し、各ダイス11の上下方向に貫通するダイス孔11aに同心状に挿入される円柱状のコアロッド22が支持されている。コアロッド22の上端面は、ダイス11の上面と面一である。ベースプレート30上には、コアロッド22に摺動可能に外装されて上端部がダイス孔11a内に摺動可能に嵌入される円筒状の下パンチ31が支持されている。ダイス孔11a内には、ダイス孔11aの内壁面とコアロッド22の外周面と下パンチ31の上端面とにより、円筒状のキャビティ12が形成される。
【0018】
ダイプレート10上には、各ダイス11に対応して複数のフィーダボックス40がセットされている。フィーダボックス40は、底面が開口したボックス本体41の一端上部に斜め上方に延びる短い管状の供給口42が設けられたもので、各フィーダボックス40の供給口42には、上方に設置された1つのホッパから分岐したホース(いずれも不図示)がパイプ(管状部材、貯留高さ可変手段)43を介して接続される。各フィーダボックス40内には、そのホッパ内で貯留されている粉末冶金原料の粉末Pがホースからパイプ43を経て常に供給されるようになっている。
【0019】
各フィーダボックス40は、ダイプレート10上を図1の矢印F・Rに示すように各ダイス孔11aの上方開口、すなわちキャビティ12の開口に対して一括して進退自在に滑動するよう設けられており、図示せぬ往復動機構により駆動される。フィーダボックス40が図1で矢印F方向に動いた進出時(図1および図2の状態)において、フィーダボックス40内の粉末Pがキャビティ12に落下する。そして矢印R方向に後退すると粉末Pはフィーダボックス40ですり切りされ、充満した状態に充填される。上記供給口42は、フィーダボックス40の後退方向、かつ上方に延びている。
【0020】
ダイプレート10上には、各ダイス11に対応して複数の円筒状の上パンチ51が配設されている。これら上パンチ51は上パンチプレート50の下面に、下方に向けて支持されている。上パンチプレート50は昇降機構52によって昇降させられ、下降することにより、ダイス孔11aに上方から嵌入される。上パンチ51はダイス11およびコアロッド22に摺動しながらダイス孔11aに嵌入させられ、下パンチ31とともにキャビティ12に充填された粉末Pを圧縮する。
【0021】
ここで、上記パイプ43について詳述する。パイプ43は、フィーダボックス40の供給口42の内側に摺動可能に挿入されている。供給口42にはロックねじ44が螺合されており、このロックねじ44をねじ込んでその先端をパイプ43に強く当接させることにより、パイプ43の供給口42に対する挿入深さを任意に固定することができるようになっている。
【0022】
パイプ43は、フィーダボックス40内に対して進退自在に挿入され、その先端開口43aの高さ位置は、斜めに延びている供給口42に沿って挿入されていることからフィーダボックス40内への進出量によって変化する。すなわち、パイプ43が深く挿入されると先端開口43aは低い位置に位置付けられ、パイプ43が浅く挿入された状態では、先端開口43aは高い位置に位置付けられる。先端開口43aの高さ位置は、フィーダボックス40で貯留される粉末Pの貯留高さ(図1:Hで示す)と相関し、先端開口43aの高さ位置が低いと貯留高さHは低く、先端開口43aの高さ位置が高いと貯留高さHは高いといったように調節される。なお、ここでの貯留高さHは、ダイプレート10の表面からパイプ43の先端開口43aの上端までの粉末Pの高さ(嵩)を言う。
【0023】
[2]圧粉体の成形
上記構成の金型装置では、はじめに、図2に示すように上パンチプレート50を上昇させて各上パンチ51を退避位置まで上昇させ、この状態から、各フィーダボックス40を各キャビティ12上に向けて往復動させ、各フィーダボックス40内の粉末Pを各キャビティ12に落とし込むとともにすり切りによって充填する。
【0024】
ところで、本実施形態のように複数のキャビティ12に同時に充填される粉末Pの量は、各フィーダボックス40から落下する粉末Pの流動特性やキャビティ12の位置等の諸条件が異なることに起因して異なることは前述の通りである。そこで本実施形態では、まず、事前に各キャビティ12への粉末Pの充填量の特性を調査し、3つのキャビティ12を、図2に示すように、粉末Pが最も充填されにくいキャビティ12A(左側のキャビティ12)、粉末Pが最も充填されやすいキャビティ12C(図中、中央のキャビティ12)、これらの中間のキャビティ12B(右側のキャビティ12)として把握したとする。粉末Pの充填のされやすさはキャビティ12での粉末Pの充填密度と相関し、充填されやすいほど充填密度は高いことになる。
【0025】
そして、粉末Pを充填する前に、図2に示すように各フィーダボックス40に対するパイプ43の挿入深さを、粉末Pが最も充填されにくい方のキャビティ12A、すなわち充填密度が低い方のキャビティ12Aに対応するものから順に深くするように調節する。すなわち、図2に示すようにフィーダボックス40をキャビティ12A,12B,12Cに対応した40A,40B,40Cとすると、パイプ43の挿入深さを、フィーダボックス40A,40B,40Cの順で段階的に深くしていく。パイプ43の挿入深さは、ロックねじ44をねじ込むことで固定される。
【0026】
図2でHa,Hb,Hcはそれぞれフィーダボックス40A,40B,40C内の粉末Pの貯留高さを示しており、上記のようにパイプ43の挿入深さを調節することにより、Ha>Hb>Hcとなる。すなわちフィーダボックス40内での粉末Pの貯留高さは、粉末Pが最も充填されにくいキャビティ12Aに対応するフィーダボックス40Aで最も高く、次いでフィーダボックス40B,40Cの順に低くなっている。
【0027】
以上のように、キャビティ12への粉末Pの充填量に応じて各フィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さを調節した後、各フィーダボックス40を作動させて各キャビティ12に粉末Pを充填する。次いで、図3に示すように各キャビティ12(12A,12B,12C)に上パンチ51を嵌入するとともに下パンチ31をベースプレート30ごと上昇させ、上下のパンチ51,31によりキャビティ12内の粉末Pを圧縮する。
【0028】
粉末Pが圧縮されたら、図4に示すように上パンチ51をキャビティ12から抜き出して上方に退避させるとともに下パンチ31を上昇させて、円筒状の圧粉体P1をダイス孔11aから上方に抜き出す。これにより、複数(3つ)の圧粉体P1を同時に得る。
【0029】
[3]作用効果
本実施形態の金型装置によれば、各フィーダボックス40内に貯留される粉末Pの貯留高さを異ならせた状態で各キャビティ12に粉末Pを充填し、次いで上下のパンチ51,31で各キャビティ12内の粉末Pを圧縮することにより圧粉体P1が成形される。ここで、キャビティ12ごとにフィーダボックス40からの粉末充填量(充填のされやすさ)を予め把握しておき、その充填量に応じて各フィーダボックス40内に貯留される粉末Pの貯留高さを調節することにより、各キャビティ12への粉末Pの実際の充填量はほぼ同量となる。よって、各キャビティ12において均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。その結果、成形密度のばらつきが抑えられ安定した品質の圧粉体を得ることができる。なお、フィーダボックス40内での粉末Pの貯留高さHは、各キャビティへの粉末Pの充填されやすさ、すなわち充填量に応じて適宜に調節される。
【0030】
[4]他の実施形態
次に、図5〜図7を参照して、本発明の他の実施形態を説明する。これら図で、上記一実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0031】
この場合のフィーダボックス40のボックス本体41は円筒状で、図5および図6に示すように、フィーダボックス40とダイプレート10との間には円筒状のリング(筒状部材、貯留高さ可変手段)60が介装されている。リング60はダイプレート10上を滑動し、フィーダボックス40はリング60を介してダイプレート10上をキャビティ12に対して往復動する。
【0032】
図7に示すようにボックス本体41の外周面の下端部には、雄ねじ(係合手段)45が形成されている。一方、リング60の内周面には、雄ねじ45に螺合する雌ねじ(係合手段)61が形成されており、雌ねじ61を雄ねじ45に螺合させることで、リング60はフィーダボックス40のボックス本体41に相対回転可能にねじ結合されている。
【0033】
リング60はダイプレート10上に載置され、その状態でリング60を回転させると、リング60の回転方向に応じてフィーダボックス40が上下動し、フィーダボックス40の高さ位置が調節されるようになっている。フィーダボックス40は供給口42に接続されてホッパに接続されるホースによって回転が規制されるため、リング60のみを回転させることができ、したがってリング60を回転させるとフィーダボックス40がリング60に対して上下動するのである。
【0034】
この実施形態によれば、リング60を回転させてフィーダボックス40を上下動させることにより、フィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さHを調節することができる。なお、ここでの貯留高さHは、ダイプレート10の表面から供給口42のフィーダボックス40内での開口の上端までの粉末Pの高さ(嵩)を言う。
【0035】
図6は、上記一実施形態の図2と同様に、キャビティ12A,12B,12Cの順で粉末Pの充填量が多いとした場合を示している。本実施形態では、これらキャビティ12A,12B,12Cに対応するフィーダボックス40A,40B,40Cの高さ位置が、この順で高い方から低い方へと設定されている。これによりフィーダボックス40A,40B,40C内の粉末Pの貯留高さHa,Hb,Hcは、Ha>Hb>Hcとなっている。
【0036】
図6に示すように各フィーダボックス40A,40B,40Cの高さ位置を調節して粉末の貯留高さを調節したら、この後は、上記一実施形態と同様にフィーダボックス40A,40B,40Cをダイプレート10上で往復動させて各キャビティ12A,12B,12Cに粉末Pを充填し、上下のパンチ51,31でキャビティ12A,12B,12C内の粉末Pを圧縮して圧粉体P1を得る。
【0037】
本実施形態でも、上記一実施形態と同様に、キャビティ12に対する粉末Pの充填のされやすさ(充填量)に応じてフィーダボックス40内の粉末Pの貯留高さを調節することができるため、各キャビティ12において均一な成形密度の圧粉体を成形することができる。
【0038】
なお、上記他の実施形態のように、リング60上にフィーダボックス40を上下動可能に支持する構成は、ねじの螺合の他に、例えばリング60に対しフィーダボックス40を軸方向に延びるガイドに沿って上下動可能に支持し、任意の高さでフィーダボックス40をリング60にねじ止めするといった構成などでも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…ダイプレート
11a…ダイス孔
12…キャビティ
31…下パンチ
40…フィーダボックス
43…パイプ(管状部材、貯留高さ可変手段)
45…雄ねじ(係合手段)
51…上パンチ
60…リング(筒状部材、貯留高さ可変手段)
61…雌ねじ(係合手段)
P…粉末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に貫通する複数のダイス孔を有するダイプレートと、
前記ダイス孔に下方から嵌入され、該ダイス孔に上方に開口するキャビティを形成する下パンチと、
前記ダイプレート上を前記ダイス孔の開口に対して進退自在に設けられ、進出時に、自身の内部に供給されている粉末を前記キャビティに落下させて充填するフィーダボックスと、
前記ダイス孔に上方から嵌入され、前記下パンチとともに前記キャビティに充填された粉末を圧粉体に圧縮成形する上パンチとを備えた粉末成形金型装置において、
前記フィーダボックスに、内部に貯留される粉末の貯留高さを可変とする貯留高さ可変手段が設けられていることを特徴とする粉末成形金型装置。
【請求項2】
前記貯留高さ可変手段によって調節される前記フィーダボックス内の粉末の貯留高さは、前記各キャビティに充填される粉末の密度に応じたものであって、前記圧縮成形後の前記圧粉体の成形密度を全てのキャビティにおいて均一にし得る位置であることを特徴とする請求項1に記載の粉末成形金型装置。
【請求項3】
前記貯留高さ可変手段は、前記フィーダボックス内に進退自在に挿入されて粉末をフィーダボックス内に供給し、その先端開口の高さ位置に応じて粉末の貯留高さが変化する管状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末成形金型装置。
【請求項4】
前記貯留高さ可変手段は、前記ダイプレートと前記フィーダボックスとの間に介装され、フィーダボックスが上下動可能に支持される筒状部材であって、該筒状部材とフィーダボックスとは、筒状部材に対するフィーダボックスの高さ位置を任意の位置に定める係合手段で係合されることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末成形金型装置。
【請求項5】
前記係合手段は、前記フィーダボックスが前記筒状部材に螺合され、フィーダボックスと筒状部材とを相対回転させることでフィーダボックスが上下動し得るねじであることを特徴とする請求項4に記載の粉末成形金型装置。
【請求項1】
上下方向に貫通する複数のダイス孔を有するダイプレートと、
前記ダイス孔に下方から嵌入され、該ダイス孔に上方に開口するキャビティを形成する下パンチと、
前記ダイプレート上を前記ダイス孔の開口に対して進退自在に設けられ、進出時に、自身の内部に供給されている粉末を前記キャビティに落下させて充填するフィーダボックスと、
前記ダイス孔に上方から嵌入され、前記下パンチとともに前記キャビティに充填された粉末を圧粉体に圧縮成形する上パンチとを備えた粉末成形金型装置において、
前記フィーダボックスに、内部に貯留される粉末の貯留高さを可変とする貯留高さ可変手段が設けられていることを特徴とする粉末成形金型装置。
【請求項2】
前記貯留高さ可変手段によって調節される前記フィーダボックス内の粉末の貯留高さは、前記各キャビティに充填される粉末の密度に応じたものであって、前記圧縮成形後の前記圧粉体の成形密度を全てのキャビティにおいて均一にし得る位置であることを特徴とする請求項1に記載の粉末成形金型装置。
【請求項3】
前記貯留高さ可変手段は、前記フィーダボックス内に進退自在に挿入されて粉末をフィーダボックス内に供給し、その先端開口の高さ位置に応じて粉末の貯留高さが変化する管状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末成形金型装置。
【請求項4】
前記貯留高さ可変手段は、前記ダイプレートと前記フィーダボックスとの間に介装され、フィーダボックスが上下動可能に支持される筒状部材であって、該筒状部材とフィーダボックスとは、筒状部材に対するフィーダボックスの高さ位置を任意の位置に定める係合手段で係合されることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末成形金型装置。
【請求項5】
前記係合手段は、前記フィーダボックスが前記筒状部材に螺合され、フィーダボックスと筒状部材とを相対回転させることでフィーダボックスが上下動し得るねじであることを特徴とする請求項4に記載の粉末成形金型装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−71324(P2012−71324A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217348(P2010−217348)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
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