説明

粉末薬剤投与器

【課題】使用者が誤って粉末薬剤投与器を逆さまに掴んで使用しようとした場合に、摺動部材の摺動回転操作をロックすることのできる粉末薬剤投与器を提供する。
【解決手段】摺動部材2の回転摺動を規制する規制手段は、ケーシング本体5の底壁内底面に形成された収容穴46と、待機位置にある摺動部材の前記収容穴と対応する位置に形成された規制孔48と、保持部材の前記規制孔に対応した位置に形成された支持溝49と、収容穴に埋没状態に収容された金属ボール47と、を備え、前記摺動部材の待機位置でケーシングを逆さまにした際に、金属ボールの一部が収容穴から規制孔と支持溝内に跨って係入することによって、摺動部材の使用位置方向への回転摺動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末薬剤投与器の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の粉末薬剤投与器としては、従来から種々提供されており、その一つとして以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この従来の粉末薬剤投与器は、ケーシングの内部に下側のスライダー部材と上側の薬剤貯留部材が重合状態に収容配置され、スライダー部材の待機位置では、薬剤貯留部材内の粉末薬剤がスライダー部材の上面に形成された複数の小径凹溝からなる薬剤受け部に供給されるようになっている。一方、使用時には、前記スライダー部材を一方向へ回動させることによって、該スライダー部材の開口部の孔縁で前記薬剤受け部の粉末薬剤を擦り切りながら前記薬剤受け部を吸い込み口の位置(使用位置)に移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−131603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の粉末薬剤投与器は、使用者が誤って粉末薬剤投薬器を上下反転させた場合、つまり逆さまに掴んで使用しようとした場合は、この逆さまにした時点で薬剤受け部内の粉末薬剤が薬剤貯留室内に戻されてしまうため、前記スライダー部材を使用位置に回転させて吸入を行っても粉末薬剤を全く吸入することができない事態になる。
【0006】
本発明は、前記従来の粉末薬剤投与器の技術的課題に鑑みて案出されたもので、使用者が誤って粉末薬剤投与器を逆さまにした場合には、摺動部材の摺動操作をロックすることのできる粉末薬剤投与器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケーシングの内部に摺動自在に収容保持されて、薬剤受け部を有する摺動部材と、該摺動部材に上方向から重合状態に配置されて、薬剤貯留室を有する保持部材と、を備え、前記摺動部材の待機位置で前記薬剤貯留室と薬剤受け部とを連通させる開口部を設けると共に、前記摺動部材の摺動による使用位置で前記薬剤受け部に連通する吸い込み口を設け、前記摺動部材の待機位置でケーシングを上下反転させた際に、前記摺動部材に係止して該摺動部材の回転を規制する規制手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明にあっては、前記規制手段が、前記ケーシングの底壁の内底面に形成された収容穴と、待機位置にある前記摺動部材の前記収容穴と対応する位置に形成された規制孔と、前記収容穴に埋没状態に収容される規制部材と、を備え、前記摺動部材の待機位置でケーシングを上下反転させた際に、前記規制部材の一部が前記規制孔内に係入して前記摺動部材の回転を規制するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誤って粉末薬剤投与器を上下反転して使用しようとした場合は、摺動部材の摺動操作がロックされるので、誤った使用を未然に阻止できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、規制手段は簡単な構造で部品点数も少ないから製造作業が容易で、コストの高騰を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る粉末薬剤投与器の要部断面図であって、Aはケーシングを正規の位置とした場合を示し、Bはケーシングを上下反転した場合を示した作用説明図である。
【図2】本発明に係る粉末薬剤投与器の実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態の粉末薬剤投与器の俯瞰図である。
【図4】本実施形態に供される摺動部材の平面図である。
【図5】本実施形態に供される保持部材を示す横断面図である。
【図6】本実施形態に供される保持部材の底面図である。
【図7】本実施形態に供される保持部材の側面図である。
【図8】本発明の粉末薬剤投与器の要部拡大断面図である。
【図9】粉末薬剤投与器の作用状態を示し、Aは摺動部材が待機位置にある状態を、カバーを外して示す平面図、Bは摺動部材が使用位置にある状態を、カバーを外して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る粉末薬剤投与器の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0013】
すなわち、粉末薬剤投与器は、図2及び図3に示すように、平面ほぼ円形状のケーシング1と、該ケーシング1の内部下側に収納配置された摺動部材2と、該摺動部材2の上部に重合状態に収納配置された保持部材3と、ケーシング1の前端部に一体的に設けられた平面ほぼ長方形状のマウスピース4と、から主として構成されている。
【0014】
前記ケーシング1は、横断面ほぼコ字形状に形成された合成樹脂材によって一体に形成された下側のケーシング本体5と、該ケーシング本体5の上端開口を閉塞する同じく横断面ほぼコ字形状の合成樹脂材によって一体に形成された上側のカバー6と、を備えている。
【0015】
前記ケーシング本体5は、ほぼ円形状の底壁5aの外周縁から周壁5bが立設されて、これらに囲繞された内部に収容室7が形成されている。前記底壁5aは、内底面のほぼ中央位置に小径円筒状の軸部9が一体に設けられていると共に、該軸部9から径方向へ所定間隔をもった位置に付勢手段である一対のばね部10、10がほぼ円周方向に沿って設けられている。前記軸部9は、内部9aが中空状に形成されている。
【0016】
前記一対のばね部10は、それぞれ所定肉厚の細長い板状に形成されて、ケーシング本体5を形成する際に、前記底壁5aを切り起こして形成されたもので、該底壁5aと一体の基部10aから先端部10bが上方へ傾斜状に立ち上り形成されて、該先端部10b側が基部10aを支点として上下方向に弾性変形してばね力を発生するようになっている。また、前記先端部10bの上面に前記摺動部材2の下面を押圧する球面状の突部10dがそれぞれ一体に形成されている。
【0017】
前記底壁5aの両ばね部10,10間の円周方向の隙間位置には、円弧状の一対の支持壁11が立設されている。この各支持壁11は、その高さが前記ばね部10の先端部10b(突部10d)よりも低く形成されて、前記摺動部材2が各上端縁11aに当接支持された際に、各ばね部10,10のばね力が付与できる高さに設定されている。
【0018】
前記底壁5aの内底面外周部には、図1A及び図2に示すように前記支持壁11とほぼ同じ高さの円筒部8が一体に上方に向かって突設されている。この円筒部8は、中空内部に円柱状の収容穴46が形成されていると共に、該収容穴46内に規制部材である金属ボール47が上下移動可能でかつ埋没状態に収容されている。つまり、この金属ボール47は、直径Dが前記収容穴46の内径dよりも僅かに小さく形成されて上下方向に自由に移動可能になっていると共に、収容穴46の底面46aから開口端46bまでの深さQよりも小さく形成されて、収容穴46の収容時には開口端46aより突出せずに内部に埋没した状態になっている。
【0019】
前記底壁5aの周壁5b近傍の外周部には、後述するように、前記保持部材3が上下方向に位置決めされる位置決め用凸部12が立設されている。この位置決め用凸部12は、上端部12aが内側に向かってほぼL字形状に折曲形成されている。
【0020】
前記周壁5bは、前記摺動部材2と保持部材3とを重合した高さよりも僅かに低い高さに設定され、上端縁の3箇所に係止爪13が周方向の等間隔位置に設けられていると共に、一側部の一部に切欠部14が形成されている。この切欠部14は、周方向の所定長さに形成されて、ここから外部に突出した後述するレバー部18を回動案内するものであって、該切欠部14の周方向の一端縁14aと他端縁14bが前記前記レバー部18の最大回動位置を規制するストッパとして機能するようになっている。
【0021】
前記摺動部材2は、図1及び図4に示すように、前記ケーシング本体5の各ばね部10と各支持壁11の上部に載置される円板部15と、該円板部15のほぼ中央に貫通形成されて前記軸部9が挿通される回転用孔16と、円板部15の側部に周方向に沿って一体に形成された円弧状のガイド片17と、該ガイド片17の外周縁の周方向のほぼ中央位置から径方向外側に突設された矩形状のレバー部18と、から主として構成されている。
【0022】
前記円板部15は、平坦な上面15aに薬剤受け部19が形成されている。この薬剤受け部19は、ほぼ円環状の領域(一点鎖線)内にディンプル状の6つの小径な凹溝19aを集合させてなり、これらの各凹溝19aの総合体積で粉末薬剤Mの一回分の吸い込み量となるように設定されている。
【0023】
また、この円板部15の外周側には、小径な規制孔48が上下貫通形成されている。この規制孔48は、図1、図2及び図4に示すように、前記摺動部材2の後述する待機位置において前記ケーシング本体5の収容穴46の形成位置と対応する位置に形成され、この内径d1が収容穴46の内径dとほぼ同じ大きさに設定されている。
【0024】
前記ガイド片17は、断面ほぼ矩形状に形成されて下面が前記ケーシング本体5の底壁5aの内底面に摺動案内されるようになっていると共に、上部17aの内周面側が前記保持部材3の外周面に摺動案内されるようになっている。
【0025】
前記レバー部18は、図3に示すように、前記摺動部材2がケーシング本体5に組み付けられた際に、前記切欠部14とカバー6の対向する後述の突片6cの下端縁との間に形成されるスリット状のレバー用窓20から外部に突出するようになっている。また、このレバー部18は、前述したように、基端部が前記切欠部14の両端縁14a、14bに当接することによって前記摺動部材2の最大回動位置が規制されるようになっている。
【0026】
前記保持部材3は、図2、図5〜図7に示すように、下面21aが前記摺動部材2の円板部15の上面15bに当接配置される円形状の基板21と、該基板21のほぼ中央位置に貫通形成されて、前記軸部9が挿通される軸挿通孔22と、前記基板21の前記軸挿通孔22を避けた周方向上面に一体に設けられた薬剤貯留室23と、該薬剤貯留室23の周方向側部に隔壁24を介して隣接して設けられた乾燥剤収容室25と、前記薬剤貯留室23の乾燥剤収容室25と反対側の位置に一体に設けられた薬剤通路部26と、から主として構成されている。
【0027】
前記基板21は、図5及び図8にも示すように、前記薬剤貯留室23の下部位置に該薬剤貯留室23と前記摺動部材2の薬剤受け部19とを適宜連通する開口部28が形成されている。この開口部28は、各薬剤貯留室23の内周壁29の内面付近に周方向に沿ったほぼ長孔繭状に形成されている。また、前記開口部28の前記薬剤通路部26側には、前記摺動部材2が使用位置に回転摺動した際に、前記薬剤受け部19と連通する後述の連通路38の下端開口38aが形成されている。
【0028】
また、この基板21の外周側所定位置には、支持溝49が形成されている。この支持溝49は、図1及び図6に示すように、前記摺動部材2の後述する待機位置において前記規制孔48の形成位置と対応する位置に穿設されていると共に、この内径d2が前記規制孔48の内径d1とほぼ同じ大きさに設定されている。また、この支持溝49の深さQ1は、図1Bに示すように、前記金属ボール47の約1/3が嵌入する程度に設定されている。
【0029】
前記薬剤貯留室23と乾燥剤収容室25とは、図1及び図5に示すように、前記基板21と前記軸挿通孔22の回りに周方向に沿った内周壁29と外周壁31及び上壁32とによって全体が三日月状に画成され、その周方向のほぼ中央位置に設けられた前記隔壁24によって隔成されている。
【0030】
前記薬剤貯留室23は、その容積が予め決められた粉末薬剤量が貯留される大きさに形成されていると共に、図8に示すように、全体の内壁面33が前記開口部28及び薬剤受け部19方向に向かって下り傾斜状のテーパ状に形成されている。
【0031】
また、薬剤貯留室23の上壁32には、図2及び図9に示すように、粉末薬剤Mを充填する円形状の第1充填口34が形成されている。この第1充填口34は、粉末薬剤Mの充填後にキャップ35によって閉塞されるようになっている。また、この薬剤貯留室23は、後述する摺動部材2の待機位置では、図9Aに示すように、前記開口部28の右端側、つまり、開口部28の使用位置と反対側に位置するように設定されている。
【0032】
前記乾燥剤収容室25は、乾燥剤として適度な量の例えばシリカゲル粒剤が第2充填孔36から充填されていると共に、キャップ37によって閉塞されており、また前記隔壁24に設けた図外の通気手段によって薬剤貯留室23に連通するようになっている。
【0033】
前記薬剤通路部26は、前記基板21からほぼ垂直に立ち上がった筒壁30内に形成された連通路38と、該連通路38の上端側部から径方向に延出された円筒壁39内に形成されて、前記連通路38と前記マウスピース4内の吸い込み口4aとを連通する吸い込み通路40と、から構成されている。
【0034】
前記筒壁30は、内部が直径方向に設けられた隔成板30aによって前後2つの通路部に分離されて、筒壁30側の通路部の半月状の上端開口が閉止壁41によって閉止されて反対側の通路部の上端開口が半月状の空気孔38bとして形成されている。この空気孔38bは、前記薬剤受け部19から連通路38の下端開口38aを介して吸い込まれた粉末薬剤Mが連通路38内で空気を攪拌させて吸い込み性を高めるものである。
【0035】
前記カバー6は、図2及び図3に示すように、前記ケーシング本体5と同じく平面ほぼ円形状に形成された上壁6aと、該上壁6aの外周縁から下方に延出した周壁6bとを備え、該周壁6aの下部円周方向の所定位置に前記ケーシング本体5の各係止爪13が係止する矩形状の図外の3つの係止孔が形成されている。また、前記周壁6aの一側部には、ケーシング本体5に被嵌した際に、前記切欠部14と共同してレバー用窓20を形成する前記突片6cが一体に形成されている。
【0036】
さらに、前記上壁6aの前記マウスピース4側の下面には、下端縁6eが円弧状に切欠されたプレート状の支持片6dが一体に垂設されている。この支持片6dは、前記保持部材3が前記位置決め用凸部12と位置決め用溝27を介して円周方向の適正な位置に位置決めされた後に、下端縁6eが前記円筒壁39の上端部に嵌合して保持部材3の自由な回転を規制するものである。
【0037】
また、前記保持部材3の前記開口部28の孔縁付近には、図5、図6及び図8に示すように、前記孔縁に沿った円環状の嵌着溝44が形成されていると共に、前記嵌着溝44には、円環状のシール部材45が連続して配置固定されている。嵌着溝44は、断面ほぼ矩形状に形成されて比較的深溝状に形成されている。
【0038】
一方、前記シール部材45は、比較的軟質な合成樹脂材である熱可塑性エラストマーによって断面ほぼ矩形状に形成されている基部45aが前記嵌着溝44に嵌合固定されていると共に、嵌着溝44から突出して前記円板部15上面に当接する下端部45bが断面円弧状に形成されて、先端縁45cが円板部15の上面15bに常時線接触状態で弾接している。
【0039】
以下、本実施形態の作用について説明する。まず、前記摺動部材2が図9Aに示す待機位置にある場合、つまり、レバー部18が図示のように時計方向の最大前方位置に引かれている場合は、前記薬剤受け部19が開口部28を介して薬剤貯留室23に臨んだ位置にある。したがって、粉末薬剤Mは、開口部28を介して薬剤受け部19の各凹溝19a及び開口部28が臨む各凹溝19aの周囲の円板部15の上面15bに付着している。
【0040】
その後、粉末薬剤投与器を使用する場合には、図9Bに示すように、前記レバー部18を、反時計方向の最大後方位置まで回転操作すると、摺動部材2全体が軸部9を中心として反時計方向へ回動すると共に前記円板部15の上面15bが前記シール部材45の先端縁45cに摺接しながら回動する。これにより、前記各凹溝19a内に入っている粉末薬剤Mがシール部材45の先端縁45cできれいに擦り切られて、各凹溝19aには適正な量の粉末薬剤Mが残留する。
【0041】
その後、使用者がマウスピース4から各凹溝19a内の粉末薬剤Mを吸い込むと、連通路38内で空気によって十分に攪拌されることから、粉末薬剤Mが均一に分散されて、違和感なく安定した吸い込み作用が得られる。
【0042】
そして、前述のように、摺動部材2が待機位置にあるときに、使用者が誤ってケーシング1を逆さまに掴んで使用しようした場合には、図1Bに示すように、前記金属ボール47が、収容穴46から下方へ自重により下降移動して前記支持溝49の内底面49aに当接支持される。この時点で、金属ボール47は、開口端46b付近と前記規制孔48及び支持溝49のそれぞれに跨って入り込んだ状態になる。
【0043】
このため、使用者が前記レバー部18を操作して、摺動部材2を使用位置まで回転させようとすると、前記金属ボール47の外面が前記開口端46bや規制孔48及び支持溝49の各孔縁に当接してストッパとして機能することから、前記摺動部材2はロックされ、つまり自由な回転が阻止される。これによって、使用者の誤った使用を未然に阻止することができる。
【0044】
また、前記規制手段は、孔や金属ボール47を利用した簡単な構造で部品点数も少ないことから、製造作業が容易であると共に、コストの高騰を抑制できる。
【0045】
また、前記シール部材45によって前記待機中にある薬剤貯留室23と開口部28周辺の気密性が十分に高くなるため、耐湿性が向上する。
【0046】
とりわけ、前記シール部材45を比較的柔軟な合成樹脂材によって形成したため、該シール部材45の円板部15の上面15bに対する密着性が向上することから、耐湿性がさらに向上する。
【0047】
また、乾燥剤貯留室25には、乾燥剤であるシリカゲル粒剤が充填されていることから、前記シール部材45による耐湿効果と相俟って粉末薬剤Mに対する長期に渡って高い耐湿性能を維持することができる。
【0048】
さらに、前記摺動部材2は、前記各ばね部10のばね力によって押し上げられて円板部15の上面15bがシール部材45の先端縁45c全体に適度な圧接力で密着する。このため、前記シール部材45のシール性能が向上すると共に、前記開口部28回りの気密性が一層高くなって耐湿性が向上する。
【0049】
また、前記薬剤貯留室23に予め貯留された粉末薬剤は、内壁面33のテーパ面に沿って薬剤受け部19方向へ自動的に落下するため、該薬剤受け部19への流動性が良好になる。この結果、粉末薬剤Mを各凹溝19a内に常時速やかに供給できると共に、前記粉末薬剤Mが薬剤貯留室23に残留することなく最後まで使い切ることが可能になる。
【0050】
さらに、本実施形態では、前記一対のばね部10の間に設けられた一対の支持壁11によって、前記摺動部材2が常に安定に支持されると共に、ばね部10のばね力を摺動部材2に安定かつ効果的に伝達することが可能になる。
【0051】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、規制部材としては、前記金属ボール47の他に、所定の自重をもつ金属製の円柱部材などによって構成することも可能である。このような円柱部材を用いた場合には、前記保持部材3の支持溝49を必ずしも形成する必要ではない。
【0052】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
前記規制部材を、金属ボールによって構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載粉末薬剤投与器。
【0053】
この発明によれば、規制部材として金属ボールを用いたため、ケーシングを反転して逆さまにした場合は、前記収容穴から規制孔への移動性が良好になって規制動作が速やかに行えると共に、一般的なボールを用いられるので製造コストが低減できる。
〔請求項b〕
前記規制部材を、金属の円柱部材によって構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載粉末薬剤投与器。
〔請求項c〕
前記保持部材の開口部の孔縁にシール部材を設け、
前記摺動部材を待機位置から使用位置へ摺動させた際に、前記シール部材によって、前記薬剤貯留室と薬剤受け部との間の粉末薬剤を擦り切ることを特徴とする請求項1〜bのいずれか1項に記載の粉末薬剤投与器。
【0054】
この発明によれば、摺動部材のいずれの摺動位置においてもシール部材によって薬剤貯留室がシールされることから、常時良好なシール作用が得られると共に、前記シール部材によって薬剤受け部の粉末薬剤に対する擦り切り性が良好なる。
〔請求項d〕
前記シール部材は、前記開口部の孔縁形状に沿って連続的に設けられていると共に、軟質な合成樹脂材によって形成されていることを特徴とする請求項cに記載の粉末薬剤投与器。
〔請求項e〕
前記保持部材と摺動部材とを、互い当接する方向へ付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項cまたはdに記載の粉末薬剤投与器。
【符号の説明】
【0055】
1…ケーシング
2…摺動部材
3…保持部材
4…マウスピース
5…ケーシング本体
6…カバー部材
9…軸部
10…ばね部(付勢手段)
11…支持壁
15…円板部
15b…上面
19…薬剤受け部
19a…凹溝
21…基板
23…薬剤貯留室
24…隔壁
25…乾燥剤貯留室
28…開口部
44…嵌合溝
45…シール部材
46…収容穴
47…金属ボール(規制部材)
48…規制孔
49…支持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に摺動自在に収容保持されて、薬剤受け部を有する摺動部材と、
該摺動部材に上方向から重合状態に配置されて、薬剤貯留室を有する保持部材と、を備え、
前記摺動部材の待機位置で前記薬剤貯留室と薬剤受け部とを連通させる開口部を設けると共に、前記摺動部材の摺動による使用位置で前記薬剤受け部に連通する吸い込み口を設け、
前記摺動部材の待機位置でケーシングを上下反転させた際に、前記摺動部材に係止して該摺動部材の回転を規制する規制手段を設けたことを特徴とする粉末薬剤投与器。
【請求項2】
前記規制手段は、前記ケーシングの底壁の内底面に形成された収容穴と、待機位置にある前記摺動部材の前記収容穴と対応する位置に形成された規制孔と、前記収容穴に埋没状態に収容される規制部材と、を備え、
前記摺動部材の待機位置でケーシングを上下反転させた際に、前記規制部材の一部が前記規制孔内に係入して前記摺動部材の回転を規制するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の粉末薬剤投与器。
【請求項3】
前記規制手段は、前記保持部材の下面に、待機位置にある前記摺動部材の規制孔と対応する位置に形成された支持溝を有し、
前記摺動部材の待機位置でケーシングを上下反転させた際に、前記規制部材が前記規制孔と支持溝に跨って係入して前記摺動部材の回転を規制するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の粉末薬剤投与器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192113(P2012−192113A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60056(P2011−60056)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【出願人】(592088426)有限会社ドット (17)
【Fターム(参考)】