説明

粉末調味料

【課題】 有用な生理効果を有するフラボノイド類を含有しつつ食品の色調変化が抑制され、しかも粉末調味料中のナトリウム含量が低減され、血圧降下作用等の有用な生理機能を有する粉末調味料を提供する。
【解決手段】 次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)ナトリウム 15〜36質量%
(B)カリウム、マグネシウム及びカルシウムより選ばれるナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属 3〜36質量%
(C)フラボノイド類 0.01〜20質量%
を含有し、(A)成分として食塩由来のナトリウムを含む粉末調味料であって、(C)フラボノイド類が、B環にOH基を1つ有し、Y/(X+Y)の値が0.05未満である粉末調味料。
X;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボノイド類を含有する粉末調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウムは、人体中に最も多く存在するミネラルであり、健全な生命活動に欠くことのできない多くの生理作用、酵素作用、代謝調節作用などと極めて密接な関係を持っており、人体に必須の栄養素である。また、ナトリウムは、食品においては食塩として使用され、塩味と密接に関係して食品の調味に重要な要素であると共に、食品の保存、加工においても重要な役割を果たし、食品産業に欠くことのできない基本的な調味料の一つである。
【0003】
しかし、近年では食塩に含まれるナトリウムの過剰摂取が、高血圧、心臓疾患、腎臓疾患等の生活習慣病の危険因子になると考えられている。一方、ナトリウムは生命維持活動には必須なものでもあるため、我が国においては、厚生労働省がナトリウムの摂取量を減量する目安として、一日の目標摂取量の上限を10gとし、摂取量をコントロールすることを推奨している。ナトリウム摂取量を減らすには、飲食品中の食塩の配合量を低減させればよいが、一般的に食品中の食塩の添加量を通常より10%以上低下させるとおいしさが損なわれてしまう。
【0004】
このような状況から、従来は食塩中のナトリウムの一部を、塩味を有するカリウム塩やマグネシウム塩あるいはカルシウム塩により置き換え、ナトリウム量を相対的に減量する方法が提案されている(特許文献1)。また、食塩の代替としてより良質な風味付与を目的として、前記ナトリウム塩代替の塩類に加えて核酸系旨味料を添加する方法が提案されている(特許文献2、3)。その他、食塩に香りづけする技術(特許文献4)、塩化ナトリウムと塩化カリウムにバインダーを混合し顆粒化する技術(特許文献5)、カリウム塩と繊維素系物質等を組み合わせてカリウム塩の食感を改善する方法(特許文献6)、乳酸発酵乾燥物、更に濃縮野菜汁を加える方法(特許文献7〜10)、ビタミンC粉末を添加する方法(特許文献11)等が提案されている。
【0005】
一方、食品中に含まれる種々の成分の生理機能について、関心が高まってきている。生理機能を有する素材の一つとして、フラボノイド類が挙げられる。フラボノイド類は、植物性食品中に含まれ、生理機能として、例えば血圧降下作用、脂質代謝改善作用、アレルギー抑制作用等を有することが知られている(特許文献12〜15)。
【0006】
このようにフラボノイド類は、有用な生理機能を有することから、食品への利用についても開示されている(特許文献16〜21)。この他、フラボノイド類による高度甘味料の甘味持続性を低減する作用や、野菜飲料や生薬類の青臭み、渋味、酸味低減作用及び不快味の低減作用等が開示されている(特許文献22〜28)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59-198953号公報
【特許文献2】特開昭58-94368号公報
【特許文献3】特開昭58-209956号公報
【特許文献4】特開昭61-141859号公報
【特許文献5】特開昭59-66858号公報
【特許文献6】特開昭61-282052号公報
【特許文献7】特開平3-187362号公報
【特許文献8】特開平3-139260号公報
【特許文献9】特開平3-139259号公報
【特許文献10】特開平3-67561号公報
【特許文献11】特開平10-295319号公報
【特許文献12】特開平8-283154号公報
【特許文献13】特開2001-240539号公報
【特許文献14】特開2002-47196号公報
【特許文献15】特開2005-225847号公報
【特許文献16】国際公開98/18348号パンフレット
【特許文献17】特開2000-78955号公報
【特許文献18】特開2000-78956号公報
【特許文献19】特開2004-290129号公報
【特許文献20】特開2002-291441号公報
【特許文献21】特開2005-168458号公報
【特許文献22】国際公開93/10677号パンフレット
【特許文献23】米国特許4031265号明細書
【特許文献24】米国特許4154862号明細書
【特許文献25】特開平6-335362号公報
【特許文献26】特開平8-256725号公報
【特許文献27】特開平11-318379号公報
【特許文献28】特開2004-49186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが、フラボノイド類の粉末調味料への応用を検討したところ、使用条件によっては、粉末調味料を使用した食品の色調が変化してしまう場合のあることが、散見された。そこで、フラボノイド類の種類と食品の色調変化の関係について検討したところ、特に、ルチンを含む調味料を卵料理に用いると、卵本来の黄色が褐色に変化し、外観が著しく損なわれてしまうことを突きとめた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、有用な生理効果を有するフラボノイド類を含有しつつ食品の色調変化が抑制され、しかも粉末調味料中のナトリウム含量が低減された粉末調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、有用な生理機能を有するフラボノイド類を粉末調味料に応用すべく検討してきた。その結果、ナトリウム、ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属及び、特定のフラボノイド類を特定の割合で含有することにより、食品の色調変化を抑制することができ、しかも粉末調味料中のナトリウム含量が低減され、血圧降下作用等の有用な生理機能を有する粉末調味料が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)ナトリウム 15〜36質量%
(B)カリウム、マグネシウム及びカルシウムより選ばれるナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属 3〜36質量%
(C)フラボノイド類 0.01〜20質量%
を含有し、(A)成分として食塩由来のナトリウムを含む粉末調味料であって、(C)フラボノイド類が、B環にOH基を1つ有し、Y/(X+Y)の値が0.05未満である粉末調味料を提供するものである。
X;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有用な生理効果を有するフラボノイド類を含有しつつ食品の色調変化が抑制され、しかも粉末調味料中のナトリウム含量が低減され、血圧降下作用等の有用な生理機能を有する粉末調味料を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における粉末調味料とは、細かいもの(微粉末)から粗いもの(顆粒状)までの広く粉末状の性状を有するものを指し、粒子サイズや形状により限定されるものではない。また、本発明の粉末調味料は、場合により、適宜、乾燥され残留水分量が調整され、水分量は0〜10質量%(以下、単に「%」で示す)に調製することが好ましく、さらに好ましくは0.01〜7%、特に好ましくは0.01〜4%に調製されるのが簡便性、保存性の点から好ましい。
【0014】
本発明の粉末調味料においては、(A)ナトリウム、(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、(C)フラボノイド類を含有することが必要である。
【0015】
本発明において、(A)ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、粉末であれば食品中には塩の形態で配合されているものをいう(以下に記載する成分(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属についても同様)。人体にとっては重要な電解質のひとつであり、その大部分が細胞外液に分布している。濃度は135〜145mol/L程度に保たれており、細胞外液の陽イオンの大半を占める。そのため、ナトリウムの過剰摂取は濃度維持のための水分貯留により、高血圧の大きな原因となる。
【0016】
本発明において、(A)ナトリウムとしては、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、これらの2種以上の混合物が挙げられる。特に、塩化ナトリウムを主成分とする食塩を使用するのが、コストの点で好ましい。
【0017】
食塩として、様々なものが市販されており、例えば、日本たばこ産業(株)が扱っている食塩、並塩、あるいは海外からの輸入天日塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、食塩は乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、塩化マグネシウムを0.01〜2部、塩化カルシウムを0.01〜2部、塩化カリウムを0.01〜2部含有するものが、風味、工業的生産性の点で好ましい。本発明において、ナトリウムの含有量は原子吸光光度計(日立偏光ゼーマン原子吸光光度計Z−6100)により測定することができる。(A)ナトリウムは、粉末調味料中に15〜36%であることが必要であるが、風味と減塩の両立の点から、更に20〜32%、特に23〜31.5%であることが好ましい。
【0018】
本発明において、(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等を用いることが風味の点から好ましい。カリウム塩としては塩化カリウム、クエン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、酒石酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、メタリン酸カリウムなどが挙げられるが、異味が少ない点から塩化カリウムが好ましい。マグネシウム塩としては塩化マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられるが、塩味が自然である点から塩化マグネシウムが好ましい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、焼成カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リボヌクレタイドカルシウム、リボヌクレオチドカルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられるが、風味・味の質の点から乳酸カルシウムが好ましい。(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、粉末調味料中に3〜36%であることが必要であるが、風味と減塩の両立の点から更に5〜25%、特に6〜21%であることが好ましい。
【0019】
また、(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属として、カリウムのみを用いた場合には、粉末調味料中に4〜36%、更に7〜32%、特に10〜21%であることが風味と減塩の両立の点から好ましい。マグネシウムのみを用いた場合には、粉末調味料中に3〜18%、更に4〜16%、特に5〜11%であることが風味と減塩の両立の点から好ましい。カルシウムのみを用いた場合には、粉末調味料中に3〜26%、更に5〜22%、特に7〜15%であることが減塩の点から好ましい。
【0020】
本発明において、(B)ナトリウム以外のアルカリ金属及びアルカリ土類金属を併用する場合には、カリウム/マグネシウムの質量比は、0.5〜6.2が風味の持続性の点から好ましく、更に0.6〜3.5、特に好ましくは0.65〜1.3が好ましい。
【0021】
本発明において、(A)ナトリウム/(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の質量比は0.4〜9であるのが好ましく、更に好ましくは0.5〜7、特に好ましくは0.7〜6.5が風味、減塩の点から好ましい。
【0022】
また、(A)ナトリウム/(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属として、カリウムのみを用いた場合の質量比は0.4〜4.3であるのが好ましく、更に好ましくは0.5〜3.5、特に好ましくは0.6〜3.1が風味、減塩の点から好ましい。マグネシウムのみを用いた場合には0.8〜8.8であるのが好ましく、更に好ましくは1〜7、特に好ましくは1.4〜6が風味、減塩の点から好ましい。カルシウムのみを用いた場合は、0.5〜6.2であるのが好ましく、更に好ましくは0.7〜5、特に好ましくは1.5〜4.5が風味、減塩の点から好ましい。
【0023】
本発明におけるフラボノイド類とは、フラボノイド、またはその配糖体(以下、「フラボノイド配糖体」または単に「配糖体」と表記する)、更にこれに糖が結合したもの(配糖体も糖が結合したものであるが、これと区別するため配糖体に更に糖が結合したものを、以下「糖付加物」と表記する)、酵素処理したものを含む。フラボノイドとは、狭義には、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノノール、イソフラボンをいうが、広義にはC−C−Cを基本骨格とする一群の化合物をいい、フラバン、フラバノール、イソフラバノン、アントシアニジン、ロイコアントシアニジン、プロアントシアニジン等も含まれる(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。
【0024】
また、フラボノイド分子中の両端のベンゼン環をそれぞれA環、B環と称し、中間のピラン環(またはピロン環)をC環と称するが、それぞれの分子中のA環、B環に結合したOH基(水酸基)の数が異なったり、OCH3基(メトキシ基)が結合したもの等もフラボノイドに含まれる。例えば、タンゲレチン、オラネチン、シネンセチン、イソシネンセチン、リモシトリン、リモシトール、ノビレチン、アカセチン、ディスメチン、アピゲニン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、イソラムネチン、クロソエリオール、イソサクラネチン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオディクティオール、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステイン、ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペツニジン、マルビジン、トリシン、モリン、ペクトリナリゲニン等が挙げられる。
【0025】
フラボノイド配糖体とは、前記フラボノイドに糖がグリコシド結合したものを指し、前記の糖が結合していないものをアグリコンと称す。配糖体には、フラボノイド分子中の水酸基にグリコシド結合したO−グリコシドと、A環、B環に結合したC−グリコシドがある(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。
フラボノイド配糖体は、フラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体、アントシアニジン配糖体、ロイコアントシアニジン配糖体、プロアントシアニジン配糖体等が挙げられるが、フラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体の1種又は2種以上の混合物であるのが好ましい。また、前記のそれぞれの分子中のA環、B環に結合したOH基(水酸基)の数が異なったもの、OCH3基(メトキシ基)が結合したもの等も含む。これらのうち、特に血圧降下作用を有するものが好ましい。
【0026】
フラボノイドに結合している糖類としては、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース、アピオース等の単糖、ルチノース、ネオヘスペリドース、ソフォロース、サンブビオース、ラミナリビオース等の二糖、ゲンチオトリオース、グルコシルルチノース、グルコシルネオヘスペリドース等の三糖、これらの糖に更に糖類が結合したもの、又はこれらの混合物が挙げられ、風味、水への溶解性の点から、糖に更に糖類が結合したものであることが好ましい。
【0027】
フラボノイド配糖体としては、上記アグリコンと糖類の結合したもので、具体的にはヘスペリジン、ネオヘスペリジン、エリオシトリン、ネオエリオシトリン、ナリンジン、ラリルチン、プルニン、ジディミン、ポンシリン、アストラガリン、イソケルシトリン、ケルシトリン、ルチン、ハイペリン、ケルシメリトリン、ミリシトリン、ダイジン、グリシチン、ゲニスチン、カリステフィン、クリサンテミン、シアニン、ケラシアニン、イデイン、メコシアニン、ペオニン、デルフィン、ナスニン、ペツニン、マルビン、エニン、ナリルチン、ロイフォリン、アピイン、リナロシド、ブラッシジン、ナルシッシン、これらの糖付加物、これらの誘導体、これらの酵素処理物、又はこれらの混合物が挙げられるが、風味、水への溶解性の点から、糖付加物を使用するのが好ましい。
【0028】
本発明において、(C)フラボノイド類は、1分子中のA環又はB環にOH基を1つ又は2つ以上有し、該OH基に隣接した位置(オルト位)にOH基を有しないものであることが、色調変化抑制の点で必要である。また、OH基は、A環及びB環のそれぞれに1つ以上有するものであることが、同様の点から好ましい。
【0029】
本発明において、(C)フラボノイド類は、フラボノイド配糖体であるのが、溶解性の点で好ましい。フラボノイド配糖体は、下記式(1)で表される配糖体の質量%が80%以上であるのが好ましく、更に85〜100%、特に90〜99.9%、殊更91〜99%であるのが、風味、溶解性の点で好ましい。
配糖体/{配糖体+アグリコン}×100(%) 式(1)
【0030】
本発明において、(C)フラボノイド類の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、測定することができる(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。例えば、ナリンゲニンやナリンギンについては、特開2002-199896号公報記載の方法で測定できる。また、アピゲニンについては、下記方法により、測定できる。
【0031】
<HPLC分析例>
アピゲニン(7,4’,5-トリヒドロキシフラボン)
溶離液;アセトニトリル/25mMリン酸2水素カリウム水溶液(pH2.4)=30:70
(v/v)
カラム;Mightysil RP-18 GP 150-4.6 5μm
検出器;UV340nm
流速;1ml/分
【0032】
本発明においては、(C)フラボノイド類が、ナリンギン、ナリンゲニン、アピイン、アピゲニン、コスメチン、アストラガリン、ケンフェロール、モリン、ナリルチン、ロイフォリン、アカセチン、イソラムネチン、トリシン、ノビレチン、ペクトリナリゲニン、タンゲレチン、ナルシッシン、ブラッシジン、ディオスミン、リナロシド、シネンセチン、これらの2種以上の混合物であるのが好ましく、更にナリンギン、ナリンゲニン、アピイン、アピゲニン、コスメチン、アストラガリン、ケンフェロール、モリン、ナリルチン、ロイフォリン、これらから選択される1種又は2種以上の混合物であるのが、色調変化抑制、工業的生産性の点で好ましい。
【0033】
更に、本発明において、フラボノイド類は、下記のようにX及びYを定義した場合に、Y/(X+Y)の値が0.27〜0.35の範囲外であることが好ましい。
【0034】
ここで、XとYは、それぞれ下記の数のことである。
X;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
【0035】
本発明において、Y/(X+Y)の値は、より好ましくは0.25〜0.4の範囲外、更に0.2〜0.45の範囲外、特に0.15〜0.5の範囲外、殊更0.1〜0.7の範囲外、殊更0.05〜1の範囲外であることが好ましく、0.05未満であるのが、コスト、溶解性の点で好ましい。
【0036】
本発明において、粉末調味料中の(C)フラボノイド類の含有量は0.01〜20%であるが、好ましくは0.01〜10%、より好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.06〜4.5%、更に0.08〜4%、特に0.1〜2%、殊更0.12〜1%であるのが、色調変化抑制、風味バランス、生理効果の点で好ましい。
【0037】
本発明において、(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属/(C)フラボノイド類の質量比が1.1〜185であるのが好ましく、更に好ましくは2〜140、特に好ましくは2.5〜125であるのが、コストの面、色調変化抑制、風味バランスの点から好ましい。
【0038】
本発明の粉末調味料には、上記(A)〜(C)の他に、必要に応じ、固結防止剤、旨味調味料、無機塩、酸味料、アミノ酸類、核酸、糖類、賦形剤、香辛料、旨味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、スパイス等の食品に使用可能な各種添加物を使用することができる。
【0039】
本発明の粉体調味料において、保存条件(温度、湿度等)によっては吸湿による固結が発生することがあり、その場合には、一般に固結防止剤として用いられるクエン酸鉄アンモニウム、無水リン酸ソーダ、微粒二酸化ケイ素、無水硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を粉末調味料中に含有させることができ、これらの中でもクエン酸鉄アンモニウム、無水リン酸ソーダ、微粒二酸化ケイ素が好ましい。含有量は、粉末調味料中に0.01〜2%であることが好ましく、更に0.05〜1.5%、特に0.1〜1%であることが好ましい。なお、これらの物質を固結防止剤として含有させる場合、ナトリウムを含有する物質を使用する場合は、当該物質由来のナトリウムを本発明の粉体調味料における成分(A)として、ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する物質を使用する場合は、当該物質由来のナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を本発明の粉体調味料における成分(B)として換算するものとする。以下、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する物質を使用する場合も同様とする。
【0040】
本発明の粉体調味料に旨味調味料を添加する場合には、含有量は粉末調味料中に0.1〜10%であるのが、まろやかでコクのある風味を醸し出すことができるので好ましく、より好ましくは0.5〜7%、更に1〜5%、特に1.5〜4%、殊更2〜3.5%含有することが好ましい。用いられる旨味調味料としては、タンパク質・ペプチド系調味料、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、エキス系調味料、有機酸塩系調味料が挙げられるが、このいずれも使用することができる。
【0041】
エキス系調味料としてはだし類が挙げられ、鰹節、宗田節、鮪節、鯵節、鯖節、鰯節、あご節などの魚節の粉砕物又はこれらの削り節、あるいは、鰯、鯖、鯵、トビウオなどを干して乾燥した煮干し類などを水、熱水、アルコール、醤油などで抽出して得られるものや、昆布などの海藻類、椎茸などのきのこ類を抽出して得られるもの、これらを混合してから抽出して得られたもの、これらの抽出物を混合したもの等を用いることができる。
【0042】
核酸系調味料としては、酵母エキス、グアニル酸、イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等が挙げられる。核酸系調味料の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.01〜0.1%が特に好ましい。
【0043】
酸味料としては、乳酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を使用することができる。中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましく、特に乳酸が好ましい。乳酸の含有量は0〜2%が好ましく、0.3〜1%が特に好ましい。また、リンゴ酸、クエン酸の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.02〜0.1%が特に好ましい。必要に応じて、食酢、果汁等を使用することもでき、ゆず、だいだい、すだち、かぼす、レモンなどの柑橘果汁を用いるのが風味の点で好ましい。
【0044】
本発明においては、(C)フラボノイド類以外に、血圧降下作用を有する物質を添加してもよい。血圧降下作用を有する物質としては、γ−アミノ酪酸、食酢、ニコチアナミン、核酸誘導体、醤油粕、スフィンゴ脂質、(C)以外のフラボノイドやポリフェノール類、アンジオテンシン変換酵素阻害作用物質等が挙げられる。これら物質の粉末調味料中の含有量は0.05〜5%、更に0.2〜3%、特に0.5〜2%であるのが、生理機能、風味、安定性の点で好ましい。
【0045】
本発明の粉末調味料は、(A)ナトリウムとして、例えば食塩、(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属として、例えばカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩の1種又は2種以上、及び(C)フラボノイド類、更に必要に応じて適宜その他の物質を混合することにより製造することができる。工業的製造方法としては、通常の食塩の製造方法又は天然調味料の製造方法を用いることができる。例えば、上記(A)〜(C)、必要に応じてその他の物質を水に溶解し、常圧熱風乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、マイクロ波乾燥、超音波乾燥、PDSボールドライヤー乾燥、真空攪拌乾燥等の乾燥方法により粉末調味料を製造する方法や、粉末状の上記(A)〜(C)、必要に応じてその他の物質を、例えば、二重円錐型、V型、水平円筒型、二重円錐型(長軸)、リボン型、垂直スクリュー型(遊星運動型)、回分式ミューラー、連続式ミューラー、複軸ローター、短軸ローター、タービンのいずれかの固体混合機を用いて混合して製造する方法、又は、回転容器型混合機、固定容器型混合等を用いて混合して製造する方法であっても良い。更に、造粒による製造も可能で、乾式圧縮解砕造粒、攪拌造粒、流動層造粒、押出し造粒、転動造粒、破砕造粒により製造する方法であっても良い。
【0046】
本発明の粉末調味料は、容器に充填して容器詰粉末調味料とすることが使い勝手、安定性の点で好ましい。充填する容器としては、容量が0.1g〜25kgであるのが好ましく、より好ましくは1g〜5kg、更に10g〜2kg、特に50g〜1kg、殊更100〜500gであるのが、安定性、使い勝手の点で好ましい。
本発明に使用される容器は、一般の食塩と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、紙容器、合成樹脂製の袋、ガラス瓶などの通常の形態を用いることができる。
【0047】
本発明の粉末調味料は、家庭用調味料あるいは料理店の調味料として食塩の一部あるいは全量を置き換えて利用することができる。例えば、普通食卓塩、だし風味やスパイスやハーブを付与した粉末調味料としての利用ができる。また、各種具材を配合したフリカケやお茶漬けの素、ごま塩、のり玉のような食品形態での利用も可能であり、具材として、エビ、ノリ、卵、シソ、サンショ、鰹節、昆布、桜の花、梅干等の食品に常用されている材料を配合することが可能である。また、調理済食品においても利用が可能であり、フライドポテトやポテトチップス、煎餅、おかき、あられのような食品、菓子等の調味料としても利用することができる。
【0048】
本発明の粉末調味料は、ナトリウム量が低減しており、、さらにフラボノイド類の生理活性が期待できることから、日常生活の食事場面において継続摂取することにより、高血圧症が顕著に改善される効果がある。
【実施例】
【0049】
粉末調味料A〜E
表1に示す配合で、食塩(並塩)(日本たばこ(株))、塩化カリウム(富田製薬(株))に各種フラボノイド類を添加し、乳鉢で磨り潰しながら混合し、粉末調味料A〜Eを調製した。これを用いて、下記調理方法にて茶碗蒸しを作製し、その色調を、目視で評価した。尚、粉末調味料A(フラボノイド類未添加)で作製した茶碗蒸しを対照品とした。その結果を表1に示す。
【0050】
<茶碗蒸し>
鶏卵を箸で溶いたもの150gと出し汁400gとを混合し、50gずつ小鉢に分注した。ここに粉末調味料0.4gを加え、混合した。これを蒸気加熱して、茶碗蒸しを作製した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、対照品(粉末調味料A)は、うす黄色の色調を呈した。一方、粉末調味料B(フラボノイド類のOH基に隣接した位置(オルト位)にOH基を有するフラボノイド類を含有)を用いて作製した茶碗蒸しは、黄緑色に変化して違和感が生じた。粉末調味料C、D(フラボノイド類のOH基のメタ位にグリコシル基を有するフラボノイド類を含有)及び、粉末調味料E(フラボノイド類のOH基のメタ位にOH基を有するフラボノイド類を含有)を使用して作製した茶碗蒸しは、フラボノイド類が添加されているにもかかわらず、対照品と同等の色調を呈し、好ましいものであった。
【0053】
このように、粉末調味料において、塩化カリウムを使用することで、ナトリウム含量を低減でき、しかも特定のフラボノイド類を用いることで、卵料理の色調変化を抑制できることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)ナトリウム 15〜36質量%
(B)カリウム、マグネシウム及びカルシウムより選ばれるナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属 3〜36質量%
(C)フラボノイド類 0.01〜20質量%
を含有し、(A)成分として食塩由来のナトリウムを含む粉末調味料であって、(C)フラボノイド類が、B環にOH基を1つ有し、Y/(X+Y)の値が0.05未満である粉末調味料。
X;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y;フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
【請求項2】
(C)フラボノイド類が、フラボン又はイソフラボンである請求項1記載の粉末調味料。
【請求項3】
(C)フラボノイド類が、フラボノイドの配糖体である請求項1又は2に記載の粉末調味料。
【請求項4】
(C)フラボノイド類の含有量が、0.01〜5質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末調味料。
【請求項5】
(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属が、カリウム及び/又はマグネシウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末調味料。
【請求項6】
粉末調味料中の(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有量がカリウムのみの場合は4〜36質量%、マグネシウムのみの場合は3〜18質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末調味料。
【請求項7】
(B)ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属/(C)フラボノイド類の質量比が1.1〜185である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉末調味料。

【公開番号】特開2011−36269(P2011−36269A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261998(P2010−261998)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2006−130110(P2006−130110)の分割
【原出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】