説明

粉砕用媒体粒子および粉砕用媒体ならびにセラミック粉末の粉砕方法

【課題】 例えば近年の電子部品素子に要求される特性の向上に対応できる程度に、セラミック粉末を効率よく、粒径の分布範囲を抑制して粉砕することができる粉砕用媒体粒子および粉砕用媒体ならびにセラミック粉末の粉砕方法を提供する。
【解決手段】
セラミック粉末を粉砕するための球状の粉砕用媒体粒子1であって、表面に円形状の平面部1aが、1つの大円A上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、大円Aで区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する大円と平行な2つの小円B上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ6箇所ずつとに配置されている粉砕用媒体粒子1である。粉砕用媒体粒子1の平面部1a同士の間に効率よくセラミック粉末を挟んで粉砕することができるため、粉砕の効率が高く、粒度の分布範囲を抑えて粉砕することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック粉末と接触させてセラミック粉末を粉砕するために使用される粉砕用媒体粒子およびその粉砕用媒体粒子を含む粉砕用媒体ならびにセラミック粉末の粉砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック積層コンデンサやセラミック圧電素子等の電子部品素子は、チタン酸バリウム等のセラミック焼結体からなる絶縁基体に容量電極等の所定の導体パターンが被着されて形成されている。
【0003】
このようなセラミック焼結体は、原料のセラミック粉末を粉砕装置により粉砕して所定の粒径に調整した後、このセラミック粉末を有機溶剤,バインダとともにシート状に成形して作製した複数のセラミックグリーンシートを積層し、これを焼成することにより作製される。また、導体パターンは、ニッケルや銅等の金属ペーストをセラミックグリーンシートに所定パターンに塗布し、セラミックグリーンシートの積層体と同時焼成することにより形成される。
【0004】
セラミック粉末の粉砕は、一般に、酸化ジルコニウム質焼結体や酸化アルミニウム質焼結体等からなる粉砕用媒体粒子を、振動や回転等の動きをさせながらセラミック粉末と接触(衝突)させて行なわれる。具体的には、粉砕用媒体粒子を大量に集めてなる粉砕用媒体を振動ミルや回転ミル等のミル中でセラミック粉末と混合し、粉砕用媒体粒子の間に挟まれたセラミック粉末に、ミルの振動や回転に伴う摩擦等により剪断応力等の応力を生じさせて粉砕することにより行なわれる。
【特許文献1】特開2001−205123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の粉砕用媒体は、セラミック粉末を、粒径の分布範囲を抑制しながら効率よく粉砕することが難しいという問題点があった。これは、粉砕用媒体粒子が球形であるため、例えば粉砕用媒体粒子をミルの中に充填したときに、粉砕用媒体粒子同士の接しあう範囲が狭く、粒子同士の間の隙間が比較的広いために、粉砕用媒体粒子とセラミック粉末との接触の効率を高めることが難しいためである。
【0006】
このような問題点に対しては、例えば、粉砕用媒体粒子を多面体とする手段が考えられる(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、近年、例えば電子部品素子である積層セラミックコンデンサにおける絶縁性のより一層の向上のように、特性の向上が求められている。このような特性の向上のためには、セラミック粉末をさらに効率よく粉砕し、粉砕粒度の分布をよりシャープにする(分布範囲を狭くする)ことが必要になって来ている。そして、単に粉砕用媒体粒子を多面体とした場合には、粉砕用媒体をミル等の中に充填したときに、隣り合う粉砕用媒体粒子の平面部分同士が必ずしも対向しあうとは限らず、上記のような条件に対応できる程度にセラミック粉末を粉砕する効率を高くすることが難しい場合があるという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、例えば近年の電子部品素子に要求される特性の向上に対応できる程度に、セラミック粉末を効率よく、粒径の分布範囲を抑制して粉砕することができる粉砕用媒体粒子および粉砕用媒体ならびにセラミック粉末の粉砕方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粉砕用媒体粒子は、セラミック粉末を粉砕するための球状の粉砕用媒体粒子であって、表面に円形状の平面部が、1つの大円上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、前記大円で区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する前記大円と平行な2つの小円上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ6箇所ずつとに配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の粉砕用媒体粒子は、上記構成において、前記小円上の前記平面部が、前記大円上の隣り合う前記平面部の間と前記半球部の頂点とを結ぶ円弧上に配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の粉砕用媒体は、セラミック粉末を粉砕するための球状の粉砕用媒体粒子からなる粉砕用媒体であって、上記いずれかの構成の本発明の粉砕用媒体粒子を10体積%以上含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の粉砕用媒体は、上記構成において、前記球状の粉砕用媒体粒子として、円形状の平面部が、1つの大円上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、前記大円で区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する前記大円と平行な2つの小円上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ3箇所ずつとに配置された粉砕用媒体粒子を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のセラミック粉末の粉砕方法は、粉砕装置内でセラミック粉末を上記いずれかの構成の本発明の粉砕用媒体と接触させて粉砕することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粉砕用媒体粒子によれば、表面に円形状の平面部が、1つの大円上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、前記大円で区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する前記大円と平行な2つの小円上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ6箇所ずつとに配置されていることから、このような粉砕用媒体粒子を粉砕装置内で粉砕用媒体として用いるときに、1つの粉砕用媒体粒子において、その横方向に6箇所と、上下それぞれ斜め(小円)方向に6箇所ずつとに平面部がほぼ等間隔に並んで位置する。ここで、一般に、球状の物体を、密度を高くして配置しようとするときには、1つの球状の物体に対して横方向および上下斜め方向に他の球状の物体が位置する。そのため、横方向および上下斜め方向でそれぞれ接し合う粉砕用媒体粒子同士の間で、平面部同士をより確実に、効率よく接し合わせることができる。したがって、粉砕用媒体粒子の平面部同士の間で、効果的にセラミック粉末を挟んで、摩擦に伴う剪断応力等の応力を加えてセラミック粉末を粉砕することができる。
【0014】
また、本発明の粉砕用媒体粒子によれば、上記構成において、前記小円上の前記平面部が、前記大円上の隣り合う前記平面部の間と前記半球部の頂点とを結ぶ円弧上に配置されている場合には、このような球状の粉砕用媒体粒子を、互いにいわゆる体心立方または面心立方の格子を構成するように配置したときに、ちょうど互いの平面部同士が対向し合うような位置になる。そのため、粉砕用媒体粒子の粉砕装置内における充填の密度をより高める上で有効であり、平面部同士の間でセラミック粉末をより一層効率よく粉砕することができる。したがって、この場合には、セラミック粉末をより一層効率よく、粒径の分布範囲を抑制して粉砕することが可能な粉砕用媒体粒子を提供することができる。
【0015】
本発明の粉砕用媒体によれば、セラミック粉末を粉砕するための球状の粉砕用媒体粒子からなる粉砕用媒体であって、上記いずれかの構成の本発明の粉砕用媒体粒子を10体積%以上含むことから、セラミック粉末の粉砕を効率よく、粒径の分布範囲を抑制して粉砕することが可能な粉砕用媒体を提供することができる。
【0016】
また、本発明の粉砕用媒体は、上記構成において、前記球状の粉砕用媒体粒子として、円形状の平面部が、1つの大円上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、前記大円で区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する前記大円と平行な2つの小円上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ3箇所ずつとに配置された粉砕用媒体粒子を含む場合には、セラミック粉末の粉砕を、効率を高めて、より長期にわたって行なわせることが可能な粉砕用媒体とすることもできる。
【0017】
すなわち、このような12個の平面部が配置された粉砕用媒体粒子は、上記構成の平面部が配置された粉砕用媒体粒子と同様に、球形の粉砕用媒体粒子に比べてセラミック粉末の粉砕を効率よく行なうことができる。また、小円上にほぼ等間隔に並んで配置された平面部同士の間に、粉砕用媒体粒子同士の接触(摩擦)に伴って新たに平面部が形成される可能性がある。そして、この場合には、このような12個の平面部が配置された(配置されていた)粉砕用媒体粒子を、新たに上記構成の本発明の粉砕用媒体粒子(小円上に平面部が6箇所ずつ配置されたもの)として機能させることができる。そのため、粉砕用媒体を、より長期にわたり安定して、効率よくセラミック粉末の粉砕を行なうことが可能なものとすることができる。
【0018】
本発明のセラミック粉末の粉砕方法によれば、粉砕装置内でセラミック粉末を上記いずれかの構成の本発明の粉砕用媒体と接触させて粉砕することから、セラミック粉末を、効率よく、粒度分布を抑制して粉砕することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の粉砕用媒体粒子および粉砕用媒体について、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は本発明の粉砕用媒体粒子の実施の形態の一例を示す斜視図である。図1において、1は粉砕用媒体粒子、1aは粉砕用媒体粒子1の表面に配置された平面部である。
【0021】
粉砕用媒体粒子1は、例えば、酸化ジルコニウム質焼結体や酸化アルミニウム質焼結体等の機械的強度の高いセラミック材料からなり、球状である。
【0022】
また、この粉砕用媒体粒子1を、例えば粉砕しようとするセラミック粉末に対して例えば体積比で約2:1〜10:1程度になるように大量に集めたものが、粉砕用媒体(図示せず)としてセラミック粉末の粉砕に用いられる。
【0023】
粉砕用媒体粒子1によるセラミック粉末の粉砕は、振動ミルや回転ミル等の粉砕装置(図示せず)内で粉砕用媒体とセラミック粉末とを混合して、ミルを振動させたり回転させたりして粉砕用媒体を動かしながらセラミック粉末と接触させて行なわれる。例えば、振動ミルの場合であれば、円筒状のミル本体内に粉砕用媒体を充填しておいて、その中にセラミック粉末を投入し、ミル本体を高速で振動させて粉砕用媒体を振動させる。この振動に伴い、粉砕用媒体粒子1の間に挟まれたセラミック粉末に摩擦に伴う剪断応力が生じ、この剪断応力によりセラミック粉末の粉砕が行なわれる。なお、セラミック粉末は、あらかじめ有機溶剤やバインダ等と混練してスラリーとしておいてもよい。
【0024】
粉砕するセラミック粉末としては、作製しようとする電子部品素子に応じた、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウム,チタン酸ジルコン酸鉛,酸化アルミニウム等の種々のものが挙げられる。
【0025】
このような粉砕用媒体粒子1および粉砕用媒体は、例えば、以下のようにして製作することができる。すなわち、まず酸化ジルコニウムを95.5〜97.4質量%,酸化イットリウムを2.6〜4.5質量%の割合でそれぞれ含む原料粉末に有機バインダ,溶剤を添加して混練した後、スプレードライヤを用いて乾燥し造粒する。次に、この造粒したものを球状の成型用金型内に充填した後、例えば1トン/cmの荷重を加えてプレス成型体とする。そして、この成型体を約1200〜1550℃で焼成することにより製作することができる。
【0026】
この粉砕用媒体粒子1は、表面に円形状の平面部1aが、1つの大円A上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、この大円Aで区分された両側の半球部(符号なし)のそれぞれの中程に位置する大円Aと平行な2つの小円B上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ6箇所ずつとに配置されている。つまり、球状の粉砕用媒体粒子1は、例えば図2(a)および(b)に示すように、粉砕用媒体として振動ミル等の粉砕装置内に入れたときに、一つの粉砕用媒体粒子1の横方向に6箇所と、上下それぞれ斜め(小円B)方向に6箇所ずつとに平面部1aが位置する。そのため、横方向および上下斜め方向でそれぞれ接し合う粉砕用媒体粒子1同士の間で、平面部1a同士が効率よく接し合うことができる。なお、図2(a)および(b)は、それぞれ本発明の粉砕用媒体粒子1を粉砕用媒体として振動ミル等の粉砕装置内に入れた状態を模式的に示す平面図(透視図)および側面図である。図2において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0027】
ここで、一般に球状の物体を密度を高くして配置しようとするときには、通常は1つの球状の物体に対して横方向および上下斜め方向に他の球状の物体が位置する。そして、このような位置に、本発明の粉砕用媒体粒子1の平面部1aが位置することになる。そのため、粉砕用媒体粒子1の平面部1a同士の間で、効果的にセラミック粉末(符号なし)を挟んで、摩擦に伴う剪断応力等の応力を加えてセラミック粉末を粉砕することができる。
【0028】
また、この粉砕用媒体粒子1は、平面部1aを有しているものの全体が球状であり、平面部1a以外の部分の表面は球面状であるため、多面体であるような場合に比べて、粉砕用媒体粒子1同士の間に一定の隙間が確保され、この隙間を通してセラミック粉末のスラリーを移動させることもできる。そのため、例えば振動ミル内に粉砕用媒体粒子1を粉砕用媒体として充填したときに、その中に上側からセラミック粉末(スラリー等)を投入した際に、上側の粉砕用媒体から下側の粉砕用媒体に向けて重力によりスムーズにセラミック粉末を移動させて、次々に粉砕を行なわせることができる。
【0029】
このような平面部1aは、例えば振動ミル中に粉砕用媒体粒子1を粉砕用媒体として充填しておいて、これを高速で振動させて粉砕用媒体粒子1同士の接触面を研削することにより、粉砕用媒体粒子1の表面に前述の配置で形成することができる。この場合、ミル中に充填された粉砕用媒体粒子1同士の接触面は、1つの粉砕用媒体粒子1において水平な1つの大円A上に並んだ6箇所と、大円Aで区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する大円Aと平行な2つの小円B上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ3箇所ずつとであり、この接触面が研削されて平面部1aとなる。また、振動に伴う粉砕溶媒体粒子1の回転等の移動により、小円B上の3箇所の接触面同士の間も研削されて、平面部1aが形成される。そのため、小円B上に平面部1aを6箇所ずつ形成することができる。
【0030】
また、このような粉砕用媒体粒子1において、小円B上の平面部1aが、大円A上の隣り合う平面部1aの間と半球部の頂点とを結ぶ円弧上に配置されている場合には、このような球状の粉砕用媒体粒子1を、互いにいわゆる体心立方または面心立方の格子を構成するように配置したときに、ちょうど互いの平面部1a同士が対向し合うような位置になる。複数個の球状の物体を、密度を高めて配置したときの位置が、上記の体心立方格子または面心立方格子の格子点に相当する。そのため、粉砕用媒体粒子1の粉砕装置内における充填の密度をより高める上で有効であり、平面部1a同士の間でセラミック粉末をより一層効率よく粉砕することができる。したがって、この場合には、セラミック粉末をより一層効率よく、粒径の分布範囲を抑制して粉砕することが可能な粉砕用媒体粒子1とすることができる。
【0031】
また、粉砕用媒体粒子1の外形寸法は、粉砕しようとするセラミック粉末の外形寸法に対して500〜50000倍程度の十分に大きなものとすることが好ましい。この程度の寸法であれば、粉砕用媒体粒子1の寸法が粉砕しようとするセラミック粉末の寸法に比べて十分に大きいので、粉砕用媒体粒子1同士の間にセラミック粉末を挟んで容易に粉砕することができる。
【0032】
また、例えば、セラミック粉末がチタン酸バリウム等の、積層セラミックコンデンサに使用されるような誘電率の高い材料の場合であれば、粉砕用媒体粒子1の外形寸法を約3〜7mm程度として、外形寸法が約0.2〜2μm程度のセラミック(チタン酸バリウム)粉末の粉砕を行なうようにすればよい。これは、このような条件に設定すれば、例えばチタン酸バリウムの粉末を、約0.1〜0.7μm程度の範囲で、ほぼ粒径が正規分布するように良好に粉砕することができるからである。そして、この粉砕したチタン酸バリウムの粉末を用いて、焼結性が良好で、絶縁性の高い絶縁基体(積層セラミックコンデンサの誘電体層)を作製することができる。
【0033】
また、平面部1aは、大円Aや小円B上にほぼ等間隔で並んでいるものであり、各平面部1aにおいて同様に粉砕の効果を得るためには、それぞれの面積および形状が同程度のものであることが好ましい。大円Aや小円Bにおけるそれぞれ6個の平面部1aの面積および形状(円形等)が同程度の場合であれば、それぞれの平面部1aは、互いに中心角で60度程度の間隔で配置すればよい。なお、平面部1aは、円形状に限らず、楕円形状や円周の一部に凹凸があるようなものでもよい。
【0034】
本発明の粉砕用媒体は、上記構成の粉砕用媒体粒子1を10体積以上含むものである。すなわち、前述した本発明の粉砕用媒体粒子1を用いてなる本発明の粉砕用媒体は、必ずしも全部が上記のような構成の平面部1aを有するものである必要はないが、粉砕の効率を効果的に向上させるために、上記構成の平面部1aを有する粉砕用媒体粒子1を10体積%以上含むものとしておく必要がある。この場合、平面部1aを有する粉砕用媒体粒子1以外の粉砕用媒体は球状(表面の一部に凹凸があるもの等を含む)である。
【0035】
なお、このような粉砕用媒体は、粉砕用媒体粒子1の平面部1a同士が隣接すると振動装置内における占有空間が小さくなる。つまり位置エネルギー的に安定した状態になるので、一度隣接するとその隣接を保持する傾向がある。そして、この振動用媒体に振動等の運動エネルギーを加えることによって、本発明の粉砕用媒体粒子1を含む粉砕用媒体粒子全体の再配列が起こり、振動を加える時間の経過と共に、本発明の粉砕用媒体粒子1が多く集まった集合部(図示せず)が形成されて来る。例えば縦型の振動タイプ(上下方向に振動するタイプ)の振動ミルの場合は、ミル本体の中に本発明の粉砕用媒体粒子1の層が形成される。そして、この層によりセラミック粉末を効率よく粉砕することができる。
【0036】
また、セラミック粉末(スラリー)は、例えば、ミル本体の上部から投入して下部から取り出すが、この操作を繰り返す(循環させる)と、スラリーが上記の本発明の粉砕用媒体粒子1の層を複数回通過するので、より均一な粒度に粉砕することができる。また、このような本発明の粉砕用媒体粒子1の層を形成する上では、粉砕用媒体において粉砕用媒体粒子1が10体積%以上含まれていれば十分であるが、20%体積以上含まれていればなお望ましい。
【0037】
また、この粉砕用媒体において、粉砕用媒体粒子1以外の球状のものとして、例えば図3に示すような、円形状の平面部2aが、1つの大円A上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、大円Aで区分された両側の半球部(符号なし)のそれぞれの中程に位置する大円Aと平行な2つの小円B上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ3箇所ずつとに配置された粉砕用媒体粒子2を含む場合には、次のような効果を得ることができる。なお、図3は、本発明の粉砕用媒体において粉砕用媒体粒子1とともに使用される粉砕用媒体粒子2の一例を示す斜視図である。
【0038】
すなわち、このように、平面部2aが12箇所配置された粉砕用媒体粒子2は、前述した粉砕用媒体粒子1と同様に、粉砕装置内で粉砕用媒体として用いられるときに、横方向および斜め上下方向で他の粉砕用媒体粒子2とそれぞれの平面部2a同士が対向し合うため、球形の粉砕用媒体粒子に比べてセラミック粉末の粉砕を効率よく行なうことができる。
【0039】
また、小円B上にほぼ等間隔に並んで配置された平面部2a同士の間に、粉砕用媒体粒子2同士の接触(摩擦)に伴って新たに平面部(図3では図示せず)が形成されることがある。そして、この場合には、このような12個の平面部2aが配置された(配置されていた)粉砕用媒体粒子2を、新たに前述の構成の粉砕用媒体粒子(小円上に平面部1aが6箇所ずつ配置されたもの)1として機能させることができる。そのため、粉砕用媒体を、より長期にわたり安定して、効率よくセラミック粉末の粉砕を行なうことが可能なものとすることができる。
【0040】
本発明のセラミック粉末の粉砕方法は、粉砕装置内でセラミック粉末を上記いずれかの構成の本発明の粉砕用媒体と接触させて粉砕するものである。このような粉砕方法によれば、上記構成の本発明の粉砕用媒体を使用することから、セラミック粉末を、効率よく、粒度分布を抑制して粉砕することが可能となる。
【0041】
例えば、セラミック粉末が積層セラミックコンデンサに使用するチタン酸バリウムの粉末であり、振動ミルを用いて粉砕する場合であれば、以下のようにすればよい。
【0042】
粉砕用媒体として、酸化ジルコニウム質焼結体からなる、平面部1aが配置された粉砕用媒体粒子1を10体積%以上含む球状の粉砕用媒体粒子からなる粉砕用媒体を用い、これを、円筒状のミル本体の内部がほぼ埋まる程度に入れる。そして、ミル本体を高速で振動させて粉砕用媒体粒子1同士が互いに摩擦し合うようにしながら、セラミック粉末を有機溶剤,バインダとともに混練して作製したスラリーを、ミル本体の上部からミル内に入れる。この際に、粉砕用媒体粒子1同士の間にセラミック粉末が挟まれて接触し、粉砕用媒体粒子1との摩擦により生じた剪断応力によってセラミック粉末が粉砕される。粉砕されたセラミック粒子は、ミル本体の下側に設けた取り出し口から順次取り出され、これを用いて例えばテープ成形法によってセラミックグリーンシートに成形される。
【0043】
なお、この場合、粉砕用媒体粒子1の外形寸法は直径で約5mm程度であり、セラミック粉末は粉砕前の直径が例えば約0.1〜5μm程度である。粉砕に要する時間は、例えば上記の条件であれば約10〜15時間程度である。
【実施例】
【0044】
本発明の粉砕用媒体の効果を確認するために、以下の実験を行なった。なお、セラミック粉末としてはチタン酸バリウム粉末を用い、粉砕用媒体粒子としては酸化ジルコニウムからなる球状のものを用い、粉砕装置としては振動ミル(縦振動タイプ)を用いた。粉砕用媒体は、本発明の平面部が配置された粉砕用媒体粒子が30体積%含まれているものとした。
【0045】
まず、振動ミルに粉砕用媒体を約65kg入れた後、振動ミルを振動させて粉砕用媒体粒子同士が互いに、より密に接し合うようにした。また、チタン酸バリウムの粉末(粒径が約1〜2μm程度)については、有機溶剤およびバインダと混練してスラリーとして、このスラリーをミル中に16kg上側から投入した。そして、振動ミルを加速度5m/sおよび変位0.1mmの条件で約15時間振動させてセラミック粉末を粉砕し、粉砕後のセラミック粉末の粒度分布をレーザ回折散乱粒度計にて測定した。
【0046】
また、比較例として、平面部を有しない球形の粉砕用媒体のみを用いて、他の条件を上記と同様にして粉砕を行なった。測定結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
粒径のばらつきの比較は、セラミック粉末の粒度分布において粒径の小さいものから10%の位置にあるものの粒径をD10(μm)、50%(つまり中央値)の位置にあるものの粒径をD50(μm)、90%の位置にあるものの粒径をD90(μm)とする方法により行なった。
【0049】
表1に示す結果から分かるように、セラミック粉末の分布の微粉部分を示すD10および粗粉部分を示すD90ともに、分布の中央を示すD50に対して粒径の差が0.12μm〜0.17μmであり、差が小さい。つまり分布の範囲が狭い。これに対し、比較例では、D50が実施例と同様の0.50μmであったのに対し、D10が0.29μm、D90が0.96μmであり、粒径の差が0.21〜0.46μmと大きく(実施例に比べて約1.2〜3.8倍程度)なった。つまり、実施例では、比較例に比べて、粒度分布の中間の値の粒径のものに対して、微粉および粗粉ともに近い粒径に分布したのであって、本発明の粉砕用媒体を用いた場合には、比較例に比べて微粉および粗粉がともに少なく、シャープな粒度分布であった。これに対して、比較例では、微粉および粗粉ともに中央値との差が大きく、粒径が広い範囲に分散しており、セラミック粉末の粒径の分散を抑えて(粒度分布をシャープにして)粉砕することが難しいことが分かった。
【0050】
また、上記の粉砕したセラミック粉末を用いて作製した電子部品素子の絶縁基体について、誘電損失値の測定および高温負荷試験を行なった。その結果、誘電損失値(tanδ(%))については、実施例によるセラミック粉末を用いた場合においては約2.0%であったのに対し、比較例によるセラミック粉末を用いた場合では約3.6%となった。これにより、本発明の粉砕用媒体を用いて粉砕したセラミック粉末を用いた場合には、従来よりも誘電損失値の低い絶縁基体を作製することが可能であることが分かった。
【0051】
また、高温負荷試験は、上記の絶縁基体を厚さ約3μmの絶縁層の積層体で構成するとともに、その絶縁層の上下両面にニッケルの焼結材料からなる四角形状の導体をそれぞれ絶縁基体との同時焼成により被着させ、125℃,バイアス電圧12.5Vで1000時間の高温負荷試験を実施した後、隣り合う導体同士の間の電気的短絡の有無を確認することにより行なった。その結果、実施例の粉砕用媒体を用いて粉砕したセラミック粉末を用いた場合には導体間で絶縁破壊が発生しなかったのに対し、比較例によるセラミック粉末を用いた場合では隣り合う導体間に絶縁破壊が発生していた。
【0052】
以上のように、本発明の粉砕用媒体によれば、例えば近年の電子部品素子に要求される特性の向上に対応できる程度に、セラミック粉末を効率よく、粒径の分布範囲を抑制して粉砕することができた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の粉砕用媒体粒子の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す粉砕用媒体粒子を粉砕装置に入れた状態を模式的に示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図3】本発明の粉砕用媒体を構成する粉砕用媒体粒子の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1,2・・・・粉砕用媒体粒子
1a,2a・・平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粉末を粉砕するための球状の粉砕用媒体粒子であって、表面に円形状の平面部が、1つの大円上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、前記大円で区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する前記大円と平行な2つの小円上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ6箇所ずつとに配置されていることを特徴とする粉砕用媒体粒子。
【請求項2】
前記小円上の前記平面部が、前記大円上の隣り合う前記平面部の間と前記半球部の頂点とを結ぶ円弧上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の粉砕用媒体粒子。
【請求項3】
セラミック粉末を粉砕するための球状の粉砕用媒体粒子からなる粉砕用媒体であって、請求項1または請求項2記載の粉砕用媒体粒子を10体積%以上含むことを特徴とする粉砕用媒体。
【請求項4】
前記球状の粉砕用媒体粒子として、円形状の平面部が、1つの大円上にほぼ等間隔に並んだ6箇所と、前記大円で区分された両側の半球部のそれぞれの中程に位置する前記大円と平行な2つの小円上にそれぞれほぼ等間隔に並んだ3箇所ずつとに配置された粉砕用媒体粒子を含むことを特徴とする請求項3記載の粉砕用媒体。
【請求項5】
粉砕装置内でセラミック粉末を請求項3または請求項4に記載の粉砕用媒体と接触させて粉砕することを特徴とするセラミック粉末の粉砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−104882(P2010−104882A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278121(P2008−278121)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】