説明

粉砕装置及びその粉砕粉進入防止構造

【課題】粉砕粉が軸受け側へ進入するのを防止することができる粉砕装置及びその粉砕粉進入防止構造を提供する。
【解決手段】粉砕装置の本体ケーシングの貫通孔16Aの内側には、粉砕刃20と軸受け30Aの間に粉砕粉進入防止構造50Aが設けられる。粉砕粉進入防止構造50Aは、粉砕刃端面20Aに密着し回転軸18とともに回転する側面板52,側面板52と貫通孔16Aの内周面の双方に密着するシールリング70,シールサポート80,Oリング90,シールリング押さえ92,シールリング70の回転を防止する回り止めピン38により構成される。シールリング押さえ92を締め込み、Oリング90の弾性力によってシールリング70が側面板52に密着し、更に、シールリング70が熱膨張してその外周面70Aと貫通孔16Aの内周面との隙間を塞ぐことにより、軸受け30A側への粉砕粉の進入が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材などを粉砕する粉砕装置(ないし破砕装置)と、その軸受け部への粉砕粉の進入を防止するための粉砕粉進入防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の成形時には、金型に溶融した樹脂材料を注入するための経路も固化して取り出され、製品と切り離される。この経路の部分が固化したものはスプル・ランナーと呼ばれ、粉砕装置などで粉砕した後、バージンペレットに混入されてリサイクル材として再利用される。粉砕装置で粉砕されたものは粉砕材と呼ばれる。このような粉砕装置の多くは、例えば、下記特許文献1に示すように、粉砕槽を形成する本体ケーシングと、前記粉砕槽内に略水平かつ回転可能に支持されており表面に粉砕刃が形成された回転軸と、該回転軸を支持する軸受けと、前記粉砕刃が通過可能な切り欠き刃部が形成された固定刃と、粉砕対象物の落下を防止するガイドプレートを備えており、前記粉砕刃が固定刃を通過する際に、粉砕対象物の粉砕が行われる。
【特許文献1】特開2006−122798号公報
【0003】
ところで、粉砕対象物を粉砕した際には、粉砕刃のサイズにより所定の大きさにカットされた粒のほかに、小さな切片や粉状の粉砕粉が必ず発生する。近年は特に、ガラス繊維等を含んだ樹脂材料が数多く存在しており、これらの材料が粉砕粉として軸受け部に進入すると、短期間で摩耗を起こすなど、種々の不具合要因となる。そのため、発生した粉砕粉から軸受けを保護するために、粉砕刃と軸受けの間に、側面板あるいは、側面板とシールリングが設けられている。図5(A)に示す例では、表面に粉砕刃20が設けられた回転軸18の端部は、本体ケーシングの側面12Aに設けられた貫通孔16Aを貫通し、軸受け30Aによって支持されており、該軸受け30Aと粉砕刃20の端面20Aの間に鍔部202と筒部204からなる側面板200が設けられている。また、図5(B)に示す例では、鍔部212と、段部216を有する筒部214からなる側面板210に加えて、シールリング220が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のように側面板200あるいは、側面板210とシールリング220を利用した技術では、前記側面板200,210とシールリング220は、前記貫通孔16Aの内部に位置しており、いずれも粉砕刃20(回転軸18)とともに回転する構造になっている。このため、前記貫通孔16Aの内周面と側面板200、あるいは、側面板210とシールリング220の外周面には隙間(クリアランス)Sが必要になり、粉砕粉が軸受け30A側に進入するのを完全に防止することができないという不都合がある。前記軸受け30A側に進入した粉砕粉は、軸受け破損の要因となるばかりでなく、それまでとは材質や色が異なる粉砕対象物の粉砕処理を行った際に、粉砕槽内へ逆流し、成形不良の要因となる場合もある。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、粉砕時に発生する粉砕粉が軸受け側へ進入するのを防止することができる粉砕装置及びその粉砕粉進入防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、端部を除く表面に粉砕刃が形成され、前記端部が粉砕槽を形成する本体ケーシングの貫通孔を貫通する回転軸が、前記粉砕槽内に略水平かつ回転可能となるように、前記端部が軸受けによって支持される粉砕装置の粉砕粉進入防止構造であって、前記粉砕刃と軸受けの間に位置するように前記回転軸の外周面に装着される筒部と、一方の主面が前記粉砕刃の軸方向端面のほぼ全面に密着する鍔部を有しており、前記回転軸とともに回転する側面板,該側面板の鍔部の他方の主面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面の双方に密着し、前記回転軸とともに回転しない略リング状のシール体,該シール体が回転軸とともに回転するのを防止するための回り止め手段,を備えたことを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記回転軸の軸方向に荷重を付加する弾性体の利用によって、前記シール体を前記側面板の鍔部に密着させることを特徴とする。他の形態は、前記シール体の内周面と前記側面板の筒部の間と、前記側面板の鍔部の外周面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面の間に、隙間を設けたことを特徴とする。
【0008】
更に他の形態は、前記シール体が、樹脂製であることを特徴とする。更に他の形態は、前記シール体が熱膨張性を有しており、熱膨張によって径方向に広がることによって、該シール体の外周面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面を密着させることを特徴とする。あるいは、前記シール体の外径部を径方向に押し広げる機構を設けることによって、該シール体の外周面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面を密着させることを特徴とする。
【0009】
本発明の粉砕装置は、前記いずれかに記載の粉砕粉進入防止構造を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、粉砕粉の進入を抑制し回転軸とともに回転する側面板と、該側面板と本体ケーシングの貫通孔内周面に密着し粉砕粉の進入を防止するとともに、回り止め手段によって前記回転軸とともに回転しないシール体を、前記回転軸の表面の粉砕刃と軸受けの間に設けることとした。このため、前記側面板がシール体を保護して粉砕粉の進入を抑制し、前記シール体が回転軸の軸方向及び径方向の隙間を塞ぐため、前記粉砕刃側から軸受け側への粉砕粉の進入を完全に防止できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1〜図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の粉砕装置を示す図であり、(A)は主要部を回転軸に沿って切断し、全体を上方から見た平面図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図2は、粉砕粉進入防止構造を拡大して示す断面図、図3は、前記粉砕粉進入防止構造の分解斜視図である。
【0013】
まず、図1を参照して、粉砕装置10の構成を説明する。粉砕装置10は、本体ケーシング12によって粉砕槽14が形成されており、前記本体ケーシング12の対向する側面12A,12Bの間には、前記粉砕槽14内において略水平かつ回転可能となるように、粉砕刃20と爪22を表面に備えた回転軸18が設けられている。該回転軸18は、前記粉砕刃20が形成されていない両端部が前記側面12A,12Bに設けられた貫通孔16A,16Bを貫通し、本体ケーシング12に固定された一対の軸受け30A,30Bによって回転可能に支持されている。前記回転軸18は、本体ケーシング12の外側に設けられた減速機24の回転が伝達されることによって回転可能となっている。
【0014】
前記粉砕槽14内には、前記粉砕刃20を挟んで対向する位置に、前記粉砕刃20と爪22が通過可能な切り欠き刃部(図示せず)が形成された固定刃26と、粉砕処理前の粉砕対象物が下方に落下することを防止するためのガイドプレート28が、傾斜面を形成するように固定されており、前記粉砕刃20が固定刃26を通過する際に、前記粉砕対象物の粉砕が行われる。本実施例では、このような粉砕装置10において、前記粉砕刃20の軸方向端面20Aと前記軸受け30A,30Bの間に、粉砕粉進入防止構造50A,50Bが設けられている。
【0015】
前記粉砕粉進入防止構造50A,50Bについて、図2及び図3も参照して詳細に説明する。なお、図2及び図3は、一方の粉砕粉進入防止構造50Aについて図示したものであるが、他方の粉砕粉進入防止構造50Bについても、同様の構造となっている。粉砕粉進入防止構造50Aは、側面板52,シールリング70,シールサポート80,Oリング90,シールリング押さえ92と、前記軸受け30Aに設けられた回り止めピン38によって構成されている。前記軸受け30Aは、貫通孔34を備えた軸受け本体32と軸受けケーシング36によって構成されており、前記軸受けケーシング36の筒部36Aの端面に、前記回り止めピン38が適宜間隔で複数(図示の例では2つ)設けられている。
【0016】
まず、前記側面板52は、前記回転軸18の外周面に装着されるものであって、鍔部54と筒部56と貫通孔60を備えており、例えば、金属によって形成されている。前記貫通孔60には、前記回転軸18の外周面に設けられた凸状のキー18Aと嵌合可能なキー溝62が形成されており、該キー溝62と前記キー18Aの嵌合によって、前記側面板52が前記回転軸18とともに回転可能となっている。前記鍔部54は、一方の主面54Aが、前記粉砕刃20の端面20Aと密着可能であり、その外周面54Cは、本体ケーシング側面12Aの貫通孔16Aの内周面との間に回転摩擦抵抗を低減するための隙間(クリアランス)S1を形成するような寸法に形成されている。金属製の側面板52と金属製の本体ケーシング12が接触すると、金属粉が発生して製品に混入するおそれがあるが、前記隙間S1を設けることにより、このような不具合を防止することができる。また、前記筒部56には段部58が設けられており、該段部58には、後述するシールリング押さえ92を締め込むためのネジ98が螺合するネジ穴64が適宜間隔で複数形成されている。
【0017】
シールリング70は、前記粉砕刃20側から軸受け30A側への粉砕粉の進入を防止するためのものであって、貫通孔72と段部74を有する略リング状に形成されており、前記側面板鍔部54の主面54Bと、前記貫通孔16Aの内周面の双方に密着可能となっている。該シールリング70の内周面70Bは、前記側面板52の筒部56の外周面との間に、隙間S2(図2参照)を形成する寸法に設定されている。該隙間S2は、回転摩擦抵抗を低減するとともに、過度の熱膨張を回避するためのものである。また、該シールリング70の軸受け30A側の主面には、前記回り止めピン38を受ける凹部76(図示の例では2か所)が設けられている。このようなシールリング70としては、例えば樹脂が利用され、本実施例では、特に熱膨張性を有する樹脂を利用することによって、前記貫通孔16Aの内周面との密着を図っている。
【0018】
シールサポート80は、鍔部82と筒部84と貫通孔86を備えており、前記筒部84の外周面にOリング90が装着され、前記シールリング70と重ねたときに、該シールリング70の段部74とシールサポート80の鍔部82の間に、前記Oリング90が挟まれるようになっている。また、前記鍔部82には、前記シールリング70の凹部76と対応する位置に、前記回り止めピン38が貫通可能な穴88が形成されている。前記シールリング押さえ92は、前記シールサポート80の鍔部82と接触可能な略リング状であって、貫通孔94を備えるとともに、前記シールリング70を前記シールサポート80を介して前記側面板52に対して締め込むためのネジ98と螺合する複数のネジ穴96が適宜位置に設けられている。前記シールサポート80を形成する材料としては、例えば樹脂が利用される。また、本実施例では、前記シールリング70を側面板52に密着させるための弾性体として前記Oリング90を利用しているが、他の公知のゴムやウェーブワッシャなどの弾性体を利用するようにしてもよい。前記シールリング押さえ92としては、例えば、金属などが利用される。
【0019】
次に、本実施例の作用を説明する。上述した各部は、例えば、まず、前記側面板52の鍔部主面54B側にシールリング70を嵌め、次いで、筒部84にOリング90を装着したシールサポート80を、前記シールリング70に重ねるように嵌める。次に、前記シールリング押さえ92を前記側面板52の段部58に乗せ、該段部58のネジ穴64とシールリング押さえ92のネジ穴96の位置を合わせてネジ98を螺合し、前記Oリング90の弾性力を利用して前記シールリング70を側面板52の鍔部主面54Bに密着させる。以上のようにして組み立てた側面板52,シールリング70,シールサポート80,Oリング90,シールリング押さえ92は、前記側面板52のキー溝62と回転軸18のキー18Aの位置が合うように回転軸18の端部に装着される。そして、シールリング70の凹部76及びシールサポート80の穴88に、前記回り止めピン38を挿入して軸受け30Aを装着する。他方の粉砕粉進入防止構造50Bも同様にして組み立てられる。
【0020】
以上のようにして組み立てた粉砕粉進入防止構造50A,50Bを取り付けた粉砕装置10では、前記シールリング押さえ92をネジ98で締め込んでOリング90を潰すため、回転軸18の軸方向への荷重が前記シールリング70に加わり、該シールリング70を側面板52の鍔部主面54Bに持続的に密着させることができる。また、シールリング70とシールサポート80が樹脂製であって、軸受けケーシング36の回り止めピン38によって回転しないように固定されているため、前記側面板52に密着したシールリング70には、回転摩擦によって摩擦熱が生じる。金属に比べ熱による膨張率が大きい樹脂製のシールリング70が、この摩擦熱によって膨張するため、本体ケーシング12の貫通孔16Aの内周面と前記シールリング70の外周面70Aに、部品相互の加工精度により隙間が発生したとしても、熱膨張によってその隙間を完全に塞ぎ、粉砕粉の進入を防止する。なお、シールリング70の内周面70B及びシールサポート80の内周面80Aと、側面板筒部56の外周面の間に隙間S2を設けるとともに、側面板鍔部54の外周面54Cと前記貫通孔16Aの内周面の間に隙間S1を設けているため、回転摩擦抵抗を低減するとともに、過度の熱膨張が回避される。
【0021】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)粉砕粉の進入を抑制し回転軸18とともに回転する側面板52と、該側面板52と本体ケーシング12の貫通孔16A,16Bの内周面に密着し粉砕粉の進入を防止するとともに、回り止めピン38によって前記回転軸18とともに回転しないシールリング70を、粉砕刃20と軸受け30A及び30Bの間に設けることとした。このため、前記側面板52がシールリング70を保護して粉砕粉の進入を抑制し、前記シールリング70が回転軸18の軸方向及び径方向の隙間を塞ぐために、前記粉砕刃20側から軸受け30A,30B側への粉砕粉の進入を完全に防止できる。
【0022】
(2)軸方向に荷重を加えることができるOリング90を設けることとしたので、側面板52との回転摩擦によって前記シールリング70が摩耗したとしても、密着状態を持続させることができる。
(3)側面板52の鍔部外周面54Cと貫通孔16Aの内周面の間に隙間S1と設けるとともに、シールリング70及びシールサポート80の内周面と側面板52の筒部56の外周面との間に隙間S2を設けることとしたので、回転摩擦抵抗の低減を図ることができる。
(4)前記シールリング70が摩擦熱によって熱膨張する特性を利用して、前記貫通孔16A及び16Bの内周面とシールリング70の外周面70Aを密着させることとしたので、部品相互の加工精度による隙間が生じたとしても、該隙間を塞いで粉砕粉の進入を防止できる。
【実施例2】
【0023】
次に、図4を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には、同一の符号を用いることとする。図4(A)は、本実施例の粉砕粉進入防止構造を拡大して示す断面図,図4(B-1)及び(B-2)は、シールリングと本体ケーシング側の密着機構を示す断面拡大図である。上述した実施例では、シールリング70の熱膨張性を利用して、本体ケーシングの貫通孔内周面との密着を図ることとしたが、本実施例は、前記シールリングの外周部を径方向に広げる機構を設けた例である。
【0024】
本実施例の粉砕粉進入防止構造100は、側面板52,シールリング102,シールリング押さえ110,回り止めピン116及び120と、スプリング122によって構成されている。前記側面板52の構成は、前記実施例1と同様である。前記シールリング102は、略リング状であって、一方の主面102Aが前記側面板52の鍔部主面54Bに密着し、他方の主面102Bの外周側には、図4(B-1)に示すテーパ状の溝104が形成され、内周側には、凹部106が複数形成されている。このようなシールリング102は、前記実施例1と同様に、樹脂によって形成されている。
【0025】
次に、シールリング押さえ110は、樹脂や金属などによって略リング状に形成されており、一方の主面110Aの外周側には、前記シールリング102の溝104に挿入されるテーパ状の凸面112が設けられている。該凸面112は、図4(B-1)に示すように、前記シールリング102の溝104よりもテーパが大きく形成されており、該凸面112を前記溝104に嵌め込むことによって、前記シールリング102の外周面102Cを押し広げ、回転していない状態においても本体ケーシング12の貫通孔16Aの内周面との隙間を塞ぐことが可能となっている。また、前記シールリング押さえ110の内周側には、前記シールリング102の凹部106に嵌合する回り止めピン116が貫通する貫通孔114が設けられている。
【0026】
更に、前記シールリング押さえ110の他方の主面110Bの外周側には、軸受けケーシング36の筒部36Aに固定された回り止めピン120が嵌合する凹部118が形成されている。なお、前記回り止めピン120の外周面にはスプリング122が取り付けられており、該スプリング122が前記シールリング押さえ110の主面110Bに接触することによって、軸方向への荷重が該シールリング押さえ110を介して前記シールリング102に伝わり、該シールリング102を側面板52に対して持続的に密着させることができる。同時に、前記シールリング102に形成された溝104に、シールリング押さえ110の凸面112が挿入されることにより、シールリング102の外周部が図4(B-1)に破線で示すように押し広げられ、本体ケーシング12の貫通孔16Aの内周面と、シールリング102の外周面102Cの隙間を完全に塞ぐことができる。これにより、前記貫通孔16Aの内周面とシールリング外周面102Cに、部品相互の加工精度による隙間が発生したとしても、隙間を完全になくすことが可能となる。
【0027】
このように、実施例2によれば、軸受けケーシング36の回り止めピン120に取り付けたスプリング122によって、シールリング押さえ110を介してシールリング102を側面板52に密着させる。これと同時に、前記シールリング押さえ110に設けた凸面112をシールリング102に設けた溝104に挿入して押し広げることで、シールリング外周面102Cと貫通口16Aの内周面の隙間も塞ぐことができるため、上述した実施例1と同様の効果が得られる。なお、本実施例においても、側面板52の鍔部外周面54Cと貫通孔16Aの内周面の間に隙間S1を設けるとともに、シールリング102の内周面102D及びシールリング押さえ110の内周面111と側面板筒部56の外周面の間に隙間S2を設け、回転摩擦抵抗の低減と過度の熱膨張を抑制することは、上述した実施例1と同様である。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した各部の形状・大きさは一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
(2)前記実施例に示した粉砕装置10の構成も一例であり、本発明の粉砕粉進入防止構造を備えたものであれば、必要に応じて適宜設計変更してよい。
(3)実施例1で示したOリング90や実施例2で示したスプリング122も一例であり、側面板52に軸方向に荷重を付加することができるものであれば、他の公知の各種の弾性体を利用してよい。
【0029】
(4)上述した組み立て手順も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。
【0030】
(5)前記実施例1におけるシールリング押さえ92の締め込み方法も一例であり、該シールリング押さえ92の内径側と側面板52の筒部56の外周面にネジ部を設け、前記シールリング押さえ92を回転させて締め込むようにするなど、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。
(6)実施例2では、シールリング102の溝104とシールリング押さえ110の凸面112のテーパの大きさの差によってシールリング102の外周部を押し広げることとしたが、これも一例であり、図4(B-2)に示すように、シールリング102にテーパのない溝104Aを設け、該溝104Aにテーパ状の凸面112を挿入するなど、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、粉砕粉の進入を抑制し回転軸とともに回転する側面板と、該側面板と本体ケーシングの貫通孔内周面に密着し粉砕粉の進入を防止するとともに、回り止め手段によって前記回転軸とともに回転しないシール体を、前記回転軸の表面の粉砕刃の端面と軸受けの間に設けることとした。このため、粉砕刃側から軸受け側への粉砕粉の進入を防止するための粉砕粉進入防止構造の用途に適用できる。特に、プラスチック材などを粉砕するための粉砕装置用の粉砕粉進入防止構造の用途として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1の粉砕装置を示す図であり、(A)は主要部を回転軸に沿って切断し、全体を上方から見た平面図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図2】前記実施例1の粉砕粉進入防止構造を拡大して示す断面図である。
【図3】前記実施例1の粉砕粉進入防止構造の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施例2を示す図であり、(A)は粉砕粉進入防止構造を拡大して示す断面図,(B-1)及び(B-2)はシールリングと本体ケーシング側の密着機構を示す断面図である。
【図5】背景技術の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10:粉砕装置
12:本体ケーシング
12A,12B:側面
14:粉砕槽
16A,16B:貫通孔
18:回転軸
18A:キー
20:粉砕刃
20A:端面
22:爪
24:減速機
26:固定刃
28:ガイドプレート
30A,30B:軸受け
32:軸受け本体
34:貫通孔
36:軸受けケーシング
36A:筒部
38:回り止めピン
50A,50B:粉砕粉進入防止構造
52:側面板
54:鍔部
54A,54B:主面
54C:外周面
56:筒部
58:段部
60:貫通孔
62:キー溝
64:ネジ穴
70:シールリング
70A:外周面
70B:内周面
72:貫通孔
74:段部
76:凹部
80:シールサポート
80A:内周面
82:鍔部
84:筒部
86:貫通孔
88:穴
90:Oリング
92:シールリング押さえ
94:貫通孔
96:ネジ穴
98:ネジ
100:粉砕粉進入防止構造
102:シールリング
102A,102B:主面
102C:外周面
102D:内周面
104,104A:溝
106:凹部
110:シールリング押さえ
110A,110B:主面
111:内周面
112:凸面
114:貫通孔
116,120:回り止めピン
118:凹部
122:スプリング
200,210:側面板
202,212:鍔部
202A,212A,220A:外周面
204,214:筒部
216:段部
220:シールリング
S,S1,S2:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を除く表面に粉砕刃が形成され、前記端部が粉砕槽を形成する本体ケーシングの貫通孔を貫通する回転軸が、前記粉砕槽内に略水平かつ回転可能となるように、前記端部が軸受けによって支持される粉砕装置の粉砕粉進入防止構造であって、
前記粉砕刃と軸受けの間に位置するように前記回転軸の外周面に装着される筒部と、一方の主面が前記粉砕刃の軸方向端面のほぼ全面に密着する鍔部を有しており、前記回転軸とともに回転する側面板,
該側面板の鍔部の他方の主面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面の双方に密着し、前記回転軸とともに回転しない略リング状のシール体,
該シール体が回転軸とともに回転するのを防止するための回り止め手段,
を備えたことを特徴とする粉砕装置の粉砕粉進入防止構造。
【請求項2】
前記回転軸の軸方向に荷重を付加する弾性体の利用によって、前記シール体を前記側面板の鍔部に密着させることを特徴とする請求項1記載の粉砕装置の粉砕粉進入防止構造。
【請求項3】
前記シール体の内周面と前記側面板の筒部の間と、前記側面板の鍔部の外周面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面の間に、隙間を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の粉砕装置の粉砕粉進入防止構造。
【請求項4】
前記シール体が、樹脂製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉砕装置の粉砕粉進入防止構造。
【請求項5】
前記シール体が熱膨張性を有しており、熱膨張によって径方向に広がることによって、該シール体の外周面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面を密着させることを特徴とする請求項4記載の粉砕装置の粉砕粉進入防止構造。
【請求項6】
前記シール体の外径部を径方向に押し広げる機構を設けることによって、該シール体の外周面と前記本体ケーシングの貫通孔の内周面を密着させることを特徴とする請求項4記載の粉砕装置の粉砕粉進入防止構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の粉砕粉進入防止構造を備えたことを特徴とする粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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