説明

粉粒体混合装置

【課題】原料供給ホッパーから排出された粉粒体の運動エネルギーの連続性の維持と均一混合が可能なコンパクトで駆動源が不要な自然落下型粉粒体混合装置の提供。
【解決手段】下部に貯留物排出用の開口を備え、内部に粉粒体を貯留する複数の原料供給ホッパー10と、原料供給ホッパーの下部開口の開閉手段30と、下部に排出口21を設けた下窄まり状の混合ホッパー20を有し、各原料供給ホッパーから供給された複数種の粉粒体を混合ホッパーの周壁25aを滑落させながら混合する粉粒体混合装置1であって、排出口を平面視において混合ホッパーの中心から偏心した位置に設け、排出口の相対向する2つの平行な接線を、混合ホッパーと排出口の各中心を結ぶ直線に対して直角に引き、前記の平行な接線で挟まれた領域で区切られた大小2つの領域のうち、面積の大きい方の領域に各原料供給ホッパーを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の粉粒体を自然落下により混合する粉粒体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、合成樹脂成形品を製造する際に、該合成樹脂成形品に種々の特殊な物性を付与したり着色したりするために、ベースとなる合成樹脂に種々の機能を濃縮担持させたマスターバッチを混合して製造することが多くなってきている。例えば、着色した合成樹脂成形品を成形する場合、従来はベース材にタルクや顔料などを混合、混練して作成した着色ペレットと呼ばれるものを用いていた。しかし、従来の着色ペレットは、ベース材に直接顔料などの着色剤を添加したものなので、その添加量や管理が煩雑であるなどの問題を有していた。これに対し、着色剤を濃縮担持させたマスターバッチによれば、その混合量を調節することで着色材の添加量も容易に調整できるなどの利点がある。また、ベース材に直接添加剤を添加するよりも、濃縮ペレットであるマスターバッチを使用した方がコスト面でも有利である。
【0003】
このような状況の中、合成樹脂の成形機にマスターバッチとベース材とを規定の混合比率で計量、供給し、均一に混合できる混合装置が求められるようになってきた。従来からの混合技術としては、ドラムの中に各種の原料を入れ、このドラムを回転させることによって混合するドラム混合方式、ケース内にエアを吹きかけることによって各種原料を分散混合するエアブレンダー方式、及び垂直方向に各種原料を落下させて装置内の分岐された経路を繰り返し通過させて混合するマイボックス(スタティックミキサー)などが主流である。
【0004】
しかし、ドラム混合方式は、設備の小型化が困難であり、装置の駆動源が必要などの問題がある。また、ドラムの回転時間が長くなると、ドラムの内壁と原料との間で摩擦が生じて静電気が発生する。この静電気によって一方のペレットがドラムの内壁に付着してしまい、混合したペレットが再び分級してしまうなどの問題があった。エアブレンダー方式では、エアを発生させる装置が別途必要であり、ベース材とマスターバッチの粒径や比重が異なるとエアによる分散効果もそれぞれ異なるので、均一に混合できないおそれがある。また、ケースの内壁と各材料がエアにより勢いよく衝突することで静電気が生じるおそれもある。静電気が生じた場合の不都合は、上記ドラム式混合方式と同様である。さらに、マイボックスは、垂直方向に落下させることで混合するため、均一に混合するためには垂直方向の長さ寸法を大きくする必要がある。また、装置内の分岐された経路を繰り返し通過することで、上記ドラム式混合方式やエアブレンダー方式と同様に、装置の内壁と材料との間で摩擦による静電気が発生してしまう。
【0005】
そこで、自然落下させることで装置の駆動源が不要であり、コンパクトでありながらも均一な混合が可能とされる混合装置として、特許文献1がある。特許文献1の粉粒体混合装置は、下面に貯留物排出用の開口を有し、同一高さに並列配置された複数(10個)の原料供給ホッパーの下方に、平面視中央位置に排出口を有する下窄まり状(漏斗状)の混合ホッパーを配しており、各原料供給ホッパーの下面開口は、これの開閉手段としてのマスフィーダによって開閉自在となっている。マスフィーダによって各原料供給ホッパーから分散状に自然落下させて供給された複数種の粉粒体は、混合ホッパーの一方の斜面とこれに対向する反対側の他方の斜面との間を、衝突、跳ね返りを繰り返しながら落下していくことで混合できるように構成されている。この粉粒体の衝突、跳ね返りを確実に行わせるため、混合ホッパーの斜面の傾斜角を45℃以上に設定している。
【0006】
【特許文献1】特開平5−103961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の粉粒体混合装置は、混合ホッパーの斜面からの跳ね返りを利用して混合させるものであるが、複数の原料供給ホッパーを、平面視で混合ホッパーの排出口を取り囲むように並列配置している。これでは、例えば平面視において混合ホッパーの供給口を挟んで対向する位置、すなわち各原料ホッパーの中心と混合ホッパーの排出口の中心とを結ぶ直線同士が180°で交わる位置にある原料供給ホッパーから排出され、一方の斜面を跳ね返った粉粒体同士は混合ホッパーの中央位置で正面衝突して互いの運動エネルギーを打ち消し合ってしまうので、運動エネルギーの連続性が途切れて他方の斜面へ衝突できず均一な混合を成し得ないおそれがある。実際には、例えば隣り合う原料供給ホッパーから排出された粉粒体同士は鋭角に衝突するなど、各原料供給ホッパーから排出された粉粒体同士は種々の角度において互いに衝突するが、各粉粒体には180°の位置から正面衝突し、対となる他の粉粒体が存在するものが多い。また、粉粒体を分散状に排出させるための特別な開閉手段(マスフィーダ)も必要となる。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、自然落下させることで装置の駆動源が不要であり、かつコンパクトでありながらも、原料供給ホッパーから排出された各粉粒体の運動エネルギーの連続性を維持しながら、均一に混合できる粉粒体混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、下部に貯留物排出用の開口12を有し、内部に粉粒体Pを貯留する複数の原料供給ホッパー10と、各原料供給ホッパー10の下部開口12を開閉自在な開閉手段30と、下端に排出口21を有し上方から下方に向かって内径が小さくなる下窄まり状の周壁25を有する混合ホッパー20とを含み、前記各原料供給ホッパー10から供給された複数種の粉粒体Pを、前記混合ホッパー20の周壁25に添って滑落させながら混合する粉粒体混合装置1であって、複数の前記各原料供給ホッパー10を、平面視において前記混合ホッパー20の排出口21の相対向する2つの平行な接線L・Lで挟まれた領域Xで区切られた前記混合ホッパー20における2つの領域A・Bのうち、一方の領域(A又はB)のみに配置したことを特徴とする(図6参照)。なお、本発明に係る粉粒体混合装置1は、各原料供給ホッパー10から供給された複数種の粉粒体Pを、混合ホッパー20の周壁25に添って滑落させながら混合するタイプであるので、混合ホッパー20の周壁25の傾斜角度は特に限定されない。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る粉粒体混合装置1において、前記混合ホッパー20の排出口21を、平面視において前記混合ホッパー20の中心位置から所定距離ずらした偏心位置に設けている。そのうえで、前記排出口21の相対向する2つの平行な接線L・Lを、前記混合ホッパー20の中心と前記排出口21の中心とを結ぶ直線Cに対して直角に引き、複数の前記各原料供給ホッパー10を、前記排出口21の相対向する2つの平行な接線L・Lで挟まれた領域Xで区切られた大小2つの領域A・Bのうち、面積の大きい方の領域Aのみに配置したことを特徴とする(図7参照)。
【0011】
第3の発明は、第2の発明に係る粉粒体混合装置1において、前記混合ホッパー20の排出口21を、平面視において前記混合ホッパー20の最大内径の周縁に設けていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る粉粒体混合装置1において、前記混合ホッパー20が、円錐形であることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る粉粒体混合装置1において、前記混合ホッパー20の下方に、該混合ホッパー20と連通し混合ホッパー20において混合された粉粒体Pをさらに攪拌混合する攪拌ホッパー50が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、原料供給ホッパーの下部開口を塞いでいる開閉手段を開くと、各原料供給ホッパーの下部開口から粉粒体が自重により自然落下して排出供給され、これが混合ホッパーの周壁に沿って滑落していき、各粉粒体の流れが排出口で1つに合流して互いに混合される。したがって、装置の駆動源が不要であり、かつ長い滑落経路も不要なので装置のコンパクト化が可能である。また、このとき、複数の各原料供給ホッパーを、平面視において混合ホッパーの排出口の相対向する2つの平行な接線で挟まれた領域で区切られた一方の領域のみに配置しているので、各粉粒体が正面衝突することがない。すなわち、図6によく示されるように、最も離れた位置にある原料供給ホッパー10・10同士の関係を例にとっても、両原料ホッパー10・10と排出口21の中心とを結ぶ2つの直線同士が交わる角度θが180°となることはない。したがって、各原料供給ホッパーから排出供給された各粉粒体は、それぞれの運動エネルギーを打ち消し合うことなくその連続性を維持しながら衝突合流する。これによって、各粉粒体が種々の角度から衝突合流して1つに交わるとき、それぞれの粉粒体が有する運動エネルギーが他の粉粒体の流れの中に入り込む(混ざり合う)エネルギーとなってよく混合される。
【0015】
このように、本発明に係る粉粒体混合装置は、各原料供給ホッパーの設置位置、すなわち各粉粒体同士が衝突する角度に着目しており、当該粉粒体は混合ホッパーの周壁に沿って自然滑落させるだけでよい。したがって、例えば粉粒体を原料供給ホッパーから分散状に排出する必要は無く、開閉手段の構成を簡素化できる。
【0016】
第2の発明によれば、混合ホッパーの排出口を偏心させ、各原料供給ホッパーを面積の大きい方の領域のみに配置している。これにより、例えば図6に示す位置に設けられた原料供給ホッパー10であっても、排出口21を偏心させていることによって、図7によく示されるように原料供給ホッパー10から排出口21までの距離が長くなり、排出口21に到達した時点での各粉粒体Pの運動エネルギーはその分大きくなる。したがって、各粉粒体が他の粉粒体に混ざり合うエネルギーも大きくなるので、より均一に混合できる。
【0017】
第3の発明では、平面視において排出口を混合ホッパーの最大内径の周縁に設けていることにより、排出口に到達した時点での各粉粒体の運動エネルギーを、混合ホッパーの設計上最大にでき、最も効率的に混合できる。また、これにより混合ホッパーの一部には垂直壁が形成される。したがって、周壁を滑落した粉粒体がその勢いによって排出口上を通り越しても、垂直壁が対向方向へ通過することを堰き止めるので、各粉粒体の運動エネルギーのロスを極力抑えることができる。さらに、このとき混合ホッパーの垂直壁に対向する周壁(傾斜壁)の下側には大きな空間が形成されている。そこで、例えば開閉手段の駆動部などを当該空間に設置することで、粉粒体混合装置のコンパクト化を図ることができる。
【0018】
第4の発明によれば、混合ホッパーが円錐形であるので、種々の角度から滑落してくる粉粒体を滑らかにかつ効率良く排出口で合流させ、確実にこれらを混合できる。すなわち、混合ホッパーが例えば四角錐のように周壁に角部があると、そこに滑落中の粉粒体が集中して排出口に達する前に各粉粒体が合流して上手く混ざらないことを回避できる。
【0019】
また、混合ホッパーが円錐形であることによって、図8によく示されるように、各原料供給ホッパーから排出供給され混合ホッパーの周壁を滑落する各粉粒体は、排出供給された当初は直線的に滑落するが、排出口付近に達すると排出口を中心として周壁を回転しながら滑落していく。このような滑落軌道の原理は必ずしも明らかではないが、排出口を偏心させていることと混合ホッパーが円錐形であることによって、粉粒体に作用する荷重の方向が複雑となるからと考えられる。そして、このような回転力も加わることによって、各粉粒体同士をより均一に混合できる。因みに、特許文献1にも混合ホッパーを円錐形にすることが開示されているが、上記のような回転力を有効利用するものではない。
【0020】
第5の発明によれば、混合ホッパー4の下方に攪拌ホッパーを設けているので、混合ホッパーにおいて混合された粉粒体Pをさらに攪拌ホッパーにおいても2段階で混合することができ、各粉粒体をより均一に混合できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る粉粒体混合装置の実施の形態を図1〜図5と、適宜図6〜8を参照しながら説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。図1は、粉粒体混合装置の側面図である。図2は、図3のA−A線断面図、すなわち粉粒体混合装置の縦断正面図である。図3は、粉粒体混合装置の平面図である。図4は、開閉手段による開閉によって粉粒体が原料供給ホッパーから排出供給される機構を示す要部拡大図である。図5は、各原料供給ホッパーから排出供給された各粉粒体が排出口へ向かって滑落していく様子を示す平面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態の粉粒体混合装置1は、内部に粉粒体Pを貯留する複数の原料供給ホッパー10と、各原料ホッパー10から排出供給された複数種の粉粒体Pを1つに混合する混合ホッパー20と、各原料供給ホッパー10の下面開口12を開閉自在な開閉手段30と、混合ホッパー20及び開閉手段30の外周を覆うカバー体40と、混合ホッパー20からの混合粉粒体をさらに攪拌混合する攪拌ホッパー50と、混合された粉粒体Pを貯留する貯留部60とで構成されている。
【0023】
原料供給ホッパー10は、透明な合成樹脂成形品であって、薄板円盤状の基盤13に上下開口11・12を有する円筒を一体に立設することで形成されており、上面開口11は原料となる粉粒体Pをここから充填する供給口として機能し、下面開口12は内部に貯留している粉粒体Pを混合ホッパー20へ排出供給する排出口として機能する。なお、基盤13における各原料供給ホッパー10の周縁部分は、強度向上のため厚肉にしてある。
【0024】
本実施形態における原料供給ホッパー10は、図3に示すごとく3つ形成している。そして、これら3つの原料供給ホッパー10は、平面視において混合ホッパー20の中心と混合ホッパー20の排出口21の中心とを結ぶ直線Cに対して直交し、排出口21の相対向する2つの平行な接線L・Lで挟まれた領域Xで区切られた大小2つの領域のうち、面積の大きい方の領域のみに配置してある(図3及び図7参照)。詳しくは、3つの原料供給ホッパー10は、上下高さ位置及び長さ寸法が同じであって、混合ホッパー20の上面開口周縁に沿って等間隔に配置してある。1つの原料供給ホッパー10には、1種類の粉粒体Pを貯留させる。
【0025】
また、図3によく示されるように、各原料供給ホッパー10の内径はそれぞれ異ならせてある。これは、原料となる各種粉粒体Pの混合比率を調整するためと、各種粉粒体Pの形状、かさ比重、流動性(滑落性)などの物性に合わせて衝撃エネルギーを調整するために設定されている。とくに各種粉粒体Pの混合比率を調整するための観点からは、各原料供給ホッパー10は、計量器としての機能も担っている。具体的には、原料供給ホッパー10の内径を大きくすれば、その貯留量が多くなると共に、単位時間当たりの粉粒体排出量も多くなる。原料供給ホッパー10の内径を小さくすれば、その逆となる。原料供給ホッパー10の内径の設定基準としては多種多様にあるが、例えば、単位時間当たりの排出量を調整して、混合割合を大きくする粉粒体用の原料供給ホッパー10の内径を大きくし、混合割合を小さくする粉粒体用の原料供給ホッパー10の内径は小さくする。粉粒体混合装置1がバッチ式の場合、各原料供給ホッパー10内の粉粒体Pが同時に空になるように、直径(長さ寸法)の大きな粉粒体用の原料供給ホッパー10の内径を大きくし、直径の小さな粉粒体用の原料供給ホッパー10の内径は小さくする。または、排出口21に到達する際の運動エネルギーを調節するために、形状が歪な(流動性が悪い)粉粒体Pやかさ比重の小さい粉粒体用の原料供給ホッパー10の内径を大きくし、形状が滑らかな(流動性が良い)粉粒体Pやかさ比重の大きな粉粒体用の原料供給ホッパー10の内径は小さくする。などの基準を例に挙げることができ、これらのうち1つの基準に着目して設定してもよいし、複数の基準を絡ませて設定することもできる。
【0026】
混合ホッパー20は、透明な合成樹脂成形品であって、上方から下方に向かって内径が小さくなる円錐形を呈しており、上面に各原料供給ホッパー10から排出供給された各粉粒体Pを受ける開口を有し、下端に混合した粉粒体Pを排出する排出口21が開口している。したがって、混合ホッパー20の上面開口が当該混合ホッパー20における最大内径となり、排出口21が最小内径となる。この排出口21は、図3などによく示されるように、平面視において混合ホッパー20の中心位置から所定距離ずらした偏心位置に形成してある。本実施形態では、混合ホッパー20の最大内径となる上面開口の周縁下部に設けた。これにより、混合ホッパー20の周壁25は、図1によく示されるように、傾斜壁25aと垂直壁25bとが形成された形状を呈しており、傾斜壁25aの下方には比較的広い開放空間が形成される。そこで、混合ホッパー20の傾斜壁25aに、後述する開閉手段30のプランジャ33の上下動を案内支持する縦長の案内筒26を、各原料供給ホッパー10の真下にあたる位置に一体に形成している。このように形成することで、開閉手段30の駆動部32などを傾斜壁25aの下方に配して開放空間を有効利用でき、粉粒体混合装置1のコンパクト化を図っている。また、混合ホッパー20の排出口21からは、縦長円筒状の絞り部22が一体に連設されており、混合ホッパー20の上端には、周方向外側へ延出するフランジ24が一体に形成されている。なお、ここでの垂直壁25bは、必ずしも厳密に90°であることを意味するのではなく、垂直に近い角度も含む。具体的には、凡そ水平面に対して85〜90°の傾斜角度のものを垂直壁と称する。
【0027】
本実施形態における原料供給ホッパー10の下面開口12を開閉する開閉手段30としては、ソレノイドによって上下動する栓部材31を適用している。詳しくは、駆動部32によって上下方向に出没自在な丸棒状のプランジャ33の先端に、円錐形の栓部材31が取り付けられている。プランジャ33の下方は小径になっており、当該小径部分に圧縮コイルバネ34を挿嵌することで、プランジャ33は上方(突出方向)に付勢されている。なお、図2における断面図では、ソレノイド30の駆動部32に内臓されている固定鉄芯やコイルなどの部材は省略している。
【0028】
カバー体40は、上下面が開口する円筒状の透明合成樹脂成形品であって、円筒上下端には、周方向外側へ延出するフランジ41・42が一体に形成されている。
【0029】
攪拌ホッパー50は透明な合成樹脂成形品であって、下面が開口した円錐形を呈している。攪拌ホッパー50の上面は、薄板円盤状の天板51で概ね塞がれているが、混合ホッパー20の排出口21に続く絞り部22に臨む位置のみに形成された開口52によって、絞り部22を介して混合ホッパー20と内部で連通している。また、攪拌ホッパー50の下端には、周方向外側へ延出するフランジ53が一体に形成されている。貯留部60も透明な合成樹脂成形品であって、少なくとも上面が開口した縦長円筒形を呈しており、これの上端に周方向外側へ延出するフランジ61が一体に形成されている。
【0030】
そして、混合ホッパー20の各案内筒26にソレノイド30のプランジャ33を挿通し、各ソレノイド30の栓部材31に原料供給ホッパー10の下面開口12を位置合わせした状態で、混合ホッパー20の上面に材料供給ホッパー10の基盤13を被せる。次いでこの状態において混合ホッパー20及びソレノイド30の外周を覆うようにカバー体40を被せ、原料供給ホッパー10の基盤13、混合ホッパー20の上端フランジ24、及びカバー体40の上端フランジ41に、それぞれ等間隔で四方4箇所に穿設された締結用の締結孔2にボルト3を挿通して、原料供給ホッパー10と混合ホッパー20とカバー体40とを固定している。
【0031】
同様に、混合ホッパー20の絞り部22と攪拌ホッパー50の天板51の開口52とを位置合わせした状態で、混合ホッパー20等の下方に攪拌ホッパー50をあてがい、カバー体40の下端フランジ42及び攪拌ホッパー50の天板51にそれぞれ等間隔で四方4箇所に穿設された締結孔2にボルト3を挿通して、カバー体40と攪拌ホッパー50とを固定する。このとき、攪拌ホッパー50の天板51にソレノイド30が載置された状態となっている。攪拌ホッパー50と貯留部60とも、下端フランジ53と上端フランジ61との締結孔2にボルト3を挿通して固定している。
【0032】
本粉粒体混合装置1で混合する粉粒体Pとしては、2種類以上の原料を互いに混合して使用されるものであれば特に限定されず、合成樹脂、金属、食品、薬品、及び木材などの植物などを使用することができる。また、1つ1つが固体物であるものであれば粒状、粉状、ペレット状など、その大きさや形状も特に限定されることはない。例えば、着色された合成樹脂成形品を製造するために、着色材としてのペレット状のマスターバッチと、ペレット状のベース材とを混合する場合などに使用できる。また、各粉粒体Pを混合した混合粉粒体は、これを溶融や押し固めして一体にしたり、そのまま混合粉末として使用することもでき、その使用用途や使用目的などによって適宜選択すればよい。本実施形態では、内径の大きな原料供給ホッパーにペレット状の合成樹脂製ベース材を、内径が中程度の原料供給ホッパーにペレット状のマスターバッチを、内径の小さな原料供給ホッパーに添加剤粉をそれぞれ充填した。
【0033】
次に、各粉粒体Pが混合される機構について説明する。先ず、図1及び図2に示すように、粉粒体混合装置1の不使用状態では、ソレノイド30のプランジャ33が圧縮コイルバネ34によって上方に付勢されていることで、プランジャ33の上端に固定された栓部材31が原料供給ホッパー10の下面開口12を塞いでいる。この状態において、図4(a)に示すごとく、各原料供給ホッパー10に、これの上面開口11からそれぞれ1種類ずつ各種の粉粒体Pを充填する。そして、ソレノイド30に通電すると、図4(b)に示すごとくプランジャ33が駆動部32の引力によって圧縮コイルバネ34の付勢力に抗して下方に下降し、これに伴ってプランジャ33の上端に固定された栓部材31が原料供給ホッパー10から離間して下面開口12が開放され、原料供給ホッパー10に貯留されていた粉粒体Pが自重によって自然落下状態で排出供給される。
【0034】
各原料供給ホッパー10から排出供給された各種の粉粒体Pは、図5に示すごとく、それぞれ混合ホッパー20の周壁25(正確には傾斜壁25a)に添って排出口21に向かって滑落して行き、排出口21(厳密には排出口21の直上付近)で互いに合流して1つに混合される。このとき、各原料供給ホッパー10を、平面視において混合ホッパー20の排出口21の相対向する2つの平行な接線L・Lで挟まれた領域Xで区切られた混合ホッパー20における2つの領域のうち、一方の領域のみに配置していることで、各粉粒体Pはそれぞれが角度をもって鋭角に衝突、すなわち各粉粒体Pが正面衝突することはなく、各粉粒体Pはそれぞれ運動エネルギーの流れが途切れることなく互いに衝突する。したがって、それぞれ運動エネルギーの方向性を異にする各粉粒体P同士が互いに衝突することで、それぞれの運動エネルギーが他の粉粒体Pと混ざり合うエネルギーとして作用し、よく混合される。また、図8に示すごとく、各粉粒体Pは原料供給ホッパー10から排出供給された当初(混合ホッパー20の上方域)では、排出口21に向かって直線状に滑落していくが、排出口21に到達する直前(混合ホッパー20の下方域)では排出口21を中心として周壁25を周回しながら滑落する。したがって、この周回エネルギーも加わることによって、さらに均一に混合されることになる。さらに、各粉粒体Pが滑落してくる傾斜壁25aの対向面は垂直壁25bとなっているので、各粉粒体Pが勢い余って排出口21の上面を飛び越したとしても、垂直壁25bに衝突して堰き止められるので、運動エネルギーの損失が抑えられる。
【0035】
このように排出口21で1つに混合された粉粒体Pは、排出口21からこれに連通する絞り部22を渦巻き状に通過して攪拌ホッパー50へ導入される。絞り部22は、混合された粉粒体の回転運動を維持しながら一旦整流する機能を有しており、これによって混合粉粒体は円滑に攪拌ホッパー50に導入される。
【0036】
絞り部22から導入された混合粉粒体は、攪拌ホッパー50の周壁54に添って周回しながら下方へ滑落していく。以って、混合粉粒体はさらに均一に分散混合されることになる。つまり、本実施形態の粉粒体混合装置1は、各粉粒体Pを2段階で混合している。
【0037】
最後に、攪拌ホッパー50で混合された混合粉粒体は、粉粒体混合装置1の最下部に設けられた貯留部60に貯留されていく。そして、貯留部60に貯留された混合粉粒体を取り出して、各種の製品を生産すればよい。
【0038】
次に、本実施形態における粉粒体混合装置1の変形例などについて説明する。まず、原料供給ホッパー10の形成個数は、2以上であれば特に限定されない。各原料供給ホッパー10には、それぞれに1種類の原料である粉粒体Pを貯留するので、混合すべき粉粒体Pの個数に合わせて形成すればよい。また、1種類の粉粒体Pを複数個の原料供給ホッパー10に分割して貯留することもできる。
【0039】
混合ホッパー20の周壁25を滑落する粉粒体Pの運動エネルギーをできるだけ大きくするために、原料供給ホッパー10は混合ホッパー20の排出口21からできるだけ離れた位置に設けることが好ましい。つまり、混合ホッパー20の最大内径となる上面開口の周縁に設けることが好ましい。しかし、これに限定されることはなく、各原料供給ホッパー10が平面視において混合ホッパー20の排出口21の相対向する2つの平行な接線L・Lで挟まれた領域Xで区切られた混合ホッパー20における一方の領域のみに配置してあれば、中心寄りに設けてもよい。とくに、比重が高く流動性の良い粉粒体であれば、他の粉粒体の運動エネルギーとの関係によっては中心寄りに設けることが好ましい場合もある。
【0040】
また、各原料ホッパー10同士は等間隔で設けられていることが好ましいが、これに限定されることはなく、各粉粒体Pが衝突して混合され得る限り、その一部又は全部が隣接していてもよい。基本的に、各粉粒体の運動エネルギーは、その滑落距離、すなわち排出口21と各原料ホッパー10との距離を設定することで調整できるが、原料供給ホッパー10の高さ位置、厳密には原料供給ホッパー10の下面開口12の高さ位置を変更して粉粒体Pが排出供給される高さを設定することでも調整可能である。
【0041】
原料供給ホッパー10は、上記実施の形態のように混合ホッパー20の上方に設けるだけでなく、混合ホッパー20の外側に配してもよい。この場合、原料供給ホッパー10における粉粒体P排出用の開口12は、原料供給ホッパー10の下部であって、混合ホッパー20の周壁25の上部に縦向きに形成すればよい。
【0042】
混合ホッパー20における排出口21の形成箇所は、平面視において混合ホッパー20の中心から偏心した位置であれば特に限定されることはないが、混合ホッパー20の中心位置に排出口を形成した場合を想定したとき、少なくともこの中心排出口と偏心排出口とが隣接する距離以上偏心させることが好ましい。また、数値的な基準としては、混合ホッパー20の中心と排出口21の中心との距離が、混合ホッパー20の上面開口の内径に対して少なくとも10%以上であることが好ましい。排出口21の形成位置がこれらの基準よりも中心側にあると、偏心させる効果を有効に発揮できなくなるおそれがあるからである。
【0043】
また、排出口21の内径は、混合ホッパー20の上面開口の内径に対して少なくとも80%以下とし、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下、最も好ましくは20%以下である。排出口21の内径と混合ホッパー20の上面開口との差が小さ過ぎると、混合ホッパー20の周壁25の傾斜角度が急になりすぎて、粉粒体Pの滑落速度が大きくなること、及び各粉粒体P同士の垂直方向での衝突角度が鋭角となることよって互いに交じり合うエネルギーが有効に発揮されずに均一な混合が困難になったり、各粉粒体P同士が衝突する前に排出口に達してしまい、そもそも混合自体が不可能となる問題が生じる。一方、排出口21の内径と混合ホッパー20の上面開口との差がある程度あれば、粉粒体Pの運動エネルギーを効率よく1箇所に集めることができる。また、混合ホッパー20の上面開口の内径に対する排出口21の内径の下限は、少なくとも2%以上とし、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。排出口21の内径と混合ホッパー20の上面開口との差が大き過ぎると、混合ホッパー20の周壁25の傾斜角度が緩やかになり過ぎて、流動性の悪い粉粒体が混合ホッパー20の周壁25の途中で止まってしまったり、排出口21の面積が小さくて粉粒体Pが詰まってしまうなどの問題がある。
【0044】
これに関連して、本発明は、粉粒体Pが混合ホッパー20の周壁25に添って滑落するタイプの混合装置であるので、基本的には混合ホッパー20の傾斜壁25aの傾斜角度は特に限定されないが、一定の設計基準としては水平面に対して20〜70°が好ましく、30〜60°がより好ましく、40〜50°が最も好ましい。この範囲の傾斜角度であれば、本発明の効果を発揮し得る。また、原料供給ホッパー10の形成個数が比較的少ない場合は混合ホッパー20は多角形とすることもできる。この場合は、各粉粒体Pが周壁25の角部で合流することを避けるために、1つの粉粒体Pの滑落面に対して1つの平面を確保できる形状に設計することが好ましい。
【0045】
上記実施の形態では、原料供給ホッパー10の下面開口12の開閉手段30としてソレノイドを使用した栓部材31を適用したが、開口12を開閉操作し得るものであればこれに限定されることはない。例えば、左右方向に摺動するシャッター部材や、一側方で軸支され、枢軸を中心として他側方が上下に回動する蓋部材などを使用することもできる。
【0046】
また、絞り部22を廃して混合ホッパー20と攪拌ホッパー50とを直接連通させてもよいし、さらに攪拌ホッパー50を廃して混合ホッパー20と貯留部60とを直接連通させてあってもよい。また、カバー体40も必ずしも設ける必要はない。
【0047】
原料供給ホッパー10の上面開口11は、自由端として各種の粉粒体Pを毎回充填するバッチ式としてもよいし、原料供給ホッパー10を別に設けた粉粒体Pの貯留槽に連結して連続供給する連続式とすることもできる。また、貯留部60も、これの内部に貯留している混合粉粒体を取り出すための開口を設けて、適宜必要量の混合粉粒体を取り出してもよいし、貯留部60と成形機を連結して逐次成形機に混合粉粒体を供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】粉粒体混合装置の側面図である。
【図2】図3のA−A線断面図である。
【図3】粉粒体混合装置の平面図である。
【図4】粉粒体の排出機構を示す要部拡大図である。
【図5】粉粒体が排出口に向かって滑落していく状態を示す平面図である。
【図6】原料供給ホッパーの配置位置を示す平面図である。
【図7】排出口を偏心させた状態での原料供給ホッパーの配置位置を示す平面図である。
【図8】粉粒体の滑落軌跡を示す側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 粉粒体混合装置
10 原料供給ホッパー
12 下面開口
20 混合ホッパー
21 排出口
22 絞り部
25 周壁
26 案内筒
30 開閉手段
31 栓部材
40 カバー体
50 攪拌ホッパー
60 貯留部
C 混合ホッパーの中心と排出口の中心とを結ぶ直線
L 排出口の接線
P 粉粒体
X 接線Lで挟まれた領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に貯留物排出用の開口を有し、内部に粉粒体を貯留する複数の原料供給ホッパーと、
前記各原料供給ホッパーの下部開口を開閉自在な開閉手段と、
下端に排出口を有し、上方から下方に向かって内径が小さくなる下窄まり状の周壁を有する混合ホッパーとを含み、
前記各原料供給ホッパーから供給された複数種の粉粒体を、前記混合ホッパーの周壁に沿って滑落させながら混合する粉粒体混合装置であって、
複数の前記各原料供給ホッパーを、平面視において前記混合ホッパーの排出口の相対向する2つの平行な接線で挟まれた領域で区切られた前記混合ホッパーにおける2つの領域のうち、一方の領域のみに配置したことを特徴とする粉粒体混合装置。
【請求項2】
前記混合ホッパーの排出口は、平面視において前記混合ホッパーの中心位置から所定距離ずらした偏心位置に設けてあり、
前記排出口の相対向する2つの平行な接線を、前記混合ホッパーの中心と前記排出口の中心とを結ぶ直線に対して直角に引き、複数の前記各原料供給ホッパーを、前記排出口の相対向する2つの平行な接線で挟まれた領域で区切られた大小2つの領域のうち、面積の大きい方の領域のみに配置したことを特徴とする請求項1に記載の粉粒体混合装置。
【請求項3】
前記混合ホッパーの排出口を、平面視において前記混合ホッパーの最大内径の周縁に設けていることを特徴とする請求項2に記載の粉粒体混合装置。
【請求項4】
前記混合ホッパーが、円錐形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉粒体混合装置。
【請求項5】
前記混合ホッパーの下方に、該混合ホッパーと連通し混合ホッパーにおいて混合された粉粒体をさらに攪拌混合する攪拌ホッパーが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉粒体混合装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−73573(P2008−73573A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252854(P2006−252854)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】