説明

粉粒体篩機用矩形状篩及びその製作方法

【課題】金属等の不純物混入を防ぐことが可能で、樹脂製網の着脱が容易な粉粒体篩機用の矩形状篩及びその製作方法を提供する。
【解決手段】本発明の矩形状篩10は、樹脂製網12が、矩形四辺状の枠体11の篩網張設面11aを覆い、かつ、枠体11の側周11bの締結穴11cを覆う位置まで折り込まれた周縁部12aが、弾性シート13及び押さえバー14を介して、締結具15により枠体に締着固定されている。また、矩形状篩10の製作方法は、樹脂製網12を枠体11の四辺の外側方向に張り上げ、次いで篩網張設面11aに当接させて、その周縁部12aを側周11aの締結穴11bを覆う位置まで折り込んで、弾性シート13及び押さえバー14を介して、複数本の締結具15により枠体11に締着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動篩機用の篩に関し、特に、振動篩機によってビーズや粉末に金属を混入させることなく篩分けする粉粒体篩機用の矩形状篩及びその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、微粉末を連続的に処理する振動篩機として、例えば、図3(A)、(B)に示すジャイロ・シフター30が使用されている。このジャイロ・シフター30は、供給されたガラス粉末材料G0を、ガラス微粉末G1とガラス粗粉末G2及び製品ガラス粉末G3とに連続して分級するものである。このような振動篩機には、所定寸法の矩形状篩が用いられる。
【0003】
矩形状篩の例として、特許文献1〜5には、硬質部材を鉤状に加工して形成したフックを両側に設け、フック間に所定間隔で金網を配置して両側を前記フックに結束して製造する振動篩用の矩形状篩網の製造方法が開示されている。
【0004】
一方、金属等の不純物の混入を防止したい場合には、樹脂製網を使用することが望まれる。特許文献6には、樹脂製網の例示があり、円形の上枠の内面下部に多数のボルト用孔を有する取付け枠を設け、これに金網パッキン、篩用金網、金網締付凹型リング、落下防止部材及び網叩き受皿を順次重ね、金網締付ボルトにより締付けることにより金網を固定するという円形網の取り付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−131628号公報
【特許文献2】特開平8−24790号公報
【特許文献3】実開昭63−193581号公報
【特許文献4】特開2002−186907号公報
【特許文献5】特開平1−207176号公報
【特許文献6】特開2002−361178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜5の篩網は金網でありフックの形成・掴持圧着固定は容易であるが、柔らかい樹脂製網の取り付けには適用が困難であるという問題がある。
【0007】
特許文献6の篩網の取り付け構造は、円形状の網には適用できるが、矩形状の網では、均等に張り上げることができず、適用が困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、図3(C)に示すように、接着剤43で樹脂製網42を固着した矩形状篩40が用いられるようになってきている。ところが、この矩形状篩40の樹脂製網42を張り替える時には、非常に労力を要する接着剤43を剥ぎ取る作業、熟練を要する接着剤43の塗布作業が必要となる問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑み、金属等の不純物の混入を防ぐ柔らかい樹脂製の篩網を緊密堅固な掴持圧着構成により、矩形状の枠体に、簡易且つ確実に取り付けることができる粉粒体篩機用の矩形状篩と、矩形状の枠体に樹脂製網を取付ける矩形状篩の製作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明に係る粉粒体篩機用矩形状篩は、篩網張設面を有し、側周に、複数の締結穴が設けられた矩形四辺状の枠体と、該枠体の篩網張設面及び側周の締結穴を全て覆うのに十分な寸法を有する樹脂製網と、前記枠体の締結穴に対応する複数の締結具と、前記締結穴と同じ間隔で締結具の貫通穴が設けられた押さえバーと、該押さえバーにより枠体の側周に向けて押圧される弾性シートと、を備え、前記樹脂製網が、前記枠体の篩網張設面を覆い、かつ樹脂製網の周縁部が、前記枠体の側周の前記締結穴を覆う位置まで折り込まれており、該樹脂製網の折り込み部が、前記弾性シート及び前記押さえバーを介して、前記締結具により枠体に締着固定されてなることを特徴とする。
【0011】
弾性シートとしては、導電性の低い白ゴム、合成ゴム等が、金属やカーボン等を含有せず、劣化した場合でも導電物質のゴミが発生しない点で適している。また、押さえバーとしては、ステンレス製の帯鋼等のバー材が、導電物質のゴミが発生し難く、適度な剛性を有する等の点で適している。押さえバーの角部及び貫通穴は面取りが施されていることが不純物ゴミの発生を抑制するうえで好ましい。
【0012】
樹脂製網としては、所定の線径及び目開きを有し、矩形状の枠体に張設された状態で、篩動作の際に、タッピングボール等が当たっても破損することなく安定して稼働が可能な強度を有していればよい。
【0013】
矩形状の枠体としては、ステンレス製のチャンネル鋼、矩形管鋼等からなり、粉粒体と接触しない四辺の側周に、樹脂製網の周縁部の折り込み部を無理なく固定することが可能な締結穴が形成されているものであればよい。締結穴としては、例えば、50mm〜90mmの間隔で、M6〜M8の複数のネジ穴、弾性部材の圧力に抗して先端部を挿入し、90°回転させて先端部を係止させるターン・ファスナー用の長円穴、弾性部材の圧力に抗して回転させて先端部を係止させるサインファスナー用穴等が形成されていることが重要である。また、ネジ穴としては、枠体に直接形成されたものに限らず、ナットを溶接その他で固定したものでもよい。締結具としては、ボルト、ターン・ファスナー、サインファスナー等が使用可能であり、分級の際に振動しても外れないようにロックされるものであることが重要である。
【0014】
本発明に係る粉粒体篩機用矩形状篩の製作方法は、篩網張設面を有し、側周に、複数の締結穴が設けられた矩形四辺状の枠体と、該枠体の篩網張設面及び側周の複数の締結穴を全て覆うのに十分な寸法を有する樹脂製網と、前記枠体の締結穴に対応する複数の締結具と、前記締結穴と同じ間隔で締結具の貫通穴が設けられた押さえバーと、該押さえバーにより枠体の側周に向けて押圧される弾性シートと、を準備し、前記樹脂製網を前記枠体の四辺の外側方向に張り上げ、次いで樹脂製網を前記枠体の篩網張設面に当接させて、その周縁部を枠体の側周の前記締結穴を覆う位置まで折り込み、該樹脂製網の折り込み部を、前記弾性シート及び前記押さえバーを介して、前記締結具により枠体に締着固定することを特徴とする。
【0015】
樹脂製網の締着固定方法としては、枠体の篩網張設面の近くで、樹脂製網を枠体の四辺の外側方向に張り上げた状態から、枠体の篩網張設面に当接させ、樹脂製網の周縁部を枠体の側周に形成されたネジ穴等の締結穴を覆う位置まで折り込むことが、樹脂製網を無理なく固定するうえで重要である。具体的には、樹脂製網を枠体の四辺の外側4方向に、ゴムやバネ等の弾性体又はエアシリンダー等により、適度な張力を負荷することで張り上げた状態とし、樹脂製網を枠体の篩網張設面に当接させて、その周縁部を枠体の側周に形成された前記締結穴を覆う位置まで折り込むものである。
【0016】
次に、その樹脂製網の折り込み部に、弾性シート及び前記押さえバーを介して、前記締結具により枠体に締着固定する。ここで、弾性シートを押さえバーの片面に予め貼り付けておくことが効率よく作業を行ううえで好ましい。この場合、例えば、押さえバーの弾性シート側を樹脂製網の折り込み部に押し当て、締結穴に当接する樹脂製網の折り込み部にキリ穴を開け、押さえバーの貫通穴を、枠体の側周の締結穴に対して重ね合わせる。この状態で、複数本のネジで押さえバーを累着することで、樹脂製網を固定することができる。もし、樹脂製網の折り込み部が長過ぎる場合には、カッター等で切除するとよい。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の粉粒体篩機用矩形状篩は、上記構成を有するので、連続稼働されるジャイロ・シフター等の振動篩機に使用することで、金属ゴミの混入のない粉粒体を効率よく得ることができる。
【0018】
また、本発明の粉粒体篩機用矩形状篩の製作方法は、上記工程を有するので、振動篩機に好適な柔らかい樹脂製網を緊密堅固な累着構成を容易且つ確実に矩形状枠体に取り付けることができる。また、樹脂製網を使用して、上記本発明の矩形状篩を短時間で準備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の粉粒体篩機用矩形状篩の概要を示す説明図であって、(A)は矩形状篩の写真、(B)は(A)の側周部分の拡大写真。
【図2】本発明の樹脂製網の取付け方法の説明図であって、(A)は樹脂製網を張り上げる工程の説明図、(B)は樹脂製網の周縁部を折り込む工程の説明図、(C)は樹脂製網の周縁部を固定する工程の説明図。
【図3】背景技術の説明図であって、(A)はジャイロ・シフターの正面図、(B)は(A)の側面図、(C)は従来の矩形状篩の写真。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、粉粒体篩機に用いる本発明の矩形状篩の実施形態について、図を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1、2に示すように、本発明の粉粒体篩機用の矩形状篩10は、断面が20mm×40mm×厚さ0.5mmのステンレス製のチャンネル鋼を溶接してなり、縦1150mm、横550mmで、篩網張設面11aの寸法が縦950mmの矩形状の枠体11と、枠体11の篩網張設面11aに張設された目開きが150μmのナイロン製の樹脂製網12と、を備えている。枠体11の側周11bには、締結穴としてM6のネジ穴11cが70mm間隔で設けられており、枠体11の篩網張設面11aの対向面側には、タッピングボール16を保持するタッピングボール受け11dが設けられている。また、樹脂製網12の周縁部12aが、枠体11の側周11bのネジ穴11cを覆う位置まで折り込まれている。この周縁部12aには、白ゴムからなる幅10mm×厚さ1mmの弾性シート13が当接し、さらに断面が幅10mm×厚さ1mmのステンレス製の帯鋼からなり、ネジ穴11cと同じ70mm間隔で、直径7mmの貫通穴14aが設けられた押さえバー14を介して、4辺の合計で32本の締結具であるM6のネジ15により枠体11に累着固定されている。また、同様の矩形状の枠体に、目開きが160μmの樹脂製網(図示省略)を張設して、矩形状篩10よりも網目が僅かに大きい矩形状篩(図示省略)を製作する。実際の分級では、目開きが150μmの微粒除去用の矩形状篩10及び目開きが160μmの粗粒除去用の矩形状篩(図示省略)の2種類の分級用矩形状篩を使用する。
【0022】
次に、上記本発明の矩形状篩10の製作方法を説明する。
【0023】
まず、図2(A)に示すように、網張り機20に、側周11aに複数のネジ穴11cが設けられた矩形状の枠体11をセットし、枠体11の篩網張設面11aの上方で、周縁部12aが枠体11の側周11aのネジ穴11bを覆う寸法の樹脂製網12の周縁部12aを、シャフト21aの先端の把持部で把持して、シャフト21aをエアシリンダー21内に引き込むことで、枠体11の四辺の外側方向に樹脂製網12を張り上げる。次いで、樹脂製網12を篩網張設面11aに当接させて、その周縁部12aを枠体11の側周11bのネジ穴11cを覆う位置まで折り込む。次いで、図2(B)に示すように、枠体11の側周11bに折り込まれた周縁部12aに、貫通穴14aが設けられた押さえバー14の一面に設けた厚さ1mmの白ゴムからなる弾性シート13を押しつけて、ネジ穴11bに貫通穴14aを重ねる。最後に、ネジ15により枠体11に累着することで、図2(C)に示すように、枠体11に樹脂製網12を締着固定する。
【0024】
目開きが150μmのナイロン製の樹脂製網12を張設した微粒除去用の矩形状篩10及び目開きが160μmの粗粒除去用の矩形状篩(図示省略)を使用して、ガラス粉末材料G0を、製品ガラス粉末G3と、ガラス微粉末G1及びガラス粗粉末G2に連続して分級する場合について説明する。
【0025】
まず、目開きが150μmの矩形状篩10と、目開きが160μmの矩形状篩(図示省略)の2種類の分級用の矩形状篩を、図3に示すジャイロ・シフター30にセットする。このジャイロ・シフター30に、粒径が100〜200μmのガラス粉末材料G0を供給して、代表粒径の値が150μm未満のガラス微粉末G1と、代表粒径の値が160μmを超えるガラス粗粉末G2と、及びその中間粒径の製品ガラス粉末G3とに分級を行う。ジャイロ・シフター30を20時間稼働させたところ、得られた製品ガラス粉末G3は、平均粒径が150μm、最大粒径が170μmであり、金属等の混入はなく、問題なく篩分けすることができた。
【0026】
その後、製品ガラス粉末の品種替えのため、矩形状篩10の150μmの樹脂製網12を目開きが100μmのものに交換したところ、約1時間で交換作業が完了した。
【0027】
比較例として、図3(C)に示すような、枠体41に、樹脂製網42が、接着剤43で固着されている従来の矩形状篩40を使用した場合を説明する。
【0028】
矩形状篩40の樹脂製網42の張り替えには、非常に労力を要する接着剤43を剥ぎ取る作業を行い、その後、熟練を要する接着剤43の塗布作業を要した。本実施例1の矩形状篩10の約1時間に比べて、約6倍の6時間が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の矩形状篩は、ガラス粉末の分級に適しており、ガラス以外にも、結晶、セラミックス、その他の脆性材料にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
10、40 矩形状篩
11、41 枠体
11a 篩網張設面
11b 側周
11c ネジ穴(締結穴)
11d タッピングボール受け
12、42 樹脂製網
12a 周縁部
13 弾性シート
14 押さえバー
14a 貫通穴
15 ネジ(締結具)
16 タッピングボール
20 網張り機
21 エアシリンダー
21a シャフト
30 ジャイロ・シフター
43 接着剤
G0 ガラス粉末材料
G1 ガラス微粉末
G2 ガラス粗粉末
G3 製品ガラス粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
篩網張設面を有し、側周に、複数の締結穴が設けられた矩形四辺状の枠体と、該枠体の篩網張設面及び側周の締結穴を全て覆うのに十分な寸法を有する樹脂製網と、前記枠体の締結穴に対応する複数の締結具と、前記締結穴と同じ間隔で締結具の貫通穴が設けられた押さえバーと、該押さえバーにより枠体の側周に向けて押圧される弾性シートと、を備え、
前記樹脂製網が、前記枠体の篩網張設面を覆い、かつ樹脂製網の周縁部が、前記枠体の側周の前記締結穴を覆う位置まで折り込まれており、該樹脂製網の折り込み部が、前記弾性シート及び前記押さえバーを介して、前記締結具により枠体に締着固定されてなることを特徴とする粉粒体篩機用矩形状篩。
【請求項2】
篩網張設面を有し、側周に、複数の締結穴が設けられた矩形四辺状の枠体と、該枠体の篩網張設面及び側周の複数の締結穴を全て覆うのに十分な寸法を有する樹脂製網と、前記枠体の締結穴に対応する複数の締結具と、前記締結穴と同じ間隔で締結具の貫通穴が設けられた押さえバーと、該押さえバーにより枠体の側周に向けて押圧される弾性シートと、を準備し、
前記樹脂製網を前記枠体の四辺の外側方向に張り上げ、次いで樹脂製網を前記枠体の篩網張設面に当接させて、その周縁部を枠体の側周の前記締結穴を覆う位置まで折り込み、該樹脂製網の折り込み部を、前記弾性シート及び前記押さえバーを介して、前記締結具により枠体に締着固定することを特徴とする粉粒体篩機用矩形状篩の製作方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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